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4.小児体位性頻脈症候群の心臓血管調節におけるバリエーション

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【日本語抄録】
小児体位性頻脈症候群の心臓血管調節におけるバリエーション
吉田誠司、田中英高、中尾亮太、岡本直之、梶浦貢、神原雪子、東佐保子、玉井浩
背景:起立性調節障害(OD)は思春期に好発する自律神経機能不全であり、起床困難、立
眩み、頭痛などの起立失調症状を主徴とする疾患であり、学校長期欠席者の約半数に伴う
とされている。OD には 4 つのサブタイプが報告されており、その中の一つに体位性頻脈症
候群(POTS)が存在する。POTS の特徴は、起立において血圧低下を伴わずに著しい心拍増
加と身体症状を認める。
POTS には、起立時に著明な心拍増加を呈する群と、そうでない群があることに我々は着目
した。前者を SI 群(心拍数増加 35bpm 以上)、後者を Su 群(心拍数増加 35bpm 未満かつ頻
拍 115bpm 以上)と定義し、この 2 群間の病態生理の相違を明らかにするため、起立ストレ
スに対する心血管系および自律神経系の反応を調べた。
対象と方法:2006 年 8 月から 2010 年 11 月までに起立時の症状を訴え大阪医科大学附属病
院を受診した 480 人のうち、日本小児心身医学会による POTS の診断基準を満たした 79 名
(男子 45 名、女子 34 名)、年齢 12~16 才(平均年齢男子 13.6±1.1 才、女子 13.6±0.1
才)を調査対象とした。また、健常児 38 名(男子 21 名、女子 17 名)、年齢 12~14 才(平
均年齢男子 13.5±0.8 才、女子 13.5±0.1 才)を対照群(Ct 群)とした。
対象者には能動的起立試験を行い、非侵襲的連続血圧測定装置にて起立前後の心電図 RR 間
隔、血圧、心係数、一回拍出係数を計測した。また、心電図 RR 間隔変動と血圧変動の周波
数解析から心血管系の自律神経機能評価を行った。心電図 RR 間隔変動の高周波成分
(HF;0.15-0.4Hz)(RR-HF)は心臓副交感神経機能、心電図 RR 間隔変動の低周波成分
(LF;0.04-0.15Hz)を高周波成分で除した値(RR-LF/HF)は心臓交感神経機能を反映する。
また、拡張期血圧の血圧変動の低周波成分(DBP-LF)は血管運動性交感神経機能を反映す
る。
結果:
心拍数、血圧;
起立中の心拍数は Su 群が最大であり(平均心拍数、SI 群 115±1bpm、Su 群 119±1bpm、Ct
群 88±1bpm)、心拍数増加は SI 群が最大であった(平均心拍数増加、SI 群 41±1bpm、Su
群 27±1bpm、Ct 群 18±1bpm)。起立に伴う収縮期血圧の低下は Su 群が最大であった。(平
均収縮期血圧変化、SI 群-0.5±1.0mmHg、Su 群-5.8±1.6mmHg、Ct 群+5.4±1.4mmHg)
心係数;立位に伴う心係数の低下は Su 群が SI 群よりも有意に大きかった。
心拍変動周波数解析;
臥位の RR-HF は SI 群と Ct 群で有意差はなく Su 群は有意に低下していた(平均 RR-HF、SI
群 980±152mSec2、Su 群 250±51mSec2、Ct 群 1097±166mSec2)。起立時には Su 群と SI 群が
Ct 群よりも有意に低下していた(平均 RR-HF 変化比、SI 群 0.19±0.05 倍、Su 群 0.26±0.04
倍、Ct 群 0.29±0.03 倍)
。
臥位の RR-LF/HF は Su 群が最大であり、SI 群と Ct 群では有意差がなく、起立時は 3 群とも
同程度に低下していた。
血圧変動周波数解析;
臥位の DBP-LF は SI 群が有意に低く、起立時の DBP-LF の変化は SI 群、Su 群とも有意差を
認めなかった(平均 DBP-LF 変化比、SI 群 2.55±0.21 倍、Su 群 1.85±0.24 倍、Ct 群 1.95
±0.26 倍)。
考察:
健常者の起立時の血行動態について;
起立時に胸腔から下半身へ 500ml 以上の血液が移動するなど体内の血液分布の変化により
一回拍出量の低下に伴う血圧低下が起こる。この血圧変化に対し、即座に反応する 2 つの
血圧維持機能(高圧系・低圧系)が存在する。高圧系圧受容器反射は、頸動脈洞と動脈弓
に存在する機械刺激受容器が動脈圧の変化を感知する。低圧系圧受容器反射は、心房、肺
静脈に存在する心肺圧受容器により、高圧系が反応しない循環血液量の変化に伴う小さな
血圧変化に対しても反応する。
POTS の起立時の血行動態について;
POTS における過剰な心拍数増加は、静脈還流量の減少に伴う低圧系圧受容器反射の影響が
大きい。高圧系圧受容器反射による影響も存在するが、POTS は起立中に血圧低下を認めな
いことから、低圧系の影響よりは小さいと考えられている。
本研究にて新たに分類した POTS の 2 群(SI 群、Su 群)では、心拍変動と血圧変動の周波
数解析により血行動態と自律神経機能の相違を明らかにした。自律神経機能による POTS の
分類は本研究が初めてである。
SI 群の特徴;
SI 群は起立時に RR-HF が著明に低下するが、これは静脈還流量減少に伴う低圧系圧受容器
反射を介した迷走神経活動の低下によるものと考える。
SI 群の臥位での DBP-LF は Ct 群よりも低値であるが、これは臥位血圧が Ct 群よりも高値で
あり、高圧系圧受容器反射により血管運動性交感神経活動が低下した結果と考える。SI 群
で臥位血圧が高い理由は不明であるが、レニン・アンギオテンシン系など他の血圧調整機
構の関与も考慮される。
SI 群は臥位での心臓自律神経機能(RR-HF、RR-LF/HF)は Ct 群と有意差がなく、基本的な
心臓自律神経機能は正常である。このことは Su 群との重要な相違点である。
Su 群の特徴;
Su 群は SI 群と比較し、臥位で RR-HF 低値、RR-LF/HF 高値となっているが、これは迷走神
経活動が抑制され、心臓交感神経活動が優位となっていることを示している。Su 群の迷走
神経活動の抑制は、循環血液量減少による右心房および大静脈の内腔圧の低下に伴う低圧
系圧受容器反射の不活性化によるものと考えられる。
起立時の心拍数増加は Su 群が SI 群よりも小さく、血圧低下は Su 群の方が大きい。しかし
Su 群は血圧低下が大きいにも関わらず、交感神経機能に関しては心臓交感神経活動の増加
は SI 群よりも小さく、血管運動性交感神経活動の増加は SI 群と変わらない。これは、Su
群は循環血液量が少なく、臥位で既に交感神経活動が亢進しているため、起立時の代償性
の交感神経活動が不十分なためと考える。
結論:本研究は POTS において血行動態のことなるバリエーション(Su 群と SI 群)の存在
を示したが、臥位での自律神経機能のバランスと、起立時の血行動態の反応に相違が認め
られた。今後はこれらの特徴を踏まえた治療法の開発に役立てたい。
Variant cardiovascular regulation in children with postural tachycardia syndrome.
Yoshida S1, Tanaka H, Nakao R, Okamoto N, Kajiura M, Kanbara Y, Azuma S, Tamai H.
Pediatr Int. 2014 Jun;56(3):328-35. doi: 10.1111/ped.12284.
Abstract
BACKGROUND:
Postural tachycardia syndrome (POTS) manifests as marked tachycardia while standing.
We noticed two forms of circulatory response to orthostatic stress in POTS. We
investigated cardiovascular and autonomic nervous response to orthostatic stress in
the two forms.
METHODS:
We studied 79 patients with POTS and 38 healthy control subjects (Ct). Beat-to-beat
blood pressure (BP) and heart rate (HR) were non-invasively and continuously measured
in the supine and standing positions. Autonomic nervous function was evaluated on
power spectral analysis of HR variability and diastolic BP variability. We divided
the subjects into two groups: standing-induced tachycardia (SI group; increase in
HR ≥35 beats/min) and supine tachycardia (Su group; standing HR ≥115 beats/min with
standing-induced HR increase <35 beats/min).
RESULTS:
The Su group had higher supine BP and HR compared with the other groups, indicating
dominant sympathetic control of the heart in the supine position. While rising, the
SI group had a higher increase in HR than the Ct group, indicating excessive withdrawal
of vagal tone. The Su group had a smaller increase in HR and a greater decrease of
systolic BP and cardiac index by standing compared with the SI group. These results
suggest that compensatory mechanisms of sympathetic function during standing failed
in the Su group, probably because of exhaustion by the nearly maximum effort to
generate sympathetic drive even in the supine position with low central blood volume.
CONCLUSION:
There is a difference between the two types of POTS, in the balance of resting autonomic
function and hemodynamic response to standing.
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