脊柱起立筋持久力の性差は思春期以前に生じる

第 49 回日本理学療法学術大会
(横浜)
5 月 31 日
(土)9 : 30∼10 : 20 ポスター会場(展示ホール A・B)【ポスター 基礎!身体運動学 5】
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脊柱起立筋持久力の性差は思春期以前に生じる
谷名
英章1),坪井
宏幸2),安岡
良訓2),谷口
雄飛2),佐藤
秀幸2),西村
行秀3),田島
文博3)
1)
関西電力病院リハビリテーション科,2)北出病院リハビリテーション科,
和歌山県立医科大学リハビリテーション科
3)
key words 小児・表面筋電図・筋疲労
【はじめに,目的】
脊柱起立筋は Type1 線維優位の筋線維組成を持つ姿勢保持筋である。筋線維 Type の割合を鑑別する方法として病理組織学的
検査を用いることが多いが,この手法は侵襲を伴う。それに代わって,非侵襲的に筋線維組成を評価する有用な方法のひとつに
筋電図パワースペクトル解析がある。これにより算出される中間周波数(MF)と平均周波数(MPF)の減衰率は筋疲労の指標
となり,筋線維 Type の割合を推測することが可能となる。Sørensen は腰背部の筋持久力評価法として Trunk holding test が有
用であることを報告し,この Trunk holding test と脊柱起立筋の筋電図パワースペクトル解析を組み合わせた測定法は再現性の
高い脊柱起立筋持久力の評価法として数多く研究されている。この測定法により,成人男女の脊柱起立筋持久力を比較した結
果,女性の方が Trunk holding test の持続時間が長く,MF 及び MPF の減衰率が小さいことが判明している。一方,ヒトは胎
生期の 20 週齢頃より筋線維 Type の分化が開始し,出生時には完了するといわれているが,小児において脊柱起立筋持久力に性
差があるかは不明である。本研究の目的は Trunk holding test と脊柱起立筋の筋電図パワースペクトル解析を用いて,思春期前
男児と思春期前女児における Trunk holding test の持続時間及び,MF と MPF の減衰率を比較・検討することである。
【方法】
対象は Tanner 分類 stage2 以下の健常思春期前男児 14 名,女児 13 名とした。被験者は十分な安静の後,Trunk holding test
に準じて能動的に可能な限り水平位を保持した。被験者の胸郭中央が 2 秒間 2cm 以上下垂した時点で測定を終了した。表面筋電
導出電極を第 1 腰椎から両側の脊柱起立筋の筋腹中央に貼付し,不関電極を第 1 腰椎棘突起に貼付した。筋電計で計測した脊柱
起立筋の筋活動は 20"
500Hz のバンドパスフィルターにかけ,A!
D 変換(サンプリング周波数 2000Hz)してコンピューターに
取り込んだ。次いで,左側の脊柱起立筋活動に対して高速フーリエ変換による周波数パワースペクトル解析を行い,1 秒単位の
MF と MPF を算出し,それらの減衰率を求めた。統計解析として,MF 及び MPF の減衰率と身長,体重,Body Mass Index
(BMI)
の相関性については Spearman の順位相関分析を行い,二群間の比較は Mann"
Whitney U test を用いた。有意水準は 5%
とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
事前にヘルシンキ宣言に基づき,全ての被験者とその保護者に対して研究の趣旨,方法及び危険性を書面と口答で十分に説明
し,同意を得た。尚,本研究は共同研究機関の倫理審査委員会から承認を得ている。
【結果】
Trunk holding test の持続時間は思春期前女児が思春期前男児に比べ有意に長かった。Trunk holding test 中に得られた左側の
脊柱起立筋活動を周波数パワースペクトル解析した結果,全ての被験者で MF と MPF は時間に伴い有意に減衰した。MF 及び
MPF 減衰率は思春期前女児が思春期前男児に比べ有意に小さかった。また,両群ともに MF 及び MPF の減衰率と身長,体重,
BMI に有意な相関はなかった。
【考察】
Trunk holding test と脊柱起立筋の筋電図パワースペクトル解析を用いて,思春期前男児と思春期前女児の脊柱起立筋持久力を
比較した結果,成人における脊柱起立筋持久力の性差と同様,思春期前女児の方が思春期前男児より脊柱起立筋持久力が秀でて
いることが明らかとなった。また,両群ともに MF 及び MPF の減衰率と体格に有意な相関を示さなかった。MF 及び MPF
減衰率との関連性について,Mannion らは Trunk holding test から算出された MF の減衰率が小さいほど脊柱起立筋における
Type1 線維の割合が高いことを報告している。また,実際に病理組織学的検査を用いて成人男女の脊柱筋線維組成を比較した結
果,女性の方が男性より Type1 線維の割合が高いことが判明している。従って,思春期前女児における MF 及び MPF の減衰率
が思春期前男児より小さいということは,少なくとも思春期以前に筋線維 Type の割合が性別によって異なることを示唆する。
【理学療法学研究としての意義】
小児の脊柱起立筋に関して評価,治療プログラムの立案を行なう際には思春期以前から性別によって脊柱起立筋の筋線維組成
が異なることを考慮する必要があるかもしれない。本研究の結果は小児における脊柱起立筋の特性を理解する上で役立つ知見
となる。