資料(PDF 288KB)

2015/3/2
東京都港区南青山 2-5-20
TEL: 03-5775-3073
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画:「東日本大震災関連倒産」(発生から 4 年)の内訳と今後の見通し
東日本大震災関連倒産、4 年で 1726 件
~ うち原発関連倒産は 180 件、1 割強を占める ~
はじめに
東日本大震災の発生当日、当時の内閣府特命担当大臣(金融)と日本銀行総裁は連名で「貸出
金の返済猶予等被災者の便宜を考慮した適時的確な措置を講ずること」などを金融機関に要請し
た。それから 4 年が経過しようとしている。今年 2 月に金融庁が公表した「東日本大震災以降に
約定返済停止等を行っている債務者数及び債権額」によると、被災 3 県で条件変更契約を締結し
た債務者は 2 万 3374 先(住宅ローンを除く、23 年 3 月 11 日~26 年 11 月末)にのぼり、26 年 11
月末現在で約定弁済を一時停止している債務者はわずか 144 先(同)にまで減少した。被災地の
企業がこうした金融支援を受けながら復興していることが数字からも裏付けられている。
しかし一方で、未曾有の災害で大きな打撃を受けた企業は、被災 3 県の企業ばかりではない。
物流の混乱や原発事故による風評被害の影響は日本全国に及んだ。今でも震災の影響を受けた企
業倒産は、広範囲かつ断続的に発生している。
帝国データバンクでは、東日本大震災により直接的な被害(物理的損傷等)、または間接的な被
害を受けたことが取材で判明した企業倒産を「東日本大震災関連倒産」と定義し、震災直後から
集計を開始している。今回調査の対象期間は 2011 年 3 月から 2015 年 2 月の 4 年間。前回調査は、
2014 年 3 月 3 日「特別企画:『東日本大震災関連倒産』(発生から 3 年)の内訳と今後の見通し」
。
調査結果(要旨)
震災発生後の倒産件数推移
1. 東日本大震災発生から 4 年間で、
「東日本大震災関連
倒産」は累計 1726 件発生。4 年目(233 件)もなお、
(件)
(%)
東日本大震災関連倒産
阪神大震災関連倒産
原発関連倒産構成比
「阪神大震災関連倒産」の 1 年目(194 件)を上回る
15.5
14
2. 都道府県別に「東日本大震災関連倒産」の件数を見
ると、東京都が 409 件で最多。以下、宮城県 146 件、
茨城県 94 件、北海道・静岡県 92 件と続く。年別に
700
500
件も判明しなかった県も散見されるなど、徐々に影
400
響が薄まっている様子がうかがえる
300
3. 「東日本大震災関連倒産」のなかでも、福島第一原
200
子力発電所事故の影響を受けた「原発関連倒産」は、
100
4 年間で 180 件判明。構成比は、4 年目には 15.5%
0
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
11.7
650
11.3
12
600
件数の推移を見ると、4 年目には西日本を中心に 1
に上る
16
10
489
8
7.2
354
6
233
194
4
142
58
2
0
1年目
2年目
3年目
4年目
※阪神大震災関連倒産は3年間で集計終了
1
2015/3/2
特別企画:「東日本大震災関連倒産」
(発生から 4 年)の内訳と今後の見通し
1.件数・負債総額推移
2011 年 3 月から 2015 年 2 月までの「東日本大震災関連倒産」は 1726 件、負債総額は 1 兆 5619
億 1900 万円となった。
年別で見ると、2012 年 2 月までの震災発生後 1 年間では 650 件、2 年目は 489 件、3 年目は 354
件、4 年目は 233 件と、毎年 30%前後の比率で減少を続けており、震災による影響が徐々に薄れ
てきていることがわかる。しかし、今なお月間 20 件前後の倒産が判明しているという事実には注
意を向けなければならない。
1995 年の阪神・淡路大震災の影響を受けて倒産した「阪神大震災関連倒産」は、震災発生から
3 年間で 394 件判明した(集計は 3 年間で終了)
。比較可能な 3 年間で比べると「東日本大震災関
連倒産」は「阪神大震災関連倒産」の約 3.8 倍に上る。また、
「東日本大震災関連倒産」の 4 年目
の件数(233 件)は、「阪神大震災関連倒産」の 1 年目(194 件)を上回っており、東日本大震災
の影響の大きさを物語っている。
震災発生から4年間の件数推移
(件)
90
80
1年目
2年目
3年目
4年目
東日本大震災関連倒産
阪神大震災関連倒産
70
60
50
40
30
20
10
0
当月 2
4
6
8
10 12 14 16 18 20 22 24
※阪神大震災関連倒産は発生後3年間で集計を終了している
東日本大震災関連倒産
3月
4月
14
57
1年目
17,951 22,015
63
51
2年目
172,915 16,811
35
33
3年目
9,432 25,124
24
19
4年目
5,614
7,734
5月
80
34,665
57
27,429
41
11,625
20
3,994
6月
61
24,596
39
22,271
31
8,705
21
15,031
阪神大震災関連倒産
1月
2月
0
22
1年目
0 13,083
10
7
2年目
1,491
2,788
6
10
3年目
2,680
5,975
3月
29
6,560
9
3,225
7
3,940
4月
32
8,437
16
2,360
3
265
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
7月
8月
50
72
31,957 480,051
38
36
30,977 18,190
30
26
5,001 12,098
22
16
3,643 15,927
5月
19
3,673
17
5,934
4
848
6月
21
9,753
9
4,170
8
1,157
26
28
9月
41
14,779
44
35,290
36
25,434
23
5,556
10月
48
16,191
51
24,763
28
7,914
16
11,515
7月
10
3,688
11
3,113
4
430
8月
17
2,264
18
3,396
5
1,094
30
32
34
36
38
40
42
44
46 48
(カ月目)
(上段:倒産件数/下段:負債総額[百万円])
11月
12月
1月
2月
計
55
46
65
61
650
42,158 46,549 147,365 18,834
897,111
34
17
29
30
489
34,012
3,710
9,064 22,899
418,331
24
21
24
25
354
19,074
5,367 12,263
5,652
147,689
26
15
14
17
233
10,981
7,026
7,620
4,147
98,788
1,726
累計
1,561,919
(上段:倒産件数/下段:負債総額[百万円])
9月
10月
11月
12月
計
15
9
10
10
194
4,318
4,620
1,865
1,813
60,074
13
6
11
15
142
3,162
780
1,098
2,430
33,947
8
1
0
2
58
2,020
70
0
130
18,609
394
累計
112,630
2
2015/3/2
特別企画:「東日本大震災関連倒産」
(発生から 4 年)の内訳と今後の見通し
2.都道府県別
都道府県別に「東日本大震災関連倒産」の 4 年間の累計件数を見ると、東京都が 409 件で最も
多かった。以下、宮城県 146 件、茨城県 94 件、北海道・静岡県 92 件と続く。件数は決して多く
はないものの、被災地から遠い地域でも「東日本大震災関連倒産」が判明しており、日本全国に
影響が及んでいることがわかる。
しかし、年別に件数の推移を見ると、4 年目には西日本を中心に 1 件も判明しなかった県も散見
されるなど、徐々に影響が薄まっている様子がうかがえる。
地域別件数推移
11年3月 12年3月 13年3月 14年3月
~
~
~
~
12年2月 13年2月 14年2月 15年2月
北海道 北海道
44
28
14
6
青森県
10
6
4
4
岩手県
16
6
4
8
宮城県
28
47
46
25
東北
秋田県
6
9
10
5
山形県
11
4
16
7
福島県
30
15
4
6
計
101
87
84
55
茨城県
11
25
33
25
栃木県
21
17
9
15
群馬県
14
6
5
3
埼玉県
37
21
10
10
関東
千葉県
14
19
19
4
東京都
157
139
69
44
神奈川県
25
35
12
8
計
279
262
157
109
新潟県
20
5
8
2
富山県
2
2
3
2
北陸
石川県
11
4
1
0
福井県
0
7
1
1
計
33
18
13
5
山梨県
6
7
1
1
長野県
12
4
2
0
岐阜県
2
1
1
0
中部
静岡県
19
21
26
26
愛知県
29
7
14
8
三重県
1
2
1
2
計
69
42
45
37
地域
都道府県
累計
92
24
34
146
30
38
55
327
94
62
28
78
56
409
80
807
35
9
16
9
69
15
18
4
92
58
6
193
11年3月 12年3月 13年3月 14年3月
~
~
~
~
12年2月 13年2月 14年2月 15年2月
滋賀県
1
3
0
0
京都府
2
2
2
2
大阪府
26
7
3
2
近畿
兵庫県
13
4
4
0
奈良県
7
1
2
3
和歌山県
2
0
2
0
計
51
17
13
7
鳥取県
1
0
0
0
島根県
0
0
0
0
岡山県
2
3
1
0
中国
広島県
6
1
3
1
山口県
0
0
1
0
計
9
4
5
1
徳島県
3
2
1
0
香川県
1
1
0
1
四国
愛媛県
6
1
1
1
高知県
1
0
0
0
計
11
4
2
2
福岡県
31
13
10
8
佐賀県
4
2
4
0
長崎県
1
2
3
2
熊本県
5
5
2
0
九州
大分県
8
3
1
0
宮崎県
1
1
0
1
鹿児島県
1
0
0
0
沖縄県
2
1
1
0
計
53
27
21
11
全国
650
489
354
233
地域 都道府県
累計
4
8
38
21
13
4
88
1
0
6
11
1
19
6
3
9
1
19
62
10
8
12
12
3
1
4
112
1,726
3.業種別
業種別に「東日本大震災関連倒産」の 4 年間の累計件数を見ると、トップはサービス業の 380
件となった。以下、卸売業 349 件、製造業 337 件の順で続く。
業種別件数推移
11年3月 12年3月 13年3月 14年3月
~
~
~
~
にのぼったが、復興需要などのプラス要因も働き、
12年2月 13年2月 14年2月 15年2月
建設業
120
69
40
29
4 年目には 29 件と約 4 分の 1 に減少した。
製造業
125
119
57
36
卸売業
135
94
73
47
一方、震災後に自粛や風評被害により低迷した
小売業
89
64
53
40
需要が戻らないなどの理由から、小売業やサービ 運輸・通信業
28
25
35
18
サービス業
137
106
83
54
ス業などの業種では、全体に比べ減少幅が小さか
不動産業
7
6
8
5
その他
9
6
5
4
った。
計
650
489
354
233
年別の推移を見ると、建設業は 1 年目に 120 件
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累計
258
337
349
246
106
380
26
24
1,726
3
2015/3/2
特別企画:「東日本大震災関連倒産」
(発生から 4 年)の内訳と今後の見通し
4.被害区分別
震災により受けた被害区分別に見ると、社屋の倒壊や津波による浸水被害などの「直接的被害」
を受けた倒産は、155 件と、全体の 1 割未満にとどまった。他方、「間接的被害」を受けた倒産は、
1571 件にのぼった。「間接的被害」を内容別に見ると、「消費マインドの低下」が 970 件と過半数
を占めた。次いで、物流網の混乱による調達難などの「流通の混乱」が 117 件、工期や納期の延
期などの「生産計画の変更・頓挫」
被害区分別件数推移
が 106 件となった。
年 別では、「 消費マ イン ドの低
下」は、4 年目にも 155 件判明する
など全体に比べ減少幅が小さい。一
方、被災地優先の予算による「公共
工事の減少」は、全国的な公共工事
の増加を背景に、4 年目には 1 件も
確認されなかった。
直接的被害
間接的被害
消費マインドの低下
流通の混乱
生産計画の変更・頓挫
得意先被災
連鎖倒産
市場価格の混乱
仕入先被災
公共工事の減少
その他
合計
11年3月 12年3月 13年3月 14年3月
~
~
~
~
12年2月 13年2月 14年2月 15年2月
55
45
35
20
595
444
319
213
304
273
238
155
68
35
10
4
44
37
14
11
44
16
12
17
51
28
3
2
12
7
13
3
10
9
6
4
12
9
2
0
50
30
21
17
650
489
354
233
累計
155
1,571
970
117
106
89
84
35
29
23
118
1,726
5.原発関連倒産
「東日本大震災関連倒産」のなかでも、 原発関連倒産の件数・構成比推移
福島第一原子力発電所事故の影響を倒産
要因とするものを「原発関連倒産」と定義
し集計すると、4 年間の累計で 180 件判明
した。
11年3月 12年3月 13年3月 14年3月
~
~
~
~
12年2月 13年2月 14年2月 15年2月
原発関連倒産
47
57
40
36
構成比(%)
7.2
11.7
11.3
15.5
母数
650
489
354
233
※母数=「東日本大震災関連倒産」
累計
180
10.4
1,726
「東日本大震災関連倒産」に占める構成
比を年別に見ると、構成比は 4 年目には
要因区分別原発関連倒産
15.5%に上った。風評被害による影響が他
の震災による影響に比べ根深いことが原
因とみられる。
停止要因
22件
12.2%
「原発関連倒産」のなかでも、事故その
ものが要因ではなく、事故後に各地の原発
が稼働停止したことによる影響を受けた
ものは、22 件判明した。これらは、稼働
停止により発電所からの受注が得られな
くなったり、地元から作業員が引き上げた
事故要因
158件
87.8%
ことによって来客数が激減したりしたケ
ースである。全体からすれば件数は少ない
ものの、原発に依存している企業が一定数
事故要因:風評被害等の事故そのものが要因
停止要因:各地の原発稼働停止による影響が要因
あることを示している。
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4
2015/3/2
特別企画:「東日本大震災関連倒産」
(発生から 4 年)の内訳と今後の見通し
今後の見通し
2014 年 3 月から 2015 年 2 月に判明した「東日本大震災関連倒産」は 233 件。震災発生直後の 1
年間(650 件)と比べ 64.2%減少するなど、当初の想定通り、年々沈静化してきている。ただし、
沈静化とはいってもひと月あたり約 19 件の倒産が発生しているというのも現実である。
「クラブハウスやコース自体が被害を受けたほか、2011 年には来場者数が前年と比べ 1 万人程
度減少したことが、以前からの経営不振に拍車を掛けた」
(岩手県、ゴルフ場経営)、「ツアーバス
事業において、震災以降、東北方面路線の運行ができなくなったことなどで売上が大幅に減少し、
この頃から租税公課を徐々に滞納するようになった」(東京都、高速ツアーバス企画・主催)、「震
災発生時、茨城県大洗町に置いてあったトレーラー、シャーシが津波で流され、それ以降毎月赤
字続きに陥った」(北海道、貨物自動車運送)といった倒産事例が、直近 1 年間にも確認されてい
る。震災発生から 4 年目に入って発生した「東日本大震災関連倒産」は、「震災による何かしらの
ダメージを受けつつも営業を続けてきたが、遂に行き詰まる」というケースが目立つ。
1995 年 1 月に発生した阪神・淡路大震災の影響を受けた「阪神大震災関連倒産」は、2 年 10 カ
月後の 97 年 11 月に判明件数ゼロになるなど、約 3 年で倒産の発生は収束したと言える。一方、「東
日本大震災関連倒産」は減少傾向を示してはいるものの、発生から 4 年が経とうとしている今も
収束と言える状況ではない。今後も、東日本大震災をきっかけに大きく財務を毀損した企業を中
心として、「東日本大震災関連倒産」は散発するとみられ、収束には今しばらく時間が必要なよう
である。
【 内容に関する問い合わせ先 】
(株)帝国データバンク
産業調査部 石田卓也、早川輝之
TEL 03-5775-3073
FAX 03-5775-3169
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