12月 (PDF) - 在ボツワナ日本国大使館

Botswana Medical Information
2014 年 12 月
エボラ出血熱関連
*当話題は世界的問題のため、重要と思われる国際情報を含んでいます。
・エボラ出血熱による景気後退
世界銀行が 12 月 2 日に報告したところによると、エボラ出血熱の蔓延にてギニアとシエラ
レオネの来年の景気は後退する見通しになりそうである。エボラ出血熱が封じ込められて
いないギニアとシエラレオネにリベリアを加えた 3 ヶ国では、2014 年から 2015 年にかけ
ての取引や投資の減少額は 20 億米ドルに達する見込みである。実際シエラレオネでは、今
年前半の経済成長率は 11.3%であったが、後半は 2.8%の伸びに留まっている。
DailyNews. 3 Dec, 2014.
・エボラ出血熱によるアフリカ観光への風評被害
環境野生動植物観光大臣の Khama 氏は、12 月 2 日にカサネで開催されたボツワナ観光博
覧会の開催挨拶にて、「エボラウイルスに対する恐怖のため、アフリカへの旅行の多くが
解約され、観光収入が大きく減少している。しかし、我が国ではエボラ出血熱は発生して
いない。実際には、ヨーロッパ人の方がよりエボラウイルスの近くに住んでいることを肝
に銘じていただきたい。」と聴衆の多くをなすヨーロッパ人に対して述べた。
DailyNews. 5 Dec, 2014.
・累計 2 万名を超えるエボラ出血熱患者数
WHO が 12 月 31 日に発表したところによると、西アフリカに端を発したエボラ出血熱の患
者数が 2 万名を超えた。12 月 24 日からの 1 週間で 476 名の新規患者を認めたが、うち 337
名(70.8%)がシエラレオネでの発生となっている。しかしシエラレオネでも、直近 3 週間
での新規患者数が 9 月 28 日以来初めて 1000 名を下回り、感染拡大の速度は少し緩やかに
なってきている。1976 年にエボラウイルスの発見に貢献した Piot 氏によると、この西アフ
リカでのエボラ出血熱の流行は 2015 年末まで続くであろうとの見通しである。
Rueters. 31 Dec, 2014.
西アフリカ 3 ヶ国での合計累積患者数
20,381 名(2015 年 1 月 2 日時点)
1
出典:米国疾病管理予防センター(CDC)
その他
・ボツワナが新記録を目指す
国家エイズ調整局(NACA)は保健省と合同で、HIV 検査とカウンセリングの企画をマウン
で行った。この企画は「8 時間のうちに一都市で HIV 検査をどれだけたくさん施行できる
か?」というギネス世界記録を打ち破ることを目指して行われ、目標数は 6000 名としてい
る。国連エイズ計画(UNAIDS)のボツワナ支部長 Sun 医師は「ボツワナでは成人の 70%
は HIV 検査を受けておらず、特にマウン地域ではその数字はより大きい。」と述べた。部
族長の Ledimo 氏は
「ちょうど良い時期にこの企画が来てくれた。
HIV はボツワナにとって、
最大の健康問題であり、現在約 18.5%の人が罹患している。特に性的活動が盛んな 35-39
歳で最も高い罹患率となっている。」と述べた。なお、現在のギネス記録はアルゼンチン
の Rosario 市が持っており、8 時間で 3,733 名を検査している。
DailyNews. 1 Dec, 2014.
追記
この企画として、11 月 29 日の午前 9 時から午後 5 時まで、マウンの 10 ヶ所で HIV 検査が行われまし
た。被験者数は 2,419 名にとどまり、世界記録更新はならなかったようです(DailyNews. 4 Dec, 2014.)。
・HIV 撲滅に対する米国の支援
駐ボツワナ米国大使代行の Murphy 氏は「HIV を制御するために、適切な介入への投資を続
ける必要がある。」とマウンでの世界健康研究会(Global Health Seminar)で述べた。米
国政府は HIV 新規感染者をゼロにするために、Option B+というプログラムの実行に 750 万
米ドルの支援を行う約束をしている。「この数年間で我々は数多くの成果を残した。2001
年と比してボツワナの新規 HIV 感染者は 71%減少した。ピーク時には 40%であった母体か
ら児への HIV 感染率は、今では 2%近くにまで減少した。また、HIV 治療が無料で受けられ
るシステムは他のアフリカ諸国の模範となっている。」と今までの成果を述べる一方で、
「毎日 45 名程度が新規に HIV と診断されている。目的を見失えば、今までの成果は台無し
になるであろう。」と警戒も示した。
DailyNews. 9 Dec, 2014.
追記
Option B+というのは、母体から児への HIV 感染を防ぐために WHO が提唱する治療プログラムです。
具体的には、「妊娠の有無や CD4 細胞数(HIV によって侵されるリンパ球、この数が少ないと AIDS を
発症しやすい)にかかわらず、HIV 診断時から妊娠中を通じ生涯にわたり 3 種類の HIV 治療薬を服用す
る。出生した子供は 4 から 6 週間にわたり 1 種類の HIV 治療薬を毎日服用する。」というものです。
2
・飲酒が HIV 感染の危険性を高める
マハラペ病院の Bontle 氏はクリスマスから年末年始にかけて HIV 感染が増えることを憂慮
している。同氏はマハラペで開かれた会合で、「飲酒により HIV 感染のリスクが大きく高
まる。酔っ払った人たちが無防備な性行為を行うためである。」と述べた。この会合では、
本年 7 月に開設された 24 時間体制の診療所についても紹介された。同診療所では毎週金曜
日に黄熱病ワクチンの予防接種を行っており、また子宮頸癌検診も行っている。
DailyNews. 18 Dec, 2014
・妊娠、出産の環境
妊娠中絶に伴うトラブルが 2013 年の妊産婦死亡の第 2 の原因であることがボツワナ統計局
より明らかにされた。ボツワナの妊産婦死亡の最多原因は分娩時の大量出血(19 件)であ
るが、妊娠中絶に伴うもの(15 件)が第 2 の原因であり、HELLP 症候群(妊娠中毒症の重
症型、溶血性貧血 + 肝機能障害 + 血小板減少を呈する)の 11 件を上回った。また、記録
によると、2011 年の妊産婦死亡数は 74 件であったが、2013 年は 91 件に増加していた。
医療施設以外での出産件数は 2009 年が 220 件、2010 年が 475 件、2011 年が 104 件、2012
年が 91 件、2013 年が 68 件と全体として減少傾向にあるものの、Gantsi 地区と Okavango
地区で全体の 90%以上を占めており、地方で医療施設外での出産が多い現状が判明した。
Mmegi. 12 Dec, 2014.
・学生達の問題
ボツワナ大学の 2012 年 2013 年にかけての報告によると、精神的な問題を抱える学生の数
は増えており、うち 57%が薬物や飲酒による問題であった。ボツワナ大学では、増加する
心の病への対策として、2012 年 8 月より看護師を一人配置することとした。また、985 名
の学生が HIV 検査を受け、うち 309 名が初めての検査だったとの報告もなされた。
Mmegi. 16 Dec, 2014.
・SADC 専門家の医療施設への視察
USAID(米国国際開発庁)/ UNFPA(国連人口基金)の地域会合に参加するため、SADC(南
部アフリカ開発共同体)7 ヶ国からの専門家がハボロネを訪れ、ボツワナの地方医療施設
(Otse ヘルスポスト、Mochudi 診療所、Khudumelapye 診療所、Sesung ヘルスポスト)の
視察を行った。専門家からは「各医療施設が男性や若者の受診率を上げるために努力して
いる姿が印象的であった。」「夫婦一緒に HIV 検査を受けていることは素晴らしい。」「HIV
に感染している人が隔離されずに、共存している姿に感銘を受けた。」「患者が一列に並
んで順番待ちをしているのに驚いた。」などの賞賛の声が上がった。
Mmegi. 10 Dec, 2014.
3
・オカバンゴ地区での移動式医療サービス
12 月 8 日に保健省副大臣 Madigele 氏が議会で述べたところによると、オカバンゴ地区の
Moremi ゲームリザーブ内の Mombo キャンプでは Okavango Air Rescue と契約し、スタッ
フに対して移動式医療サービスを提供することになっている。その他のキャンプでも、ス
タッフを対象に移動式医療サービスを提供することが予定されている。
DailyNews. 11 Dec, 2014.
追記
Okavango Air Rescue はヘリコプターによる緊急医療サービスです。マウンを中心にボツワナ北部
で活動しており、軽傷者には電話での医療アドバイスを、重傷者には医師を同乗させての医療サー
ビスの提供と緊急搬送を行っています。利用には事前登録が必要で、ボツワナ滞在許可者の場合は
年間 150 プラ、旅行者の場合は年間 175 プラの登録料が必要です。詳しくは、Okavango Air Rescue
(電話:+267-686-1616 または Email: [email protected])にお問い合わせください。
・献血キャンペーンの失敗
フランシスタウンで行われた 3 日間の献血キャンペーンは失敗に終わった。北部血液供給
協会会長の Bojong 氏は「今回のキャンペーンは討論会・詩吟会・ライブ演奏の三部構成と
したが、詩吟会には詩人が来なかった。血液は交通事故などにあった人々の命を救うのに
必要であり、若者は多くの血液を提供できるはずである。」と悔しがった。今回の企画メ
ンバーの一人 Mazhani 氏は「メイン会場のスタジアムが市中心部から遠すぎたため、集客
が悪かった。今回の失敗を生かし、次回はもっと良い結果を残したい。」と述べた。
DailyNews. 2 Dec, 2014.
・Tutume 病院の増床
Tutume Primary Hospital の産婦人科病棟が 2015 年 11 月をメドに、37 床増えることが保健
省副大臣 Madigele 氏より発表された。この増床計画は来年 1 月より始動するが、必要な物
資が供給されるのに 10 ヶ月要するとされている。なお、この計画は Tutume 病院の病床不
足に対応するために、同地区の部族長会議で Khama 大統領が公約していたものである。
DailyNews. 5 Dec, 2014.
・地方の救急車事情
保健省副大臣の Madigele 氏が語ったところによると、セレビピクウェ地区には 9 台の救急
車が配備されているものの、現在使用されているのは 3 台であり、残りの 6 台は修理中と
のことであった。この話はセレビピクウェ地区の国会議員 Keorapetse 氏からの質問に答え
たものである。
DailyNews. 15 Dec, 2014.
4
医療施設紹介
Menodent Dental Clinic
フランシスタウンの Village Mall に位置する歯科診療所。カナダで免許を取得したボツワナ人
歯科医が運営している。施設はコンパクトだが清潔で、2 つの処置室を有している。処置器具
の消毒にはオートクレーブという標準的な高圧蒸気滅菌装置を用いている。
Office time; 8:00-16:30
TEL: 241-6575/ 7332-5903/ 7170-6367
Waiting Room
Treatment Room
City Medical Centre
フランシスタウンの Central Business District に位置する診療所。外科医と一般内科医が一
人ずつ所属している。大きな手術は Riverside Hospital の手術室で行っているが、縫合や切
開排膿などの処置は同診療所で可能である。消化管内視鏡検査にも対応している。
Office time; 8:00-19:00
TEL: 241-7716/ 7141-9561
Consultation Room
Endoscopic Machine
発行日:2015 年 1 月 5 日
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文責:宇賀神 基(在ボツワナ日本大使館 医務官)