第5話 イラクの貨幣

第5話
イラクの貨幣
新訳聖書に出てくる貨幣として価値の高い順に「タラント」
「ミナ」「デナリ」「ア
サリオン」
「コドラント」
「レプタ」です。イラクで使われている貨幣は「ディナール」
と呼ばれており、その名称からして、この貨幣の起源は、聖書の「デナリ」に近いの
ではと想像するのです。
1.フセイン札
イラクで使われている最も高い札は250ディナールで、フセイン大統領の肖像画
が用いられた下記のフセイン札です。(フセイン政権が崩壊した現在、このフセイン
札が使われているのか否か分かりません。)
このフセイン札以外に、100ディナール札と50ディナール札がありましたが、硬貨は見あ
たりませんでした。
2.貨幣価値
聖書の「デナリ」の価値は、労働者の1日分の賃金に相当するものと言われていま
す。バーレーンでも貨幣はディナールであり、1ディナール380円程度でした。
さて、イラクのディナールはと言うと、フセイン札1枚(250ディナール)で、
ガソリン50リットル買う事が出来ました。日本では現在、1リトル130円程度で
すから、ガソリンの価格から判断すると1ディナール25円程度と考える事が出来ま
す。また、フセイン札1枚でパン10枚買う事が出来ました。しかし、2リットルの
ミネラルウォーターを買うのに3枚、また、250cc の缶コーラ1本買うのに3枚必要
です。
ガソリン50リットルより水2リットルの方が3倍高いのです。
イラクに着いた日、BMVC の事務所で両替をしました。とりあえず20ドルしなさい
と言われ、20ドル両替をしました。20ドルの両替で、フセイン札が150数枚の
札束が出されました。即ち、250ディナールで17円程度なのです。ガソリン50
リットルが17円で買う事が出来る。何とうらやましいではありませんか。
3.20年ぶりの体験
イラクに行って7月も終わりに近づいた頃、髪も伸びてきて暑さもあって伸びてき
た髪がうっとうしくなりました。とうとう帰国するまで我慢できなくなり勇気を持っ
て床屋に行く事にしました。何故、勇気が必要かと言うと結婚以来、私の髪の毛は、
妻が散髪してくれていました。従って、20年近く、日本でも床屋に行った事がなか
ったからです。
ホテルの中にも床屋があり、散髪をしている査察官を見かけていましたが、私は、
町で見かけた床屋に入りました。散髪をして、肩もみ及び紅茶のサービスがあり、な
んと、料金はフセイン札6枚(約100円)でした。
4.財布は不要、食事の後はまるで賭博場
フセイン札1枚で買えるものがそうありません。物を買うとき、値段を言うので
なく、何枚と言います。財布に入る札の枚数では、ほとんど買えるものがありませ
ん。食事に行こうものなら、フセイン札が約30枚必要です。ですから、数人での
食事の後の支払いは、札束が積み上げられ、まるでその姿は賭博場のようです。財
布に入るお金では食事すら出来ません。ですからお金は、ウエストポーチとかショ
ルダーバック等で持ち歩かなければ生活できません。
食事でさえ30枚必要ですから、フセイン札で車を買おうとすると、いったい何枚
必要なのだろうと考えてしまいます・・・1万枚?それでは足りません。10万枚以
上必要です。高級車を買おうとすれば50万枚以上必要です。これでは、トラックに
札束を積んで車を買いに行かなければなりません。
イラクの貨幣は、紙クズとは言いませんが価値の低い貨幣です。何となくこの世界
で生きている自分の価値を思ってしまいます。
でも、聖書の神は言われます「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあ
なたを愛している。(イザヤ48:4)」
余談
イラクに入る前に立ち寄ったバーレーンでも貨幣はディナールであり、中東の国々の貨幣
は、ディナールなのかと思いきや、隣のイランの貨幣は、ディナールではなくレアルであり、
最も高い紙幣は1万レアルでホメイニ師の肖像画が使われた下記のホメイニ札でした。