画像診断の基礎(1): X線写真・CT

画像診断の原理(3):
X線写真・CT
放射線医学講座 有泉光子
本日のテーマ
 放射線診断から画像診断へ
 X線の発生
 X線検査撮影の基礎
 原理
 種類
 コンピュータ断層撮影(CT)の基礎
 原理
 特徴:X線検査と対比して
 医療被曝
本日のテーマ
 放射線診断から画像診断へ
 X線の発生
 X線検査撮影の基礎
 原理
 種類
 コンピュータ断層撮影(CT)の基礎
 原理
 特徴:X線検査と対比して
 医療被曝
放射線診断から画像診断へ

放射線診断
電磁放射線(X線、γ線)を用いて人体の内部構造
を画像化し、病変の有無や病変の性質を診断する
方法

画像診断
近年、電磁放射線を使わない超音波検査や磁気
共鳴画像(MRI)を含めた総称として、画像診断と
呼ぶ
画像診断の歴史(1)
1895年:
1896年:
1895年:
1927年:
1946年:
W.C.RoentogenによるX線の発見
Becquerelによる放射能の発見
Curie夫妻によるラジウムの発見
造影剤を用いた頸動脈造影を施行
BlockとPurcellによる核磁気共鳴
原理の発見
1950年代:超音波の臨床応用
シンチレーションカメラの開発
X線を発見したレントゲン博士
• 正体のわからないものをX線と名付けた。
• X線検査とレントゲン検査はほぼ同義
1896年1月23日撮影
Wilhelm Conrad Röntgen博士
画像診断の歴史(2)
1953年 :Seldinger法(血管造影法)の開発
1972年 :HounsfieldによるCTの発明
1973年 :MansfieldとLauterburによる
磁気共鳴画像の作成
1980年代:磁気共鳴画像(MRI)の臨床応用
超音波カラードプラ法の発明
1990年代:ヘリカルCTの開発、PETの臨床応用
2000年代:多列CT(MDCT)の開発
画像診断:過去、現在、未来
過去:X線フィルムをシャウカステンで観察
現在:単純X線写真、血管造影のデジタル化
CT.MRI.超音波検査の3次元表示
フィルムレス
未来:コンピュータ支援診断
さらに新しい画像診診断法が出現?
本日のテーマ
 放射線診断から画像診断へ
 X線の発生
 X線検査撮影の基礎
 原理
 種類
 コンピュータ断層撮影(CT)の基礎
 原理
 特徴:X線検査と対比して
 医療被曝
放射線の種類
放射線:空間、物質を透過してエネルギーを伝え
る性質をもつもの。
放射線の種類:
X線、γ 線
(波長10⁻12~-8m)
β 線(電子)
α 線(He原子核)
陽子線
中性子線
重粒子線
非電離放射線 紫外線、可視光線、赤外線など
電離放射線
電磁波
粒子線
X線と物質の相互作用
1. 光電効果
光電効果
相互作用
光電子
入射X線
特性X線
X線が軌道電子にエネルギーを与え軌道
電子から光電子が飛び出す現象。
X線はすべてのエネルギーを軌道電子に
与えて消滅。光電子が飛び出した後(電
離)、外殻電子が内殻に落ちるときに、X線
が発生
二次放射線 特性X線→散乱線に
臨床的意義 • 原子番号の3乗に比例。
• 低エネルギーほど起こりやすい。
• 電離作用→生体反応
(飛び出した電子は物
質に吸収される)
X線と物質の相互作用
2. コンプトン効果
コンプトン効果
X線が、そのエネルギーの一部を自由電
子に与え、はじき出し(電離)、そのエネル
ギーを失って方向を変えて散乱する現象
入射X線
相互作用
散乱X線
二時放射線 散乱X線
臨床的意義 物質の密度に比例
高エネルギーほど起こりやすい。
電離作用→生体反応(飛
び出した電子は物質に吸
収される)
X線の発生
 X線は波長の短い、すなわちエネルギーが大き
い電磁波
 X線管球(真空の陰極管)でX線を作る
 X線装置は放射線発生装置の一種
X線管球
X線撮影装置
X線管球の構造
-
高電圧
電子線
X線
+
撮影条件の3要素
 管電圧(kV):
X線の線質を決定。高圧ほど透過性が高い
 管電流(mA):
照射線量を決定。
 曝射時間(s):
照射線量を決定。
総照射線量=曝射時間*管電流(mAs)
診療X線の撮影条件
 高圧撮影(管電圧120-140kV)
通常の胸部、腹部X線撮影。
 低圧撮影(管電圧40-60kV)
→軟線撮影。乳房撮影に使用
本日のテーマ
 放射線診断から画像診断へ
 X線の発生
 X線検査撮影の基礎
 原理
 種類
 コンピュータ断層撮影(CT)の基礎
 原理
 特徴:X線検査と対比して
 医療被曝
X線の特徴



直進性
X線は透過性が強い(透過力)・吸収性
 物質側:密度、厚さ、原子番号
 線源側:エネルギー
X線は写真作用や蛍光作用がある
(フィルムと増感紙を用いる)
X線管から発生したX線が人体を透過し時に生
じる吸収差をフィルムに投影し画像を作成する
X線吸収係数と画像コントラスト
 X線吸収係数(μ ):  μ が大きいほど減弱が強く高濃度(白く写る)
 被写体に入射されるX線と、出てくるX線の強さの比
 被写体の構成する物質の原子番号(Z)の3乗と
密度(ρ )におよそ比例する。
μ ∝ρ Z3
S0
μ=-log
ρ
Z
S
S0
S
S0:照射するX線
S:被写体から出てく
るX線
ρ:被写体密度
Z:被写体原子番号
X線写真の濃度:
画像の色
白
黒
骨
水
脂肪
石灰化
実質臓器
(肺や腸管の
造影剤
(肝臓・腎臓・脾臓・膵臓など)
中の空気)
筋肉
心臓・血管
血液
人体各部位の濃度は、骨・水・脂肪・空気の4段階に分かれる
空気
X線の物理化学作用
 電離作用:
物質の軌道電子を放出してイオン化
 蛍光作用:
ある種の物質から可視光を発生する
 写真作用:
X線フィルムを感光して黒化する。
X線撮影
フィルムスクリーン法
X線管
X線束
被写体
グリッド
増感紙
フィルム
増感紙
*グリッド:散乱X線がフィルムに入射しないようにする。
*増感紙:X線があたると蛍光を発する。
デジタルラジオグラフィー
アナログからデジタルへ
 人体を通過したX線をフィルムの代わりに鋭
敏な検出器で測定し、デジタル変換を行う
 現在ではほぼ全ての撮影がデジタル化され
ている

 撮影の失敗が少ない
 保存、検索が容易
 データ処理により画像の表示方法を変更可能
デジタル撮影法
 X線検出器で得た信号をデジタル変換し
、コンピュータで画像処理し、画像を作成
する。
 検出器:
 イメージングプレート(IP):CR
 蛍光増倍管(II)
 フラットパネルディテクター:
(X線受光媒体としてアモルファスセレンを使用。デジタル画像を直
接得る。)
良いX線写真の条件
正しい体位で撮影されている
 濃度が適切である
 鮮鋭度が高いこと
 濃度の細かな不規則性がない

本日のテーマ
 放射線診断から画像診断へ
 X線の発生
 X線検査撮影の基礎
 原理
 種類
 コンピュータ断層撮影(CT)の基礎
 原理
 特徴:X線検査と対比して
 医療被曝
X線検査の分類
 単純X線検査:
造影剤を使用せず撮影する検査の総称
 造影X線検査:
造影剤を使用して特定の臓器、病変に的を
絞って行う検査
X線検査撮影の基礎:
検査の種類
 単純写真、高圧撮影、軟部撮影、立体撮影、間接撮影
 断層撮影
 X線透視
 X線テレビ
 造影検査






消化管造影
尿路系造影
胆道造影
血管造影 、IVR
脊髄造影
その他:子宮卵管造影、リンパ管造影
胸部X線写真
膝関節X線写真
乳房撮影
(マンモグラフィー)
一般撮影:単純写真
断層撮影(トモシンセシス)
ギブスをした状態で撮影:
舟状骨骨折
X線透視
X線の持つ蛍光作用を利用
蛍光物資にX線をあてて可視光線を発生
TVモニター上で動態観察
X線テレビ装置
X線管から曝射されたX線は、被写体を透過
したのち、X線変換系(Image Intensifier:蛍
光増倍管)によって可視光に変換
 光学系を経てTVカメラに送られ、映像信号と
してアナログ/デジタル変換
 持続的にX線が照射可能
 デジタル処理した画像を、リアルタイムにモニ
タで観察

X線撮影の応用:造影検査:
単純X線写真で診断に必要な十分な濃度差
が得られない臓器に対して使用
 経口あるいは経静脈的に造影剤を投与
 診断可能なコントラストの高い画像を作成

X線造影剤
X線吸収係数(μ )が組織と異なる物質
病変と正常組織のコントラストが増強
 陽性造影剤: μ が大きい
ヨード(Z=53)、バリウム(Z=56)
 陰性造影剤: μ が小さい物質
ガス
黒く写る
白く写る
造影剤の種類

陽性造影剤(白く見える)
 経口的
:消化管用の硫酸バリウム
 経静脈的:尿路、胆道系、心血管で使用する
ヨード造影剤

陰性造影剤(黒く見える)
 空気、炭酸ガス
(現在は消化管二重造影で使用する程度)
造影剤が備えるべき条件
毒性が少ない
 体外への排泄が早い
 造影効果が高い
 比較的安価である

消化管造影
観察範囲
検査法
上部消化管造影 食道から十二指腸近位部 バリウムを経口的に飲む
小腸造影
十二指腸から回腸
経口法:上部消化管に引き続き行う。
経管法:十二指腸ゾンデからバリウム
を注入
注腸造影
回腸末端から直腸
バリウムを直腸から注入
上部消化管造影



胃粘膜の病変を描出可能
陽性造影剤(バリウム)と陰性造影剤(空気)を
組み合わせて造影
撮影法として以下の4つの方法がある
 粘膜法(レリーフ造影法)
 充盈法
 二重造影法
 圧迫法
上部消化管造影
充盈法
 胃内腔に造影剤を充満させ
る方法
 胃全体のバランスや胃角の
評価に適する
 辺縁の硬さや、変形の描出
に優れる
 バリウムで覆われている胃
の粘膜面の評価は困難
上部消化管造影
二重造影法
 陽性造影剤(バリウム)と陰
性造影剤(空気)を組み合わ
せて粘膜面を描出
 広い範囲の粘膜面が容易に
描出可能
 粘膜面の微細な凹凸の描出
に優れる
 胃粘液の状態によって造影
効果が異なる
注腸造影
腸管の粘膜の病変を描出可能
 陽性造影剤(バリウム)と陰性造影剤(空気)
を組み合わせて造影
 経肛門的にバリウムと空気を注入し、二重造
影法を中心に粘膜面を描出

下部消化管造影(注腸造影)
排泄性尿路造影
造影剤を静注射後、経時的に撮影
ヨード造影剤使用の注意点

禁忌
 ヨードアレルギーの既往がある患者
 重篤な甲状腺疾患の患者

原則禁忌
 一般状態が悪い患者
 気管支喘息の患者
 重篤な心臓、肝臓、腎臓障害の患者
 急性膵炎、多発性骨髄腫、褐色細胞腫の患者
ヨード造影剤の副作用

数人/ 100人
 不快感、発疹、嘔気、嘔吐など

1人/数万人
 ショック状態

1人/数十万人
 死亡例
血管造影




主に鼡径部の動脈や静脈から、カテーテルとい
う細い管を目的とする血管に挿入
ヨード造影剤をカテーテルから注入し、X線を用
いて撮影を行う
血管の狭窄や腫瘍血管の状態を評価
さらに挿入したカテーテルから狭窄血管を拡張し
たり、腫瘍の栄養血管を遮断した治療を行うこと
が可能(Interventional Radiology: IVR)
DSAの原理
通常の血管造影
(血管+骨)
マスク画像
(造影前、骨)
DSA
サブトラクション画像
(血管)
DSA:Digital subtraction angiography
血管造影検査の長所と短所

長所
 直接血管の状態を評価可能
 他の画像検査では描出できないような細い血管
も描出可能
 検査に続けて、IVR治療が可能

短所
 放射線被曝がある
 他の画像検査に比べ侵襲的である
血管造影検査の適応と禁忌

適応
 血管の狭窄や動脈瘤の評価
 腫瘍の血流状態の評価
 現在は主に、IVRによる血管拡張術や塞栓術を
行う

禁忌
 ヨードアレルギー患者
 重篤な腎障害患者
INTERVENTIONAL RADIOLOGY
(IVR)
画像診断装置の発達にともない、画像ガイ
ド下に局所病変のみを経皮的に治療する
低侵襲治療が可能になってきた。
 放射線診断手技の治療へ応用は
Interventional Radiology: IVRと呼ばれ、
血管造影以外にも超音波、CTなどの画像
ガイド下に局所治療を行う手技である。

なぜIVR

IVRによる治療は、局所麻酔と数mm程度
の皮切による経皮的な操作で、外科手術
に比べて侵襲は軽度であるが、それに匹
敵するような治療効果を得ることも可能で
ある。
 あまり痛くない
 開腹しないから入院期間も短い
 治療費も安い
 再発病変に対しても再度の治療が可能
IVR の分類

血管系(vascular)
 塞栓術、血管拡張・形成術など

非血管系(non-vascular)
 ドレナージ、組織生検、ラジオ波熱凝固治療など
肝細胞癌に対する動脈塞栓術
治療前後の腹腔動脈造影
治療前
治療後
塞栓術後のCT
本日のテーマ
 放射線診断から画像診断へ
 X線の発生
 X線検査撮影の基礎
 原理
 種類
 コンピュータ断層撮影(CT)の基礎
 原理
 特徴:X線検査と対比して
 医療被曝
CTとは
Computed Tomography
コンピュータ断層撮影
 コンピュータを使って身体の輪切り(断層面)を見る装置
Hounsfield(CT発明)が考えたこ
と

従来のX線撮影では
 人体の臓器が重なる
 濃度分解能が不十分
 濃度が数値化されていない
CT
基本原理




Computed Tomographyの略で、コンピュータを
用いて作成した断層画像のこと
X線発生装置(X線管球)が身体の周りを360°
回転しながらX線を照射
身体を透過したX線情報(投影データ)を検出し、
コンピュータにて演算処理を行い断層画像を作
成する
断層画像により、体の奥行き方向の情報が得ら
れる
CT内部のしくみ
CTのインパクト
人体を透過したX線量を高感度の検出器で
測定し、そのデータをコンピュータで断層像
として再構成する。



濃度分解能の向上
情報のデジタル化
3次元情報の作成
CT値(HU)
*X線吸収係数→使いやすく便宜的に表現したもの

水のCT値 μt= μw 0HU
空気のCT値 μt=0 -1000HU
CT
組織吸収値

人体の濃度を+1000(白)から-1000(黒)
の2000段階で表示
 骨皮質
:+1000
 甲状腺 :80~100
 肝臓
:50~75
水
:0
 脂肪
:-100~0未満
 空気
:-1000
*数値はHounsfield unit
CT画像のコントラスト
 高吸収病変:周囲の正常組織よりCT値が高い(白
い)
→石灰化、急性期血腫
 低吸収病変:周囲の正常組織よりCT値が低い(黒
い)
→上記以外の、大部分の病変
CT
画像再構成と表示
 CT画像は単位体積(ボクセル)に含まれる平均X線吸収値
の大小に応じて白黒濃淡のある画像として表示される。
 ボクセル内のX線吸収値を表す単位としてCT値を使用す
る。
 CT値は水を0、空気を-1000とした相対的値で、CT開発者
のHounsfield 博士(ノーベル賞受賞)の名をとりHounsfield
unit(HU)とも呼ばれる。
 画像表示は白黒濃淡の階調gray scaleで表示され、表示
に際してはgray scaleを変えるウインドウ機能がある。
 作成されたCT画像は、患者の足方向からみるように表示
する。向かった右側が患者の左側。(一般写真と同様)
CT
画像の表示法

ウィンドウ幅(WW):CT値の表示範囲
 広い:コントラストは低下
観察可能なCT値の範囲は広い
 狭い:コントラストは向上
観察可能はCT値の範囲は狭い

ウィンドウレベル:ウィンドウ幅の中央値(WC)
 高い:画像が黒くなる
 低い:画像が白くなる
胸部CT
肺野条件
WW:1600.WC:-600
縦隔条件
WW:500.WC:50
胸部CT(肺癌)
造影CT
 造影剤:水溶性ヨード造影剤
 造影剤投与法
 一般の造影CT;全量をゆっくり静注し、静注
終了後に撮影を開始。造影剤が全身に分
布した平衡相の状態。
 ダイナミック造影CT:造影剤を急速静注しな
がら経時的に繰り返し撮影。血行動態をし
る。
一般の造影CT
組
織
の
造
影
剤
濃
度
造影剤静注
単純CT撮影
造影CTの撮影
1分
2分
ダイナミック造影CT
組
織
の
造
影
剤
濃
度
造影剤静注
単純CT撮影
動脈相
実質相
1分
平衡相
2分
CT装置の種類

従来のCT(コンベンショナルCT)
1スライス毎に寝台の移動と停止を繰り返しながら撮影
を行う

ヘリカルCT
連続回転する線源の中を、寝台を一定速度で動かし続
けながら撮影を行う

多列CT
X線を扇状に照射し、対側の検出器を細分割して多列
化したCTであり、1回の線源の回転でより多くの範囲を
撮影可能
コンベンショナルCT




X線ビームと検出器が身
体を挟み、その周囲を1
回転して、投影データを
収集
スキャンとテーブル移動
を交互に行う
1回のスキャンで1つの断
層像が得られる
スライス厚やスライス間
隔はスキャン後かえられ
ない
シングルヘリカルCT




X線管を回転させながら
患者寝台を一定速度で
移動させる
X線管は螺旋起動を描く
ように回転しながら投影
データを収集
短時間で広範囲のデータ
を収集可能
任意のスキャン断面が得
られる
マルチスライスヘリカルCT




体軸方向に複数の検出
器列があり、1回転で複
数の画像がえられる
短時間で広範囲の撮影
が可能
再構成スライス厚をスキ
ャン後にも変えることが
可能
任意のスキャン断面が得
られる
本日のテーマ
 放射線診断から画像診断へ
 X線の発生
 X線検査撮影の基礎
 原理
 種類
 コンピュータ断層撮影(CT)の基礎
 原理
 特徴:X線検査と対比して
 医療被曝
CT
X線CTの特徴
 再構成画像
 空間分解能の向上
 多次元の画像再構成
 良好なコントラスト分解能
 障害陰影のない人体横断像
CT
再構成画像に起因する留意事項
 部分容積効果
CT値は平均吸収値であるため、1ボクセル内に異なったCT値を有す
る複数の組織が存在するとそのCT値は平均かされ、複数の組織を互
い認識できない。
 画像上の病変組織濃度が本来のCT値と異なる
 病変や臓器の辺縁が不鮮明化する
 小さい構造が隠れてしまう
 アーチファクト
本来被検体にないが、データ取得と画像再構成過程で発生する偽像
 患者由来:動き、金属など
 機器由来:
CTの応用
 CT血管造影(CT angiography: CTA)
• 造影剤を使用し、血管を評価
 ミエロCT
• 髄腔に造影剤を注入し、脊柱管狭窄を評価
 DIC-CT
• 造影剤を使用し、胆道系を評価
 CTガイド下穿刺と治療
• CTで位置をみながら針を刺し、液体の吸引や
熱で病変を破壊
3次元表示法


連続スキャンした画像データに処理を行って、3
次元表示を行う手法
最大値投影法
 Maximum

表面表示法
 Shaded

Intensity Projection:MIP
Surface Display:SSD
ボリュームレンダリング
 Volume
Rendering:VR
最大値投影
Maximum Intensity Projection:MIP
3次元的に得られたボリュームデータを任意
の方向に投影する際、その投影線上で最も
高いCT値のボクセル値を投影方向と垂直な
面に投影して2次元の画像として表示
 利点

 血管の連続性、細い血管の描出に優れる

欠点
 深さ方向の情報が得られない
表面表示法
Shaded Surface Display:SSD


CT値による被写体の情報から、目的とする構造
の表面位置を閾値により認識し、その表面情報
から3次元画像を作成
利点
 静止画像で立体的な形態の把握が可能
 処理時間が短い

欠点
 単一閾値のため、複数の構造の区別が不可能
 閾値により形態が変化する
ボリュームレンダリング
Volume Rendering:VR



表面情報だけでなく、内部情報も含めて3次元画像を
作成
特定の範囲のCT値に透明度を設定し、表面と内部の
情報を透かして表示
利点
 軟部組織病変の描出が可能
 複数の閾値を用いさまざまな組織を同時に分離表示

欠点
 画像処理が複雑で、閾値や透明度の設定により構造が
消失
断面変換法
Multi Planar Reconstruction:MPR
連続する2次元画像を積み重ねて、任意の断
面の画像を作成する方法
 変換できる断面

 矢状断(sagittal
plane)
 冠状断(coronal plane)
 斜断面(oblique plane)
 局面断面(curved plane)
頭部CTA(脳動脈瘤)
DIC-CT(胆嚢結石)
VR
心臓CT(狭心症)
MPR
VR
放射線防護
 医療被曝は行為の正当化(正当化)と、防護の
最適化(最適化)により防護される。
 職業被曝と、公衆被曝は個人線量限度および
個人リスク限度(線量限度)により防護される。
放射線防護の三原則
 正当化
 最適化
 線量限度
医療被曝による
放射線障害発生の可能性
 通常の放射線診断では放射線障害は発
生しない
 長時間透視による放射線障害の可能性
紅斑
(カテーテルによる不整脈治療2年後)
AJR 177: 13-20, 2001
潰瘍形成
(30時間以内に2回の血管拡張術2ヵ月後)
AJR 177: 13-20, 2001
重症潰瘍
(100分のX線透視3ヵ月後)
AJR 177: 13-20, 2001
まとめ




画像診断は現在の診療では不可欠な検査であ
る
X線撮影、CT、血管造影の各画像診断の基本
原理と特徴について概説した
ヨード造影剤の使用には禁忌を含めた理解が重
要である
画像診断装置の発達により画像ガイド下に低侵
襲なIVR治療を可能となった、被曝についての
十分な知識も必要