アーケードゲームを再び売り出すための研究 - kubolab

卒業研究論文
題
目
アーケードゲームを再び売り出すための研究
久保研究室
作成者
野口 拓也
2015 年 12 月 1 日
摂南大学 経営学部 経営情報学科
提出許可印
印
要旨
本論文では,日本のゲーム業界において,市場の変化について研究を行った.その中で,
アーケードゲーム市場の動向に焦点を当てた.先行研究と各種二次資料によるデータを独
自に分類し,アーケードゲームの今後の動向について考察することを目的としている.近
年,スマートフォンが普及し,現在ゲームは,ゲーム機を持っていなくとも,携帯電話で
ゲームができるような大変身近な存在になっている.その中で,アーケードゲームの売上
が低迷している原因を明らかにする.そして,売上を伸ばすためにはどうすべきかを考察
した.
キーワード
テレビゲーム、アーケードゲーム、モバイルゲーム,.
2
Abstract
In 1972,Arcade game that the first time in the world is born.Now,game is felt something
familier to one thing if we don’t have gaming mathine. I would examine how develop
Arcade game that is rocated to Game center in the surroundings.
keywords video game,mobile game,arcade game
I
目次
1 緒言
1.1 研究背景 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
1
アーケードゲームの定義 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
2 アーケードゲームの歴史
2.1 1971∼1980 年 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2.2 1981∼1984 年 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
3
4
2.3
2.4
1985∼1987 年 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1988∼1990 年 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
5
2.5
2.6
2.7
1991∼1996 年 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1997∼2000 年 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2001∼2007 年 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
6
7
2.8
2.9
2008∼2010 年 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2011∼2014 年 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
8
9
1.2
3 研究
10
3.1 研究目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
3.2
3.3
先行研究 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
プレイ状況
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
11
4 分析
13
4.1 移植 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14
4.2 操作性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15
4.3
4.4
手軽さ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
通信機能 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
15
16
4.5
その他の要因 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
17
5 考察
5.1
5.2
18
アーケードゲームの人気を向上させるには . . . . . . . . . . . . . . . . . .
アーケードゲームのヘビーユーザーを生み出すには . . . . . . . . . . . . .
19
21
6 結言
22
謝辞
23
参考文献
24
II
図目次
1
2
アーケードゲームプレイ状況の一般生活者との比較 . . . . . . . . . . . . .
12
スマートフォンとタブレットを用いてのゲームプレイ状況の一般生活者と
の比較 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
ゲーム市場の売上高の変化 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
5
課金年齢別
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
ジャンルごとの分類
III
12
17
18
20
表目次
1
2
第 1 期におけるブームとなったゲームジャンルと主な作品
第 2 期におけるブームとなったゲームジャンルと主な作品
. . . . . . . . .
. . . . . . . . .
3
5
3
4
第 3 期におけるブームとなったゲームジャンルと主な作品
. . . . . . . . .
それぞれのゲームの要素の有無 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
13
5
アーケードゲームの人気タイトル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
20
IV
緒言
1
まず,本研究をするにあたっての背景と,ゲームの定義を示す.本研究の「ゲーム」と
は「TV ゲーム,PC ゲーム,そのシステムを用いた商業用のゲーム」のことを指す.
「アー
ケードゲーム」の定義も後に示す.
1.1
研究背景
1958 年,世界初のテレビゲームが誕生した.商用ゲーム機として,1972 年,世界で初
めてのアーケードゲームが誕生した.
日本にコンピューターゲームが登場した当初,市場はゲームセンターで遊ぶアーケード
ゲームが中心だった.やがて,アーケードゲームを家でも遊べるようにする家庭用ゲーム
機や携帯型ゲーム機が作られ,ゲーム市場を広げていった.
近年では,スマートフォンが普及し,多くの人が利用している.それに伴い,スマート
フォンで遊べるソーシャルゲームは多くの人に利用されている.また、家庭用ゲーム機の
性能も向上している.ユーザー同士のコミュニケーションの場としてオンラインゲームが
登場した.そのため,アーケードゲームの一時代前に比べれば利用は減少傾向にあるとい
われている.
アーケードゲームとは,主にアミューズメント施設などに設置されているゲーム機の総
称である.または,アーケードゲームとして提供されているゲームタイトルのことである.
アーケードゲームという表現は,主に家庭用ゲーム機との対比において用いられることが
多い.あるいは,単に業務用のゲーム機という意味で用いられることもある.一概にアー
ケードゲーム機といっても,その内容は多種多様である.主な種類だけでも,大型の画面
でプレイできるビデオゲームや,模擬的な楽器や運転手席を操作して臨場感のあるゲーム
を体験できる特殊筐体のゲームなど,さまざまなタイプがある.
本論文では,上記のような今後のアーケードゲームの市場動向について論じていく.
1.2
アーケードゲームの定義
アーケードゲームの定義は本論文においては,アミューズメント施設などに設置されて
いるゲーム機と定義する.アミューズメント施設にも様々な種類があるため,ゲームセン
ターや併合施設を中心に行う.また,クレーンゲーム等のプライズゲームやメダルを利用
する大型ゲームも含むものとする.
アーケードゲームの遊戯方法として,以下を挙げておく.
• 1 プレイするごとに料金を徴収する.
• プリペイドカードや電子マネーを使用する.
• 事前にメダルを借りて,そのメダルを使用する.
1
紙幣を投入できる機器を備えたゲーム機をアミューズメント施設に製造及び設置するこ
とは違法となっている.なので,パチンコ店でプレイする場合のパチンコ台とスロット台
は定義から外れる.
2
アーケードゲームの歴史
2
参考文献と二次資料をもとに,1971 年から現在まで,アーケードゲームのどのジャンル
のゲームがブームであったのかを年代別に表にまとめた.時代が進むにつれ,アーケード
ゲームの手法や形態も変化していき,人気のあったものも様々なので,分割して記す.ま
ず大きく第 1 期から第 3 期まで 3 分割する.そこからブームとなったジャンルや作品を明
確にするため,さらにそれを 3 分割する.
表 1: 第 1 期におけるブームとなったゲームジャンルと主な作品
年代
ブームとなったジャンル
主な作品
1971∼1980
1981∼1984
1985∼1987
2.1
テーブルゲーム,ブロック崩し, ポン,スペースインベーダー,パッ
インベーダーゲーム
クマン
レースゲーム,麻雀ゲーム,格闘
ジャンビューター,ゼビウス,空
ゲーム
手道
シューティングゲーム,体感ゲー
グラディウス,魔界村,ファンタ
ム
ジーゾーン
1971∼1980 年
世界初のコイン投入型ビデオゲーム「コンピュータスペース」が 1971 年にナッチングア
ソシエイツ社から発売された.だが,ビジネス的には成功せず,その仕掛け人であるノー
ラン・ブッシュネルは、翌年にテーブルテニスゲーム「ポン」を開発.自ら興したアタリ
社から発売して今度は1万台という大ヒットを記録し,ここからビデオゲームの歴史がス
タートした.日本初登場のビデオゲームも「ポン」であり、これが呼び水となって国内ゲー
ム機メーカーが開発に乗り出した.
この頃はまだ「ゲームセンター」というものは存在していない.デパートの屋上や遊園
地,ボーリング場,ホテルなどのゲーム場に設置されているだけであった.
1976 年,アタリ社から「ブレイクアウト」が発売され ”ブロック崩しブーム ”を巻き起
こす.このブームによってテーブル型筐体が喫茶店(ゲーム喫茶)にも普及し始め,ゲー
ムがより身近な存在になってゆく.この頃からコピー基板が問題になり始め、違法コピー
業者との戦いが始まる.
1978 年にはタイトーから「スペースインベーダー」が発売し,社会全体に「インベー
ダーブーム」を巻き起こした.このブームで「インベーダーハウス」という施設が乱立し,
これが後の「ゲームセンター」の原型にあたる.
このインベーダーブームは半年ほど続いた.だが,ゲーム代欲しさの未成年者による恐
喝,盗難事件の増加などが問題視された.マスコミのバッシングにより,ゲームセンター
は「不良の溜まり場,不健全な場所」というレッテルを貼られ,ブームは急速に衰退.ゲー
ム業者の倒産ラッシュが起こり,これが「インベーダーショック」と呼ばれた.
3
2.2
1981∼1984 年
インベーダーショック以降,ナムコの「ギャラクシアン」や「パックマン」のヒットに
より,少しづつ明るい兆しが見えてくる.
「パックマン」はアメリカで日本以上にヒットし,
キャラクターグッズの販売やアニメ化,レコード化されるほどの大ブームを巻き起こした.
さらにナムコは「パックマン」以降もヒット作を連発し,人気メーカーとして揺るぎない
地位を確立していった.ナムコ作品のキャラクターはデザイン性にも秀でており,この頃
から「ゲームキャラクター」の存在を確立することになった.
81 年後半から駄菓子屋や玩具店,文具店などの軒先にオレンジ筐体が普及し始めた.
82 年には 3D 視点レースゲームの草分け「ポールポジション」が大ヒット.83 年には
「ゼビウス」がブームを巻き起こし,設定資料やゲーム小説,ゲームミュージックの販売と
いったビジネスモデルを確立した.
81∼84 年は後にパイオニアとなる作品が多数生まれた時期である.縦 STG の原点「ゼ
ビウス」
「スターフォース」や麻雀ゲームの元祖「ジャンピューター」,スポーツゲーの基
礎を築いた「ハイパーオリンピック」,格闘ゲームの元祖「空手道」といった多くのジャ
ンルが誕生した.日本を代表するゲームキャラクターである「マリオ」と「ドンキーコン
グ」が生まれたのもこの頃だ.パックマンやマリオ,ファミコンなどの成功で,日本のTV
ゲームが世界のゲーム市場をリードしていく事になる.この勢いは 2000 年頃まで続いた.
84 年頃からボスキャラや隠れキャラの存在が定着し始めた.隠れキャラとは,必要な場
面で特殊なコマンドを入力することで登場したキャラクターのことである.人気の衰えた
ゲームでも人気が再燃し商品寿命を長くする役に立った.
2.3
1985∼1987 年
80 年代中期は豊穣の年代.ゲーム基板の飛躍的な進化と新しいアイデアをつぎ込んだ
ゲームソフトとの相乗効果によって,多くの名作が誕生することになった.この頃は失速
気味だったナムコに代わって他社製品が台頭してきた時期でもある.コナミの「グラディ
ウス」やカプコンの「魔界村」,テクモの「アルゴスの戦士」といった,これまでのナム
コ作品とは違うリアル調のゲームが人気を集めていた.中でも一番人気があったジャンル
はシューティングゲームである.買い物システムが特徴の「ファンタジーゾーン」,3 画面
を採用した「ダライアス」,縦ボンバーの原点「究極タイガー」などが生み出された.85
年 7 月にはセガから初の体感ゲームである「ハングオン」が発売.以降も「スペースハリ
アー」「アウトラン」「アフターバーナー II」といった大ヒット作を連発させ,体感ゲーム
ブームを巻き起こした.
85 年 2 月から「新風営法」の施行によって 24 時間営業のゲームセンターが無くなり,未
成年の立ち入りにも時間制限が設けられた.それでもゲームセンターを利用する客層は変
わらず,子供の利用する機会は増加しなかった.
85 年辺りからゲーム内容の複雑化に伴い,コンティニューできるゲームが増えてきた.
そのため,ラスボスや各面の個性付け,エンディングといった要素が定着し始めたのもこ
の頃だ.
4
年代
表 2: 第 2 期におけるブームとなったゲームジャンルと主な作品
ブームとなったジャンル
主な作品
1988∼1990
1991∼1996
落ちものゲーム,UFO キャッチ
テトリス,ファイナルファイト,雷
ャー,RPG ゲーム
電
プリクラ,2D 格闘ゲーム
ストリートファイター II,バーチャ
ファイター,鉄拳
1997∼2000
2.4
音楽ゲーム,3D 格闘ゲーム,シ
鉄拳 3,電車で GO,怒首領蜂,
ューティングゲーム (弾幕ゲーム)
beatmania
1988∼1990 年
89 年,横スクロールアクションやシューティングはゲーマーの中でやり尽くされたもの
になっていた.そのため,ヒット作を生み出すのも難しくなっていった.マニアを意識し
た高難易度ゲームの増加もユーザー離れを引き起こすことになった.そこへ,ドラゴンク
エスト III による RPG ブームや次世代ゲーム機の発売も重なり,ゲームセンターからは
徐々に客足が遠のいてしまう.
そんな中,まったく新しいゲーム性を持った「テトリス」が発売され、落ちモノゲーム
ブームを巻き起こした.セガの「UFO キャッチャー」も出回り始め,女性客や一般客層を
呼び込むことになった.さらに PC エンジンやスーパーファミコンが発売され,家庭用ゲー
ム機の性能も上がっていった.しかしまだアーケードゲームの性能のほうが優っていた.移
植作品もマニアを満足させるほどのものでは無かった.
87 年末にナムコから発売された「ファイナルラップ」以降,レースゲームは対戦形式が
主流になった.ナムコはこの頃から 3D 技術の開発にも着手し,89 年には日本初の 3D ポリ
ゴン技術を採用した「ウイニングラン」が発売された.90 年 4 月には SNK の「NEOGEO」
がゲーセンに普及し始めるが,バランスの悪い高難易度ゲームばかりで,人気は無かった.
またこの頃,中古ゲーム店やカラオケ店などが普及し始めた.
2.5
1991∼1996 年
90 年から 91 年にかけてはヒット作不足でゲームセンターは厳しい経営状況が続いてい
た.だが,カプコンから発売された「ストリートファイター II」がその流れを変えた.
当初は CPU 対戦しか行われていなかったが,半年ほど経つとプレイヤーが他人と対戦す
る面白さに気づいた.
「対戦台」を設置する店も徐々に増え始め,翌年の「ストリートファ
イター II ダッシュ」で本格的な対戦格闘ブームが訪れることになった.このブームによっ
て一般客層が急激に増え,店の雰囲気も変わってくることとなった.ピークの頃は秋葉原
がゲームセンターだらけになり,テレビで話題になったこともあった.
一般客層を取り込む流れは他のゲームにも現れており,この頃からパンチングマシンや
腕相撲,早押しゲームなどのスポーツ系作品が増加した.ビデオゲームはあらゆるジャン
5
ルで 2∼4 人同時プレイできることが当たり前になった.このころから,1 人で長時間プレ
イするマニアよりも,複数人で盛り上がる一般客を大切にする方向へシフトして行くこと
となる.また「ストリートファイター II」のヒット以降,筐体を複数台設置するのが当た
り前になった.そのためテーブル筐体が徐々に姿を消していった.
94 年にはセガの「バーチャファイター II」が発売され 3D 格闘ブームを巻き起こす.こ
のブームは「ストリートファイター II」に匹敵する勢いがあり,大会の様子がテレビで報
道されたこともあった..これに続きナムコからは「鉄拳」が発売.2D のカプコン,SNK
と 3D のセガ、ナムコが中心となって業界を盛り上げていた.
格闘ゲーム以外では「ぷよぷよ」をはじめとする落ちモノゲーや気軽に遊べるファイナ
ルファイト系アクションが人気だった.ハズレの少ない縦ボンバー系シューティングゲー
ムや,セガとナムコの 3D レースゲームなどが人気を集めていた.96 年頃からプリクラや
UFO キャッチャーも加わり,ゲームセンターは多くの若者で賑わう一大アミューズメント
施設へと変貌を遂げていった.これにより一般客層が増加.プリクラと音ゲーブームによっ
て,女性客が増加.マニアの溜まり場的な雰囲気は完全に消える.
2.6
1997∼2000 年
2D 格闘ゲーム,落ちものゲームというジャンルそのものに新鮮味が無くなった.そんな
中,タイトーが「電車で GO!」を発売し大ヒット.97 年後半にはコナミが初の音楽ゲーム
「ビートマニア」を発売.その後も「ポップンミュージック」や「ダンスレボリューション」
「ドラムマニア」といったヒット作を生み出し,音楽ゲームブームを巻き起こした.シュー
ティングではケイブの「怒首領蜂」がヒットし,弾幕ゲームという新ジャンルを構築した.
この頃家庭用ゲーム機では,
「ドリームキャスト」と「プレイステーション 2」が発売.家
庭用機とアーケードの性能差がほとんど無くなり,新作でも完全移植できるようになって
しまう.このころからゲームメーカーは家庭用機でも真似できない新しいサービスを模索
しなければならなかった.
年代
表 3: 第 3 期におけるブームとなったゲームジャンルと主な作品
ブームとなったジャンル
主な作品
2001∼2007
ネットワーク型カードゲーム,3D
太鼓の達人,湾岸ミッドナイト,麻
レースゲーム,音楽ゲーム,麻雀
雀格闘倶楽部
ゲーム
2008∼2010
オンラインアクションゲーム
beatmaniaIIDX,ボーダーブレイ
ク,鉄拳 6
2011∼2014
音楽ゲーム,オンラインアクショ
初音ミク Project Diva,ガンスリ
ンゲーム
ンガーストラトス,スティールク
ロニクル
6
2.7
2001∼2007 年
01 年 2 月にナムコ製の音楽ゲーム「太鼓の達人」が発売.その後もシリーズ化され,定
番ジャンルとして定着することになる.3 月には「機動戦士ガンダム連邦 VS ジオン」が予
想外の大ヒットを記録.これもシリーズ化され,定番ジャンルとなった.4 月には格ゲー
ブームの一角を担っていた SNK が倒産。この時期を境に MVS 筐体も姿を消していった.
01 年 8 月には「バーチャファイター」と「鉄拳」が史上初めての同時発売ということで
注目を集めるが,残念ながら「鉄拳 4」は大コケしてしまう.
「バーチャファイター 4」は格
闘ゲームでは初となるカードシステムとネットワークサービスを導入.これにより,プレ
イヤー名,戦績,段位,アイテムの管理が可能になっていた.
11 月にはナムコの「湾岸ミッドナイト」が発売.翌年の 3 月にはカードによる戦績管理
や通信対戦システムを備えた「頭文字 D」も加わり,バトル系レースブームが本格化する.
同じく 02 年 3 月にはネットワークで全国のプレイヤーと対戦できる「麻雀格闘倶楽部」
が登場.対戦型麻雀ゲームはこれまでゲームセンターと縁のなかった中高年層も呼び込む
ことになった.さらに 6 月には初のトレーディングカードシステムを備えた「ワールド ク
ラブ チャンピオン フットボール」も発売された.この年からカードとネットワーク対戦
システムによる新たな時代へと本格突入することになった.
ゲームは年々複雑化して行き,この頃になると児童でも気軽に遊べるゲームは無くなっ
ていたが,そこに目を付けたセガが 03 年 3 月に「甲虫王者ムシキング」を発売.児童向け
カードゲームという新ジャンルを築くと共に,子連れ客の増加にも成功する.
03 年 7 月にはトレーディングカードゲームに RPG 要素を取り入れた「アヴァロンの鍵」
が登場.その後も同ジャンルの「Quest of D」やネットワーク対戦型クイズゲームの「マ
ジックアカデミー」,シュミレーション要素を加えた「三国志大戦」などのヒット作が続々
と登場.ネットワーク型カードゲームによる一時代を築くことになった.このカードゲー
ムによってゲームセンターは,家庭用ゲーム機でも真似できない新たな付加価値を生むこ
とに成功する。
この頃になると少子化などが原因で屋上遊園地はほぼ全滅.あったとしてもプライズ物
か児童向けゲームしか置いていない.
カードやレースなどの大型筺体に比べ,いまいち盛り上がりに欠けるビデオゲームだっ
たが,04 年には「鉄拳 5」が大ブレイク.シューティングでも「虫姫さま」がヒットし,弾
幕シューティングゲームが再燃する.翌年には格闘ゲームから「メルティブラッド」や「ガ
ンダム SEED 連合 vsZAFT」などのヒット作が生まれ,ビデオゲームは再び盛り上がりを
見せ始めた.
一時代を築いたネットワーク型カードゲームだが,その一方で「導入に 1000 万はかか
る」「設置スペースの確保が難しい」といった問題点も存在した.他のジャンルでも音楽
ゲームやレースゲーム,アップライト筺体との抱き合わせ商法といった大型化,高額化の
傾向が目立った.設置スペースや資金力の無い小規模店舗を苦しめることになる.こうし
た傾向から,この時期を境に大型店と小型店の明暗が分かれ始め,立地条件の良い大型店
やチェーン店以外は生き残るのが難しい時代へと移り変わっていった.
この頃になると ADSL や動画サイトの普及によって動画が手軽に見れるようになり,ゲー
7
ムの攻略にも影響が出てくる.わざわざ遠征しなくても自宅で有名プレイヤーのプレイを
見れる時代となった.攻略 Wiki 等の攻略サイトも普及し,ゲーム雑誌や攻略本の在り方
が問われてくる.
日本の不況が深刻化していく中,趣味に対して金銭を惜しまないオタクが注目を集め ”
萌え ”を取り入れた商法も増えてきた.美少女だらけの格闘ゲームやシューティングゲー
ムが増加する.
2.8
2008∼2010 年
ネットワーク型カードゲームによるブームも一段落した感があり,新しいブームを模索
しなければならない時期に差しかかった.
続編の積み重ねによる高難易度化やマンネリ化も問題になってくる.格闘ゲームは増え
すぎたキャラクター,システムの複雑化,暗記と練習が必要なコンボありきの内容に変化.
人気タイトルの「鉄拳 6」や「バーチャファイター 5」以降は 3D ゲームのグラフィックも
頭打ちで,集客に結びつかなくなってしまう.これが原因で,初心者や子供が気軽に遊べ
るものではなくなっていた.音楽ゲームや弾幕シューティングゲームなども同様で,腕の
肥えたマニアに対抗するためにどんどん難しくなっていく.初プレイ時にカードデッキ代
(500 円)を取られるカードゲームも敷居が高く,この頃から「ゲーセンに行っても遊べる
ゲームが無い」と言う人が増えてくる.さらに,プレイステーション 3 や Xbox360 の発売
によってネット環境も充実し,家で他人と対戦できる時代に.タイムラグのない環境や店
の雰囲気,大型筐体だけがゲームセンターの利点となってしまう.
ハイビジョン TV の普及に伴い,ゲームセンターでも 07 年から薄型液晶モニター搭載
のアップライト筺体が普及し始める.旧来のブラウン管型は消えていった.
08 年にこれまでの音楽ゲームとは異なる操作系の「jubeat」がヒット.後の音楽ゲーム
にも影響を与える.PC で流行っていたオンライン型アクションの要素を取り込む動きも
あり,
「ボーダーブレイク」や「サイバーダイバー」といった作品が発売された.
2010 年 11 月にコナミが従量課金システムの「e-AMUSEMENT Participation」を導入.
これが後にアーケードゲームの在り方に影響を与える.
8
2.9
2011∼2014 年
巨大なブームを起こすような作品がない厳しい状況が続いていた.この頃になるとプラ
イズ物やメダルゲームが一番の収入源になっている店が増え,地方ではビデオゲームを置
かない所も出てくるようになる.また,メダルゲームにハマる老人客が増加し,ニュースで
も報道された.老人向けのサービスを開始する店も出てくる.アーケードだけでなく,日
本のゲーム業界全体が落ち目の時代.手軽さと中毒性を追求したソーシャルゲームだけが
人気だった.そのため、スマートフォンを意識した作品が増加.最初の数分が無料の「ぷ
よぷよクエスト」やスマフォから逆移植の「グルーヴコースター」が発売された.
2010 年に「初音ミク Project Diva」がヒットし,この頃から音楽ゲームに新しい流れが
生まれ始める.同年 10 月には音楽ゲーム初のタッチパネルを採用した「REFLEC BEAT」
が登場.その後も各社から「SOUND VOLTEX」
「maimai」
「ダンスエボリューション AC」
「ミライダガッキ」「グルーヴコースター」といった独創的な音ゲーが発売された.これに
より第 2 次音楽ゲームブームを巻き起こす。
オンライン型アクションゲームも活発で「ドラゴンボール Z 全開バトルロイヤル」「ス
ティールクロニクル」「ガンスリンガーストラスト」といった作品が注目を集めていた.
9
研究
3
3.1
研究目的
ソーシャルゲームの人気向上により,ソーシャルゲーム市場は近年拡大している.ソー
シャルゲームとは,
「SNS(ソーシャルネットワーキングサービス) 上で提供され,SNS の
ユーザーがゲームを介してコミュニケーションがとれるオンラインゲーム」と定義される.
それに伴い,家庭用ゲーム機,アーケードゲームの売り上げが停滞している.本論文では、
人気の停滞しているアーケードゲームに焦点を当てる.今後,ゲーム市場がどう変化し,
アーケードゲームが再び売れるにはどうすべきかを予測する.
3.2
先行研究
1958 年から 50 年間のゲーム市場の動向を整理し,今後のゲーム産業の動向について考
察した研究がある.その研究では,アーケードゲームの売上減少の問題点として以下のこ
とを挙げている.
• 携帯電話やカラオケ等の他の娯楽の台頭
• 家庭用ゲーム機の性能向上
• 少子化による利用人口の減少
• パチンコやスロットに比較した場合のプライズゲームの還元率の低さ
• カラオケやビリヤードに比較した場合の時間当たりの遊戯料金の高さ
この問題を解決するために,アーケードゲームは大型化,特殊化することで家庭用ゲー
ム機との差別化を図っている.それにより,客を取り戻そうとしている.コナミの「ダン
スダンスレボリューション」,ナムコの「太鼓の達人」,セガの「昆虫王者ムシキング」な
どが 2000 年代の代表的なヒット作として挙げられる.
ゲームセンターも大型化や複合化が進んでいる.ゲームマシン設置台数が 50 台以下の
小型店舗は 1999 年から 2004 年までの間で半数まで減少した.だが,設置台数の多い大型
店舗数は増加している.また,アミューズメント施設と名前を変えた大型ゲームセンター
は飲食施設や大型アトラクションなどを併設し,集客力を増やしている.
このような問題のある中で,アーケードゲームの現在の形態は一つの形に定着しつつあ
る.それは,オンラインサービスの普及による顧客管理型の営業形態である.
以前までは,ゲームメーカーがゲームセンターなどのアミューズメント施設にゲーム筐
体やゲームソフトを販売して終わりだった.しかし,現在はスマートフォンなどの電子端末
や電子マネー,それぞれのメーカーが販売している共通パスカードを使用して,メーカー
がプレイヤーのプレイ履歴を管理するのである.これにより,アイテム等のコレクション
要素が追加.さらに,履歴や戦績の反映されるランキングなどのやりこみ要素も出てきた.
このことが,ヘビーユーザーを生み出し,ライトユーザーが参入しにくい環境を生み出し
ている.
10
3.3
プレイ状況
アーケードゲーム,スマートフォンとタブレットを用いてのゲームのプレイ状況を図 1,
2 に示す.
図 1 は 2014 年に東京ゲームショウに訪れた人々,ゲームプレイヤーと一般生活者,一般
生活者とのアーケードゲームの継続プレイ状況の比較である.
この図を見ると、ゲームプレイヤーの中で「以前はよくしていたが今はほとんどしない」
と答えた者が約 4 割を占めている.一般生活者の中では、
「1∼2 度試したことがある程度」
と答えた者が約 4 割を占めている.このデータから,ゲームプレイヤーが近年アーケード
ゲーム離れを引き起こす原因が存在すると考えられる.また,一般生活者がアーケードゲー
ムを継続してプレイしない,もしくはできない原因も存在すると考えられる.
図 2 は同様にスマートフォンとタブレットを用いてのゲームプレイ状況の図である.ス
マートフォンとタブレットを用いてのゲームとは,ソーシャルゲームのことを指す.この
図を見ると,ソーシャルゲームをプレイする人々も,ゲームプレイヤー,つまり,ゲーム
への関心が大きい人が多い.携帯電話を多くの人が持っている現代であるが,誰しもがス
マートフォンでゲームをするわけではないことがわかる.
11
図 1: アーケードゲームプレイ状況の一般生活者との比較
東京ゲームショウ2014・全体
2013年一般生活者・ゲームプレイヤー
2013年一般生活者・全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90% 100%
現在も継続的にしている
以前はよくしていたがいまはほとんどしない
1~2度試したことがある程度
今まで1度もしたことがない
図 2: スマートフォンとタブレットを用いてのゲームプレイ状況の一般生活者との比較
東京ゲームショウ2014・全体
2013年一般生活者・ゲームプレイヤー
2013年一般生活者・全体
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
現在も継続的にしている
以前はよくしていたがいまはほとんどしない
1~2度試したことがある程度
今まで1度もしたことがない
12
4
分析
先行研究やこれまでに作成したデータを参考にすると,ソーシャルゲームがゲーム市場
に大きな影響を与えているのは明らかである.本稿ではこれまでに記載したものをもとに,
他のゲームとの比較を交えて分析を行っていく.コンピュータゲーム市場に新たなジャン
ルのゲームが参入しない限り,コンピュータゲーム業界全体の市場規模は拡大しないもの
とする.また,少子化が回復しない限り,プレイヤーの絶対数は減少し続けるものとする.
まず,ゲームを遊戯するにおいての共通する 4 つの要因の有無を表にまとめ,後に補足し
ていく.
表 4: それぞれのゲームの要素の有無
ゲームの種類
移植
操作性 手軽さ
通信機能
アーケードゲーム
○
○
×
○
家庭用ゲーム
○
○
△
○
ソーシャルゲーム
○
×
○
△
PC オンラインゲーム
○
△
△
○
13
4.1
移植
移植とは,特定のプラットフォームで利用するために開発したソフトウェアを,他のプ
ラットフォームで動くように変更することである.他のゲームハードへの移植タイトルが
存在するものには○.他のゲームハードへの移植タイトルが存在しないものには×とした.
かつては高性能のハードウェアを活かしたアーケードゲームがビデオゲーム産業を引っ
張っていた.しかし今では家庭用ゲーム機やパソコンの性能が格段に上がり,アーケード
ゲームは優位性をかなり失っている.
アーケードゲームに視点を置くと,ゲームメーカーは,まずアーケードゲームを販売し
てから,後にその他のコンテンツに展開することが多い.アーケードゲームと他のゲーム
で,二重,三重の利益を出すことを目的としている.そのため,アーケードゲームでは,
ゲーム難易度を比較的高めに設定している.であれば,同じタイトルの家庭用ゲームを購
入する目的も存在する.それは大きく分けて三つだ.
• アーケード版の完全移植であるかどうか
• 練習するための要素
• 家庭用オリジナル要素やおまけ
まず,アーケードゲームの完全移植であるかどうか.アーケードゲームの家庭版移植家
庭用に移植されたゲームを買うのは,アーケードでやっていた人やアーケードでやりたく
ても出来なかった人たちが多いと思われる.アーケードでもやっていた人は、家庭用をアー
ケードの練習用として購入する場合が多いと予想される.であれば,アーケード版で培っ
た技術をそのまま使えたり,逆に家庭用で磨き上げた能力をアーケード版で発揮出来なけ
れば意味が無い.そしてアーケードでやりたくても出来なかった人たちには,やはり完全
な移植ではないとアーケードの代替とはなり得ない.どちらの人たちもアーケードゲーム
をそのままの感覚で遊べるゲームを求めている.
次に,練習するための要素.例えば対戦ゲームなら,自分が技をうまく出せるまでの練
習や,苦手なキャラクターを使ってみるなどの実験をする.シューティングゲームの場合
は何度も繰り返してうまくプレイできるように練習する.なので練習するためのシステム
が用意されていることで,プレイヤーにとって親切なゲームになる.
最後に,家庭用オリジナル要素やおまけ.アーケードゲームの避けられない問題として
存在するのが「ボリュームの無さ」である.家庭用ゲームと違って,アーケードゲームは
数十分で終わるように作られている.その代わりに,時間単位の密度を高めている.なの
で,家庭用にアーケードをそのまま受け継ぐだけでは足りないといえる.
14
4.2
操作性
ここでの操作性とは,操作するボタンの量,コマンド入力の連続性で評価した.操作す
るボタンが 6 つ以上で,コマンドの入力に連続性が多いものを○.操作するボタンが 2 つ
以下で,連続性の少ないものには×.操作するボタンの量がその間にある,もしくはどち
らかの要素が欠けているものには△とした.
ソーシャルゲームとそれ以外のゲームとの間には,大きな違いがある.それは,ゲーム
を遊戯する上での操作性の大小だ.ソーシャルゲームは,スマートフォンやタブレットな
どの携帯端末を使用して遊戯する.そのため,突き詰めれば,ソーシャルゲームで必要と
される操作は,触ることのみである.それに対し,家庭用ゲームやアーケードゲームは,
操作するボタンの量や,タッチパネルの量,入力するコマンドの量が段違いだ.また,入
力するコマンドの連続性なども求められてくる.リズムアクションゲームや格闘対戦ゲー
ムがその例だ.
4.3
手軽さ
ここでの手軽さとは,遊戯をする際の環境,手段,料金を総じて評価した.場所を選ば
ず,いつでも遊戯が無料でできるようなものを○.特定の場所で,定められた時間で,料
金が発生するものを×.すべての要因には当てはまらないというものを△とした.
ここでの料金であるが,アーケードゲームに関しては,
「約 5 分あたりで 100 円を徴収で
きるもの」としている.家庭用ゲーム機では,遊戯したいソフトがあったとしても,その
ソフトを読み込むためのハードが必要だ.ソーシャルゲームは,基本無料でいつでも遊戯
ができるが,課金するプレイヤーも存在する.もちろん,課金経験の無いプレイヤーも多
く存在するし,課金をしたとしても,個人で課金額に差がある.PC オンラインゲームは,
完全無料の物から完全課金制の物まで様々だ.このように,それぞれのゲームで売り上げ
の回収の方法が異なる.
その上で,家庭用ゲームハードは,約 3 年ごとに新しいものが登場している.そのハー
ドに対応するソフトも多く販売されるが,そのハードでしか遊戯できない.つまり,遊戯
したいタイトルのソフトが存在しても,そのためにハードまで購入しなければいけない.
対して,ソーシャルゲームは,アップデートを繰り返せば 1 つのハードで多くのゲーム
が遊戯できる.ここでのハードとは,スマートフォンやタブレットにあたる.ここでも料
金の差が生じるのだ.
ここで特殊なのが,アーケードゲームである.アーケードゲームは,ハードとソフトが
セットでゲームセンターなどに販売されている.その分,ほかのゲームでは楽しめないよ
うな体感性やグラフィック技術がある.他のハードの性能が向上している中で,アーケー
ドゲームはそのような点で抜き出ていると言える.また,アーケードゲームは主にゲーム
センターで遊戯できる.そこで出てくる問題が,風営法である.未成年の立ち入りが制限
され,今でもゲームセンターは市民に悪いイメージを持たれている.このような点からも,
アーケードゲームの売り上げが下がる理由になると言える.
15
4.4
通信機能
ここでの通信機能とは,主にオンライン機能を指す.リアルタイムで離れた場所にいる
人と協力プレイやオンライン対戦ができるものには○.オンライン機能が搭載されていな
いものには×.機能は搭載されているが,ラグが多く発生したり制限があるものには△と
した.
今日ではインターネット環境が整い,PC や家庭用ゲーム機にオンライン機能を搭載し
たものがほとんどだ.さらに家庭用ゲーム機では,ボイスチャット機能を搭載したものが
増加している.PC においても,チャット機能を利用したり,skype 等の通話コンテンツを
利用しつつゲームをする人も飢えている.離れた場所からでも意思疎通をしながらゲーム
ができる.昔のように,誰かの家やゲームセンターに集まって遊戯する必要性が薄れてき
たのだ.さらに,ゲームソフトを購入した後でも,オンライン上で追加コンテンツを配信
するゲームも多い.例えば,ストーリーが完結してクリアとなる RPG でも,新しい敵や武
器やキャラクターを登場させる.そうすることで,ゲームソフト単位の寿命を延ばし,課
金によって更なる売り上げを生んでいる.
対して,ソーシャルゲームには,まだその機能が備わっていない.だが,Bluetooth や
位置情報を用いて,その場にいる人たちとの対戦や協力プレイが可能なアプリは存在する.
Bluetooth とは,デジタル機器用の近距離無線通信規格の 1 つである.数 m から数十 m
程度の距離の情報機器間で,電波を使い簡易な情報のやりとりを行うのに使用される.ス
マートフォンでは iPhone や AndroidOS を搭載しているタイプでは標準機能として採用さ
れている.
家庭用ゲーム機では,任天堂の Wii に使用する Wii リモコンやバランス Wii ボード.
SONY の PlayStation3 のコントローラーにも搭載されている.
アーケードゲームの通信機能は,速度,精度共に他のハードよりも向上している.格闘
ゲームやガンシューティングゲームにもオンライン機能が搭載され,遊戯の幅が広がって
いる.また,アーケードゲームはスマートフォンなどの電子端末や電子マネー,それぞれの
メーカーが販売している共通パスカードを使用して,メーカーがプレイヤーのプレイ履歴
を管理する機能が存在する.プレイ数に応じて,そのゲーム内に反映されるキャラクター
コスチュームやアイテムや称号などが与えられる.
ゲームセンターに設置されているアーケードゲームには,付属品として専用のモニター
が設置されていることがほとんどだ.また,履歴に応じてランキングが発表される.全国
的なランキングからその店舗内まで様々なランキングが存在している.そのランキングが
リアルタイムで反映され,モニターで閲覧することができる.つまり,良い戦績を残して
いる者や,カスタマイズしたキャラクター,上級者の対戦動画を誰でもいち早く閲覧する
ことができるようになっている.
16
4.5
その他の要因
図 3 は,アーケードゲームとそのオペレーション売上高,家庭用ゲーム,オンラインプ
ラットフォームの売上高の変化である.オペレーション売上高とは,ゲームセンターを運
営する際の売上高をまとめたものである.また,ここでのオンラインプラットフォームは,
主にソーシャルゲームを遊戯する際に必要なソーシャルプラットフォームのことを指す.
図 3: ゲーム市場の売上高の変化
ゲーム市場の規模は小さくなっているが,ソーシャルゲームの売り上げが伸びているこ
とが分かる.少子化などでプレイヤーの人口が減少する中,携帯端末の所持率が上昇して
きた.遊戯する際の手軽さと,それを可能にした現代社会の環境が原因だと考えられる.
また,図 4 はソーシャルゲームや PC オンラインゲームの年齢層ごとのゲームプレイヤー
の課金率である.これによると,最も多く課金をしているのは,30 歳から 39 歳であるこ
とがわかる.支持しているプレイヤーはどの年齢にも多く存在しているが,売上が伸びて
いるのは子供ではなく大人の存在が大きいということがわかる.
17
図 4: 課金年齢別
出典:JOGA オンラインゲーム市場調査レポート
5
考察
ゲームは,たった 50 年の間に様々な形態と業界とのかかわりを持つようになり,たと
え,ゲーム機を持っていなくてもゲームをプレイすることできる.何より誰もが持ってい
る携帯電話でもゲームをすることができるようになったことで,ゲームはより身近なもの
になったと考えられる.
ゲームの人気を向上させるためには,新規のゲームユーザーを多く参入させることは重
要である.だが,ゲームの売上を向上させるためには,ヘビーユーザーを生み出すことと,
逃がさないことも重要であることが分かった.なので,人気を向上させる方法と,ヘビー
ユーザーを生み出す方法とに分けて考察する.
18
5.1
アーケードゲームの人気を向上させるには
ここでの人気向上とは,アーケードゲームのプレイヤーを増加させ,稼働率を上げるこ
とだ.つまり,新規顧客の獲得である.
アーケードゲームは家庭用ゲームやソーシャルゲームの延長,悪いコストパフォーマン
スというマイナスな意識を抱かれている.インターネット環境が普及した他のゲームが原
因で,
「わざわざゲームセンターに足を運ばなくてもいい」という考えになっている.それ
により,ソーシャルゲームの売り上げが飛躍的に向上している.基本料金が無料で遊べる
というものが多いため,10 代の利用率は高い.追加コンテンツを利用するために料金を支
払うことで,さらに楽しむ要素が増える.そのこともあって,全年齢のユーザーの人気が
集まっているのだ.さらに,ゲームセンターに人が集まる時間,どうしても上級者の姿が
目立ってしまう.これにより,アーケードゲーム自体が敷居の高いものになっている.ま
た,ゲームセンターそのものに悪いイメージを持つ人も多くいることも,原因の 1 つであ
ろう.
スマートフォンでプレイできるソーシャルゲームなどから逆移植した筐体を設置するこ
とも最近は増えてきた.それでもまだ「スマートフォンでいい」という意識が完全には消
えていないのである.ならば更に差別化を図り「スマートフォンでプレイするより楽しい」
と思わせることが重要だ.では,どのようなアーケードゲームが人気なのか.
月刊アミューズメント産業の情報をもとに,表を作成した.2014 年 8 月から 1 年間,人
気が上位 10 位以内に 3 回以上入ったことのあるアーケードゲームタイトルを示す.タイト
ルごとにジャンル,操作性,通信機能を明記する.尚,サブタイトルやバージョンは省略
する.また,クレーンゲームおよび景品を利用したプライズゲーム,メダルゲーム,プリ
ントシール機は含まないものとする.
さらに,アーケードゲームをジャンルごとに分け,それぞれがどの位置にあるのかを,操
作性と通信機能の面から分類した.尚,ここでの操作性と通信機能の判断基準も,前章と
同様の基準で評価している.
図を見ると,
「太鼓の達人」と「アイカツ!」は,左下に位置している.この 2 つのタイ
トルに共通していることは,対象年齢を低くしていることだ.もちろん,
「太鼓の達人」は
リズムアクションゲームなので,難易度が高くなるほど操作性は高くなる.だが,もとも
との筐体が太鼓を模した子供が興味を持ちやすいものにしており,低難易度の楽曲も多く
存在している.
それ以外のタイトルは,操作性の高いものがほとんどだ.同ジャンルのゲームが複数の
メーカーから出されており,ゲームシステムも同等というのがわかる.通信機能でも,リ
アルタイム通信が可能なものがほとんどで,ランキングの繁栄やイベントの開催も多い.
アップデートも定期的に行われ,システムの修正や新要素の追加等も多く行われている.
多くのジャンルからアーケードゲームが販売されているが,難易度の高いものが人気が
高いという状況だ.そしてメーカー側も,既存ゲーマーを逃がさないように新しい要素を
逐一追加していく.どれだけそのゲームをやりたいと思っても,ゲームの難易度が高い上
に上級者ばかりという環境なのだ.
だが,表 5 に記載したゲームと同ジャンルで,難易度が比較的低いゲームも多く設置さ
19
表 5: アーケードゲームの人気タイトル
ゲームのタイトル
ゲームのジャンル
操作性
通信機能
機動戦士ガンダム 戦場の絆
戦術チーム対戦
○
○
ワールドクラブチャンピオンフットボール
スポーツ
○
○
ウイニングイレブン AC チャンピオンシップ
スポーツ
○
○
戦国大戦
リアルタイムカード対戦
○
○
LORD of VERMILION
カードアクション対戦
○
○
データカードダス アイカツ!
トレーディングカード
×
×
ボーダーブレイク スクランブル
シューティング
○
○
ガンスリンガーストラトス
シューティング
○
○
麻雀格闘倶楽部
対戦型麻雀
×
○
セガネットワーク対戦麻雀 MJ5
対戦型麻雀
×
○
ワンダーランド ウォーズ
シュミレーション対戦
○
○
クイズマジックアカデミー
クイズ
×
○
maimai
リズムアクション
○
△
初音ミク Project DIVA Arcade
リズムアクション
○
△
SOUND VOLTEX
リズムアクション
○
△
太鼓の達人
リズムアクション
○
×
湾岸ミッドナイト
レーシング
△
△
機動戦士ガンダム EXTREME VS.
バトルアクション
○
△
図 5: ジャンルごとの分類
操作性(高)
E
X
V
S
D
I
V
A
湾
岸
通信
機能
(低)
m
a
i ボ
ル
テ
L
o
V
戦
国
大
戦
太
鼓
マ
ジ
ア
カ
ア
イ
カ
ツ
ワ
戦 ン
場 ダ
の |
絆
W
ウ
C
イ
C
イ
レ
ガ
ン
ス
B ト
B
麻
M
雀
J
格
5
闘
通信
機能
(高)
トレーディングカード
バトルアクション
リズムアクション
シュミレーション対戦
シューティング
対戦型麻雀
カードアクション対戦
スポーツ
操作性(低)
レーシング対戦
クイズ
20
れてはいるが,まだ人気が足りないといえる.今では他のゲームやアニメ等のメディアと
のコラボイベントなども多く開催しており,新規顧客に目が付きやすいよう取り組んでい
る.そのようなイベントなどを多く行い,多くの人にゲームを遊戯してもらう機会を用意
するべきだ.低難易度のゲームをまず遊戯してもらうことが,新規顧客の獲得の近道であ
ろう.
5.2
アーケードゲームのヘビーユーザーを生み出すには
アーケードゲームの現在の形態は一つの形に定着しつつある.それは,オンラインサー
ビスの普及による顧客管理型の営業形態である.
以前までは、ゲームメーカーがゲームセンターなどのアミューズメント施設にゲーム筐
体やゲームソフトを販売して終わりだった.しかし,現在はスマートフォンなどの電子端末
や電子マネー,それぞれのメーカーが販売している共通パスカードを使用して,メーカー
がプレイヤーのプレイ履歴を管理するのである.それによりランキングに繁栄されたり,
アイテム等のコンテンツを利用できる.これにより既存顧客を離さないことには成功して
いると言える.ならば,問題はヘビーユーザーを多く生み出すことだろう.
前項で記載した,人気が上位のゲームには,ランキング制度が導入されている.以前ま
でも,その筐体でのみのランキングなら発表されていた.ゲームセンター側がランキング
を作成して発表するということも多かった.現在でも,
「太鼓の達人」はその筐体でのみラ
ンキングが発表される.しかし,それ以外のものは,ネットワーク上で全国的なランキン
グまで繁栄することができる.さらに,リアルタイム通信対戦機能により,全国どこのプ
レイヤーとでも,対戦や協力プレイができるようになっている.
つまり,競争意識や自己顕示欲を引き立てる要素が多く存在しているのだ.その結果,既
存のゲーマーが現在のゲームセンターの環境を作っているのだ.だが,前項にも記載した
通り,アーケードゲームは高難易度のものばかりではない.いきなり高難易度のものに挑
戦するのではなく,気軽に楽しめるものから始めるのだ.そこでゲームに慣れ,
「他のゲー
ムもやってみたい」と思わせるのだ.
であれば,低難易度のゲームで多くの新規顧客を引き寄せ,ヘビーユーザーに育てるべ
きだろう.それがアーケードゲームの売り上げにつながると考えられる.
21
6
結言
本研究では日本でアーケードゲームがどのようにすれば売れるのかの調査を行った.そ
の結果,日本人のゲームに対する価値観が時代によって大きく変化していることがわかっ
た.原因は,他のメディアの成長,それによるゲームへの関心度が下がっていることだ.
ゲームプレイヤーの関心を掴むのではなく,ゲームにあまり関心のない一般生活者に目を
向けるのが大事だと考えられる.
今後のアーケードゲームの課題としては,ゲーム業界の先駆けとなるような全く新しい
ゲームを生み出し,新規顧客を獲得することであろう.そしてそれはアーケードゲームだ
けでなく,ゲーム業界全体をより良い傾向に導くことができると考える.
22
謝辞
本研究の遂行にあたり,多くの貴重なご指導と適切なご助言を賜った摂南大学経営学部
経営情報学科准教授久保貞也博士,及び,摂南大学経営学部経営情報学科の全先生方に深
甚な感謝の意を捧げます.また,本研究に関して貴重なご意見を賜った同研究室の同期の
皆様や後輩の皆様に深く感謝します.最後に,論文の完成に至る今日まで,貴重な助言や
励ましを下さり,最後までともに支え続けてくれた友人の皆様,そして,4 年間の大学生
活をあらゆる面から支えていただいた家族に,心より深く感謝を申し上げます.
23
参考文献
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ブレイン 2012.
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http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMITew000008092006&cp=
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[14] 「『ゲームのユーザー、今後は二極化する』
・エンターブレイン浜村社長」
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMITea002007042006
24
[15] 「東京ゲームショウ 2014 来場者調査報告書」
http://report.cesa.or.jp/,2014-11
[16] 「本当は『ゲーム離れ』なんて起きてない!」
http://allabout.co.jp/game/gameboy/closeup/CU20060912A/
[17] 「GEIMIN.NET」
http://geimin.net/
[18] 「みずほ産業調査 各論:各コンテンツ産業の現状分析 第 5 章 ゲーム産業」
http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1048_
03_05.pdf
[19] 「一般社団法人日本アミューズメント協会 JAMMA 資料集」
http://www.jamma.or.jp/reference/survey.php
25