薬局における検体測定室の取り組み

営業企画
「かかりつけ薬局を目指して」
薬局における検体測定室の取り組み
― みどり薬局
2014 年 4 月から,薬局における自己採血検査が正式に認められるよ
坂口眞弓代表
●●●●●●●●●●●●●●
よって,
「あまり意識していなかった自分の生活習慣に
多 い と い う。 や は り「 費
気づき,測定値を見て,改めて生活習慣を見直すきっか
用」
「時間」
「マンパワー」
けになる」と坂口氏はいう。
の点がネックになっている
さらに,アンケートに記入してもらった受検者には 1
カ月後,実際に取り組み状況について改めて聞いてい
よ う で,
「今すぐは無理」
との回答が多い。
る。結果,
「家族の食事にも気を遣うようになった」な
ただ,他職種連携の意向
ど,具体的な行動に移している様子が分かるようになっ
を聞くと「管理栄養士と組
てくる。
んでやりたい」という意見
うになった。これまでグレーゾーンとされてきた薬局の取り組みが“診
坂口氏は「私たちが運動や食事の重要性などについ
が 圧 倒 的 で, 次 い で 看 護
療の用に供さない生化学検査を行う施設”として認知されたもの。実際
て,健康教室で話したことを理解してもらい,それが具
師,医師,ケアマネジャー
にはさまざまなシバリがあり,一部にはその効果を疑問視する向きもあ
体的な行動変容につながり,1 カ月後にも続けられてい
などだった。
「在宅までは
るが,検体測定室の届出数は着実に増えている。14 年度の厚生労働省
るとすれば,具体的な成果として評価できるのではない
無理だが,薬局内で地域生
予算で薬局薬剤師を活用した健康情報拠点推進事業が進められる中,検
かと思います」と語る。
活者の食事の相談に応じた
いと考える会員が多いので
体検査室の活用がその突破口となるかどうかに期待が集まる。
「測定室」ネックは費用,時間,マンパワー
健康教室の参加者は,比較的若いお母さん方が多いた
いち早く測定装置などを整備したみどり薬局
生活習慣チェックで行動変容を促す
店頭でのぼりを立てて告知
め,総じて測定値は良好な数値が出るが,それでも直ち
はないか」と坂口氏は受け止めている。
得意分野を活かして薬局機能を理解
に受診しなければならないような受検者もいる。HbA1c
薬局の健康管理機能について「薬局のあるべき機能と
の測定値が 6.0%を超えているような場合には,かかり
して掲げられている項目は多々あるが,地域薬局の場
まざまなシバリがかけられた。このため,
「手かせ足か
血糖など 8 項目があるが,これらをすべて揃えると 60 ∼
つけの医療機関などへの受診を勧める。その後,受験
合,1 薬局ですべてを備えるのは難しいのでは」と坂口
せのガイドラインが出され,実効性のないものになって
70 万円かかる。同薬局は,区内の基幹病院の研究助成
者に手紙を出して,医療機関を受診されたか,受診しな
氏は指摘する。
いる」
(日本チェーンドラッグストア協会・宗像事務総
金などに応募してこれに充てた。告知は,「血糖値測り
かった場合はその理由などを聞いている。
長)などの声も挙がっている。
ます」と書いたのぼりを立てているほか,健康教室の開
受診した場合は医療機関名,受診しなかった理由には
ション」
「調剤と専門特化したがん患者対応」など,「そ
催前にはホームページで広報し,来局者に呼びかけをし
「受診予定だがまだ行っていない」
「特に体調が悪くない
れぞれが得意な分野を活かして,それらを地域生活者や
から」
「運動・食事など自分で調整する」などの回答が
他職種に伝えていくことが重要」と話す。まずは薬局自
返ってくるが,中には再度,検査を受けにくる生活者も
らがそうした取り組みを地域に発信し,薬局機能につい
いるとか。
て理解してもらうことが重要ということである。
厚労省の「検体測定室に関するガイドラインでは,さ
このように順風とはいえない薬局における自己血液検
査だが,現場では,自主的に検体測定室を設置する動き
も徐々に増加している。みどり薬局(東京都・坂口眞弓
薬局での自己採血による測定項目は中性脂肪,HbA1c,
ている。
検査は,待合室に隣接した検体測定室で行うが,測定
そのため「調剤と在宅医療」
「調剤とセルフメディケー
代表)もそのひとつ。同薬局は,
OTC 薬・衛生材料販売,
前に HbA1c の意味や自己採血用針の使用方法について
在宅医療などにも積極的に取り組んでいる地域薬局で,
説明を受ける。自己採血針はカートリッジ仕様となって
肝心の医療機関の反応だが,ガイドラインを遵守して
また,他職種との連携に際しても,薬局薬剤師は何が
坂口氏は浅草薬剤師会の会長も務める。
おり,指先を消毒して,カートリッジ先端を指先に押し
いる限り,おおむね好意的に受け止められているよう
できるか,どのように取り組んでいるかを積極的にア
だ。
ピールすべきという。薬剤師会でもそうした場を積極的
「地域生活者の生活習慣病予防や健康管理のお手伝い
当てて採血する。測定時間は 1 人当たり約 6 分かかるが,
をしたい」と考えていた坂口氏は,13 年から知り合い
健康教室の参加者全員分が終えるまでの間,薬剤師と管
ただ,経営的には必ずしもプラスには作用していな
の管理栄養士に声をかけ,周辺の生活者を対象に 2 カ月
理栄養士がそれぞれ約 30 分,病気,薬剤や栄養摂取に
い。同薬局の場合も費用対効果でプラスになっているか
に 1 回の頻度で,薬局待合室でカフェスタイルの健康教
ついて話をするなど,測定時間を有効に使っている。
といえば「難しい」
(坂口氏)のが現状だ。受検者の費
厚労省の国民健康・栄養調査によると,生活習慣病の
に提供しており,積極的に参加して理解を深めて欲しい
と訴えている。
用は 800 円程度だが,アンケートに答えてくれた受検者
代表例ともいえる糖尿病が強く疑われる人や,その可能
に,坂口氏と管理栄養士が対話形式で進めるもの。参加
要受診の数値と一緒に渡す。薬局では測定値を見て「糖
には無料で測定しており,むしろ持ち出しになることが
性を否定できない人は全国で合計 2200 万人以上と推定
者は 1 回当たり 4 ∼ 5 人だが,糖尿病をテーマにした際
尿病ですね」などの説明はできないことになっているた
多い。しかし,薬局が身近な健康問題のファーストアク
され,糖尿病は既に国民病といっても過言ではない。薬
には 16 人もの参加者があったという。
め,あくまでも測定値と比較できる正常値や要注意値な
セスの場として活用してもらう上で,検体測定室は薬局
局段階で健康管理をすることで生活習慣病の予防や潜
どを記した用紙を渡すだけになる。
機能をアピールする 1 つのきっかけになるのではないか
在患者の発掘によって,早期に受診・治療が受けられる
と考えている。
状況をつくることで,健康寿命延伸が図られ,医療費軽
室に取り組んできた。糖尿病,血圧,貧血などをテーマ
14 年 4 月から薬局での自己採血検査が解禁になったこ
測定結果については,測定値のほか,正常値,要注意,
とを受けて,同薬局はいち早く脂質や HbA1c の測定装
それだけでは,単なる結果の伝達だけで終わってしま
置などを整備した。健康教室でも自分の検査値が分かる
うが,同薬局では,測定値が出るまでの間に日常的な生
現在,浅草薬剤師会管内で検体測定室を備えているの
減効果や薬局機能の再評価につながることは間違いな
ようになると,参加者の健康意識も高まるのではないか
活習慣に関するアンケートをお願いし,結果が出た段階
は同薬局だけ。坂口氏が会員の意向をアンケートで聞い
い。そうした薬局機能を多くの関係者に理解してもら
との思いだった。検体測定室は,厚労省医政局に届け出
で数値を受けて,今後どのように生活習慣を変えていく
たところ,
「当然の取り組みなのでいずれやりたい」
「ど
うためにも,薬局自らが一歩踏み出す行動変容が求めら
る必要があるが,同薬局は 24 番目の届け出だった。
かについて,行動目標を記入してもらっている。これに
うして取り組んだらよいのか分からない」などの回答が
れる。
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(0000) 調剤と情報 2015.3(Vol.00 No.00)
調剤と情報 2015.3(Vol.00 No.00)
3(0000)