希望ヶ丘高校 - 湘南ゼミナール

2014 年度特色検査
分析
希望ケ丘高校
データ
A : B : C : D 比 3 : 5 : 2 : 2/時間 50 分/配点 200 点/観点:表現構成力・情報活用力・判断推理力・論理的思考力
2014 年度募集定員:358 名 / 2014 年度志願者数:447 名 / 2014 年度志願競争率:1.25 倍
論理問題のバリエーションが増え、よりいっそう論理思考重視傾向に
□問題の概要
文系寄りの「論理重視」問題
課題1 「判断推理」の問題。言葉の法則を論理的に推理する一種の「暗号解読」と、空間図形の問題。
課題2 「情報活用」の問題。日本から海外への留学者数に関するデータを読み取り、そこからわかることを説明
する、社会科的な資料読み取りと、調査結果に適したグラフの種類を選択する問題。
課題3 「表現構成」の問題。文章中の脱文を補充する問題と、文章の続きの段落を正しい順番に並べ替える国語
の学力検査的な問題。
課題4 「論理的思考」の問題。論理学の基本である演繹法の文章のうち、空欄になっている前提部分を記述する
問題と、文章で書かれた内容の結論部分を論理的に記述する、説明記述問題。
全体に「言語的論理」を特に重視した問題です。英語の問題はありません。
□設問一覧 難易度平均[6.5]
※表の詳しい見方は別のページにあります
はじめと終わりに論理パズル系、中間にデータ読み取りと段落整序などの読解系の問題
読解プロセス
大設問
設問
形式
使用教科
課題1
A設問1
記述
国論
□
B設問2
記述
国論
□
課題2
C設問3
計算
数
□
設問1
記述
国社
□
設問2
選択
社
□
国社
□
設問3の1 記述
課題3
課題4
読1 読2 読3
難
デ
デ
標準的思考プロセス
4
解答プロセス
1
2
3
推
判
変
5
6
7
選択 記述 説明 論述
□
□
6
暗号解読
推
判
変
□
□
7
暗号解読
図
算
判
□
□
6
多面体の頂点の数
推
判
文
□
□
8
日本からの留学者、減少傾向の理由
算
判
4
日本からの留学者減少国・地域の読み
取り
推
判
文
□
8
日本からの留学先多様化の根拠
□
□
□
□
難度 内容概略
設問3の2 選択
社
□
推
判
判
□
5
資料選択の適切さ
設問1
選択
国
□
推
推
判
□
5
脱文補充
設問2
選択
国
□
難
推
推
推
□
7
段落並び替え
設問1
説明
理論
□
難
推
判
文
□
□
□
8
演繹法の空欄補充
設問2
説明
理論
□
推
判
文
□
□
□
7
論理的な文章の結論部空欄補充
判
はじめは暗号、最後は文章の補充。一見無関係ですが、どちらも「論理」を駆使して解決するパズルである点は
同じです。また、中間に「データ読み取り」と「段落整序」などの国語の入試問題にありそうなものがならびます。
ただし、希望ケ丘はデータ読み取りに社会の内容を、段落整序に理科の内容を関連させ、一ひねりした教科横断型
問題に仕上げています。
それでも、全体が「論理重視」で一貫している点は明らかです。
□設問の特徴
国語と数学の境界を横断する論理型問題
「文系寄り」と書きましたが、論理判断の問題には数学的な思考も必要となります。国語と数学の共通点は、何
かをおぼえることよりも「筋道を立てて判断する」―論理が中心であることです。一見無関係に見える国語と数
学が、論理の教科という深い地点でつながっていることを教えてくれる興味深い問題です。
なお、課題1の第一印象は国語ですが、数学の規則性の内容を含んでいます。また、英語が無いことからも、希
望ケ丘が、知識を試すためではなく、論理的能力を試すために特色検査を行っていることがわかります。
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□昨年との比較
論理重視の傾向がより明確に示された
「論理重視」の姿勢は、2年目を迎えてさらにはっきりしました。昨年度は課題1と課題4にほぼ同じ内容のパ
ズルがあり、設問内容が重複していましたが、今年はより整理され、論理問題のバリエーションが広がりました。
特に、課題4の「演繹法」の問題は、典型的な論理学の問題であり、この分野への強い意気込みが感じられます。
なお、昨年あった「論述型(意見を述べる小作文)
」問題は今年出題されていません。
入試問題はその学校が発信するメッセージです。「このような学力を身につけて入学してください」「このような
学力のある生徒を求めています」と語ります。多くの学校が、過去の問題を公開してそれをわかりやすく示します。
その点でも希望ケ丘は徹底しています。2012 年に特色検査開始に先立って公表された「出題例」
、2013 年度の問
題、さらに 2013 年の夏にもう一度、学校説明会の資料として特色検査の例題を新たに用意しました。そして、こ
れらの「過去問」と今年の問題まで、
「論理・データ読みとり」などの重要課題は常に一貫しています。もちろん、
とても重要な学力です。そのように、求めるものを明らかにし、積極的に公開することで学習をうながす姿勢にも、
同校の意欲がよく現れています。
■問題・分析・湘ゼミの対策例 ①
課題1―A, B
暗号解読
「みず」という言葉は、ある法則を用いると、以下のように表される。
(PL , CX)
また、
「さくら」という言葉は、この法則を用いると、以下のように表される。
(VD , NX , UD)
この法則を用いると、
「こなゆき」という言葉はどのように表されるか、答えなさい。
◇問題分析:言語・論の方法について
今年の特色検査は、このような暗号解読パズルではじまりました。ポイントは仮説をたてて推理するこ
とです。このような「わかっている部分から、わからない部分を推理する」作業が、希望ケ丘の特色検査
全体の基調になっています。このあとも、推理で解決する問題が続きます。
□「特色検査対策講座」の出題
26 進法という数字のシステムを考えてみる。数値を表す記号にアルファベットを用いるのである。これは、
a=0、b=1、c=2、…、z=25 を表し、26 になったら新しい位に上がる。
右から、1 の位、26 の位、262(=676)
、263(=17576)の位と呼ぶこととする。たとえば、26 進法の
「uv」を 10 進法で表すと、26×20+1×21=541 となる。
では、10 進法の 15093 を 26 進法で表すとどのようになるか、答えなさい。
■問題・分析・湘ゼミの対策例 ②
課題2―設問1,2
□表1〜3
人間の移動に関する地理的データを読み取って傾向や変化を説明する問題
日本から海外への留学者の推移・留学適齢期の人口と留学者率の推移・日本からの留学先上
位の国と地域の推移
設問1 [表 1]より、日本から海外への留学者数は減少傾向にあることがわかるが、その理由として[表
2]から読み取れることを 1 つ答えなさい。
設問2 [表 3]より、2004 年以降日本からの留学者数が減少傾向の国・地域があることがわかる。次の
1〜4のうちから、減少観向の国・地域の組合せとして適切なものを選び、番号で答えなさい。
(選
択肢は省略)
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設問3
[表]より、日本からの海外留学者の留学先が多様化したと考えられるが、表中のどのような変
化からそれを読みとることができるか、説明しなさい。
◇問題分析:言語・論の方法について
資料の読みとりです。形式上は、学力検査の国語の問題と似ています。単なる読みとりではなく「わか
っている部分から、わからない部分を推理する」点が希望ケ丘の問題として一貫しています。
□「特色検査対策講座」の出題
神奈川県は、都道府県中第二位の人口をもつ「過密県」で
ある。また、全国の都道府県で唯一、政令指定都市が3市
ある。県内の横浜市、川崎市、相模原市は、他の政令指定
都市の多くと異なる性格をもっている。資料 1 を見てわか
る範囲で、その特徴を 15 字以内で説明しなさい(相模原
市については横浜市および川崎市と同じ特徴をもつもの
とする)
。
また、そのような特徴をもつ理由を推測し、次の語句を用
いて 25 字以内で説明しなさい。
語句【
東京
・
職場
・
通勤
資料1 日本の政令指定都市と東京特別区の人口
都市名
東京23区
横浜市
大阪市
名古屋市
札幌市
神戸市
京都市
福岡市
川崎市
都道府県 昼間人口 夜間人口
東京都
1128
835
神奈川県
321
355
大阪府
358
259
愛知県
252
219
北海道
189
188
兵庫県
155
152
京都府
158
146
福岡県
157
138
神奈川県
115
133
】
■代表的な問題と湘ゼミの対策例 ③
課題4―設問1 演繹法による説明手順の語句を補う問題
「演繹法」についての説明があり、次の演繹法による推論の空欄を補う問題です。
体内で働くホルモンの 1 種に、神経伝達物質がある。
(前提 1)
(前提 2)
アドレナリンは、神経伝達物質の 1 つである。
(前提 3)
したがって、 アドレナリンは化学物質から構成されている。 (結論)
◇問題分析:論理を正しく用いるための、数学にきわめて近い「本格的な国語」
素材は高校理科の学習内容ですが、本質は国語です。それも、高度に論理的な「本格的国語」というべ
きでしょう。ある言葉が「指示すること」と「指示しないこと」を厳密に読解します。
では、この問題の記述内容をたとえば、次のようにさし変えたらどうでしょうか。
2つの三角形 ABC と DEF において、角 ABC と角 DEF の大きさが等しい。
(前提1)
(前提2)
………以下略………
数学の証明問題です。つまり、希望ケ丘の「言語的論理」とは、国語の読解であると同時に、数学的論
理の土台にもなっているのです。
以上のことから、希望ケ丘が言語の厳密なあつかいを特に重視することがわかります。また、全教科の
学力の土台をしっかり構築することを求めていることもわかります。たいへん意義深いメッセージです。
なお、この前に「段落並べかえ」の問題があります。国語の高校入試や大学入試によく見られるもので
す。特色検査模試に何回か出題しましたので、受検者にはおなじみの感があったかもしれません。これも、
言語の論理構造の理解で解答するものです。
□「特トレ」の出題
「考える」方法に「帰納法」と「演繹法」の二つがある。帰納法とは、複数の事実から、そこに存在する
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であろう規則や新しい知識を予想することである。一方の演繹法はその反対で、規則(法則)から事実を
導くことである。では、次に示す事例について、それぞれが「帰納法」
「演繹法」のどちらにあてはまるこ
とか、すべて答えなさい。また、これらの中には論理的に誤った判断がなされているものが 1 つある。そ
れを記号で答えなさい。
ア
イ
ウ
エ
オ
カ
キ
すべての⻑方形は平行四辺形に含まれる。ゆえに、まだ見たことのない⻑方形 EFGH は平行四辺形と
考えられる。
衆議院議員の被選挙権は 25 才以上で得られる。したがって、衆議院議員の相模次郎氏は 25 才以上で
あると見てよい。
松尾芭蕉は、
「おくのほそ道」において、実際に見ていない風景を書いていることが研究の結果明らか
になった。だから、
「おくのほそ道」の記述はすべてにウソを含んでいると考えてよい。
日本語の文字の数を基本的な仮名の数から 50 とすると、理論上作成可能な俳句の種類は 5017 と想像
できる。ただし、この中の多くは日本語として意味をなさないものも含まれる。
モーツァルト国際ピアノコンクールで本戦出場した日本人ピアニストは、これまで全員5位以内に入
賞を果たした。だから、今年の出場者、武蔵三郎氏も5位以内の入賞が期待できる。
1 と自分自身以外に正の約数を持たない、1 以外の自然数「素数」は、今のところ出現に規則性が見
つからないため、無限に存在すると考えられる。
食物を腐敗させる菌は、適度な高温と湿気を好む。そこで、乾燥させて冷やすことで、菌の活動をお
さえ、食品を⻑く保存できる可能性が高くなる。
■代表的な問題と湘ゼミの対策例 ④
課題4―設問2 葉緑体がどのような光を吸収して養分を生むかを考える論理問題
植物の葉は緑色をしている。これは、葉には葉緑体が含まれており、その中の葉緑素が緑色をしている
からである。葉緑体では太陽の光を受けて光合成が行われている。光合成により植物は養分を作り出すこ
とができる。太陽の光は赤、⻘、緑といったすべての色の光を含んでいる。葉緑体は太陽の光を受けて、
緑色の光を吸収せずに反射しているため、緑色に見える。したがって、植物の養分は、
ことによ
って作られる。
※文の空欄にあてはまる適切な表現を、
「色」
「光」を用いて答える。
◇問題分析:読解パズル
理科のように見えて、読解によるパズルです。そもそも論理を用いる思考は、特定の教科と結びつくも
のではなく、言語や数学的な活動すべてをカバーするものです。ここでは「緑色」の意味することを読み
とって、光の性質にあてはめて理解し、表現することが求められています。
緑色をしているということは「緑色の波⻑の光を用いない」ことを意味するという、論理のまぎらわし
さを突破できるかどうか、手際よく表現できるか、という問題です。
□「特色対策講座」の出題
植物といえば、緑色のイメージがある。葉緑体を細
胞の中に持つことが植物の条件であるから、まちが
っていないイメージである。そして、葉緑体とは、
その名のとおり、緑に見えるものである。では、な
ぜ植物の葉は緑色なのだろうか?
葉緑体(または葉緑素)を持つから、では答えにな
らない。なぜ、それが緑色であり、⻘や赤ではない
のか、が問題なのである。葉緑体のはたらきは光合
成である。光を吸収し、そのエネルギーを酸素の製
造に用いる。光を吸収するのに最も適した色は⿊で
ある。完全な⿊は、目に見える光のすべての色を吸
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収するため、
「真っ⿊」に見えるのである。反対に、すべての光を完全に反射するものは、本来の太陽光の
色「真っ⽩」に見える(⽩も⿊も厳密には色とはいえないが、ここでは色と同じように書いた)
。
人間の目が認識する色とは、太陽光の一部の要素である。プリズムを使って分解すると、太陽光は、おお
まかに赤→⻩→緑→⻘→紫といった順の色の模様「スペクトル」になる。真っ赤な物質があれば、これは
赤を反射し、赤以外の色を吸収していることになる。図は、赤い物質が吸収する色の領域をイメージでき
るよう、大まかにグラフ化したものである。では、同様の方法で、葉緑体が光合成に用いている光の領域
を解答欄にグラフ化して書きなさい。
□課題と対策
常にことばを厳密にあつかう+頭と手を動かす……推理を楽しむ
論理というと、難しい印象を受けるかもしれません。
ですが、例えば、「〜のみ」「すべてを含む」や「ゆえに〜」などの「言語を厳密に、よく考えて使う」ことに尽
きるのです。まず、常に正確で厳密に日本語を使うことを意識しましょう。また、課題 1 設問2の「○○という言
葉は、ある法則を用いると、以下のように表される」のような文を読んだとき、考えながら同時に、手も動かすこ
とです。基本は「図式化」です。
また、今回の暗号解読のような問題は、複数のヒントを参考に、何度も仮説を立て検証をくり返す必要がありま
す。作業の連続を正確に行い続けるスタミナも重要です。
最後に、
「特色対策講座」から、希望ケ丘が求めるような「論理」を解説した部分を引用します。
□「特色検査対策講座」の解説
「論理」とは前にも書いたように「○○だから●●である」といった、ものごとのつながりを表すものです。そ
の代表的な書き方が⻄洋論理学の伝統「三段論法」です。では、その例です。
1:すべての日本人は人間である
2:すべての人間は必ず呼吸をする
3:
(だから)すべての日本人は必ず呼吸をする
ここに示した「論理」とは、何を、どう言っているのでしょうか?
1:日本人 = 人間
次のように図式化しましょう。
2:人間 = 呼吸するもの
3:日本人 = 呼吸するもの
これは正しくありません。日本人はたしかに人間ですが、人間がすべて日本人ではありません。同じ事が人間と
呼吸をするものの関係にもあります。あえて数式の記号で表すなら、次のようになるはずです。
1:日本人 < 人間
2:人間 < 呼吸するもの
3:日本人 < 呼吸するもの
この関係を、以前に紹介した「ベン図」で表しましょう。右の図です。さ
て、高校数学で習う「集合」では、この関係を次のように表します。次の
記号「∈」は「含む」と読みます。その通りの意味です。逆向きもありま
す。
日本人 ∈ 人間 ∈ 呼吸するもの
ちなみに、この「三段論法」の結論は、次のとおりです。
日本人 ∈ 呼吸するもの
「たったこれだけのことに大げさな……」と思いませんでしたか?
その
とおりです。まったくおおげさです。でも、見直してください。先の例でも、つい「日本人は必ず呼吸する」を「日
本人=呼吸をするもの」と誤ってしまいました。言葉というものは、こんなにかんたんに誤った表現ができてしま
うのです。だから、厳密さを優先する「学問」の世界では、ある程度世界共通の記号や説明の方法を整備して、誤
解を減らそうとしているのです。
なお、この「三段論法」の手順を見て「数学の証明に似ているな」と感じたあなたは実に鋭い。そのとおりです。
似ているのではなく、数学の証明の方法は、このような言語を抽象化(図式化)して組み立てられたものなのです。
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