ワールドカップの笛

H26 全校朝会の話10
ワールドカップの笛
2014.7.14
校長
西谷
秀幸
先 週 は 、4 年 生 が 挨 拶運 動 で 、 すば ら し い 挨拶 を し て く れま し た 。 先週 、「 自 分か ら挨
拶をする人になろう」という話をしましたが、3倍くらい増えました。
いよいよ1学期も今週で終わります。あと5日間です。最後まで、相手の目を見て、気
持ちのよい挨拶を自分から先にしてくださいね。
さ て ( サッ カ ー ボ ー ルを 見 せ る)、こ れ は サッ カ ー の ワー ル ド カ ッ プで 使 わ れ てい るボ
ールです。郵便局の方からいただきました。今朝、決勝戦が行われましたね。試合を見て
いて、世界で一番になるということは本当にすごいことだと改めて思いました。
今回、日本代表チームは、残念ながら活躍できませんでしたが、実は、これまで、ワー
ルドカップで日本製のあるものが世界一になっているのです。
サッカーのワールドカップでは、10万人以上の観客が大きな声を出したり、楽器で大
きな音を出したりして応援しています。そんな中でも、誰にでも聞こえなければならない
ものがあります。それは、審判の笛、ホイッスルの音です。そのホイッスルの中に、日本
で作られているものがあるのです。
(写真)この会社の笛は、32年前(1982年)の第12回
スペイン大会の時、公式のホイッスルとして初めて採用されま
した。その4年後のメキシコ大会でも採用され、ワールドカッ
プ の 審 判 が 、「 こ の 笛 で な け れ ば 、 絶 対 だ め だ 」 と い う く ら い
世界で認められた笛です。
では、世界で認められたこのホイッスルは、どんな会社で作られていると思いますか。
実 は 、 東京 に あ る 「 野田 鶴 声 社 (の だ か く せい し ゃ )」 とい う 会 社 です 。 な ん と、 たっ
た5人しかいない小さな工場なのです。そんな小さな工場が、なぜ世界で認められるホイ
ッスルをつくることができたのでしょうか。
それは、ハーモニカを作り続けてきたこの工場が、音を正確に出すという伝統の技術を
生かして、今までのホイッスルの欠点を改良してきたからです。
ホイッスルは外側の金属と、中にコルクというボールでできていますが、社長の野田さ
んは、今までのホイッスルの2つの欠点を見つけました。
1つは吹いているうちに、中のコルクボールにつばがしみ込んで、音が低く濁ってしま
うことです。もう1つは、金属に隙間ができ、息が漏れて高い良い音が出ないことです。
この2つの問題を解決するために、野田さんは研究を重ねました。その結果、コルクボ
ールの小さな穴は、特殊な粉をまぶしてふさぎ、つばがしみ込まないようにしました。
しかし、金属の隙間のほうは、なかなかうまくいきませんでした。そんなとき、野田さ
んが苦労しているという話を聞きつけて、周りにある小さな工場の人たちがたくさん集ま
ってきて、一緒に研究してくれました。
そして、ついに、すばらしい音が出るホイッスルが完成したのです。たった5人の小さ
な工場でしたが、今までもっていた伝統の技術と、もっといいものをつくりたいという気
持ち、諦めない心、そして、周りの工場の人たちの温かい協力があって、世界一のものを
つくることができたのです。
現在では、ワールドカップは、審判が自分で笛を選ぶようになりましたが、アディダス
とプーマというメーカーのホイッスルは、この会社が作っていて、世界中の多くの試合で
使われています。それだけではありません。サッカー以外にも、バレーボールのオリンピ
ックで使われたり、ラグビーの世界大会で使われたりもしているのです。
お話を終わります。
(裏面に「先生方へ」があります)
〈先生方へ〉
いよいよ1学期も最後の1週間。成績提出、ありがとうございます。所見については、低中
高のブロックで読み合い、お互いの記述について学び合ってください。また、誤字脱字、記入
漏れ、消し忘れなどがないように注意深く仕上げてください。よろしくお願いします。
残り5日間、1学期のまとめとともに、夏休みに向けて、ご指導をよろしくお願いします。
さて、今日はワールドカップにちなんで、ホイッスルの話をしました。日本代表チームは残
念ながら、活躍できませんでしたが、日本の技術は世界の至るところで活躍しています。日本
人の生きる気概のようなものを伝えられたらと思います。各クラスで実態に合わせて補足をお
願いします。
〈 参 考 〉 野 田 鶴 声 社 (の だ か く せ い し ゃ )に つ い て
□ 大正8(1919)年創業の東京のホイッスルメーカー。現在の代表取締役
は野田員弘氏。FIFAワールドカップでは1982年スペイン大会・1986年
メキシコ大会で公式ホイッスルに採用された実績がある他、NATO軍や
フランス国家警察などで採用されるなど海外に多くの納入実績があり
海外でも評価が高い。
□1998年ワールドカップ・フランス大会での唯一の日本人審判である岡田正義が使用した
ことでも報道された。ただ現在では、その軽さやメンテナンスのしやすさから、FOX40
やドルフィンプロなどのプラスチック製でコルク玉の入っていないホイッスルが主流と
なっている。
□これまで、世界45か国に累計1500万個以上輸出した。サッカーのワールドカップ
ばかりでなく、ラグビーやオリンピックなどの国際大会でも吹かれている。現在、アデ
ィダスとプーマのブランドで売られているホイッスルも野田鶴声社製であり、世界的に
信頼されている。
□以前は輸出100%だったが、現在は10~20%程になっている。野田社長は「一生
懸命よい物をつくっても 、『鳴ればよい』という人もいる。コストがかかるうちの笛は
価格が高いので、そんな人は安い製品を購入する。どうにもならないことだが、ファン
の方はいる 。」という。
□岸和田のだんじりや浅草の三社祭では 、ほとんどの人が野田鶴声社の笛を使ってるおり 、
車掌や駅員の中にも支給品の笛では満足できなくて注文してくる人が多いという。
□以前、フランス人が来社してホイッスルを購入し、それをサンプルに台湾で同じような
ものをつくらせた。そして、それをフランスのサッカー協会に持っていった。しかし、
野田社長は「 うちの製品は高いから利益が出ないと思い 、ほかでつくらせたのでしょう 。
しかし、サッカー協会の反応は『何だこれ?』だったそうです。わかってくれる人は、
わかってくれる 。」という。
□残念な話だが、後継者がいないため、野田員弘さんの代で、終わりにするとのこと。
それは、息子が継ぐ継がないという話ではなく、技術的な問題のようだ 。(ホイッスル
を作る技術は教えてどうにかなるものではなく、センスだという。それを持っている者
でないと、継ぐことができないという 。)