前希釈on-lineHDFの臨床効果

前希釈on-lineHDFの臨床効果
第29回 ハイパフォーマンス・メンブレン研究会
於、日本消防会館(ニッショーホール)
平成26年3月9日 (日)
医)城南会 西條クリニック鷹番
朝日大樹、中島成仁、西島沙織、土屋光清
下地 博、嶋貫久美子、西條公勝、西條元彦
目的
• on-lineHDFは低分子量蛋白領域の除去性能
に優れ、また関節痛、いらいら、不眠、食欲不
振、貧血などの改善効果が期待される。
• 当院では、平成25年1月より全台コンソールを
on-lineHDF治療が可能である多用途透析装置
(日機装社製 DCS-100NX)に変更した。
• 血液透析から前希釈on-lineHDFに変更後の栄
養状態とESA使用量の推移、臨床症状の変化
について検討した。
対象と方法
週3回、4時間以上施行している慢性維持血液透析患者 71名
(経過中血清ALBが低下した2例(3.3mg/dL以下)はMFX-Mに変更
・ 平均年齢: 67.3±11.4 歳
& 死亡4例は除外)
・ 平均透析歴: 8.6±6.6年
・原疾患: DMN 36名、CGN 7名、不明 17名、その他 11名
血液透析(以下、HD)から
30L前希釈on-lineHDF (以下、on-lineHDF) に変更
HD
30L 前希釈on-lineHDF
QB [mL/min]
234 ±35
238±32
QDtotal [mL/min]
500
500
FB-U
NV-X
APS-EA
積層型透析器
MFX-S(ニプロ)
膜面積 [m2]
1.83±0.34
1.87 ±0.31
透析液
カーボスターP
カーボスターP
膜種
対象と方法
• 評価項目(評価期間
10ヶ月間)
・栄養状態(GNRI、n-PCR、血清リン、DW)&ESA製剤の推移
・β2-MG、α1-MG除去率 (on-lineHDF開始3ヶ月後に測定)
・患者愁訴モニタリングに愛Pod調査シート
(HD時、on-lineHDF開始1ヶ月後、3ヶ月後)をおこなった。
愛Pod調査シート
自己記入形式(家族またはスタッフによる聞き取りも可)
質問数 20項目 、各項目0~4の5段階評価のフェイススケール
点数が低い方が愁訴が少ない(合計最高点 0点 最低点 76点)
on-lineHDF治療で期待される効果として
関節痛、かゆみ、いらいら、寝つき、睡眠、食欲
で点数が2点以上に着目した。
政金生人 (2011年)「患者視点の新しい透析治療―わかりやすい計画から実際の処方」 より引用 新興医学出版社
**P<0.01
*P<0.05
mean±SD
DW ( Kg )
HDをベースラインとしてWilcoxonの符号付き順位検定で比較
DW
*
**
**
**
4
2
0
血清リン / 血清アルブミン(mg/dL)
GNRI
HD
*
6
GNRI
8
10
期間(ヶ月)
30L前希釈on-lineHDF
*
*
**
*
**
*
血清リン
血清アルブミン
**
**
**
*
n-PCR
*
0
HD
2
4
6
8
n-PCR [g/Kg/day]
10
期間(ヶ月)
30L前希釈on-lineHDF
Fig.1 栄養状態の推移 (n =71名の平均値)
HDをベースラインとしてWilcoxonの符号付き順位検定で比較
[ IU / 週 ]
[ μg / 週]
n=24
**
-18.5%
*
n=33
**
**
**
*
* * **
( g/dL)
HD
2
4
6
30L前希釈on-lineHDF
8
期間(ヶ月)
-9%
( g/dL)
*
0
**P<0.01
*P<0.05
mean±SD
0
HD
2
* *
*
4
6
8
期間(ヶ月)
30L前希釈on-lineHDF
*感染症や出血傾向が少ない患者
Fig.2 週あたりのESA使用量の推移
愛Pod 2点以上 患者割合 (%)
Fig.3 愛Pod2点以上訴える患者割合(%) n= 71
かゆみ2点以上 9名
4点
3点 2人
かゆみ0点の内訳
3人
2点
4人
on-lineHDFで、かゆみ0点になった10名
0点
26人
1点
10人
16人
35人
on-lineHDF 3ヶ月目(かゆみ点数の内訳)
Fig.4 ①かゆみ2点以上の群 vs
②on-lineHDFでかゆみ0点になった群 比較
愛Pod 点数減少した患者割合 (%)
関節痛 いらいら 寝つき
n.s.
P< 0.01
n.s.
熟睡
食欲
n.s.
n.s.
① かゆみ2点以上
( n= 9 )
② かゆみ 0点
( n= 10 )
86
20
① ②
① ②
① ②
① ②
① ②
その他、15問中10問で同様の傾向を示した
Fig.5 HDとon-lineHDF 3ヶ月目を比較
愛Pod点数の減少した患者割合(%)
Kruskal-Wallis H 検定
全体に対する割合 (%)
100
80
60
40
20
0
点数減少
点数不変
点数増加
Kruskal-Wallis H 検定 ( n.s )
Fig.6 かゆみ症状とβ2-MG&α1-MGの除去率比較
(HDとon-lineHDF 3ヶ月目の比較)
まとめ
• on-lineHDF変更後、栄養状態の推移は
良好であった。また、ESA製剤使用量が
有意に減量した。
• β2-MG&α1-MGの除去率が高い群では、
かゆみが減少し、他の愁訴緩和も期待でき
ることが示唆された。
結語
• 低分子量蛋白領域の積極的な除去で
種々の愁訴が軽減し、患者のQOL向上
が期待できると思われた。
• 今後は、除去率向上による症状改善効果
を検討していく予定である。
ハイパフォーマンス・メンブレン研究会
COI 開示
筆頭発表者名: 朝日 大樹
演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係にある
企業などはありません。