2014~2015年度 運動方針

2014~2015 年度
運動方針
ストップ・ザ・格差社会!
すべての働く者の連帯で「安心社会」を切り拓こう!
総論
はじめに
連合は、発足から、まもなく 25 年目を迎える。戦後労働運動の悲願であった労働
戦線統一は、すべての働く者の幸せの実現のために力を結集し、労働運動を発展させ
るために実現したものである。
この間、われわれを取り巻く政治・経済・社会の状況は、めまぐるしく変化し、そ
れに対応して働く仲間とともに運動をつくってきた。いま、運動を取り巻く状況は、
極めて厳しい。だからこそ、われわれは、連合をつくった原点に立ち返って、社会正
義の旗を掲げ、組合員や働く仲間とともに、さらには志を同じくする各種団体などと
連携しながら、運動をつくり、暗闇の中で声をあげられずにいるより多くの働く仲間
を照らす光とならなければならない。連合は、大衆行動を提起し、社会的うねりをつ
くりだし、社会への発信力を高めながら、運動の前進をはかる。
本運動方針では、連合運動の到達点と課題を改めて認識した上で、2020 年を目途に
実現をめざす「働くことを軸とする安心社会」「1000 万連合」などの中期方針を踏ま
え、この 2 年間で重点的に取り組むべきことを提起するものとする。
1.現状認識:われわれの直面する「いま」 ~なぜ、危機なのか~
(1)われわれは時代の大転換期を生きている
世界は大きく変わった。ケインズ的な福祉国家の見直しのもとで世界各国は小
さな政府、規制緩和、競争至上の新自由主義の国家運営に転換したが、その結果、
金融資本主義が暴走し、世界中に格差と貧困をもたらし、その挙句に大恐慌以来
の世界金融経済危機を引き起こした。これを契機として、新自由主義からのパラ
ダイムシフト(社会全体の価値観の転換)が模索され、ディーセント・ワーク(働
きがいのある人間らしい仕事)を回復の中心に置いた持続可能な経済社会システ
ムへの転換の必要性が指摘されている。こうした動きの背景には、各国の労働組
合や市民運動などが、所得分配の不公正や金融の暴走のツケを国民に押しつける
不条理と対峙する運動があった。
しかし、今もICT革命を背景としながら、資本は国境を越え、経済成長の高
い新興国へと向かい、さらには投機マネーとなって再び世界を駆けめぐっている。
経済のグローバル化に対応したガバナンスの強化が求められており、国連やIL
O、さらにはG20 といった国際機関や国際的枠組みの役割発揮が不可欠となって
いる。
一方、わが国においては、こうした世界の潮流に加え、東日本大震災からの復
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興・再生やデフレ経済、世界に類をみないスピードで進行する超少子高齢社会へ
の対応なども重なり、問題がより複雑化している。問題を整理し、持続可能な経
済社会のあり方とそこに至る道筋の全体ビジョンを描き、共有し、社会が連帯し
て大転換期を乗り越えなければならない。
特に、東日本大震災からの復興・再生を成し遂げることは日本再生の最重要課
題であり、被災者の生活再建、被災地の産業再生と雇用創出は最優先されなけれ
ばならない。中でも福島における除染や復旧、安全・安心のまちづくりは迅速に
進められる必要がある。
社会の現実に目を向ければ、個別利害や短期利益に埋没し、将来展望を開けず、
働く者の暮らしはむしろ苦しさを増している。非正規比率の高まり、ワーキング
プアなど貧困層の増大、多数の長期失業者、生活保護受給者の増大、賃金水準の
低下、集団的労使関係の後退など、個人の生活の安寧と社会システムを支えるは
ずの雇用が傷んできたことが社会をむしばみ、社会の持続可能性を脅かしている。
持続可能な経済社会システムへの改革は、劣化した雇用の立て直しを中心に据え
る以外に途はない。
(2)価値観の転換に向けた問題意識は拡散し、新自由主義への回帰が始まり格差
拡大が再燃している
2009 年の政権交代は、新自由主義にもとづく政策体系から人々のくらしの安
心・安全の確保や持続可能な社会をつくるための政策体系へと舵を切る契機とな
った。子ども・子育て施策の拡充、高校授業料の実質無償化、非正規労働者等に
対する保護法制の強化、雇用のセーフティネットの拡大、中小企業への支援強化、
男女平等参画など、生活者・勤労者の視点に立った政策が前進し、パラダイムシ
フトに向けた種がまかれた。
しかし、民主党政権は、改革の先にあるめざすべき社会像についての国民的コ
ンセンサスづくりや個別利害を乗り越える世論の形成に力を発揮できず、政権運
営での経験不足や党運営のまずさも加わり、2012 年 12 月の総選挙で大敗を喫し
た。加えて、2013 年 7 月の参議院選挙でも惨敗した。政治不信の高まりのもと、
2012 年総選挙の投票率は史上最低を記録した。
一方、一旦はなりを潜めたかにみえた新自由主義が、2012 年末の政権交代以
降、再び力を復活させつつある。
安倍政権は、デフレ脱却を政策運営の柱に据え、いわゆるアベノミクスを展開
している。期待感から株高・円安が進み、一部大企業を中心に業績が回復したも
のの、輸入物価の上昇など副作用も現れている。問題なのは、劣化した雇用の立
て直しはまったく後回しにされていることである。それどころか、さらなる雇用
の劣化につながる労働者派遣法の議論が提起されるに至っている。さらには、格
差拡大、社会保障制度改革の停滞、社会的排除など、生活の安定・安心が顧みら
れない懸念が大きくなってきている。途中段階にあったパラダイムシフトは、元
に戻されようとしており、労働者保護ルールの改悪に対しては、連合は、大衆行
動を構え、社会的うねりをつくりだし、総力を挙げて対抗していく必要がある。
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また、2013 年 7 月の参議院選挙では、憲法改正が一つの争点として浮上し、
集団的自衛権をめぐっての解釈改憲の動きさえも出てきている。今後の動向によ
っては、憲法の平和主義が脅かされるとともに民主主義社会の基盤そのものが揺
らぎかねない。加えて、正規・非正規労働者の分断ばかりか、官・民労働者の分
断を謀る動きも明確になってきている。こうした動きに対し、団結を強め、断固
たる姿勢で対峙していかなければならない。
企業行動も、短期利益を優先する傾向が強まっており、「人への投資」がおろ
そかになっている。また、経営者団体や経営者は、企業の社会的責任の重要性を
強調しているが、その一方で、労働者を使い捨てにする、いわゆるブラック企業
が社会問題化している。企業や産業界が自らの社会的責任を果たさず、働く者の
犠牲の上に利益を追求することは許されない。
(3)危機感を共有化し、「組合が変わる。社会を変える」運動の再構築が求めら
れている
われわれを取り巻くこうした変化や現実に対して、労働運動は、的確に対応
できているといえるだろうか。
今から 10 年前、労働組合の社会的存在意義について、中坊公平座長をはじめ
とする 7 人の有識者による「連合評価委員会報告」が提起された。働く者の立場
から自覚的にいまの社会を見つめなければ、問題意識が拡散し、「働く者が皆ば
らばらに、自分のことしか考えなくなる」「その場しのぎの場当たり的行動しか
とれなくなる」と警鐘を鳴らした。また、運動の再構築に向けて、「不公正や不
条理なものへの対抗力、それを正すための具体的運動と闘う姿勢が求められてお
り」「弱い立場にあるものが協力、連帯してこそ不条理に立ち向かえる」ことを
想起するよう求めた。さらには、「企業別組合主義から脱却し、すべての働く者
が結集できる組織戦略を」構築する必要性を説いた。
連合は、この報告を受けて、3 次にわたる組織財政確立検討委員会や各種専門
委員会での検討、都度の運動方針への反映を行い、実践に努めるとともに、20
周年PT等で検証をし、働く者すべてに貢献する社会的運動づくりに努めてきた。
とりわけ、2009 年の第 11 回定期大会には「連合結成 20 周年にあたっての提言」
を提起し、また、2010 年 12 月には、わが国がめざすべき社会像についての提言
「働くことを軸とする安心社会」を提起した。
また、地域に根ざした顔の見える運動を強化する中で、地域協議会を再編し、
「STOP THE 格差社会! 暮らしの底上げ実現」キャンペーンなど、全国でキャン
ペーン活動を展開できるような組織力も整備されつつある。同時に、すべての働
く者に視点を据えた政策を進め、2007 年には非正規労働センターを立ち上げ、
非正規労働問題に力点を置いた運動を進めてきた。春季生活闘争においては非正
規共闘を設置し取り組みを進め、法制度面でも、非正規労働者保護の強化に向け
て労働者派遣法や労働契約法の改正への取り組みを進めた。非正規労働者の組織
化についても重要課題と位置付けて取り組みを進め、連合組織人員の 10%を超
えるところまできている。
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しかし、格差は依然として解消されてはおらず、労働組合の推定組織率も 10
年前の水準からさらに低下して 18%を割り込んでいる。産業構造のサービス化
が進むもとで正規雇用の組合員が減少し続けており、また、ICT革命やグロー
バル化を背景に、産業構造の転換や企業合併、再編などが以前とは比較できない
ほどのスピード感で進んでいる。正規・非正規にかかわらず、職場や企業グルー
プの中に多くの未組織労働者を抱える現状があり、労働組合としての存在意義が
問われている。
連合運動が、「労働を中心とした福祉型社会」そして「働くことを軸とする安
心社会」の実現に向けて達成してきたことも決して少なくはない。ただし、社会
にアピールする力は不十分であった。また、「評価委員会」から提起された危機
感は、組合員一人ひとり、あるいは組合役員のハラに落ちて運動を大きく変える
ところまで十分に共有化されているとはいいがたい。内向きの組合活動に陥りが
ちで「労働運動の姿が見えない」と指摘する声も依然としてあがっている。労働
組合の専従者数の減少に加え、職場環境や労働者の意識の変化などもあり、総じ
て労働組合への参加・求心力も低迷している。私たちは、10 年前と同様、危機
に直面し続けている。
労働組合は、真面目に働く者が報われない状況、不公正や不公平な格差、貧困、
マネーゲーム化した資本主義の荒廃・ゆがみなど、社会の不条理に毅然と立ち向
かわなければならない。額に汗して働く者の誇りをかけた明確な対抗軸を打ち立
て、組合員一人ひとりに向き合いながら、今こそ「個人の力では社会を変えられ
ない」「自分だけはなんとかなる」といった風潮を変え、時代の大転換期を乗り
越えていく結節点となることが求められている。そのためには、労働運動自身も
変わらなければいけない。
2.われわれのめざす社会と連合運動の役割
(1)われわれは「働くことを軸とする安心社会」の実現をめざす
連合は、世界の転換期に直面するなかで、いち早くめざすべき社会像の検討に
着手し、持続可能性を重視した公正な社会の構築を念頭に、「働くことを軸とす
る安心社会」の旗を掲げた。
「働くことを軸とする安心社会」とは、働くことに最も重要な価値を置き、共
に生きる社会である。誰もが公正な労働条件のもと多様な働き方を通じて社会に
参加でき、社会的・経済的に自立することを軸とし、それを相互に支え合い、自
己実現に挑戦できるセーフティネットが組み込まれた社会である。それは、人口
が減少し、超少子高齢化が急速に進むなかで、生き方・働き方をトータルで見直
し、それを支える社会の仕組みを組み替えていくことでもある。
また、今わが国社会が直面する格差問題、貧困、社会保障基盤のゆらぎは、雇
用が傷み、公正な分配がなされていないことに大きく起因する。公正な分配を受
けるためには集団的労使関係の構築が大きな前提であり、どの職場にも労働組合
が確立される必要がある。とりわけ、グローバル化と産業構造の転換が加速度的
に進む状況にあって、労働者はこれまで以上に大きな影響にさらされるようにな
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ってきている。労働者は、労働組合をつくり、労働組合に入らなければ、十分な
保護を受けることができないし、公正な分配を受けることもむずかしい。
「働くことを軸とする安心社会」を実現するための具体的政策群として、連合
は、2011 年に「新 21 世紀社会保障ビジョン」と「第 3 次税制改革基本大綱」を
掲げ、2013 年には「要求と提言」の第 2 部として 2020 年までに実現をめざす「政
策パッケージ」を決定した。その一方で、未組織企業や非正規労働者、関連会社
などの組織化を通じて 2020 年までに「1000 万連合」をめざすことも決定した。
めざすべき目標は明確になっており、「働くことを軸とする安心社会」の社会
的浸透をさらにはかりつつ、それをいかに実現するかが問われている。
(2)社会の共感をよぶ運動を構築することが課題である
政策の実現には、広く国民の共感が得られる運動が重要である。まずは働く者
一人ひとりとの対話を通じ、働く者の生活不安・将来不安の根源にある課題の共
通理解を深め、改めて「働くことを軸とする安心社会」をめざす必要性について、
問題意識を醸成する必要がある。組織内にあっては、組合員一人ひとりが問題意
識を共有する取り組みを徹底し、組織外にある多くの働く人たちにも共感し、参
画してもらえるような運動を展開していかなければならない。労働者自主福祉事
業、NPO・NGOや市民セクターの様々なネットワーク、志を同じくする各種
団体などとも連携を強化していく必要がある。退職者連合との連携を強めること
も必要である。また、情報が氾濫し価値観が多様化している中では、これまで以
上に対話が重要であり、労働教育やICTを活用した広報活動などにも一層、力
を入れていかなければならない。
連合は、すべての働く者の代表として社会改革を推進する立場に立って積極的
に発信をし、大衆行動を提起し、社会運動を牽引していくことも重要である。加
えて、われわれの運動は、国際社会や国際労働運動の視点に立つものでなければ
ならず、国際的な動向を常に注視し、国際労働運動におけるリーディング・ユニ
オンの一つとして国際貢献につながる運動を展開しなければならない。
(3)課題を明確にし、共有化した上で運動を展開する
これまで様々な検討の場で指摘されてきた問題点を今一度想起し、課題を明確
にし、さらには連合本部、構成組織、単組、地方連合会が共有化して、運動を展
開する必要がある。共有化すべき課題には以下のようなものがある。
・非正規労働者の組織化は進展しつつあるものの全体数に比して一部にとどまっ
ており、引き続き大きな課題である。また、民主党政権下で労働者派遣法や労
働契約法の改正を通じて実現させた労働者保護法制を後退させることがあっ
てはならず、処遇についても底上げをはかることが急務である。非正規労働問
題は最善の努力が求められる取り組み課題であり続けており、さらなる取り組
み強化に向けて、検討を進める必要がある。
・格差社会の是正に向けては、社会保障・税の一体改革や春季生活闘争などにつ
いて具体的方針を掲げ、運動も組織してきた。
「働くことを軸とする安心社会」
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の実現をめざした取り組みを進め、実現に向けた政策パッケージも策定した。
しかし、社会保障・税制を通じた所得再分配機能の強化は道半ばであり、現政
権のもとで先行き不透明感が増している。また、傷んだ雇用と労働条件の復元
には至っておらず、春季生活闘争のマクロの所得決定・波及効果の再構築およ
び労働条件の底上げ機能の強化が急務である。
・連合は「大企業・官公労の男性正社員」中心の運動に傾斜しているのではない
かとの指摘がされている。これを払拭するに足る連合運動総体としての取り組
みが十分ではなく、官と民、大企業と中小零細、正社員と非正規労働者、男性
と女性など、労働者の連帯を分断しようとする動きにつけいる隙を与えている。
これに対し、すべての働く者の結集を意識した組織運営を展望し連合運動総体
として前進し、社会全体から共感を得られるような運動を牽引していく必要が
ある。そのための意識改革と各級組織の連携が重要になっている。
・地域に根ざした顔の見える運動については、さらなる強化に向け、連合全体の
統一的な取り組みと同時に、地域固有の課題への取り組みにも力を入れる必要
がある。
3.社会的に広がりのある運動をめざして
(1)2014~2015 年度の運動展開にあたっての基本的な考え方
2020 年までに「働くことを軸とする安心社会」を実現することを大きな目標と
して、この 2 年間は、労働運動のパワーを高めることを最優先に取り組む。特に、
社会的に拡がりのある労働運動をめざし、大衆行動などを組織し、社会的なうねり
をつくりだすとともに、非正規労働者、中小労働者、女性・若年労働者の共感と参
加をえられるよう、連合運動総体として取り組みを進める。具体的には、以下の視
点から運動のパワーアップをはかる。
①組合員一人ひとりが連合運動を共有できる取り組みを進めるとともに、公正な
社会の実現のため、社会的に広がりのある労働運動をめざし、社会に向けた発
信力を強化し、連合=「働く者みんなのために社会の不条理に立ち向かう組織」
としての社会的ポジションを確立する。
②仲間を増やし、弱い立場にあるものを結び、運動への参加促進を強め、他団体
などとの連携をはかり、社会的影響力を強める。グループ企業や取引先はもと
より非正規や中小の労働者の組織化を含む「1000 万連合」達成に向けた取り組
みを、その根幹に位置づける。また、男女平等参画を労働組合自らも率先して
進め、性差による差別のない社会づくりを強力に進める。
③「働くことを軸とする安心社会」の実現が働く者共通の要求になるよう社会的
浸透をはかるとともに、労働者を代表する社会的組織として「力と政策」を強
化し、政策実現活動に取り組む。また、政策実現の手段として、政治活動を推
進し、働く者の立場に立った政治勢力の拡大にも努める。
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④連合運動が果たすべき役割・機能を最大限発揮できるよう、連合本部・構成組
織・単組・地方連合会の連携強化を進める。また、労働運動の現場が動き、結
果を出すために、求心力のある旗を掲げ、各級レベルの運動の連動で連合運動
総体としての前進をはかる。
(2)運動の基軸
上記の取り巻く情勢と課題認識、基本的な考え方を踏まえ、以下のテーマを運
動の基軸に据えて 2014~2015 年度の運動を力強く展開する。
①連合運動の組織基盤について、質・量両面でパワーアップをはかる。具体的に
は、職場活動などを通じて足元を固め、支え合う職場づくりを進めるとともに、
1000 万連合の取り組みを柱として、集団的労使関係の再構築をめざす。労働協
約の拡張適用や従業員代表システムなどの法制度面の課題についても状況を見
極めながら検討し、組織化の促進につなげる。また、連合「第 4 次男女平等参
画推進計画」の実施などを通じ女性や若者などの連合運動への参画を促進する
とともに、連合からの情報発信力を強め、地域に根ざした顔の見える運動展開
をはかる。
②格差是正・底上げに向けて、力を合わせ全力で取り組む。具体的には、(a)春季
生活闘争を通じたマクロの配分是正・デフレ経済からの脱却、(b) 労働者保護
ルール改悪の動きへの対抗とワークルールの整備、(c) 社会保障・税制を通じ
た所得再分配機能の強化、(d)非正規労働者の処遇改善と組織化をセットにした
非正規労働問題への取り組みの強化などを柱として、連合運動総体として運動
を構築する。
③「働くことを軸とする安心社会」をめざして、政策実現力を高める。具体的に
は、東日本大震災からの復興・再生に向け、被災者の生活再建や、被災地の産
業再生・雇用創出などにつながる取り組みを継続する。同時に、「働くことを
軸とする安心社会」の社会的浸透に引き続き取り組むとともに、2020 年に向け
た政策パッケージを中心に政府・政党・行政への意見反映をはかる。加えて、
働く者の立場に立った政治勢力の拡大・強化に向け、取り組みを強化する。ま
た、グローバル化に対応するための国際連帯活動、労働者自主福祉事業団体と
の連携による共助の範囲の拡大などを通じ、社会的影響力を強める。
(3)運動目標を実現する力を高めるために
上記の運動目標の実現には、連合本部・構成組織・単組・地方連合会が一体と
なった運動展開が不可欠である。とりわけ、単組・支部レベルでの非正規労働者
の組織化と処遇改善の取り組みや、単組・支部の地域の運動への参加の活発化は
重要な課題であることから、以下のとおりの工夫を行い、実現力を高める。また、
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連合本部は、運動の確実な前進に向けた選択と集中、資源の有効活用に努めると
ともに、キャンペーン活動など組織横断的に力を合わせ、社会的うねりをつくり
だす取り組みを提起する。
①全体で共通して取り組む課題の明確化と時期の統一化によって相乗効果を発揮
できるよう、連合本部・構成組織・単組・地方連合会の年間活動計画の関連性
を強め、総合生活改善闘争に取り組む。と同時に 1000 万連合を柱とした運動の
サイクルを構築し、単組・支部の参加の促進につなげる。
②組合員に対し、連合運動が目に見え、全国の仲間と運動でつながっているとい
う感覚が持てるよう、連合全体で取り組んでいる課題や重要な情報について、
様々なツールを駆使し、単組・支部レベルまで速やかに伝わる仕組みを構築す
る。地方連合会・地域協議会レベルでの情報発信についても合わせて検討する。
また、単組・支部の意識喚起に向けた構成組織レベルでの対話活動を強化する。
このため広報宣伝に係る連合本部体制を強化する。
③連合運動を担う人材の育成も急務である。単組・構成組織・連合本部・地方連
合会や関係団体、外部組織などとの人事交流・研修派遣などを通じた人材育成
を広げるとともに、教育文化協会による「連合アカデミー・マスターコース」
や、2015 年 4 月に法政大学に開講する「連合大学院」の積極的な活用、および
相互の連携を進める。また、連合本部、構成組織、地方連合会は教育体制を強
化し、各級組織のニーズを考慮した人材育成に連携して取り組むものとする。
そのための連合本部体制を強化する。
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各論1
集団的労使関係の拡大に向けた「1000 万連合」実現行動の着実な
実践と連帯活動の推進による社会的影響力ある労働運動の強化
【1000 万連合実現行動を通じた、すべての職場、地域での集団的労使関係の構築】
1.「1000 万連合実現」に向けた着実な実践
(1)2020 年までの「1000 万連合」に向けた初年度として、連合本部、構成組織・
地方構成組織・単組、地方連合会・地域協議会がそれぞれの機能と役割を発揮し、
組織拡大に向けた具体的行動を着実に実践する。取り組むにあたり「1000 万連合」
推進PT、組織拡大・強化小委員会、組織委員会を中心に対応策などを検討し、
より効果的な実施策を展開する。特に、「1000 万連合実現プラン」を踏まえ、重
点組織化ターゲットの対象案件と中核的対応組織(①新規産業・他団体対応は連
合本部②大手未組織・未加盟組織対応は三位一体行動③多様化する企業経営への
対応は構成組織と連合本部の連携行動④雇用形態の多様化は構成組織対応)を明
確化し具体的行動に取り組む。
(2)構成組織は、2015 年 9 月までの「組織化ターゲット」(対象組織名と組織化対
象者数)の共有化と組織化目標 100%必達に向け具体的行動に全力で取り組む。
あわせて、2020 年までの継続取り組み案件として、企業内未組織労働者(非正規
労働者、定年後の再雇用者・再任用者など)、子会社・関連会社の未組織労働者
や関連産業の未組織企業など、各構成組織が 2020 年 9 月までを想定して策定し
た「組織化ターゲット」の共有化をはかるとともに、対応可能な案件については、
連合本部・構成組織・地方連合会間で調整し年度内に組織化行動に取り組む。
(3)地方連合会は、連合本部・構成組織と連携強化をはかり、地方連合会が集約・
作成した 2015 年までの「組織化ターゲット」をもとに、地域の主要未組織企業
の組織化に取り組む。また、労働相談の機能強化をはかり、中小・地場未組織、
未加盟企業の組織化にも積極的に取り組むなど、
「地域の組織拡大目標数」100%
達成に向け、地方連合会が中核となり総力を結集し組織拡大行動に全力で取り組
む。加えて、後継者の育成に向け、アドバイザー会議やブロックでの研修会など
を開催し、今後の地域運動を担う人材の発掘、育成への取り組みの強化をはかる。
【1000 万連合実現に向けた支援行動への取り組み】
2.本部体制強化への取り組み
(1)連合本部は、組織拡大支援に向け、組織拡大・組織対策局体制の強化をはかる。
具体的には、組織化活動に集中して取り組む「組織化専任チーム」(仮称)を新
設し、構成組織と地方連合会との連携をはかり具体的組織化行動に取り組む。
3.組織化促進に向けた取り組み
(1)労働福祉団体と連携をはかり中小零細企業で働く労働者や非正規労働者向けの
支援策を具体化し、地域ユニオン強化支援に取り組む。
(2)企業データ・組合情報のデータベースを構築し、新たにユニオンサーチ機能の
強化をはかり構成組織・地方連合会との情報共有化の前進をはかる。
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(3)労働組合の重要性や社会的価値について経営者団体や業界団体などとの協議を
通じ、理解促進に努める。
(4)社会全体に労働組合、集団的労使関係の重要性をアピールする社会的キャンペ
ーン活動を継続展開する。
(5)組織化後の労使関係づくりに向けた構成組織、地方連合会の活動を支援すると
ともに、構成組織、地方連合会が抱える組織の維持・継続や組織力向上・強化に
向けた諸課題についての情報共有と連携強化をはかる。
4.組織化を支える人材育成・強化への取り組み
(1)組合結成と労使関係づくりを担う「オルガザイザー」育成に全力で取り組む。
連合本部は、構成組織や地方連合会の人材を対象に、オルガナイザー研修会の実
施や、組織化現場で実践経験を積む機会の設置など、各組織や人材が持つ経験や
知識などの相互連携をはかる。とりわけ、次代を担う若手や女性オルガナイザー
の育成強化をはかり、構成組織・地方連合会における実践・連携・研修の継続に
よる相乗効果を高める。また、グローバル化への対応策などに関する知見を高め
るために、先進事例国の研究にも取り組む。
5.集中行動配置による組織化取り組みの点検と加速化
(1)集団的労使関係の重要性を単組・職場、地域にまで理解拡大・価値観の共有化
をはかることを目的に、全国一斉組織拡大集中行動期間を設定し、連合本部・構
成組織・単組・地方連合会が集中的・一体的に取り組む。
【260 地協の活動強化と地域に根ざした顔の見える労働運動の展開】
6.連合本部は、260 地協の活動強化に向け、地協活動の実態把握に向けた各種調査
や現地訪問による対話行動などを通じ、現場実態に関する情報収集と分析に取り組
み、喫緊の課題については、必要な措置を講じる。あわせて、地方連合会と地協と
の連結決算会計の前進をはかる。
7.構成組織は、260 地協活動の定着化に向け、これまで以上に地域活動への積極的
参画に向けた認識の共有化と態勢強化に取り組む。
8.地方連合会は、この 2 年間を 260 地協活動基盤定着期間と定め、第 3 次組織財政
確立検討委員会で示された地協機能の第一ステップ活動の中から地協活動を円滑
にスタートさせる観点から、先ずは、足元固めとして地協構成組織の結集と活動へ
の参加促進に向け、①組織拡大②中小・地場組合支援③交渉機能④政策提言⑤政治
活動の 5 項目を優先的取り組み項目として定め地協活動を進める。
加えて、地方連合会は地協活動の定着化にあわせ、地方連合会の活動の集約化と
省力化を進める。
9.構成組織間の公平性、連合本部・構成組織・地方連合会の一体的な運動の推進を
めざし、本部登録人員と地方登録人員の差異解消に努める。第 3 次組織財政確立検
討委員会で示された中期目標(2017 年までに 100%登録)の達成に向け各構成組織
と具体的に協議を進める。そのための基礎資料として連合加盟組合員数調査の継続
実施に取り組む。
10.地域で働き、暮らす勤労者や市民の暮らしのサポートの強化や、共助の拡大をめ
10
ざし、労福協や労金・全労済など労働者自主福祉事業や生協、NPOなどと連携し
た取り組みを強化する。また、退職者連合と連携し、地域における退職者や年金生
活者などの連合運動への参加や交流を促進する。
【労働運動のパワーアップ促進に向けた取り組み】
11.連合運動総体として運動を前進させるための情報共有の仕組みを強化する。その
ため、連合全体で取り組んでいる課題についての情報が、連合本部から直接、構成
組織の単組や支部まで届く仕組みを構築する。
12.労働運動を担う人材育成を念頭に、連合本部、構成組織、地方連合会は教育体制
を強化する。連合本部は教育に活用する器材(読本など)の開発にも着手する。ま
た、連合本部、構成組織、地方連合会、地域協議会、連合関係団体、外部組織など
との間での人事交流を活性化させる。さらに、労働運動・社会運動を支える専門人
材育成のための「連合大学院インスティテュート」の設立準備を着実に進め、2015
年 4 月に開講する。構成組織・単組は、職場現場における人材の発掘・育成を行い、
足腰の強い労働組合組織づくりに取り組む。
13.集団的労使関係の基礎となる労働組合の必要性などについての労働教育を全社会
的に推進する。その一環として、中央・地方ともに引き続き大学寄付講座を促進す
る。また、小中高校生を含む学生や未組織労働者向けの読本などの制作、「ワーク
ルール検定」などを活用した取り組みを積極的に進める。
【青年(男女)活動の推進】
14.青年(男女)組合員の連合運動への参画意識を高め組織強化につなげるための「連
合ユースフォーラム」は、各地方ブロックの持ち回り開催を継続し、労働組合への
参加強化をテーマに交流活動を積み上げていく。
15.青年層に関わりの深い課題については、連合本部「青年活動委員会」で検討・協
議し青年組合員の意見を連合運動に反映させる。また、人材育成、人材発掘の場と
して地方連合会の青年委員会および構成組織の青年組織の強化をはかる。引き続き、
青年活動へ女性の参画を進めた活動としていく。
【平和運動の推進】
16.連合は、世界平和の実現のため、①在日米軍基地の整理縮小、日米地位協定の抜
本的見直し、②核兵器廃絶と被爆者を対象に国家補償にもとづく被爆者支援の実現、
③北方領土返還要求運動を重点に領土問題などに関係団体と連携しつつ取り組む。
なお、在日米軍基地のあり方などを含めた安全保障問題について、引き続き議論を
行っていく。
17.2010 年 5 月に開催されたNPT(核不拡散条約)再検討会議では、「核兵器なき
世界」に向けた文書が全会一致で採択された。2015 年に向けて連合は、この合意形
成された項目の着実な実行のために、原水禁、核禁会議との 3 団体による統一取り
組みをはじめ、核兵器廃絶を求める幅広い団体との連携を強化するとともに、IT
UC(国際労働組合総連合)や平和市長会議と連携しNPT加盟国の拡大を求める。
11
【人権・連帯活動の強化】
18.人権侵害救済法(仮称)の制定に向けて部落解放中央共闘会議と連携した各種行動、
学習会に取り組む。就職差別の撤廃に関しては、構成組織・地方連合会と連携し、
各単組において経営側への指導を強化する。北朝鮮による日本人拉致事件について、
拉致被害者の早期解放、実行犯の引き渡しなどを求めるために関係団体と連携し、
世論喚起や学習会に取り組む。
19.「連合・愛のカンパ」について支援内容を充実させて引き続き取り組む。また、
NGO、NPO団体が行う事業へのフォローアップ活動として、連合・愛のカンパ
作業委員による現地視察の実施と構成組織・地方連合会との連携強化に取り組む。
20.連合政策・制度の実現のため、特に国民的課題について、労福協、労金、全労済
など志を同じくする様々な組織・団体と連携・連帯しつつ社会運動を喚起し、取り
組みを積極的に進める。
【東日本大震災被災地支援への取り組み】
21.東日本大震災で被災した地域の復興・再生に向け、被災地の地方連合会と定期的
な連絡体制をとるとともに被災地産品の購入など積極的な取り組みを継続する。
【自然災害への取り組み】
22.大災害発生を想定した対応について、ボランティアプロジェクトなどを通じて各
地方連合会で有効に役立つ組織づくりを継続する。
12
各論2
非正規労働者の組織化と処遇改善に向けた社会運動の展開
【「職場から始めよう運動」のさらなる展開】
1.民間・公務のすべての職場において非正規労働者の組織化と処遇改善を促進する
ため、「職場から始めよう運動」のさらなる展開・定着をはかる。
(1)連合本部は、構成組織・地方連合会担当者会議などを通じ、取り組み事例の収
集をはかり、経験交流や事例集の発行などにより好事例の共有・浸透をはかる。
(2)春季生活闘争においても、格差是正・底上げに向けて、非正規共闘担当者会議
との連携をはかり、非正規労働者の処遇や労働環境の改善に取り組む。
(3)構成組織は、
「職場から始めよう運動 取り組み事例集」の活用をはかりつつ、
加盟組合が直接雇用・間接雇用の非正規労働者の実態把握や交流を行い、非正規
労働者の組織化や組合参加、処遇改善を推進するよう取り組む。
(4)地方連合会は、非正規労働センターの設置をはかり、非正規労働者の実態把握、
非正規労働に関する学習会や交流会などの活動を展開する。
【地域における「なんでも労働相談ダイヤル」の基盤強化】
2.連合本部は、非正規労働者・未組織労働者に身近な拠り所として「なんでも労働
相談ダイヤル」が認知・活用されるよう環境・体制の整備と適切な情報発信に取り
組む。
(1)連合本部は、相談内容の収集・分析・公表、集中相談の企画・広報、集計シス
テムの改善などを行うとともに、労働現場の実態を踏まえた政策提言やキャンペ
ーンを必要に応じて行う。
(2)連合本部は、地方連合会における相談対応機能の強化をはかるため、日常的な
情報交流を促進するとともに、学習会や地域ユニオンの交流会などを適宜開催す
る。
(3)地方連合会および地域協議会は、集中相談時における構成組織の参加や地域の
関係機関との連携など、組織力の強化を意識した労働相談活動の展開をはかる。
【若者の雇用・就労環境の改善に向けた取り組みの推進】
3.学生の就職活動や若者の雇用・就労環境の改善に向けて、働くことの意義や働く
ときのルール、労働組合の役割などを伝える取り組みを展開するとともに、連合本
部は、構成組織・地方連合会の若者雇用に関する取り組みを集約し、好事例の共有
化をはかる。
【非正規労働問題に関する情報発信・世論喚起・ネットワークづくり】
4.非正規労働者の処遇改善や労働組合の結成・加入の促進に向けて、インターネッ
トなどを活用した情報発信や調査活動を行い、世論喚起をはかる。
13
各論3
働くことを軸とする安心社会の構築に向けた
政策・制度の取り組み
【東日本大震災からの復興・再生に向けた取り組みの継続】
1.東日本大震災からの復興・再生に向け、地域経済の再生と雇用創出、福島第一原
子力発電所事故の収束と除染、
「ひとが中心のまちづくり」、事故由来放射性物質へ
の適切な対応、食の安全・安心の確保、消費者保護の強化、教育環境の整備の着実
な推進について、被災地の地方連合会との連携のもと、実態調査を行いつつ、政府
に対応を求める。
2.被災地における看護職員、介護職員、保育士などの人材確保が進むよう、政府に
対し働きかけを強める。
【日本再生・分厚い中間層の復活に向けた取り組みの継続】
3.持続可能で健全な経済の発展に向け、福祉、教育、環境など国民生活に直結し雇
用創出効果の高い分野への施策の集中、成長分野での人材育成およびディーセン
ト・ワークの確保など、経済・産業政策と雇用政策の一体的推進を求め、政府・政
党への要請や関係省庁との折衝、国会対応を行う。
4.TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への対応については、政府に対し、国内産
業への影響など懸念される諸課題への適切な措置、国民への情報開示および国民的
合意形成に向けた丁寧な対応を求める。同時に、ITUCが提案するキャンペーン
への参加やTPP参加国のナショナルセンターとの連携をはかる。
【連合の新たなエネルギー政策の実現および地球温暖化対策の推進】
5.エネルギー政策については、原子力エネルギーに代わるエネルギー源の確保、再
生可能エネルギーの積極推進および省エネの推進を前提として、中長期的に原子力
エネルギーに対する依存度を低減していき、最終的には原子力エネルギーに依存し
ない社会をめざしていく。その中で、再生可能エネルギーの積極推進、資源・エネ
ルギーの長期安定確保など、安全・安心で安定的な資源・エネルギー供給を実現す
るため、政府に対し政策的な支援を行うよう働きかける。また、原子力規制委員会
において策定された新たな規制基準については、厳格に適用するよう求める。
6.2020 年からスタートする「全ての締約国が参加する公平で実効性ある温暖化対策
の新たな法的枠組み」の実現に向け、日本政府に強く働きかける。
7.国民の理解と協力のもとで国内の温室効果ガス排出を削減するため、社会対話の
充実をはかり、特に民生部門における排出削減対策を強化・推進する。
8.「連合エコライフ 21」運動を継続・強化し、職場・地域における運動の実践を推
進する。特に、電力需給対策で求められる夏冬の節電行動を促す「ピークカットア
クション 21」を展開し、節電・省エネ対策の強化をはかる。また、関係団体と連携
して「環境フォーラム」を開催し、地球環境問題に関する労働組合の取り組みを発
信する。
14
【「公平・連帯・納得」の税制改革に向けた運動の展開】
9.「第 3 次税制改革基本大綱」に基づく政策を実現し、安心社会を支える負担の分
かち合いの道筋をつけるため、職場・地域レベルの学習会などを通じて税に対する
組合員の理解浸透と納税者意識の向上をはかるとともに、幅広い世論喚起を図るた
め国民的な運動を展開する。また、職場・地域における「確定申告・還付申告」の
取り組みを継続する。
10.社会保障・税の一体改革の着実な推進に向けて、税による所得再分配機能の強化
の実現に取り組む。また、消費税率の引き上げに際しては、単一税率の維持を前提
とした低所得者層に対する給付制度の導入に向けて取り組む。
11.社会保障・税の共通番号(マイナンバー)制度について、個人情報の厳格な保護
をはじめ、制度に対する国民の懸念を払拭する措置を講じるよう取り組む。
【社会的セーフティネットの強化による安心社会の実現】
12.医療・福祉・介護労働者のディーセント・ワークを確立し、人材確保・定着を進
めるため、連合「看護職員の夜勤労働ガイドライン」の策定、地方版子ども・子育
て会議の設置・参画、介護サービスの維持・拡充に向けた調査の実施、都道府県単
位の福祉・介護人材確保のプラットフォームへの参画などに、職場や地域と一体で
取り組む。
13.皆保険を堅持し、被用者保険と高齢者医療制度を抜本的に見直し、連帯に基づく
公正で持続可能な医療保険制度の再構築に取り組む。
14.無年金・低年金者の解消と年金一元化など抜本改革を進め、真の皆年金の実現に
向け取り組む。
15.短時間労働者をはじめすべての雇用労働者への社会保険の完全適用に向け、春季
生活闘争、組織拡大と連携しながら制度見直しを促進する。
16.生活困窮者自立支援制度の全国的な実施体制の確立、生活保護の切り下げと給付
抑制の阻止に、組織内外の理解を促進し取り組む。
17.国連障害者権利条約を批准し、障がい者の権利の確立や自立に向けた支援の拡充
に、組織内外の理解を促進し取り組む。
18.「明細書をもらって医療内容をチェックしよう」運動の継続展開と「自分の生活
習慣を見直そう」運動に取り組む。
【行革、地方分権、民主的公務員制度改革の実現に向けた取り組みの継続】
19.民主主義の基盤強化と国民の権利保障に向け、「新しい公共」、労働基本権を保
障した民主的な公務員制度改革、公務における臨時・非常勤職員の処遇改善および
地方分権改革の推進を国・地方自治体に対して求めるとともに、連合として道州制
など地方自治制度に関する新たな課題について研究・検討を行う。
【食とくらしの安全・安心確保と社会インフラの整備】
20.農林水産業の担い手の確保・育成、経営基盤ならびに競争力の強化、6次産業化
15
の推進、国産食品の消費拡大および国産材の利用促進などを国・地方自治体に求め、
食料・木材の自給力向上をはかる。
21.消費者の安全・安心を確保するため、「食品表示法」に基づく新表示基準への適
切な移行、消費生活相談窓口の強化・充実、消費者教育の推進などを国・地方自治
体に求め、消費者保護政策の強化をはかる。また、消費者被害救済関係法案の成立
をめざす。
22.インフラ・ライフラインの老朽化対策、防災対策の重要性や緊急性に応じ、優先
順位をつけた公共事業の実施を政府に求める。
23.総合的な交通・運輸政策を推進し、交通・運輸労働者の公正な労働条件を確保す
るため、「交通基本法」の制定をめざす。
24.交替運転者の配置基準の遵守や、新高速乗合バスの適切な運営など、引き続きバ
スの安全対策の強化を政府に求める。
25.水に関する基本理念を定め、総合的な水行政の管理制度を確立し、健全な水循環
を維持・回復させるための「水循環基本法」の制定を実現する。
【教育における格差是正と機会均等の実現、教育制度の見直し】
26.「貧困の連鎖」を防止するため、教育費の公的負担を増額し家計負担の軽減をは
かる。すべての生徒に対する高等学校授業料の無償化を維持するとともに、低所得
者層への就学援助金制度や公的奨学金制度の充実を政府に求める。
27.「教育再生実行会議」において、教育制度の根幹に関わる内容が議論されている
ため、連合「教育政策検討PT」において考え方をまとめ、中教審や国会などに意
見反映を行う。
【公正・公平な市場ルールの確立に向けた取り組みの展開】
28.公契約基本法および公契約条例の制定を進めるため、国・地方自治体・政党への
要請や関係省庁・経営者団体との意見交換を行う。また、地方連合会において議員
を含めた学習会を開催し、その実現に向けた取り組みを推進していく。
29.年金基金をはじめとするワーカーズキャピタルの運用に際して、構成組織と連携
しつつ、連合「ワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン」にもとづく社会的責
任投資に取り組む。
【政策パッケージの実現に向けた取り組み強化】
30.「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けた政策パッケージについて、より
具体化した政策を「要求と提言」
「重点政策」に順次組み込みつつ、国・地方自治体・
政党への働きかけなどを通じてその実現をめざす。あわせて、退職者連合、労働福祉
団体、NPOなどとの対話や共同行動などの社会運動を推進し、連合の考え方につい
て社会全体への浸透をはかる。
16
各論4
労働条件の底上げと社会的横断化の促進と
ディーセント・ワークの実現
【産業政策と連動した雇用創出と、セーフティネットの充実】
1.新たな産業の育成と質の高い雇用創出につなげるため、産業政策と連動した雇用
政策を求めるとともに、セーフティネットの充実に向けた運動の展開をはかる。
(1)ディーセント・ワークの実現をめざし、政府の基本政策の中心として雇用・労
働の原則を示す「雇用基本法」(仮称)の制定に取り組む。
(2)地域において労働組合も関与し、産業政策と連携した雇用創出の取り組みを強
化するとともに、国と地方自治体との共同連携による就労支援・生活支援を含め
た一体的運営に参画する。
(3)雇用保険の給付日数・給付水準の改善と、雇用のセーフティネットとしての能
力開発への支援、国庫負担の本則(4 分の 1)復帰など、雇用保険法の改正に取
り組む。
(4)求職者支援制度については、一般財源による制度の再構築、雇用保険制度との
整合性、職業訓練受講給付金の給付要件緩和など、制度の充実に取り組む。
(5)従来の雇用保険制度の枠組みでは救済できない天災地変や国からの避難勧告な
どに伴う雇用問題に対し、一般財源による雇用維持制度の構築に取り組む。
【賃金・労働条件の底上げ・下支えと、労働条件の社会的横断化の促進】
2.春季生活闘争において、すべての働く者の労働条件の底上げ・底支えをはかる。
そのために、構成組織・地方連合会との連携による重層的な共闘体制を構築すると
ともに、内外への情報発信を充実させ社会的横断化の促進をはかる。
3.中小共闘および非正規共闘の強化をはかり、格差是正・底上げと処遇改善に向け
た運動を展開する。
(1)中小企業における必要な人材の育成と確保も視野に入れ、労働条件の底上げを
基本に格差是正と二極化の阻止をめざして取り組みを進める。
(2)非正規労働者の処遇改善のために非正規共闘を強化する。そのために、すべて
の構成組織のより積極的な参画を求める。非正規共闘担当者における情報・意見
交換のさらなる充実に取り組む。地域における取り組みの充実・拡大をはかる。
(3)格差是正と均等・均衡待遇の実現などをめざす観点から「フォーラム」を開催す
る。
4.労働時間短縮をはじめとして働き方の全般的な改善をめざす。そのために、労働
時間や賃金などに関する考え方を整理して、「働くことを軸とする安心社会」の実
現に向けた「総合労働条件改善指針(仮称)」の検討を進めていく。
5.最低賃金を、働きに応じた適正な水準にまで引き上げる取り組みを強化する。
(1)企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げによって、賃金の底上げをは
かる。
(2)法定の地域別最低賃金は、賃金の底支え機能を果たし、セーフティネットとし
17
ての実効性が高い水準へ大幅な引き上げをはかる。
(3)法定の特定(産業別)最低賃金は、当該産業労使のイニシアチブ発揮により賃
金の底上げと格差是正につながる水準の実現に取り組むとともに、従来設定のな
かった産業分野での新設に努める。
【取引の適正化】
6.中小企業で働く者の労働条件を改善するため、2012 年に実施した「中小企業にお
ける取引関係に関する調査」などをもとに経営者団体や関係省庁に対し、企業間取
引の改善を求めていく。
7.海外における政府や事業者団体の中小企業問題への取り組み、日本の中小企業の
海外進出における課題などを調査し、日本における中小企業問題の改善に結びつけ
るために海外調査団を派遣する。
【ディーセント・ワーク実現に向けたワークルールの整備】
8.解雇規制や労働時間規制、派遣期間制限の緩和など労働者保護を後退させようと
する政府の議論に対し、構成組織・地方連合会と連携して、労働者保護ルールの改
悪阻止に取り組むとともに、労働者保護ルールの後退を招かないよう労働政策審議
会で議論する。
9.2010 年改正労働基準法第 37 条 1 項による月 60 時間超の割増率引き上げについて、
中小企業への適用猶予措置の早期廃止に向けて取り組む。また、企画業務型裁量労
働制やフレックスタイム制など労働時間法制の見直しについては、労働者保護の後
退を招かないよう取り組む。
10.
「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」
(告示)の法制化のほか、休息
時間(勤務間隔)規制の導入などワーク・ライフ・バランスと健康に配慮した労働
時間法制の構築に向けて、労働者保護に資する労働基準法の改正に取り組む。
11.労働者派遣法の見直しについては、労働政策審議会において、労働者派遣法の立
法趣旨を踏まえつつ、派遣労働者の雇用の安定と公正処遇の確保に向けた法改正に
取り組む。
12.2012 年に成立した改正労働契約法について、その定着をはかるための周知を求め
るとともに、無期転換期間の短縮など法を上回る取り組みを春季生活闘争時も含め
通年的に行う。
13.希望者全員が 65 歳まで働き続けられるよう、改正高年齢者雇用安定法で定める
高年齢者雇用確保措置の確実な実施と、継続雇用制度により有期労働契約となった
場合の 65 歳未満での雇止め防止に取り組む。
14.事業譲渡など、事業組織再編時における労働契約の承継、労働条件の維持、労働
組合との協議の義務づけなど、労働者の権利保護をはかるための法制化に取り組む。
15.集団的労使関係構築に向けて、労働者代表制の法制化の検討を進める。
【震災復興・福島第一原子力発電所事故への対応】
16.被災地域での産業復興・生活再建に向けて、復興計画の着実な推進と産業政策と
18
連動した地域の核となる雇用の創出、職業訓練・人的支援・労働安全衛生の強化を
求める。
17.福島第一原子力発電所事故の廃炉に向けた作業や除染作業における労働安全衛生
教育と災害防止対策の徹底を求める。
【労働安全衛生対策の推進】
18.メンタルヘルス対策、職場の受動喫煙防止を盛り込んだ労働安全衛生法の早期改
正に取り組むとともに、機械の危険情報提供、化学物質管理の実効性ある規制強化
を求める。
19.職場におけるリスクアセスメント推進やメンタルヘルス対策、長時間労働などの
過重労働対策、過労死防止対策に取り組む。
20.重大な労働災害を発生させ改善がみられない事業者名の公表など、第 12 次労働
災害防止計画の着実な実施に向けて取り組む。
21.「連合労働安全衛生取り組み指針」にもとづき、労働災害の発生状況の把握や人
材育成など、労働災害防止に向けた労働組合の主体的な取り組みを進める。
【若年者・障がい者・外国人労働者対策の強化】
22.すべての若年者への良質な雇用機会の提供に向け、「若者雇用戦略」に盛り込ま
れた施策の着実な履行などを求めるとともに、「地域キャリア教育支援協議会」な
どへの参加を通じ、労働組合として主体的に地域の雇用創出に取り組む。
23.「改正障害者雇用促進法」の円滑な施行に向け、労働政策審議会において差別禁
止や合理的配慮の提供に関する実効的な指針策定を進めるとともに、障がい者がい
きいきと働くことができる職場環境の整備を労使一体となって進める。
24.外国人技能実習制度について十分な監視・検証を行い必要な見直しを行うよう取
り組む。また、TPP(環太平洋経済連携協定)などに伴う人の移動の自由化や、
高度人材の受け入れについては、安易な在留資格・就労資格の緩和は行わないよう
取り組む。
【人材育成・能力開発の促進】
25.“人材立国”に向けたグローバル人材・先端人材の育成と能力開発について、日
本の競争力維持・向上の視点で、行政、企業、高等教育機関などが連携した体制の
構築を求める(攻めの人材育成)。
26.非正規労働者、求職者、若者などについて、速やかな就労復帰などを円滑に進め
るため、ジョブ・カードも活用して、雇用保険制度の見直しを含めセーフティネッ
トとしての公共職業訓練や能力開発の拡充を求める(守りの人材育成)。
27.職業能力開発の推進では、企業・業界団体、労働組合の参画のもと、技術・技能
の伝承の重要性なども踏まえ、公共職業訓練機関などの教育訓練計画や「キャリア
段位制度」の活用など、キャリア形成支援策を策定するよう求める。
19
【労働紛争解決制度の充実】
28.個別的労働紛争解決制度については、職場のいじめ・パワーハラスメントによる
原因が第 1 位となるなど急増しているが、各制度の役割・機能分担の見直しや、制
度間の調整のあり方を検討するとともに、労働相談と連携した組合加入と個別紛争
解決制度の有機的活用に取り組む。
29.労働委員会の活性化については、活用促進に向けたあり方の検討、公務員の紛争
解決制度への対応などに取り組む。
30.制度発足 8 年目を迎えた労働審判制度については、労働審判申立受付支部の拡大
や、一定の要件を満たした労働組合役職員による許可代理を認めるなどの制度改善
に取り組む。
31.労働者の権利保護啓発に向けた労働(法)教育の強化に向けて、地方連合会と連
携し、地方労政行政の機能拡充(労働者向け労働講座など)に取り組む。
【民法(債権法)改正への対応】
32.120 年ぶりとなる民法(債権法)改正への対応にあたっては、労働者の権利を後
退させず、労働債権確保への影響も十分に検討し、労働者保護に資するよう取り組
む。
20
各論5
男女平等社会の実現に向けた平等参画の強化
【あらゆる分野における男女平等参画の推進】
1.連合「第 4 次男女平等参画推進計画」(2013 年 10 月~2020 年 9 月)を始動し、
総合的な男女平等参画の取り組みを推進する。
(1)
「第 4 次男女平等参画推進計画」の周知・徹底と、全組織の方針への「3 つの目
標」(ディーセント・ワークの実現と女性活躍の推進、仕事と生活の調和、多様
な仲間の結集と活性化)の反映、および「数値目標」の設定に取り組む。
(2)すべての組織の目標達成に向けて、男女平等推進委員会のもとでの進捗管理と
フォローアップの体制を確立する。
(3)ポジティブ・アクションの積極的な推進とクオータ制の導入を検討する。
2.男女平等参画社会の実現に向け、国の計画の確実な実行に取り組む。
(1)政府の「第 3 次男女共同参画基本計画」
(2011 年~2016 年)の確実な実行に取
り組むとともに、「第 4 次男女共同参画基本計画(仮称)」の策定に向け、男女共
同参画会議をはじめとした議論に積極的に参画し、意見反映をはかる。
(2)国連「女性差別撤廃委員会」から求められている課題の解決に向けての積極的
な取り組みとあわせ、「女性差別撤廃条約選択議定書」の早期批准に取り組む。
3.男女平等の視点から社会制度、慣行の見直しを推進する。
(1)税制や社会保障制度などにおける就業抑制インセンティブの解消をはかり、性
やライフスタイルに中立的な制度に改革する。
(2)家族法を中心とした民法改正に向け、選択的夫婦別姓制度の導入や、婚姻年齢
の男女同一化、離婚時や婚外子の財産分与のあり方の見直しなどに取り組む。
(3)人権を冒涜する性の商品化や女性に対するあらゆる暴力を根絶する運動に取り
組み、社会認識の徹底、意識啓発や情報の周知をはかる。
(4)社会・経済における女性の参画および活躍を促進するため、ポジティブ・アク
ション手法の積極的な活用を推進し、女性の登用や職域拡大をはかる。
(5)男女ともに仕事と生活の両立および女性の就業継続がはかれるよう、職場にお
ける両立支援策の拡充とともに、待機児童対策など保育所整備の取り組みを強め
る。
(6)震災復興対策・防災対策への女性の参画を推進するため、「男女共同参画の視
点からの防災・復興の取り組み指針」を活用して取り組む。
(7)女性の政治への積極的参画に向けて、政党に対してクオータ制を含む、ポジテ
ィブ・アクションの活用を要請する。
【雇用における男女平等の実現、仕事と生活の調和と両立支援の拡充、パートタイム
労働者の総合的労働条件の改善に向けた取り組み】
4.雇用の全ステージにおける直接差別の是正と男女平等の実現に向け、男女雇用機
会均等法の改正および実効性の確保に取り組むとともに、セクシュアル・ハラスメ
ントや間接差別などの職場実態の把握および法の活用に取り組む。
21
5.パートタイム労働者の総合的な労働条件の改善に向け、「今後のパートタイム労
働対策について」
(建議)を踏まえた、パートタイム労働法の早期改正に取り組む。
6.男女間賃金格差の是正に向け、賃金プロット手法を活用した要因分析と格差の「見
える化」をはかり、賃金改善と間接差別にあたる生活関連諸手当の「世帯主要件」
の廃止に取り組む。
7.女性の活躍促進と就業継続に向け、マタニティ・ハラスメントを解消し、妊娠・
出産と仕事の両立支援、育児・介護と仕事の両立支援制度の拡充と不利益取り扱い
の禁止に取り組む。
8.男女とも労働時間など働き方の見直しとともに、男性の育児参加を促進するワー
ク・ライフ・バランスの実現に取り組む。
9.有期契約労働者、パートタイム労働者などすべての非正規労働者への育児・介護
休業法の適用拡大と周知に取り組む。
10.男女がともに仕事と生活の調和をはかるため、2015 年に期限切れとなる次世代育
成支援対策推進法の延長に取り組む。
11.労働基準法の女性保護規定、男女雇用機会均等法、パート労働法、育児・介護休
業法、次世代育成支援対策推進法の職場への定着・促進をはかる。
【女性リーダーの育成とキャンペーン活動の取り組み】
12.女性活動家の養成や女性リーダーの育成に向け、中央女性集会(10 月)、地方ブロ
ック会議、女性リーダー講座などを通して課題の共有と主体的行動の促進をはかる。
13.第 4 次男女平等参画推進計画を受けて、男女平等推進委員会、女性委員会等を機
能的に再編と活性化をはかるとともに、構成組織・地方連合会女性代表者会議開催
を通して、各組織の女性代表者への迅速な情報提供と女性課題の共有化、統一した
取り組みを推進する。
14.男女平等課題の周知のため 6 月に「男女平等月間」を設定し、組織内外に向けた
キャンペーン活動に取り組む。
【国際連帯活動の推進と各種国内団体との連携】
15.ITUC(国際労働組合総連合)女性大会やITUC-AP(アジア太平洋地域
組織)女性委員会などの男女平等運動に積極的に参画し連携する。
16.ITUCが掲げる「3.8 国際女性デー」、
「10.7 ディーセント・ワーク世界行動デ
ー」
「11.25 女性に対する暴力廃絶デー」などジェンダー平等推進キャンペーン活動
に連帯し取り組む。
17.CEDAW(国連女性差別撤廃委員会)をはじめ、CSW(国連女性の地位委員
会)、ILO条約勧告適用専門家委員会、TUAC(OECD労働組合諮問委員会)
など国際関係機関の動向を注視し対応を進める。
18.国内の 38 女性団体で構成する「国際婦人年連絡会」など、運動の目的が一致す
るNGO・NPOや女性団体など各種団体との交流、連携をはかる。
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各論6
政策実現に向けた政治活動の強化
【政治活動の基本】
1.本定期大会で改訂する「連合の政治方針」にもとづき、「働くことを軸とする安
心社会」の構築を通じた希望と安心の社会の実現、生活環境の改善による真の「ゆ
とり・豊かさ」を実現するため、目的と政策を共有する政党および政治家との協力
関係を重視し、積極的に政治活動を推進する。
2.健全な議会制民主主義が機能する政党政治の確立、労働者・生活者を優先する政
治・政策の実現、与野党が互いに政策で切磋琢磨する政治体制の確立に向け、政権
交代可能な二大政党的体制をめざすことなど、政治方針の「連合の求める政治」を
基本に、政治・選挙活動を進める。当面は、今日の政治情勢を踏まえて、連合の政
治活動の必要性や政党および政治家への支援について、理解・浸透を深める取り組
みを強化する。
3.「働くことを軸とする安心社会」の実現に向け、与野党を問わず必要に応じて政
策協議を行う。とりわけ多くの政策を共有する民主党との政策協議を強化し、国会
における政策実現をめざす。なお、連合組織内議員懇談会については、いっそうの
連携強化をはかる。
【政治活動の強化】
4.政治活動の強化に向け、政治研修会や学習会を開催し、政治活動の重要性の理解
と組合員の自発的な参加を促進する。また、連合から職場までの各レベルでも政治
教育を強化し、政治活動を担う次代のリーダー育成と組合員の政治意識の向上をは
かる。
5.地方連合会のリーダーシップのもと、推薦候補者が連合の政策の理解を深められ
るよう、連合本部と地方連合会の政治センターが中心となって意見交換会や研修会
を開催する。
【選挙活動の推進】
6.第 46 回衆議院選挙(2012 年 12 月実施)および第 23 回参議院選挙(2013 年 7 月
実施)の結果や選挙のまとめを踏まえ、政治に対する意識と行動の把握や今後の選
挙に向けた課題などの分析を行い、政治研修や取り組みの改善を通じて、政治・選
挙活動の強化をはかる。
7.地方・地域における連合の政策実現をめざし、地域での政治基盤強化を視野に入
れつつ、2015 年に実施予定の第 18 回統一地方選挙をはじめとする地方選挙に取り
組む。構成組織は、地方連合会との連携を強化し、各種選挙で組織内候補を積極的
に擁立する。なお、首長選挙では、各候補者にマニフェストの作成を要請し、その
内容を重視して態度決定を行う。
8.国政および地方選挙の実施を見据えつつ、公職選挙法や政治資金規正法など選挙
運動における法令遵守の徹底をはかる。あわせて、労働組合の社会的責任として棄
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権防止や期日前投票を含めた投票促進運動にも積極的に取り組む。
9.インターネットを利用した選挙運動について、より有効な選挙ツールとして活用
できるよう取り組みを強化する。
【政治改革の推進】
10.一票の格差を解消し、有権者の権利拡大の観点に立った公平・公正で民意が適切
に反映される選挙制度の抜本的な改革を求める。また、衆議院および参議院が有効
に機能しうる両院制度の確立、国会における議論の活性化と政策の推進に向けた国
会改革に取り組む。
11.国民の政治参加と政党政治の健全な活動の促進に向け、選挙運動の自由化、政治
資金規正の実効性の確保などを実現するため、公職選挙法や政治資金規正法などの
改正に取り組み、政治改革を推進する。
【地方政治の活性化】
12.地域の再生と活性化のため、地方分権改革を推進する政治の実現に向けて、地方
連合会は、地方議員の政策形成能力の涵養、地方議会での「議員立法」推進のため
の制度充実などに積極的に取り組む。また、二元代表制については、地方自治を有
効に機能させる観点から、首長と議会の権能のあり方などを中心に検証する。
13.地方連合会は、「推薦議員懇談会」などを設置し、推薦する国会議員と地方議員
の連携を強化し、政策実現と政治勢力の拡大をはかる。また、各首長や各党各会派
との定期協議の開催などを通じて、社会的影響力を高める。
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各論7
公正なグローバル化を通じた持続可能な社会の実現
【中核的労働基準とディーセント・ワークの推進】
1.誰もが希望を持ち安心して暮らせる社会を構築するため、すべての人のディーセ
ント・ワークの実現に向け、ILOが提唱するディーセント・ワークの概念のさら
なる普及拡大をはかる。
2.ディーセント・ワークの実現に向けた国際連帯活動の一環として、連合本部およ
び地方連合会は、GUFs(国際産業別労働組合組織)と協力し、ITUC(国際
労働組合総連合)ディーセント・ワーク世界行動デー(10 月 7 日)に取り組む。
3.アジア太平洋地域におけるディーセント・ワークの実現に貢献するため、ILO
との連携をはかりつつ、ITUC-AP(ITUCアジア太平洋地域組織)の諸活
動への積極的参加および支援を行う。
4.ILO中核的労働基準に関する 8 条約のうち未批准の第 105 号条約(強制労働の
廃止)、第 111 号条約(雇用および職業についての差別待遇の禁止)を早急に批准
させるとともに、すでに批准している 6 条約の完全適用に向けた取り組みを進める。
また、
「連合が優先的に批准を求める条約(連合優先条約)」の批准に向けた取り組
みを強化する。公務員制度については、ILO結社の自由委員会の勧告に沿った改
革の実現に向けて努力を継続する。
5.TPP(環太平洋経済連携協定)やASEAN+3(日・中・韓)などの地域貿
易協定(RTA)および二国間FTA/EPA(自由貿易協定/経済連携協定)に
おいて、労働者の中核的労働基準が確保されることはもとより、持続可能な経済発
展、国民生活や雇用の改善、環境保護、安全・健康の向上などを促すものとなるよ
う、関係省庁への働きかけを強め、当該国労働組合などと連携した取り組みを行う。
6.公正で持続可能な経済・社会の構築に向け、中核的労働基準の確保とディーセン
ト・ワークの推進を政策の柱に据えたグローバル・ガバナンスの構築を追求する。
そのため、ITUC、TUAC(OECD労働組合諮問委員会)などのグローバル
ユニオン(注 1)とともに、G20/G8 会合、ILO、OECD(経済協力開発機構)、
WTO(世界貿易機関)、IMF(国際通貨基金)、世界銀行、ADB(アジア開発
銀行)、APEC(アジア太平洋経済協力)、ASEM(アジア欧州会合)など、政
府間会合や関係機関への政策提言活動を強化する。その際、連合が掲げる政策・制
度要求との連動を十分考慮に入れる。
【多国籍企業の社会的責任履行促進に向けた取り組み】
7.国際機関による公的ルール「OECD多国籍企業行動指針(2011 年改訂版)」(注
2)、ILO「多国籍企業および社会政策に関する原則の三者宣言」をはじめ、
「国連
グローバルコンパクト」、
「ISO26000(社会的責任に関する手引き)」など多国籍
企業の行動指針の普及のため、国際産業別組織、関係するステークホルダー各組織
との連携を強化する。また、自らの取り組みとして、連合・構成組織は、多国籍企
業の健全な労使関係構築のため取り組みを進める。
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8.OECD多国籍企業行動指針の実効性と運用体制を強化するため、日本のナショ
ナル・コンタクト・ポイント(NCP)(注 3)への働きかけを強化するとともに、
日本NCP委員会の実質的な機能強化を求める。
また、日本政府主催のOECD加盟 50 周年(2014 年)記念行事へ積極的に参加
し、日系多国籍企業の健全な労使関係構築に向けた政労使の連携を働きかける。
9.多国籍企業とGUF間の国際枠組み協定(GFA/IFA)の締結を促進するた
め、連合・構成組織は、GUFsとも連携した取り組みを行う。
10.アジア地域の日系多国籍企業における健全な労使関係の構築を目的に、連合作成
の「多国籍企業行動ルールパンフレット」を活用した普及活動を行う。また、具体
的事例の研究など過去の事例を踏まえた内容を中心とした二国間セミナーを開催
する。
【貧困撲滅などに向けた開発協力の取り組み】
11.世界の貧困撲滅などに向けた取り組みを行う。具体的には、国連ミレニアム開発
目標(MDGs)(注 4)に掲げられた諸課題の解決に向けて「NGO-労働組合国
際協働フォーラム」の活動の充実と周知に努め、組合員一人ひとりが参加しやすい
工夫をはかる。あわせて、MDGs達成への世論を喚起するため、GCAP(貧困
撲滅のためのグローバルコール)など、NGOなどと連携した取り組みを行う。ポ
ストMDGsについては、雇用創出と包括的な経済成長の実現に寄与する観点が目
標・指標に盛り込まれるよう、政府に政策提言を行う。また、ODAをはじめとす
る開発協力の充実を政府や国際金融機関(世銀やADBなど)に働きかける。
12.JILAF(国際労働財団)の活動に協力し、労働分野とりわけ人材面に着目し
た開発協力を推進する。
【人権・労働組合権・民主主義の擁護・確立】
13.世界各国における人権、労働組合権の擁護に向けて、ITUCをはじめとしたグ
ローバルユニオンなどのキャンペーンに積極的に参画する。とりわけ、軍事政権に
よる労働組合権の侵害が行われているフィジーなど、アジア太平洋地域における問
題の解決に責任を果たすため、ITUC-APや各ナショナルセンターと連携して
取り組みを進める。ミャンマーの民主化については、民主化の進展を見極めつつ、
2012 年 12 月に開設されたITUCミャンマー事務所などと連携し、民主的な労働
運動の構築に向けた取り組みを進める。
【国際労働組合組織と連帯した運動の推進および各国労組との定期協議・交流の実施】
14.国境を越えたさまざまな事案への対応や共通課題の克服に向け、世界各国の労組
や内外のグローバルユニオンと連携を強化する。また必要に応じて各地域の主要国
や近隣諸国の労組と二国間協議を行い、情報の共有をはかる。
(注 1)グローバルユニオン~2000 年にダーバンで開催されたICFTU(国際自由労連)の世界大会で、急速
なグローバル化が進む世界に有効に対応していくことを目的とし、
「ICFTU、各GUF、TUACの連携
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の枠組み」として誕生。その枠組みは 2004 年に宮崎で開催されたICFTU世界大会でさらに強化され、規
約にも盛り込まれた。現在ではITUC結成大会(2006 年)を経てITUC、各GUF、TUACにより「グ
ローバルユニオン評議会」を設置し行動を展開している。
(注 2)OECD多国籍企業行動指針の改訂~2011 年 5 月のOECD閣僚理事会において、OECD多国籍企業
行動指針が 2000 年以来 10 年ぶりに改訂され、副題「世界における責任ある企業行動のための勧告」が追加
された。今回の改訂のポイントは、
「人権」の章の新設、人権デュー・デリジェンスとサプライチェーンに対
する新しいアプローチ、手続手引きの明確化と強化などである。
(注 3)ナショナル・コンタクト・ポイント~OECD多国籍企業行動指針の適用促進、照会、問題の解決を担当
する各国連絡窓口。日本では、外務省、厚生労働省、経済産業省の 3 省構成となっている。
(注 4)ミレニアム開発目標とは「国連ミレニアム宣言」などを基に、貧困の削減、初等教育の普及、乳児死亡率
の削減など 8 つの目標、21 のターゲット、60 の指標を 2015 年までに達成する開発目標で 2001 年に策定された。
現状、極度の貧困半減、安全な飲料水へのアクセスなど一定の成果をあげているものの、教育、母子保健、衛生
分野などについては達成困難であり引き続き課題は大きい。
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