核医学画像は真実を表現しているか? ~真実を追い求める核医学技術

第76回千葉核医学技術研究会
会員レクチャー
とっても基本的な内容です。
核医学画像は真実を表現しているか?
~真実を追い求める核医学技術~
千葉療護センター
小野寺晋志
灰白質部と白質部を
それぞれ均一濃度の
Tc-99m水溶液で満た
し、SPECT収集した。
灰白質部:高濃度
白質部:低濃度
ECT用脳ファントム
IB-10型(京都科学)
はたして
この画像は
真実をどの程度
表現できて
いるのか?
ECT用脳ファントム
IB-10型(京都科学)
SPECT画像
AC+、SC-
ECT用脳ファントム
IB-10型(京都科学)
SPECT画像
AC+、SC-
真実
同様のファントムをPETで
ECT用脳ファントム
IB-10型(京都科学)
PET画像
AC+、SC+
真実
GE Healthcare社製 Discovery ST-Elite
実はこれはCT画像に色をつけたもの
JISファントム
SPECT画像
AC-、SC-
真実
同様のファントムをPETで
JISファントム
PET画像
AC+、SC+
真実
核医学画像は真実と
かけ離れている。
だからこそおもしろい!
その理論を勉強したり、検証するのがおもしろい。
それを使って真実に近づける努力しがいがあっておもしろい。
なんでこうなっちゃうの?
ECT用脳ファントム
IB-10型(京都科学)
SPECT画像
AC+、SC-
真実
なんでこうなっちゃうの?
JISファントム
SPECT画像
AC-、SC-
真実
なんで真実を表現できないのか?
 分解能の悪さ
 装置の限界
 散乱
 減弱
 統計学的誤差
など
分解能の悪さ
↓
ボケ
↓
部分容積効果
ボケ 図とプロファイルカーブ
点線源を撮像したとき
真実
ボケる→すそのが広がり、
ピーク値が下がる
過小評価される
部分容積効果 理論
点線源が並ぶと、加算されてピーク値は上がっていく
部分容積効果 実験
線線源を
1本、2本並べて、3本並べて撮像
画像とプロファイルカーブを得た
容積が十分にあると
計測値は真の値となる
提供:日本メジフィジックス
柳沢 正道 様
部分容積効果
真実
部分容積効果
SPECT画像
AC-、SC-
部分容積効果
PET Bodyファントム
SUVmax:4.0
SUVmax:3.3
SUVmax:5.0
True SUV is 5.0.
PETではSUVで
病気の有無を判断する。
自施設のシステムで
集積が小さいとき
どの程度過小評価されるのか
読影医に提示しておくべき
なぜ、ボケるのか?
コリメータのレントゲン写真
LEHR
MEGP
コリメータ隔壁拡大図
検出器
コリメータ隔壁拡大図
コリメータ隔壁拡大図
コリメータのデザインが変われば、ボケ具合も変わる。
距離と分解能 線線源を撮像
コリメータ開口補正 理論
SPECTにおける画質劣化とその補正 Ⅳコリメータの開口
法政大学工学部 尾川浩一:映像情報MedicalVol.34 No.9 より
ボケの要因
コリメータの幾何学的要因
 クリスタルの厚さ
 位置計算の限界
 再構成アルゴリズム・パラメータ
 クリスタルの大きさ(PET)
 散乱、エネルギー分解能の限界

など
クリスタルの厚さ
クリスタル
散 乱
線源
被検体
(散乱体)
検出器
散乱された放射線のエネルギーは落ちているはず
例えば141keV→130keV
エネルギー分解能の限界
Tc-99mのSPECTRUM
コリメータLEHR、散乱体なし
エネルギー分解能が完璧で、141keVを141keVとだけ認識できて
141keVのみを収集できれば、散乱線がカウントされることはない。
しかし実際には127keV~155keV程度を収集せざるを得ない。
この幅の中に散乱線が入ってきてしまう。
散乱体があると
Tl-201、コリメータLEHR、散乱体なし
Tl-201、コリメータLEHR、散乱体あり
隔壁貫通散乱線(I-123)
I-123、コリメータLEHR、散乱体なし
I123、コリメータLMEGP、散乱体なし
529keV由来の散乱線
散乱補正 理論
提供:柳沢正道様、日本メジフィジックス
散乱補正 投影画像
=
-
Main window画像
真のcount
+散乱線のcount
sub window画像
散乱線のcount
と思われる画像
真のcountと
思われる画像
散乱補正 再構成画像
散乱補正なし
散乱補正あり
プロミネンスプロセッサーを用いた実験
減 弱
SPECT画像
AC-、SC-
被検体
検出器
減弱補正 Chang法
被検体内の減弱係数が均一と仮定する。
 再構成された画像のピクセル値に同心円状
に係数を掛ける。
 基本的に脳SPECTにしか使えない。
(脳内は減弱係数がほぼ均一)

中心ほど減弱されるので
大きな係数を掛ける
Chang法 μ値を求める実験
脳ファントム外容器にTc-99m水溶液を満たしてSPECT収集
減弱補正 トランスミッション
 線源やX線管球を被検体の周囲を
回転させて、要するにCTを撮影し、
体内減弱係数MAPを得る。
心筋SPECT
減弱係数MAP例
再構成条件の違いによる画像の違い
バタワースフィルタ Cut Off周波数
再構成条件の違いによる画像の違い
OSEM イタレーションとサブセット
どんな核種で、
どんな条件で収集したとき
どんな再構成パラメータを使うと
どんな画像になるのか、
できるだけ知っておくべき
例えば、
患者様の容態が悪くて十分な時間
収集できなかったとき、
再構成パラメータをどの程度変えれば、
最も真実に近いのか
あらゆる状況に対応できるあらゆるエビデ
ンスを持つことは不可能。
ある程度は「カン」に頼るしかない。
その「カン」は実験をたくさんして、できるだ
け多くのエビデンスを持つことによって養
われる。
だけど、いくら技術を駆使しても
現在の核医学では
真実を表現することは不可能
我々がすべきことは
 自分が作成した画像が真実ではないこと
を認識すること
 どのくらい真実と離れているか実験など
で認識しておくこと(自施設装置の性能を
知り尽くす)
 それをドクターに説明できる理論とエビデ
ンス(実験結果)をもつこと
 十分な検査ができなかったとき、できるだ
け真実に近づけられる技術をもつこと
核医学画像は真実と
かけ離れている。
だからこそおもしろい!
中田英寿風に言えば、
核医学技術は真実追求の旅