「千葉市における特別支援教育の在り方について」の現状と課題

平成26年3月
千 葉 市 に お け る 特 別 支 援 教 育 の 在 り 方 に 関 す る 検 討 会 議 「 答 申 」( 平 成 2 0 年 3 月 )
を受けて
「千葉市における特別支援教育の在り方について」の現状と課題
は じ め に
【特別支援教育の理念】
特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主
体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的
ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克
服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである。
また、特別支援教育は、これまでの特別支援教育の対象の障害だけでな
く、知的な遅れのない発達障害も含めて、特別な支援を必要とする幼児児
童生徒が在籍する全ての学校において実施されるものである。
さらに、特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒への教育にとどまら
ず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、様々な人々が生き生
きと活躍できる共生社会の形成の基盤となるものであり、我が国の現在及
び将来の社会にとって重要な意味をもっている。
本市では、平成16年度に「千葉市における特別支援教育の在り方に関する 検
討会議」を設置した。特別支援教育の推進の施策を打ち出し、現状及び課題を明
確にし、将来にわたり本市特別支援教育の長期的展望に向けた検討を行い、平成
20年3月にその答申を受けた。
Ⅰ
特別支援教育推進のための体制整備の在り方
Ⅱ
特別支援学級と通級指導教室の在り方
Ⅲ
市立特別支援学校の在り方
Ⅳ
就学指導の在り方
Ⅴ
教職員の資質の向上
平成21 年度より特別支援教育推進会議を設置し、特別支援教育の推進に計画
的に取り組んでいるところである。それぞれの課題についての現状と課題を整理
し、さらなる推進を図っている。
本年度は、現時点における特別支援教育の現状と課題を整理するために、 ワーキ
ンググループ会議を設置して答申の見直しを行った。
-1-
Ⅰ
1
特別支援教育推進のための体制整備の在り方
特殊教育から特別支援教育への移行
特別支援学校や小中学校における特別支援教育体制整備
(1)特別支援学校
センター的機能の充実を図るため、コーディネーター(地域支援担当)が中心
となって取り組んでいる。
市立養護学校
・小中高等学校からの相談(就学、進路、実態把
握 等 )、 訪 問 支 援 、 研 修 会 の 講 師 等
・就学に関わる相談、小中学校からの相談、幼・
市立第二養護学校
市立高等特別支援学校
保を含めた研修会の開催
・入学に関わる相談、職場見学や職場実習及び就
労等に関する企業との連携
(2)小中学校
①特別支援教育コーディネーターを中心とした校内委員会の実施
②実態把握、個別の指導計画・個別の教育支援計画の作成と活用
③特別支援教育に関する教職員研修の実施等、校内支援体制の整備
④養護教育センターを含めた関係機関との連携
2
LD等の発達障害児童生徒に対する特別支援教育の体制づくり
(1)養護教育センターを中心とした早期教育相談体制の整備
(2)特別支援教育コーディネーター研修の充実(養護教育センター)
(3)校内支援体制の構築
(4)特別支援教育指導員・学校訪問相談員派遣(養 護教育センター)
(5)LD等通級指導教室の設置(現在小学校は6校、 中学校は2校設置)
3
特別支援教育推進における今後の課題
(1)養護教育センターを中心とした千葉市の特別支援教育体制の構築
養 護 教 育 セ ン タ ー で は 、通 常 の 学 級 に 在 籍 す る 発 達 障 害 の 児 童 生 徒 に 対 し て 、
特別支援教育指導員を配置する事業を行っている。また、学校訪問相談員を置
き、学校からの様々な要請に応じた対応を行っている。本年度、答申に示され
ていた「千葉市の特別支援教育の組織体制」の図の見直しを行った。
(2)特別支援教育連携協議会について
養 護 教 育 セ ン タ ー で は 、千 葉 市 内 の 県 立 及 び 市 立 特 別 支 援 学 校 と 指 導 課 、養 護
教 育 セ ン タ ー に よ る 教 育 相 談 連 携 会 議 を 行 っ て い る 。ま た 、療 育 セ ン タ ー と の 連
絡会議も定期的に実施している。
特 別 支 援 教 育 連 携 協 議 会 の 設 置 に つ い て は 、特 別 支 援 教 育 推 進 会 議 の ワ ー キ ン
グ グ ル ー プ 会 議 で 検 討 し た 。障 害 が あ る 人 の 生 涯 を 見 通 し た 支 援 体 制 を 整 え る た
めには、今後も設置に向けて検討する必要がある。
-2-
Ⅱ
1
特別支援学級と通級指導教室の在り方
特別支援学級・通級指導教室の現状
特 別 支 援 学 級 及 び 通 級 指 導 教 室 の 設 置 を 考 え て い く 上 で 、「 で き る だ け 児 童 生 徒 の
居住地または近隣で、必要な教育的サービスが受けられるようにする」という方針
に基づき、必要に応じて特別支援学級を設置している 。学区は、居住区が基本であ
り、未設置の場合には最寄りの学校とする。
平成23年度より「千葉市特別支援学級・通級指導教室設置検討会議」を 設け、
設置の在り方(配置や開設等)について検討することになった。平成19年度当時
の設置率は38%であったが、今年度は63%に増加した。現在、知的障害学級は
小学校68校、中学校28校に、自閉症・情緒障害学級は、小学校33校、中学校
16校に設置されている。
設置の要件は、
①対象児童生徒の在籍
②保護者や学校からの設置要望
③教室等の環境整備
④教員の配置、としている。
な お 、こ と ば の 教 室・き こ え の 教 室 、L D 等 の 通 級 指 導 教 室 の 設 置 に あ た っ て は 、
市内全体のバランスを考え、各行政区に適宜設置してきている。また、昨年度から
言語の巡回指導を 1 校で実施している。
【ことばの教室・きこえの教室】
通称
ことばの
教室
正式名称
設
置
登戸小、院内小、松ケ丘小、幸町第二
言語障害特別支援学級
小、千城台北小
検見川小、土気小、山王小、あやめ台
言語障害通級指導教室
小、誉田東小、幕張小、花見川第三小
きこえの
難聴特別支援学級
院内小、幸町第二小
教室
難聴通級指導教室
誉田東小
【LD等通級指導教室】
※(
小
中 央 区
鶴
学
花見川区
花 見 川 第 三 小( H14) 緑
校
稲 毛 区
あ や め 台 小( H18) 美 浜 区
中学校
校
沢
小( H20) 若 葉 区
花 見 川 第 二 中 ( H20)
区
小
誉
)は設置年度
倉
田
小( H19)
東
小( H19)
高 浜 海 浜 小( H18)
末 広 中 ( H24)
病院内学級(病弱)は、千葉市では市立海浜病院と独立行政法人千葉医療センタ
ーに学級がある。その他の病院に入院した場合は、県立仁戸名特別支 援学校の職員
による訪問教育を受けることができる。
-3-
2
特別支援学級等設置に係る課題
(1)今後も、必要に応じて学級の設置要件を踏まえ総合的に検討していく。
( 2 ) こ と ば の 教 室 ・ き こ え の 教 室 は 、「 学 級 」 と 「 教 室 」 の 2 つ の 形 態 が あ り 、 対
象の児童数や手続きが異なることから、検討が必要である。
(3)設置率の向上に伴い、担当教員の確保や専門性の向上が喫緊の課題で ある。
(4)LD等発達障害児童生徒に対応できるよう、自閉症・情緒障害 特別支援学級
の教育課程を編成する。
(5)特別支援学級・通級指導教室の施設や備品等の整備を図る。
Ⅲ
1
市立特別支援学校の在り方
市立高等特別支援学校の開校
高等部の生徒の増加への対応や卒業後の社会自立を目指した指導の充実に向け、
「学校教育推進計画」に位置付け取り組んできた。その結果、 旧真砂第二小学校跡
施設に、平成25年4月千葉市立高等特別支援学校が開校した。
併せて教室不足の改善の観点から、市立養護学校のCコースに学ぶ生徒で希望す
る 生 徒 を 対 象 に 、 千 葉 市 立 養 護 学 校 真 砂 分 校 を 設 置 し た 。( 平 成 2 7 年 3 月 ま で )
2
高等部の進路指導
現在、市立養護学校では、就労に向けて一人一人の興味や特性等を踏まえ、作業
学 習 や 職 場 実 習 を 計 画 的 に 実 施 し て い る 。就 労 後 の フ ォ ロ ー ア ッ プ も 丁 寧 に 行 わ れ 、
定着が図られている。
高等特別支援学校は、社会自立、職業自立を目指し、職業教育に重点をおいた教
育課程を編成し、作業学習を中心に取り組んでいる。卒業後に企業に就労すること
を目指しており、企業からの教材の提供や職場見学等の協力を得て学習を行ってい
る。
本年度、生徒の障害理解や雇用の機会拡大を目的とした「千葉市立特別支援学校
応援企業登録制度実施要綱」を定め、企業等との連携を強化する取組 を行った。
このほか、昨年度に高等特別支援学校開設準備室と障害企画課及び指導課で行っ
て い た「 連 携 会 議 」は「 就 労 支 援 会 議 」と な り 、高 等 特 別 支 援 学 校 と 市 立 養 護 学 校 、
障 害 企 画 課 及 び 指 導 課 で 開 催 し た ( 6 月 )。 今 後 と も 関 係 機 関 と 連 携 し て 、 就 労 先 の
確保や社会自立に向けた就労支援を行う。
3
センター的機能の充実
幼児期から高等部卒業後までの相談・支援体制が課題となっていたが、養護教育
セ ン タ ー や 発 達 障 害 者 支 援 セ ン タ ー に よ る 相 談 ・ 支 援 に 加 え て 、「 Ⅰ 」 で も 示 し た よ
うに、市立特別支援学校でもセンター的機能が充実してきている。
また、養護教育センターとの連携を図り、就学前や小中学校のそれぞれの段階に
おいて連携を広げている。
-4-
4
交流及び共同学習の充実
近隣の小中高等学校との学校間交流は、長年継続して行 っている。また、特別支
援学校の児童生徒が居住地の小中学校の児童生徒と共に活動する「居住地校交流」
も年々増え、交流及び共同学習が計画的に実践さ れている。双方の子供たちがお互
いに理解し合い、社会性や豊かな人間性を育成する上で重要であることから、今後
も積極的に推進していく。
5
トータルビジョンについての課題
・千葉市の3区(稲毛、美浜、花見川)が学区となる県立千葉特別支援学校につい
ては、県教育委員会や学校との連携を図っていく。
・市立養護学校と第二養護学校の通学時における児童生徒の負担軽減については、
スクールバス運行の在り方を含め検討が必要である。
・市立養護学校と第二養護学校の校名変更については、長期的展望で検討を継続す
る。
Ⅳ
1
就学指導の在り方
就学指導委員会
特別支援学級や特別支援学校及び通級指導教室での指導を希望す る場合は、就学
指 導 委 員 会 で の 判 断 が 必 要 と な る 。就 学 相 談 は 主 に 養 護 教 育 セ ン タ ー で 行 っ て い る 。
保護者に対しては、就学に関する的確な情報提供をしたうえで、本人及び保護者の
意向を尊重して就学相談を進めている。特別支援学校のセンター的機能として、特
別支援学校でも相談を行っている。
LD等通級指導教室への通級については、就学指導委員会で審議され、通級の必
要性の有無や個々に応じた指導の在り方について検討している。
学校教育法施行令の一部改正(平成25年9月)を踏まえた就学指導委員会の役
割 と 機 能 に つ い て 、ま た 、審 議 件 数 の 増 加 へ の 対 応 に つ い て も 検 討 す る 必 要 が あ る 。
2
早期からの発達相談・就学相談の充実
療 育 セ ン タ ー や 大 宮 学 園 に お け る 早 期 か ら の 相 談 や 療 育 、 幼 稚 園 や 保 育 所 ( 園 )、
養護教育センター、発達障害者支援センター等の関係機関との連携が推進されてい
る。
就学後も必要に応じて状況等をきめ細かく観察し、弾力的 な対応や十分なフォロ
ーアップができるようにすることが大切と考える。
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Ⅴ
1
教職員の資質の向上
教員全体の理解推進に向けて
養護教育センターでは、ライフステージに応じた基本研修や専門研修、特別支援
教育コーディネーター研修等を実施している他、校内研修や指導法向上に活用でき
る手引書を作成している。
校 内 で は 、特 別 支 援 教 育 コ ー デ ィ ネ ー タ ー を 中 心 に 、校 内 委 員 会 が 開 催 さ れ た り 、
研修会を計画して実施したりしている。
特別支援教育の推進のためには、全ての教職員が特別支援教育の考え方やLD等
を含む障害のある児童生徒に対する理解を深めるとともに、支援に関わる一員であ
ることの意識を高める必要がある。そのためには、初任者研修や階層別研修及び管
理職研修等において、特別支援教育の内容を組み込み、教職員全体の資質向上を図
っていく必要がある。
2
特別支援教育担当者の専門性向上に向けて
特別支援教育は、通常の学級を含めた教育活動全体に関わるので、全ての 教職員
の課題として意識していく必要がある。特に、特別支援学級及び通級指導教室担当
者については、専門性の向上を図ることが課題である。平成24年度より市内全て
の特別支援学級・通級指導教室担当者を対象に、年2回の悉皆研修を開始した。養
護教育センターの研修講座も併せて活用することを勧める。
さらに、各学校では、特別支援教育担当者が安心して自信をもって指導できるよ
う、校内支援体制を構築し、指導・支援することが重要である。
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