Li(リチウム) 二次電池の 最近の研究開発

NMCニュース
(8)第2号
表3 Li二次電池のアノード代替材料の研究成果
新技術・新素材
金属間化合物
Li(リチウム)
二次電池の
最近の研究開発
5
ニューマテリアルセンター顧問
結晶構造
N i A s 型で、
Cu6Sn5
(Cu1.2Sn) CuSnの空隙位
置の20%がCu
で占有される時
にできる。
Li二次電池(本誌、1994年6月号、 Li(リチウム)二次電池の開
発とその電極 参照)は1990年にSony Corp.で商業用に開発され
て以来、二次電池のトップ・ランナーとして、1999年には4億個
が市販され、市場予測では、2005年には11億個、40億ドル以上が
見込まれている。表1にその特徴を示したが、最大の長所は、単
一電池の標準電圧が約4.1Vで、NiCd及びNiMH電池の約3倍、鉛
電池の約2倍以上である 表1 Li(リチウム)二次電池の特徴
〜4.1V, NiCd, NiMHの約3倍、
ことであるが、価格が 電
圧
鉛電池の2倍以上
他の電池の2〜3倍で高 自 然 放 電 2〜10%/月で、低い
いこと、直列、並列に サ イ ク ル 寿 命 1000回以上
作 動 温 度 −20℃〜+60℃
連結の際に、発火・爆 価
格 高い、他の電池の2〜3倍
発の防止対策として、 過放電、過充電 不可
コントロール・システ コ ン ト ロ ー ル 電流、電圧を高める為直列、並列
に連結の際はシステムのコントロ
ールが必要
ムが必要である等の欠
点がある。
2. 電池の構成と代替材料の開発
2)〜4)
図1に構成の模式図を、表2に負極にLi、正極に(CF)nの場合の
電池反応をそれぞれ示した。現在は負極にLiCの層間化合物LixCn、
正極にLiCoO 2 、電解液にLiPF 6 を各種の有機炭酸塩(ethylene
carbonate等)の混合液に溶解したものが使用され、LixC6/Li1-xCoO2
電池で、372mAh/gの放
eee電容量が得られ、4.2〜
ee3.5Vの間で作動する高エ
ネルギー、高パワーを与
(CF)n
Li
Li+ Fえるが、Li x C 6 は大規模
C
利用(電気自動車等)の
カソード
アノード
場合は、発火、爆発防止
図1 Li(リチウム)二次電池の模式図
のための費用が嵩むし、
表2 電池反応(アノードにLi、
カソードに(CF)nの場合)
正極のCoは高価である
アノード反応: nLi
nLi++neので、それぞれ代替材料
カソード反応:(CF)n+nenC+nF全 電 池 反 応: nLi+(CF)n
nLi++nC+nFが研究されている。又
電池の理想は最も酸化力の強いF 2と、最も還元
packagingについても、
力の強いLiの組み合わせであるが、現在の電池は、
現在のrigidなものに代り
アノードはLiの層間化合物のLiC6、カソードは、
Li1-xCoO2である。
flexibleな容器が研究さ
れている。
3. アノード(負極)代替材料の開発
容
量
200mAh/g:(1)の反応で実験
的 に 得られ る 容 積 容 量 は 、
1,360mAh/ml(6.89/ml)は黒鉛
の理論値818/mlに比較して著し
く優れている。
250〜300mAh/gの初期値はサイ
3Li+InSb→Li3Sb+In (2)
InSbはZnS型
InSb
(及びAlSb、(daimond-like) Liの挿入とInの押出によって、fcc Sbの クル数と共に低下する。これは(2)
の反応は可逆的であるが、
押出さ
配列は変らず、4.4%の膨張であるが押
構造
GaSb)
出されたInを勘定に入れると、46.5%に
なる。
れたInの粒子化と成長と、中間に
Li1.5In0.5-Sbができる為である。
Cu2Sb
Cu2Sb型
Li2CuSbはZnS
型構造
2Li+Cu2Sb→Li2CuSb+Cu (3)
xLi+Li2CuSb→Li2+xCu1-xSb+Cu
(0<x<1) (4)
Cu2Sbでは、Li2CuSb, Li2+xCu1-x,Sb
を経て、Li3Sbに変態する。
(図2)
図1に示すように、最初のサイクル
後30%の損失を経て、優れたサ
イクル 効 率( 9 9 . 8 % )を持ち、
290mAh/gを与える。図2のように、
Li挿入/Cu押出の良好な相関
係による。
Mn2Sb
MnSb
Cu2S型
NiAs型
Li/Mn 2Sb及びLi/MnSnの電極の反応
は上記と同じ。
Mn原子の拡散が遅いため、チャ
ージに顕著なヒステレシスを生じる。
村上 陽太郎
1. はじめに
Liとの反応式と容積変化
10Li+Cu6Sn5→5Li2CuSn+Cu(1)
この反応で、Li2CuSnができる。Sn原子
の移動で50%の膨張を生じ、反応速度
が遅くなる。Li2CuSnはZnS型構造。
なfcc Sb配列が維持
され、可逆的なLi挿
入/Cu押出し機構に
おいても、Li原子の
サイズと電荷はCu原
子と両立し且補償さ
れるので、Li 2 CuSn
変態中にSnの遅い拡
散によって制約され
るCu6Sn5と比較して、
反応速度が速いため
にCu 2 Sbは優れたサ
イクル効率99.8%を持
ち、290mAh/gを与
える。
a
Cu2Sb
CuSb
b
-Cu
d
Li3Sb
=Sb
=Cu
=Li
c
Li2CuSb
+2Li
+Li
−Cu
図2 提案されているCu2SbからLi3Sbへの変態の反応
進行順序
4. カソード(正極)代替材料の研究
3)
LiCoO2正極はCoの価格が高いため代替材料が求められている。
LiNiO2は高い初期容量(200mAh/g)を持つが、化学量論的組成
の製造が難しく、Li位置に入ったNi 2+イオンはLiイオンの易動度
を低下させる。Niの一部をCo(又はMg、Ga2%以下)で置換する
と化学量論的組成が得やすくなる。その理由の解明のため、充・
放電進行中の各イオンの格子位置とその移動を、特別なセル・パ
ック中でのIn-Situ X線検査(XAS、EXAFS)によって解析する方
法を開発し、代替材料の評価に有益な情報を与えている。
5. 低コストflexible容器の開発
4)
現在金属密封容器が使われているが、種々の形状が作り易く、
電極の絶縁の必要のない例えば表4に示すような高分子多層ラミ
ネートのflexibleな容器が研究され 表4 基板の強度とコストの比較
ている。電解液、空気、湿気及び 高分子材料 降伏応力 比重3 コスト
(MPa) 〔g/cm 〕 〔$/kg〕
HFに対するバリヤー能力が必要で
PET
186
1.39
1.43
ある。特にsolventとして使用され アルミ箔
48
2.7
4.23
48
1.15
1.47
る有機炭酸塩に対して、バリヤー ナイロン6
PP
42
1.07
0.84
層の張合せに用いるadhesiveの耐 HDPE
28
0.95
1.10
LDPE
17
0.92
1.08
劣化性の向上が望まれている。
2)
現在のLixC6負極は極めて優れた材料であるが、上記のように危
険性が高いので代替材料の研究が各国で行われ、特に金属間化合
物LixM(M=Al、Si、Sn、Sb、P)が注目されている。表3はアル
ゴンヌ国立研究所で行われているCu6Sn5、InSb、Cu2Sb等について、
結晶構造、反応式と容積膨張、容量を示す。充電中に起る結晶学
的変化によって膨張し、電気化学的粒状化が生じ、容量変化、効
率低下、寿命の短縮等の劣化が起るが、Cu2Sbは優れている。図2
にCu2SbからLi3Sbへの変態における進行順序を示すように、安定
参考文献:下記のJOM, Vol.54(2002), No.3の4論文から多くを利
用した。深謝する。
1)D.abraham ; Advances in Lithium Ion Battery Research and Technology,
(p.18).
2)M. M. Thackeray, J. T. Vaughey, and L.M.L.Fransson ; Recent Developments
in Anode Materials for Li Batteries,(p.20).
3)J. Mcbreen and M. Balasubramanian ; Rechargeable Li-Ion Battery
Cathodes : In-Situ XAS,(p.25).
4)A.N.Jansen et al. ; Low-cost, Flexible Battery Packaging materials,
(p.29).