高速連帳インクジェットにおける インク滴着弾挙動に

技術論文
高速連帳インクジェットにおける
インク滴着弾挙動に基づく速度限界の検討
Considering Speed Limit According to Droplet
Placement for Continuous Feed Inkjet Printing
要
旨
近年、インクジェット技術は高速連帳印刷機の分野
にも進出しており、その紙搬送速度は、 FUJI XEROX
2800 Inkjet Color Continuous Feed Printing
Systemにおいては200m/分である。インクジェット
の高速化を実現するための要素の1つは、インク小滴
の安定噴射による均一なドット形成であり、高速紙搬
送時に発生するプリントヘッドと紙間の気流が、正確
な着弾を確保するときの弊害となると考えられる。こ
れまで、実測や数値計算により、吐出液滴のズレやミ
ストの影響が検討された例はあるが、200m/分を超
える紙搬送速度での数plの微小液滴挙動に関する実測
例はない。そこで、2800ICCFPSおよび本検討用に
製作した高速紙搬送印字ベンチを用いて、各滴種の挙
動を検討し、高速印字限界の考察を行った。その結果、
印字ドットが不均一になる速度限界は、紙搬送により
発生した気流の影響よりも滴速差よる着弾ズレの寄
与に支配されることが明らかになった。
Abstract
執筆者
小野 吉彦(Yoshihiko Ono)
磯崎 準(Jun Isozaki)
平潟 進(Susumu Hirakata)
森田 直己(Naoki Morita)
研究技術開発本部 マーキング技術研究所
(Marking Technology Laboratory, Research & Technology
Group)
富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014
Inkjet technology has recently been introduced to
the area of high-speed continuous feed printers. The
paper feeding speed of the FUJI XEROX 2800 Inkjet
Color Continuous Feed Printing System is 200 meters
per minute. Among the elements for achieving high
speed in inkjet printers is to form uniform dots by the
stable jetting of ink droplets. However, the airflow
generated between the print head and paper at
high-speed paper feed operation is assumed to have
negative effects on achieving high image quality.
Therefore, we studied the motion of fine droplets when
paper is fed at a speed exceeding 200 meters per
minute by using 2800ICCFPS and a high-speed
printing bench created for this study, and also made
the relevant calculations to consider the paper feeding
speed limit in high speed printing. As a result, it was
clarified that the paper feeding speed limit in high
speed printing is affected more by the displacement of
ink due to a difference in drop velocity than by the
airflow generated when paper is fed.
105
技術論文
高速連帳インクジェットにおけるインク滴着弾挙動に基づく速度限界の検討
Inkjet Head
1. はじめに
近年、インクジェット(以下、IJ)技術は高
速連帳機の分野にも進出している。図1に、
Ink droplet
T.D.
Couette flow:u
u =U
y
TD
2000年以降に各社よりリリースされたIJ連帳
Paper
機の最高紙搬送速度の分布を示す。年ごとにそ
の紙搬送速度が上がり、高速化が進んでいるこ
図2
U:Paper speed
IJヘッド-紙間のクエット流れ
Couette flow between IJ head and paper
とが示される。さらなる高速化のためには、紙
Inkjet Head
へのインク滴の正確な着弾が重要となるが、こ
れまで実測やシミュレーションにより、吐出液
滴のズレ
1)-4)
droplet 2
5)
やミストの影響 が検討された例
はあるが、高速での紙搬送速度におけるピコリッ
トルオーダーの液滴着弾の実測例はなかった。
t1
Paper
図3
droplet 2
droplet 1
U:Paper speed
t2
Δd
droplet 1
Δd = (t 2 − t1 )U
紙への着弾時間差間の紙移動
Amount of paper fed when the arrival time of droplets are
different
そこで、今回、インク滴挙動に関して、
2800ICCFPSの最高紙搬送速度200m/分を
超える領域に至るまでの実測とシミュレーショ
差から、液滴同士で紙への着弾時間差が発
ンの検討を行い、高速化限界の予測を行った。
生する。
2. 高速紙搬送下での高画質化に向け
た弊害要因
高速紙搬送下時に、高画質化に対して弊害と
なる要因を検討し、以下の2つを最大要因とし
3. 実験方法
3.1
実験装置
3.1.1
2800ICCFPS
図4に示す2800ICCFPSの最高紙搬送速度
て取り上げた。
は、200m/分であり、搭載されるIJヘッド(以
1)紙搬送に伴い発生するIJヘッドと紙間の気
下、ヘッドと略す)は、大滴(12pl)
、中滴(8pl)、
流の影響
小滴(5pl)の3種類の液滴を吐出できる。本機
図2に示す紙搬送に伴い、IJヘッドと紙間に
は1台のプリンターユニットで両面印刷を実現
形成される気流(クエット流れ)の影響を
し、このクラスでは、設置面積において世界最
受け、IJヘッドから吐出されたインク滴は、
小のカラーIJ連帳機である。
紙搬送方向へのズレが生じる。
2)ヘッドの持つ性能バラツキの影響
3.1.2
高速紙搬送印字ベンチ
図3に示すヘッドの持つ性能バラツキに起因
今回作製した実験ベンチ(以下、高速ベンチ
した滴初速度や滴径の違いなどによる抗力
と略す)は、200~820m/分までの紙搬送が
可能であり、搭載されるヘッドは、中滴(8pl)、
Paper Speed[m/min]
400
300
Truepress Jet 520ZZ
出が可能である。
Prosper 1000
2800ICCFPS
200
HP T350/400
100
0
2000
図1
106
小滴(5pl)、微小滴(2pl)の3種類の液滴の吐
Prosper 6000
Truepress Jet 520
2005
2010
Press release year
2015
インクジェット連帳機の最高紙搬送速度推移
Transition of maximum paper speed in inkjet continuous
feed printer
図4
2800ICCFPS外観
Appearance of 2800ICCFPS
富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014
技術論文
高速連帳インクジェットにおけるインク滴着弾挙動に基づく速度限界の検討
3.2
実験条件
3.2.1
3.2.2
2800ICCFPSでの実験
高速ベンチ
表2に示す実験パラメーターと図6に示す印
滴 初 速 度 、 ヘ ッ ド と 紙 間 の 距 離 ( Throw
字パターンを用い、中滴を基準滴として、この
Distance以下、T.D.と略す)について、それぞれ
滴で構成されたドットに対して、小滴および微
3水準用意した。表1に実験パラメーターを示す。
小滴で構成されたドットとの距離を計測した。
着弾ズレ量計測は、図5に示す印字パターン
を用い、大滴を基準滴として、この滴で構成さ
れたラインに対して、中滴および小滴で構成さ
れたラインとの距離を計測した。
2800ICCFPSの実験パラメーター
Experimental parameters for 2800ICCFPS
4.1
2800ICCFPS測定結果
図7、図8、図9は、大滴に対する中滴および
小滴の着弾ズレ量をプロットしたものである。
滴種(滴量)
L(12pl), M(8pl), S(5pl)
紙搬送速度やT.D.の増加に対し、着弾ズレも
滴初速度
8.5m/s, 9m/s, 10m/s
増加し、滴初速度に対しては反比例することが
T.D.
1.0mm, 1.5mm, 2.0mm
示された。
紙搬送速度
50~200m/min
Reference dots line
Target dots line
Relative Displacement[μm]
表1
4. 実験結果
200
Drop Initial
Velocity: 8.5m/s
150
M-T.D.:1mm
M-T.D.:1.5mm
M-T.D.:2mm
S-T.D.:1mm
S-T.D.:1.5mm
S-T.D.:2mm
100
50
0
0
Reference dots line
図7
Paper moving direction
図5
計測用印字パターン(2800ICCFPS)
Test Pattern of 2800ICCFPS
Relative displacement
Target dots
Relative Displacement[μm]
Relative displacement
200
Paper Speed: 200m/min
M 10m/s
M 8.5m/s
S 9m/s
S 8.5m/s
150
100
50
0
図8
表2
計測用印字パターン(高速ベンチ)
Test Pattern of Hi-Speed Bench
高速ベンチの実験パラメーター
Experimental parameters for high-speed bench
滴種(滴量)
滴初速度
T.D.
紙搬送速度
M(8pl), S(5pl), SS(2pl)
6m/s, 8m/s, 10m/s
Relative Displacement[μm]
Paper moving direction
図6
富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014
0.5
1
1.5
T.D.[mm]
2
2.5
T.D.に対する着弾ズレ量変化
Relative displacement versus T.D.
200
Paper Speed: 200m/min
M-T.D.:1mm
150
S-T.D.:1mm
100
50
0
7
1.0mm, 1.5mm, 2.0mm
200~820m/min
100 150 200 250 300 350 400
Paper Speed[m/min]
紙搬送速度に対する着弾ズレ量変化
Relative displacement versus paper speed
0
Reference dots
50
図9
8
9
10
11
Drop Initial Velocity[m/s]
12
滴初速度に対する着弾ズレ量変化
Relative displacement versus drop initial velocity
107
技術論文
高速連帳インクジェットにおけるインク滴着弾挙動に基づく速度限界の検討
4.2
高速ベンチ測定結果
検討を行った。
図10、図11、図12は、中滴に対する小滴お
図14は、両実験装置による滴初速度10m/
よび微小滴の着弾ズレ量をプロットしたもので
秒、T.D.1mmにおける中滴8pl、小滴5plの場
ある。
合の紙搬送速度に対する着弾ズレ量をプロット
紙搬送速度が200m/分を超える領域におい
した結果である。
ても、紙搬送速度、T.D.および滴初速度に対す
両装置による実験結果は、紙搬送速度に対し
る着弾ズレ量の変化は、2800ICCFPSと同様
て連続的であり整合性があることが示された。
の傾向であることが示された。
4.3
5. シミュレーションモデルの検討
両実験装置結果の整合性
異なるため、2800ICCFPSの着弾ズレ結果に
液滴着弾ズレのシミュレーションモ
デル
対し、大滴12plからの中滴8plの着弾ズレ量と
実験結果の妥当性確認および、用意した実験
大滴12plから小滴5plの着弾ズレ量を差し引く
水準を超える紙搬送領域の予測のため、液滴着
ことで、中滴8plから小滴5plのズレ量とし、両
弾に関するシミュレーションモデルの検討を
装置における5plの実験結果を用いて整合性の
行った。
Relative Displacement[μm]
両実験装置では、図13に示すように基準滴が
ヘッドから吐出された液滴の速度は、重力以外
120
に媒体である空気の影響を抗力および揚力とし
Drop Initial Velocity: 10m/s
T.D.: 1mm
100
て受ける。重力方向をy、紙搬送方向をxとした場
80
合、液滴の挙動は式(1)
、式(2)で記述できる。
60
式(1)において、第2項は浮力、第3項のFy
40
S
20
はその他の外力を表す。第3項は仮想質量力や
圧力勾配により励起される力だが、本計算では、
0
0
200
400
600
800
Paper Speed[m/min]
1000
図10 紙搬送速度に対する着弾ズレ量変化
Relative displacement versus paper speed
Relative Displacement[μm]
5.1
インク滴密度が空気密度より十分大きいので無
視した。
2800ICCFPS
160
140
120
100
80
60
40
20
0
Drop Initial Velocity: 10m/s
Paper Speed : 600m/min
8pl
5pl
2pl
S
SS
0.5
1
1.5
T.D.[mm]
2
12pl基準
2.5
8pl基準
図13 計測方法の違い
Difference in measurement methods
600
Paper Speed : 600m/min
T. D. : 1mm
500
400
300
S
SS
200
100
0
6
7
8
9
Drop Initial Velocity[m/s]
10
図12 滴初速度に対する着弾ズレ量変化
Relative displacement versus drop initial velocity
11
Relative Displacement[μm]
図11 T.D.に対する着弾ズレ量変化
Relative displacement versus T.D.
Relative Displacement[μm]
8pl
5pl
0
108
Hi-Speed Bench
12pl
60
Drop Initial
Velocity: 10m/s
T.D.:1.0mm
50
40
30
20
2800ICCFPS
10
Hi-speed bench
0
0
200
400
600
800 1000
Paper Speed[m/min]
1200
図14 両実験結果の整合性
Coherence of experiments
富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014
技術論文
高速連帳インクジェットにおけるインク滴着弾挙動に基づく速度限界の検討
= FD (u − u p ) +
dt
g y (ρ p − ρ )
ρp
18μ C D Re
FD =
ρ p d p2 24
+ Fy
・・・(1)
・・・(2)
up :液滴の速度 u:空気の速度 FD:抵抗係数 gy:重力加速度
μ:空気の粘度
ρ:空気の密度
ρp:液滴の密度
Fy:その他の外力 dp:液滴直径 CD:抵抗係数 Re:レイノルズ数
60
Relative Displacement[μm]
du p
Drop Initial
Velocity: 10m/s
T.D.:1.0mm
50
40
30
20
Hi-speed bench
10
Simulation
0
0
ここで、式(2)に示す抵抗係数CDは、レイ
ノルズ数Reによって変化することが知られて
200
400
600
800 1000
Paper Speed[m/min]
1200
図16 実測とシミュレーションの整合性
Coherence of simulation
いるが、Reが低い場合(およそ1~10以下と言
われている)は、ストークスの抵抗法則
CD=24/Reが適用できるとされている。
今回の実験条件では、Reが10を超える場合
6. 考察
6.1
着弾ズレ要因の分析
もあったため、まず、搭載するヘッドの吐出方
図17は、基準滴:滴量8pl、滴初速度10m/
向の液滴速度変化を観察から求め、計算と比較
秒と測定滴:滴量2pl、滴初速度9m/秒におけ
した。図15に示すように、ストークスの抵抗法
るT.D.1mmの時の紙搬送速度に対する着弾位
則に従う抗力係数を用いたシミュレーション結
置ズレ要因の内訳を示す。
果(実線)は、実験観察(プロット)とほぼ一致
なお、図の縦軸である着弾ズレ量に関して、
しており、本方法による抗力計算が定量的に一致
プラスの場合は、基準滴の着弾位置に対して測
すると判断し、実験比較および予測に用いた。
定滴が遅れていることを示し、マイナスの場合
は、基準滴の着弾位置に対して進んでいること
5.2
実測とシミュレーションモデルの整
合性
を示す。
一点破線がクエット流れに起因する着弾ズレ、
図16は、基準滴:滴量8pl、滴初速度10m/
破線が着弾時間差に移動する紙搬送に起因する
秒と測定滴:滴量5pl、滴初速度10m/秒におけ
着弾ズレであり、気流(クエット流れ)の影響
るT.D.1mmの時の紙搬送速度に対する着弾位
よりも、着弾遅れに起因する用紙の移動の寄与
置ズレについて、高速ベンチとシミュレーショ
が大きいことが示された。
実験結果がシミュレーション結果に定量的に
一致していることが示された。
Drop Velocity [m/s]
12
10
8
Relative Displacement [um]
ン結果について比較したものである。
300
Total
Couette flow
Paper motion
250
200
150
100
50
0
-50
6
0
Solid Lines:Calculated Values
Plots:Experimental Values
4
2
0
400
800
Distance from Nozzle [μm]
200
400
600
800
Paper Speed [m/min]
1000
図17 着弾ズレ要因の内訳
Breakdown of major factors
1200
図15 観察とシミュレーションにおける滴速比較
Comparison of drop velocity between observation
and simulation
富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014
109
技術論文
高速連帳インクジェットにおけるインク滴着弾挙動に基づく速度限界の検討
着弾時間差は、測定滴の滴初速度が基準滴に
着弾ズレの要因として考えたクエット流れと、
対して遅い場合、用紙後方に遅れを発生する効
液滴同士の紙への着弾時間差が依存する物理量
果がある。一方、クエット流れは、常に用紙前
を把握するため、表3に示す25種類の組み合わ
方に進みを発生する効果がある。
せについて、影響の予測を行った。
実際、本印字実験でも、着弾ズレは、図18に
基準滴・滴量8pl、滴初速度10m/秒とした場
示すように、基準となる液滴の着弾位置に対し、
合の、クエット流れによる着弾ズレと液滴の運動
すべて用紙後方となっており、本計算結果を裏
エネルギーの関係を図19に示し、着弾時間差に
付けている。
よる着弾ズレと滴初速度の関係を図20に示す。
Reference
dots line
クエット流れによる着弾ズレは、滴の運動エ
Reference
dots line
Target dots
line
ネルギーで決まるが、紙移動による着弾ズレは、
滴重量の寄与は少なく、滴初速度差で決まるこ
とが示された。
Paper moving
direction
6.2
噴射パラメーターの着弾ズレへの寄
与の検討
図18 2800ICCFPSの実印字サンプル
Actual printing sample of 2800ICCFPS
表3
図21は、着弾ズレに対する各パラメーターの
シミュレーション条件
Simulation conditions
影響を把握するため、基準滴8pl、滴初速度
滴量
2pl, 5pl, 8pl, 10pl, 12pl
10m/秒に対する2pl、滴初速度10m/秒の着弾
6m/s, 8m/s, 10m/s, 12m/s, 15m/s
ズレ量について、滴初速度、T.D.など各パラメー
1mm
ターを±10%変化させた場合の計算結果である。
滴初速度
T.D.
紙搬送速度
滴初速度の寄与が、T.D.など他のパラメー
600m/min
Relative Displacement[μm]
ターに比べ、10倍以上大きいことが示された。
10
0
6.3
-10
高速化の限界として、着弾ズレに寄与が大き
-20
-30
い滴初速度に着目して、着弾ズレ量を目標値に
-40
収めるためのシミュレーションを行った。
-50
図22は、滴量8pl、2plの2種類の滴種を用い
-60
る印字を想定し、設定滴初速度10m/秒として、
-70
0
5
10
Kinetic Energy [x10-10J]
15
滴速バラツキを示す。
1000
Relative Displacement[μm]
Relative Displacement[μm]
紙搬送速度に対して着弾ズレ量の仮目標値
21μm(1/1200dpi)以内とした場合の許容
図19 運動エネルギーに対する着弾ズレ量変化
Relative displacement versus kinetic energy
500
0
-500
0
2
4
6
8
10 12
Drop Initial Velocity [m/s]
14
図20 滴初速度に対する着弾ズレ量変化
Relative displacement versus drop initial velocity
110
高速限界の予測
16
150
+10%
-10%
100
50
0
-50
-100
-150
Initial
Drop
Velocity Volume
T.D.
Ink
Air
Density Viscosity
図21 着弾ズレに対する各パラメーターの寄与
Effects by each parameter
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技術論文
高速連帳インクジェットにおけるインク滴着弾挙動に基づく速度限界の検討
Initial Velocity Variation [%]
15
10. 参考文献
10
1) W-K. Hsiao, S.D. Hoath, G.D. Martin
5
and
0
I.M.
Effects
-5
T.D. 1.0mm
-10
400
600
800
Paper Speed [m/min]
Ink-Jet
Printing
on
a
(2012).
-15
200
in
“Aerodynamic
Moving Web”, Proceeding of NIP28DF
T.D. 1.5mm
0
Hutchings,
1000
図22 紙搬送速度に対する滴初速度許容バラツキ
Estimation of tolerance limit of drop initial velocity
2) M.
FUJII,
MORI,
“Analysis
on
Behavior of Small Ink Drops Ejected
from Ink Jet Printhead”, ISJ, Vol.48,
No.4,
T.D.1mmの条件では、紙搬送速度200m/分
K.
pp.
244-254
(2009)
[in
Japanese].
での許容滴速バラツキが±6%であるのに対し
3) S. Wang, “Aerodynamic Effect on
て、820m/分では±1.5%となり、高速化のため
Inkjet Main Drop and Satellite Dot
には全滴速のバラツキ値を低減する必要がある。
Placement”, Proceeding of The 14th
International Conference on Digital
Printing
7. おわりに
Technologies,
pp.
5-8
(1998).
IJ連帳機および高速紙搬送ベンチにおいて、
4) N. Link, S. Lampert, R. Gurka, A.
ドット着弾ズレ量への各パラメーターの寄与を
Liberzon, G. Hetsroni, R. Semiat, “Ink
実測し、かつ実測値は、数値計算に良好に一致
Drop Motion in Wide-format Printers II.
することを明らかにした。
Airflow
その結果、ズレ量は、用紙搬送による気流に
基づくインク滴の軌道曲がりよりも、滴速差に
Investigation”,
Chemical
Engineering and Processing Vol. 48,
pp. 84–91 (2009).
よる着弾時間差に基づく用紙移動に支配される
5) N. Hirooka,Y. Ono, K. Mori and N.
ことが示された。従って、滴速度が画質確保の
Nakayama, “PIV Measurements of
ための重要な因子である。
Airflow and Ink Mist Motion around
Ink Jet Nozzles”, Proceeding of The
19th International Conference on
8. 商標について
Digital
z Prosperは、Eastman Kodak, Ltd.の米国
Printing
Technologies,
pp.
284-289 (2003).
およびその他の国における登録商標です。
z Truepress Jetは大日本スクリーン製造株式
会社の日本およびその他の国における登録商
標または商標です。
z その他、掲載されている会社名、製品名は、
各社の登録商標または商標です。
9. 出典
本 稿 は 日 本 画 像 学 会
“Imaging
Conference JAPAN 2013”論文集の内容
を再構成したものである。本稿の著作権は日本
画像学会が有する。
富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014
111
技術論文
高速連帳インクジェットにおけるインク滴着弾挙動に基づく速度限界の検討
筆者紹介
小野
吉彦
研究技術開発本部 マーキング技術研究所に所属
専門分野:インクジェット、撥水
磯崎
準
研究技術開発本部 マーキング技術研究所に所属
専門分野:インクジェット、超音波、電気電子回路
平潟
進
研究技術開発本部 マーキング技術研究所に所属
専門分野:インクジェット、流体、数値計算
森田
直己
研究技術開発本部 マーキング技術研究所に所属
専門分野:インクジェット、水中音響、沸騰
112
富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014