GLP-1受容体作動薬 (Dulaglutide)

特 集 糖尿病治療薬はどこまできたか ―新規治療薬開発の現状 ―
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特 集 糖尿病治療薬はどこまできたか ―新規治療薬開発の現状 ―
8 GLP-1 受容体作動薬(Dulaglutide)
GLP-1 受容体作動薬
SC administered peptides
Ⅱ.新規糖尿病治療薬開発の現状
GLP-1受容体作動薬
(Dulaglutide)
Human GLP-1 backbone
Exendin-4 backbone
週に 1 回
1日1回
週に 1 回
1 日 1∼2 回
Taspoglutide
Liraglutide
Exenatide QW
Exenatide
CJC-1134-PC
Lixisenatide
Albiglutide
LY2189265
寺内康夫
CJC-1131
横浜市立大学大学院 医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学
Semaglutide
Dulaglutide は IgG4 抗体の Fc 領域に GLP-1 アナログを 2 分子結合させた融合蛋白であって,他の GLP-1 製剤
よりも半減期が長い(エキセナチド:1.3 時間,リラグルチド:14 ∼ 15 時間,本剤:約 90 時間)のが特徴である.
図 1 GLP-1 受容体作動薬の分類
Exenatide QW:マイクロスフィア(リュープリンと同様),Albiglutide・CJC-1134-PC・CJC-1131:アルブミンとの融合蛋白,Taspoglutide:亜鉛化
⇒開発中止,Semaglutide:脂肪酸を結合
Dulaglutide は米国食品医薬品局(FDA),欧州医薬品庁(EMA)およびその他の海外規制当局に承認申請され
NH2
(Assessment of Weekly AdministRation of LY2189265 in Diabetes)試験5試験(AWARD-1
ている.AWARD
化合物
から AWARD-5)がこれらの規制当局への提出書類パッケージの一部として提出された.一方,日本において行
IgG4 抗体の Fc 領域に
GLP-1 アナログを 2 分子
結合させた融合蛋白
われた臨床試験においても,Dulaglutide 0.75 mg の週 1 回皮下投与は全般的に忍容であり,日本人 2 型糖尿病
患者での臨床推奨用量になると考えられた.国内外で承認されれば,Dulaglutide は週 1 回投与かつ溶解操作が
不要である唯一の GLP-1 受容体作動薬となり,重要な新しい治療選択肢ができる.
NH2
GLP -1 ペプチド
リンカーペプチド
特徴
他の GLP-1 製剤よりも半減期が長い
・エキセナチド:1.3 時間
・リラグルチド:14 ∼ 15 時間
・本剤:約 90 時間
lgG4-Fc 領域
予定される用法
る.Dulaglutide は 3 ヵ 所 アミノ 酸 を 置 換 した Human
GLP-1(1 ヵ所は DPP-4 認識部位)2 つをリンカーペプチ
Dulaglutide の特徴
ドで IgG4 Fc 領域を結合させたもので,血中半減期が
1 週間に 1 回皮下注射
図2
HOOC
COOH
Dulaglutide(LY2189265)
の特徴
(文献 2)
長い.なぜ IgG4 が選ばれたかも含め,どのように安全
GLP-1受容体作動薬の分類を
1)
に示す .Dulaglutide
性を高めたか(Fcγ receptor への binding を弱め,かつ
は IgG4 抗体の Fc 領域に GLP-1アナログを2 分子結合させ
immunogenic potential を減らすように工夫)が記載さ
た融合蛋白(
図2
図1
2)
) であって,他の GLP-1 製剤よりも半
れている.また in vitro での血糖依存的なアゴニスト活性
Dulaglutide の海外臨床試験
AWARD-2 試験
AWARD -2 試験は,メトホルミンおよびグリメピリドに
よる治療を受けている 2 型糖尿病患者を対象として,週 1
減期が長い(エキセナチド:1.3 時間,リラグルチド:14 ~
のデータも含まれている.
AWARD-1 試験
15 時間,本剤:約 90 時間)のが特徴である.予定される
健 康 成 人 における Dulaglutide 単 回 投 与 による PK/
AWARD(Assessment of Weekly AdministRation
コントロール効果を比較する 78 週間の無作為化非盲検比
用法としては 1 週間に 1 回皮下注射となる.
PD 試験(Ph1)は,用量は 0.1 ~ 12 mg,クロスオーバー
of LY2189265 in Diabetes)- 1 試験は,メトホルミンおよ
較試験である.原稿執筆段階では論文化されていないので,
最近の GLP-1 受容体作動薬の総説としては,すでに市
で行われた(各人,プラセボおよび実薬 2 用量の 3 phase
びピオグリタゾンによる治療を受けている 2 型糖尿病患者
少し詳しく紹介する.
場に出ている製剤と開発中の製剤について,アミノ酸構
実施).T 1/2 は 90 時間で,ほとんどの被験者で 24 ~ 48
を対象として,Dulaglutide とエキセナチド(1 日 2 回)の血
本試験はコントロール不良の 2 型糖尿病患者 807 名を対
5)
回 Dulaglutide と 1 日 1 回インスリングラルギン投与の血糖
造の模式図一覧,および簡単な有効性・安全性を解説し
時間に C max があった .また,2 型糖尿病患者における
糖コントロールへの効果を 52 週間にわたって比較した無
象に実施され,主要目的はベースラインから 52 週までの
ている文献 3 が役に立つ.Short acting と Long acting
Dulaglutide 週に 1 回,5 週間反復投与による PK/PD 試
作為化プラセボ対照試験
(Ph3)
である.Dulaglutide(0.75
HbA1c 低下量において,週 1 回投与の Dulaglutide 1.5
に分けて有効性・安全性の特徴が簡潔にまとめられている.
験(Ph1b)では,2 回目(2 週目)の投与後に Trough 値が
mg または 1.5 mg)はエキセナチド(1 日 2 回)に比べて有意
mg はインスリングラルギンと比較して非劣性であるかを評
文献 4 では Dulaglutide の開発の経緯が記載されてい
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2014/10 Vol.6 No.9
6)
定常状態に達することが示されている .
7)
に A1c を低下させた .
価することである.インスリングラルギンの用量は treat-to月刊糖尿病 2014/10 Vol.6 No.9 ● 73