第一号(平成24年3月30日発行)

第1号 お茶の水女子大学被服学関連学科同窓会会報 2012(平成 24)年 3月30日 発行
題字:有馬霞水氏(昭 33)
会長挨拶
片山倫子 (昭 39)
昨年 3 月の大震災、夏の猛暑、そして暮れ以降の寒波と、このところ自然の厳しさを
実感し、安全・安心なくらしについて考えさせられる事が多くなりました。皆様はいか
がお過ごしでしょうか?
平成 22 年 6 月 6 日 ( 日 ) に、昭和 25 年度女高師卒業生から新卒業生に至るまでの 60 年間の卒業生 160 名が母校
の徽音堂に全国から参集し設立総会をもち、お茶の水女子大学被服学関連学科同窓会「すおうの会」が発足してか
ら早くも一年半が経過しました。この間、会の運営方法や事業計画等を役員で検討してきました。昨年 11 月 20 日
( 日 ) には第 1 回研修会を開催し、引き続き名簿の発行、会報の発行等を進めてきました。会の運営等につきまして
忌憚のないご意見をお寄せください。
皆様のご協力によって「すおうの会」が力強く発展していきますよう願っています。
すおうの会 設立総会報告
お茶の水女子大学被服学関連学科同窓会
「すおうの会」
4.予算案 亀井祐子 ( 昭 44)
すおうの会 平成 22 ・ 23 年度予算
設立総会および記念講演会は、平成 22 年 6 月 6 日、お
費目
平成22年度 平成23年度
前年度繰越 *1
1,704,704
814,704
事業費(HP、名簿)
500,000
100,000
総会・講演会費
100,000
0
印刷費
20,000
20,000
通信・運搬費
70,000
70,000
会議費
20,000
20,000
支出
ホームページ維持管理費
50,000
50,000
人件費(アルバイト代)
10,000
10,000
事務費
20,000
10,000
予備費
100,000
100,000
活動積立金
814,704
434,704
計
1,704,704
814,704
茶の水女子大学徽音堂にて、
下記の通り開催されました。
収入
設立総会次第
■司会進行 渡邊彩子 ( 昭 40)
■開会の言葉 櫻井純子 ( 昭 33)
■実行委員長挨拶と「すおうの会」
設立経過報告 高部啓子 ( 昭 40)
■議事 議長 田中俊子 ( 昭 39)
下記1 ~ 4の議案が提案され承認されました。
1.会則案 片山倫子 ( 昭 39)
2.役員案 高部啓子 ( 昭 40)
■新会長挨拶 片山倫子 ( 昭 39)
3.事業案 大村知子 ( 昭 41)
■閉会のことば 徳井淑子 ( 昭 47)
「平成 22 年度事業計画」
(1) 総会の開催 (2) ホームページの開設と維持管
理 (3) 会員名簿の作成 (4) 会報の発行 (5) その他
「平成 23 年度事業計画」
(1) ホームページの維持管理 (2) 講演会・見学会
等 (3) 会報の発行 (4) その他
総会後の懇親会風景
1
( 敬称略)
「運営」
お茶の水女子大学被服学関連学科同窓会
1 役員会は会長が招集し、事業計画、予算、その他会の運
「すおうの会」 会則
「総則」
営に必要な事項を審議する。監事は役員会に出席して意
1 本会は会員相互の親睦をはかり、情報の収集・交換を通
見を述べることができる。但し、決議には加わらない。
2 総会は通常、2年に1 回開催し、役員の承認および本会の
して会員の生活及び社会活動の質的向上に寄与すること
活動全般について報告、審議、決定を行う。ただし、
1年
を目的とする。
経過時点で活動全般について会員に報告する。
2 本会はお茶の水女子大学被服学関連学科同窓会「すおう
3 本会の運営経費は会費、寄付金、その他による。
の会」と称する。
3 本会の事務局は当分の間、お茶の水女子大学生活科学部
「会費」
1 会計年度は4月1日から3月31日までとする。ただし、初
人間生活学科服飾史研究室内におく。
4 本会は前記の目的を達成するため次の活動を行う。
年度に限り、平成22年6月6日から平成23年3月31日とす
①総会の開催 ②会員名簿の管理 ③会報の発行 る。
2 会費は当分の間、年間 1,000 円とする。但し、徴収方法
④研究集会、講演会、その他の集会 ⑤その他必要な活動
は 2 年ごとに 2,000 円を納入とする。
「組織」
1 本会は、東京女子高等師範学校家政科被服専修、お茶の
「会則の変更」
この会則の変更は役員会および総会において、おのおの出
水女子大学家政学部被服学科および大学院家政学研究科
席者の 3 分の 2 以上の議決を経なければならない。
被服学専攻、生活科学部生活環境学科生活工学講座、人間・
環境科学科、人間生活学科生活文化学講座、大学院人間
「附則」
文化研究科、大学院人間文化創成科学研究科の被服学関
平成 22・23 年度役員
連の卒業生及び修了生で、所定の入会手続を経た者をもっ
会長 片山倫子 ( 昭 39)
て組織する。
副会長 高部啓子 ( 昭 40)・亀井佑子 ( 昭 44)
2 本会を運営するために、次の役員をおき、役員会を組織
徳井淑子 ( 昭 47)
する。
幹事 櫻井純子 ( 昭 33)・松山容子 ( 昭 33)
①会長1名 ②副会長3名 ③運営委員 20 名程度 ( 卒業
運営委員(○印はチーフ)
回5回ごとに、原則1名を含む) ④ 監事2名
[総務] ○片山倫子 高部啓子 亀井佑子 林 隆子 (昭 35)
渡邊彩子 (昭 40)
[庶務] ○徳井淑子 井上和子 (昭 48) 葭内ありさ (平 9)
新實五穂 (平 12) 田端香理 (平 20)
[HP] ○高部啓子 田中俊子 (昭 39) 薩本弥生 (昭 62) 木宮瑛子 (平 18) [会計] ○亀井佑子 植竹桃子 (昭 56) 山内見和 (昭 63)
[編集] ○渡邊彩子 柳原美紗子 (昭 43) 沢森真弓 (昭 44) 梯ともみ (平 4) 木宮瑛子
[企画] ○大村知子 (昭 41) 浅川邦子 (昭 41) 今成 昭 (昭 43) 井上亮子 (昭 61) 田端香里
[名簿] ○森田みゆき (昭 51) 堤 仁美 (平 10) 成田千
恵 (平 8) 新實五穂
3 会長、副会長、運営委員および監事は会員の互選によっ
て選出し、総会の承認を受けて決定する。
4 会長は本会を代表し、会務を統括する。
5 副会長は会長を補佐し、必要に応じて会長の職務を代行
する。
6 運営委員は、それぞれ総務、庶務、会計、編集、企画等
を担当しその責務を果す。
7 監事は会の運営および会計について監査を行う。
8 本会役員の任期は2年とする。再任は妨げない。
9 本会は支部を持つことができる。
記念講演
キュレーターとして考えること
京都服飾文化研究財団 理事 チーフ・キュレーター 深井晃子氏(昭 41)
キュレーターは展覧会を企画・立案し、
私が大学を出た頃はキュレーターになるという選択肢はあ
それを具体化する仕事です。私は西洋の
り得ませんでした。
近・現代の服飾、ファッションを専門と
大学を終えて渡仏し、パリ第4大学、ソルボンヌの大学
するキュレーターとして活動してきまし
院で 19 世紀フランス美術を学びました。フランスで研究の方法
たが、今日はこの視点から、服飾につい
論を学び、言葉と論述の方法に対する感性の重要性に気づかされ
て考えることをお話しいたします。
たことが、現在の仕事の方向を決めたと思います。またジャポニ
<方向を決めたパリ>
スムという重要な研究テーマに出会ったのもこの時でした。夏休
1970年代末頃まで、日本ではキュレーターという言葉は
みには車でパリを基点にイタリアの端からシシリー島、チュニジ
ほとんど知られていませんでした。キュレーターは皆様よ
ア、アルジェリア、モロッコ、そしてポルトガルから帰るなどと
くご存知の学芸員に近いのですが、それよりも責任がずっ
いった大旅行を何回もしました、自分自身の目で見て感じる旅は、
と重い立場にある仕事とお考えください。いずれにせよ、 その後の大きな財産になったと思います。パリでは美術展をたく
2
さん見まして、ファッションが取り上げられていることに大変興
優れたデザイナーを輩出するようになり、日本のファッションは、
味を持ちました。服飾の流行、ファッションが時代という縦軸と、 世界に向けて発信性を持つようになっていました。欧米の雑誌や
社会という横軸の交差するところで創造される人間の重要な文化
新聞はもちろん、アート・キュレーターや研究者たちも日本ファッ
的な営みであるという、ごく当たり前のことにとてもショックを
ションの独創的な作品群に強い関心を示しています。欧米の服飾
受け、改めて服飾研究をしたいと思うようになりました。一次資
史は日本ファッションに言及しており、日本でも美術の教科書に
料を体系的に収集、研究し、その成果を展覧会という形態で世に
取り上げられています。こうした日本発の現代ファッションを紹
問うアプローチ、すなわちキュレーターという仕事に、私はパリ
介する「Future Beauty:日本ファッションの未来性」展を、2010
で目覚めました。
-2011年、ロンドンとミュンヘンで開催します。
(2012年 7月
28日―10月8日、東京都現代美術館で開催)
<京都服飾文化研究財団に参画して>
<お茶大、被服学科が、今の仕事に役立ったか>
帰国後、私のこうした思いと一致する京都服飾文化研究財団
が 1978年に設立されていることを知り、その翌年、この財団に
今回、改めてお茶大そして被服学科が、今の仕事にどう関わっ
参画しました。ここは展示施設を持たない美術館で、常設展示が
たのかを考えてみました。沢山あるように思う一方、ほとんどな
ないことを除けば、美術館とほぼ同じような仕事をしています。 い気もします。というのは、私は、大学は基礎的な思考方法、研
つまり収蔵品を収集し、それを保存・保管し、研究をし、成果を
究方法を徹底的に鍛えるところだと思うのです。それを、お茶大
公開します。展覧会は5年に1度、企画し実施しています。
で鍛えられたかどうか疑問に思うからです。
ところで私がこの仕事を始めた当時、国公立美術館でファッ
被服学科は、残念ながら学問の派生的な領域にあります。よ
ション展を開催することなど考えられないことでした。19世紀
く言えば応用学であり、思考方法、研究方法は、自由。というか
までアートは絵画・彫刻が上位、服飾など生活に関わる応用芸術
他の学問領域の研究方法を借りています。もちろんこれは私の大
は下位に差別化されていました。日本でも明治初期に、
西周がアー
学時代のことですが。
トを芸術という日本語に翻訳して以来ずっと、この考え方が続い
しかし 大学では、よい先生方と巡り会いました。被服という
ていました。しかし、20世紀に入るとアートは大きく変わって
<モノ>ではなく、それが関わる学際的な領域への視点、服は哲
いきます。画家のグスタフ・クリムトは服をデザインしています
学へと向かうという思考、独自の一次資料の重要性などを教わり
し、イタリア未来派宣言やロシア・アバンギャルドの活動にも服
ました。
装に関する視点が見られます。もちろんファッションの本拠地、
パリでは、ポール・ポワレやココ・シャネル、ダリと協働したスキャ
<すおうの会>
パレリらも、アートと強く関わりました。20世紀半ば以降、アー
今回の「すおうの会」の設立には、
「すおうの会」そして「被服
トがその境界線を広げる中、イブ・サンローランはポップアート・
――着ることを研究する学科」をより活性化するというミッショ
ドレスを発表します。 ンもあると思います。それには、フランス中世史家木村尚三郎先
この流れは 1970年代になってようやく日本にも訪れます。そ
生に倣って言えば、若者、よそ者、女性の興味を引くことが必要
れまでは「ファッションはアートではない」と言われ続け、美術
です。お茶大は女子大ですが、
本当に現代女性の興味を引くのか?
館の門は閉ざされていました。しかし1975年、京都国立近代美
次世代に引き継ぐ若者の興味を引くのか。そしてよそ者=外国人
術館が初めてファッションをアートとして受け入れ、
「現代衣裳
の興味をひくのでしょうか?
の源流」展が開催されました。これを契機に京都服飾文化研究財
着ることは世界に通じています。家政学が存在する国は他に
団が設立され、私は1980年に同美術館で行われた「浪漫衣装」展
もあります。多くの国で、芸術・デザイン学部に衣服デザインは
に参加しました。その後、1989年に「華麗な革命」展(京都国立
あります。しかし被服、あるいは名称は別として着ることを研究
美術館)にキュレーターとして携わり、これはパリ装飾芸術美術
する学科の存在は、アジアは別としてヨーロッパには見当たりま
館からも招聘されました。
「ファッションは世界に向けて発信し
せん。被服学が独立して存在していたことこそ、世界に誇る素晴
なければ意味がない」と考えていた私にとって、このことは非常
らしい着る文化を育ててきた日本文化の重要な特質です。こうし
に意義深い出来事でした。1994年には「モードのジャポニスム」
た伝統を継承する現在の学科も、この点を再認識し、訴求しなが
展を開催し、これは足かけ9年にわたり、パリやニューヨークな
ら国際的、学際的視野を持つ学問となること、それはお茶大を特
ど世界各地で少しずつ形を変えて行われました。1999年の「身
色付ける大きな武器となりうるはずです。
体の夢」展は東京都現代美術館でも開催され、その後の東京の国
最後に、すおうの会を設立された方々へ、さらなる発展を祈念し、
公立美術館でのファッション展開催の突破口となりました。
皆様とともに実りある活動をしていきたいと思います。 この間、ファッションでは後進国だった日本は、20世紀後半、
3
― 文責 柳原美紗子 ( 昭 43)
第1回研修会 実施報告
母校近況
折形講座を、2011(平成 23)年 11 月 20 日、お茶の
改革と回帰
水女子大学本館 124 室にて実施いたしました。講師は、
有馬霞水氏 ( 昭 33) でした。
お茶の水女子大学生活科学部教授 徳井淑子 ( 昭 47)
欧米に比べれば改革のスピードの遅い日本ですが、こ
「江戸女性の教養―折形―」に触れて
の 20 年ほどのお茶の水女子大学は変革の連続でありま
紅葉の始まった暖かい晩秋の日
した。平成 5 年に家政学部が生活科学部として改組され、
曜日、母校の講義室に、久しぶり
被服学科が生活環境学科・生活工学講座と人間生活学科・
に同窓生にお会いする嬉しさと、
生活文化学講座にわかれた後、まもなく大学院の改組が
折形を学ぶ楽しみに、学生の時の
始まり、全学一つの人間文化研究科となりました。合理
ように目を輝かせた皆様方がお集
化されたようにみえましたが、この改革によって学部か
まりになりました。
有馬霞水氏
ら大学院へのリンクが複雑なものとなり、これは解消さ
講師の有馬霞水先生も「すおう
れる方向で修正されました。さらに人間文化創成科学研
の会」のためにお忙しい中、用紙の調達やアシスタント
究科と改称、教員の所属は学部から大学院となりました。
の手配ときめ細かくご準備いただき、重い荷物をお持ち
その後の国立大学法人化には、周知の通り大きな負担を
になっておいで下さいました。
強いられましたが、小規模の本学は特にその影響を強く
初めに「江戸女性の教養―折形―」の講義を伺いまし
受けたように思います。
た。室町期に確立した武家の礼法としての折形は、江戸
今年は学部教育の改革として新たに複数プログラム
期・明治期には一般に伝わり、金品や草花など、それぞ
選択履修制度がスタートしました。学生は学科に入学し
れの品物にあった約束ごとに従い、美しい折り方でラッ
ますが、4 年間の勉学の計画は自ら自由に組み立てられ
ピングする包みの文化として、特に女性の教養として広
るように、異なった学科のプログラムも選ぶことができ
がったとのことです。
ます。たとえば人間・環境科学科に入学した学生は、従
有馬先生は「女重宝記」等のご研究を通し、江戸女性
来通り学科のプログラム一つをきわめてもよいのです
のたしなみとしての折形を「江戸折形」と命名し、その
が、副専攻として生活文化学プログラムを履修すること
再現と応用にご尽力なさったそうです。その微妙でゆか
も可能です。そのように選択するなら文理融合の旧被服
しい表現は、日本人の心として伝えていきたいと痛感し
学科に回帰したようにもみえます。
ました。
次に、その中から被服にちなんだ「染めこそで包み」
事務局からのご案内
とお正月にちなんだ「折り出し鶴付お祝い包み」の実習
(1) 2010 年 3 月 に 1,582名 の 卒 業 生 に 総 会 等 の ご 案 内 と
に入りました。有馬先生とアシスタントの方から手とり
ともに入会を呼びかけました。2012 年 3 月現在、会員数は
足とりのご指導をいただき、学ぶ喜びと完成の成就感を
406 名です。寄付金は合計 1,019 口、2,038,000 円(非会員
51 名、167 口を含む)となりました。心からの御礼とご報
たっぷり味わい、学生時代に返ったようでした。先生の
告を申しあげます。
見本よりちょっぴり不出来ではありましたが満足し、お
(2) すおうの会のホームページが立ち上がりました。URL
互いに自分の作品を見せ合い、皆様にこにこ顔でした。
は http://suounokai.jp/ です。会へのご質問、ご連絡等も
「web に関するお問い合わせ欄」から可能です。
その後の実習の感想と自己の近況報告に懐かしさ、嬉
(3) 平成 24・25 年度総会、講演会、懇親会をお茶の水女子
しさが広がり、時の経つのを忘れるほどでした。出来上
大学ホームカミングデー時に開催いたします。
がった作品を大事そうに抱えて、皆様夕方の校舎を後に
日 時:平成 24 年 5 月 26 日 ( 土 ) 10:30 ~ 15 :30
場 所:お茶の水女子大学本館 306 室
帰路に着かれました。 ― 文責 今成 昭 ( 昭 43)
10:30 ~ 12:00 総会・講演会(松林淑子氏)
13:30 ~ 15:30 懇親会 茗渓会館 ( 会費:5,000 円 )
発行所 〒112‐8610 東京都文京区大塚 2 - 1 - 1
お茶の水女子大学生活科学部人間生活学科
服飾史 ( 徳井 ) 研究室内
すおうの会 事務局
完成作品
会場の様子
編集担当:渡邊彩子 柳原美紗子 沢森真弓 梯ともみ 木宮瑛子
4