FDニュースレター(2014年11月1日号)

FD
aculty
FD
NEWS
NEWS
evelopment
No.
8
2014年 11月1日
学長インタビュー特別号
これまでの FD 活動を振り返って
FD ニュース第8号発刊に寄せて
安村 仁志
中京大学副学長・FD 委員会委員長
FD 委員会は発足して6年目に入っています。また、NEXT10のプロジェクトとして、発展的組織
現在の
を目指す「教育推進センター」の設立構想もありますので、これまでの歩みを振り返っておきたいと思
います。
“現在の”と申しましたのは、前史があるからです。1998年に大学としての自己点検報告書が作られた
後、小川英次前学長のもとで授業改革を進めるための各種委員会が設置されました。2001年「FD 小委員会」
が生まれ、
2003年12月に第1回の授業アンケートが実施されました(以来6回実施)
。その後2004年からは
「FD 教育改革委員会」に衣替えし、
アンケート、授業公開など FD に関することが精力的に話し合われるとと
もに、
学生との懇談会も実施されました。そして2007年に大学基準協会による第三者評価を受けました。一
方、2008年になって大学設置基準で FD 活動が従来の“努力義務”から“義務規定”に変更されました。こ
れらをもとに、現北川薫学長により全学的組織として FD 委員会を設置することが進められ、規程を定める
委員会が組織された後、
2009年4月に現在の「FD 委員会」が発足し、以来私が委員長を務めてまいりました。
ところで、改めて FD(ファカルティ・ディベロプメント)とは何ぞやについて簡潔にまとめてみますと、
本学で学ぶ者が
「ここで学べて良かった」と実感するとともに、確実に力をつけ、自信をもって社会に巣立っ
ていけるような大学にすることを念頭に、教員(集団)= Faculty が教育力を高め= Develop、“より良い
授業”
、
“より良い学習環境”を目指す取り組みを進めていくことを指しています。
そのため、まず FD の基礎部分でもある①教員の自己点検・改善のための学生による「授業アンケート」
、
②学生が自覚的に科目履修に活用できるような「シラバス」、③「授業公開」を通して授業方法を学び合う
ことを三つの小委員会(部会)で真剣に議論し進めてきました。大切にしたことは、大学の“主人公”であ
る学生を大切に、これらの取り組みを教員だけではなく、職員の方々とも協力して進めることでした。意見
を交わしながら進めていくことは、苦労もありましたが、夢のある楽しいことでもありました。教員の教育
活動を支援する T・A、S・A 制度も整備しました。さらに、3年ほど前から学びの主人公である学生にも FD
活動に参加してもらおうと「学生 FD スタッフ」制度を設けました。教員―職員―学生が協力してよき授業
を定着させていこうということです。こうした動きを広く、学内外に知っていただくために「FD ニュース」
をも発行しています。まだ、第一段階を経たところで、取り組むべき課題はたくさんあると思っています。
第8号は、FD 活動を暖かく見守り、ご支援いただいてきた北川学長に学生がインタビューした記事を載せ
ています。これからの参考になることも満載かと思っています。そのほか実践報告を載せていただいた方々
にも感謝申し上げます。
中京大学長期計画「NEXT10」における FD 活動
本学では、開学60周年を機に、2014年から10年間にわたる取り組みを明確にした「中京大学長期計画
NEXT10」を策定し、2014年度からその着実な推進を図っています。
この計画のうち、
〔教育〕の分野では、
「推進事項6.教職員の教育力を最大限に活かすための環境整備」に
おいて、「FD 活動への学生の参加を含めた、教員・職員・学生が一体となった教育改善の促進」を主な施策
として掲げています。
今後も、これを旗印に、大学として FD 活動を様々な視点から推進していきます。
[NEXT10]の詳細はこちらから
http://www.chukyo-u.ac.jp/information/next10/index.html
中京大学の
FDとは
FD とは、教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取り組みのことを意味します。中京大学では組織的な取り組みを推進するため、
学部・研究科を横断して「FD委員会」を設置しています。授業に学生が満足し、力をつけられれば、当の学生はもとより、授業をする教員も勉学を
サポートする職員も充実感を得られるでしょう。その意味でFDを“大学のすべての者の幸せのため”と位置づけ、それを目指してベストを尽くすもの
(For Doing our best)ととらえています。
For Doing our best!
FD は大学のすべての者の《幸せ》のため
1
学生
FD
スタッフの活動
学生 FD スタッフ「SearCH」のメンバーが
北川薫学長にインタビュー
昨年4月に発足した中京大学学生 FD スタッフ「SearCH」
。
現在は総勢50人(2014年7月末現在)の団体として、メ
ンバーが月1回集まり、学生の視点から活発な FD 活動を
行っています。
7月14日、学長室に北川学長を訪ね、学長の教育に対す
る思いや本学の FD 活動についてお伺いするとともに、中
京大学の今後の展望についてお話しいただきました。
ります。今後も是非、活発な活動をお願いします。
学生に理解してもらうため、
早口から卒業。
インタビュアー
名古屋キャンパス
経済学部経済学科2年
豊田キャンパス
スポーツ科学部スポーツ教育学科3年
細野 修汰
(豊田キャンパスリーダー)
スポーツ科学部競技スポーツ科学科3年 大岩 俊介(書記)
スポーツ科学部スポーツ教育学科3年
スポーツ科学部スポーツ教育学科3年
畠山 隼
吉崎 寿哉
▼
▼
伊藤さん 本日は私たち学生 FD スタッフのために貴重なお時間
を割いていただき、ありがとうございます。
それでは、まずリーダーの水谷から、この1年間の活動につい
て紹介します。
水谷さん これまで主に4つの活動を行ってきました。
▼
1つ目は「クリーンアップ大作戦」。教室の机の落書きを消すこ
とで、落書きをする学生を減らし、気持ちよく授業を受けられる
ようにするのが目的です。昨年は11月、今年は7月に行いました。
2つ目は、授業への要望等をテーマにした学内での「しゃべり
場」です。参加者は数人でしたが、楽しく話し合うことができま
した。昨年11月に開催しました。
3つ目は、新規スタッフの募集活動です。今年4月には24名が
加わり、名古屋キャンパスが33名、豊田キャンパスが17名と計
50名になりました。
最後は、昨年11月に行った、愛知県内の他大学との交流です。
愛知学泉大学の学生 FDスタッフの方々と初めて学外での交流を
持ち、今後の活動のヒントを得ることができました。
スタッフが50名と大所帯になったので、今後は小グループを
作ってさまざまな活動を行う予定です。また今年から豊田キャン
パスでもスタッフが組織されたので、相互の連携を図っていきた
いと思います。
学長 学長としては大変ありがたい話ですね。非常に喜んでお
2
伊藤さん それではインタビューに入らせていただきます。学長
は教員としてのご経歴が長いのですが、教員としての経験、心
構えなどに関してお聞かせください。
学長 私が中京大学に赴任したのは32歳の時です。初めは学生
▼
経済学部経済学科3年
国際教養学部国際教養学科3年
に「あれも教えたい」
「これも教えたい」という気持ちが強く、授
業で一生懸命に話をしていました。しかし40歳ぐらいになった
時、学生の顔を見ていて、
「ひょっとして分かっていないんじゃな
いか」ということに気が付きました。それから考え方を変えて、
学生が理解できているか気にかけながら、同じことを繰り返し
話し、少しずつ前へ進むようになりました。
その時から、いかにして学生に分かってもらうかということを
心がけるようになったのです。教員はとにかく一方的に話しすぎ
る傾向があるので、それを自分自身で改めました。
私はもともと早口でした。しかし今、皆さん聞いて分かると思
いますが、ゆっくりと話しています。特に学長になってからは、で
きるだけゆっくりと、間を取るように、言葉を選んで話すように
心がけています。もちろん授業の時もこのように話しています。
教員を乗り越えられる
学生を育てたい。
畠山さん 学長が「教員をやっていてよかった」と感じる瞬間は
どういう時ですか?
学長 私は教員になってから
▼
心理学部心理学科3年
水谷 知博(学生代表)
菊地 杏佳
深田菜美子(学生副代表)
伊神 拓
伊藤 成人
竹内 健斗
▼
法学部法律学科3年
▼
法学部法律学科3年
多くの卒業生を送り出してき
ましたが、その卒業生が現在
上は60歳になっています。彼
らが社会的に活躍していると
いう話を聞くことが、一番嬉
しいですね。
教育というものが何かとい
FD
NEWS
「SearCH」とは
中京大学 FD 委員会のもとに設置された組織で、大学での『より良い学び』の実現に向け、
学生の主体的活動を教職員がサポートしながら協働して活動を進めているグループ。学生の
声に耳を傾ける中京大学を目指し、
“Student ear CHUKYO”を略して命名。
▼
▼
菊地さん 授業やさまざまな学生生活を通じて、学生にどのよう
に成長してほしいとお考えですか。
学長 その答えは非常に明確でして、
「自立しなさい」というこ
とです。学生に自立してほしい。
数年前、中京大学附属中京高等学校から進学してきた女子学
生のお母さんと話していたところ、
「娘から、高校生の時は私に
あれをしなさい、これをしちゃいけないと、あれこれうるさく
言っていたのに、大学生になったら何も言わなくなったねと言わ
れました」とおっしゃっていました。それはどうしてですかと聞
くと、
「娘には、あんたはもう18歳で大人なんだから、親として
はもう何も言わない。一人で頑張りなさいと言いました」と言わ
れたんです。こういう親御さんは非常に正しい子育てをされてい
ると思いますね。
どうしてそう思うかというと、学生が自立できていないため、学
生ではなく保護者の方から大学にクレームが来ることがあるわけ
です。18歳から学生で、法律上はまだ成人ではありませんが、社会
的には立派な大人です。保護者に言わせるのではなく、自分で事
務室に行くなり、
先生に言うなりして主張するようにしましょう。
私自身は中京大学というのは現在、学生や外部の声をよく聞く
大学だと思っています。昔の大学はそうじゃありませんでしたが、
今はよく聞いています。だから親御さんは、娘さんから何か言
われたら、
「自分で事務に言いに行きなさい」と言ってもらわない
と、子供は成長しないと思います。もちろん子供のために何とか
してやりたいという親御さんの気持ちもよく分かるのですが ・・・。
ていて、思っていても口に出さない」と言いました。これは世界
でもまれなケースです。言わないということは何も考えていない
というのが世界の常識です。
「だから外国人の君たちが日本で生
活していると変に思うかもしれないが、日本ではそういう習慣な
ので理解してほしい」と話しました。
大学は社会訓練の場。
失敗してもいいから、
いろんなことを経験してほしい。
菊地さん 学生が自立するためには、どのような努力が必要で
しょうか。
学長 自分のことは何でも自分でやりなさいということです。大
▼
学生に望むのは
「自立しなさい」ということ。
したいと言っている。何とかしてほしい」とお母さんから連絡が
あったので、
「息子さんはもう22歳なんだから、あと半年残して
大学をやめたいというのは、腹をくくってそう決めたのでしょう。
大学としては話はしてみますが、多分、ダメでしょう」と答えま
した。子供に大学を卒業してもらいたいという親御さんの気持
ちは、痛いほど分かるんです。私も実際、大学を中退して苦労し
ている30過ぎの人をよく知っています。日本は未だに肩書き社
会のところがありますから、履歴書を書く時に大学中退という
のは、やはり弱い。これは事実です。でも本人が腹をくくってい
るなら仕方ない、子供の代弁をしたい親御さんの気持ちも分か
りますが、親も腹をくくらないといけないと思いますね。
日本では自己主張をしないと、その方が謙虚だとプラス評価
をされることがあります。しかし世界に出たら、それはあり得ま
せん。自立して自己主張しないとだめなんです。実は今日のお
昼、外国人留学生と話をしましたが、こういう日本人の性質が初
めは理解できないようで、
「日本では主張しないのが習慣になっ
▼
うことを考えると、よくこの話を思い出し
ます。今から30数年前、当時の体育学部
の教授会で、学生へ中高の教員免許を出
すことについて議論しました。どういう学生を育成するか。それ
には少なくとも我々、教員を乗り越えられるような学生を育てな
ければ意味がないだろうという結論に至ったのです。優秀かど
うかは別として、社会的に十分評価されるような人物を育て上げ
なければならない。教員を目指す学生にはこうであってほしい、
それが基本コンセプトだと議論したことを鮮明に覚えています。
ですから、学生へは安易に単位は出しません、ということです。
社会的に活躍している、立派だというのは、名前の知られた
大会社に入って仕事をしているという意味ではありません。仕事
はそれこそ総理大臣からフリーターまで幅広くありますが、誰も
が知っている有名な仕事がいいということではない。
「誰それ君
はうちの会社でよく働いてくれていますよ」という話を聞くこと
が一番嬉しい。本学の卒業生が強い信念を持ち、仕事を始め、
社会人としてきちんとやっているということが一番、教師冥利に
尽きますね。
学というのは、一種の社会訓練の場です。訓練だから失敗して
も責められない世界です。だから大学でいろんなことを経験して
ほしい。
たとえば先ほど言った、大学へ要望がある場合には自分の口
で言ってほしい。やっぱり人と折衝するのは面倒だしストレスな
んです。しかしそれをやりなさいということです。
アメリカの大学に研究員として滞在していた時のことですが、
うちの小学校1年生の娘を、少し年上の隣の娘さんに時々、1時
間1ドルくらいで面倒をみてもらっていました。ところが彼女が中
学生になった時、
「1ドル50セントに上げてくれ」と言ってきたん
です。なるほど、アメリカというのは子供でも自分で主張する世
界なんだということを実感しました。自宅で娘の誕生会をした
時にも、
「私は呼ばれてないけど、行っていいか」と言ってきた
意見を言わないのは
何も考えていないのと同じ。
最近ではこんなこともありました。「4年生の息子が中退
▼
学長
For Doing our best!
FD は大学のすべての者の《幸せ》のため
3
女の子がいました。日本なら図々しい子だと言われそうですが、
自己主張するのがワールドスタンダードなんですね。
学生にきちんとした教育を
提供する責務がある。
学生は、コスト意識を持ち、
大学を大いに活用すべき。
▼
学長 昔はよく先生の都合で休講も多かったんです。私たちの
頃は大学に行って休講だと聞くと「やったー!」と喜んだもので
すが、今はそうではありません。今は休講にしたら補講をしない
といけないし、学生も「補講はいつですか」と聞いてきます。
私はよく学生に、
「1回の授業がいくらになるか計算したことは
ある?」と聞いてきましたが、分かりますか? ざっくり言うと
5000円です。学生が5000円稼ごうと思ったら、時給1000円で
5時間も働かないといけない。それを考えると、
「休講というの
は学生にとってバカバカしい話でしょ」と話したことがあります。
現在、大学の授業料は年間、私立大学が約100万円、国立大
学 が 約60万 円と10対6ぐ
らいの割合です。しかし私
が学生の頃、国立大学はず
いぶんと安く、10対1ぐら
いの割合でした。当時、
「私
立大学の授業料は高い」と
いう学生がいたので、
「それ
なら元を取ればいい。元を
4
伊藤さん 続いて、学生 FD スタッフについて伺います。
深田さん 私たち学生の FD 活動に対して、どのようなご感想を
お持ちかお聞かせください。
学長 FD は国立大学では先行して行われていたようですが、実
▼ ▼
て研究を行った経歴をお持ちかと思います。大学の教員になる
メリットというのは、自分の好きな研究を給料をもらいながらで
きるということ。大学教員というのは、好きなことがお金になる
数少ない職業なんです。
しかし仕事はそれだけではない。大学の教員の仕事というの
は、大きく分けて三つあります。教育、研究、校務(管理運営業
務)
。以前はいろんな委員会の仕事を雑用だと言っていた先生が
いましたが、大間違いです。これも立派な仕事なんですね。
確かに昔は、大手の国立大学などでは、研究をしてそれを授
業で話していればすんでいたケースが結構あって、先生は楽でし
た。学生が「分からない」と聞いてきたら、
「そんなことも分か
らんのか」と答えておけば、プライドを傷付けられた学生は自分
で勉強したんです。
しかし今の時代はそういうわけにいきません。きちんと学生に
教育しなければならない。未だに年配の先生の中には研究さえ
していればいいと勘違いされている方がいますが、頭を切り換え
てもらわなければいけません。今の時代、特に私立大学は、収
入の約9割が学生の授業料でまかなわれています。要するに学生
は大事なお客様ということです。大学のスタートは、学びたい者
が教師を雇ったことにあるのですから。先生方にはそういう視
点も持ってほしいと思いますね。
大学をよくしたいという
学生 FD スタッフは、本学の誇り。
▼
▼
▼
深田さん 学長として、各学部や先生方に期待したいことなどが
あれば教えてください。
学長 現在の大学の先生というのは、ほとんどが大学院へ行っ
取るなら大学にいることだ」と言ったことがあります。本学の施
設を見てもらえば分かるように、中京大学には立派な図書館も
あれば、スポーツ施設もあります。
私は5年間ほど県内の国立大学の大学院で教えていたことが
ありますが、その院生を一度、本学の豊田キャンパスに連れて
行ったところ、
「大学ってこんなにきれいなんですね」と感激し
ていました。それぐらい、本学の施設は充実しているのです。
は私はよく知りませんでした。しかし私が学長になった頃から、
中京大学でも FD をやらなきゃという話が出てきて、手探り状態
で始めることになりました。そんな頃、日本私立大学連盟の学
長会議に出席した時、ほかの大学の活動を聞いて、
「FD とはこ
ういうものか」と勉強しました。本学では FD という名前は付け
てないだけで、そういう活動をしてきたんだなということも分か
りました。
それから安村副学長を委員長として2009年に FD 委員会が発
足し、現在に至るのですが、正直言って当時は学生が FD 委員
会のスタッフをするというのは思ってもみませんでした。しかし
非常にいいサポーターというか、みんなが中京大学をよりよい
状況にしたいと思ってくれているというのは、本学にとって掛け
値なしに誇りです。
私は中京大学に来る前は国立大学で5年半ほど教えていたの
ですが、周りの先生を見ていても愛校心という意識があまりな
かったように思います。ところが皆さん方は、こういう思いを持っ
ている。
一昔前だと、ほかの学生諸君から反発があると思うんです。私
たちの世代でも、
「あいつら格好付けてやってる」とか「自分た
ちだけ正義漢ぶって」という言われようをしたと思います。でも、
何でも続ければ力になる。1年2年、5年10年続けることで、
「真
面目にやってるんだ」「本気で取り組んでいるんだ」と認めてく
れる。やはり継続は力なんですね。積み重ね、継続することで、
初めて答えが出てくると思います。
ただ、こうした活動で難しいのは、強制力が働いてはいけな
いということ。あくまで自主的な参加でないと。学生 FD 活動
をほかの学生にどう理解してもらい、また知らしめるか。みなさ
んで知恵を出し合ってください。
FD
NEWS
先生に講演をしてもらい、終了後には懇親会を行っています。こ
れまで4回開催しましたが、毎回50〜60人の先生や院生などが
参加しています。こういう中で、先生方はほかの学部や研究所
の様子が分かるようになっています。
るのかなと心配していました。鉛筆ならいいけど、インクとかマ
ジックとかで書いてある場合、机をカンナで削らないといけない
のかなと(笑)
。いずれにしろ、教員としては予想以上の効果が
あったと思います。
できれば、これはお願いですが、授業中におしゃべりしてい
る学生もクリーンアップしてもらいたいですね(笑)。私は本学に
赴任した当初、教壇から徹底的に糾弾しましたね。しゃべって
いる学生を一人ひとり指差して、
「君がうるさい!」と。しかしそ
の学生は自分がしゃべっているという意識がないので、
「えー?」
と言って後ろを向くんです。
「いや、君がうるさいんだ」というと
びっくりしている。どうしてなのか。十数年前ですが、学生はテ
レビを見る感覚で授業を聞いているという話を聞いて、なるほど
と思いました。授業はテレビ、自分は視聴者だから、しゃべり
ながら見ていても違和感がないんだと。
ただ、10年20年前に比べれば授業中にしゃべる学生は減りま
した。地道な FD 活動の成果が表われてると言えるのではない
でしょうか。全ての授業がそうなるといいですね。
学生の意見を汲み上げるには。
▼
▼
竹内さん 学長はじめ、さまざまな先生方と情報を共有して、学
生の力で大学全体を盛り上げていきたいと考えています。そのた
めのアドバイスをいただけますか。
学長 一番いいのは、皆さんが話しやすい先生に言うことです
ね。ゼミに入っていればゼミの先生でもいい。すると、その先生
は何らかの形で大学に意見を言ってくるはずです。「学生の誰そ
れ君がこういうことを言ってきたので、FD 委員会の話題の一つ
にしたらどうでしょう」とか。もし、それがうまくいかなかった
場合は、学部長に直接言ってもらえればいい。学部長はそうい
う面での管理責任者なので、全学に上がってくるでしょう。
実は大学というのは学部ごとの縦割りで、異なる学部の学部
長というのは、ほとんどお互いの状況を知りません。そのため
私は学長になってから学部長懇談会というものを開き、学部の
横の連携を取るようにしました。その結果、意見交換したり、情
報や問題点を共有することで、全学的に動くことが多くなりまし
た。その意味で、本学は全国的にも横の連携がある方だと自負
しています。
また、数年前から研究所の研究交流会というものも始めまし
た。本学には七つの研究所がありますが、それぞれの研究所の
▼
▼
吉崎さん 学生 FD スタッフに対して、今後どのようなことを期
待されますか。特に今年、発足した豊田キャンパスのスタッフに
対してはいかがでしょうか。
学長 学生諸君が自分たちの学習環境として、よりよい環境を
作っていこうとしてくれるのは大賛成ですね。豊田キャンパスに
は現在3学部ありますが、できればそれぞれの学部から満遍なく
参加してもらえるといいですね。私自身はスポーツ科学部の教
員をやっているのですが、スポーツ科学部の中でも特に運動部
に所属している学生は、部活動を優先するのが当然のような雰
囲気があって、これまで FD 活動のような全学的な活動に参加
するのは難しかったと思います。だから今回は豊田キャンパスの
学生が参加してくれて、とても嬉しいですね。
教員、職員、学生が
三者一体となって回り出した。
学長 私は非常に楽観的な見方をしています。皆さん、SD(ス
タッフ・ディベロップメント = 職員の職能開発)は知っています
よね。本学の職員についていえば、私は専門職として非常に優
秀だと思いますし、やりがいのある仕事だと思っています。
私は数年前の年初挨拶で、FD と SD は車の両輪だと書いた
ことがあります。そこに君たちが加わってくれた。今は教員、職
員、学生が三者一体となって回り始め、とてもいい働きをしても
らっているという印象です。
先ほど、私立大学連盟の学長会議の話をしましたが、他大学
の学長と FD、SD について意見交換をした時、本学はそれなり
の活動をしているなと自信を持ちました。もちろん完璧ではな
く、これからやらないといけないことはたくさんあるでしょうが、
ものには順序というものがあるし、今時点では十分ではないか
と思います。だから、その意味では楽観視しています。中京大
学の未来は明るいです(笑)
。
水谷さん 学生 FD スタッフとして、まだまだできることはたくさ
▼
▼
▼
伊神さん 学生 FD スタッフは、学生自身が授業環境を改善して
いく「クリーンアップ大作戦」という活動を行っています。これ
まで机の落書きを消す活動などを行ってきましたが、それについ
てどう思われますか?
学長 非常にいいことだと思います。ただ、落書きがうまく消え
豊田キャンパスの学生にも
全学的な活動に参加してほしい。
▼
授業中のおしゃべりを
「クリーンアップ」?
んあると思うので、今後もスタッフで力を合わせていろいろな活
動に取り組んでいきたいと思います。
本日はありがとうございました。
For Doing our best!
FD は大学のすべての者の《幸せ》のため
5
リレー
特集
私の授業
―TA・SA の活用事例―
中京大学では、大規模教室等での講義を効率的・効果的に運営し、その教育成果を高めることを目的として、TA・SA 制度を設け
ています。今回は、TA・SA を活用している授業を取り上げ、その方法や効果をはじめ、実際に TA・SA を担当している学生さん
の感想も合わせて紹介いたします。
実践力養成をねらう「線形代数学」における TA 活用
「線形代数学」工学部 機械システム工学科
橋本 学
線形代数学(春
学期火1)は、工学
における重要な基
礎科目の一つです
が、特に機械システム工学科においては、ロボット
の関節制御や、センシングシステムなど、多くの専
門科目や卒業研究、もちろん就職後においてもさま
ざまな場面で登場する必須技術となっています。
そこで、この授業では、行列・ベクトル計算、空
間幾何、座標変換などを中心に15回のコースを設
計し、要所ごとにロボット工学などの専門科目との
具体的な関わりを織り交ぜ、なぜこの科目を学ぶ
必要があるのか、技術者にとってどのように役に立
つのかを理解させるようにしています。また、単に
計算手順を記憶するのではなく、まるで日常的に使
う文房具のように、取り出せばいつでも使えるよう
に、文字通り「身につける」ことを目標に、60分
間の講義の後に毎回必ず10~20問からなる課題
プリントを配布し、大量の問題を手を動かして解くド
リル形式の30分間の演習を実施しています。
そこで大活躍してくれるのが院生の TA たちで
す。
この授業は必修科目であることから、履修生が
130名近くになります。そのため、難度の高い課題
でも苦にしない数学が得意な学生から、問題文の
意味を把握することにも時間がかかる苦手な学生
まで、多様な履修生がいます。授業設計上、毎回
の講義における演習時間は30分程度しかとれない
ので、この時間内にほぼ全員を一定レベルの理解
度まで引き上げる必要があるため、さまざまなタイ
プの学生に対して個別に丁寧に助言や指導をして
くれる TA たちの存在は、この授業にとって不可欠
な存在です。
TA たちとは、毎週の授業前日に必ずブリーフィ
ングをおこない、演習問題を実際に解いてもらっ
て、難易度の確認、誤答パターンの分析、助言内
容のすり合わせなどをしています。このような入念
な準備の結果、30分間の凝縮された時間帯に、多
くの質問にテキパキと答え、助言ができていると思
います。
また、TA 自身にとっても、線形代数学は日々の
修士研究活動に必須の技術であることから、TA に
関わることは時宜を得た復習にもなっており、さら
に、下級生である履修生の質問の本質を汲み、わ
かりやすく端的に助言するためのさまざまな工夫
は、コミュニケーションスキルを磨く機会にもなって
います。
むろん、履修生にとっても、相手が学生のほうが
質問しやすく、何度でも同じことを尋ねやすいよう
です。また、同じ学科でかつて同じ授業を受けてき
た先輩である院生たちの姿を間近で見ることは、自
分たちがこの授業を通じて到達すべき一つのゴー
ルをイメージすることにもつながり、本校の TA 制
度の大きな利点であると考えています。
TA の役割を通じて(線形代数学)
情報科学研究科 情報科学専攻 修士課程 2年 橋本研究室
線形代数学の TA では、授業の後半に実施され
る演習時間帯における履修学生への指導がメイン
ですが、そのほか演習問題の作成補助もおこなっ
ています。ここでの指導は、演習問題に悪戦苦闘し
ている学生が、授業内容を自分自身で復習できるよ
うに助言することを指します。そこで、私は自分自
身が授業を受けていた頃の様子を思い出しながら、
どの部分で理解に苦しみ、それをどのように克服し
6
櫻本 泰憲
たのかという経験をもとに、具体的な助言の仕方を
考えるようにしています。
私はこの TA 制度を通して、履修学生への端的
でわかりやすい助言方法や、理解しやすい資料の
作成方法も学ぶことができました。この経験は、就
職後も必ず役立つと思いますので、今後も TA の機
会があれば、積極的に参加したいと思っています。
FD
NEWS
「TA」
「SA」とは?
TA(Teaching Assistant)…… 履修者に対する助言や教育的補助業務を行う者。教育指導者としてのトレーニングの機会にな
ることを前提としている。
(本学大学院に在学する者が対象)
…… 授業に関する補助的な業務を行う者。(本学大学院及び学部3年次・4年次に在学する者が対象)
SA(Student Assistant)
A Valuable Assistant
“Kokusai Eigo Nyumon”Department of World Englishes
James F. D’
Angelo
Junki Zaitsu, who was part of Peer 6 group
(of which I am the advisor) as a freshman,
and who also was in D’Angelo zemi for
the past two years, served as Student
Assistant for me in Kokusai Eigo Nyumon
class this Spring Semester. It is my first
year to teach this class since the retirement
of Professor Hiroshi Yoshikawa, and as
part of our new curriculum in Kokusai Eigo
Gakubu, it is now offered to all 196 firstyear students from the 3 new senkos.
In the past this class was only taken by
Kokusai Eigo Gakka, about 96 students. It
is a very large group and I needed a very
reliable 3rd or 4th year student to fill the role
of Student Assistant. I had an‘assigned
seating’plan in room 231, which is a nice
wide classroom, and Mr. Zaitsu was able to
take attendance from the back in a quiet
way which allowed the students and me to
focus on the lecture content and powerpoint
slides. Mr. Zaitsu also helped me greatly to
distribute the prints of my powerpoint slides
and other class study materials every week.
He also set up the computer each week,
which helped me to relax before the lecture.
I also asked him for feedback from time to
time about how the class was going, from
the viewpoint of a student, which was very
helpful. I am very grateful to him and to
Chukyo for providing a way to run such a
large class in an efficient way!
〈日本語訳例〉
財津純輝くんは、本年度の春学期に私が担当した「国際英語
入門」で SA として働いてくれました。私と財津くんは浅からぬ
関係で、私は彼が1年生の時にホームルーム担当を務め、この2
年間は彼は私のゼミに所属しています。
「国際英語入門」の前身である「国際英語学概論」の担当者
であった吉川寛先生が昨年度退職されたのを機に、本年度から
私がこの授業を受け持つことになりました。この授業は、国際英
語学部の改組後の新しいカリキュラムの一部として、専攻を問わ
ず国際英語学部の1年生全員が履修することになっています(本
年度の履修者数は196人)。ちなみに、この授業の前身である
「国際英語学概論」は全学部生対象ではなく国際英語学科生の
みの履修で、履修者数は概ね96人程度でした。
この授業は受講者が非常に多いため、SA の役割を担えるほ
ど頼りになる3年生か4年生の SA が必要でした。この授業が行
われる231教室は使い良く広い教室ですが、私はあえて「座席
指定」をしています。「座席指定」のおかげで財津くんは静かに
後方から出欠を確認できるため、学生も私も授業内容やパワーポ
イントのスライドに集中できるのです。他に、彼は印刷物の配布
(パワーポイントのスライドや授業資料)を手伝ってくれたり、授
業開始前にコンピューターのセッティングもしてくれるので、私は
安心して授業に臨むことができます。また財津君には授業の進
行について学生の立場からの意見を聞くこともあるのですが、実
際、彼の意見は非常に参考になりました。
私は SA の財津くんには非常に感謝しています。同時に、大
規模授業を効果的に運営する仕組みを提供する中京大学にも感
謝しています。
SA の役割を通じて(国際英語入門)
国際英語学部 国際英語学科 4年
私が主に SA として行っていることは、二つあ
ります。まず一つ目は、授業の冒頭で出席を取る
ことです。約200名ほどが履修をしている必修
科目なので、全員分の出席を取るだけでも10分
ほど時間がかかります。二つ目は、授業スライド
を映すためのパソコンのセッティングです。
私がこの二つの仕事を行うことによる教授に
とってのメリットは、学生に教えたいことを時
間を気にせず教えられることです。なぜなら前
財津 純輝
述した通り、200名ほどの学生が履修している
科目で出席を取るだけでも10分ほどかかりま
す。さらに先生も必修科目の中でも国際英語学
の根幹となる授業なので、教えたいことは多い
と仰っていました。私がこの仕事を行うことに
より出席を取る10分やパソコンをセッティング
する時間も無駄にすることはなくなるため、教
授と学生にとっても SA は役立っていると思い
ます。
For Doing our best!
FD は大学のすべての者の《幸せ》のため
7
学生 FD スタッフ「クリーンアップ作戦」実施報告
学生 FD スタッフが授業環境改善活動の一環として、
戦」は、授業環境の改善のため、継続することが何よ
昨年に引き続き2回目の「クリーンアップ作戦」を7月
りも大切です。この秋にも実施することを検討してい
7日に行いました。
「クリーンアップ作戦」は、
「落書き
ますので、見かけたときには是非、積極的にご参加く
する学生」を減らすことを目的としています。名古屋
ださい。
キャンパス2号館1~4階を学生 FD スタッフが消しゴ
(文:学生 FD スタッフ)
ムを使って落書きを消していきました。また、各教室に
いる学生にも、消しゴムを配って落書き消しを手伝っ
てもらいました。第1回の5号館の時よりも落書きは多
く、予想外の多さに驚きました。
2回目ということで、前回の反省点を踏まえて全体
としてはスムーズに進行できたのではないかと思いま
す。学生の協力も前回同様、沢山得ることができまし
た。ありがとうございました。この
「クリーンアップ作
学生 FD サミット
2014
夏
速報
8月23・24日に京都産業大学で開催された「学生 FD サミット
2014夏」に学生 FD スタッフグループ「SearCH」が参加しまし
た。
主に、ポスターセッション(右下写真)での、SearCH の取組紹
介に対して他校からアドバイスを得る機会や、しゃべり場(左下)
での、
“大学が良くなるために学生が出来ること”をテーマとした
他校生とのブレイン・ストーミング。また、分科会でのグループ
ワークや意見交換を通じ、全国61大学・短大、計480人と意見交
換・交流を深めてきました。今後の活動に刺激となり、反映される
ことを期待します。
豊田 SearCH 始動
昨 年 度 発 足 し た 学 生 FD ス タ ッ フ
「SearCH」に本年度から豊田キャンパス
の学生も初めて参加しました。同一団体
のもと、キャンパス間の連携を取りなが
ら、それぞれ活動を進めていきます。
本年度はまず初年度のため、豊田キャ
ンパスでの組織固めを第一としながら、
学生 FD サミット2014夏での経験を踏ま
えた活動(例えば、秋以降に学生スタッ
フの所属学部毎にイベントを開催するな
ど)を計画・推進していく予定です。
発行
8
中京大学 FD 委員会
〒466-8666 名古屋市昭和区八事本町101-2 TEL(052)835-7138 http://www.chukyo-u.ac.jp/information/fd/index.html