4 dielectric 5 gauss law in dielectric 6 boundary condition 2014

4. 誘電体と比誘電率、誘電体の分極
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誘電体と比誘電率
平行平板コンデンサの極板間をガラスや
紙などの絶縁体で充填すると静電容量は真空の
場合に比べて増加する。
S
絶縁体
真空の場合の静電容量をC0、絶縁体を挿入した場合の静電容量
をCとすると
εr=C/C0
:比誘電率
CはC0のεr倍となる。
空気の比誘電率 @ 1
C=εS/d ここでεr=ε/ε0 ε:誘電率
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1
誘電体の分極
導体は自由電子によって電気を導くが絶縁体は導かない。絶縁体内では
電子は原子核に束縛され、自由に動けない束縛電子であるために電気を
導かない。
しかし、電界中に絶縁体を置くと束縛電子の変位がおき、電気的な作用を及ぼす。
E
E
電子
原子核
原子核
電子は電気双極子を形成
→電界を更に外部に作る
分極(Polarization)
外部から電界が作用すると電子は原子核に対して変位する。
これにより等価的に電子は電気双極子を形成する。
この電気双極子は外部に対しても電界をさらに作る結果となる。
この現象を電子分極といい、あらゆる物理学や電子工学において極めて重要な
物理現象の一つである。
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分極
分子内の原子が電界によって変位するものを原子分極という。
分子には外部電界がなくても最初から電気双極子になっている物質があり、
外部電界があると極性をそろえるために分極を示す。この現象を極性分極という。
誘電体の分極
誘電体に外部から電界が作用すると誘電体内部には多くの電気双極子が形成される
分極電荷
誘電体内で分極が一様に起こっている時、内部では正負の電荷が打ち消し合って
巨視的には電荷が存在しないように見える。両端面には分極による電荷が現れる
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4
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真空中の電界(復習)
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誘電体中の電界
誘電体を導体間に挟んで電圧を加えたとき
誘電体内の電界を考える。
印加電源によって導体面上に与えられた
電荷の面積密度をσ、-σ[C/m2]とする。
誘電体は導体面上の電荷による電界に
よって分極し、正負の分極電荷σp , -σp
が導体板に接する誘電体端面に現れる。
σ
誘電体
-σ
誘電体
-σp
σp
誘電体中の電界は真空の導体面に
+/-(σ-σp)の電荷が存在する場合の
電界に等しい
したがって、誘電体中の電界は真空中の電界σ/ε0よりσp/ε0だけ小さくなる。
+/-(σ-σp) : 見かけの電荷
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3
誘電体の分極
分極ベクトル P
誘電体が電界によって分極する度合いを量的に表す指数
単位体積Vあたりの電気双極子モーメント|M|, |P|=|M|/V
分極ベクトルPの方向は電気双極子モーメントの方向
単位:[C/m2]
誘電体に外部電界が印加されている場合
ΔS部分の分極電荷=Δqp
V
ΔV
分極P
大きさ:電界に垂直な面を通り抜ける
単位面積あたりの正電荷の量
その方向:正電荷の変位方向
Δqp
-Δqp
ΔS
l
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誘電体の分極
分極Pは電界に垂直な面を通り抜ける単位面積あたりの正電荷量の大きさ
分極ベクトルの大きさは
|P|= P =Δqp/ΔS=σp
r r
P•n =σp
分極ベクトルの大きさは分極の面積密度σpに等しい。
分極Pと誘電体中の電界Eとの関係
誘電体中の電界|E|=(真空中の電界)/εr
χ:分極率、 χs:比分極率
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r
r
v
P = χE = ε 0 χ s E
χ=ε0(εr−1)
χs= εr−1
8
4
電束密度D
σ=|P|+ε|E|=|D|
ここでベクトルDを電束密度(電気変位)electric displacement
r
r r
r
r
r
r
D = ε 0 E + P = ε 0 E + ε 0 (ε r − 1) E = ε 0ε r E = εE
r
r
r
D = ε 0ε r E = εE
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誘電体中のガウスの法則
-σp
σp
自由電荷
(分極関係ない)
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r
r
∫ D • dS =Q
s
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5
誘電体中のガウスの法則
Dは問題を処理しやすくするために導入されたベクトル
r
r
D
•
d
S
=Q
∫
s
閉曲面から出て行く
電束線の数は閉曲面内の
電荷量Qに等しい
電束密度は電気力線と同様に電束線として見なされる
>自由空間
物質がないため分極も起きない。P=0
>物質がある場合 Pπ0
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誘電体中のガウスの法則
電荷密度σの電荷から
|D|=σ
の電束が出ているので
閉曲面Sを通り抜ける全電束は
電束についてのガウスの法則で表される
r
r
Q
∫ E • dS = ε
s
n
Dn
D
電界について
のガウスの法則(積分形)
0
r
r
D
•
d
S
=Q
∫
s
電束について
のガウスの法則(積分形)
r r ρ
∇•E =
電界について
のガウスの法則(微分形)
r v
∇•D = ρ
電束について
のガウスの法則(微分系) マクセルの方程式の一つ
ε0
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例題
(自分でやってみること)
比誘電率εrの誘電体中に半径aの導体球がある。導体球に電荷Qを与えたとき
誘電体中の電界と導体球の電位及び導体面に現れる分極電荷の面電荷密度を求めよ。
図のように導体球に対し同心な半径rの
球面を与えると球面から出て行く電束は
電束に関するガウスの法則から
D
Q
r
a
εr
S
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例題回答
次に導体面に現れる分極電荷の面積電荷密度を-σpとすると
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5.誘電体・境界条件
異なる誘電率ε1,ε2の誘電体が
お互いに接し、上側の誘電体中に点電荷
があるときの電束線は右図
異なる誘電体の境界面では電気力線
(電束)は屈折する。
異なる誘電体境界面での電界と
電束密度の振る舞いを求める。
Q
ε1
ε2
D1
D1n
図に示すように境界面を挟んだ厚さの
非常に薄い円柱を考える。
ΔS
ε1
境界面での電束密度D1,D2の条件を求める。
ε2
この閉曲面での電束に関するガウスの法則
を適用
D2n
D2
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境界条件
境界面上には真電荷が存在しないのでQ=0
閉曲面の円柱の高さを微小として側面から電束
が出て行かないとすると
D1n
ΔS
ε1
ガウスの法則左辺=
ε2
D2n
D2
(電束についての境界条件)
境界面上に真電荷が無いとき、電束密度の法線成分は境界面を通過しても同じ
(電束密度Dの法線は境界面で連続)
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誘電体面での境界条件
長方形の経路(ad, bcの長さが極めて短い@0)を
考える。境界面での電界の強さE1,E2の条件を
求める。
単位正電荷を経路abcdに沿って1週するときの
仕事は静電界の性質(正電荷保存則)により0で
あるので
E1
ε1
ε2
E
a ds 1t
d
b
E2t
ds
c
E2
(電界のついての境界条件)
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電界Eの接線成分は境界面で連続である。
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境界条件
電界と電束密度の境界条件
D1cosθ1=D2cosθ2
E1sinθ1=E2sinθ2
D1=ε1E1
D2=ε2E2
(電界と電束密度に対する屈折の法則)
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異なる誘電体を挟んだ平行平板導体内の電界
(自分でやってみること)
例題4・3 図のように平行平板導体間に
誘電率がε1,ε2で厚さがそれぞれ
V
d1,d2の誘電体を挟み導体間に
電圧Vを加えたとき、各誘電体中の
電界E1,E2を求めよ。
導体間の間隔は十分に狭いとする。
d1
ε1
d2
ε2
S
解答
導体板上に現れる電荷を+/-Q[C]とすると導体板の間隔が十分に狭いので電荷は
対向する導体板上に一様に分布し、その面積電荷密度σ[C/m2]は
σ=Q/S
電束密度は真電荷に等しく、ε1内の電束密度Dは導体板に垂直で
D=σ=Q/S
また、ε1内の電束密度は一様で誘電体境界面に垂直に入る。電束密度Dの法線成分は
連続であるのでε2内の電束密度もDとなる。
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異なる誘電体を挟んだ平行平板導体内の電界
各導体中の電界は
V
d1
ε1
d2
ε2
S
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10
5.誘電体中に蓄えられるエネルギと力
ファラデー管
導体1,2において導体1の表面ΔS1上に
正の真電荷ΔQ[C]があるとそこからΔQ本
の電束線が出て行く。電束線によって取り囲
まれた空間は図のように管状(力管)
になっていると考えるとことができる。
この管中に電束線に垂直な2つの断面
ΔS3,ΔS4を考えた場合、それぞれの断面上
に電束D3,D4として電束に関するガウスの法則を
用いる。
管内に出入りする電束線の数は等しい
電束の小さいところでは管は太い。
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ファラデー管
図のように力管の終点となっている
導体2の表面積をΔS2とすると
ΔQ本の電束線が入る。
単位正電荷に始まり単位負電荷に終わる
電束の管をファラデー管という。
導体上にQ[C]の真電荷があると導体からは
Q本のファラデー管が発生
空間はQ本のファラデー管で埋まっている。
電束D=ファラデー管の密度(Q/面積)
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電界のエネルギー
コンデンサに限定されず電界Eの任意の誘電体
内においてもエネルギが蓄えられる。
導体上の真電荷をQ[C]、導体の電位をV[V]
とすると、この導体が持っているエネルギは
このエネルギは導体がもっているとかんがえる
よりは導体上の電荷が周りの空間に作る
電界の形で空間(ファラデー管)に蓄えられるエネルギ
と考えたほうが合理的(ファラデーが提唱)
1本のファラデー管
ファラデー管
Q[C]の電荷があると導体の周りの空間はQ本
のファラデー管で埋まっている。
→1本のファラデー管(+1[C]の電荷)にはそれぞれV/2 [J]の
エネルギが蓄えられている。
1本のファラデー管において+1[C]の電荷を移動するのに要する仕事W=V/2
ファラデー管の長さΔl 部分の電位差をΔVとすると
この空間に蓄えられるエネルギーΔW=ΔV/2
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電界のエネルギー
ファラデー管の長さΔl 部分の電位差をΔVとすると
この空間に蓄えられるエネルギーΔW=ΔV/2
1本のファラデー管
この微小体積部分のエネルギー体積密度wは
(単位体積あたりのエネルギ)
[J/m3]
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空間に電界Eと電束Dが与えられるとその点の電界のエネルギ密度w
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が求められる
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境界面に働く力
導体
一般には導体面に電荷が存在するとき
ΔS部分の電荷ΔQにはΔS以外の電荷によって
斥力が生じ、導体ΔSは外向きに力を受ける。
導体面の外向きにΔxだけ仮想変位した場合を考える
Δx部分に蓄えられた単位面積ΔSあたりエネルギΔWだけ変化する
単位体積あたり蓄えられるエネルギw
単位面積あたり蓄えられるエネルギの変化量ΔW=
(外向きに力が働いてその働く方向にΔxだけ移動するためエネルギは減少)
単位面積あたりに働く力fは
この力fをマクセルの応力という
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コンデンサに対するエネルギ密度の例
コンデンサに蓄えられるエネルギ
d
ε
S
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8.定常電流
電流
これまでは電荷が静止している場合を考えてきた。
ここでは電荷が移動する場合(電流)を考える。金属中(自由電子)、電解溶液
(イオン)中の電荷が移動する。この電荷の移動を電流という。
[A] 単位時間に通過する電荷量
電流の正の方向は電子の流れと逆
伝導電流:導体中を流れる電流(広義には半導体の正孔等も含む)
対流電流:荷電粒子が真空中や気体中を運動することによって生ずる電流
変位電流:電束密度Dの時間的変化
電流密度J=dI/dS [A/m2]
J=
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電流
電流密度
J=nqv n:単位体積あたりの電荷の数
q:荷電粒子の電荷量
v:電荷の移動速度
また移動速度vは導体中では電界に比例する
移動度
v=µE
µ:移動度(mobility)
定常電流(直流)
電流の大きさと方向が時間的に変わらないときの電流
変動電流
電流値が変動するときの電流。過渡電流や交流
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オームの法則と抵抗
オームの法則
I=V/R V=RI
R:電気抵抗 [Ω]
電圧と電流が線形関係:オームの法則
半導体等や高電圧印加:オームの法則が成り立たない。
伝導電流が分布時のオームの法則(通常電気工学や物理学では次を使用)
J=σE
σ:導電率 [S/m]
ここで[S]=[1/Ω]
抵抗と抵抗率
コンダクタンス
[S]
ρ:抵抗率
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抵抗率ρ
金属の抵抗率: 10-8∼10-7[Ω・m]
半導体の抵抗率: 10-4∼106[Ω・m]
抵抗の温度依存性
導体の抵抗は温度に依存する。
金属:温度上昇とともに増加
導体、半導体:温度上昇とともに減少
t=t1における抵抗をR1
t=t2における抵抗をR2
R2=R1[1+αt1(t2-t1)]
αt1:t1における抵抗の温度係数
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抵抗の接続
V
抵抗の直列接続
V1=R1I
V2=R2I
V3=R3I
I
R1
V1
R2
R3
V2
V3
R1
抵抗の並列接続
R2
R3
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ジュールの法則
抵抗R[Ω]にI[A]の電流が流れると次の電位差が発生する
V=RI
電流I:単位時間にI[C]の電荷が移動。この電荷が電位差Vの間を
高電位から低電位に移動するので、電荷は電界から単位時間あたり
IVの仕事を受ける。単位時間あたりの仕事は電力Pであるので
P=IV=I2R [J/s=W] (ジュールの法則)
抵抗によって消費されて発熱する熱をジュール熱という。
電力量=P x 時間 [Wh]
1Wh=1Wx1h=1Wx3600s=3600J
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電源と起電力
図に示すように電荷が蓄えられたコンデンサの電極
を導線でつなぐと電極間の電位差によって電流が
流れる。
コンデンサに蓄えられていた電気エネルギは導線の
抵抗によって消費されるので定常的な電流とはなら
ない。
抵抗に定常電流を流すには電源による電気
エネルギの供給が必要である。
図のように抵抗に電流Iが流れるとCD間には
オームの法則により電位差V=RIが現れる。
点Cは点DよりVだけ電位が高い。点Dでは電位がC
よりVだけ低いので、抵抗Rで消費された電力により
電圧が低下する。このことを電圧降下という。
A B
C
D
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電流連続の式
導電率σが一定である導体内に生ずる電流の場を電流界(field of electric
current)という
静電界と同様に等電位面が生ずる。そのため、電流の力線は静電界における
電気力線(電束線)に対応するので静電界で行った考え方や計算法と同様の
方法を適用できる。
n
J
図のようにある電流源を取り囲んだ閉曲面
Sから流れ出す電流とそれによって減少する
jn
電荷について考える。
dS
閉曲面Sから流れ出す電流Iは
Jn:微小面積dSから出て行く電流の法線成分、dS:面積ベクトル、v:閉曲面の体積
電磁気学基礎で学んだベクトルの発散定理により
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電流連続の式
n
J
jn
電荷量の時間的減少分は電流に等しいので
I =−
∂Q
∂ρ
∂
= − ∫ ρdv = ∫ (− )dv
v
∂t
∂t
∂t v
r r
∂ρ
∇• J = −
∂t
dS
電流連続の式
定常電流の場合、閉曲面内に電荷の蓄積がないので、電荷密度ρの時間的変化=0
電流連続の式の右辺=0
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定常電流界
図のように導体中に閉曲面Sをとるとき
定常電流においては
導体
r r
∂ρ
∇• J = −
=0
∂t
dS
J
閉曲面S
定常電流界においては空間内に電荷の蓄積がない。
またオームの法則
J=σE を用いると
r r r
r
r r
∇ • J = ∇ • σE = σ∇ • E = 0
r r
r r
J
•
d
S
=
σ
E
∫
∫ • dS = 0
s
(微分形)
(積分形)
s
定常電流界は電荷のない時の静電界と同じ場になる。
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静電界と定常電流界
静電界
定常電流界
D=εE
J=σE
D
J
ε
σ
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電解液中の静電界
導電率の異なる2つの導体での電流密度
J1,J2の境界条件を求める。
図のように導電率の異なる境界を含む
極めて薄い円柱の閉曲面を考える。
J1
J1n
ΔS
σ1
σ2
J2n
定常電流の条件から
J2
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電解液中の静電界
J1n=J2n
面ΔSに流入する電流密度と
流失する電流密度は等しい。
(電流密度の法線成分は連続)
境界面での電界をE1,E2とすると
オームの法則から
J1=σ1E1, J2=σ2E2
J1n=|J1|cosθ1=σ1|E1|cosθ1
J2n=|J2|cosθ2=σ2|E2|cosθ2
J1
J1n
ΔS
σ1
σ2
J2n
J2
σ1E1cosθ1=σ2E2cosθ2
定常電流界においても静電界と同様に電界の接線成分は連続であると考えられるので
E1sinθ1=E2sinθ2
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電流は異なる導電率の境界面で屈折
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