リードリレーの技術解説

技術解説
■リードリレー・水銀リレーの概要
1. リードリレー・水銀リレーとは
1-1) リードリレー
リードスイッチ(ガラス管の中に封入されている2本の強磁性体リードが一端に隙間を持って相対したもので
ガラス管の中には接点の活性化を防止するための不活性ガス等が封入されており、接点部には特殊金属が鍍金
されています)を用い、ガラス管の周囲に巻かれたコイルの磁束でリード片を駆動させて接点開閉を行うリレー
です。(図1参照)
1-2) 水銀リレー
水銀スイッチ(ガラス管の中に封入されている2本の強磁性体リードが一端に隙間を持って相対したもので、
ガラス管
の中には、微量の水銀が封入され、表面張力により接点が水銀で濡れており、接点のバウンスはありません。
また、接点
の活性化を防止するための不活性ガス等が封入されており、接点部には特殊な加工を用いています)を用い、
ガラス
管の周囲に巻かれたコイルの磁束でリード片を駆動させて接点開閉を行うリレーです。(図2参照)
図1:リードスイッチの構造
図2:水銀スイッチの構造
駆動コイル
駆動コイル
水銀スイッチ
UP
リードスイッチ
水銀
2. リードリレー・水銀リレーとその他のリレー対比
リ
項
目
ド
リ
レ
水
銀
リ
ド
リ
レ
メ
カ
ニ
カ
ル
リ
レ
︵
ヒ
ン
ジ
形
︶
︵
プ
ラ
ン
ジ
メ
カ
ニ
カ
ル
リ
形 レ
︶
S
S
R
光
M
O
S
外形
◎
○
◎
△
○
◎
接点極数
○
○
○
◎
△
△
消費電力
○
○
○
△
◎
◎
応答速度
○
△
△
△
◎
○
接触信頼性
○
◎
△
△
◎
◎
バウンス
○
◎
△
△
◎
◎
絶縁性
○
○
○
◎
△
○
耐久性
○
◎
○
△
◎
◎
過渡現象
◎
◎
◎
◎
△
△
動作音
○
○
△
△
◎
◎
耐振動・衝撃
△
△
△
△
◎
◎
周囲環境性
○
○
△
△
○
◎
接触抵抗
◎
◎
◎
◎
△
△
漏れ電流
◎
◎
◎
◎
△
○
開閉容量
○
○
○
◎
◎
△
31
3. 用語説明
用語
解説
非動作状態
動作状態
Form A (メーク接点)
Form B (ブレイク接点)
1. 接点の種類
Form C
(トランスファー接点)
Form C (A+B)
(メーク・ブレイク接点)
Form (A+B)
(メーク・ブレイク接点)
2. 定格電圧
3. コイル抵抗
4. 動作電圧
リレーを駆動するために、コイルに印加する定められた電圧です。
定格電圧の許容変動は、±10%(at 20℃)以内です。
リレーのコイル抵抗値を「Ω」で表しております。
リレーを動作させるための最低必要なコイル電圧です。(at 20℃)
例えば、動作電圧3.75Vのリレーに、3.3Vの電圧を印加しても動作しません。
動作状態のリレーを非動作状態へ戻すためのコイル電圧です。(at 20℃)
5. 復帰電圧
例えば、復帰電圧1.2Vのリレーに、0.5Vの電圧が印加された場合は、非動作状態になりますが、
1.5Vの電圧が印加されていた場合は、非動作状態になりません。
接点に負荷を接続した状態で、接点を開閉できる電圧の最大値(at 1mA)です。(* 交流の場合は、ピーク電圧値)
6. 最大開閉電圧
但し、下記9. 最大接点容量の範囲内でご使用ください。
最大開閉電圧を超えた電圧で使いますと、接点が溶着したり、接点の劣化を早める要因となります。
接点に負荷を接続した状態で、接点を開閉できる電流の最大値です。(* 交流の場合は、ピーク電流値)
7. 最大開閉電流
但し、下記9. 最大接点容量の範囲内でご使用ください。
最大開閉電流を超えた電流で使いますと、接点が溶着したり、接点の劣化を早める要因となります。
8. 最大通電電流
9. 最大接点容量
10. 電気的寿命
11. 接点接触抵抗(初期値)
接点を閉じてから連続的に通電可能な電流の最大値です。
接点を開くとき、最大開閉電流以下の電流値で、接点を開いてください。
実用上支障なく開閉できる負荷容量(開閉電圧×開閉電流)の最大値です。
最大接点容量を超えた容量値で使いますと、接点が溶着したり、接点の劣化を早める要因となります。
接点に負荷が加わった状態での寿命のことです。
リレーの寿命は、負荷の大きさ、負荷の種類、使用頻度によって差が出ます。
接点が閉じた状態での端子間の抵抗値です。
12. 接点接触抵抗バラツキ(初期値) 接点接触抵抗を5回測定したときの最小値と最大値の範囲を設定しており、抵抗値の安定度を目的としております。
13. 絶縁抵抗
14. 静電容量
接点、コイル間や導電部端子と非導通端子間、あるいは接点相互間の絶縁された部分の抵抗のことです。
接点、コイル間や導電部端子間の静電容量です。
リレー各導体相互間の絶縁破壊が起きない限界値です。
15. 絶縁耐圧
接点間に関しては、接点が動作していない状態で、サージ的に接点間に印加されても耐える電圧値です。
接点動作後、すぐにパルス的にかかる電圧に対しては、最大開閉電圧値が規格値となります。
16. 動作時間
17. 復帰時間
コイルに定格電圧を印加した時点から接点が閉じて、バウンスが終了するまでの時間です。(但し、ブレーク接点は接点が開くまでの時間です)
(バウンスを含む ※Form A/Form C/Form(A+B))
コイルから定格電圧を取り除いた時点から接点が復帰するまでの時間です。(但し、ブレーク接点は接点が閉じて、バウンスが終了するまでの時間です)
(バウンスを含む ※Form B/Form C/Form(A+B))
18. 振動
特性変化を起こさせない耐振動値です。
19. 衝撃
特性変化を起こさせない耐衝撃値です。
32
4. 使用上のご注意
4-1) リレーの実装作業について
① 端子の折り曲げ加工について
リレーの端子を曲げて取り付けする際には、端子をリードペンチで固定して曲げてください。また
曲げる際には、端子根元に無理なストレスを加えないようにご注意ください。
② はんだ付け条件について
a) はんだこての場合:300 350℃
b) 自動はんだの場合:230 260℃
c) リフローはんだの場合:下記推奨温度プロファイルをご参照ください。
推奨温度プロファイル
半田付
予熱
徐冷
Tc *
217℃
200℃
t*
150℃
120秒
120秒
25℃
* Tc および t に関しましては各仕様をご参照願います。
③ 洗浄について
リレーをはんだ付けした後、
フラックス除去の為、溶剤(アルコール系、
フロン系)
または純水を使用して、
基板の洗浄を行う場合は、次の事項にご注意ください。
a) 溶剤による洗浄は、表示マークが薄くなったりかすれたり、消えたりすることがあります。
b) 超音波洗浄は避けてください。
c) 洗浄槽に大きな磁界がある場合は、特性が変化しますので洗浄は行わないでください。
洗浄の可否につきましてはお問い合わせください。
④ 水銀リレーの取り付け方向について
「→ UP」表示のある水銀リレーを取り付ける際には、矢印が指し示す方向を上にして、垂直±30度以内の範囲で
ご使用ください。
33
⑤ 磁気干渉について
リードリレーを多数個接近させ、実装する時の相互磁気干渉により、動作・復帰電圧の変動が発生します。
リードリレーを下図のように配置し、周囲のリードリレーが中央部のリードリレーに対して影響を与えるという
磁気干渉の事例を示します。
この値は、
コイル通電の有無により変化いたします。
またグラフ値は、中央部のリードリレーの動作の変動を
比率で表しています。従い、
この変動比率を抑えるためには、磁気シールドが有効な手段となります。
注記:外部にトランスや永久磁石などの強い磁界を発生する所での使用は、磁気シールドが付いていたとしても
誤動作の要因となります。
L2
OFF
L1:4.7mm
L2
OFF
OFF
Ⅵ
動作電圧の変化
復帰電圧の変化
40
40
30
30
復帰電圧変化率(%)
動作電圧変化(率(%)
L2:13.0mm
OFF
OFF
OFF
Ⅴ
OFF
OFF
ON
ON
ON
ON
ON
Ⅳ
ON
Ⅲ
ON
OFF
Ⅱ
Ⅰ
ON
OFF
ON
ON
OFF
ON
OFF
ON
L1 L1
20
10
0
-10
-20
-30
20
10
0
-10
-20
-30
-40
-40
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
取り付け方法
取り付け方法
4-2) リレーの取扱いについて
① 振動・衝撃について
リレーは精密部品ですので、実装前後にかかわらず、規格値を超える振動・衝撃を加えないでください。
また、落下などにより機械的衝撃が加わった場合、特性変動を生じる場合があります。軽度の衝撃と思われる
場合でも、異常のないことを十分確認してご使用ください。
34
4-3) 回路設計に関して
(負荷回路)
① 接点保護について
接点保護素子や保護回路の使用により、逆起電圧の影響を低く抑えることができますが、正しく使用しないと
逆効果になりますのでご注意ください。接点保護回路の代表例を下表に示します。
分類
a) 誘導負荷の場合
項目
適用
回路例
R
特徴 その他
AC DC
素子の選び方
C
E(V)
AC電圧で使用する場合、負荷のインピーダンス
誘導負荷
△
○ がCRのインピーダンスより十分小さいこと。
誘導負荷
○
○ 電源電圧が24、48Vの場合は負荷間に、
○
○ 誘導負荷の抵抗分でジュール熱として
○
○
○
バリスタの定電圧特性を利用して、接点間に
あまり高い電圧が加わらないようにする方式です。
○ 電源電圧が24∼48V時は誘導負荷間に
100V∼200V時は接点間のそれぞれに接続すると
効果的です。
接点が開路の時、CRを通して、誘導負荷に
電流が流れます。
CR方式
負荷がリレー、ソレノイドなどの場合は
復帰時間が遅れます。
R
E(V)
100∼200Vの場合は接点間のそれぞれに
接続すると効果的です。
C
ダイオード方式
E(V)
ダイオード
+
ツェナー
ダイオード方式
E(V)
誘導負荷
バリスタ方式
E(V)
誘導負荷
誘導負荷
誘導負荷に貯えられたエネルギーを並列
ダイオードによって、電流の形でコイルへ流し、
消費させます。
ダイオード方式では復帰時間が遅れすぎる
場合に効果があります。
C、Rの目安としては
C:接点電流1Aに対し0.5∼1(μF)
R:接点電圧1Vに対し0.5∼1(Ω)です。
誘導負荷の性質やリレー特性のバラツキなどにより必ずしも
一致しません。
Cは接点開時の放電抑制効果を受けもち、Rは次回投入時の
電流制限の役割ということを考慮し、実験にてご確認ください。
Cの耐圧は一般に200∼300Vのものを使用してください。
AC回路の場合はAC用コンデンサ(極性なし)をご使用ください。
ダイオードは逆耐電圧が回路電圧の10倍以上のもので
順方向電流は誘導負荷電流以上のものをご使用ください。
電子回路では回路電圧がそれほど高くない場合、
電源電圧の2∼3倍程度の逆耐電圧のものでも使用可能です。
ツェナーダイオードのツェナー電圧は電源電圧程度のものを
使用します。
誘導負荷
E(V)
下図のような接点保護回路の使用は避けてください。
C
E(V)
E(V)
誘導負荷
C
誘導負荷
遮断時のアーク消弧には非常に効果がありますが、
接点の開路時Cに容量がたくわえられているため、接点の投入時に
Cの短絡電流が流れるので接点が溶着しやすい。
遮断時のアーク消弧には非常に効果がありますが、
接点の投入時にCへの充電電流が流れるので
接点が溶着しやすい。
35
b) ランプ負荷(突入電流)等の場合
ランプ、モータ、
ソレノイド、キャパシタなどが接点負荷の場合、接点閉時に定常時の数倍から十数倍の
突入電流が流れます。
この突入電流が許容範囲を超えますと、接点の溶着や接点金属の異常転移による
接点障害を発生する要因となります。
リードリレーの突入電流の許容値については、突入電流の大きさ、
波形、
リードリレー接点に要求する耐久回数などによって決まります。
突入電流を最大開閉電流以下に抑制するには、接点に直列の電流制限抵抗を挿入する方法が有効です。
図を参考に、実際のご使用条件で、使用の可否をご確認ください。
電流
電流制限抵抗がない場合
電流制限抵抗がある場合
時間
c) 線間浮遊容量等の場合
線間浮遊容量が大きい場合に生ずる突入電流が問題となります。
図のように線間浮遊容量に充電された電荷が接点閉時に放電されます。
また、配線ケーブルのインピーダンスが小さい、
あるいはケーブルが長いほど接点消耗は大きくなります。
保護回路としては、接点に直列の電流制限抵抗等を挿入して、突入電流を抑制してください。
ケーブル
R
負荷
4-4) 回路設計について
(入力・出力回路)
① 熱起電力
異種の金属を両端で接続し、接合部の温度を異なる温度に保つと、ゼーベック効果*の影響で回路に電流が
流れます。
この電流を生じさせる起電力を熱起電力といいます。
リードリレーの場合、端子・接触片・接点の
異種金属間に熱起電力が生じます。
熱電対をリードリレーで切り替える場合、
この熱起電力により実際の温度と測定温度が異なる要因となります
ので、弊社の低熱起電力リードリレーをお薦めいたします。
* ゼーベック効果:異なるABの金属を環状に結合して閉回路を作り、二つの接合部を異なる温度に保つと
接合部間に起電力が発生し電流が流れる現象。ペルチェ効果の逆の現象です。
温度の高低を逆にすると起電力(電流)
も逆向きになります。
この現象は、比較的広い温度
範囲が計測できることから熱電対に応用されています。 36
② 長時間の高温連続動作
水銀リレーを高温条件(70̊C以上)
で長時間(50時間以上)接点を閉じたままで使用すると、閉時における
接点の水銀の循環が行われなくなり、接点金属間の拡散によって接点間の粘性が高まり、動作不具合を生じる
場合があります。
この接点間の粘性は、水銀リレー使用温度と閉じている時間に比例して増加します。
このような使用条件が避けられない場合は、連続で閉じている時間が50時間を超えないよう、定期的な開閉
動作をあらかじめ準備しご使用ください。
③ リードリレーのダイナミック特性
リードリレーに電流が流れた時に生じる現象には、一定の連続した動作が見られます。
これらの現象はリードリレーの種類には関係なく起こります。
接点の明細は下図のようになります。
ダイナミック特性の概要
動作時間
復帰時間
接点波形
コイル電圧
バウンス時間
コイル逆起電力
1.0mV
接点スパイクノイズ * *
0.1mV
0mV
-0.1mV
-1.0mV
ダイナミックノイズ*
*
ダイナミックノイズ は、
バウンス終了後においても発生している接点の摺動が主な要因で発生するノイズ
成分です。
* ダイナミックノイズ:接点が閉じた後は、ハープの弦を引っ張ったような減衰振動をしながらエネルギーを
消散します。減衰振動中は、接点の一部がストレスを受けて電気信号を発生します。
この電気信号は非常に広域の周波数レンジを持つ交流の可聴信号で減衰サイン波振動
を行いノイズの振幅と時間は以下に述べる条件に依存します。
・スプリングの強さ
・封止用ガラスの特性
・接点の材質
・コイルの駆動電力
** 接点スパイクノイズ:コイルに電圧印加を終息させた時点から、接点が離れようとする動作により発生する
ノイズ。 37
④ サージ吸収ダイオードの取り付け
コイルをドライブする場合、右図のように
コイルに並列にクランプダイオードを
取り付けてください。
(+)
(-)
⑤ コイルの逆起電力
電流が変化することによって誘導性回路に生じる電圧のことで、瞬時における誘起電力の極性は、印加電圧の
極性と逆向きになります。電流が変化しない直流通電中には生じない現象であるが、通電開始時や遮断時には
逆起電力が発生するので注意が必要です。
下図A点の電圧波形は、印加電圧の10倍もの大きさになることがあり、
リードリレー(コイル)をトランジスタで
ON/OFF制御する場合、
トランジスタの耐電圧(Vce)を超えて破壊に至ることがあります。
このため、
ダイオードを
リードリレー(コイル)並列に接続し、逆起電力を吸収する保護回路が有効です。
A点の電圧波形
+V
電圧
ダイオードD無し
ダイオードDあり
リレー
D
A
VF
+V(V)
Q
R
0(V)
時間
トランジスタQがオフ
ダイオードをつけた場合は、VF(ダイオード順方向電圧)の
影響で復帰時間が遅くなります。
⑥ Form C (A+B) メーク・ブレーク接点
Form C (A+B) 接点をご使用する場合は、何かしらの影響において接点が短絡接続すると三点接触がおこり
過電流が流れたり損傷するということが発生しますので、回路設計する場合にはご注意ください。
38
5. 動作・測定に関する解説
5-1) 接点接触抵抗
接点接触抵抗とは、可動片・端子・接点などの回路を構成する導体固有抵抗と接点が接触する部分
の抵抗値を合成した値をいいます。
接点接触抵抗値は初期値であり、この値の大小は実使用における良否を表すものではありません。また
接点接触抵抗の測定条件は、下図に示す電圧降下法(四端子法)にて測定電流(1mA)を通電します。
接点接触測定概略図
V
V
リレー
接点接触抵抗
=
V
[Ω]
I
I
A
電流計
V
電圧計
R
可変抵抗器
R
A
電源
5-2) 動作・復帰電圧
① 動作電圧
コイル電圧を急激に上昇または徐々に電圧を増加させたとき、全接点が動作する最低必要な電圧です。
② 復帰電圧
コイル電圧を急激に降下または徐々に電圧を減少させたとき、全接点が復帰する電圧です。
5-3) 動作時間
コイルに定格電圧を印加した時点から接点が閉じてバウンスが終了するまでの時間。
複数個の接点を持つリードリレーの場合には、他の規定がなければ一番遅い接点が閉じてバウンスが終了
するまでの時間になります。
5-4) 復帰時間
コイルから定格電圧を取り除いた時点から接点が復帰するまでの時間。
複数個の接点を持つリードリレーの場合には、他の規定がなければ一番遅い接点が復帰するまでの
時間になります。
動作復帰時間測定概略図
VCC
リレー
バウンス*
コイル波形
発信器
オシロスコープ
接点波形
Trig
動作時間
復帰時間
* バウンス: 接点の可動片が鉄心やバックストップへの衝突または接点相互の衝突によって生じる衝突振動などに
起因する接点間の間欠的開閉現象。
39
5-5) 静電容量
リードリレーには、各導体相互間に静電容量が発生します。
静電容量を測定の際における条件につきまして下記に記載します。
① 測定条件
バイアス電圧:1VDC
測定周波数:1MHz
静電容量測定概略図
Precision LCR Meter
L cur
L pot
H pot
H cur
G
Shield conductor
of the Test Leads
Relay
A
B
Guard Plate
静電容量測定時はシールドプレートより被測定物は浮かして実施。
② 測定方法
a) A,B点をリレーの測定する端子間距離で位置決めします。
b) LCR Meterのキャリブレーションを実施します。
c) A,B点をリレーに接続し静電容量を測定します。
(静電シールド付の場合には、端子をLCR MeterのGND端子と接続して静電容量を測定する)
5-6) 絶縁耐圧
接点・コイル間や導電部端子と(鉄芯枠、鉄芯のような)非充電金属部間、あるいは接点相互間の絶縁
された部分に電圧を1分間加えたときの絶縁破壊の起こらない限界値です。
試験条件は、放射線(光線やX線)の無い暗室環境でリーク電流(絶縁破壊を検出するための電流)は
1mAです。そして絶縁耐圧を測定する際において、高速な立ち上げ波形にて絶縁耐圧試験を実施している
ことが特徴です。(下記に絶縁耐圧試験を実施している際の電圧波形を示します。)
200V印加時における電圧波形例
オシロスコープ設定
電圧レンジ50V/1div
周波数レンジ1ms/1div
5-7) 絶縁抵抗
接点・コイル間や導電部端子と
(鉄芯枠、鉄芯のような)非充電金属部間、あるいは接点相互間の絶縁された
部分の抵抗をいいます。
この値はリレー単体における値で、基板のランドなどは含みません。
40
5-8) 高周波特性
弊社では、高周波特性の確認として主に下記の項目を評価をしています。
・ TDR(Time Domain Reflectometry)
・ TDT(Time Domain Transmission)
・ アイソレーション
・ インサーションロス
・ リターンロス
① 測定用基板
弊社では、以下のような基板を用い評価を行っております。なお、製品形状により基板の配線に関しましては
差異があります。
スルー基板(参考)
リレー実装用基板(参考)
伝送線路上の特性
インピーダンスは
50Ωとなっています。
A
2
A
A
2
基板仕様につきましては一例として記載しています。
② TDR/TDT
TDR測定は、
ステップ信号源と広帯域オシロスコープから
構成され、伝送路のインピーダンスの不連続点における
反射信号を捕らえ、反射信号の電圧値やインピーダンス値
を時間の関数として表示します。
また伝搬した伝送信号の
測定はTDTと呼ばれ、伝搬遅延測定に用いられます。反射や
遅延によって伝送信号はひずみを受けることから、直感的な
測定結果の表示が得られるTDR/TDTは測定不可欠な評価
項目です。
a) TDR測定概略
TDR測定概略図
ステップ信号源
サンプリングヘッド
50Ω終端
測定サンプル
50Ω同軸ケーブル
41
オシロスコープ
測定
サンプル
ステップ信号源
b) 測定方法
被測定対象物を測定装置に接続し、TDR信号源チャンネルから出力を開始すると広帯域オシロスコープ
の画面上に波形が現れます。その波形によって測定サンプルのインピーダンス状態を確認しています。
TDR測定波形の一例を下記に示します。
短絡終端
V
開放終端
TP
2TP
2V
Z0
0
整合終端
V
2TP
不整合終端
Z0
容量性負荷終端
ZL=Z0
V
ZL=C
Z0
ZL<>Z 0
2TP
V
TP
Z0
ZL=L
0
容量性負荷終端
2TP
誘導性負荷終端
TP
Z0
Z0
C
2TP
V
TP
Z0
L
Z0
0
0
誘導性と容量性負荷の組み合わせ
TP
V
TP
ZL>Z0
誘導性負荷終端
Z0
ZL=Open
ZL<Z0
0
TP
0
V
2TP
V+VR
V
2V
2TP
Z0
0
TP
0
2V
V
Z L=0
TP
2TP
2TP
Z0
容量性と誘導性負荷の組み合わせ
TP
L
C
0
Z0
V
0
c) TDT測定概略
TDT測定概略図
ステップ信号源
50Ω同軸ケーブル
サンプリングヘッド
測定サンプル
42
2TP
Z0
L
C
Z0
d) 測定方法
ステップ信号源から出力された電圧を測定サンプルに印加し、その透過波をモニタします。
TDT測定波形の一例を下記に示します。
遅延時間波形
立ち上がり時間(Rise Time)
90%
80%
透過波
透過波
50%
入射波
入射波
20%
10%
Tr(20-80)
Tr(10-90)
遅延時間
③アイソレーション
高周波信号の絶縁程度を表したものをいいます。
リレー接点が開時していても、浮遊容量起因にて高周波信号の漏れが発生します。
この漏れを抑制する
絶縁をアイソレーションといいます。
アイソレーション測定結果例を下記に示します。
アイソレーション測定サンプル
←良特性
周波数増加→
43
④ インサーションロス
伝送線路中(リレー閉時)における、高周波信号挿入損失のことをいいます。
被測定対象物の回路上インピーダンス不整合等による損失を表します。
インサーションロス測定サンプル
良特性→
周波数増加→
⑤ リターンロス
被測定対象物(リレー閉時)の反射のことをいいます。
伝送線路中の入射波は、インピーダンス不整合部分があると反射波が発生します。
インピーダンスが整合されていれば、反射の影響を受けません。
リターンロス測定サンプル
良特性→
周波数増加→
44
6. リードリレー・水銀リレーの品質について
リートリレー・水銀リレーは、次のフローチャートで品質管理を実施しています。
リードスイッチ
受入検査
リードスイッチ
信頼性テスト
製 造
エージング
動作・復帰AT、接点接触抵抗、絶縁耐圧、
絶縁抵抗、外観
12V 1mA負荷にて、100万回∼1千万回の品質管理
工程内検査(目視、コイル抵抗、絶縁耐圧)
専用エージング装置にて誤動作(スティック)
チェックのエージングを実施
有負荷・・・ 12V 1mA または 5V 1mAにて15万回
無負荷・・・ 30万回
特性検査
動作、復帰電圧(電流)、接触抵抗、動作時間、
ADT、絶縁耐圧を全数測定
外観検査
外形、フォーミング形状、寸法
出 荷
6-1) エージング(有負荷、無負荷)
接点となる部分には、
メッキが施されておりますが、
この仕上がり表面には細かい凹凸が無数に散在しています。
このままでは、接点接触抵抗が若干不安定になりますので、表面を平滑化し当たり面を安定化するために行い
ます。
(水銀リレーは除く)
6-2) ADT(アークデュレーションタイム)
ADTは、水銀スイッチの接点を開くときの放電持続時間です。
水銀スイッチ内には高圧ガスが封入されており、接点を開くときの放電持続時間は短くなります。
またスイッチ
内部のガスリークが起きると放電時間が長くなります。
ADTを実施することによりガスリーク発生品を初期的に、且つ効率よく取り除くことができます。
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