おいしさを科学する 熱の伝わり方は3タイプ 加熱が料理を作り出す

おいしさを科学する
「加熱」
「ゆでる」
「煮る」
「蒸す」
「炒める」
「揚げる」
「焼く」
、
あるいは「電子レンジ」でと、加熱調理には多様な
方法があり、素材や作る料理に応じて使い分けられ
ています。加熱は、そして加熱方法の違いは、おい
しさにどのように関わっているのでしょうか。
加熱が料理を作り出す
たとえばそのままでは食べられない乾燥してカチカチの米
●図表1
対流・伝導・放射による加熱の仕組み
ゆでる・煮る
や豆は、炊いたり煮たりすることでふっくらと柔らかくなり、
食品
(個体)
消化吸収されやすい状態になります。生では硬くて食べにく
伝導
い野菜も茹でれば柔らかくなり、硬いすじ肉も長時間煮込め
ばとろけるほど柔らかくなります。加熱は食品を殺菌して安
対流
全な食べ物にする有効な方法でもあり、腐敗や変質を遅らせ
対流
る効果もあります。
おいしくて安全な料理づくりに加熱は欠かせません。
焼く
熱の伝わり方は3タイプ
食品(個体)
伝導
食品を加熱する際の熱の伝わり方は、「対流」
「伝導」
「放射
(輻射)」という3つの種類があります。実際の加熱ではこの
対流
3種類が複雑に組み合わさって熱が伝わります。
熱は、高い温度のものから低い温度のものに移動します。
輻射式オーブン
対流と伝導は接触するもの同士の間で熱が伝わり、対流は
ヒーター
水・油・空気などの流動体から固体へ熱が移動し、伝導は
固体間および固体内で熱が移動します。放射の場合は物体を
赤外線
介して熱が伝わるのではなく、赤外線によって熱が伝わりま
放射
食品(個体)
。
す(図表1)
伝導
赤外線
放射
ヒーター
佐藤秀美『おいしさをつくる「熱」の科学』柴田書店 2007より作成
おいしさを科学する
「 加 熱 」
炭火焼きは遠赤外線加熱
食品を直火焼きで加熱する場合は、熱源で熱せられた空気
の対流による加熱もありますが、主な加熱は放射によるもの
。
です(図表2)
放射では、熱源が発生する赤外線が直接食品表面に吸収さ
れ、そこで分子運動が起こってはじめて発熱します。温度の
高い熱源はどれも赤外線を放射していますが、熱源の温度が
●図表2
炭火焼き加熱の仕組み
高いほど放射の伝熱量は大きくなります。また、発生する
伝導
赤外線の中でも波長の長い遠赤外線が、特に食品のごく表面
付近で効率よく熱に変わり、食品そのものの温度を上昇させ
る効果が強くなります。
対流
昔から魚を焼くときに、「炭火の遠火の強火」がよいとい
放射
われています。炭火は表面温度が300∼600℃の高温になるた
め放射の熱量が大きく、遠赤外線が多く放出されます。その
効果で魚の表面の水分は蒸発して香ばしくなり、内部はほど
よく水分が残って火の通った状態に焼き上げられます。
同じ直火焼きでもガスの火では、放射熱の発生は少なく、
遠赤外線の効果もありません。炎が直接あたって焼きムラも
できてしまいます。そこで金属製の魚焼き器を使って、ガス
の火をいったん放射熱に変えるのです。
遠赤外線は石やセラミックを焼いても発生します。そのよ
い例が石焼き芋です。昔よく使われていた七輪は、遠赤外線
の発生が多い天然セラミックでできています。七輪と木炭の
組み合わせは、まさに遠赤外線加熱のためのベストコンビな
のです。
鍋が発熱する電磁誘導加熱
佐藤秀美『おいしさをつくる「熱」の科学』柴田書店 2007、島田淳子・中沢文子・畑江敬子編:
『調理科学講座2調理の基礎と科学』朝倉書店 1993より作成
遠赤外線
遠赤外線は、太陽光に含まれる可視光線や紫外線と同じ電磁波の仲間です。
ものの表面からは、大小の違いはあるが電磁波の形でエネルギーが放出されて
います。そのエネルギー量はもの自体の温度が高くなるほど大きくなります。電
磁波である遠赤外線は、空気に吸収されにくく、食品など高分子物質には吸収さ
れやすい性質があります。吸収された遠赤外線のエネルギーは、電子レンジのマ
イクロ波と同様に物質の分子を振動させて温度を上昇させます。これが遠赤外線
加熱です。
金属酸化物などの各種セラミックス材料は遠赤外線を放射しやすいので、暖房
機や乾燥機などに組みこまれている遠赤外線ヒータ材料や、保温繊維の体温再放
射材料として使われています。
●図表3
IH調理器の仕組み
IH調理器と呼ばれて電磁プレートや炊飯器などで使われてい
るのが、電磁誘導を利用した誘導加熱(IH/インダクション・
ヒーティング)と呼ばれる加熱法です。
渦電流
誘導加熱の特徴は火を使用せず、鍋底自体を発熱させること
です。トッププレートの下の磁力発生コイルに電流が流れると
磁力線が発生し、その磁力線が金属を通るときに渦電流に変わ
磁力線
り、過電流の流れる金属に抵抗があるため鍋底が発熱します
(図表3)
。火を使用しないため、炎の立ち消えや不完全燃焼の
心配がありません。鍋は鉄やステンレスなどの磁力を持つもの
に限らますが、熱効率が高く食品を早く加熱することができま
す。発熱を電気的に制御できるために温度管理が容易で、天ぷ
らのような揚げ物、煮物などの調理に向いています。
トッププレイト
磁力発生コイル
佐藤秀美『おいしさをつくる「熱」の科学』柴田書店 2007より作成
おいしさを科学する
「 加 熱 」
食品内の水分が加熱する電子レンジ
●図表4
加熱調理の分類
熱の媒体
遠赤外線よりも波長の長いマイクロ波と呼ばれる電磁波を
利用した加熱調理器が、電子レンジです。
湿
式
加
熱
加熱調理は、外部加熱と内部加熱の2つに大別されます。
外部加熱とは言葉どおり外部から熱が伝わって食品自体に熱
が加わること。外部加熱には水を媒介とする「湿式加熱」、
水以外のものを媒介とする「乾式加熱」、そしてIH調理器に
よる「誘導加熱」があります。内部加熱の代表的なものが電
子レンジの「誘電加熱」です(図表4)
。
外
部
加
熱
電子レンジ加熱は、遠赤外線による放射伝熱と同様、熱を
伝える媒体は介さずに、マイクロ波のエネルギーが直接食品
内部で熱エネルギーに変換されて食品そのものを加熱しま
す。直火焼きの遠赤外線が食品の表面付近の食品分子を加熱
するのに対し、電子レンジのマイクロ波は食品内部にまで入
り、そこに含まれている水分を加熱するのが特徴です。その
ため、通常は食品表面に焦げはつかず、水分の蒸発が大きく
て乾燥しやすい性質があります。
また、電子レンジ加熱は食品自体が発熱するので、食品の
内
部
加
熱
乾
式
加
熱
加熱調理
100℃
水
ゆでる・煮る
蒸気
蒸す
放射(空気)
金属板・鍋など
空気・放射
焼く
油脂・金属板など
炒める
150∼200℃
油脂
揚げる
150∼220℃
100℃
食品により
85∼90℃
200∼300℃
直火
200∼300℃
間接
オーブン 130∼280℃
誘
導
加
熱
電磁誘導
(電磁調理器)
ゆでる・煮る
蒸す
揚げる
焼く(間接)
100℃(水)
∼180℃(油)
誘
電
加
熱
マイクロ波
(電子レンジ)
煮る
蒸す
焼く
100℃以上
佐藤秀美『おいしさをつくる「熱」の科学』柴田書店 2007、川端晶子著『調理のサイエンス』柴田
書店 2000より作成
温度が早く上昇し、他の加熱方法に比べて圧倒的に短い時間
で効率よく加熱できます。反面、マイクロ波は食品の表面か
加熱温度
●図表5
電子レンジ加熱
らほぼ垂直に食品内に入り、6∼7cmのところまで到達して
吸収されるという特性があるため、小さい食品では中心部が
加熱し過ぎたり、食品の形状によって加熱ムラを生じやすい
という欠点もあります(図表5)
。
食品
マイクロ波
食品
マイクロ波
食品
食品
杉田浩一『新装版「こつ」の科学』柴田書店 2006より作成
おいしさを科学する
「 加 熱 」
味付けなら煮る、素材を活かす蒸し加熱
ゆでる・煮る・蒸すなどの水を熱の媒体とする湿式加熱
と、焼く・炒めるなどの水を使わない乾式加熱とでは、食品
素材を加熱する温度や加熱し終わった食品の水分量などに
大きな違いが生じます。
湿式加熱の場合、水の沸騰する温度(沸点)の100℃(1気圧
の場合)を最高温度として維持できるので、油のように温度
●図表6
水蒸気加熱の仕組み
調節の必要がありません。また、水は熱を伝えるだけでなく、
加熱する食品に含まれる成分を溶かしたり、調味料の運搬役
としても働きます。
ゆでる・煮るの調理では、水中の対流が直接食品を温めま
す。均一に外側から加熱されるのでムラができにくい反面、
対流の振動が激しいと食品の形状を損なうこともあります。
水蒸気
対流
凝縮熱(539cal/g)
食品
伝導(個体)
加熱中に食品には水分が付加されますが、水溶性の栄養成分
なども溶け出しやすくなります。ゆでる場合はアクのような
不要な成分を除去することができ、煮る場合は煮汁中の調味
料が食品に染みて味を付けます。長時間加熱して煮つめると、
味を濃密にするだけでなく、食品の水分を蒸発させ保存性を
高める効果もあります。
蒸す調理では100℃の水蒸気の中で食品を加熱しますが、
水蒸気は100℃以下の食品に触れる際に熱(凝縮熱)を放し
て水に戻ります。この凝縮熱という形で食品が加熱されるの
が蒸し加熱の特徴です(図表6)
。
蒸す調理は振動のない加熱なので、形を保って調理したい
ものに向いています。加熱中の調味はしにくい反面、食品成
分の流出も少ない調理法です。
食感と風味なら乾式加熱
水を媒介としない乾式加熱では、油を媒介に利用する「揚
げる」調理で150∼220℃、伝導熱・放射熱を活用する「焼く」
場合は200∼300℃と、水の沸点をはるかに超える高温で加熱
します。そのため、加熱中に食品中の水分が蒸発し、食品に
含まれる水分量は減少します。
乾式加熱では、まず食品の表層の部分で脱水が起こり、食
品成分が濃縮して固い層が形成され、加熱が進むとこれが焦
げとなります。適度な焦げは湿式加熱では得られない香ばし
い風味と食感を生み、特に急速に加熱して水分を蒸発させた
場合、パンの皮・油揚げ・フライドポテトなどクラストと呼
ばれるカリカリした食感の組織が形成されます。
揚げる場合は加熱の媒介に油を利用するので、食品中の水
分が蒸発した後に油が吸収されて独特の風味が得られます。
佐藤秀美『おいしさをつくる「熱」の科学』柴田書店 2007 他より作成
蒸し加熱と凝縮熱
水1gを1℃上げるために必要な熱量は1カロリーですが、水蒸気1gが水に変わる
ときに放出する熱量は539カロリー。蒸し加熱は食品にとても大きい熱を伝える
ことができます。
おいしさを科学する
「 加 熱 」
水と熱で糊化するでんぷん
食品中の成分は水分以外にも加熱によってさまざまな変化
が起きます。
野菜を加熱すると柔らかくなるのは、植物の細胞をつなぎ
合わせる働きをするペクチン(水溶性の食物繊維)が加熱で
溶け出して、組織構造が緩むためです。この現象は中性ある
いはアルカリ性のときに起きやすいため、シャリシャリした
●図表7 デンプンの糊化
食感にするためにレンコンやジャガイモなどをゆでる際に酢
を加えて弱酸性にして、ペクチンが溶け出すのを防ぐことが
水を加えて
加熱
あります。
米を炊くとふっくらと粘りのある状態になるのは、米の主
要成分であるでんぷんの結晶構造が、水と熱の作用でほどけ
て膨張し、粘性の強い糊になるためです。この状態を糊化と
いい、糊化する前のでんぷんをβでんぷん、糊化したものを
αでんぷんと呼びます。βでんぷんは水に溶けず消化しにく
いのですが、αでんぷんになると消化がよくなります。αで
んぷんは冷めるとまたβでんぷんに戻ってしまいますが、再
生でんぷん
(βでんぷん)
生では水に溶けず
消化しにくい
老化
糊化
(αでんぷん)
再加熱
消化がよい
杉田浩一『新装版「こつ」の科学』柴田書店 2006、島田淳子・中沢文子・畑江敬子編:『調理科学
講座2調理の基礎と科学』朝倉書店より作成
加熱により再びαでんぷんになります(図表7)
。
変化の異なるたんぱく質
肉・魚・卵は、加熱すると生のときにはない特有の弾力や
歯ごたえが生じます。これはたんぱく質の物性が加熱によっ
て変化するためです。畜肉と魚肉では筋肉の構造やたんぱく
質の成分に違いがあり、加熱後の食感も異なります。
魚肉を加熱すると硬くはなりますが、崩れやすく繊維状に
ほぐれやすくなります。これは魚肉の筋肉の間にある膜に含
まれるコラーゲンが加熱によって容易に溶けるためです。コ
ラーゲンは繊維状のたんぱく質で、細胞と細胞の隙間を埋め
る形で存在し、細胞同士をくっつける接着剤の役割を果たし
ています。煮魚の煮汁が冷えるとゼリーのような煮こごりに
なるのは、コラーゲンが煮汁に溶け出して液体状のゼラチン
になり、冷えると流動性を失って固化するからです。
畜肉を加熱するとき、短時間の加熱では硬くなるだけでほ
ぐれやすくはなりません。長時間煮るなどすれば、コラーゲ
ンがゼラチン化してほぐれやすくなります。
卵は、卵白と卵黄を構成するたんぱく質が異なるため、硬
くなる温度も異なります。卵黄だけ固まって卵白は流動性が
ある温泉卵は、この性質を利用したもので、生卵を65∼70℃
で加熱するとできます。
でんぷんの加熱調理
でんぷんが糊化するには、その重量の30%の水と熱が必要です。でんぷんが
成分の77%を占める精白米の水分は約15%。糊化させるには、炊く前にあらか
じめ米を水に浸して吸水させ、加熱中にも米粒内に水分を送り込む必要があり
ます。そのため米の加熱にはそれが効率的に行える煮る方法がとられるのです。
うるち米を炊くのに対して、もち米を蒸すのは、うるち米よりももち米の吸
水率が大きく、同一水分では柔らかくなりすぎるためです。このようにもち米
は水分を多く抱くことができるので、蒸す過程の振り水によって不足分の水分
を補う程度で充分なのです。
イモ類のように水分の多い食品は、それ自身が含む水分で糊化できるので、
ゆでる・煮る場合も焦げつかない程度の少量の水分でよく、蒸す・焼く・揚げ
るなどの加熱も利用できます。
おいしさを科学する
「 加 熱 」
加熱で変わる色と香り
肉は焼くと褐色になり、エビやカニは加熱で鮮やかな赤色
になります。緑色野菜はほどよい加熱では鮮やかな色調です
が、加熱しすぎると色が落ちます。これらは加熱によって食
品中の色素の構造が変化するためです。
肉の筋肉の色素・ミオグロビンは加熱すると褐色のメトロ
ミオクロモーゲンという色素に変わります。エビ・カニでは
これらに含まれているアスタキサンチンという色素が、たん
カラメル化
ぱく質と複合体を形成していますが、加熱によって複合体が
砂糖は100℃以上に加熱すると飴状になり、温度の上昇とともに次第にキツネ色
に変化し甘い香りを放ちます。これがカラメル化です。よく炒めたタマネギの
甘い香気は、生タマネギに含まれる含硫化合物が加熱で減少して刺激臭がしな
くなるのと同時に、糖分が分解してカラメルのような香気が生まれるためです。
壊されて赤く発色します。葉緑素は加熱による温度上昇とと
もに変色が進みます。
砂糖のカラメル化では、加熱によって色と物性が大きく変
化します。魚や肉の照り焼き、ホットケーキやクッキーなど
の焼き色や香ばしさは、メイラード反応(アミノ・カルボニ
ル反応)と呼ばれるアミノ化合物と糖分が高温下で反応して
起きる変化によるものです。
油脂は170℃以上で脂肪酸が分解して香気成分を発生しま
す。煎ったゴマの特有の香ばしい香りは、ゴマに含まれる油
脂・糖・アミノ酸などを加熱することによって生じています。
食品中にはさまざまな酵素が存在し、この酵素の働きで味
や色や食感に変化が起きることがあります。この酵素は温度
の影響を受けやすく、加熱によって酵素活性が高まりますが、
さらに高温になると活性を失います(失活)
。
加熱中にプロテアーゼという酵素が働くと、たんぱく質か
らアミノ酸やペプチドが生成されて旨味が増します。でんぷ
んは、加熱中にでんぷん分解酵素のアミラーゼによって分解
されて甘味を増します。焼き芋では加熱温度をゆっくり上昇
させてアミラーゼを十分に作用させると甘味が強くなります。
加熱は人類の食文化の出発点であり、現在も食生活に欠く
ことのできない重要な要素です。電子レンジや電磁調理器な
どの新しい調理器具も普及した現在、豊かな食生活を送るた
めに、加熱による食品のさまざまな変化を知ると共に、多様
な加熱調理の違いを知り、適切な方法を選択して上手に使い
分ける必要があるでしょう。
※参考資料●佐藤秀美『おいしさをつくる「熱」の科学』柴田書店2007、杉田浩一『新装版「こつ」
の科学』柴田書店2006、渋川祥子編『食品加熱の科学』朝倉書店1996●島田淳子・中沢文子・畑江
敬子編『調理科学講座2調理の基礎と科学』朝倉書店1993●川端晶子著『調理のサイエンス』柴田書
店2000●川端晶子・寺元芳子編『新版調理学』地球社1989●島田淳子・今井悦子編『調理とおいし
さの科学』財団法人放送大学教育振興会1998
メイラード反応
たんぱく質はアミノ酸からできていますが、これらのアミノ化合物と糖分は高
温下でメイラード反応(アミノ・カルボニル反応)と呼ばれる変化を起こしま
す。加熱によってメラノイジンという着色物質が生成され、独特の褐色の色合
いと香ばしい香りが生まれます。焦げ目や焼き色ができるのはこのためです。
魚や肉の照り焼き、ホットケーキやクッキーなどの焼き色や香ばしさはその例
です。
加熱と酵素の失活
温度の上昇とともに食品中で起きる化学反応は加速されますが、酵素の失活
や殺菌はそれ以上に急激に進行します。
高温で短時間に加熱すれば、食品中の栄養素などを損わずに、酵素の失活や
殺菌をすることができます。牛乳の高温短時間殺菌はこれを利用したものです。
中国料理で野菜を高温・短時間で油通しすると、野菜の色素を分解する酵素を失
活させ、色鮮やかに仕上げられます。冷凍野菜を冷凍する前にブランチングと
呼ばれる熱処理を行うのも、酵素活性を抑制することで冷凍保存中の品質維持
や変色防止をするためです。