GC/MSによる微生物培養液の成分分析

GC Technical Note
89
GC/MSによる微生物培養液の成分分析
GL Sciences Inc.
トリメチルシリル(trimethylsilyl, TMS)誘導体化を用いたGC/MSによるメタボロミクスは,アミノ酸,有
機酸,糖などの親水性低分子成分を幅広く測定できる方法として広く利用されています。今回はその手
法を用いて微生物培養液の成分分析を行いましたので報告いたします。網羅的に分析することで、培
地成分だけではなく、微生物により生産された成分の検出も可能になります。
化合物のピーク同定は、GCテクニカルノートNo.81でご紹介いたしましたInertCap 5MS/NPのメタボ
ロミクスにおけるGC/MS代謝物ライブラリーの保持指標とマススペクトルを用いて行っています。
試料と前処理の手順
成分
Glucose
Peptone
Yeast extract
試料は酵母の培養に使用される半合成培地のYPD
培地を用いました。
YPD培地の組成と濃度は右表のとおりで、グルコース、
ペプトン、酵母エキスを調製します。
前処理方法を下のフローに示しました。
濃度
20 g/L
20 g/L
10 g/L
試料100 μL
900 μL メタノール/水/クロロホルム(5/2/2, v/v/v)
内標準物質
混合
遠心分離(16000 g, 4 ºC, 5 min)
上澄み液 600 μLを別のマイクロチューブに採取
遠心濃縮(Room Temp., 60 min)
凍結乾燥(Over night)
100 μL メトキシアミン塩酸塩(20 mg/mL, ピリジン溶液)
振とう(30 ºC, 90 min)
50 μL MSTFA (Cat.No. 1022-11061)
振とう(37 ºC, 30 min)
バイアルに移す
GC/MS
サンプル量が少ないので、
インサート一体型バイアル
を使用すると便利です。
MSTFA(Cat.No. 1022-11061)は1 gのアンプル封
入(10本入り)になっています。アンプルには切れ込
みが入っているので、カッターを使用せずそのまま手
であけることが可能です。
また、一般的に、シリル化は水の存在により反応が
進みづらい場合がありますので、使い切りをお勧め
します。
インサート一体型バイアル
Cat.No. 1030-51028
セプタム一体型キャップ
Cat.No. 1030-51227
バックナンバーやアプリケーション検索はこちらから・・・
http://www.gls.co.jp/gc.html
GL Sciences GC Technical Note
GC/MS測定
GC/MS測定条件と得られたクロマトグラムを下に示します。
測定条件
装置
キャピラリーカラム
試料導入法
気化室温度
カラムオーブン温度
キ リヤ ガ
キャリヤーガス
セプタムパージ流量
スプリット比
インターフェイス温度
イオン源温度
測定モ ド
測定モード
試料導入量
: GC-MS
: InertCap 5MS/NP 0.25 mm I.D. × 30 m df = 0.25 µm (Cat.No. 1010-18642)
: スプリット 75 kPa 圧力一定
: 230 ºC
: 80 ºC(2 min) - 15 ºC /min - 330 ºC(13 min)
: ヘリウム
リウム
: 5 mL/min
: 25:1
: 250 ºC
: 200 ºC
: Scan
S
m/z
/ = 85~500
85 500
ピーク同定は保持指標とマススペクトルを利用しており、InertCapの代謝
: 1 μL
物ライブラリー(GCテクニカルノートNo.81)とNISTを用いて行っています。
カラムへ導入した成分がカラムの試料負荷容量を超えるときは、サンプル
を希釈するなど試料導入量をご検討ください。
(x10,000,000)
2.0 TIC
53
48 52 55
20,21
1.5
37
14,15
13
4
31,32
31
32
33,34,35
25
1.0
17,18
9
0 0
0.0
5.0
23
56
6.0
8
11
10 1216
7.0
19
22 24 26 28
23
8.0
57
27
40
7
49
38,39
0.5
1
68
51 54
9.0
2930
10.0
36
11.0
50
41(I.S.)
45 4647
43
42 44
12.0
13.0
56
59
61
58
14.0
63
60
64
62
15.0
16.0
65
17.0
66
18.0
67
19.0
20.0
GL Sciences GC Technical Note
Peak No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
Compound_Name * R.T.(min) Peak No.
Lactic acid_0_2
5.130
35
Glycolic acid_0_2
5.293
36
Valine_0_1
5.423
37
Alanine_0_2
5.645
38
Glycine_0_2
5.827
39
Oxalic acid_0_2
5.953
40
Leucine_0_1
6.233
41
Isoleucine_0_1
6.485
42
Valine_0_2
6.975
43
Urea_0_2
7.123
44
Serine_0_2
7.398
45
2-Aminoethanol_0_3
7.540
46
Leucine_0_2
7.582
47
Phosphoric acid_0_3
7.605
48
Glycerol_0_3
7.608
49
Nicotinic acid_0_1
7.767
50
Threonine_0_2
7.813
51
Isoleucine_0_2
7.820
52
Proline_0_2
7.865
53
Succinic acid_0_2
7.967
54
Glycine_0_3
7.972
55
Glyceric acid_0_3
8.202
56
Uracil_0_2
8.263
57
Fumaric acid_0_2
8.282
58
Serine_0_3
8.505
59
Alanine_0_3
8.522
60
Threonine_0_3
8.783
61
Thymine_0_2
8.900
62
Nicotinamide_0_1
9.593
63
Malic acid_0_3
9.712
64
Methionine_0_2
10.008
65
Aspartic acid_0_3
10.010
66
Hydroxyproline_0_3
10.042
67
Pyroglutamic acid_0_2 10.043
68
Compound_Name *
R.T.(min)
4-Aminobutyric acid_0_3
10.052
Alanylalanine_0_2
10.732
Glutamic acid_0_3
10.865
Pipecolic acid_0_2
10.970
Phenylalanine_0_2
10.975
Asparagine_0_3
11.308
Ribitol_0_5
11.853
Putrescine_0_4
11.908
Unknown_Sugar phosphate like
12.077
o-Phosphoethanolamine_0_4
12.257
Hypoxanthine_0_2
12.383
Isocitric acid_0_3 + Citric acid_0_3 12.522
Methionine sulfoxide
12.797
13.015
Unknown_Sugar like
Unknown_Sugar like
13.087
Unknown_Sugar like
13.145
Glucose_1_5
13.254
Histidine_0_3
13.285
Lysine_0_4
13.295
Glucose_1_5
13.388
Tyrosine_0_3
13.415
13.582
Unknown_Sugar like
Unknown_Sugar like
13.703
Xanthine_0_3
13.953
14.083
Unknown_Sugar like
Hydroxylysine
14.385
Inositol_0_6
14.587
Guanine_0_3
14.662
Tryptophan__0_3
15.335
Uridine_0_4
16.680
Inosine
17.377
Adenosine
17.720
Guanosine
18.437
Trehalose
18.488
* Compound Name_メトキシ基の数_TMSの数
培養液の種類・試料量によっては誘導体化が進みづらい場合があります。
その場合は、試料を希釈してご検討ください。
今回の試料は大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻 福崎英一郎先生、馬場健史先生
からご提供いただきました。
GL Sciences GC Technical Note
化合物の同定には、ピークの自動同定が可能なAIoutput*を利用することもできます。
AIoutput とAIoutputで利用できるInertCap 5MS/NPのライブラリー(保持指標とマススペクトル
情報を含む)は下記のリンクからダウンロード出来ます。保持指標の算出には炭化水素混合試
料を用いると便利です。 (http://prime.psc.riken.jp/)
*AIoutputは自動ピーク同定から多変量解析までをサポートしているフリーのソフトウェアです。
製品名: 炭化水素混合試料 C9~C40 in n-Hexane
容量: 1 mL
成分及び濃度: 各50 μg/mL ※C10,C20,C30,C40は各100 μg/mL
荷姿: アンプル
付属品: バイアル(1アンプルにつき1本, アンプル開封後の保管にご使用ください。)
C20
C10
測定条件
装置
: GC-FID
キャピラリーカラム : InertCap 5MS/NP
0.25 mm I.D.×30 m, df = 0.25 μm
試料導入法
: Split 120 kPa
気化室温度
: 230ºC
オーブン温度
: 100 ºC(2 min) – 20 ºC/min – 330 ºC(17 min hold)
キャリヤーガス
: ヘリウム
スプリット流量
: 25 mL/min
検出器温度
: 330 ºC
試料導入量
: 1 μL
C30
C40
0
10
30 (min)
20
製 品 名
炭化水素混合試料 C9~C40 in C6 [冷蔵]
Cat.No.
容量
1 mL
1021-58321
1 mL ×5 1021-58325
ジーエルサイエンスでは、分析ノウハウときめこまやかなフォローもお付けしたシステム提案を行っております。
お近くの営業所や カスタマーサポートセンター までお気軽にお問い合わせください。
データに起因し、直接的または間接的に生じたいかなる損害に対しましても、当社が責任を負うものではありません。
また、記載事項につきましては、予告無しに改訂する場合がありますので、あらかじめご了承ください。
ホームページはこちらから・・・
http://www.gls.co.jp/gc.html
〒163-1130
東京都新宿区西新宿6丁目22番1号 新宿スクエアタワー30F
TEL.03(5323)6611 FAX.03(5323)6622
TEL.03(5323)6611
TEL.06(6357)5060
TEL.045(985)7900
TEL.024(534)2191
TEL.029(858)3700
TEL.043(248)2441
TEL.048(667)1611
TEL.052(931)1761
TEL.082(233)1101
TEL.092(738)6633
F A X. 0 3 ( 5 3 2 3 ) 6 6 2 2
F A X. 0 6 ( 6 3 5 7 ) 4 5 8 0
F A X. 0 4 5 ( 9 8 5 ) 7 9 0 1
F A X. 0 2 4 ( 5 3 6 ) 1 5 1 8
F A X. 0 2 9 ( 8 5 8 ) 3 7 8 0
F A X. 0 4 3 ( 2 4 8 ) 2 4 8 5
F A X. 0 4 8 ( 6 6 7 ) 1 6 5 6
F A X. 0 5 2 ( 9 3 1 ) 1 8 1 4
F A X. 0 8 2 ( 2 3 3 ) 1 1 1 0
F A X. 0 9 2 ( 7 3 8 ) 6 6 3 6
カスタマーサポートセンター T E L . 0 4 ( 2 9 3 4 ) 1 1 0 0
F A X. 0 4 ( 2 9 3 4 ) 3 3 6 1
東
大
横
東
筑
千
北
名
広
九
京 営 業
阪
支
浜
支
北 営 業
波 営 業
葉 営 業
関 東 営 業
古 屋 営 業
島 営 業
州 営 業
部
店
店
所
所
所
所
所
所
所
ジーエルサイエンス GC テクニカルノート