国務院による 税関査察条例に関する 重大改正

国務院による
税関査察条例に関する
重大改正
概要
国務院は、㻝㻥㻥㻣年、『中華人民共和国税関査察条例』(以下、「税関査察条
㻞㻜㻝㻢年㻣月㻝日、国務院は
『中華人民共和国税関査察
例」又は「条例」)を公布・施行し、中国税関査察制度を確立した。当該条例の施
条例』 の改定に関する国務
行から約㻞㻜年を経過した今、対外貿易の新たな傾向への適合と通関の利便化
院の決定』(国務院令第㻢㻣㻜
を図り、㻢㻣㻜号令が公布され、条例が改正された。
号、以下、「㻢㻣㻜号令」)を公
新たな税関査察条例の公布により、従来の条例の多くの分野で重要な改正
布した。当該㻢㻣㻜号は同年㻝㻜
がなされた。主に、税関査察の定義の変更、税関査察のプロセスの規範化と改
月㻝日より施行される。
善、企業の自主報告制度及び民間仲介機構の協力査察制度の構築などが挙
げられる。新たな条例により、追加、削除、改正された主な項目は以下のとおり
である。
㻡項目の追加
►
政府間の企業情報共有
►
企業の自主報告制度
►
民間仲介機関の協力査
察導入等の内容
㻟㻟項目の改正
㻞項目の削除
►
旧条例第㻤条及び
第㻟㻞条の削除
►
主な改正内容
「査察期限」「査察重
点項目の確定方法」
「違法処罰の強化」
「承認者の範囲」など
新旧の税関査察条例を比較すると、旧条例の全体的な枠組み及び大部分の内容は新条例においても踏襲されているも
のの、主に、下記の変更点がある。
変更点
内容
政府間の企業情報共有に関する規定が追加され、「税関は査察活動の便宜のため、関連する業界団体、政府部門及び関連企業等
から特定した商品や業界の輸出入活動に係る関連情報を収集することができる。収集する情報が商業上の機密に係る場合、税関に
守秘義務が課される」とされた。
民間仲介機構の協力査察に関する規定が追加され、「税関は査察を実施する場合、会計、税務等に係る専門機関に専門的意見の
提示を依頼することができる。被査察者の依頼により、会計、税務等に係る専門機関から提示された専門的意見は、税関査察の参
追加
考とされる」とされた。
「税関は査察の結論において、その理由を説明し、被査察人にその権利を教示しなければならない」という規定が追加された。
企業の自主報告制度に関する規定が追加され、「輸出入貨物に直接関係する企業、組織が、自身の税関監督管理規定に違反した
行為を自ら進んで税関に報告し、また税関の処分を受けると表明した場合には、それに対する行政罰を軽減すべきである」とされた。
「被査察者が規定通りに帳簿を設けていない若しくは作成していない、又は帳簿を移管、隠蔽、改竄、若しくは毀損した場合には、会
計法の関連規定に則ってその法的責任を追及しなければならない」という規定が追加された。
保税品及び減免税により輸入された貨物の査察期限が、「輸出入貨物の通関完了日から3年以内又は保税品、減免税により輸入さ
れた貨物に対する税関の監督管理期間内」から「税関の監督管理期間内及びその後3年以内」に変更された。
コンピューターによる記帳・計算を採用している企業に対する会計記録の出力と保管に関する規定が削除された。
税関査察重点項目の決定基準の中に、「輸出入信用状態及びリスク状況」が組み入れられた。
「税関長」という表現が、「直轄税関の税関長又は直轄税関の税関長より権限を付与された支署の税関長」と明確にされた。
改正
押収強制措置についての規定が追加され、税関は関連電子データ記憶媒体を押収し、差押えることができることが明確にされた。
従来の二十九条(現三十条)の税関処罰の関連規定が改正され、違法行為の罰則が以下のとおり強化された。
►
「1万元以上、3万元以下」が「2万元以上、10万元以下」に変更
►
「1000元以上、5000元以下」が「5000元以上、5万元以下」に変更
►
「犯罪を構成する場合、法律に基づき、刑事責任を追及する」という項目が追加
従来の三十条(現三十一条)の処罰の原因につき、改正がなされた
削除
関連する企業に対して輸出入貨物の購入、販売、加工、使用、損耗及び在庫資料の税関への報告を要求する規定が削除された。
我々の考察
新条例は、中国の税関査察制度の改善と共に、2年以内に、
政府関連部門間の企業情報の交換と共有
►
政策の簡素化、権限の移管、職責の転換をするという中国税
新条例により、税関は関連政府部門から情報を収集できるこ
ととなった。この情報は税関及び関連政府部門が共に関心を
関の背景の下で公布された。新条例により、規定が改正、補充
持つ事項である。例えば、ロイヤリティーや関連者間取引の
され、税関査察にかかわる一部の具体的な問題への対応が明
情報は税関と税務機関の双方が現在、注目している事項で
確となり、また、細分化された。税関にとって、今回の査察条例
ある。
の改正は各政府部門間の企業情報の共有を促進し、税関の
後続監督業務の統一性、透明性及び柔軟性の強化に資する。
►
総署第225号令、以下、「225号令」)の公布・施行により、税
一方、輸出入企業にとって、今回の改正は良い面と悪い面の
関は、企業の輸出入活動にかかる関連情報をその他の政府
両面を含んでいる。例えば、企業は第三者専門機関に協力を
関連部門(例えば、外貨管理、税務、商務部門など)と共有、
依頼し、輸出入貨物に関する税関の管理制度及びプロセス、
開示するとされている。
企業の税関査察への対応サポート及び関連する専門的意見
の提示を依頼することが認められた。これにより、税関リスクを
また、『中華人民共和国税関企業信用管理暫定弁法』(税関
►
つまり、企業は、関連政府部門に情報を開示する場合、様々
コントロールし、企業の生産経営に対する税関問題の影響を低
な要素を考慮して、情報の真実性と一貫性を保たなければな
減させることができる。ただし、一方で、企業自身の税関管理レ
らない。企業が、ある分野で違法、若しくは、不正行為を行っ
ベル、通関及び関連職員の専門性などへの要求が高められた。
た場合、情報を共有をされた他の部門の取り扱いにも影響を
主な内容は次のとおりである。
及ぼす可能性がある。
第三者専門機関による税関査察への関与
►
►
新条例により、税関が、会計、税務などの専門機関に関
►
「第三者専門機関」につき認定基準及び制限はあるか。
連する問題に対する専門的意見の作成を依頼できること、
税関査察に関与する具体的な形式要求はあるか。第三
及び企業が専門機関に委託して作成した専門的意見が
者専門機関による専門的意見はどの程度、税関の「参考
税関査察の参考とされることが明確になった。
基準」とされるか。
新条例の公布前、全国の各税関区は、加工貿易の税関
査察及び企業自主管理などの政策に相次いで第三者機
企業はどのように新条例に対応すべきか
関を試験的に仲介させ、その報告を要求していた。
自己検査及び事前予防
►
今回の改正によって、会計、税務などの専門機関が、税
関査察に協力できることが明確となり、第三者機関による
仲介が税関査察の重要なサポートとなる可能性がある。
第三者機関は企業と税関との間の「架け橋」として、税関
とのコミュニケーション力及び専門知識を通じて、企業の
税関リスクを評価、コントロールし、解決に協力できる。
企業による自主的な管理と報告
►
2015年から、 政策の簡素化及び下級機関への権限委譲、
監督強化などの政策に応じるため、各地の税関は相次い
で企業の自主管理及び自主報告を試験的に導入している。
企業が自主的に仲介機関に委託して自己検査を行い、税
►
►
企業は日常的な税関管理に対し、全面的な自己検査
を行い、日々の税関管理業務における潜在的なリスクを
特定し、適時に補足、修正し、税関リスクに備えるようお
勧めする。
内部帳簿、帳票などの資料管理の強化
►
新条例の第八条により、「輸出入貨物と直接に関連す
る企業、組織が、健全な会計制度を確立しており、アプリ
ケーションを通じて正確かつ漏れなく記帳、計算ができる
場合、そのアプリケーションに保存されている会計記録や
出力された会計記録を会計資料とみなす」とされた。
最近税関が公布した関連法規を鑑みると、企業の健
関規定に違反する事項が発見された場合、自主的に報告
►
することが奨励されている。行政処罰、信用管理、延滞金
全な会計制度及び完全な内部帳簿及び帳票管理はAEO
徴収などの面から軽減措置が適用されている。
(Authorized Economic Operator)認証制度の内部統制
新条例の公布により、企業の自主的なコンプライアンス強
化を奨励する税関の政策指導がより明確となった。企業
の自主報告制度は試験的導入から法規へと格上げされ、
また、適用地域も試験地域から全国に拡大され、企業の
自主的な管理と報告に対する制度保障が提供された。自
主報告制度は、税関、企業の双方にとってメリットのある
措置と考えられる。
の項目における重要な指標となっている。また、同時に、
税関査察の重点項目の一つともなっている。そのため、
企業は新条例の要求に応じた管理体制を強化する必要
がある。
第三者専門機関の利用
►
新条例により、企業が人的資源若しくは専門知識を要
する場合、第三者の専門機関に依頼し、自己検査又は税
670号令の公布は、旧条例における一部の問題への対応を
関査察に協力させることができることが明確となった。こ
明確にし、規範化した。ただし、過去の税関検査及び企業の
れにより、税関の管理上の問題やリスクの特定、税関当
自主報告制度の事例を鑑みると、新条例は、その実施過程
局とのより積極的な交渉が期待できる。税関問題の合理
において、さらなる明確化とガイドラインが必要となる事項も
的な解決策を見出すことがより可能となるであろう。
多くあると考えられる。主に、次のようなものである。
結論
►
情報共有における、「特定した商品」の定義はなにか。
670号令の公布は、1997年に税関査察条例が公布されて
►
自主報告制度につき、企業がどのようなプロセスに従うべ
以来、20年越しの国務院による重大な改正である。規定
きか。自主報告を実施した後も、依然として密輸取締部門
の改正により、従来の具体的な問題対応がより明確化、
に移送される可能性はあるか。行政処罰の軽減等のため
細分化された。しかし、未だに明確となっていない事項も
に具体的な要件があるか。
ある。企業は今後も最新の情報に注意を払い、慎重に対
応されることが望まれる。必要に応じて、税務・税関の専
門家、コンサルタントにサポートを求めるようお勧めする。
Kenneth Leung
Greater China Indirect Tax Partner
+86 10 5815 3808
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Beijing Indirect Tax Team
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Partner
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Shenzhen Indirect Tax Team
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State Council Order[2016]No.670:
http://www.customs.gov.cn/publish/portal0/tab49564/info807275.htm
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