英国「EU離脱」ショック! 米ドル/円「95円」が目標値

【 2016年6月29日公開】
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【西原氏スペシャルレポート】
『英国「EU離脱」ショック!
米ドル/円「95円」が目標値』
執筆者:株式会社CKキャピタル 代表取締役CEO
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1)大方の予想をくつがえし、英国は「EU 離脱」を決定!「米ドル/円」は一気に
99 円台まで急落。
世紀の大イベントと化した英国国民投票であるが、結果はサプライズの「Brexit」(英国のEU離
脱)。
サプライズと表現したのは、投票日直前のマーケットのコンセンサスがBremain(残留)に大き
く傾いていたからである。
例えば、テレビ東京で放映されている「モーニングサテライト」のアンケート結果も100%で
Bremainであった。
つまり、多くのメディアの事前報道では、「BrexitとBremainは拮抗している」といわれていた
にも関わらず、マーケットのコンセンサスはなぜか「Bremain」に急速に傾いていたわけである。
その影響なのか取引所取引(くりっく365)などの資料によれば、ミセスワタナベ1 のポジション
も「英ポンド/円」のロング(買)のまま世紀のイベントに突入。
多くの大手米銀は仮に「Brexit」という結果になれば、「英ポンド/米ドル」は一気に1.32台ド
ルまで急落するといったコメントもだし、「もしものBrexit」に対して警告をだしていた。
しかし前述のような「英ポンドロングポジション」が残っていたということは、よほど「Bremain
(残留)」に終わるという事前予測がマーケットに浸透していたのであろう。
今回の「英ポンド急落劇」において、個人投資家の方の間に誤解が多いと感じたのが「織り込み
済み」という認識。
1
個人の小口外国為替証拠金取引(FX)投資家で、主に日本人の主婦を中心とした女性やサラリーマン投資家
を意味する俗称。
市場参加者の一部には、長期に渡って「Brexit」をマーケットが織り込んでいたので仮に「Brexit」
となっても、英ポンドは大きく下落しないのではないか?との意見もあった。
ただそれを否定していたのがオプションのボラティリティ―である。
ここ1カ月間の「英ポンド/円」のボラティリティ―が30%と高騰していたことが、今回の「Brexit
or Bremain」というイベントの影響の凄さを示していた。
仮に「Brexit」がすでに織り込み済みであれば、このような高いボラティリティ―をオプション
市場が示すわけがないからである。
言い方を変えれば、「Brexit」をマーケットが織り込んでいたのであれば、国民投票直前に「英
ポンド/米ドル」は急落していなければいけないわけである。
前述の大手米銀行の予測に基づくと、投票日直前に「英ポンド/米ドル」が1.32ドル台まで急落
していれば、織り込み済みであるといえた。
ところが投票日の英ポンドの動きは、「英ポンド/米ドル」で1.50ドル台、「英ポンド/円」は160
円台と「Bremain」を織り込む動き。
つまり、マーケットは「Brexit」をまったく織り込んでいない状態で国民投票を迎えたわけであ
る。
結果は周知のとおり「Brexit」となり、マーケットは大混乱へ。
今回の件のように、長期に渡って討議されている場合は「マーケットは織り込み済み」という誤
解はさけたいところである。
プロのトレーダーは今回の相場が「織り込み済み」かどうかということは、オプションのボラテ
ィリティ―の高止まりで簡単にわかるわけであるが、それ以外でも、イベント直前の値動きで「織
り込み済み」であるかどうかはわかるので、注意したいところである。
ともあれ、サプライズの「Brexit」により、マーケットは「株安、コモディティー安、円高」、
つまり「リスクオフ」マーケットに突入したことになる。
2)Brexitで米国の利上げ期待後退で利下げの可能性も?「米ドル/円」は95円へ
「Brexit」がきっかけとなり、当レポートでの当面の円高ターゲットはあっさり達成。
「米ドル/円」は100円台、「豪ドル/円」は75円台というのがターゲットだったのであるが、ど
ちらも「Brexit」により、6月24日(金)に一気に達成した。
「Brexit」以降のマーケットは、「Brexit」がグローバル・マーケットに与えた不透明感が強く、
リスクオフ・マーケット、つまり「株安、コモディティー安、円高」がしばらく続きそうである。
この「米ドル/円」下落要因となるのが、「株安と米金利の低下」である。
まず「Brexitショック」により、18,000ドルを回復できなかったNYダウは続落する可能性が濃厚。
米株の下落は「日経平均の下落」、つまり「米ドル/円」の下落を誘引する。
次に米株が続落するのであれば、FRBの次の一手は「利上げ」ではなく「利下げ」との思惑も急
速に浮上してくる。
米金利の低下は、「米ドル/円」にとっての売り圧力。
つまり「Brexit」によるリスクオフ相場により、「株安、円高」への動きへ。
株安抑制により「米利上げ期待の後退」が高まれば米ドル金利低下で「米ドル安、円高」に。
結果「Brexit」以降のマーケットは、これまで以上に円高圧力がかることになる。
この円高の流れをとめるのはまず「日銀の介入」であろう。
もしくは株のクラッシュをさけるための各国の協調介入。
しかしマーケットはサプライズの「Brexit」を受け、「米ドル/円」のヘッジが遅れていて、仮
に介入が入り「米ドル/円」が反発する局面では「米ドル売り」に動く本邦輸出企業が多いと想
定され、「米ドル/円」の上値はますます限定的へ。
ここで「米ドル/円」の値動きをテクニカルにチェックしてみる。
「米ドル/円」月足
(フィボナッチ・リトレイスメント表示)
アベノミクスの「米ドル/円」相場を振り返ってみると、高値は125.86円、安値は起点の75.58円
となり、この50%戻しが100.72円となる。
この100.72円を終値ベースで割り込んでくるようだと、次の目標値は61.8%の94.78円となる。
サプライズの「Brexit」を受け、上値がより重くなった「米ドル/円」の行方に注目である。
----------------------------------------------------------------------------------【執筆者:西原宏一氏プロフィール】
株式会社CKキャピタル代表取締役・CEO
青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行為替部
門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャ
パンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラ
ー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交
流が深い。
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