諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査

海外調査依頼内容
1
回答日:平成 23 年7月8日
2
依頼者名:鹿児島県支部
3
調査依頼事項:諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
4
調査対象国又は対象地域等:アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、イタリア、
ドイツ、ノルウェー、韓国、オーストラリア、
ニュージーランド、中国
5
調査の趣旨(調査結果の利用目的・時期を含め具体的に):
鹿児島県離島地域における消費税軽減税率導入の検討に関して,本年6月~7月
頃に関係省庁へ要望する予定があり,その参考資料とするため。
6 調査内容
調査対象地域における付加価値税の減免状況。
(減免制度の有無,開始年度,本来税率と軽減税率,等)
CLAIR ニューヨーク事務所
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011 年 5 月 31 日
回答票
1
調査対象地域(アメリカ・カナダ)において、付加価値税の減免措置
の事例がありますか。
(回答)
アメリカ・カナダにおける本事例は、ありませんでした。
カリフォルニア州及びマサチューセッツ州など、離島を持つ州を中心
に調査を行いましたが、付加価値税に係る減免等の優遇措置の実施例は
確認できませんでした。
2
事例がある場合、各地域(島)ごとに以下の内容について御教示くだ
さい。
(回答)
上記1の該当なし
CLAIR ロンドン事務所
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011 年 6 月 22 日
ガーンジー(Bailiwick of Guernsey)について
1
基本情報
ガーンジーは、イギリス海峡のチャネル諸島の一部で、ガーンジー島を始めとするいくつかの小
島からなる。王室属領(Crown dependencies)であり、英国王を元首としているが、英国の一部では
なく、EU にも属していない。但し、国民は基本的に英国市民権を持っており、入国管理、交易(通
関)については英国の一部として取り扱われている。1
王室属領とは、独自の法体系と政府を有し、外交、国防は英国に委任するものの、それ以外に
ついては自治権を持った地域である(税制を含む内政については、原則として、英国とは別に独
自の決定を行うことができる)。
2
付加価値税制度
これまでに付加価値税が導入されたことはない。上記のとおり、内政的には英国から独立して
いると言うことができることから、「付加価値税の減免」には当たらない。
対象物
本 来 税 軽 減 税 開始年
率
率
す べ て ―
―
―
の 物 品
及 び サ
ービス
3
目的
仕組み
―
―
効果
(例:人口増減)
―
その他の税制
上記のとおり、ガーンジーは内政的に独立し、税制に関しては、競争上有利な制度設計を独自
に行うことができる。この結果、ガーンジーには、多くの銀行、投資銀行、保険会社等が立地して
いる。これらの産業は、今なお重要な産業である、花卉栽培、漁業及び酪農の伝統産業とともに、
ガーンジーの経済の多様性と、その生活環境に貢献している。主要税目の税率は以下のとおりと
なっている。
◎法人税:0% ただし、ガーンジーに立地する金融業については10%、電気、ガス等のライフラ
インを提供する企業及び不動産から所得を得ている企業には20%の税率が適用されている。
◎所得税:標準的な税率は、単身世帯所得が 9,050 ポンド以上、複数世帯所得が 18,100 ポンド以
上の場合20%。子ども、退職者に対しては追加的な手当が支給される。
◎譲渡所得税、相続税:0%
◎印紙税:0% ただし、上記の不動産から所得を得ている企業に適用されている20%の所得税
が、印紙税を代替している。
◎EU との取引に係る関税:0% ガーンジーは EU には属していないが、EU 諸国との物品の輸出
入についてのみ、関税は非課税となっている。サービス、資本等には関税がかかる。
1
両親及び祖父母が英国民でない者は英国市民権を持たない。
-1-
CLAIR ロンドン事務所
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011 年 6 月 22 日
ジャージー(Bailiwick of Jersey)について
1
基本情報
ジャージーは、イギリス海峡のチャネル諸島の一部で、ジャージー島を始めとするいくつかの小
島からなる。王室属領(Crown dependencies)であり、英国王を元首としているが、英国の一部では
なく、EU にも属していない。但し、国民は基本的に英国市民権を持っており、入国管理、交易(通
関)については英国の一部として取り扱われている。1
王室属領とは、独自の法体系と政府を有し、外交、国防は英国に委任するものの、それ以外に
ついては自治権を持った地域である(税制を含む内政については、原則として、英国とは別に独
自の決定を行うことができる)。
伝統的に、ジャージーの主要産業は、農業、漁業、毛織物であったが、現在では、金融業が主
要な産業となっている。金融業がジャージーの GDP の50%、ジャージー政府税収の60%を占め
ている。
2
付加価値税制度
これまでに付加価値税が導入されたことはない。上記のとおり、内政的には英国から独立して
いると言うことができることから、「付加価値税の減免」には当たらない。
対象物
本 来 税 軽 減 税 開始年
率
率
す べ て ―
―
―
の 物 品
及 び サ
ービス
3
目的
仕組み
―
―
効果
(例:人口増減)
―
売上税制度
2008 年から、3%の税率で売上税が導入されている。課税対象は輸出品を除く全ての物品及び
サービスである。2011 年6月から、税率が5%へ引き上げられている。
この売上税は、EU の定義する上記の付加価値税とは異なり、国内の税収を補填するものとして、
国内で消費される物品及びサービスに対してのみ課されるものである。
4
その他の税制
◎法人税:0% ただし、ジャージーに立地する金融業については10%の税率が適用されてい
る。
◎所得税:単身世帯所得が12,790ポンド、複数世帯所得が20,510ポンド以上の場合、2
0%。
◎譲渡所得税、相続税:0%
◎印紙税:資産の市場価格に応じて個別に決定される。
1
両親及び祖父母が英国民でない者は英国市民権を持たない。
-1-
CLAIR ロンドン事務所
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011 年 6 月 22 日
5
軽減税率等による効果
20%という低い所得税率は、ナポレオンの時代から、富裕層を引きつけてきた。しかし、ジャー
ジーに多くの金融業が本格的に立地し始めたのは、利子率の上限を5%とするという法律が廃止
された 1962 年以降のことである。
低い税率、英国及び大陸ヨーロッパに近いこと並びに政権が安定していること等の理由から、金
融業の立地が続き、現在では、45の銀行、33,000 を超える企業がジャージーに立地し、ジャージ
ーは国際的な金融センターとなっている。ジャージーの銀行預金残高合計額は常に 1,870 億ポン
ドを超えており、その68%は外貨預金である。
-2-
CLAIR ロンドン事務所
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011 年 6 月 22 日
マン島(Isle of Man)について
1
基本情報
マン島はアイリッシュ海中央に位置する、面積 572km2、人口約 8 万 2 千人の島である。
マン島は王室属領(Crown dependencies)であり、英国王を元首としているが、英国の一部では
なく、EU にも属していない。但し、国民は英国市民権を持っており、入国管理、交易(通関)につい
ては英国の一部として取り扱われている。
王室属領とは、独自の法体系と政府を有し、外交、国防は英国に委任するものの、それ以外に
ついては自治権を持った地域のことである(税制を含む内政については、原則として、英国とは別
に独自の決定を行うことができる)。
19 世紀までは、農・漁業に加えて亜鉛、銅などの鉱業が主産業であった。19 世紀から海岸保養
地として人気を得、観光産業が隆盛したが、1960 年代に入って海外旅行が盛んになってからは斜
陽となり、沈下した経済を活性化するため、1980 年代にタックス・ヘイブンを導入した。
現在の主要産業は金融・保険、漁業、映画、観光業。また、インターネットを活用したオンライン
ゲーム産業、オンラインギャンブル産業なども盛んである。
2
付加価値税制度
【税率】
マン島の付加価値税制度(VAT)は、英国に準じているため、税率は英国と同率(20%)である。
(たとえ税率が異なっていたとしても、内政的には、英国から独立していると言うことができること
から「付加価値税の減免」には当たらない。)
【英国との協定】
VAT に関して、マン島は英国と特殊な協定「関税及び付加価値税に関する協定(Customs and
Excise Agreement)」(1979 年締結)を締結しており、これに基づき、英国に準じた VAT 制度がマン
島に適用されている。またこれにより、マン島は EU 非加盟でありながら、貿易においては他の EU
諸国と同様の取り扱いを受けることができる。即ち、マン島の企業がフランスへ輸出を行うのと、
英国がフランスへ輸出するのとでは、手続き・税制面において何ら差異がない。このため、マン島
の物価は英国の物価と同水準となり、関税分が価格に上乗せされることはない。
「関税及び付加価値税に関する協定」以前に適用されていた「関税等に関する協定(Customs
Etc. Agreement 1957)」の下では、マン島は英国財務省の許可なく、間接税制度を変更することは
できなかった。また「関税等に関する協定」以前には、マン島の法律である「歳入還付に関する法
律(Revenue Returns Act 1894)」の中に、マン島に輸入される紅茶及びタバコに係る税収が英国
とマン島とで共有される、という規定も存在した。
英国に準拠した VAT 制度ではあるが、VAT に関する係争処理は英国とは独立して行われてお
り、英国から完全に独立した VAT 係争処理機関がマン島に存在するとともに、必要な場合は、マ
ン島の企業は、EU の VAT 担当局や、英国又は EU の裁判所に訴えを起こすことができる。
【英国との協力体制】
上記協定に基づく協力体制により、VAT の納税義務が生じる企業は、英国又はマン島のどちら
かに登録を行えば十分であり、両方の税務当局に届け出る必要はない。
また、英国国家監査局(National Audit Office)が毎年 VAT 制度全体についての監査を実施し、
-1-
CLAIR ロンドン事務所
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011 年 6 月 22 日
英国議会及びマン島議会の双方に報告を行っている。
【英国との相違点】
英国の VAT 制度との主要な相違点は、マン島においては、ホテル宿泊費及び車両修理費にか
かる VAT は5%に軽減されている点である。
【現行制度に対する評価】
「関税及び付加価値税に関する協定」については約 30 年間議論されてきており、現行制度につ
いて商業的利益があるとする意見もあれば、実質的には英国の決定に従わなければならない制
度への不満も存在している。
一方の英国側には、「関税及び付加価値税に関する協定」に基づく現行の VAT 制度により、マ
ン島が不公正に利益を得ているのではないか、との漠然とした批判が存在する。
対象物
本 来 税 軽 減 税 開始年
率
率
す べ て 20%
無し
―
の 物 品
及 び サ
ービス
3
目的
仕組み
―
―
効果
(例:人口増減)
―
その他の税制
マン島は 1980 年代より、企業誘致・産業振興のため、一部の課税を軽減ないし免除するタック
ス・ヘイブン化を進め、大きな成果を上げている。タックス・ヘイブンとしてのマン島の特徴は下記
の通り。
◎譲渡所得税、富裕税、相続税、印紙税は非課税である。
◎法人税は 0%。但し、金融業及びマン島内の不動産取引に係る売り上げには 10%が課税される。
◎所得税率の上限は 20%である。非居住者の所得税は 20%、居住者の所得税は所得額に応じて
10%と 15%の 2 段階で課税されている。将来的には上限を 15%に引き下げることを目指しているが
実現の見通しは立っていない。
◎低い税率に対して、EU 諸国から競争性に関しての問題を指摘されている。
4
マン島税制の強み
税制が単純であること、人口が少ないこと等により、マン島においては税制に関する違法行為
(脱税等)が起きにくい。VAT の脱税は、英国よりも発生率が低い。マン島のような小さな島では、
そのような違法行為はすぐに発見できることが大きな理由である。
法整備を迅速に行える政治システムもマン島の強みとなっている。
英国に準じた税制としているために、英国民にとってもわかりやすい制度となっている。「関税
及び付加価値税に関する協定」は、公式文書のやり取りだけで改正できる協定であり、法令よりも
柔軟かつ流動的に対応が可能である。
マン島は、マネーロンダリングや賭博について、その監視体制が厳格である点で、世界的に高
い評価を得ている。このような厳格な監視体制なしに軽減税率等を導入した場合には、脱税等の
-2-
CLAIR ロンドン事務所
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011 年 6 月 22 日
観点で、世界中から批判を受けることとなる。特に、マン島には、金融に関する犯罪を防止するた
めに、その法的規制を定期的に厳格化するための強力な取り決めが存在する。
同様に、マン島においては、違法な事業を行うことも非常に困難である。マン島の営業許可に
関する法令は非常に厳格であり、営業許可を得るためにはこの厳格な基準を満たす必要がある。
これにより、脱税やマネーロンダリングのための架空取引等をマン島で行うことは非常に難しい。
マン島の税制は、海外企業に、法人税等の軽減税率を提供しながら、同時にチャネル諸島が
実現できない EU へのアクセスも保障するという2つの強みを持つ。
5
マン島税制の弱み
法人税等における軽減税率の導入により、減少した税収で公共支出を賄わなければならない状
況にある。一方で、軽減税率や質の高い公共サービス(一例として、マン島の障害児教育は英国
よりも質が高いとされている)を求めて英国から移住し、マン島の公共サービスから便益を受けて
いる住民もおり、必要な公共サービスと財源との均衡を図ることが問題となっている。
6
減免制度における留意点
一般的に言って、本土周辺の島に税の減免を認める場合には、同時に本土と当該島の政府組
織間の情報共有が重要となる。減免を許可された島には、租税回避を求める事業者が集まり、そ
れは往々にして組織的犯罪を伴うこととなる。この社会的問題に対処するためには、本土と当該
島において、公安組織を始めとした政府機関の協力が必須となる。この点において、マン島は、
軽減税率への移行を慎重に行ってきたため、これまで大きな問題は生じていないが、チャネル諸
島とフランスとの間には多くの問題が生じている。
7
参考情報
マン島政府の課税方針について詳細は下記を参照されたい。
MODIFICATIONS TO TAXATION STRATEGY (October 2002)
http://www.gov.im/lib/docs/treasury/incometax/pdfs/modification.pdf
※ 本調査は、マン島への出張調査(2011 年 5 月 26、27 日実施)及びインターネットによる検索に
基づく。出張調査で訪れた機関は以下のとおり。
・
マン島財務省所得税担当局
・
マン島財務省関税・消費税担当局
-3-
CLAIR ロンドン事務所
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011 年 6 月 22 日
スヴァールバル諸島 Svalbard(ノルウェー)について
対象となる税
・所得税及び付加価値税(消費税)
減税の経緯
1920 年の スヴァールバル条約(1920 Svalbard Treaty)で、スヴァールバル諸島はノル
ウェーの統治下に置かれたが、条約の第一章で島におけるノルウェーの権限に制限を課してい
る。
条約第8章では、税の徴収はスヴァールバルに利益をもたらす場合のみ可能であるとしており、
ノルウェーは島以外での使途となる税の徴税ができない。
なぜなら、スヴァールバルの行政運営に要する経費はノルウェーよりも小さいからであり、また
所得税はノルウェー本土よりも安くなっている。ノルウェーの他の地域では通常 28%であるのに
対し、島の現行税率は8%である。
なお、島には付加価値税(消費税)が一切かからない。
ノルウェー政府はスヴァールバルに対して多額の補助金を出している。2009 年の公的補助は
3 億 8,800 万クローネ(NOK)であった。
付加価値税の減税事例
対象物
本来税率
軽減税率
開始年
目 的
仕組み
効果(例:人
備 考
口増減など)
所得税
28%
8%
1920
年
スヴァー
付加価値
3種類の
0%
スヴァー
ルバルの
税(消費
税率
ルバル条
ために活
・ 通 常
約
用される
税)
25%
税のみ徴
・食料品
税が許さ
14%
れている。
・その他
特定品 目
8%
<参考ウェブサイト>
http://www.ssb.no/sts_en/
http://www.ssb.no/this_is_svalbard/gruvedrift.pdf
-1-
-
-
-
-
-
-
CLAIR ロンドン事務所
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011 年 6 月 22 日
ヘルゴラント島 Helgoland (ドイツ)について
地理的・歴史的背景
ヘルゴラントは2つの島で構成されており、一つは約1km² 、他の一つは約 0.7 km²の面積し
かない。このうち大きい方の島にだけ人々が居住している。
ドイツ北西部の海岸線から 70 km の沖合いに位置し、行政的にはシュレスヴィヒ・ホルシュタ
イン州ピンネベルク郡(Kreis) Pinneberg in Schleswig-Holstein の一自治体である。
1807 年、英仏のナポレオン戦争中に(1803 年~1815 年)、英国海軍が島を占領し、諜報活
動やナポレオンに対抗する密輸の中心地となった。
1814 年、それまで島を保有していたデンマークから英国へ正式に譲渡された。
1814 年~1890 年までの間、英国領であったが、ナポレオンを打ち負かした見返りとしてヴィ
クトリア女王から、全ての義務を免除され、例えばいかなる税も払う必要がないこととされた。
島の行政運営に必要な収入は酒や石油といった高級品にかかる輸入税からきていた。
島は富裕層たちの観光地となり、恵まれた気候のおかげで芸術家たちも集まるなどして成長
を遂げた。
英国はドイツがザンジバル Zanzibar(タンザニア)を放棄するのと引き換えに(ヘルゴラント・
ザンニバル条約)、1890 年、島の支配権をドイツへ譲渡した。
第二次大戦中、島は特に潜水艦の基地として軍事施設が発展した。そして空中戦の発達によ
って島の戦略的重要性は減少したが、1945 年 4 月に英国軍が島に激しく砲撃を加えたため、
人の住めない状態になった。
主に防空壕の中で生き延びた人々は難を逃れて 1945 年から 1952 年までの間、もはや住め
なくなった島を離れた。英国軍は島の形を変えるほどの甚大な爆撃を加え、残存する軍事施設
を破壊した。
1952 年、風向きなど環境的要因を考慮した基本原則に沿った復興委員会の計画にしたがっ
て島の復興と再建が始まった。環境に配慮したため、建物の復興は全く元のとおり行われたわ
けではない。
1962 年、ヘルゴラントは北海スパ(Nordseeheilbad)として認定された。
免税の地位を得た歴史を持つため、ヘルゴラントは EU の付加価値税がかかる対象地域から
除外されるとともに、ドイツの課税地域からも除かれている。
島の経済は観光に依存している。経済活動の 93%が第三次産業(観光、研究、公共サービ
ス)によるものである。
そのロケーションにも拘らず、土着の漁業はほとんどない(従事している人もパートタイムであ
る)。
また、80 人のスタッフを抱える海洋研究所は島で最大の雇用主である。
島の居住人口は 1,452 人(2010 年 6 月現在)。人口は過去 25 年間で減少し続けている
(1985 年が 1850 人、2008 年は 1598 人)
-2-
CLAIR ロンドン事務所
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011 年 6 月 22 日
付加価値税の減税事例
島内で購入する物品やサービスの消費税は完全に免除されている。
委細は下表のとおりである。
対象物
本来税率
軽減税率
開始年
目 的
仕組み
効果
備 考
(例:人口増
減等)
19 世紀以
公式に表
物品及び
来、現在
明された
1985 年頃ま
サービス
まで
ものはな
で日帰りショ
い
ッピングの目
すべての
19%
0%
-
1970 年から
的地として多
くの ビ ジ タ ー
を惹きつけて
いる
その他参考
1970 年代前半、島への年間訪問者数は、80 万人を超えていた。当時は酒、香水、バターと
いったより安価な買い物が可能であった。その後 1985 年までに訪問者数は 50 万人以下に減
少した。
1991 年から 1994 年にかけてのドイツ再統一後、始めの頃は短期間のブームを呼び、年間
訪問者数は約 70 万人に及んだ。
1997 年から 2004 年の間は比較的一定して約 50 万人を維持したが、2004 年から落ち込み
を見せており、2007 年頃から 35 万人となっている。
経済を軌道に戻すための様々な努力がなされている。ヘルゴラントは、2007 年から 2013 年
までのEU国境地域共同開発補助金(Interreg IVB)事業の一つである北海地方開発計画に
基づく行動計画であるウートランデ地方活性化事業(AktivRegion Uthlande)の一部に盛り込
まれている。
島はシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の特別な条例に基づいて、酒、たばこ、コーヒーへの(英
国支配時に導入された制度の延長である)独自の地方輸入税(Gemeindeeinfuhrsteuer)を
課している。また同時に、観光客は現在1泊あたり 2.75 ユーロの観光税(Kurtaxe)を払うこと
になっている(このような観光税はドイツのリゾート地では一般的)。
なお、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州は財政均衡法(FAG Schleswig-Holstein)に従い、ヘ
ルゴラントに対して特別補助金(補助額は毎年見直される)を拠出し支援を行っている。
<参考ウェブサイト>
http://www.helgoland.de/helgoland/gemeinde-helgoland.html
http://en.wikipedia.org/wiki/Heligoland
http://de.wikipedia.org/wiki/Helgoland
-3-
CLAIRパリ事務所
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011年6月8日
<フランス>
対象地域名:コルシカ島(Corse)
税率の種類
標準税率
軽減税率
超軽減税率
非課税
対象物等
法令で定められた非課税対象及び特別の税率での課税対象を除い
て、物品・サービス等のすべての取引により生ずる付加価値に対し
て、標準税率で課税される。
水(ソフトドリンクを含む)。食料品(菓子、植物性脂肪、キャビア等を除く)。
家畜(人間の消費用)の飼料。農業用の肥料・殺虫剤。処方薬。障害者用
の器具。低所得者向けの社会住宅(建設用地及び住宅の提供)。電力の供
給。天然ガスの契約料。旅客輸送。宿泊施設の利用。外食。書籍。映画館・
劇場等での上映。芸術作品・アンティーク。等
支払が社会保険で還付される医薬品。演劇・ミュージカル・コンサート等の
公演(ただし140回目までの公演まで)。新聞・雑誌。等
医療。郵便。放送サービス。教育。不動産取引。保険。等
フランス本土の
本来税率
対象地域の税率
19.6%
ガソリン・石油製品に対しては13%。建
物の工事、農業機械、低圧電気等に対し
ては8%。
5.5%
2.1%(処方薬、障害者用の器具、低所得
者向けの社会住宅、外食、芸術作品、ア
ンティーク等、一部を除く)
2.1%
演劇・ミュージカル・コンサート等の公演(但し
140回目までの公演)に対しては0.9%
非課税
非課税
法的根拠
最新の法改正
年度
租税総合法典297条
2010年
租税総合法典297条
2010年
租税総合法典297条
税率軽減の
最初の導入年度
目的
(フランス本土からの)隔
絶性及び環海性という地理
的な特殊性を踏まえて、地
域の経済開発を促進するこ
と。
1963年
2010年
租税総合法典
261~263条
2011年5月31日現在。出典:租税総合法典(Code général des impôts)http://www.legifrance.gouv.fr/
対象地域名:グアドループ島(Guadeloupe)、マルティニーク島(Martinique)、レユニオン島(Réunion)
税率の種類
標準税率
軽減税率
対象物等
フランス本土の
本来税率
対象地域の税率
法的根拠
最新の法改正
年度
法令で定められた非課税対象及び特別の税率での課税対象を除い
て、物品・サービス等のすべての取引により生ずる付加価値に対し
て、標準税率で課税される。
19.6%
8.5%
租税総合法典296条
2000年
5.5%
2.1%
租税総合法典296条
2000年
租税総合法典
296-bis条
及び298-septies条
296-bis条は
1991年、
(新聞・雑誌に関
する)298-septies
条は
2009年
水(ソフトドリンクを含む)。食料品(菓子、植物性脂肪、キャビア等を除く)。
家畜(人間の消費用)の飼料。農業用の肥料・殺虫剤。処方薬。障害者用
の器具。低所得者向けの社会住宅(建設用地及び住宅の提供)。電力の供
給。天然ガスの契約料。旅客輸送。宿泊施設の利用。外食。書籍。映画館・
劇場等での上映。芸術作品・アンティーク。等
税率軽減の
最初の導入年度
(フランス本土からの)隔
絶性及び環海性という地理
的な特殊性を踏まえて、地
域の経済開発を促進するこ
と。
1966年
超軽減税率
支払が社会保険で還付される医薬品。演劇・ミュージカル・コンサート等の
公演(但し、140回目までの公演まで)。新聞・雑誌。等
2.1%
非課税
医療。郵便。放送サービス。教育。不動産取引。保険。等
新聞・雑誌及び演劇・ミュージカル・コン
サート等の公演(但し、140回目までの公
演)に対しては1.05%
非課税
2011年5月31日現在。出典:租税総合法典(Code général des impôts)http://www.legifrance.gouv.fr/
<イタリア>
離島における付加価値税の減免事例は見当たらなかった。
非課税
租税総合法典
261~263条
目的
CLAIRソウル事務所
回答:離島における付加価値税の減免の事例はありません。
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011年6月21日
【対象地域名: 韓国 】
対象物等
本来税率 軽減税率 開始年度
目的
仕組み
効果
(例:人口の増減)
その他
CLAIRシドニー事務所
【対象地域名:オーストラリア】
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011年7月5日
対象物等
ノーフォーク島、クリスマス島、ココス(キーリング)
諸島の住民は、オーストラリア本土等で購入した
物品のGST(付加価値税=消費税)10%を申請
することにより還付を受けることができる。
本来税率 軽減税率 開始年度
10%
0% 2000年
目的
オーストラリア連邦政府が
管理する特別地域のため
仕組み
効果
(例:人口の増減)
その他
オーストラリア連邦
別紙参照 政府が管理する特
別地域のため
【対象地域名:ニュージーランド】
対象物等
該当なし
本来税率 軽減税率 開始年度
目的
仕組み
効果
(例:人口の増減)
その他
別 紙
CLAIRシドニー事務所
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
平成 23 年 7 月 5 日
オーストラリアにおける離島の消費税等の免税状況について
財団法人自治体国際化協会 シドニー事務所
◇制度概要について
○オーストラリアでは、物品の購入及びサービスの提供を受ける際には、GST(Goods and
Services Tax:付加価値税=消費税)10%が賦課される。
○「ノーフォーク島」、「クリスマス島」及び「ココス(キーリング)諸島」の住民(以
下「3島住民」という。
)については、各島内で、物品及びサービスの提供を受けた際
は、GST を支払うが、3島住民が、オーストラリア本土等(この 3 島を除くオーストラ
リアの地域)で購入した物品の GST 及び WET(Wine Equalisation Tax(※))の払戻し
を請求することができる。
○この払戻しは、3島住民が3島への帰島時に適用されるが、オーストラリア本土等で
その全部または一部を消費されたサービスまたは物品には適用されない。
○GST 払戻し額は、総購入額(ワインを含む)を 11 で割る。WET 払戻し額(GST含む。
)
は、総ワイン購入額の 14.5%となる。
○たとえば、GST 込みで$660 の物品を購入したとすれば、$60 の払戻しを受ける。
○もし、その$660 が、カメラ($460)とワイン($200)の合計だとすれば、合計払戻し額は
$89 になる(GST 払戻し総額$60 およびワインの WET 払戻し額$29。)。
(※)WET について
ワイン酒造者から小売店に販売される際は、29.0%の税率が課され、小売店から
販売される際は、14.5%の税率が課される。
◇適用条件について
○オーストラリア本土等から帰島前の 30 日以内に同一店で$300 以上の買い物をした場
合、レシートを集めて、一枚の Tax Invoice(※)を発行してもらう。
○複数の店舗の場合は、各店の買い物が$300 以上でなければいけない。
○手続きをとる時に買ったものを見せることができること(別送した場合は、
「別送物品」
として別手続きとなる。
)
。
○帰島前までに消費しない。
○対象外
・オーストラリア本土等で一部または全部を消費してしまった消費財
・ビールや蒸留酒などのアルコール類およびタバコ類 *ワインは対象となる
・GST 非課税商品 GST 対象外物品については払戻し請求することはできない。
○別送物品の場合は、帰島してから、60 日以内に申請をすれば、対象となる。
○払戻しを受けるため、ショッピングをする店で Tax Invoice を受け取る必要がある。
(※)Tax Invoice と領収書の違い
明瞭に「Tax Invoice」と印刷され、販売店のビジネスナンバー、支払い GST を
含めた購入価額、購入物品名称、メーカー名称、物品購入年月日などが記載され、
これらの情報は、当該物品の売買を確認するために必要な証拠となる。
◇請求方法について
○オーストラリア本土等から、3島へ帰国する場合には、空港等の TRS(Australian
Customs Service)カウンターで手続きを行う。
○別送物品の場合は、帰島後、60 日以内に、ATO(Australia Taxation office;税務事務
所)が 3 島にはないため、郵送で申請する。
1
別 紙
CLAIRシドニー事務所
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
平成 23 年 7 月 5 日
◇返金の方法について
○小切手
○オーストラリアの銀行口座への振込み
○クレジットカード
◇参考(各島の概要)
○ノーフォーク島(Norfolk Island)
・太平洋にあるオーストラリア領の島。シドニー北東 1600kmに位置する。
・面積 34.6km²、人口 2,000 人程度、オーストラリアで最も地理的に隔離された地域の
ひとつである。
・1914 年にニューサウスウェールズ州に代わってオーストラリア連邦政府が管理する
特別地域(Territory)になり、1979 年にはノーフォーク島法により議会が設立され
た。
・議会では、防衛・通貨・安楽死以外などの法律を制定する権限がある。
・ノーフォーク島空港があり、シドニーからの直行便がある(シドニーからの飛行時
間 2 時間 50 分程度。
)
。
○クリスマス島(Christmas Island)
・インド洋にあるオーストラリア領の島である。西オーストラリア州パースの北西
2360km、インドネシア・ジャカルタの南 500km に位置する。
・面積は 143km²で、その 63 パーセントが国立公園になっており、熱帯雨林で覆われ
ている。人口は 1,500 人程度。
・第 2 次世界大戦後、イギリス植民地シンガポール管轄下にあったが、1958 年にオー
ストラリア領となった。その際、オーストラリアは、シンガポールに 290 万ドルの
補償金を支払っている。
・連邦総督によって任命された管理監が、連邦政府の特別地域担当大臣の代理となり、
クリスマス島に常駐する。
・クリスマス島は、オーストラリア交通地域省(Australian Department of Transport
and Regional Services)によって統治され、検疫・税関行政は連邦政府が直接行っ
ているが、それ以外の行政サービスは、連邦政府と西オーストラリア州政府との取
り決めに基づき、連邦政府の経費負担により、同州政府が行っている。
・クリスマス島空港 - クアラルンプール、パース、ココスとの間に定期便がある(パ
ースからの飛行時間 4 時間程度。
)。
○ココス諸島 (Cocos (Keeling) Islands)
・ウェスト島、ホーム島、サウス島、ディレクション島、ホースバーグ島、プリズン
島、ノースキーリング島など 27 のサンゴ礁からなるオーストラリア領の諸島。ココ
ス諸島 (Cocos Islands)、キーリング諸島 (Keeling Islands) ともいう。
・インド洋のオーストラリアとスリランカの中間に位置する。面積は 14km²、人口は
600 人程度。
・第 2 次世界大戦後、イギリス植民地シンガポール管轄下にあったが、1955 年、オー
ストラリア領となった。
・1992 年の特別地域(Territory)の法改正によって、オーストラリア本土と同様の責
任を持つ地方自治体が設立された。
・クリスマス島と同様に、オーストラリア連邦政府と西オーストラリア州政府との取
り決めに基づき、行政サービスは行われている。
・ウェスト島にココス島国際空港があり、クリスマス島との間に定期空路が運行され
ている(パースからの飛行時間はクリスマス島経由で 7 時間 30 分程度。乗り継ぎ時
間 45 分。
)
。
2
CLAIR北京事務所
回答:離島における付加価値税の減免の事例はありません。
諸外国の離島における付加価値税の減免事例に関する調査
2011年5月23日
【対象地域名: 中国 】
対象物等
本来税率 軽減税率 開始年度
目的
仕組み
効果
(例:人口の増減)
その他