医療税務つうしん No.58

No.58
株式会社
ムトウ コンサルティング事業部
札幌市北区北11条西4丁目1番地 電話〔直通〕011-728-6114
http://www.wism-mutoh.co.jp/department/consulting
平成26年12月
平成26年9月、厚生労働省から「持分なし医療法人への移行に関する手引書」が公表
されたと聞きましたが、手引書の内容及びそのポイントを教えてください。
ポ
イ
ン
ト
1
公表された手引書には移行計画の申請手続きに関して、手順、必要書類の様式、記載要領
まで示されており、具体的に申請書類を作成する上で文字通り手引きとなるものです。
医療法人内での検討体制を整備し、持分なし医療法人への移行について各種検討を行い、
関係者への事前説明など、十分に時間をかけた事前準備が重要としています。
定に関わらず、本社団は担保権者の払戻し請求に応じる
ものとする。
移行計画の申請と定款変更手続きのステップ
平成26年度の税制改正で創設された医業継続に係る相続税・
贈与税の納税猶予制度を使って持分なし医療法人へ移行する
ためには、移行計画の申請をして厚生労働大臣の認定を受け
なければなりません。今回厚生労働省から公表された「持分な
し医療法人への移行に関する手引書」には移行計画の申請に
関する手続きのステップ、必要書類の様式及びその記載例が
詳細に示されております。
(1)移行計画の申請手続きのステップ
④定款変更の認可を受けた場合は、厚生労働大臣あてに
報告する必要があります。
2
移行計画認定申請に係る移行計画の
書き方(記載例から抜粋)
提出書類への記載方法には、提出する書類の様式が記載
例つきで公表されており、書類作成上大変参考になるものです
が、書類の書き方でポイントとなるのは、移行計画の「移行に向
けた取組の内容」と「移行に向けた検討の体制」の2箇所とみ
られますので抜粋して紹介します。
①移行計画の申請について((2)の定款変更についても
同時に)、社員総会で議決を得る。
②厚生労働大臣あてに移行計画の申請を行う(都道府県
(1)移行に向けた取組の内容
は経由せず、直接厚生労働省に提出)。
③申請にあたっての必要書類
・平成26年10月∼
・移行計画認定申請書 ・移行計画 ・出資者名簿
・定款(案)(移行計画の認定を受けた認定医療法人である
旨を記載したもの)及び新旧対照表
・社員総会の議事録
・直近に終了した3会計年度の貸借対照表及び損益計算書
④その他 移行計画の認定にあたって、事務を円滑に進
めるため、事務担当者の連絡先等について別紙「持分
なし医療法人への移行促進策に係る事務担当者連絡先」
を提出する。
(2)定款変更手続きのステップ
①移行計画の認定を受けた認定医療法人である旨を記載
した定款への変更について、社員総会で議決を得る。
②厚生労働省から移行計画の認定通知書を受理したら、
速やかに都道府県知事あてに定款変更の申請を行う。
③定款変更の申請にあたっての必要書類
・定款(案)(移行計画の認定を受けた認定医療法人である
旨を記載したもの)及び新旧対照表
・社員総会の議事録 ・移行計画の認定通知書の写し
【定款に次のような移行計画の認定を受けた
医療法人である旨の第9章を加え変更する】
第9章 持分の定めのない医療法人への移行
第36条 本社団は、移行計画の認定を受けた認定医療法人で
ある。
2 租税特別措置法に基づく相続税・贈与税の納税猶予を
受けていた社員(本社団の出資持分を当該納税猶予等に
係る担保として提供している者に限る。)について、納
税猶予分の税額の猶予期限が確定し、納付義務が生じた
にも関わらず、これを履行しなかった場合、第9条の規
移行検討委員会の立ち上げ 法人資産と各出資者の持分の算定
移行のメリット・デメリットについての検討 等
相続税、贈与税等の試算
出資者への移行の説明と持分放棄の意向確認
・平成27年8月
社員総会の開催:移行計画の申請、移行計画の認定を受けた
認定医療法人である旨を記載した定款への変更について議決
・平成27年10月
移行計画の申請
定款変更の申請
・平成28年1月∼
出資者への持分放棄の調整
出資持分払戻の資金調達の検討
・平成28年7月
経営安定化資金の申請
・平成30年6月
社員総会の開催:持分なし医療法人への移行について議決
・平成30年9月
持分なし医療法人への移行完了
(2)移行に向けた検討の体制
・移行検討委員会
社員(理事を含む)5名及び顧問税理士、顧問弁護士の7
名で構成
原則月1回開催
移行のメリット・デメリットについての検討
出資者への移行の説明と持分放棄の意向確認(対応者:担
当理事、顧問税理士、顧問弁護士)
検討内容の社員総会への報告
・担当理事:○○ ○○
No.58
医療税務つうしん
基金拠出型医療法人に対する税務上の取扱いは、経過措置型医療法人などとどのよう
な違いがありますか。
ポ
イ
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1
基金拠出型医療法人は出資を有しない法人であるため、軽減税率の適用、欠損金の繰越
控除・繰戻し還付、中小企業投資促進税制適用等、中小法人への特例が適用されます。
交際費課税は資本金とされる金額を貸借対照表から計算し、寄附金課税は所得基準額の
みにより行われ、消費税の納税義務については、
1期目は免税事業者となります。
法人税法上の取り扱い
基金拠出型医療法人は、法人税法上経過措置型医療法人と同様、普通法人として取り扱われますが、基金拠出型医療法人
の基金は出資ではなく拠出者からの債務で、持分の定めのない医療法人であるため、税務上の取扱いは持分の定めのある経過措
置型医療法人等と相違点があります。
(1)交際費の損金不算入制度における期末資本金
等とされる金額
期末資本金等
総資産の
総負債の − 当期利益
= − ×60%
とされる金額
帳簿価額
帳簿価額 + 当期欠損金
基金拠出型医療法人のように期末に出資金を有しな
い法人には、期末貸借対照表の総資産の帳簿価額から
総負債の帳簿価額及び当期利益を控除(当期欠損の
場合は加算)した金額の60%を期末資本金等とし、その
金額が1億円以下の中小法人に定額控除限度額を定め
ております。
平成26年度の税制改正で、交際費課税は右表のよう
に改正されております。
改 正 前
改 正 後
定額控除限度額800万円まで
中小法人(期末出
定額控除限度額800 損金算入
資金1億円以下の
飲食費の50%損金算入と選択
万円まで損金算入
医療法人)
適用可能
中小法人以外(期
末出資金1億円超 全額損金不算入
の医療法人)
接待飲食費以外 損金不算入
50%損金不算入
接待
飲食費 50%損金算入
(2)寄附金の損金算入限度額の計算
支出した寄附金のうち、国等に対
特定公益増進法人等に対する寄附金の
一般寄附金の損金算入限度額
するものや指定寄附金は、全額損金
特別損金算入限度額
の額に算入されますが、一般の寄附 基金拠出型
1.
25
6.
25
所得の金額 ×
所得の金額 ×
金及び特定公益増進法人等に対す 医 療 法 人
100
100
る寄附金については、右表のように
(所得基準額 +資本基準額)×1/4
(所得基準額 + 資本基準額)×1/2
損金算入限度額が設けられています。 経過措置型 所得基準額=所得の金額 ×2.
5/100
所得基準額=所得の金額 ×6.
25/100
資本基準額 = 資本金等の額 ×
基金拠出型医療法人は出資を有しな 医 療 法 人 資本基準額 =資本金等の額 ×
当期の月数/12×2.
当期の月数/12×3.
5/1,
000
75/1,
000
いため所得基準額のみによって計算
します。 (注)所得の金額とは、申告書別表4の仮計の金額に支出した寄附金の額を加算した金額。
(3)欠損金の繰越控除・繰戻し還付
2
法人税以外の税法の取扱い
青色申告法人には、欠損金の繰越控除と欠損金の繰
戻しによる還付制度が設けられています。
(1)基金拠出型医療法人を設立した場合の消費税の
①欠損金の繰越控除は、その事業年度の控除前所得金 納税義務
額の80%を限度とする制限が設けられましたが、その制限
個人開業医が基金拠出型医療法人を設立した場合、1
は資本金が 1 億円超の法人等を対象としているため、出
期目は出資がないため免税事業者となり、2期目も特定期
資を有しない基金拠出型医療法人にはその制限がなく、
間(1期目開始6カ月間)の課税売上高又は給与等の支
控除前所得金額の全額を控除の対象とすることができます。
払額が1,
000万円以下であれば免税事業者となります。
②欠損金の繰戻し還付についてはその制度の適用が停
住民税の均等割
止されていますが、中小法人等については不適用措置の (2)
基金拠出型医療法人のよ
うに期末に出資金を有しない
対象から除かれ、出資を有しない基金拠出型医療法人は
法人の場合、
地方税の均等割りは、
各税率表の最低税率
適用することができます。
が適用されます((例)北海道の法人道民税2万円、札幌
(4)法人税率
市の法人市民税5万円)。
普通法人の法人税率は下表の通り、出資を有しない基
小規模宅地等の減額特例
金拠出型医療法人は年800万円以下の所得に対して15%、 (3)
経過措置型医療法人の場合、
相続開始時点で出資の
年800万円超の所
年800万円以下 15%
資本金
普通
1
0分の
5超を所有するなど一定の要件を満たす宅地等に
1億円以下 年800万円超 25.
5%
得に対して25.
5%
法人
ついて「特定同族会社事業用宅地等」に該当するとして
5%
資本金1億円超及び相互会社 25.
となっています。
400㎡まで80%の評価減の特例を受けることができます。
(5)中小企業投資促進税制
しかし、基金拠出型医療法人は出資概念のない法人であ
青色申告の、出資を有しない基金拠出型医療法人は、
るため、その事業用宅地等について「特定同族会社事業
常時使用する従業員の数が1,
000人以下の場合、中小
用宅地等」に該当することはありません。
企業者として中小企業投資促進税制の適用対象法人とな
ります。
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