一般演題抄録 - 全日本鍼灸学会

一般演題抄録
一
般
口
演
ポ ス タ ー 発 表
本文末のコードの意味
例:2C9_1(第2日 C会場 9:00開始のセッション、第1番目の発表演題)
O-1
筋硬結の検討
−筋硬結形成のメカニズムについての1考察−
森ノ宮医療学園専門学校附属診療所
○湯谷 達、竹中浩司、佐藤正人
森ノ宮医療学園専門学校
尾崎朋文
川村病院神経内科
米山 榮
【緒言】我々は、第46回、47回の本学会に於いて
筋硬結の理学的所見、画像所見、組織所見の検討
を行ってきた。その結果、筋硬結には好発部位が
存在し、同部位の筋組織に筋膜肥厚や脂肪化が存
在している可能性を報告した。今回、更に症例を
重ね、筋硬結形成のメカニズムについて考察を試
みる。
【対象】川村病院における病理解剖例18例(男性
11例、女性7例、平均年齢78.9歳)を対象に、筋硬
結好発部位(第3腰椎高位)の脊柱起立筋組織を
検討した。
【方法】対象の筋組織を約1.5∼2cmの立方体で摘
出し、顕微鏡標本を作製した。標本の染色にはヘ
マトキシリン・エオジン染色(一般染色)、アザ
ン染色(線維組織を識別できる特殊染色)を用
い、光学顕微鏡による検討を行った。
【結果】主な組織変化として、大小不同・筋萎縮
12例(66.6%)、筋膜肥厚8例(44.4%)、脂肪化4
例(22.2%)を認めた。その他の組織変性所見も
散見された。また、筋膜肥厚と筋萎縮の合併は多
く認められたが、脂肪化は他の組織変化との関連
性が低い結果となった。さらに筋膜肥厚所見につ
いては、微細な組織変化から高度な組織変化ま
で、症例により様々なパターンが認められた。
【考察】今回の検討結果と過去の検討結果をふま
え、硬結形成のメカニズムを考察すると以下にま
とめられる。
1)鍼灸臨床で実際に臨床所見として触れる筋硬
結には、主に脂肪化のタイプと線維化のタイプが
存在する可能性がある。
2)筋硬結形成のメカニズムに、筋病理学的に筋
膜(特に筋内膜)の肥厚が一因になっている可能
性が考えられる。
2C9_1
キーワード:筋硬結、メカニズム、筋病理学
O-2
一噫穴刺鍼の安全性について
の検討
森ノ宮医療学園専門学校
○尾崎朋文、竹中浩司、湯谷 達
坂本豊次、森 俊豪
川村病院、小山田記念温泉病院神経内科
米山 榮
徳島大学歯学部口腔解剖学第一講座
北村清一郎
【緒言】 外後頭隆起と肩峰の中間に取穴する一噫
穴は、肩こりや寝違いの際に圧痛が出現しやす
く、治療点としての頻度の高い経穴である。しか
し、深部に肺尖が存在することから気胸の可能性
のある部位でもある。今回、遺体解剖と生体での
臨床所見とX線像により、一噫穴への刺鍼の安全
性を検討した。
【対象と方法】①男性1遺体の右側一噫穴へ前額面
上で体表に垂直に鍼先を骨に当たるまで刺入し、
刺入鍼と深部構造との関係を検討した。②①で気
胸への安全性が確保できることを確認した上で生
体17名(男11名、女6名)を対象に、両側一噫穴へ
40mm16号または50mm20号を体表に垂直に、骨様
構造に当たるまで刺入し、X線上で刺入鍼と肺尖
の関係、鍼先の達する骨の高さ、および体表−椎
骨間距離を算出した。
【結果】 ①遺体で刺入した鍼は、僧帽筋前縁・肩
甲挙筋・頭板状筋・多裂筋を貫通後、第7頸椎椎弓
に位置し、肺尖の頭後方に位置した。②生体17名
の体型のBMI分類では、肥満型が男性5名と女性1
名、標準型が男性4名と女性3名、やせ型が男性2名
と女性2名であった。鍼先の骨の高さは、34例中、
第7頸椎が27例、第6頸椎が5例、第1胸椎が2例で
あった。体表−椎骨間距離の平均値は、男性では
肥満型、標準型、やせ型で各々39±8mm、
29mm、38.7±2mm、女性では各々29.3±1mm、
28.9±3mm、26.2±2mmであった。体表-椎骨間距
離の最小値は、男性では肥満型、標準型、やせ型
で各々25mm、28.3mm、35.7mm、女性では各々
28.6mm、24.5mm、24.5mmであった。刺鍼後の胸
痛や呼吸困難などの所見は全例で認められなかっ
た。
【考察】 一噫穴の前額面上での体表に対する垂直
刺鍼は、第7頸椎を中心とした椎骨に達して、肺尖
の頭後方に位置し、外傷性気胸を起こす可能性は
無いと考えられる。刺入方向をさらに腹側方向に
すれば、鍼先が肺尖に近づくため気胸の可能性が
高まると考えらる。
2C9_2
キーワード:一噫穴、安全性、刺鍼、
外傷性気胸、局所解剖学
O-3
振動誘発指屈曲反射に及ぼす
経皮的通電刺激の影響
O-4
パーキンソン病モデルマウス
に対する頭皮鍼の効果
−上腕外側橈骨神経支配領域での比較−
関西鍼灸短期大学
日本鍼灸理療専門学校1
(財)東洋医学研究所2
昭和大学医学部第二生理学教室3 ○矢嶌裕義1,2
上田浩1、片岡静子1、宇南山伸1,2
高倉伸有1,2,3、渋谷まさと3、本間生夫2,3
【目的】 指尖掌側に振動刺激を与えると振動誘発
指屈曲反射(VFR)が誘発される。この反射は合
谷(橈骨神経知覚固有野)への鍼刺激、侵害性経
皮通電刺激(Interval 1sec、Duration 1ms)により
抑制され、非侵害性の経皮通電刺激では抑制され
なかった。これは、VFRの抑制には侵害性刺激が
必要である事を示唆する。そこで今回、侵害性、
非侵害性の経皮的通電刺激を上腕外側に与え、侵
害刺激とVFR抑制についてさらに検討した。
【方法】 被験者は実験の主旨を説明しインフォ−
ムドコンセントを得た、健康成人8名とした。被験
者の中指指尖掌側に周波数60Hz、振幅1mmの振動
刺激を与えVFRを誘発した。VFRの指標は振動刺
激中に出現した中指の最大指屈曲力とした。中指
の屈曲力は振動端子に取り付けた荷重変換器によ
り検出し増幅器を介してペンレコ−ダにて記録し
た。経皮通電刺激はSSP電極を用いInterval 1sec、
Duration 1msの単一矩形波を上腕外側部の橈骨神経
支配領域に5分間与えた。刺激電圧は、0Vを対照
群(Cont)、電気刺激を感じ始める値をTouch
Threshold群(TT)、橈骨神経支配領域の筋が収縮
し始める値をMotor Threshold群(MT)、痛みを感
じ始める値をPain Threshold群(PT)とし、それぞ
れの刺激強度について刺激前、刺激中、刺激後に
VFRの測定を行った。統計解析は分散分析、
Scheffeの多群比較を用いて行った。
【結果及び考察】 通電刺激中のPT群、MT群の
VFRはCont群に対し有意(P<0.01)に減少した。
通電刺激中のTT群のVFRはCont群に対し有意な減
少は認められなかった。橈骨神経領域の触覚レベ
ルの皮膚刺激ではVFRは抑制されないと考えられ
る。MT群の有意な減少は相反性抑制によるものと
考えられる。刺激中のMT群とPT群のVFRには有
意差は認められなかったもののPT群の減少量は
MT群より約20%大きく、VFRの抑制には侵害性入
力が重要であること示唆する。しかし、PT群では
刺激強度に伴って相反性抑制が強くなっている可
能性があり、これを除外できるパラメ−タ、ある
いは刺激部位で検討する必要があると考える。
2C9_3
キーワード:振動誘発指屈曲反射、侵害刺激、
非侵害刺激、経皮的通電、橈骨神経支配領域
○赤川淳一、中村征史
若山育郎、八瀬善郎
【目的】 パーキンソン病の動物モデルである1methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)
処理マウスを用い、頭皮鍼の効果を臨床的に評価
した。
【対象と方法】C57BL/6系マウスを使用し、MPTP
群5頭、MPTP+鍼群5頭、対照群5頭に分けた。
MPTP群には生理食塩水に溶解したMPTPを1回
30mg/kgで1日2回、5日間皮下注射した。MPTP+鍼
群には上記と同様の注射終了翌日からステンレス
3番鍼で、隔日2週間、計7回頭皮上の舞踏振戦抑
制区(両耳を結ぶ線の前5mm、矢状線の横1mm)
左右2ヶ所に鍼先を耳側に向けて刺鍼し、2.5Hzで5
分間通電した。対照群は同量の生理食塩水を注射
し、その後無処置とした。パーキンソン症状の評
価は臨床的観察の他、MPTP投与終了後7日目、14
日目にPole test、Traction testを行った。
【結果】MPTP群では、Pole test、Traction test各々
において、動作が鈍く感じられ、そのまま静止す
ることもあった。MPTP+鍼群では臨床観察ではや
や改善傾向を示したが、はっきりとした変化が見
られないことも多かった。Pole testでは反転時間は
対照群、MPTP群、MPTP+鍼群ともに有意な差は
見られなかったが、降下時間ではMPTP群は対照
群に比べ有意に延長し、MPTP+鍼群ではMPTP群
に比べ短縮傾向を示した。Traction testでは、
MPTP群は対照群に比べスコアが有意に低く、
MPTP+鍼群はMPTP群に比べスコアが有意に改善
した。
【考察】 頭 皮 鍼 治 療 を 施 行 し た マ ウ ス で は 、
MPTP群に比べ臨床的観察において顕著な改善は
認められなかったが、今回施行した臨床的評価法
では、改善傾向を示した。これは、MPTPにより
誘発された無動や姿勢反射障害が、頭皮鍼治療に
より改善した可能性が考えられた。
2C9_4
キーワード:MPTP、パーキンソン病、
頭皮鍼、動物モデル
O-5
微細構造にみる鍼灸刺激
関西鍼灸短期大学
○木村通郎、東家一雄、五十嵐純
戸村多郎、武田大輔、松岡裕一
O-6
胸腔鏡下胸部交感神経節切除
術における各種測定
−皮膚通電電流量・良導絡・皮膚温・
サーモグラフィー−
関西鍼灸短期大学 ○吉備 登、王 財源、楳田高士、北村 智
大阪医科大学麻酔科ペインクリニック 平井清子、久下浩史、河内 明、森川和宥
田中源重
【目的】鍼灸刺激は生体局所(経穴)に鍼や灸を
用い伝承的手法に従い物理的侵害刺激を加え、経
絡を介して生体応答を惹起する特異な生体刺激と
して東西両医学を通して受け入れられている。今
回は、それら「鍼刺激」「灸刺激」「灸頭鍼刺
激」時に惹起される生体の組織破壊(組織損傷)
について、微細形態レベル(200∼10,000倍)に検
索、刺激法の違いと惹起される生体反応について
考察を試み若干の知見を得たので報告する。
【材料と方法】材料:①使用済み鍼(本学鍼灸施
術所にて使用したディスポ−ザブル鍼のうち鍼体
に光学顕微鏡下、付着物をみるもの)。②ヘアレ
スラット皮膚組織(鍼体が組織中に入ったままの
状態のもの、灸頭鍼が組織中に入ったままのも
の、施灸直後の皮膚そのもの)。
透過電顕標本:①については付着物確認後、直
ちに鍼体ごと冷1.5%グルタ−ルアルデヒドにて30
分固定し、実体顕微鏡下付着物を鍼体から剥離
し、1%OsO 4 液にて後固定、型の如く電顕標本を
作製し観察を行った。②については、それら動物
をエ−テル深麻酔下、開胸、左心室より1.5%グル
タ−ルアルデヒド固定液を灌流し施鍼/施灸局所
皮膚組織を摘出、①に準じ電顕標本を作製し観察
した。
走査電顕標本:①の使用済み鍼は、そのまま冷
グルタ−ルアルデヒド固定後、脱水、型の如く走
査電顕標本を作製、観察した。②の試料は透過電
顕試料作製に準じ、組織を摘出、脱水過程の100%
アルコ−ル浸漬中、液体窒素にて凍結、鍼体に
沿って割断、型の如く走査電顕標本を作製、観察
した。
【結果と考察】「鍼刺激」は肉眼的には殆ど出血
は見ないが、微細形態レベルは真皮結合組織中に
微量の赤血球の遊走や膠原線維の断裂などがみら
れた。施鍼時回旋など強刺激を施した抜鍼々体で
は線維芽細胞/間葉系細胞/脂肪細胞など結合組
織成分の付着がみられ、刺激の程度に相応した微
少組織破壊がみられた。「灸刺激」では施灸回数
に相応し表皮真皮に血球成分の浸潤/肥満細胞の
脱顆粒など熱傷とは異なる炎症像がみられた。
「灸頭鍼」は当初、前二者の中間の像を予想した
が、血球成分の組織浸潤など殆どみられず「鍼刺
激」像に近い像を呈した。
【結語】「鍼刺激」「灸刺激」「灸頭鍼刺激」時
の皮膚局所組織反応について微細構造的に検索し
鍼灸刺激の生体応答について考察した。 2C9_5
【目的】 ノイロメーターで計測した皮膚通電電流
量が交感神経の機能に応じて変動するかを観察す
るために、胸腔鏡下胸部交感神経節切除術におけ
る標記各種測定をする機会を得たので報告する。
【方法】 患者は手掌多汗症を主訴とする20歳の男
性で、平成11年5月12日に大阪医科大学麻酔科に
て、Th 2 、Th 3 胸部交感神経節切除術における左右
の顔面部(四白穴)、手掌部(労宮穴)、手背部
(陽谿穴)の6部位の皮膚通電電流量の変化を3
分毎に連続自動測定した。測定は手術前日、手術
後1日、13日後、48日後にもおこなった。
また、手術前後の顔面部、手背部、足背部のサ
ーモグラムと良導絡代表測定点の計測および手術
中の手掌の皮膚表面温と深部温も測定した。
【結果】 術前の測定では6部位とも電流量が多い
が、術中は少なくなり、胸部交感神経節の切除後
は術側の手掌部のみ極端に減少し、術側の手掌皮
膚表面・深部の温度は上昇した。術後1日では6
部位とも電流量は少なく左右の手掌部はほとんど0
となった。その後、顔面部、手背部の電流量は多
少増減したが、手掌部は減少し続けた。良導絡測
定では手掌部(H1.H2.H3)の電流量は低下を示
し、連続自動測定の場合とは測定部位が同一では
ないが手掌部の電流量が低下するよく似た傾向を
示した。サーモグラムでは顔面部の変化は少な
く、手足では術後に温度が上昇した。
【考察】 胸部交感神経節切除後に手掌部の電流量
が減少し、手掌部の皮膚表面・深部温が上昇する
ことは、交感神経の機能との関連を示唆する。
【結語】 胸部交感神経節切除術における各種の測
定を行った。
1)切除後は術側の手掌の表面・深部温は上昇
し、術側手掌部の皮膚通電電流量は極端に減少し
た。
2)その後は顔面部、手背部の電流量は多少増減
したが、手掌部では減少し続けた。
2C10_1
キーワード:鍼刺激、灸刺激、灸頭鍼刺激、
組織反応、微細形態
キーワード:手掌多汗症、皮膚通電電流量、
連続測定、胸部交感神経節切除、良導絡
O-7
鍼通電頻度の違いおよび置鍼
による精神性発汗への影響
−足底部発汗による検討−
筑波大学附属盲学校
愛知医科大学第二生理
○緒方昭広
菅屋潤壹
O-8
麻酔ラットの十二指腸運動に
及ぼす灸刺激の効果
東京都立文京盲学校理療科
○田中秀樹
筑波技術短期大学鍼灸学科
大沢秀雄、野口栄太郎、佐藤優子
【目的】我々は、1997年の本学会で手掌部発汗を
指標に左下腿に対し低頻度(5Hz)および高頻度
(100Hz)の周波数による鍼通電および置鍼の影
響を報告し、低頻度の鍼通電刺激による発汗量の
減少は情動成分の抑制に基づくものと結論した。
今回、同様のことが足底部発汗にも再現される
かどうかを検討した。
【対象・方法】健常者17例(男16例、女1例)を対
象とした。発汗量の測定はKenz-Perspiro OSS 100
(スズケン社製)を用い、プローブを母趾(右ま
たは左)に装着した。血圧・心拍数は左上腕で、
GSRは右手掌部で測定した。鍼刺入部位は左側の
t門穴と合谷穴とした。鍼通電頻度は前回同様
5Hz(5Hz群)および100Hz(100Hz群)を用い
た。さらに置鍼(置鍼群)についても検討した。
精神性発汗誘発に用いた暗算負荷はかけ算(2桁×
1桁)、引き算(1000-17)、逆唱(5桁∼6桁)の
組合せを計6回実施した。統計処理は分散分析を
行った。
【結果】1.5Hz群の鍼通電20分および置鍼群の置
鍼20分の各時点で暗算負荷に対する精神性発汗の
減少が観察された。100Hz群では発汗減少はみら
れなかった。2.発汗量の時間的推移と発汗波
(Expulsion)の推移とが類似したパターンを示し
た。3.GSR、血圧、心拍数については、変化を認
めなかった。
【結論】左前腕の5Hzの鍼通電および置鍼は足底
部発汗を減少させたことにより、何れも情動成分
の抑制を引き起こしたと考えられる。よって手掌
部発汗と同様の現象が観察された。
2C10_2
【目的】「胃六灸」などで消化器系の治療で灸療
が応用される機会は多い。これまで施灸による生
体反応の機序については、液性因子を介しての報
告が多くなされてきた。今回、私達は灸の「温
熱」という体性感覚刺激により誘発される、自律
神経遠心路を介する消化管の反射性運動を検討す
る目的で、麻酔ラットを用い灸刺激による十二指
腸運動への反応の観察を行った。
【方法】鈴木医療器製艾燃焼温度測定器により艾
の燃焼温度曲線をもとめ、実験はウレタン麻酔、
人工呼吸下のWistar系ラット(6匹)を用いて、呼
吸及び体温を一定の条件下で行った。十二指腸内
に加温生食水の入ったバルーンカテーテルを挿入
し、圧トランスデューサーによる内圧の変化から
十二指腸運動を観察した。灸刺激は釜屋もぐさ本
舗製「カマヤミニ(弱)」1壮を、後肢足蹠と腹
部にそれぞれ施灸するとともに、体性感覚刺激の
比較対照としてピンチ刺激を同部位に行った。
【結果及び考察】灸刺激のピーク温度は65.9±1.4
℃で、着火からピーク温度に至る潜時は99.1±7.4
秒であった。十二指腸運動は安静時、刺激時とも
に60回/分程度の振幅の微細な収縮を伴いながら、
1回/分程度の比較的大きな収縮を繰り返してお
り、照井らの報告と一致していた。一方収縮の大
きさでは、後肢足蹠のピンチ刺激で刺激開始直後
から、灸刺激では温度上昇とともに収縮の増大が
みられた。また腹部刺激ではピンチ、灸刺激とも
収縮の大きさの減少反応が観察された。消化管運
動の体性−自律神経反射については、佐藤、山口
らが鍼及び鍼通電刺激による胃運動への効果を報
告しており、今回の十二指腸運動についても刺激
手法が異なるもののほぼ同様の傾向が観察され
た。今回の検討の結果、施灸による体性-自律神経
反射の存在が確認された。
【結語】麻酔ラットの十二指腸運動は、後肢足蹠
の灸刺激により増大し、腹部の刺激で減少した。
2C10_3
キーワード:精神性発汗、鍼通電、置鍼、情動、
GSR
キーワード:灸刺激、温熱刺激、十二指腸運動、
体性−自律神経反射、ラット
O-9
腸管運動に対する鍼・灸刺激
の影響に関する実験的研究
O-10
体性刺激がラット胃運動に及
ぼす影響について
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
○岩 昌宏、石丸圭荘、今井賢治
明治鍼灸大学外科学教室 田村隆朗、咲田雅一
明治鍼灸大学外科学教室
○池田和久、田村隆朗、咲田雅一
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
岩 昌宏、今井賢治
【目的】腸管運動に対する鍼灸刺激の効果を明確
にする目的で、体内埋め込み型テレメトリーシス
テムによるstrain gauge force transducer法を用い、
意識下ラットの空腸運動を長期間記録し、電気刺
激、鍼通電刺激の効果について検討した。
【方法】 実験動物はWistar系ラット、雄、300g、
5匹を使用した。ラットをPentobarbitalにて麻酔
し、腹部を正中切開して開腹し、strain gauge force transducerを空腸漿膜面に縫着した。実験は
手術2週間後より開始した。電気刺激は腹部に埋
め込んだ電極より100Hz、10mAにて10分間通電し
た。一方、鍼通電刺激では、ラット後肢の前脛骨
筋部に刺鍼し、100Hz、10mAにて10分間通電し
た。
【結果】刺激前後1時間における収縮波形の面積
を求め、刺激前1時間の値を100%とした増減率を
計算し無刺激時と比較した所、後肢への鍼通電刺
激では、無刺激時の95.8±5.8%に対し111.2±
14.2%と増加がみられ、腹部への電気刺激では
123.3±19.7%とさらに有意な増加がみられた。
電気刺激による影響を記録波形からみると、腹
部刺激前には1時間に約3回の周期的なIMCが観
察されたが、通電刺激直後より持続的で不規則な
phaseⅡ様の収縮波群へと変化した。後肢への鍼通
電刺激では、腹部電気刺激時ほどの運動パターン
の変化は示さなかったものの、刺激後の1∼3時
間においてIMCの出現頻度が増加した。
刺激前後での各phaseの比率を比較すると、腹部
への電気刺激では、phaseⅠ、phaseⅢ共に減少し
たが、phaseⅡは有意に増加した。一方、後肢への
鍼通電ではphaseⅠは減少したが、phaseⅡ、phase
Ⅲは有意に増加した。
【考察】腹部への電気刺激によって収縮波がphase
Ⅱ様の運動に変化し、空腸運動が亢進したこと及
び、後肢への鍼通電刺激によってphaseⅡとphase
Ⅲが増加することによりIMC頻度が増加したこと
が示唆された。
2C10_4
【目的】 体性刺激がラット胃運動に及ぼす影響に
ついて自律神経系の関与を検討するため、薬物に
よる交感神経の遮断と、迷走神経の切断を行っ
た。また体性刺激の末梢の求心路についてカプサ
イシンを用いて検討した。
【方法】 実験はウィスター系雄性ラットを使用
し、ウレタン麻酔下にて行った。胃運動は、十二
指腸より胃の幽門部に挿入したバルーンを用いて
内圧を測定した。血圧及び心拍数は大腿動脈から
モニターし、呼吸は人工呼吸下で管理し、体温は
37.5度に保った。交感神経遮断剤にグアネチジン
を使用して、0.225mmol/kgを実験前日と当日の2
回、皮下投与した。迷走神経の切断は、食道-胃接
合部で切断した。カプサイシン処置は、実験10-14
日前に0.4mmol/kgを3回にわけて皮下投与した。体
性刺激として鍼通電刺激とピンチ刺激を行った。
鍼通電刺激は体幹部と後肢へ、刺激間隔0.5msec、
刺激強度(5mA、7mA)、刺激頻度(20Hz、
100Hz)でそれぞれ30秒間行った。ピンチ刺激は
体幹部及び後肢へ鉗子にて30秒間行った。
【結果】 無処置群では、体幹部への体性刺激によ
り胃内圧が低下し、後肢への刺激では胃内圧の増
加が得られた。また交感神経遮断群では、体幹部
への体性刺激で誘発された胃内圧の低下が抑制さ
れ、さらに後肢刺激で誘発された胃内圧の増加も
抑制される傾向がみられた。迷走神経切断群で
は、体幹部刺激による胃内圧の低下には影響がな
かったが、後肢刺激による胃内圧の増加は消失し
た。カプサイシン処置群では、体幹部刺激による
胃内圧の低下が抑制され、同様に後肢への刺激に
よる内圧の増加も抑制された。
【考察】 以上の結果より、体幹部刺激による胃運
動の抑制には交感神経が、後肢刺激による胃運動
の上昇には迷走神経が関与し、さらにその求心性
の入力にはカプサイシン感受性の神経線維の関与
が示唆された。
2C10_5
キーワード:鍼通電刺激、電気刺激、ラット、
strain gauge、テレメトリー
キーワード:交感神経遮断、迷走神経切断、
カプサイシン、胃運動、体性刺激
O-11
透熱灸による皮膚血流量の変化
−壮数の違いによる近傍部と遠位部の変化−
O-12
鍼刺激がラット各種臓器血流
に与える影響
東京衛生学園専門学校東洋医療系学科 ○武田伸一、勝木裕久、篠原かおり
佐藤寛美、村上 裕、菅原之人
明治鍼灸大学生理学教室
○鶴 浩幸、岡田 薫、川喜田健司
明治鍼灸大学化学教室
小林和子
【目的】 古来より壮数の目安については様々な記
載があり、施灸の際の刺激量決定において重要な
要素の一つとされる。また灸刺激後に出現する発
赤は皮膚の侵害受容器の興奮と、これに伴う軸索
反射性血管拡張の関与が示唆されており、鍼灸刺
激の入力系と生体の防御機構を考える上で重要と
思われる。今回、レーザードップラー法(LDF)
を用いて壮数の違いによる皮膚血流量の経時的変
化を、施灸部近傍と遠位部で比較検討したので報
告する。
【方法】 健康成人15名の右曲池穴に対し、平均重
量1mgの小切艾による透熱灸を同一被験者に1.3.10
壮の計3回、1週間以上の間隔をあけて行い、LDF
による刺激部近傍と合谷穴付近の遠位部の皮膚血
流量変化を30分間測定した。施灸時の燃焼温度は
CA熱電対により、また3.10壮刺激時の被験者の熱
痛感覚の変化は電動式VASにより記録した。
【結果・考察】刺激部近傍では各壮数でコントロ
ール値に対し刺激直後から有意な血流増加が観察
され、壮数依存性に増加率が高くなるのが認めら
れた。これは皮膚の侵害受容器が壮数依存性に強
く興奮した事による時間的加重が、軸索反射性血
管拡張に反映したものと思われる。また遠位部で
は各壮数で一過性に血流量が減少し、その後コン
トロール値に回復するのが観察され、10壮刺激で
は記録終盤でやや増加する傾向が認められた。こ
れらの結果は灸の刺激量と軸索反射および皮膚交
感神経活動との関係を検討する上で、興味深い知
見と思われる。
2C15_1
【目的】鍼刺激が皮膚や筋の血流に影響を与える
ことが報告されているが、全身の臓器血流に対す
る効果については不明な点が多い。そこで本実験
ではカラードマイクロスフェア(CMS)法を用い
て、鍼刺激がラットの各種臓器血流に与える影響
について検討した。
【方法】ウレタン麻酔下のWistar系雄性ラットを
用いた(n=33)。YellowCMSは最初のサンプリン
グ時に、BlueCMSは鍼刺激後に注入した。鍼(34
号鍼)は1回目のサンプリング後に左咬筋または
右合谷相当部位に刺入し、約30分間置鍼(その間
2分ごとに1Hz、10回の捻鍼)、もしくは1回目の
サンプリング約30分後に刺入、90秒間捻鍼または
回旋鍼刺激を行った。
【結果】対照群(n=10)では2回目の臓器血流量
が1回目に対して減少傾向を示した(12臓器の平
均変化率:-23.4%)のに対し、咬筋30分鍼群
(n=10)では増加傾向を示し(+15.0%)、各臓器
ごとでは皮膚、筋、腎臓、脳、心臓で有意な差が
認められた(P<0.05)。合谷30分鍼群(n=7)では
咬筋30分鍼群とは異なる臓器血流の変化がみられ
た。血圧の経時的変化は3群とも類似しており、
実験開始時に比較すると2回のリファレンス血液
サンプル回収後は減少する傾向を示した。咬筋・
合谷90秒鍼群(n=6)では鍼刺激によって血圧が
増加したが、臓器血流量は無刺激群に類似した減
少傾向を示し、本実験の鍼刺激による臓器血流量
の増加は血圧に依存していないことが示唆され
た。
【結語】30分鍼群において血流の増加が複数の臓
器でみられたことから、今回の鍼刺激は軸索反射
等の末梢機序を介する局所反応の他、上位中枢を
介して全身性に影響を与えることが明らかとなっ
た。
2C15_2
キーワード:灸刺激、皮膚血流量、軸索反射、
皮膚交感神経
キーワード:臓器血流量、鍼、ラット、
カラードマイクロスフェア
O-13
腎血流動態に及ぼす鍼刺激の
影響の検討
明治鍼灸大学泌尿器科学教室
○手塚清恵、鈴木言枝、星 伴路
矢田康文、斉藤雅人
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
角谷英治、北小路博司
【目的】我々は非侵襲的に臓器内血流動態を観察
できる超音波カラードプラ法を用いて、鍼刺激に
よる腎血流動態の変化を観察、検討したので報告
する。
【方法】 対象者は19∼31歳(平均年齢21.2歳)の
学生ボランティア23名(男9名、女14名)であっ
た。対象者を安静腹臥位にし、超音波診断装置
(aloka社製、SSD-2000)を用いて、背部より腎を
描出後、カラードプラ法にて腎葉間動脈のVmax
(収縮期最高流速)、Vmin(拡張期最低流速)を
測定した。また、これらよりResistive Index(RI)
を算出した。RIは一般的に末梢血管抵抗を反映す
る指標と考えられている。さらに腎血流動態を観
察中持続的に血圧、心拍を測定した。刺激経穴は
内関穴と腎兪穴とし、それぞれ10分間の置鍼刺激
を行った。さらに腎兪穴には2Hzで10分間通電刺
激を行った。腎血流動態はそれぞれ1∼2分おきに
測定した。また、対照群として鍼刺激なしの状態
でも同様に測定した。
【結果】各経穴、刺激方法において刺激前、中、
後10分、20分、30分でのRIのmean±SDは無刺激群
と比較して有意な変化がなかった。血圧は鍼刺激
群、無刺激群とも時間経過に伴い上昇する傾向が
みられた。心拍は無刺激群に比べて鍼刺激中に減
少する傾向がみられた。
【考察】我々が以前行った加齢と腎血流動態の実
験では、加齢によりVminは有意に低下しRIは有意
に上昇した。しかしながら今回の一定年齢層を対
象にした実験ではVmax、Vmin、RIとも有意な変
化はみられなかった。これは一定年齢層において
腎血流動態に対する鍼刺激は影響が小さいのでは
ないかと考えられた。また対象者が正常者であっ
たために鍼刺激の影響がでにくかった可能性も考
えられた。一方、刺激群、無刺激群ともに血圧が
上昇したのは測定体位が腹臥位であること、腎血
流動態測定時に一時的に呼吸を停止させる影響に
よるものであると思われた。
2C15_3
キーワード:超音波、カラードプラ法、腎血流、
鍼刺激
O-14
麻酔ラット後肢の鍼通電刺激
による皮膚血流反応
筑波技術短期大学鍼灸学科鍼灸科学教室
○小林 聰、野口栄太郎
筑波技術短期大学鍼灸学科生理学教室
大沢秀雄、佐藤優子
【目的】 昨年の本学会で我々は麻酔ラットの後肢
に対する鍼通電刺激について、足蹠刺激と足三里
刺激では心拍数及び血圧の変化に異なる反応を引
き起こすことを報告した。今回は同様の刺激によ
る皮膚血流反応を観察し、その発現機序について
検討した。
【方法】実験はWistar系雄ラット26匹を用い、ウ
レタン麻酔、人工呼吸下で呼気ガスCO 2 濃度を一
定に保ち、直腸温を37−38℃に維持しながら行っ
た。皮膚血流は後肢膝蓋骨上及び前肢足蹠の皮膚
に、腎血流は開腹し腎表面にそれぞれドップラー
血流計の針型プローブを固定して測定し、頸動脈
より直接導出した血圧波とともにポリグラフ上に
連続記録した。鍼通電刺激は後肢足蹠あるいは下
腿外側部の足三里穴相当部位に行った。16号ステ
ンレス鍼を5mm間隔で刺入し、矩形波パルスを
20Hzで30秒間通電した。刺激強度は血流反応に関
与する神経線維の種類を確認する目的で、0.5から
10mAまでトライアルごとに変えて行った。 【結果】足蹠刺激では2mA以上の刺激(Aδ及びC
線維が興奮する強さ)でほぼ全例に血圧上昇に伴
う皮膚血流の増加反応が出現した。一方、足三里
刺激では2mA以上の刺激により、血圧の上昇する
例と下降する例が現れ、それに伴って皮膚血流の
増加反応あるいは減少反応がそれぞれ約半数づつ
出現した。これらの血圧及び皮膚血流反応は交感
神経α遮断剤投与により完全に消失した。また、
腎血流と皮膚血流の同時記録では、血圧上昇時に
は腎血流の減少反応に伴う皮膚血流の増加反応
が、血圧下降時には腎血流の増加反応に伴う皮膚
血流の減少反応がそれぞれ出現した。
【結語】 麻酔ラット後肢の鍼通電刺激による皮膚
血流の増加あるいは減少反応は腎臓を含めた内臓
血流の反射性反応に伴う血圧の上昇あるいは減少
による受動的な変化であることが明らかとなっ
た。
2C15_4
キーワード:鍼通電刺激、皮膚血流、腎血流、
交感神経、ラット
O-15
鍼通電刺激による循環反応と
その神経性機序
筑波技術短期大学鍼灸学科生理学教室
○大沢秀雄、佐藤優子
筑波技術短期大学鍼灸学科鍼灸科学教室
小林 聰、野口栄太郎
【目的】 演者らは、昨年の本学会で、麻酔ラット
の鍼通電刺激による循環反応が後肢足蹠と足三里
刺激とでは異なることを報告した。今回はこの反
応の神経性機序を検討したので、昨年度の結果と
併せて報告する。
【方法】 実験はウレタン麻酔、人工呼吸下のWistar系雄ラット10匹(3∼5カ月齢)を用いた。呼気
ガスCO 2 濃度、直腸温を生理的状態に維持しなが
ら実験を行った。血圧は大腿動脈に挿入したカ
ニューレより圧トランスデューサにより導出し
た。心拍数は血圧波よりタコメータで算出した。
刺激方法:刺激部位は後肢足蹠及び下腿外側部
(足三里)とした。16号ステンレス鍼を5mm間隔
で5mm刺入し、刺激電極とした。電気刺激はパル
ス幅0.5msecの矩形波で刺激強度及び刺激頻度を変
え、それぞれ30秒間行った。
神経性機序の検討:鍼通電刺激による循環反応の
機序を検討する目的で迷走神経、圧受容器反射求
心路(減圧神経及び頸動脈洞神経)、交感神経
(内臓神経)の切断実験を行った。
【結果】後肢足蹠への鍼通電刺激によって、Aδ
及びC線維の興奮する強度の2mA以上の刺激で強
度依存性に血圧と心拍数が亢進した。一方、足三
里刺激への鍼通電刺激によって、2mA以上の刺激
で約半数例で血圧と心拍数が共に亢進したが、残
りの約半数例では血圧は下降するものの、心拍数
は逆に上昇した。
迷走神経の切断によって、足蹠刺激による血
圧・心拍数上昇反応は影響されなかった。足三里
刺激による昇圧反応例でも影響されなかった。足
三里刺激による降圧反応例では、血圧反応は影響
されなかったが、心拍数の上昇反応は消失し、む
しろ減少した。圧受容器反射求心路の切断によっ
て、足三里刺激による降圧反応に伴う心拍数増加
反応は消失した。内臓神経切断によって足蹠・足
三里刺激による血圧反応は大部分消失した。
【考察・結論】 足蹠刺激では交感神経の興奮に
よって心拍数と血圧の上昇が生じたと考えられ
る。足三里刺激(血圧下降例)では交感神経の抑
制によって血圧の下降が生じ、迷走神経の抑制に
よって心拍数の増加が生じていると考えられる。
2C15_5
キーワード:血圧、心拍数、鍼通電刺激、
ラット、迷走神経
O-16
鍼灸治療における痛みの定量
計測の必要性について
杏林大保健学部生理学教室
○加藤幸子、大島八千代
秋元恵実、小林博子
嶋津秀昭
東海医療学園専門学校
大西明子
東京医療専門学校
谷 直樹、渡辺すずこ
【目的】鍼灸治療における鎮痛は主要な治療目的
であるが、痛みは極めて主観的な内容を伴うもの
で、その評価は容易ではない。我々はすでに様々
な要因で形成された痛みを定量化できる簡便なシ
ステムを考案し報告している。
今回この測定法を基本として、従来から痛みの
評価に用いられているペインスケールとを比較
し、痛みの評価法を検討した。評価に際して、本
法による定量的な痛み指数、患者の示すペインス
ケールに加え、治療者が問診、診察および過去の
治療経験に基づいて判断したペインスケールの3
種について比較検討し、痛みの質や大きさを正し
く評価する方法について検討した。
【方法】本法における痛み定量評価システムは、
被検者にパルス電流を通電し、電流を増加させ電
流刺激による感覚の大きさが痛みと同程度の大き
さとなったときの電流値を痛み対応電流とし、痛
み対応電流値の最小感知電流値に対する倍率を痛
み指数として定量化している。すでに報告した痛
み指数の評価に関係する基礎実験に加え、今回、
複数の痛みを同時に感じている場合、これらをそ
れぞれ分離して計測できることをボランティア10
名により実験的に確認した。また、来院した患者
(50名)の訴える痛みを、ペインスケールおよび
本法により測定し、これに加えて治療者側が治療
前後で痛みがどのように変化したと考えているか
についてもペインスケールとして提示し、これら
が互いにどのような関係を示すかを検討した。
【結果】本法により前腕および下腿前面に作った
複数の痛みを正しく分離して測定できることを、
測定値の再現性から確認できた。また、患者の示
すペインスケールは痛み指数との相関性が低く痛
みの訴えに個人差が大きいこと、これに比べ、治
療者は患者個人の痛み経験に依存することなく、
より一般的な指標で判断していることを統計的に
確認できた。
【考察】ペインスケールと痛み指数とは痛みに対
する異なった評価を与えるものであり、両者を総
合的に評価することが必要であると考える。
2C16_1
キーワード:痛み、定量評価、ペインスケール
O-17
ラットのカラゲニン炎症性痛覚
過敏に対する鍼通電刺激の影響
明治鍼灸大学外科学教室
○関戸玲奈、田村隆朗、咲田雅一
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
石丸圭荘
【目的】鍼通電刺激は下行性疼痛抑制系の賦活に
関与し種々の内因性モルヒネ様物質(morphine
like factor:MLF)を遊離させ、鎮痛に導くことが
分かっている。しかし、これらの鍼鎮痛機序を病
的状態下で検討した報告はほとんどなく、本研究
では急性炎症モデルであるカラゲニン炎症性痛覚
過敏を用い、病的状態下における鍼通電刺激によ
る影響とその鎮痛機序を検討した。
【方法】起炎物質であるカラゲニンをSD系雄性
ラットの左後肢足底の皮下に注入し痛覚過敏を引
き起こした。その後鍼通電刺激を行い、痛覚閾値
の変化を経時的に測定した。鎮痛効果の測定は、
加圧式鎮痛効果測定装置(Randall Selitto Test)を
用いた。鍼通電刺激は、左後肢(カラゲニン注入
側)鍼通電群と右後肢(非注入側)鍼通電群を設
定し、一側の前脛骨筋に低頻度通電(3Hz)と高
頻度通電(100Hz)の1時間の刺激を行った。ま
た、鎮痛機序の検討を目的に、MLF拮抗薬である
ナロキソンの腹腔内あるいは炎症局所の足底へ投
与した。
【結果】カラゲニンの左後肢足底への皮下投与に
より、左後肢では一次性痛覚過敏を生じ、右後肢
では二次性痛覚過敏を生じた。左後肢あるいは右
後肢に鍼通電刺激を行ったところ、3Hz刺激で
は、両側で鎮痛効果が見られたが100Hz刺激で
は、左後肢でのみ鎮痛効果が出現した。また、ナ
ロキソンの腹腔内投与により3Hz通電による二次
性痛覚過敏側の鎮痛効果は、わずかに拮抗される
傾向にあった。一方、一次性痛覚過敏側の鎮痛効
果は、ナロキソンの炎症局所への投与により有意
に拮抗された。
【考察】 3Hz刺激による二次性痛覚過敏の回復
は、ナロキソンで完全に拮抗されなかったのでノ
ルアドレナリン系等の関与も考えられた。さら
に、3Hz刺激による一次性痛覚過敏の回復は、炎
症局所での末梢性のMLFより引き起こされた可能
性が考えられた。
2C16_2
キーワード:カラゲニン、痛覚過敏、
鍼通電刺激、鍼鎮痛、ラット
O-18 ラットにおける鍼通電の周波数と
通電時間による鎮痛効果の違い
兵庫県立東洋医学研究所
○谷村裕充、田口静江、長瀬千秋、松本克彦
【緒言】 疼痛モデルであるカラゲニン処置ラット
に対して、刺激量を定量化し易い鍼通電を行い、
周波数と通電時間による鎮痛効果の違いについて
検討したので報告する。
【材料と方法】6∼7過令のWistar系雄ラットの右
後肢蹠部に著名な炎症を発現させる目的で1%カラ
ゲニン水溶液0.1mlを皮下投与した。これらのラッ
トを鍼処置を行わない対照群(n=8)と、両側の
大腸兪相当部位に絶縁鍼30mm18号を5mm直刺し
た実験群に分けた。①通電周波数による鎮痛効果
の違いを検討する実験では、実験群は置鍼群
(n=8)と10分間の鍼通電を行った通電群に分
け、通電群は周波数により1Hz群(n=15)、3Hz群
(n=10)、5Hz群(n=10)、10Hz群(n=12)、30Hz
群(n=11)、100Hz群(n=12)に分けた。②通電
時間による鎮痛効果の違いを検討する実験では、
1Hz、5Hz、30Hzについて通電時間により3分群、
10分群、30分群、90分群に分けた(n数は9から
15)。①②ともカラゲニン投与3時間後に炎症部の
圧刺激疼痛閾値をRandall-Selitto法で測定し、対照
群と各実験群の閾値を比較した。通電群は閾値測
定前に10.5V(peak to peak)の通電を行った。
【結果】対照群301±56gと比較したところ、①通
電周波数による鎮痛効果の違いを検討する実験で
は、1Hz群449±51g、5Hz群478±41g(P<0.01)、
3Hz群418±56g(P<0.05)に有意な疼痛閾値の増加
が見られた。②通電時間による鎮痛効果の違いを
検討する実験では、1Hz10分群449±51g、5Hz10分
群478±41g、5Hz30分群445±51gに有意な疼痛閾
値の増加が見られた(P<0.01)。
【結論・考察】 鎮痛を目的とした鍼通電治療で
は、1Hz∼5Hzの低い周波数の通電時間10分から30
分の通電が有用であることが示唆された。2C16_3
キーワード:ラット、低周波鍼通電、鎮痛効果、
カラゲニン、絶縁鍼
O-19
腹部外科手術後疼痛を想定し
た鍼鎮痛の基礎的検討
O-20
鍼通電刺激によるc-fos陽性細
胞動態に関する検討
−末梢血β-endorphin、ACTHを指標として−
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
○石丸圭荘、今井賢治、岩 昌宏
明治鍼灸大学外科学教室
田村隆朗、咲田雅一
関西鍼灸短期大学 ○伊達 馨、松尾貴子
武田大輔、増田研一
東家一雄
【目的】1997年NIHは鍼治療が術後疼痛などに有
効であると報告し、我々も腹部外科手術後疼痛に
対し鍼通電を試み鎮痛剤の使用回数を有意に減少
させ得ることを報告してきた。しかし、術後疼痛
に対する効果的通電条件や内因性鎮痛物質との関
係は明らかではない。そこで今回は、腹部外科手
術を想定し、低・高頻度通電における痛覚閾値の
変化と末梢血β-endorphinおよびACTH関係につい
て検討した。
【方法】健康成人5名を同一被験者とし①合谷、足
三里低頻度3Hz鍼通電群、②合谷、足三里高頻度
100Hz鍼通電群、さらに上腹部正中切開を想定し
切開創周囲への③腹部低頻度3Hz鍼通電群、④腹
部高頻度100Hz鍼通電群、⑤通電を行わない無処
置群を設定した。痛覚閾値の測定は安静仰臥位に
て加熱式痛覚計(PAIN THERMO METER UDH104)を用い、鍼通電前、通電後30分において痛覚
閾値の測定を行った。また、末梢血β-endorphin、
ACTH濃度は、痛覚閾値測定と同時に5mlを採血
し、RIAにて定量した。
【結果および考察】合谷、足三里低頻度通電群で
は無処置群に比し痛覚閾値の上昇とともにβ-endorphinの有意な上昇を認めた。しかし、高頻度通
電群では痛覚閾値のみ上昇しβ-endorphinの変化は
なかった。さらに、腹部への低・高頻度通電群と
もに痛覚閾値の上昇を認めるもののβ-endorphinの
増加は認められなかった。また、全群において
ACTHの増加は認められなかった。以上のことか
ら、合谷、足三里への低頻度通電は内因性鎮痛系
を賦活し、高頻度では内因性鎮痛系とは別の鎮痛
系が関与することが示唆された。さらに、ACTH
には影響を与えなかったことからストレス誘発鎮
痛との関連は考え難い。
2C16_4
【目的】鍼灸では足関節捻挫などの運動器疾患に
おける慢性疼痛の治療に際し、足関節表層皮膚局
所(阿是穴)への鍼通電刺激がしばしば著効を示
す。このような鍼通電刺激の除痛メカニズムに関
して、内因性オピオイド類産生に関与していると
考えられるc-fos遺伝子産物の脊髄での発現を指標
に検討した。
【対象と方法】Wistar系ラット(n=6)を対象に足
関節表層群、深層群とも3Hz、30分の鍼通電刺激
を行った。鍼は先端のみ通電可能なエレノード鍼
(5番、東洋医療研究所製)を用いた。それらの
動物をparaformaldehyde液で固定し、腰髄(L 3 、
L4)を取り出し凍結切片を作製、Rabbit 抗 c-fos 抗
体を用いABC法にてc-fos陽性細胞を染色し、光学
顕微鏡で観察した。
【結果】阿是穴表層刺激群と深部刺激群のラット
の腰髄後角域におけるc-fos陽性細胞数を調べたと
ころ、表層に比して深層に多く認めた。c-fos陽性
細胞は表層でⅠ∼Ⅴ層を中心に散在性に分布して
いた。それに対して深層ではⅠ∼Ⅴ層に加え灰白
質深層、中心管周辺にも認めた。また稀に非刺激
側である対側の後角や前角にも陽性細胞を認め
た。
【考察】 c-fos陽性細胞数の局在パターンの違い
は、刺激局所の末梢受容器や入力経路の違いに起
因していると考えられる。このようなc-fos陽性細
胞は、鍼通電刺激以外にもホルマリン局注などで
も報告されており、c-fos陽性細胞出現分布は刺激
強度に相応しているとされている。これに比し
て、今回の鍼通電刺激では分布領域が限局してお
り、数も少なかった。また、非刺激側である対側
の脊髄前角に陽性細胞が認められた事は、鍼灸に
おける古典的な概念(巨刺)と通じるものがある
と考えられ、今後の鍼灸臨床において大変興味深
い結果を得る事ができた。
2C16_5
キーワード:術後疼痛、鍼鎮痛、周波数、
β-endorphin、ACTH
キーワード:c-fos、絶縁鍼、鍼通電刺激、
ラット、脊髄
O-21
等速性運動時の筋疲労に対す
る鍼刺激の効果
O-22
等速性運動時の筋力に対する
円皮鍼の効果
―皮下組織刺激による検討―
筑波大学理療科教員養成施設 ○近藤 宏、宮本俊和、徳竹忠司
筑波大学臨床医学系
中野秀樹
【目的】 スポーツなどで起こる筋疲労の研究は
様々に行われているが、急性筋疲労に対して、皮
下組織刺激ついて等速性運動を行わせ検討した文
献はない。そこで今回、等速性運動時の各インタ
ーバルに、鍼先を皮下組織まで刺入する群と鍼を
刺入しない群とに分けて、最大筋出力、総仕事量
を指標として皮下組織刺激による筋疲労回復過程
の相違を明らかにすることにした。
【方法】健康成人男子15名に対し、切皮のみを行
う群(A群)、鍼管を叩くのみで鍼を刺入しない
群(B群)に分け、CYBEX350を用いて等速性運
動180deg/sec 20回を4セット行い、その各インター
バルに施術を行った。測定項目は、Peak Torqueと
Total Work、筋硬度、VASとし、刺激部位は右大
腿前面部で内側広筋上の4点と外側広筋上の4点、
合計8点とした。刺激時間は、施術開始から終了
までを50秒以内とした。被験者は、施術中アイマ
スクをし、施術者は被験者が見えていないのを確
認した上で、A群、B群の施術を行った。
【結果】1.群内においてPeak TorqueとTotal Work
は有意に減少した(P<0.05)。しかし群間に有意
差はなかった(P>0.05)。2.筋硬度は、群内にお
いて有意な増加が見られたが(P<0.05)、群間で
は有意差はなかった(P>0.05)。3.VASは各群と
も負荷後では有意に上昇し(P<0.01)、負荷前後
の差をA群とB群で比較した結果、有意差が見られ
た(P<0.05)。
【結語】 等速性運動時における筋出力、総仕事
量、筋硬度では群間においては差がなかったが、
VASでは、群内、群間において有意に差があり、
自覚的な大腿の筋疲労を鍼先を刺入した群(A
群)が刺入しない群(B群)より有意に抑えるこ
とができた。
3C9_1
キーワード:スポーツ、筋疲労、鍼、
等速性運動
筑波大学理療科教員養成施設
○泉 重樹、安藤理恵、小溝健靖
鳴海瞳子、野尻 誠、矢野繁樹
横田成美、宮本俊和
筑波大学臨床医学系
中野秀樹
【目的】 近年スポーツ分野への鍼治療の応用が進
んでいる。その中でも、円皮鍼は簡便で、貼付し
たままスポーツ活動ができるという特徴があり、
スポーツ現場でも活用されている。我々は、予め
円皮鍼を貼付しておき、その後に等速性運動負荷
を与えることで、運動中の最大筋出力、総仕事量
がどのように変化するのか、円皮鍼を貼付する部
位による効果に差が見られるのかを検討した。
【対象および方法】対象は運動習慣のない健康成
人男子19名。CYBEXによる右膝関節屈伸運動
(180deg/secで20回を1セットとし各4セット)を行
い、その前後で筋硬度、右膝関節のROM、VAS、
大腿周径の測定を行った。これを1人の被験者につ
いて、コントロール群、右腰部に円皮鍼を貼る群
および右大腿前面に円皮鍼を貼る群の計3回行っ
た。測定項目は各セットのPeak Torqueをそれぞれ
のセットでの最大筋力の指標とし、4セット通して
のPeak Torqueを疲労の指標とした。なお、各3群
の割り付け、円皮鍼施術者は、直接測定にかかわ
らない者が行い、すべての実験終了まで円皮鍼施
術者以外の検者には被験者がどの部位に刺鍼して
いるのか分からないよう実験を進行した。
【結果及び結語】Peak Torque、Total Work共に3群
間に、統計学的に有意差はなかった。また、大腿
前面と腰部での部位差も有意差はみられなかっ
た。しかし、今回の結果から、円皮鍼とTotal
Workとの関係について次のような傾向がみられ
た。①無刺激群に比べ大腿刺激群もしくは腰部刺
激群の方がTotal Workの数値が高かった。②全体
を平均値でみると、大腿刺激群、腰部刺激群、無
刺激群の順にTotal Workの数値が高かった。③平
均値以上の仕事量を発揮できる者では、腰部刺激
群、大腿刺激群、無刺激群の順にTotal Workの数
値が高かった。
3C9_2
キーワード:円皮鍼、筋力、等速性運動、
筋硬度
O-23
筋疲労に対する鍼刺激の影響
−刺入深度の違いについての比較−
明治東洋医学院専門学校
兵庫医科大学第一生理学
○古田高征
辻田純三
【目的】 我々は、48回大会にて筋疲労に対する鍼
刺激の部位差について検討し報告を行ってきた。
今回は筋疲労に対する鍼刺激の刺入深度の違い
を検討するため、膝関節の伸展運動による実験的
筋疲労モデルにおいて鍼刺激を行い筋力および筋
電図を指標に比較した。
【方法】対象は22∼39才の健康成人7名とした。被
験者は椅坐位にて股関節90度および膝関節90度の
姿勢をとらせた。運動負荷は膝関節90∼40度の範
囲の伸展運動とした。負荷はゴムベルトを用い膝
関節40度にて20kgとなるよう調整し、30回の伸展
運動を1セットとし2セット行わせた。測定項目は
運動負荷前・負荷直後・負荷後10分後・12分後・
15分後の筋力と筋電図とした。筋電図は内側広筋
部と大腿直筋・外側広筋の筋溝部から導出し積分
処理を行い積分値として検討を行った。実験の対
照は無処置とし負荷後に休息のみ取らせた。鍼刺
激は2cm刺入する刺入刺激と弾入のみを行なう切
皮刺激を設定し、運動負荷直後から10分間の置鍼
とした。また刺鍼部位は、膝蓋骨内上角から15cm
上方の内側広筋部、膝蓋骨から上前腸骨棘の上方
2/3の高さでの大腿直筋部および外側広筋部の3カ
所とした。鍼はセイリン製ディスポ鍼16号40mmを
用いた。
【結果】 筋力は対照無刺激および鍼刺激ともに運
動負荷により低下しその後上昇する傾向を示し
た。また刺入刺激および切皮刺激は対照と比較し
て上回る傾向を示した。筋電図積分値について、
対照では内側広筋部および外側広筋・大腿直筋筋
溝部ともに運動負荷前後さらにその後の経過にお
いてもあまり変化は見られなかった。また刺入刺
激および切皮刺激では負荷後増加する傾向は見ら
れたが、対照無刺激と比べ有意差は見られなかっ
た。
【考察】 鍼による筋疲労の回復の作用機序として
筋血流量によるものが考えられている。今回、切
皮刺激においても筋力の回復がみられたことから
皮膚表層を介したものも考えられるのではないか
と思われた。
3C9_3
キーワード:筋疲労、鍼、筋力、筋電図、
刺入深度
O-24
コンディショニングのための
鍼療法
防衛医大解剖学第一講座
○竹内京子
国立障害者リハビリテーションセンター理療教育部
小比賀黎子
東京地方会
一の瀬宏
筑波大学体育センター
進藤正雄
【目的】我々は、運動選手に対するポジティブフ
ィードバック(PFB)法によるトレーニング指導
を検討している。これは、医学的には異常ではな
いが競技力低下に悩む選手を対象として、超音波
断層写真像(エコー)による身体の観察と数種の姿
勢から各自の問題点をレトロスペクティブに解明
し、それを基に、選手と共に競 技力の回復または
向上に役立つトレーニングや コンディショニング
方法を検討する指導法である。今回は、このPF
B法実施過程で検討した練習あるいは試合時のコ
ンディショニングを目的とする鍼療法の結果につ
いて報告する。
【方法】対象は19∼24歳までの大学運動クラブ 所
属の60名(女16、男44)および一般成人5名(女
3、男2)である。競技種目は陸上競技、サッカー
をはじめ多岐にわたる。
前回の第48回神奈川大会で発表した脛骨骨際刺
鍼法等の方法を継続したが、施術は主として運動
前・中・終了後数時間以内に行いその効果を検討
した。
使用鍼はステンレス40mm18号、 銀製o鍼1φ
80mm、円皮鍼(セイリンS小およびジュニア)を
用いた。
補助療法用として電子鍼(瑞穂工業製、みずほ
電子鍼)や皮膚添付刺激用シール(美ノ源製、プ
ロスパイラルチップ)等を用いた。
評価は、被験者の感想・感覚、エコー像の変化、
姿勢・関節可動域の変化、トレーナビリティや競
技成績などで行った。
【結果と考察】過去の障害部位(シンスプリント
や肉離れ等)の疲労感や腰背部痛では毫鍼による
速刺速抜や運動鍼が著効であった。女子の9割、
男子の4割が筋力や全身持久力の低下を訴え、ま
た"冷え"や軽い浮腫を伴う末梢リンパ循環不全
(所謂水毒、虚証)傾向を示していたが、このよ
うな例では、運動開始前且つ反応部位に対する円
皮鍼やシール添付等の弱い持続刺激が著効であ
り、添付時間は20分から1時間ぐらいが適当刺激
であった。運動後の全身の緊張緩和や疲労回復を
目的とした場合は腰背部への o鍼による接触鍼法
が著効であった。
3C9_4
キーワード:スポーツ鍼灸、コンディショニング、
トレーナビリティ
O-25
低周波鍼通電刺激による筋血
液量・硬さの変化(2)
筑波技術短期大学鍼灸学科
○松枝宏幸、上田正一、野口栄太郎
森 英俊
【目的】低周波鍼通電刺激による皮膚血流量・筋
血液量と硬さの変化について検討した。
【方法】実験は趣旨を十分説明し同意を得て行っ
た。対象は男17名(平均年齢23.1±6.0歳)で、低
周波鍼通電刺激(1Hz、10分間)を右大腿四頭筋
に行った。
筋血液量の測定は近赤外分光法を用いて、皮膚
血流量と筋血液量を刺激前10分、刺激中、刺激後
30分まで連続的に行い、5分おきにそれぞれ5秒ず
つ皮膚血流量および総Hb量についてサンプリング
し解析した。測定にはレ−ザ−血流計(アドバン
ス社製ALF21D)および組織SO 2 ・Hb量モニター
(バイオメディカルサイエンス社製 PSA-ⅢN)
を用いた。また、硬さ測定は大腿四頭筋部を触覚
センサーシステム(アクシム社製)を用い、刺激
前後で観察した。
【結果】皮膚血流量と総Hb量が増加した。
また、大腿四頭筋部の柔軟性の向上がみられた。
【結語】低周波鍼通電刺激後、大腿四頭筋の皮膚
血流量と筋血液量の増加が示唆された。 3C9_5
キーワード:低周波鍼通電、筋血液量、
皮膚血流量、筋緊張
O-26
トリガーポイント刺激による関
連痛放散領域の筋電図学的検討
赤穂中央病院
関西鍼灸短期大学
○片野泰代
黒岩共一
【はじめに】トリガーポイント刺激時には、症状
部位に関連痛が誘発される。関連痛は、局所と遠
隔部位の両方に認められる感覚である。文献によ
る、トリガーポイント刺激局所での筋電図活動の
報告がある。感覚同様筋電図活動も遠隔部位放散
領域についても認められるのではないかと考え、
遠隔部について筋電図学的に検討したので報告す
る。
【方法】 対象は、トリガーポイントに起因する疼
痛症状を持つ20代と30代の女性各1人、40代の男
性2人の計4名である。実験は、安静臥位にて
行った。刺激点は被験者の症状部位のトリガーポ
イントである。記録点は、トリガーポイント内包
筋以外の遠隔への関連痛放散部位の隣接した2筋か
らそれぞれ1点ずつ、計2点を設定した。記録点
に、EMG表面電極を装着し、刺激前を安静コント
ロールとして、刺激終了後までを継続して記録し
た。
【結果】 トリガーポイント刺激により関連痛放散
領域上の記録点に関連痛の誘発に伴い筋電図活動
が認められた。そして筋電図活動は、刺激中止後
も継続して認められた。また、隣接筋であって
も、協働筋と拮抗筋の間では、放電の強さに差異
が観察された。
【考察】 関連痛と同一現象と思われる得気誘発時
に局所において筋電図活動が報告されている。ト
リガーポイント刺激による関連痛は、局所と同様
遠隔部位にも認められる。臨床上、鎮痛効果は局
所と関連痛放散領域の両方に認められている。こ
れらの事から関連痛の誘発、同領域の筋電図活動
と鎮痛効果発現の3要素に部位的な一致があり、相
互に関連がある可能性が示唆された。 3C10_1
キーワード:トリガーポイント、関連痛、
筋電図
O-27
実験的トリガーポイントから
記録された筋電図活動に対す
る鍼刺激の影響
明治鍼灸大学生理学教室
○伊藤和憲、岡田 薫、川喜田健司
【目的】 トリガーポイントから特異的に筋電図活
動が記録されることが報告され、その成因と筋電
図の発生機序に関して様々な議論が行われてい
る。そこで今回運動負荷により作成したトリガー
ポイントから得られる筋電図活動に対し、鍼刺激
の影響を検討した。
【方法】 実験にはインフォームドコンセントの得
られた健康成人19名を用いた。実験的トリガーポ
イントの作成には、中指に可変式のおもりを装着
しall outまで伸張性収縮運動を3セット行った。そ
の後、運動負荷2日後に圧痛点から筋電図活動を記
録し、その筋電図に対する各条件刺激の影響を観
察した。条件刺激はトリガーポイントが出現した
総指伸筋と対側の総指伸筋、対側の前脛骨筋の3ヶ
所にそれぞれ10秒間響き感覚を伴う鍼刺激を行っ
た。一方、別の被験者で筋電図記録部位の痛覚閾
値と筋電図活動を経時的に測定し、その関連を調
べた。
【結果】 全被験者において総指伸筋に硬結を伴う
トリガーポイントが出現した。その部位の筋膜付
近に鍼電極を刺入すると、17/19例の被験者で強い
重だるい感覚に同期した筋電図活動が記録され
た。その活動は持続的であり、短いものでも2分程
度安定していた。この筋電図活動は総指伸筋に鍼
刺激を加えた時に最も強く抑制され、その抑制度
は被験者の重だるい感覚の減弱と一致した。ま
た、対側の総指伸筋や前脛骨筋の刺激は、ほとん
ど影響を与えなかった。一方、筋電図記録部位の
痛覚閾値は総指伸筋の鍼刺激により上昇した。
【考察】 今回記録された筋電図活動は、トリガー
ポイントが存在する総指伸筋に刺激をした時に最
も強く抑制され、その抑制は被験者の重だるい感
覚の減弱や記録部位の痛覚閾値の上昇と一致して
いた。以上のことから筋電図の発現には重だるい
感覚の出現や痛覚閾値の低下が重要であることが
考えられた。
3C10_2
キーワード:トリガーポイント、索状硬結、
伸張性収縮運動、安静時筋電図
O-28
耳介鍼刺激のエネルギ−代謝
調節機構に対する役割
日本鍼灸理療専門学校1
(財)東洋医学研究所2、
東海大学医学部生体構造機能系生理学部門3
○小島孝昭1,2・小川一1,2、白石武昌2,3
【目的】今回は単純性肥満症モデルとして食事性
肥満ラットを用い、耳介鍼刺激による減量効果の
作用機序を血中レプチン濃度・体温に及ぼす影響
などから検討した。
【方法】Wistar-SPF/VAF雄性ラツトを生後4週齢
(体重80∼90g)から、粉末高脂質・高糖質食及
び普通食で飼育し、15週齢で普通食飼育ラットと
有意に体重増加した時点でこれを食事性肥満ラツ
トとした。実験は左側耳輪脚迷走神経分布領域の
電気抵抗が10∼50KΩ/cm 2 以下の部位を探索しス
テンレス製セイリンSPINEX(0.12mm×2mm)針
を斜∼横刺し、置鍼・固定(皮内鍼群:n=8)し
た。電気刺激装置より刺激のパルス幅0.1ms、強さ
5∼40V、 頻度50Hzで15分間通電を週2回 3週間行
ない(通電群:n=10)、迷走神経分布が無く、且
つ電気抵抗の高い(100KΩ/cm2以上)部位に刺激
した対照群(n=8)と比較検討した。尚、実験は
すべて日中明期(07:00−19:00)に、体重、摂食
量、飲水量、糞便・尿量及び直腸温の測定を隔
日、尿の生化学的検査を週1回行ない、実験開
始・終了時に糖、インスリンなど血液の生化学的
検査・レプチン値(ELISA)の測定を行った。
【結果】対照群に比して通電群などの体重減少が
認められた例ではTGの減少、HDL-コレステロ-ル
の増加、糖、インスリン値は低値を示した。レプ
チン値は普通食飼育ラットに比し、肥満対照群、
通電群・皮内鍼群ともに約3倍程度の高値を示し
ていた。耳介鍼刺激により通電群・皮内鍼群とも
に約4.3(P<0.01)、3.4(P=0.107)ng/mlと刺激前
よりも低下した。また、体温(直腸)の変化は、
対照群に比し、通電・皮内鍼群共に刺激後2∼3週
より次第に体温が上昇し(0.05∼0.76℃)、その
効果は実験終了後までにも持続した。今回の実験
では体重の変化とレプチン値及び体温は、共に高
い相関(r=0.798、0.765)が得られた。
【結語】単純性肥満症モデルとしての食事性肥満
ラットに対する耳介鍼刺激による減量効果は、間
脳視床下部の摂食調節系に関わる神経活動に伴
い、脂肪組織をはじめ、末梢性のエネルギー代謝
調節機構の促進を伴っていることが示された。
3C10_3
キーワード:耳介鍼刺激、単純性肥満モデルラット、
脂質代謝産物、血中レプチン、体(直腸)温
O-29
手術侵襲による免疫抑制に対
する鍼通電刺激の影響
明治鍼灸大学外科学教室
○田口辰樹、田村隆朗、咲田雅一
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
篠原昭二
【目的】手術侵襲ストレスによる免疫能の低下に
ついては多く報告されている。特に担癌患者の手
術においては、この免疫能の低下のために残存腫
瘍の増大や転移促進を来たすことが知られてい
る。そこで今回、手術侵襲による免疫能低下を鍼
通電刺激により防止できないかと考え、手術侵襲
ラットに鍼通電刺激を行って免疫能に及ぼす影響
を検討した。
【方法】動物はSD系雄性ラットを用いた。手術侵
襲ラットは腹部に5cmの正中切開を行い、一度開
腹してその後縫合閉腹した。その上、さらに背部
の皮膚を6cm切開した後縫合して閉創して作成し
た。術後1日、3日、5日、9日後に脾細胞を用いて
NK細胞活性およびmitogen(PHA、ConA、LPS)
に対するリンパ球芽球化反応による免疫能の推移
を検討し、次いで鍼通電刺激を行ってその影響を
検討した。通電方法は術後、ラットが麻酔から覚
醒した直後から開始し、その後連日行った。通電
部位は一側後肢前脛骨筋部とし、ステンレス鍼を
7mm刺入し刺激条件は2Hz、2mAで1時間通電し
た。通電中はできるだけストレスを与えないよう
無拘束でケージ内を自由に行動できるようにし
た。
【結果・考察】非通電群のNK細胞活性は術後3日
目に最も低下し、その後漸次回復したが術後9日
目にも無処置ラットに比しやや低下していた。一
方、鍼通電群では非通電群に比べて各時点におい
てわずかに上昇する傾向が見られたが有意な差で
はなかった。リンパ球芽球化反応は非通電群では
PHA、ConA、LPSいずれも術後1日目に有意に低
下し、その後徐々に回復する傾向が見られ、特に
PHA芽球化反応の低下が著しかった。通電群では
非通電群に比べ早期に回復する傾向が見られ、
PHA芽球化反応は術後3日目、ConAは術後1日目、
LPSは術後1、3日目の通電による回復が有意で
あった。以上の結果から、手術侵襲により術後1
∼3日目にNK細胞活性、リンパ球芽球化反応共に
低下すること、鍼通電刺激でこれらの低下が早期
に回復することが判った。
3C10_4
キーワード:手術侵襲、鍼通電、NK細胞活性、
芽球化反応
O-30
施灸刺激による免疫効果
−ラット肥満細胞の免疫応答について−
関西鍼灸短期大学
○松岡裕一、松尾貴子
東家一雄、木村通郎
【目的】 気管支喘息やアトピー性皮膚炎などⅠ型
アレルギーに対する施灸治療の効果が知られてい
る。今回演者らは施灸動物に於けるⅠ型アレルギ
ーのIgE標的細胞(肥満細胞)の動態に関し、施灸
局所皮膚及び所属リンパ節での細胞動態について
免疫組織学的検索を行った。
【対象と方法】6週令、雄性、9匹のWistar系ラッ
トを単日5壮施灸群(単日施灸群)、同5壮の連続3
日施灸群(連続施灸群)、および非施灸群に分け
た。施灸に際し左後肢下腿前面を除毛し前脛骨筋
膝関節部1/3の皮膚上(足三里相当部位)に半米粒
大(山正艾・1mg)の直接灸を行った。これら実
験動物での施灸群は最終施灸から72時間後にエー
テル深麻酔し、0.6%ホルムアルデヒド-0.5%酢酸に
て潅流固定を行い、それらの施灸局所皮膚、左右
所属リンパ節(鼠径リンパ節)を摘出、4μmの凍
結包埋切片を作製、0.2%トルイジンブルー溶液に
て加熱染色した。それらの切片についてメタクロ
マジーを指標に肥満細胞の動態を光学顕微鏡下で
観察した。
【結果と考察】正常皮膚組織では肥満細胞は毛細
血管、神経線維束の多い真皮下層に最も多く分布
していた。施灸皮膚局所でのの肥満細胞数は、単
日施灸群ではやや減少し、連続施灸群では逆に増
加していた。一方、単日施灸群の所属リンパ節で
は肥満細胞数は増加しており、連続施灸群では肥
満細胞数に減少傾向がみられた。また、局在分布
も異なっていた。以上の結果から皮膚局所に局在
している肥満細胞は施灸刺激により脱顆粒を呈す
るのみでなく、末梢リンパ網管から輸入リンパ管
を介して所属リンパ節辺縁洞に至り、皮質にて他
の免疫担当細胞と免疫応答した後、髄質に至り、
遠位リンパ節を経て全身性免疫応答を引き起こし
生体の恒常性維持(アレルギ−反応の抑制など)
に関与する事が推察される。
3C10_5
キーワード:ラット、灸刺激、肥満細胞、
免疫応答
O-31
光てんかんの脉診弁証
O-32
兵庫地方会 鍼灸古典医学研究会 ○近川次男
【はじめに】督脈の経絡である l脈の陽気および
任脈の経絡である l脈の陰気を、脉診に随って大
過不及を触知し、特に脉位の高さを重視した。演
者は日頃の臨床で、 l脈の肝陰虚を下焦の脉位で
よく経験している。これは内寒による副交感神経
機能の低下により、視力の異常をきたしたものと
考えられ、症例でも同じような所見を経験したの
で、ここに報告する。
【目的】 脉状診で、十二経、奇経八脉九道脉に従
い、五味・五悪・五主・五根・五労を脉状脉性に
求め、病位を脉位で精査し、病因を究明する。
【症例】 24才、男性。パチンコをしている時、て
んかん発作を起こした。
【方法】 主証のl脈の肝陰虚を補い、陰気の活性
を計り、督脈の陽気の亢りを抑制し、光調節作用
を促した。
【考察・結語】近年、冷たい飲料水、サラダ、冬
に夏野菜をとることが飲食習慣になっている。こ
のような飲食習慣は内臓を冷やし内寒となる。現
代生理学的にも、深部温が33℃になると神経障害
を起こすとある。即ち、内寒により副交感神経系
の機能低下をきたし、眼球運動や瞳孔の光調節機
能の異常を引き起こしたもので、本症例のてんか
ん発作もパチンコ台の光は誘因にすぎず、原因は
狂った食生活にあると考えられる。若い世代に基
礎体温が低く、目が吊り上がっているものが多く
見られるのも、同じような機序とも考えられる。
ついでながら、現代のいわゆる“キレル”という
現象もこうした状態と併せて捉えると、何かのヒ
ントになると思われる。
2E9_1
キーワード:脉診弁証、光てんかん
北辰会
弁証論治に基づく少数穴治療に
よる痛経の症例(北辰会方式)
○堀内秀訓
【目的】今回、ボルタレンを2錠服用しても、夜
間に痛みで覚醒してしまうほどの生理痛を長く
患っている患者に対して、北辰会方式(多面的観
察に基づく弁証論治と少数穴治療)を行った結
果、著効を得たのでここに報告する。
【症例の概要】26歳、女性。平成11年9月11日初
診。歯科医院の受付をしている。
20歳でこの職場に就職し、半年程経ってから血塊
が出始め、生理痛がひどくなった。
24歳の時から、小腹に激しい痛みが生じ、ボルタ
レンを2錠服むようになる。しかし、平成10年8月
より、血塊の大きさが500円玉以上鶏卵大未満と
なり、ボルタレンを2錠服んでも痛みが治まらな
くなった。初診時まで毎月同情況が続いており当
院受診にいたった。
【証】m血気滯と気滯血m(前者≫後者)
【治療指針】駆m血を中心に行うが理気・疏肝理
気も加え、駆m血の効率化を図る。
【治療配穴】左または右の足臨泣と、左合谷また
は百会を瀉法。
【効果】治療開始後、週に1∼2回のペースで治療
し、20日後に生理が来て痛みが半減(ボルタレン
1錠のみで治まった)し、次の生理の時は軽い痛
みが数秒繰り返しただけで全く服薬する必要がな
かった(この時点で12診目)。
【結論】多面的観察により四診合参し、正確に弁
証論治すれば、少数穴でもって、しかも短期間の
うちにかなりきつい痛経も緩解させることができ
た。
2E9_2
キーワード:北辰会方式、弁証論治、痛経、
m血気滯、駆m血
O-33
北辰会
清熱解毒の鍼による異病同治
の治験例
○大八木敏弘、堀内久子
藤本蓮風
【目的】北辰会の清熱解毒の鍼は、藤本代表が臨
床の中で、『外台秘要』の黄連解毒湯、『千金
方』の蝦蟆瘟、『素問』刺熱論などからヒントを
得て作り出した。その配穴は、霊台、両督兪に座
位で上から下へ横刺、脊中、両脾兪に伏臥位で上
から下へ横刺をする。この刺鍼法は、温病学の気
分の広範囲な熱毒に対して速やかな清熱解毒作用
がある。今回、この清熱解毒の鍼で気分の種々の
熱性疾患に対して、顕著な効果を挙げた治験例を
報告する。
【症例1】風熱による風邪:風熱を外感して39℃
の熱が出た温病【症例2】お多福風邪:風邪を引
いて耳下腺炎になったもの 【症例3】 実証の喘
息:嫁姑、仕事のストレスによる肝脾不和、肝鬱
化火による実喘【症例4】アトピ−性皮膚炎:仕
事の疲れストレスによる肝鬱化火による2症例
【症例5】熱性の皮膚炎:肝鬱化火に香辛料の多
食による体幹部を中心とする丘疹(熱) 【症例
6】牛皮癬:肝脾不和と湿熱による頸部を中心と
する丘疹【症例7】薬疹:右下肢の怪我の治療で
抗生物質を服用して熱性の薬疹(丘疹)が発性し
たもの【症例8】慢性リウマチの急性期:両足第5
指に発熱腫脹疼痛が発生したもの【症例9】リウ
マチ:肝鬱化火、発熱による微熱、右膝関節、両
足関節の腫脹疼痛、(ARA87年版StageI、Class2)
【症例10】 陽明腑実証による昏迷、膝痛 【症例
11】肝胆の湿熱による左側頚部の腫脹、熱感の強
いもの
【結果】この清熱解毒法の同一治療配穴は、温病
学の幅広い範囲の気分の諸疾患(特に炎症が激し
いもの、伝染性のキツイもので炎症が簡単に取れ
ないものなど)に対して顕著な治療効果が見られ
た。
【考察】刺熱論では、六椎下の霊台穴は、脾の熱
を表す。又黄連解毒湯は清熱解毒の効能を持ち組
成は、黄連、黄r、黄柏、山梔子で、黄色に関係
があり、五蔵の色体表では、黄色は脾に帰属する
ことから黄連解毒湯と脾の関わりは強い。症例の
ごとく、脾に関係の深い配穴が、清熱解毒に効果
があったことより、清熱解毒と脾の関係は深いと
考えられる。
2E9_3
キーワード:清熱解毒、気分、霊台、脊中、
鍼治療
O-34
糖尿病に対する古典鍼法の効果
−インスリン注射使用事例の
血糖値変化に関する1考察−
筑波技術短期大学鍼灸学科
同 診療所
○和久田哲司
丹野恭夫
【はじめに】日頃の鍼臨床活動において、糖尿病
に対する有効性を示す報告や、その疾患を伴う
種々なる症状に対して、鍼治療を行なっていく中
で、しばしば症状の軽減とともに血糖値など糖尿
病そのものの改善を経験することは多い。
今回、本学診療所において、『難経』六十九難
など古典理論を基本とする鍼治療法(以下、古典
鍼法)を、糖尿病患者に行なってきたところ、鍼
治療以前及び以後の血糖値などの変化を経時的に
観察した結果が得られたので報告する。
【対象・方法】患者:67歳、男性。53歳に糖尿病
を発症。65歳よりインスリン注射が処方(朝12単
位、夕8単位)され、1日1600Kcalの食事制限と運
動療法でコントロール中であった。1999年7月9
日、両下腿以下の痺れ・便秘及び左膝痛で来所。
鍼治療は本治として『難経』六十九難に基づき
四肢に4穴と腹部2穴、標治として背部の痞根穴
など4穴と円皮鍼、その他膝及び下腿に数穴を選
穴し副刺激法を加える。血糖値測定は簡易測定器
(Exac Tech 2A)で四日ごとに朝・夕食前の2度と
し、鍼治療前後それぞれ3箇月(20回)の変化を観
察した。
【結果】 朝食前値では各月の平均値を見ると鍼治
療後は鍼治療前に比べて10mg/dl程度有意な減少を
認めた。夕食前値では各月の平均値は全体的には
減少傾向にあるが、3箇月のトータル比較で有意で
あった。
【考察】1症例ではあるが、糖尿病患者の血糖値の
正常値への減少傾向を観察した。古典鍼法前後で
は便秘に対する漢方薬処方以外では特に使用薬物
は変わっていないこと、その他気象・社会的要因
に変化が認められないことから、鍼治療の結果で
あると考えられる。これらの変化はヘモグロビン
A1cも正常域に改善されている点などから、本治
として全身状態の改善と痞根穴を中心にした標治
的な背部刺激が、なんらかの作用を及ぼした結果
であると思われるが、これらの作用機序の考察が
急務である。
2E9_4
キーワード:糖尿病、血糖値、『難経』、
古典鍼法、インスリン
O-35 『 黄 帝 三 部 鍼 灸 甲 乙 経 』 の
「太陽中風感於寒湿発痙第四」
についての考察
関西鍼灸短期大学東洋医学基礎教室
○戸田静男
【目的】 皇甫謐著『黄帝三部鍼灸甲乙経』は、
『黄帝内経素門』、『黄帝内経霊枢』、『黄帝内
経明堂』を再編したものであるとされている。そ
の巻之一から巻之六までは、これらを参照した内
容のものがほとんどである。しかし、それ以降の
巻には病証に関すもの以外に治療経穴の解説が多
く記載されている。その内の一つである巻之七の
「太陽中風感於寒湿発痙第四」の記載と、『傷寒
論』、『金匱要略』の係わりについて考察したの
で報告する。
【方法】 今回の考察は、『黄帝三部鍼灸甲乙経』
と王叔和編著『傷寒論』、『金匱要略』を対象に
してなされた。
【結果と考察】「太陽中風感於寒湿発痙第四」に
は、「痙」の病証と具体的な種々の症状に対して
有効な経穴の解説がなされている。「痙」の解説
では、『傷寒論』、『金匱要略』にあるような
「太陽病発熱脈沈而細者曰痙」、「太陽病発汗因
致痙」などが掲載されている。皇甫謐と王叔和が
同時代の人物であることから、これらが六朝時代
の「痙」に対する一般的概念であったのか、どち
らかが参考にしたものであろう。そして、「太陽
中風感於寒湿発痙」については、鍼灸や葛根湯を
服用するべきであるとしている。また、「痙」に
関連しての種々の症状に対する治療経穴は現在で
も大いに参考になる。
【結語】 『黄帝三部鍼灸甲乙経』巻之七の「太陽
中風感於寒湿発痙第四」には、『傷寒論』、『金
匱要略』の記載と関連性があった。そして、
「痙」に関連しての種々の症状に対する治療経穴
は現在でも大いに参考になるものが多かった。
2E9_5
キーワード:『黄帝三部鍼灸甲乙経』、
『傷寒論』、『金匱要略』
O-36
パーキンソン病を基礎疾患とし
た尿失禁に対する鍼治療の1例
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
○角谷英治、北小路博司、矢野 忠
明治鍼灸大学泌尿器科学教室
鈴木言枝、星 伴路、手塚清恵
矢田康文、斉藤雅人
明治鍼灸大学大学院鍼灸基礎医学教室 渡辺 泱
【はじめに】パーキンソン病では高い割合で尿失
禁が見られることが報告されているが、薬物治療
に抵抗性を示すものも少なくない。今回我々は、
パーキンソン病を基礎疾患とした尿失禁患者に鍼
治療を施行し、有用だった1例を報告する。
【症例】81歳、女性、1986年パーキンソン病と診
断を受けた。1992年頃から明治鍼灸大学附属病院
内科にて治療を受けてきたが、1997年6月、MRIに
て多発性脳梗塞が認められ脳神経外科へ転科・入
院した。同年8月、尿失禁に対して泌尿器科にて
神経因性膀胱(過活動性膀胱)と診断され、治療
を受けることになった。
【治療方法】尿失禁に対する治療内容は、薬物単
独治療、薬物と鍼併用治療、鍼単独治療の3種類
を期間を区切って行った。薬物治療は頻尿改善薬
の投与を行い、鍼治療は左右の中q穴(BL-33)
に60mm 30号 ディスポーザブル鍼を用いて得気を
得てから10分間旋撚術刺激を行った。
【評価方法】それぞれの治療の尿失禁に対する効
果は、膀胱機能検査の数値を比較することにより
評価した。
【結果】 それぞれの期間の膀胱機能検査の結果
は、薬物治療前;膀胱容量100ml(無抑制収縮
+)、薬物単独治療期間;膀胱容量180ml(無抑
制収縮+)、薬物と鍼併用治療期間;膀胱容量
260ml(無抑制収縮−)、鍼単独治療期間;膀胱
容量220ml(無抑制収縮−)となり、薬物単独治
療後見られた無抑制収縮が薬物と鍼併用治療後に
消失し、膀胱容量も増大した。また、尿失禁量も
鍼治療施行後減少する傾向にあった。
【結語】今回我々は、パーキンソン病を基礎疾患
とした神経因性膀胱(過活動性膀胱)による尿失
禁患者に対して鍼治療を施行した。膀胱機能が改
善(無抑制収縮の消失と膀胱容量の増大)し、鍼
治療の有用性が示された。
2E10_1
キーワード:パーキンソン病、神経因性膀胱、
尿失禁、鍼治療
O-37
末梢性顔面神経麻痺に対する
鍼灸治療の1症例
富山市立砺波総合病院東洋医学科
○立野 豊、山岸達生、谷川聖明
【症例】55才、男性、会社員。
【主訴】左眼が閉じない、水が口からこぼれる。
【現病歴】98年8月29日起床時に左閉眼不能と左
耳介の水疱様湿疹を自覚し近医を受診。RamsayHunt症候群と診断され、薬物療法や低周波刺激治
療を約1ヶ月間受けたが症状は不変であった。9月
29日当院麻酔科を受診し星状神経節ブロック及び
スーパーライザー照射療法を約1ヶ月間施行され
たが症状に改善が得られず、11月2日鍼灸治療併
用を目的に当科紹介となった。
【現症】顔面患側に浅い鼻唇口、眼瞼や口角の下
垂を認める。前額作皺、閉眼、瞬目運動、頬のふ
くらませ、口笛運動は不能。味覚異常、聴覚過敏
は認めない。日本顔面神経研究会麻痺スコアに
て、40点中8点以下で完全麻痺と判断。
【四診】顔面患側はやや浮腫状で、肩背部には気
鬱を呈する。舌は薄白苔を伴う淡紅色で軽度歯根
を認める。声は低くて弱く聞き取り難く、患側の
重だるさ、眼の乾燥感を強く訴えている。腹候は
腹力軟で圧痛は認めず、脈状はやや浮、やや数、
渋で六部定位脈差診は右関上の虚と捉えた。
【治療経過】四診より脾虚証と判断した。治療は
本治法として太白穴、脾兪穴と、標治法として頚
肩部の気鬱や虚状を呈する部位に接触鍼を行っ
た。麻痺部分には接触鍼と15分間の切皮程度置鍼
を行った。麻酔科でのスーパーライザー照射療法
は継続とした。
鍼治療開始約2週後より顔面患側の重だるさが
軽減し、さらに流涙が認められ眼の乾燥感も改善
した。その後も良好な経過をとり約2ヶ月で日常
生活に支障を来さない程度に改善した。
【考察とまとめ】本症例は、発症直後から西洋医
学的治療を受けたが症状の改善が得られず、60日
以上の完全麻痺が持続した難治例と考えられた。
今回、証に基づき鍼治療を行うことにより良好な
経過が得られたことから、本症に対する鍼灸治療
の有用性を示唆する症例と考えられた。 2E10_2
キーワード:末梢性顔面神経麻痺、四診、
接触鍼、Ramsay-Hunt症候群
O-38
顔面神経麻痺患者の鍼灸治療
効果について(第2報)
埼玉医科大学東洋医学科
○新井千枝子、山口 智、小俣 浩
中村宏孝、阿部洋二郎、大野修嗣
埼玉医科大学健康管理センター
土肥 豊
パークヒルクリニック東洋医学外来
北川秀樹
【目的】われわれは、昨年度本学会において当科とパ
ークヒルクリニック東洋医学外来でこれまで取り扱っ
た末梢性顔面神経麻痺患者のうち、Bell麻痺患者群と
Ramsay-Hunt症候群を対象に患者の実態とその鍼灸治療
成績を比較した。その結果、初診時麻痺スコアはBell麻
痺よりもRamsay-Hunt症候群において低く、また、その
治療成績はBell麻痺のほうが高い改善率であった。そこ
で今回はさらに症例を追加し、末梢性顔面神経麻痺患
者の実態分析とより詳細な鍼灸治療効果について検討
したので報告する。
【方法】対象は、1996年4月から1999年8月までの3年4ヶ
月間に鍼灸治療を施行した末梢性顔面神経麻痺患者47
例についてである。こうした患者群の性別・年齢別分
類、罹病期間、初診時顔面神経麻痺スコア、治療回
数、後遺症の有無、また治療成績については、初診時
麻痺スコア、罹病期間及び治療期間、鍼治療回数との
関連性について検討した。
【結果】取り扱った患者群は女性が多く、年齢別では
40歳代が29.8%を占め、罹病期間は発症から2週間以内
の急性期に受診した例が半数以上であった。また、初
診時顔面神経麻痺スコアは6点以下でHouse-Brackmannの
分類においてGrade6、完全麻痺にあたる症例が60.4%に
認められ、Bell麻痺患者群とRamsay-Hunt症候群の初診時
麻痺スコアには有意差が認められた(P<0.02)。さら
に、こうした患者群の平均治療回数は26.4回であり、そ
の治療成績はBell麻痺において有意に高く(P<
0.0001)、患者群の初診時麻痺スコアと鍼治療による改
善率には負の相関が認められたが(r=-0.478、
P<0.0005)、他の因子との有意な関連性は認められな
かった。
【結語】顔面神経麻痺は、その病態として神経の浮
腫・膨化により神経管内において圧迫を受けることが
原因とされており、その成因は近年ウイルス感染説が
最も有力視されているが、血行障害説・免疫説なども
完全に否定できてはいないのが現状である。こうした
顔面神経麻痺の治療の目的の一つは傷害された神経や
筋の循環改善であり、鍼灸治療は神経機能の興奮や血
管の拡張、血流改善に寄与し、また通電刺激によるリ
ハビリテーション効果からも表情筋内の循環改善や廃
用性萎縮を防止するという報告もある。さらに、われ
われの今回の成績からも、鍼灸治療の有効率が高く、
また、初診時麻痺スコアが低値であっても高い改善率
が得られたことから、鍼灸治療は末梢性顔面神経麻痺
に対し、有用性の高い治療法であることが示唆され
た。
2E10_3
キーワード:末梢性顔面神経麻痺、鍼灸治療、
Ramsay-Hunt症候群、Bell麻痺
O-39
片麻痺患者へのリハビリテー
ションとしての鍼治療
−事例による検討−
関西鍼灸短期大学神経病研究センター
○鈴木俊明、鍋田理恵、谷万喜子
若山育郎、八瀬善郎
【はじめに】運動療法で解決し難い問題を鍼治療
により改善することができた症例を経験したの
で、筋電図学的評価も含めて報告する。
【症例紹介】症例は、右脳腫瘍により左片麻痺を
認めた26歳、女性である。平成5年12月に右海綿状
血管腫と診断され、左片麻痺が出現した。平成8年
2月に本学附属診療所を受診し鍼治療、運動療法を
開始した。初診時、歩行は装具なしでは不安定
で、スピードも低下していた。腱反射は全体的に
は中等度亢進、アキレス腱反射は高度亢進、筋緊
張は全体的には中等度亢進、下腿三頭筋は高度亢
進で、足関節背屈可動域は -5°と制限を認め
た。装具なしの歩行は不可能であり、足関節背屈
制限を原因とする歩行の不安定と、スピード低下
を問題点とした。
【鍼治療とその効果検討】運動療法として足関節
背屈ROM改善を目的に、足関節底屈筋群の持続的
筋伸張訓練を理学療法士により実施した。足関節
背屈ROMは軽度改善したが、不充分であったため
歩行機能改善は認められなかった。そこで、鍼治
療として麻痺側陽陵泉穴への置鍼をおこなった。
効果判定として、動作筋電図(前脛骨筋、ヒラメ
筋)、H波(ヒラメ筋)、歩行時間を治療前後に
計測した。鍼治療後には前脛骨筋の筋電図積分値
の増加、ヒラメ筋H波振幅の正常化、歩行時間の
短縮を認めた。
【まとめ】今回の鍼治療により、脊髄神経機能の
興奮性を示すH波、筋活動の程度を示す動作筋電
図、歩行機能(10m歩行時間)の全てが改善した
ことから、上位中枢機能の変化も含めた機能改善
を認めたと言える。本症例に対する鍼治療はリハ
ビリテーションの代表的な治療法である運動療法
で解決し難い点を解決し得たものとして高く評価
できる。
2E10_4
キーワード:片麻痺、リハビリテーション、
鍼治療
O-40
精神疾患の既往をもつ攣縮性
斜頸患者に対する鍼治療効果
関西鍼灸短期大学神経病研究センター
○谷万喜子、鍋田理恵、鈴木俊明
若山育郎、八瀬善郎
【はじめに】関西鍼灸短期大学附属診療所では、
攣縮性斜頸患者に対する鍼治療効果を検討してい
る。本疾患の中には、薬剤性ジストニーなど精神
疾患を併せもつ例もしばしば認められる。今回
は、本学で鍼治療をおこなった攣縮性斜頸患者の
うち、精神疾患の既往を持つ症例について治療経
過を報告する。
【対象】本学附属診療所神経内科で、鍼治療を受
けた攣縮性斜頸患者のうち、精神疾患の既往を持
つ6例(男性2名、女性4名、平均年齢30.2歳)であ
る。このうち、薬剤性ジストニーが4例、薬剤の
関与が濃厚とみられる症例が1例、薬剤の関与の
ない症例が1例であった。本学初診時までの罹病
期間は、平均16.3ヶ月(2∼34ヶ月)であった。頸
部偏倚のタイプは、側屈・回旋・屈曲が2例、側
屈・回旋1例、側屈1例、回旋1例、伸展1例であっ
た。
【鍼治療効果の検討】症状の変化を、本疾患の代
表的な評価法であるTsuiスコアおよび表面筋電図
によって検討した。表面筋電図の検査筋は、胸鎖
乳突筋、僧帽筋、板状筋の左右6部位とし、椅坐
位での安静時および頸部動作時における頸部筋の
筋活動を評価した。鍼治療は、表面筋電図評価の
結果同定した罹患筋に対しての循経取穴として、
胸鎖乳突筋には合谷穴、僧帽筋には外関穴、板状
筋には外関穴または後谿穴を用いて、週1回おこ
なった。Tsuiスコアおよび表面筋電図パターンを
初診時と比較し、効果を検討した。鍼治療10回目
(9週後)までに4例(側屈・回旋・屈曲1例、側
屈・回旋例、側屈例、回旋例)でTsuiスコアおよ
び表面筋電図所見に改善を認め、1例(側屈・回
旋・屈曲例)で表面筋電図所見の改善を認めた。
20回目(19週後)には他の1例(伸展例)にも表
面筋電図所見の改善を認めた。
【まとめ】 本研究の結果、精神症状を有する攣縮
性斜頸症例に対する鍼治療は、頸部伸展例では治
療期間を要するが、側屈、回旋など他の頸部偏倚
のタイプでは10週以内の早期に効果が認められ
た。
2E10_5
キーワード:痙縮性斜頸、精神疾患、鍼治療
O-41 「胃兪」穴と坐骨神経痛に
ついて2
北海道 東方鍼灸院 北海道 杏園堂鍼灸院
北海道 伯仁堂鍼灸院
北海道 東方鍼灸院
○吉川正子
須藤隆昭
濱野好伸
小笠原弘子
【目的】「胃兪」穴を使って、坐骨神経痛を治療
した報告はこれまでにない。坐骨神経痛の患者の
多くに、背部兪穴の「胃兪」に著明な反応(圧
痛、陥下、硬結等)が出ており、この「胃兪」穴
への施術は治癒への期間が大幅に短縮され、効果
が著しいので報告する。
【方法】坐骨神経痛の症状は、膀胱経、胆経、及
び胃経に出ることが多い。「胃兪」は膀胱経に属
するが、胃の「兪穴」でもあるから胃経の調整も
できる。「胃兪」への施術後、即時に臀部より下
肢へかけての症状(痛み、痺れ、冷え、筋緊張
等)が消失、又は緩解する。
【結果】坐骨神経痛の患者266人(年齢17歳∼91
歳)、平均56.3歳、病歴1日∼40年(1年以上が
49%以上)。治療回数1回∼34回、平均11.06回。
胃兪穴の反応は245人(92.1%)にあり、治癒161
人(65.71%)、有効71人(28.97%)、無効又は不
明13人(5.30%)であった。
【考察】“百病は脾胃より生じる”飲食の不摂や
ストレスにより脾胃の機能が低下すると、手足に
栄養が廻らなくなる。特に、寒湿の邪気(飲食、
外気等)を受けると、経脈が阻滞し、その循行部
位に痛みを生じる。坐骨神経痛は、坐骨神経への
栄養の供給が不足すると痛みを生じる。坐骨神経
痛の患者の多くに、胃の変調を認めるが、胃の病
変により臀部へ圧痛が生じる。坐骨神経痛の経路
は、膀胱経と胃経に一致するので、胃兪への施術
後、即時に臀部の圧痛が消失し症状が緩解するも
のと思われる。「胃兪」は一穴で胃の働きをよく
し、坐骨神経への栄養の補給を改善できるので、
本病の根本治療となり、治癒への期間が早まるも
のと確信する。
2E15_1
キーワード:胃兪、坐骨神経痛
O-42
急性腰痛に対する局所鍼治療
−局所治療と遠隔治療の比較−
古東整形外科 ○小澤庸宏、河村 修、古東司朗
【はじめに】今回我々は、急性腰痛に対して腰部
局所への施術を行い、腰腿点との治療成績を比較
検討したので報告する。
【対象】1998年3月より1999年11月までに急性腰痛
を訴えて来院した患者48名を対象とした。性別は
男性27名、女性21名で、年齢は12∼76才まで、平
均年齢40.4才であった。疾患は腰椎症10例、腰椎
椎間板症18例、筋筋膜性腰痛6例、腰椎椎間板ヘル
ニア7例、初診時に痛みが強く鑑別診断できなかっ
たもの7例であった。
【方法】施術は初診時の1回のみとした。施術部位
は左右の腎兪、志室、大腸兪と、腰部の最大圧痛
点1穴の計7穴を用いた。使用鍼は50mm20号ディス
ポーサブル鍼とし、10分間置鍼した。
施術効果は施術前後の指床間距離(以下、
FFD)及び、visual analogue scale(以下、VAS)を
評価した。なおFFDの前後はt検定を、VASの前
後は符号付順位検定を用いた。さらに腰腿点の治
療成績と比較した。
【結果】Ⅰ;FFDの施術効果
局所群は48例中、改善36例(75%)、不変12例
(25%)、平均改善距離8.9cmであり、施術前後に
有意差が認められた(P<0.1)。腰腿点群は50例中
改善49例(98%)、不変1例(2%)、平均改善距
離18.6cmであった。筋筋膜性腰痛の施術効果は両
群ともに改善率は100%であった。
Ⅱ;VASの施術効果
VASの評価は、施術前後の改善率が50%以上に
なったものを有効、1∼50%未満をやや有効、0%
を無効とした。その結果、局所施術群有効17例
(35%)、やや有効29例(60%)、無効2例(4%)
であり、施術前平均値8.0と施術後平均値5.3の間に
有意差が認められた(P<0.1)。腰腿点群は有効23
例(46%)、やや有効23例(46%)、無効4例
(8%)であった。筋筋膜性腰痛の施術効果は両群
ともに効果を認めた。
【考察】 急性腰痛に局所施術を行った結果、
FFD、VAS共に効果的であることがわかった。
腰腿点の治療効果と比較した結果、両群ともに
FFD、VASの改善率は高く、両群の施術効果に差
はみられなかった。
【結語】 急性腰痛に対して局所鍼治療は効果的で
あることが示唆された。
2E15_2
キーワード:急性腰痛、局所治療、遠隔治療、
FFD
O-43 上 腕 骨 外 側 上 顆 炎 に 対 す る
皮内鍼治療(第2報)
−年齢別にみる効果について−
古東整形外科 ○柏下貴廣、小澤庸宏、古東司朗
【目的】1997年全日本鍼灸学会において高原が皮
内鍼治療の効果について報告した。
今回我々は、更に症例を追加し、年齢別にみる
治療成績について検討したので報告する。
【対象】1999年5月より1999年11月までに来院した
上腕骨外側上顆炎と診断された9肢と、高原の報告
した28肢を加えた計37肢を対象とした。男性8肢、
女性29肢であった。年齢は21∼74才、平均年齢
50.5才であった。年代別では、20代2肢、30代4
肢、40代12肢、50代11肢、60代4肢、70代4肢で
あった。
【方法】評価は1;日常生活動作(以下、ADL)10
項目、2;握力、3;Visual Analogue Scale(以下
VAS)の3項目とした。
効果判定は初診時と2回目来院時(1∼6日後、平
均3日後)とした。施術部位は外側上顆部周辺にお
いて圧痛点2点とした。鍼はステンレス製皮内鍼平
軸3mmを使用した。
【結果】 Ⅰ ) A D L の 改 善 に つ い て は 改 善 3 1 肢
(84%)、不変4肢(11%)、増悪2肢(5%)であ
り、項目数は術前平均4.2項目から術後平均2.2項目
に改善した。皮内鍼によるADL障害の改善性と年
代別間に相関性は認められなかった。Ⅱ)握力の
改善については改善24肢(65%)、不変4肢
(11%)、増悪9肢(24%)であった。年代別で
は、ほぼ高齢になるにつれて握力の改善性は低下
していく傾向にあった。Ⅲ)VASの改善について
は改善29肢(78%)、不変1肢(3%)、増悪7肢
(19%)であった。年代別では高齢になるにつれ
てVASの改善性は低下していく傾向にあった。
Ⅳ)VAS改善距離とADL障害改善度の関係につい
てはVASの改善距離が長くなるにつれてADL障害
の項目数も減少していった。Ⅴ)VAS改善距離と
握力改善度との関係についてはVAS改善距離が長
くなるに従って握力も高くなった。
【考察】 上腕骨外側上顆炎に対する皮内鍼治療は
症例が若いほど改善性が良かった。よってOVERUSEによる外側上顆炎に対して皮内鍼治療は良好
な成績が得られるものと考えられた。また、上腕
骨外側上顆炎による機能障害と痛みについての相
関性が認められたことから、皮内鍼によって痛み
を取り除くことによってADLや握力の本来の機能
を回復させるに至ったと考えられる。
【結語】 上腕骨外側上顆炎に対して皮内鍼治療は
有効であり、その鎮痛作用により日常生活動作の
改善が得られるものと考える。
2E15_3
キーワード:上腕骨外側上顆炎、皮内鍼
O-44
内側型変形性膝関節症に対する
鍼治療の効果
古東整形外科
○小川貴司、森 豊、古東司朗
【目的】今回我々は内側型変形性膝関節症(以下
膝OA)に鍼治療を行い、短期間にて良好な成績を
得たので文献的考察を加えて報告する。
【対象】1999年2月から1999年9月までに膝OAと診
断された50歳以上の男女を対象とした。その内訳
は男7名、女28名、合計35名、罹患側は右28膝、
左20膝で合計48膝であった。年齢は50歳から79歳
平均65歳であった。
【方法】治療は初回から1週間までに合計3回行っ
た。施術部位は内側関節裂隙最大圧痛点、陰陵
泉、血海、内膝眼の4穴を選択した。使用した鍼
は50mm20号ステンレス製ディスポーサブル鍼を
用い、雀啄術後10分間置鍼した。痛みの評価は
Visual Analogue Scale(以下VAS)を用い、初回
治療前VASと3回目治療後VASからVASの改善率
(前後差÷治療前のPain Scale×100)を算出し
た。改善率50∼100%を有効群、0∼49%を無効群
とし、2段階で評価した。また有効群、無効群の
VAS改善cm(初回治療前VAS−3回目治療後VAS
=VAS改善cm)をそれぞれ比較した。その他、有
効群、無効群の平均治療効果持続時間をアンケー
ト形式で調査し、それぞれを比較した。
【結果】施術効果についてVAS改善率は、有効群
48例中36例75%、無効群48例中12例25%であっ
た。両群のVAS改善cmは有効群平均4.8cm、無効
群平均2.0cmで、有効群無効群間で有意な差がみ
られた(P<0.01)。治療効果持続時間は有効群平
均39.9時間、無効群21.5時間で有効群の方がなが
かった(P<0.01)。
【考察】今回の調査で我々は上記の項目の以外に
治療時平均年齢、鍼治療経験の有無、BMI、
FTA、X線grade分類について有効群と無効群の間
で検討したがすべてにおいて相関関係を見いだす
ことはできなかった。治療効果については有効群
が全症例の75%を占め、良好であった。膝内側に
は伏在神経膝蓋下枝が分布し、同神経が膝関節内
側の痛みを伝達するため、膝内側の4穴を用いた
ことにより、この神経に何らかのアプローチがで
きたのではないかと考える。また、施術手技に特
別な技術は必要としなかった。
【結語】膝OAに対して鍼治療を行い、施術に対し
ては特別な手技は用いず、48例中36例75%に有効
な結果が得られた。
2E15_4
キーワード:内側型変形性膝関節症、鍼治療
O-45
肩関節のスポーツ傷害に対する
鍼治療の1症例
−肋骨の疲労骨折が認められた症例−
東海医療学園専門学校
O-46
RCTを用いた肩凝りに対する
圧痛点鍼治療の効果
明治東洋医学院専門学校
○鍋田智之
【はじめに】演者は、平成11年4月より慶応大学
体育会硬式庭球部の依頼により、コンディショニ
ングの指導・管理を行っているが、今回、肩関節
の障害に悩む学生の鍼治療に際し貴重な経験をし
たので、その内容と経過について報告する。
【症例】20歳、男性、大学3年生。テニス歴9年、
プレースタイル:フォアハンド片手打ち、バック
ハンド片手打ち。平成11年7月頃より、肩関節の
違和感と共に疼痛、関節可動域の制限が出現し、
スポーツ外来を持つA整形外科にて精査の結果、
「オーバーユースによる腱板炎」との診断を受け
る。同科医師の指導の下、リハビリテーションと
鍼治療を行い、同年9月には疼痛も緩和し、関節
可動域の改善も認められた。他大学との対抗戦を
控えた同年10月初めに、突然、外転外旋障害を伴
う痛みが肩関節及びその周囲に起こり、念のため
先のA整形外科を受診したところ、第1肋骨の疲労
骨折がX線撮影により認められた。
【まとめ】 疲労骨折は、下腿や足部、骨盤部など
が著明であるが、今回のような例は数少なく、A
整形外科でも野球選手の2例のみである。本症例
では、鍼治療により疼痛や関節可動域の制限が緩
和され、鍼治療の有用性は認められたが、長引く
経過の場合は常に疲労骨折を念頭におくべきであ
る。スポーツ選手に対する鍼治療は単に痛みを鎮
めることに努めるだけでなく、競技特有の動作や
競技レベルを熟知し、治療に当たることが基本で
あり、今回も、肩関節をかばってテニスを続けた
結果、疲労骨折を来したものと考えられる。スポ
ーツ傷害における鍼治療を行う場合には、スポー
ツを専門とする医師やコーチなどとの連携が必要
不可欠であり、チーム医療の一翼を担えるように
研鑽が必要である。
2E15_5
【目的】 鍼灸治療において、圧痛点は治療点とし
て多く用いられている。しかし、その治療効果を
明確な対照群と比較した報告は少ない。今回我々
は、肩凝りを対象として圧痛点部の筋に鍼を刺入
した場合(刺入群)と皮膚を刺激した場合(sham
鍼群)の治療効果を、無作為化比較試験(RCT)
にて検討した。
【方法】 被験者はインフォームド・コンセントを
行い同意の得られた本校の学生ボランティアで徒
手検査によって上肢症状の認められなかった34名
を用いた。この被験者を肩凝りの程度・年齢・性
別・鍼の経験値において層別化を行い、その後封
筒法で刺入群17名(34.2±10.8歳)とsham鍼群17
名(30.8±12歳)に割り付けた。鍼治療部位は左
右の頸部・肩部・背部の6部位に分け、被験者が肩
凝りを訴える部位の圧痛点を調査し、各部位ごと
に最大2ヵ所を治療点とした。鍼治療は1週間に1回
とし 3週間行った。刺入群は40mm20号鍼を用いて
1∼2cm刺入し、5回の雀啄を加えた後5分間置鍼し
た。sham鍼群は、50mm20号鍼を40mmで切断し、
これを用いて刺入仕草を行い、5分間放置の後抜鍼
の仕草を行い刺入群とのマスキングを行った。治
療効果の評価として治療前後の圧痛閾値を測定し
た。また、肩凝りの変化を日誌に試験開始6日前か
ら約1ヶ月間の指定日にVAS法にて記録させた。試
験終了後に、どのような鍼治療を受けたと感じた
かをアンケート調査し、マスキングを評価した。
【結果】刺入群とsham鍼群の圧痛点部位は類似し
ていた。また、治療に用いた鍼の本数も同様で
あった。圧痛閾値は刺入群において治療後に顕著
な上昇を認めたが、sham鍼群では変動を認めな
かった。肩凝り感は治療直後にsham鍼群と比較し
て刺入群の顕著な低下が認められた。また、治療
回数が増加するにしたがって刺入群の治療効果が
持続する傾向を示した。両群間のマスキングは十
分であった。
【結語】 以上の結果は、鍼を筋まで刺入すること
が圧痛の改善に有効であることを示している。ま
た、圧痛点の鍼刺入治療が肩凝りに対して有効で
あることを強く示唆するものである。
2E16_1
キーワード:疲労骨折、鍼治療、スポーツ傷害、
肩関節
キーワード:無作為化比較試験、肩凝り、
圧痛点、sham鍼、鍼治療
○金子弘志、水野浩一
小山哲也、杉山誠一
O-47
五十肩での鍼灸治療の模索
−腱板の縮れ説と八綱弁証(裏熱証)から−
東京地方会
○原 正之
【はじめに】五十肩(特に凍結肩)は未だに正確
な原因が分からないままになっている、不思議な
病気である。凍結肩においては、治したと云える
報告はほとんど見あたらない。今回、McLaughlin
の「腱板の縮れ」説に共感し、また肩関節の炎症
を裏熱証として鍼灸治療を行い、良好な結果を得
たので報告する。
【症例1】57才、女性、主婦。主訴;左肩痛。現
病歴;3週間前で発症契機は無い。痛みは肩から上
腕外側で、夜間痛はない。所見;結髪動作はどう
にかできるが、結帯動作は不可。自動前挙は90
度、外転は70度。腫脹と熱感はごく軽度にある。
治療;当初は灸のみ。8診目から健筋益気をめざし
鍼を加える。経過;痛みは初診から減少。4診目に
は結髪動作は正常に、6診目に外転が160度に改
善。12診目(27日目)には結帯動作も正常になっ
た。
【症例2】78才、女性、主婦。主訴;左肩痛。現
病歴;4ヶ月前で、発症契機は特にない。某整形外
科で五十肩と診断され、薬剤や運動療法などの治
療を受けるが、痛みと可動域の増悪をみている。
夜間痛がある。所見;結髪、結帯動作は共に不
可。自動前挙は80度、外転は60度。内外旋は殆ど
不可。腫脹、熱感はある。治療;2診目までは灸の
み。3診目から鍼も加える。経過;3診目まで症状
に変化なしも、その晩より夜間痛の減少を見る。
16診目には前挙に、21診目には外転に改善が見ら
れ、結髪動作がどうにか出来る。24診目(79日
目)結髪動作が正常に、結帯動作がTh 9まで触れ、
略治。
【考察】 第1と第2肩関節は正常な三角筋に覆われ
ている(裏証)。故に、それらの炎症(熱証)に
対する治療には、細心の注意が必要である。鍼灸
の局所治療は盛熱を生じ易いため、裏熱実証では
局所を避けて、冷罨法を励行した。McLaughlinは
凍結肩を観血的に観察し、腱板が短縮して肩関節
の動きを高度に制限していることを報告してい
る。今回の鍼灸の臨床を通すと、癒着説などより
も、この「腱板の縮れ」説が最も理に適っている
ことが示唆される。この説が主流に至らないの
は、鍼灸が秘めているような治療手段を持たな
かったためではなかろうか。鍼灸側も寒熱表裏な
ど適切に実践して行かないと、秘めたる価値(健
筋益気、健脾益気)を逸しかねない。
2E16_2
キーワード:五十肩、凍結肩、鍼灸治療、
八綱弁証、腱板炎
O-48
頚部神経根症に対する鍼治療
の有効性(2)
−頚部神経根症の病型分類の試み−
三重地方会 慶福針灸
川村病院神経内科
○竹田博文
米山 榮
【はじめに】我々は入院にて安静を保った頚部神
経根症に対する鍼治療の有効性を、一昨年の本学
会において報告した。しかし、外来通院患者は安
静保持が仲々難しく患者によって予後や治療効果
の見通しの判断に迷う場合も多い。
今回通院にて鍼治療を行った頚部神経根症患者
について経過日数を観察し、どのような所見が予
後の指標となるかを検討したので、報告する。
【対象】慶福針灸および川村病院神経内科鍼灸外
来に頚肩背部∼上肢痛、しびれを訴えて来院した
5例(男3例、女2例、年齢47歳∼64歳)
【方法】
1.各症例について理学的徒手テスト・神経学的検
査を行い各所見を記録し、またMRIによる病巣
診断および鍼治療を行った。
2.疼痛を指標として症状半減および消失日数を観
察した。
3.改善所要日数と理学的所見およびMRI所見との
関連を検討した。
【結果】
1.MRI検査で5例全てに椎間板ヘルニア或いは骨
棘が描出され、MRI Grade分類はⅠ度1例、Ⅱ
度1例、Ⅲ度3例であった。
2.分節性に一致する知覚低下およびJackson test
或いは Spurling testによる放散痛は5例全てに認
めた。筋力低下は2例、頚部後屈による上肢
痛・しびれは3例に認めた。上肢腱反射低下は1
例に認め、4例は正常であった。
3.疼痛半減所要日数は9日∼55日、疼痛消失日数
は20日∼97日であった。
4.改善に要する日数が長い症例はいずれも頚部後
屈のみで上肢しびれや放散痛を認めたが、短か
い症例には認めなかった。上肢腱反射および
Jackson test、Spurling testは経過日数と関連す
る傾向はなかった。
【考察およびまとめ】頚部後屈で放散痛・しびれ
を認めた症例は、いずれもMRI Gradeが高度であ
り、経過日数も長びく傾向にあった。以上の結果
から本所見は、鍼灸臨床上頚部神経根症の予後因
子の一つとして重要であることが示唆された。
2E16_3
キーワード:頸部神経根症、予後因子、鍼治療
O-49
肩関節周囲炎に対する鍼治療
(第2報)
O-50
胸郭出口症候群に対する鍼治療
(第2報)
−手術適応と診断された1症例−
東京大学医学部アレルギー・リウマチ内科
○美根大介、小糸康治、粕谷大智
杉田正道、山本一彦
筑波技術短期大学鍼灸学科
坂井友実
【はじめに】我々は昨年の本学会において肩関節
周囲炎には大きくfreezing phaseとfrozen phaseとい
う2つの病期があり、病態が異なるため鍼治療の
効果にも相違がみられることを報告した。一般に
freezing phaseは症状の改善が得られ易いが、今回
freezing phaseでありながら他の症例とは異なった
経過を示した1例について報告する。
【症例】66歳、男性〔主訴〕右肩痛〔現病歴〕平
成10年8月から右肩の痛みを自覚。近医整形外科
にて局所注射を2ヶ月受けるが痛みが不変、D病院
を紹介されMRI撮影、腱板不全断裂と診断され
る。その後同院にて局所注射を継続していたが、
友人の紹介により当治療室で鍼治療を開始した。
〔初診時現症〕夜間痛・自発痛(-)、運動時痛
(+)、インピンジメントテスト陽性、筋萎縮:
棘上筋、棘下筋、三角筋に軽度、関節可動域:外
転140°外旋40°内旋L4、拘縮(-)。
【治療及び経過】鍼治療は疼痛の軽減と可動域の
改善、拘縮の予防を目的に棘上筋・棘下筋の低周
波鍼通電療法を中心とし、適宜他の物理療法、運
動療法を併用した。治療間隔は基本的に週一回の
ペースで行った。経過中、他のfreezing phaseの症
例とは異なり、疼痛が徐々に軽減するパターンは
見られず増悪、軽減を繰り返しながら治療開始後
6ヶ月の時点でペインスコアは10→5、関節可動域
は全方向に改善が認められた。
【考察及びまとめ】今回の症例は病期で判断する
とfreezing phaseであり疼痛の程度、関節可動域と
も改善が認められたが、治療に長期を要し十分な
結果が得られたとは言い難い。これは腱板不全断
裂という器質的変化が症状を遷延させ回復を妨げ
ていると推察され、肩関節周囲炎の鍼治療におい
ては拘縮の程度と共に器質的変化の有無が治療効
果に深く関係していると考えられる。 2E16_4
キーワード:肩関節周囲炎、freezing phase、
腱板不全断裂、鍼治療
東京大学医学部アレルギー・リウマチ内科
○小糸康治、美根大介、粕谷大智
杉田正道、山本一彦
筑波技術短期大学鍼灸学科
坂井友実
【はじめに】今回我々は罹病期間が21年と長く、
手術適応と診断された胸郭出口症候群(以下TOS
と略す)の症例について鍼治療を行い、自覚症
状、脈管テスト、サーモグラフィの変化について
検討したので報告する。
【症例】 31歳、女性〔主訴〕左上肢のしびれ感、
右上肢の脱力感〔現病歴〕昭和52年頃より両上肢
の脱力感を自覚。近医を受診するも原因は不明。
以後症状は増悪し、めまい、頚肩部痛他、多数の
愁訴が出現。平成8年、K病院にて腕神経叢造影
(右側肋鎖間隙に圧排像、左側実施せず)により
TOSと診断。手術を勧められるが本人は拒否。平
成11年8月鍼治療を希望して当科を受診。〔初診時
現症〕神経学的所見異常なし。アレンテスト
(L+/R+)、ライトテスト(L+/R+)、エデンテス
ト(L-/R-)、モ−リ−テスト(L++/R++)、ルー
ステスト(1分20秒)。
【治療及び経過】臨床所見から胸郭出口部での圧
迫による神経刺激症状が考えられた。鍼治療は圧
迫症状の改善を目的に斜角筋部、鎖骨下筋部、小
胸筋部に対し低周波鍼通電療法(1Hz、10min)を
主に行った。経過は、治療1ヶ月にて上肢症状に対
するペインスコアに改善(10→3)がみられた。
又、握力、脈管テストにおいて改善が認められ
た。不定愁訴は治療3ヶ月でCMIの身体的自覚にや
や改善が認められた。サーモグラフィによるルー
ステスト後の手指皮膚温回復の過程を観察した
が、著明な異常は認められなかった。
【考察及びまとめ】TOSの圧迫要因として神経造
影上、骨性要因と筋腱要因が報告されており、本
症例は中斜角筋による圧迫であった。比較的早期
に上肢症状の改善が認められたのは圧迫の本態が
筋によるものであったために鍼治療で局所の圧迫
が緩解されやすかったものと推察され、手術適応
症例であっても筋腱要因による腕神経叢圧迫型で
あれば鍼治療の有用性が期待できるものと推察さ
れた。
2E16_5
キーワード:胸郭出口症候群、腕神経叢造影、
サーモグラフィ、鍼治療
O-51
パニック障害に対する1症例
O-52
病状を改質した鍼灸臨床例
−脊髄小脳変性症−
大阪地方会 ○山田和正
兵庫地方会 元町なかよし鍼灸
【目的】 不安神経症の1種に「パニック障害」が
ある。このような疾患に対して薬物療法とカウン
セリングが主体に行われる事が多い。今回の症例
は、中医学的に診断・治療を行い改善が得られた
1症例を報告する。
【症例】27才、男性。現在、塾講師。平成8年5月
大学生の頃に、急に動悸・息苦しい・発熱・頭が
クラクラする・手足が冷える・手足に汗をかくと
いった発作症状が出現する。発作は夕食後・勉強
の後・不安になると出現しやすい。病院にて「パ
ニック障害」の診断を受け、薬を服用するが改善
せず平成11年3月に当治療院に来院する。
【診断】 四診合参した結果、幼少時∼大学生迄の
精神的なストレスが肝鬱気滞を形成し、大学時代
の飲食不節による湿熱の形成、労倦として睡眠を
削ってバイトをしたことが心血不足を引き起こし
これらが重なり発作を出現させたと診断した。
【弁証】肝鬱気滞、湿熱、労傷 【治療処置】 疏肝理気、清熱利湿を目的とし百
会・合谷・太衝・上廉穴などを適宜に使用する。
また、薬剤師に清熱利湿、養心を中心とした漢方
処方を依頼する。
【結果】平成11年7月時点では発作が出現しなくな
る。現在も再発を防ぐため治療を行う。
【考察】 中医学の中に「形神合一」の観点が有り
人体の構成・機能と精神活動は切り離せないもの
と考えている。今回の症例を通じて、治療効果が
得られたことが証明している。
3E9_1
キーワード:パニック障害、肝鬱気滞、湿熱、
労傷、鍼治療
○田中重喜
【目的】初期症状;患者が運転中に路側帯が二重
に視えた。以後平成5年京大病院を受診、脊髄小
脳変性症の診断後、指定病院と整体鍼灸リハビリ
に経過し、病状不良で来院。不語、失禁、失調等
を分析、Physicalなリハビリや介護の間題点を改め
鍼灸施術にMenta1な鍼灸感を呼称連動させて統合
感覚を醸成、難症離脱を動機付けて余命の活性
化、QOL改質に一定の施療結果を得たので報告す
る。介護疲労の奥さんを含め家庭の崩壊防除に得
る処があった。
【方法】脊髄小脳の機能不良で身体の平衡が執れ
ない他、呼吸困難喘鳴、不語、二重視、直立・歩
行不能、左側寒冷、不書等で寝たきり全介護を要
した。残存大脳皮質の廃用性退化を防ぐ為、鍼術
と得気:鍼感と運動し治療に参加と自律養生を具
体的に示し症状好転を動機付ける事を計った。
【結果】自律意識の復元:尿意自覚に失禁パンツ
は禁止。中極穴で尿道鍼感を発声応答さす。ベッ
ド止め和室の寝床は便所に這うて行ける。転倒骨
折を防止。臥位から転じ膝立て手をついて立ち上
がる。車椅子は不用必要時自分で漕ぐ。足三里
穴、邁歩穴、ブローカ中枢に横刺、阻力鍼刺法で
雀啄旋捻中に鍼感と発声を練習。痛のイの叫びか
ら回数を重ね会話に至る。脱着衣は自力。指趾尖
の十宣気端に棒灸雀啄知熱灸で知覚神経を励起さ
せ運動さす。廃用退行と自力厚生を自覚させた。
【結語】 施術後のMRIで萎縮進行を不認。歩行排
尿着替え挨拶謝礼改善。リハビリ時鍼灸知熱灸を
先行し無痛化とメンタルな参加意識を動機付け挽
回した。阻力鍼刺法で鍼感を発声報告は改善を見
た。毎度治療不満点を次回に書き提出させた。治
療参加を動機付け挑戦の様子が彼自身の記述に見
ゆ。本人余命活性化と介護苦労軽減で奥様自己実
現。
3E9_2
キーワード:奇穴、阻力鍼刺法、鍼感発声、介護、
雀啄灸
O-53 鍼灸治療がC型肝炎キャリアの
ウィルス量に及ぼす影響について
水嶋クリニック東洋医学研究所
○小椋加枝
水嶋丈雄
O-54
高齢者のうつ状態と鍼灸治療
(第1報)
―明治鍼灸大学附属鍼灸センター外来を受診した
高齢者患者のうつ状態と予診表の関係―
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
○益本えりか、福田文彦、中島舞子
笹岡知子、高野道代、矢野 忠
金子産婦人科
森 珠美
大澤病院
工藤大作
町立ゆきぐに鍼灸治療院
瀬沼広幸
【目的】C型慢性肝炎は、その易感染性の為、鍼
灸治療には向かないといわれてきたが、我々は鍼
灸治療が体内の免疫に影響を与えることを第48回
鍼灸学術大会で発表した。このことからC型肝炎
ウイルスに対しても 影響を与えられるのではな
いかと検討を試みた。
【方法】自然治癒症例を除外する為、2年以上の
経過をもって肝逸脱素酵素(トランスアミナー
ゼ)が正常化した群のみを選択し、C型肝炎キャ
リア(男5名、女5名、平均年齢57.8歳、平均罹病
期間15年)に対し、鍼灸治療を行った。HCVRNAウイルス量を時系的に分岐DNAブローブ法で
測定した。HCV-RNAのウイルス量の経過と変遷
と体内の免疫の動態を推測する為、治療の前後で
尿中17OHCSの測定を行った。治療は、長さ3cm経
0.16mmセイリンディスポ鍼を用い、脈診にて虚実
を調整した後、『難病鍼灸』(張仁著)の慢性病
毒性肝炎の治療に基き、大椎・至陽・肝兪・脾
兪・命門・足三里・陽陵泉・気海・三陰交を症状
に合わせて取り、長さ4cm、0.20mmのセイリンデ
ィスポ鍼にて灸頭鍼若しくは生姜灸を行った。
【結果】症例①男、37歳、罹患後20年、脾腎陽虚
証:1.2→0.5未満→0.5未満(MEQ/ml) ②男、58
歳、罹患後25年、肝鬱 m血証:6.5→0.5未満→0.5
未満 ③男、62歳、罹患後6年、肝腎陰虚証:7.8
→9.5→13→12→19 ④男、60歳、罹患後10年、肝
鬱m血証:3.7→3.9→5.1→3.4 ⑤男、58歳、罹患
後3年、肝気鬱結証:0.88→29→0.5未満→0.5未満
⑥女、55歳、罹患後7年、肝鬱水滞証:2.2→5.2→
15→19 ⑦女65歳、罹患後30年、肝脾不和証:2.1
→0.5未満→0.5未満 ⑧女47歳、罹患後15年、寒
湿阻絡証:1.3→0.5未満→0.5未満 ⑨女、73歳、
罹患後14年、腎虚水滞証:2.2→4.0 ⑩女、63
歳、罹患後20年、肝腎陰虚症:11→18
【考察】10人中5人のC型肝炎ウイルスの消失を認
め、かつ消失後3ヶ月の再検においても再燃を認
めなかった。10人中4人はウイルス量の上昇を認
める。10人中1人は一時上昇した後、減少を認め
る。何れの患者も肝臓トランスアミナーゼ値、血
小板数には変化なく、自覚症状は軽減をみた。手
技の相違によることも念頭に起き、治療前後の尿
中17OHCSを測定してみたが、いずれも分泌量は
減少し、免疫の亢進を指していた。すなわちウイ
ルス量の増減に関してはウイルスのアロタイプが
問題になると考えられる為、現段階において分析
中である。
3E9_3
【はじめに】うつ状態は「ゆううつ」「さびしい
い」などの精神症状と「睡眠障害」「食欲不振」
などの身体症状を伴う気分障害であり、高齢者で
は脳の器質的変化や社会的・環境的要因などによ
りうつ状態(軽症者が多い)を示すことがある。
このような患者が身体的愁訴の治療を目的に鍼灸
施術所に来院することも多い。しかし、うつ状態
を示す高齢者患者の来院状況を明らかにした報告
はない。そこで我々は、本附属鍼灸センターの65
歳以上の新患患者を対象にうつ状態を調査し、う
つ状態患者の来院状況と患者の年齢・主訴・簡易
な予診表との関連について検討したので報告す
る。
【対象・方法】1999年5月から11月までに明治鍼灸
大学附属鍼灸センターに来院した65歳以上の新患
患者186名のうち調査に協力が得られた121名を対
象とした。対象者のうち回答に不備がない90名
(女性46名、男性44名、平均年齢72.6歳)を検討
の対象とした。うつ状態はGeriatric Depression
Scale(GDS)簡易版、本鍼灸センターで使用して
いる消化器症状、呼吸器症状、泌尿生殖器症状、
循環器症状、精神症状などから構成されている予
診表(女性28項目、男性27項目)を使用し評価し
た。なおGDS及び予診表の調査には、基本的に治
療前に治療者以外の第三者が行った。
【結果・考察】GDSスコアの結果から、正常46名
(51.1%)、軽度うつ状態32名(35.6%)、高度う
つ状態12名(13.3%)であった。主訴は、運動器
疾患に対する愁訴が多かったがうつ状態を疑わせ
る精神症状を訴えた患者はなかった。GDSスコア
と年齢との間に相関は見られなかった。GDSスコ
アと予診表の項目全体及び精神症状項目の「は
い」の数との間には相関関係は見られなかった。
以上の結果から、鍼灸治療を希望して来院する高
齢者患者のうち軽度も含めると約半数はうつ状態
を考慮する必要があり、その状態は、主訴・年
齢・簡易な予診表では、明確にすることが出来に
くく、GDSなどによるスクリーニングを行うこと
が有用であることが示唆された。
3E9_4
キーワード:C型肝炎キャリア、鍼灸治療、
HCV-RNA、尿中17OHCS、免疫亢進
キーワード:高齢者、うつ状態、GDS
鍼灸施術所、予診表
O-55
肩こりに対する督脉接触鍼法
の影響観察について
−超音波断層写真撮影装置の活用−
東京地方会
○一の瀬宏
土肥康子
防衛医大解剖学第一講座
竹内京子
国立身障者リハビリテーションセンター理療教育部
小比賀黎子
【はじめに】肩こり及び頸こりに対する鍼灸治療
は、不定愁訴改善のひとつとして日常的に行われ
ていることである。私たちは、臨床的に督脉上の
経穴に接触鍼をすることにより、症状が緩解する
体験を得ていたが、今回、超音波断層写真撮影装
置(エコー)を用いて、肩頸部の組織の変化をと
らえることができたので報告する。
【方法】 対象者は大学ラグビー部の選手と大学職
員の女性の2名である。前者はがっしりとした体格
の持ち主であるが、頸肩のこり腰背部痛、下肢の
不調を訴えている。後者は、日常の健康管理は自
覚的に行われているが多忙であり時に腰背痛の訴
えあり。このような2者に対して先ず触診によ
り、肩こりの状態を把握し、大椎部、肩中兪付近
の筋肉組織のエコーを撮る。後にそれぞれ督脉上
の経穴至陽穴、腰の陽関穴1カ所づつを切経によ
り選び、直径1mm、長さ80mmの銀製鍼にて皮膚
刺激を数秒行った。その直後のエコーにより、術
前、術後の影像の比較を行った。
【結果】 被験者たちが、気持ちよくなった、筋肉
のこりがほぐれたような気がするということに対
して、術前、術後の影像でも患部に変化が認めら
れた。尚ラグビー選手の場合、大椎部のエコー像
は当初骨の影像は見えなかったが、術後は明瞭に
なった。
【考察】 私たちの肩こり治療に対しての督脉上の
一点の皮膚刺激法は、症状の緩解に関与している
ことを得ていたが、評価に対しては主観的、感覚
的であった。今回エコーを併用することによっ
て、こり部の組織像変化を形態学的にも客観的に
かつ容易に捕らえることができた。そして、督脉
上の治療と組織像の可視化とによって、術者から
のアドバイスと、被験者自身が症状改善への手掛
かりを得ようとする、この両者間の新たなコミニ
ケーションの形成に役立つことも示唆された。
3E9_5
キーワード:肩こり、督脉、接触鍼、
超音波断層写真撮影
O-56
東西和合の対応から鍼灸治療が
奏功した重症筋無力症の1例
−治療者の心の影響も含めての1考察−
東京地方会 はり・きゅう温故堂治療院
○沢田 寛
【はじめに】重症筋無力症と診断された患者が、
鍼灸治療と開業医との協力により、現代薬の投薬
無しに専門病院での胸腺摘出術を中止するまでに
改善した。治療経過と共に、治療者の心理的変化
も考察し報告する。
【症例】36歳、女性。既往症 特になし。家族歴
重症筋無力症(-)現病歴 1995年長女出産後か
ら疲れが溜まった感じで、1998年春頃よりものが
二重に見えたり、瞼が重なり、寝ている時にめま
いがし、嘔吐することがある。頭痛。1998年12月
28日当院初診。治療数回で症状の改善が芳しくな
いので漢方を併用することを勧め、協力医院を紹
介。医院で漢方の処方と共に検査により、抗アセ
チルコリン受容体抗体値44nmol/l(正常0.2)で重
症筋無力症と診断。都立の専門病院へ紹介、早々
の胸腺摘出術を勧められる。本人希望で急変があ
れば即座に手術と言う条件で入院手術を1999年8
月に延期。それまでの期間を鍼灸治療と漢方で加
療することになった。治療は筋力テストを主軸に
診断治療を行った。
【結果】抗アセチルコリン受容体抗体値は変化な
いものの、複視を始めとする筋力の低下が改善さ
れたので胸腺摘出術を中止。経過観察となった。
【考察・結語】当初進行していた重症筋無力症が
症状の軽減に転じた事は、鍼灸治療と医師との協
力による東西和合の対応が有効と考えられる。ま
た患者の抱える問題の傾聴等を続ける治療者の心
理的変化も影響があったのでは無いかと考えら
る。
3E10_1
キーワード:重症筋無力症、東西和合、
抗アセチルコリン抗体、鍼治療
O-57
アトピー性皮膚炎の鍼灸治療
と自己免疫疾患への応用
O-58
鍼治療は気候による関節症状
の変動に対して有効か?
−慢性関節リウマチ2症例の追跡−
東京地方会 ○飯沼浩江
関西鍼灸短期大学
【目的】本学会で1988年(38回)より表題に関し
て毎回発表してきた。今回、血清IgE(非特異)高
検出者で多量かつ長期ステロイド使用者は治癒す
るかという難しい課題で、対象者の増加があり良
好な結果が出たので鍼灸治療悪化因子も含めて報
告する。
【対象者・治療方法】(Ⅰ)血清IgE(非特異)
3,000∼18,000IU/ML検出者で、長期に多量の各種
ステロイド軟膏使用、10名(男性5名、女性5名)
内、気管支喘息合併者7名。(Ⅱ)自己免疫疾患
対象者3名。他に皮膚炎のみで抗核抗体検出者3
名。(Ⅲ)他施設の鍼灸治療で悪化したアトピー
性皮膚炎3名。《治療方法》1)30mm14号ディス
ポ鍼で数カ所の接触鍼、中級もぐさ少量を5秒∼
30秒連続燃焼38℃以下で熱感を与えない。2)皮
膚温度の精製水洗浄。3)植物多品目入りスープ
の飲用。《記録方法》1)経過写真。2)IgE、好酸
球、LDH、CH50、抗核抗体、炎症反応検査。
【結果】1)長期・多量ステロイド塗布箇所に限
定した島状の皮膚炎悪化は、当該治療で治癒。
2)潰瘍性大腸炎罹患者は53カ月再発せず。3)幼
児期に発症したアトピー性皮膚炎患者で、成人期
に悪化、抗核抗体検出を見て時々の悪化現象があ
る。4)血清IgE高値者10名中8名(内気管支喘息合
併者6名)は完全緩解。
【考察】対象者(Ⅲ)は、炎症局所の体液滲出、
むくみ、掻痒憎悪、37℃台の1カ月以上の発熱
(2例)がありだるい、ASO検出(1例)などか
ら、1)鍼灸刺激量を極限まで減じた。2)アレル
ギー疾患全域への治療開発が必要でありその1つ
として当該治療法を提案する。3)1995年の本学
会で体幹部から末梢へほぼ一定の「炎症移動現
象」を写真撮影で捕らえ、この体内システムと思
われる現象に添った治療を実施し良好な結果を得
ている。
【結論】当該治療で、アレルギー疾患全域の発症
回避とIgE高値のⅠ型アレルギーの治療効果を証明
した。行政が研究着手しているⅠ型アレルギー遺
伝子探査は、今日の社会状況では治らない理由づ
けや、優性学につながる危険があり、本研究は安
易な判断を阻止する目的もある。
3E10_2
キーワード:アトピー性皮膚炎、自己免疫疾患、
鍼灸治療、ステロイド離脱
○若山育郎、赤川淳一
佐竹栄二、八瀬善郎
【目的】 亜急性期および慢性期の慢性関節リウマ
チ(RA)患者に対し鍼治療を継続的に施行し、気
候による関節症状の変動に対する鍼治療の効果に
ついて検討した。
【症例】症例1.36歳男性。昭和62年(26歳)より
両手MP関節の腫脹、疼痛にて発症。某病院整形外
科にてRAと診断された。以降も寛解増悪を繰り返
していたが、平成11年1月、RAのコントロール目
的で鍼治療を希望して当院初診。初診時より週1か
ら2回鍼治療を継続している。症例2.57歳女性。
平成10年4月頃より両側手指のこわばり、腫脹、手
関節、膝関節、足関節の疼痛、腫脹が出現しRAと
診断、平成10年7月より当診療所にて定期的に鍼治
療を継続中である。
【方法】患者さんにはペインスコア(0∼10点)を
連日記録するよう指導した。6種類の気候パラメー
タ(平均気圧、平均気温、平均蒸気圧、相対湿
度、日照時間、平均風速)は最寄りの気象台のデ
ータを活用した。以上のデータを用いてペインス
コアと各パラメータとの関連について検討した。
【結果】 いずれも問診にて気候と関節症状と強く
関連すると訴えた症例である。症例1については、
ペインスコアは平均気温、平均蒸気圧と有意な負
の相関を示したが、この傾向は冬から夏にかけて
の期間に限られ、夏以降は平均気温、平均蒸気圧
に拘わらずほぼ一定の値を示した。また、日々の
変化に注目すると痛みの増悪は前日に比べて、湿
度が上昇し気圧、気温が下降した場合にpeakを示
す傾向があったが、鍼治療開始4ヶ月以降はそうし
た傾向は顕著ではなくなってきた。症例2は鍼治療
開始1年以降の検討であるが、各パラメータとペイ
ンスコアとの有意な関連は認められなかった。
日々の変化については気温の低下によりペインス
コアが影響を受ける傾向はやや残るものの気圧、
湿度による明らかな影響は認められなかった。
【結語】 継続的な鍼治療は慢性関節リウマチ患者
において気候による関節症状の変動を軽減する可
能性が強い。
3E10_3
キーワード:慢性関節リウマチ、気候、鍼治療
O-59
慢性関節リウマチに対する
鍼灸治療(第1報)
−QOLを指標に−
東京大学医学部アレルギー・リウマチ内科 ○粕谷大智、美根大介、小糸康治
杉田正道、山本一彦
筑波技術短期大学鍼灸学科
坂井友実
【はじめに】我々は慢性関節リウマチ(以下RAと
略す)の治療プログラムの中で、鍼灸治療の位置
付けを確認する意味でQOLの観点から鍼灸治療の
効果を検討したので報告する。
【対象と方法】当科に通院中のRA患者10例を対象
とした。内訳は全例女性、年齢45∼75歳、罹患年
数11年∼40年、Class2(8例)3(2例)である。患
者QOL評価は厚生省リウマチ調査研究事業団QOL
班の作成したAIMS-2(Arthritis Impact Measurement
Scale Ver.2)日本語版調査票を用い、鍼灸治療開
始時、開始6カ月後、1年後に評価をした。鍼灸治
療は病期別に活動性や機能障害を考慮しながら局
所と全身の治療を行った。
【結果】AIMS-2を用いたQOLの総合得点は開始時
138.5点、6カ月後 128.6点、1年後 113.9点と開始時
と比べ、6カ月後、1年後にすべての項目において
AIMS得点は低くなり、その中で有意に改善を認め
たも項目は、痛み、歩行能、上肢機能、緊張、全
体の満足度の5項目であった。
【考察およびまとめ】厚生省リウマチ調査研究事
業団QOL班がAIMS-2をもちいてQOLの調査を行っ
た結果では、RA患者が最も良くなって欲しいと希
望する病苦の第1は痛みであり、第2は歩行、つ
いで手指機能、家事、仕事など身体の不自由によ
るADLの障害が病苦の上位を占めている。RA患者
は通常、薬物療法や関節注射などの治療を行って
おり、痛みはある程度コントロールされている
が、それでも鈍痛、つっぱり感、こり感、しびれ
などの愁訴を訴える患者が多いのが現状である。
今回、鍼灸治療はそのような症状に対しても効果
が期待でき、QOLの向上に役立つものと考える。
3E10_4
キーワード:慢性関節リウマチ、QOL、
AIMS-2日本語版、鍼治療
O-60
外分泌腺障害を有するシェー
グレン症候群患者の鍼治療効
果(第3報)
−経時的変化と累積効果についての検討−
埼玉医科大学東洋医学科
○小俣 浩、山口 智、新井千枝子
中村宏孝、阿部洋二郎、浅香隆、大野修嗣
埼玉医科大学健康管理センター
土肥 豊
【目的】我々は、これまで本学会においてシェーグレン
症候群(SjS)患者の外分泌腺障害に対する鍼治療効果
を外分泌量と顔面部皮膚温度を指標に観察し報告した。
その結果、特に顔面部への高頻度鍼通電刺激は外分泌量
を増加させることがわかった。そこで今回は、SjS患者
群に対する顔面部30Hz鍼通電刺激による経時的変化と顔
面部30Hz鍼通電療法10回施行後の累積効果についても検
討したので報告する。
【対象と方法】対象は、当科外来またはリウマチ膠原病
科外来及び入院中の厚生省診断基準を満たすSjS患者群
15例(全例女性、22歳∼72歳 平均年齢53.3±13.0歳、
mean±SD)である。測定方法は、鍼治療前後の涙液分
泌量をSchirmer法、唾液分泌量をSaxon法により、また顔
面部皮膚温度変化をThermographyを用い観察し、乾燥自
覚症状の推移は、SjS診断基準の参考事項をもとに作成
した乾燥症状スコアにて評価した。鍼治療方法は、ステ
ンレス鍼(40㎜・16号)を用い顔面部の下関穴−翳風穴
に30Hz鍼通電療法を左右側に10分間行った。
【結果】 ①SjS患者群7例の1回の顔面部30HzAET前、
AET直後、30分、1時間、2時間の経時的変化では、涙液
量・唾液量・皮膚温度のいずれにも統計学的には有意差
はなかったが、涙液分泌量及び皮膚温度では経時的に増
加する傾向がみられた。②SjS患者群10例の30HzAET10
回の涙液量・唾液量の累積効果では、どちらにおいても
統計学的には有意差はなかったが、唾液分泌量が増加す
る傾向がみられた。また乾燥スコアの累積効果では、
dry eye scoreでは有意差はみられなかったが、dry mouth
scoreの初回と10回目施行後の比較では明らかな有意差が
認められた。
【考察】これらの検討結果から、経時的変化では臨床上
患者は1日間から3日間の鍼持続効果を認める者が多く、
今回の最高2時間までの検討では本来の外分泌腺反応が
得られず、さらに長時間の検討が必要と考えられた。ま
た累積効果での分泌量変化とスコア化した自覚症状の結
果の差は、患者群において分泌量と自覚症状は必ずしも
相関しないことが考えられた。このことは、口腔乾燥を
訴えるとき、口腔内において乾燥を感受する部位と分泌
する部位の差が影響するものなのか、それ以外の修飾過
程が存在するのか不明である。
【結語】 以上のことから、SjS患者群の乾燥症状に対す
る鍼治療は刺激部位や刺激頻度を考慮することでより効
果的な治療効果を得、患者の予後やQOLの向上に寄与す
るものと考える。さらにSjS患者の鍼治療は、現代医療
において有用性が高いことも示唆された。
3E10_5
キーワード:鍼療法、膠原病、
シェーグレン症候群
O-61
迎香穴刺鍼とアロマテラピーに
より嗅覚麻痺が改善した1症例
福岡地方会
○大淵千尋
【目的】アロマテラピーにおける迎香穴刺鍼の臨
床的意義について嗅覚麻痺症例を通して検討し
た。
【方法】症例報告:40才女性 嗅覚麻痺症
風邪罹患後、嗅覚麻痺症状を呈して耳鼻科を受
診。薬物投与等の治療を受けるが、いずれも無
効。当分治癒しないと言われ鍼灸治療を受ける。
鍼灸治療は、迎香穴(-)合谷(+)1Hz15分間
低周波鍼通電を施行する。
鍼:セイリンステンレス、16号50mm
低周波通電器:全医療器製オームパルサー4500
アロマテラピー患者には、ダイオード刺激点を
迎香穴として、円皮鍼を貼付。
ダイオード:柿本医療機器製
円皮鍼:セイリンジュニア
サーモグラフィー:日本アビオニクス製TVS3300
【結果】嗅覚麻痺症は、初回治療後の帰路に嗅覚
覚醒し、翌日再来の嗅覚試験は、昨日(-)が
(+)に復した。迎香穴の取穴は、ダイオード刺
激点をとった。
患者は、ダイオード刺激点に円皮鍼を貼付し、
アロマテラピーを施行した結果、香りに対して感
受性が増大した。
【結語】古来より、迎香穴は刺鍼すると宣通肺竅
の作用がはかられ嗅覚が回復し、香味をよく迎え
入れ、臭いの嗅ぎとれない症状を主治すると言わ
れている。それゆえに迎香穴刺激は、嗅覚に対す
る感受性を増大させるので、迎香穴は、無嗅覚症
の治療やアロマテラピーの効果増減に是非用いる
べき経穴である。
客観的に宣通肺竅の作用すなわち、鼻孔への外
気の侵入が増加し、鼻部の温度低下を知るため、
施術前と後のサーモグラフィーをボランティアを
使い撮影した所、サーモグラムに見られるとお
り、施術前に比し施術後は明らかに鼻部の温度低
下が示された。
また、アロマテラピーを施行するには、経絡・
経穴に熟知した鍼灸師を参加させれば、効果の増
強が期待される。
2D9_1
キーワード:迎香穴、無嗅覚症、アロマテラピー、
低周波鍼通電、サーモグラフィー
O-62 同経遠位穴による視力回復の効果
北海道
○須藤隆昭
【はじめに】視力回復に関しては、眼科医のなか
でも、それを可能とみる医師と不可能とみる医師
に意見がわかれているが、鍼灸治療によって回復
した例がいくつか報告されている。その多くが目
の周囲のツボを使用したものであった。
【目的】 吉川正子は96年のニューヨーク世界鍼灸
学会において、「弁証論治の応用による眼科治療
の標準化作業」と題し、1000眼の視力回復例につ
いて報告しているが、その中で遠位穴の有用性に
ついても述べられていた。今回はそれを一部追試
する形で、同じように私の臨床の中から1000眼の
視力回復について分析し、その効果を検討しよう
と思った。
【方法】視力回復を目的に治療にきた500人に対
し、目の周囲の圧痛点を捜し、その同じ経絡上の
反応点に刺鍼。例えば膀胱経の「睛明」に圧痛が
あれば、「至陰」。胃経の「四白」に圧痛があれ
ば「内庭」というように取穴する。さらに全体療
法も重要なので、腹部の圧痛も調べ、「期門」に
圧痛があれば「太衝」に取穴し刺鍼。20分程度置
鍼。また補助的に耳穴圧迫法と目の体操を指導。
10回の治療を1クールとする。
【結果】1クール後の視力は、変化なし6%、1ポイ
ントアップ22%、2∼4ポイントアップ53%、5ポイ
ント以上アップ19%。平均で3ポイント強がアップ
した。
【考察】 目の周囲に刺鍼するのは、顔面内出血の
危険性があり、またなんとなく恐怖感を与えるも
のだが、遠位穴を使用した場合にはそれがないの
で、子供にも抵抗なく治療ができる。また回復し
た視力も数カ月後にまた低下していくこともある
ので、維持するために目の体操とツボ刺激を家で
も続けるように指導するのも大切である。 2D9_2
キーワード:視力回復、同経遠位穴、鍼治療
O-63
耳鳴に対する鍼治療の1症例
関西鍼灸短期大学
○坂口俊二、楳田高士
川本正純、中吉隆之
藤川 治
【はじめに】感音難聴に伴う耳鳴患者に対し、継
続的に鍼治療を行い、奏効したので報告する。
【症例】 51歳女性で事務職と看護婦を兼務。主訴
は右耳鳴。初発は平成10年7月23日(テレビから聴
こえる女性の声が耳に響いた)。8月1日にT病院
を受診し、諸検査の結果から、右低音障害型感音
難聴と診断され、10日間の入院加療。しかし、退
院翌日の12日より右耳鳴(モーター音)を自覚
し、24日には聴力も500Hzで40∼50dbに低下した
ことから、メチコバール、カルナクレインおよび
柴苓湯が処方された。その後、プレゾニゾロン、
メイラックスが加えられた。11月末頃から聴力は
変化ないものの、耳鳴がやや改善されたため、柴
苓湯とメイラックスのみの服用で経過観察するこ
とになった。初診は平成11年2月25日。既往歴とし
て32歳時に子宮筋腫にて子宮全摘。40歳より白衣
高血圧症。
【治療・評価】鍼治療は週1∼2回の間隔で、耳周
辺ならびに主として四肢への置鍼もしくは低周波
鍼通電を行った。耳鳴の自覚的変化をVisual
Analogue Scale(VAS)を用いて評価した。また、
継続的な鍼治療の効果を毎治療前の血圧の変化か
ら検討した。
【経過】9診(4月5日)よりVAS8、11診(4月17
日)にVAS5、その後、VAS7が続き、17診(6月1
日)以降31診(9月24日)までVAS6が続いた。32
診(10月5日)にVAS5、36診(11月16日)にVAS2
に減少し、聴力も500Hzで25dbとなった。VASが
概ね7以上で推移した15診までとVASが6以下と
なった16診から36診までの血圧の変化を比較する
と、最高血圧について16診以降の方が、平均で均
20mmHgの低下がみられた。
【結語】 本症例では、継続的な鍼治療により、耳
鳴が自覚的に顕著に改善し、それに伴い最高血圧
の低下が認められた。
2D9_3
キーワード:耳鳴、鍼治療、VAS
O-64
脊髄腫瘍摘出後の下肢の痛み・
しびれに対する鍼治療の1症例
埼玉医科大学東洋医学科
○浅香 隆、山口 智、小俣 浩、新井千枝子
中村宏孝、阿部洋二郎、大野修嗣
埼玉医科大学健康管理センター
土肥 豊
【目的】脊髄腫瘍の中でも髄内腫瘍は比較的希で
あり、こうした患者の術後疼痛に対する積極的な
治療法は少ない。今回我々は、脊髄髄内腫瘍患者
の術後疼痛に対し鍼治療を行い、良好な成績が得
られたので報告する。
【症例】34歳、女性 〔主訴〕両下肢の痛みとしび
れ 〔愁訴〕不眠、不安感 〔現病歴〕平成10年8月
対麻痺発症し、9月には下肢に激痛が出現。徐々
に感覚鈍麻、脱力が広がり歩行困難となる。平成
11年1月8日本学神経内科を受診し、MRIにて第11
胸椎から第1腰椎レベルの脊髄髄内腫瘍を認め、
脳外科にて全摘出手術を施行。状態安定し、リハ
ビリ病棟に転科したが、依然として下肢の痛みし
びれが残存し、リハビリテーションに支障がある
ため、当外来に紹介。〔既往歴〕2歳てんかん、
15歳再生不良性貧血 〔家族歴〕特記事項なし 〔初診時現症〕HT160cm、BW 56kg、 BP 128/80
mmHg、P 58/min(整)〔神経学的所見〕知覚、
左右ともL2以下鈍麻、下肢深部反射( −)、病的
反射( − )、MMT 前脛骨筋R1/L0、下腿三頭筋
R2/L1、中臀筋R2/L1、大腿四頭筋R5/L5、上肢
R5/L5、第10胸椎∼第5腰椎の脊柱起立筋部に圧痛
及び緊張。
【治療及び経過】下肢の疼痛としびれ、腰部筋緊
張の緩和を目的とし、ステンレス鍼40mm16号を
用い、低周波鍼通電療法と置鍼を背腰部と下肢に
施術した。その結果、治療直後には痛み・しびれ
ともに変化がみられ、腰部の筋緊張はやや緩和し
た。治療の継続とともに徐々に症状は改善し、リ
ハビリテーションに対する意欲が出てきた。11回
26日目には、鎮痛効果が2日間持続するようにな
り、下肢の痛み・しびれは、pain scaleにおいて10
→3に低下し埼玉県リハビリテーションセンター
に転院した。
【考察及びまとめ】外科手術術後疼痛は、治癒を
遅らせるばかりでなく、不眠や不安など精神的な
症状をも引き起こしやすく、患者のリハビリテー
ションに大きな障害となる。今回取り扱った症例
に対する鍼治療は疼痛やしびれを緩解し、リハビ
リテーションやQOLの向上に寄与することができ
た。これらのことより、鍼治療は、現代医療にお
いて積極的な治療法の少ない、脊髄や神経の機械
的圧迫や損傷などによる痛み・しびれに対し、有
用性の高い治療法であると考える。
2D9_4
キーワード:脊髄腫瘍、鍼治療、術後疼痛
O-65
鍼灸治療により疼痛の軽減が
得られた胃癌患者の1症例
明治鍼灸大学内科学教室
○関 恵子、市田裕紀子
藤井貴章、山村義治
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
福田文彦、矢野 忠
【はじめに】 癌の終末期では患者のQOLを高める
ことを目的とした緩和医療の重要性が指摘されて
いる。その中でも疼痛は、癌の浸潤による直接的
な痛みに患者の精神状態が絡み合った全人的な痛
みであり、癌患者にとって極めて深刻な問題であ
る。今回我々は、腰下肢の疼痛を主訴とする末期
胃癌患者に対して鍼灸治療を行い、疼痛及び患者
の全身状態について検討したので報告する。
【症例・方法】患者:50歳、女性。主訴:腰下肢
痛。現病歴:平成10年8月に胃癌と診断され、同
年10月に幽門側部分切除術を受け通院加療してい
たが、全身状態の悪化により平成11年8月に当院
内科に入院となった。同年10月頃より長期臥床に
より生じた筋萎縮が原因と考えられる腰下肢痛が
出現し、坐薬を使用するも疼痛は徐々に増悪傾向
であった。同年10月20日より腰下肢痛及び全身状
態に対して鍼灸治療を開始した。現症:腰殿部及
び両下肢全体に強い疼痛。治療は、疼痛部位及び
東洋医学的弁証に基づいた刺鍼を行った。鍼灸治
療は土日を含む連日行った。評価は疼痛に対して
はペインスケール及び痛みの表現を感覚的・情動
的などに分類し評価するマクギル・メルザック式
疼痛問診表(疼痛問診表)、全身状態に対しては
Perfomance Status、患者の訴え、看護記録を使用
した。
【経過・考察】腰下肢痛は鍼灸治療により一時的
ではあるが軽減を示した。その効果を非ステロイ
ド系の坐薬と比較した結果、疼痛軽減の程度は同
等であり、疼痛軽減までの時間は、鍼灸治療の方
が短時間であり、効果持続時間は坐薬の方が長時
間であった。また疼痛問診表を治療前後で比較し
た結果、鍼灸治療後では感情的スケール、坐薬使
用後では感覚的スケールに減少傾向を認めた。全
身状態は、癌の進行に伴いPerfomance Statusにお
けるGradeも進行したが、1日の大半を臥床した状
態であったのが鍼灸治療を行ってからは、歩行へ
の意欲的な姿勢なども一時的ではあるがみられる
様になった。以上の結果から鍼灸治療は、末期癌
患者における全人的な痛みの改善やQOLを高める
ことに有効な治療法になりえる可能性が示唆され
た。
2D9_5
キーワード:鍼灸治療、末期癌患者、QOL、
マクギル・メルザック式疼痛問診表
O-66
鍼のひびきと虚実
山梨地方会 江南堂鍼灸院
○花輪貞良
【目的】 刺鍼時、龍頭に伝わる“ひびき”を、そ
の経穴の虚実の面から検討したので報告する。
【方法】 四診法により証を立て、反応のある経穴
を補瀉する際、龍頭から刺手へ伝わるひびきの消
長について、当初は演者自身の身体で、その後は
臨床で追試している。
【結果】 鍼尖を接触させ、僅か刺入させると龍頭
にひびきが伝わるが、その際、龍頭を半回転程さ
せる事により、より経穴の目的とする深さに到達
し、更に刺入させると経穴を鍼尖が貫通する為、
充実した脉状が潰れる事を観察した。また、“ひ
びきに高低”がある事を確認した。
【考察】 刺入し過ぎると充実した脉状が潰れる事
から、経穴に厚みがある事を確認、それは刺し加
減から0.1∼0.2mm程度と推定した。またひびきの
高低は、虚実と脉診と検脉の相関への観察から、
ひびきが高い場合は経穴の実を、低い場合は虚を
示していると推定し、更にこれを臨床面から検討
を重ねている。
【結語】 古典に記載されている文章は、その時代
に起因して簡潔に過ぎて、実際の手法は今一つ不
鮮明である。演者は自身の体を通して再検討する
方法で、しかも虚実補瀉を生体の気として、これ
をx-ENERGY=生体における未知なるエネルギー現
象として検討して来たが、今後、更に臨床上で検
討したい。
2D10_1
キーワード:脉診、虚実補瀉、刺入深度、
経穴の厚み、ひびき
O-67
画像補正用カラーチャートを
用いた舌診の客観化について
神奈川地方会 中城歯科医院
○中城基雄
【目的】 舌診を臨床的に記録するには、写真撮影
をするのが一般的ではあるが、光源、フィルムの
種類、現像方法などの条件の違いにより、実際の
舌色が正しく再現されず、客観性にかける一面が
内在している。今回、画像補正用カラーチャート
「キャスマッチ」を用いて、撮影条件に左右され
る事なく、安定して再現性のある手法を考案した
ので報告する。
【方法】 まず、歯科用エックス線頭部規格撮影法
を準用し、被験者の頭部を規格位置に固定し、次
いで、被験者の舌の舌尖、舌中央、舌根、左右舌
側縁の各部に基準点を付与した。そして、基準点
直下の部位を、ミノルタ社製色彩計(cm−503d)
を用いて測色し、L*a*b*表色系の値を得た。デー
タはソニー社製パーソナルコンピューターPCG−
XR1と解析ソフト「彩チェックfor Windows98」で
処理した。また、舌の写真は、NIKON社製デジタ
ルカメラcoolpix950を用いて、「キャスマッチ」を
同一視野に入れて、過光量と減光量の2種類の条件
で撮影した。画像は、Photoshop5.5 for Windows98
でレベル補正を施し、出力画像を得た。以上の過
程により、実際の舌、コンピュータに取り込んだ
画像、出力画像の3つがL*a*b*表色系に於いて、ど
のような色の近似性を有するか、色差判定により
整合性を検討した。
【結果】実際の舌のL*a*b*表色系の値を基準色と
して設定し、それぞれの条件に対し、色差判定を
した結果、過光量、減光量ともに、著しい違いを
呈したが、「キャスマッチ」を用いたレベル補正
後のコンピューターの画像と出力画像は、本来の
舌色に近い値を認めた。
【結論】 簡便で再現性のある舌診の撮影法を検討
する為に、画像補正用カラーチャートを用いた手
法は、実際の舌色に近似した画像を得ることがで
き、有用である事が示唆された。
2D10_2
キーワード:画像補正用カラーチャート、
舌診、色彩計
O-68
鍼治療における皮膚消毒法の
検討
兵庫県立東洋医学研究所
○田口静江、松本克彦
関西鍼灸短期大学
奥田 学、吉備 登
北村 智、楳田高士
【はじめに】近年、様々な感染症がクローズアッ
プされ、鍼灸においても鍼治療後に劇症型A群連
鎖球菌感染症Toxic-shock-like syndrome(TSLS)を
発症し、下肢切断や死亡するなど極めて深刻な報
告がなされ、皮膚消毒や器具の滅菌の徹底が求め
られている。滅菌条件や手指消毒についての検討
は多く見られるが、鍼灸臨床における皮膚消毒に
ついての効果を検討した報告はほとんど見られな
い。そこで、我々が日常行っている皮膚消毒の消
毒効果と望ましい消毒手技について検討した。
【方法】関西鍼灸短期大学学生113名を対象に、1
回拭き:清拭圧200g・800g群、2回拭き:清拭圧
200g・800g群、3回拭き:清拭圧200g・800g群の
計6群(各群30名)に分け、前額部の左側を実際
に消毒し、右側をその対照とした。そして消毒部
位と対照部位の皮膚細菌をそれぞれSCDLP寒天培
地(日水製薬)を用いて採取した。採取後、37℃
で48時間培養後、細菌数を計測した。また、消毒
後の培地を無作為に選び、菌の同定を行った。
【結果・考察】 全群とも消毒後の細菌数は減少
し、消毒効果は認められた。しかし消毒後の各群
間には統計的に有意差は認められなかった。検出
された細菌にはStapylococcus sp. Bacillus sp.
Pseudmonas sp. などがみられた。Bacillus sp.につい
てはアルコール類では殺菌できない菌種のため、
消毒後の培地から多く検出されたと考えられる。
今回行った6群の消毒手技については事前に関西
鍼灸短期大学教職員18名にアンケート調査を行う
と同時に、皮膚に対する清拭圧、綿花に含まれる
アルコール含有量の測定を行い、それらを参考に
研究の条件を設定した。
【結語】各群について消毒後の細菌数は減少し、
消毒効果が認められた。しかし、今回の条件下で
は、清拭回数や清拭圧が変わっても、その効果は
ほぼ同等であった。今回の結果から望ましい消毒
手技は決定できなかったが、今後、消毒手技、消
毒剤の濃度などについてさらなる検討が望まれ
る。
2D10_3
キーワード:感染防止、皮膚消毒、消毒手技、
細菌数
O-69
鍼治療の安全性に関する研究
(4)
O-70
運動器系症状に経筋の概念を
活用した臨床方法とその効果
―刺鍼による出血の経過について(その3)―
大阪地方会 米山針灸院
○鈴木 信、鹿毛則子
三重地方会 慶福針灸
竹田博文
森ノ宮医療学園専門学校附属診療所鍼灸室 湯谷 達、竹中浩司、佐藤正人
森ノ宮医療学園専門学校
尾崎朋文
川村病院神経内科
米山 榮
【はじめに】我々は過去2回に渡り本学会学術大
会に於いて、鍼治療の臨床の場で不慮に起こった
出血について検討し、その v血斑は生体に有害で
ない事象であることを確認してきた。今回は出血
傾向の可能性が考えられる疾患を有する患者につ
いて、刺鍼による出血を観察したので報告する。
【対象、方法】鍼治療の継続受診患者で出血傾向
の可能性を有する6症例。慢性肝疾患(Case1、
2)、血液疾患(Case3、4)、ステロイド薬長期服
用のリュウマチ例(Case5)、ワ−ファリン服用中
の心臓弁膜疾患(Case6)。方法として、①検査:
末梢血液検査(白血球・赤血球・ヘモグロビン・
血小板)、出血時間、トロンボ・テスト、PT、
APTT等。
②v血斑は写真撮影を行いながら従来の我々の分
類にて完全消失までの自然経過を観察した。
【結果】①Case2、3、4は血小板減少症が見られ
た。Case6はトロンボ・テスト14∼20%で、良好に
コントロ−ルされていた。②Case5のv血斑は完全
消失までにほぼ3週間を要したが、他の症例は7∼
14日以内にv血斑は完全消失した。
【考察】鍼灸院には主訴との関連の有無に関わら
ず、様々な疾患を合併する患者が来院する。場合
によっては医療機関での検査結果を持参してもら
う事も最近では可能な現状である。その中で今回
は出血傾向が考えられる疾患を有する患者に対し
鍼治療を行った所、不慮に形成された v血斑の完
全消失までに要した日数は我々の過去の報告とほ
ぼ同様であった事から、出血傾向の可能性があっ
てもv血斑は安全に治癒する事実が確認された。
ただ慢性肝疾患やワ−ファリン投与例において
は、v血斑が他の症例に較べやや拡大する傾向が
みられた事から、出血傾向の可能性のある患者に
対する鍼治療は、 v血斑が拡大する可能性がある
旨をインフォ−ムド・コンセントする必要がある
のではないかと考えられる。
2D10_4
キーワード:鍼治療、安全性、出血、出血傾向、
インフォ−ムド・コンセント
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室 ○篠原昭二
北出利勝
明治鍼灸大学大学院 丹澤章八
【目的】 『霊枢』経筋篇(第十三篇)によれば、
「経筋」の病症は身体のつっぱり、ひきつり、痙
攣、痛み、麻痺を主どると記述されている。この
ことは、運動器系の症状に対する診断・治療シス
テムとして、経筋が確立された可能性が高い。そ
こで本学附属鍼灸センター来院患者のうち、運動
器系症状を有する患者を対象として経筋を応用し
た鍼治療(皮内鍼)を行い、経筋の有用性につい
て検討した。
【方法】 対象は、附属鍼灸センター来院患者で四
肢や体幹部に運動器系愁訴を訴える患者とし、本
研究の主旨について口頭で同意を得た患者を対象
とした。研究期間は1999年6月から10月までの間
で、対象患者数は45名で平均年齢は56±16歳で
あった。グループ分けは封筒法を採用し、①本経
治療群(疼痛部位を通る経筋上の末梢の栄穴また
は兪穴に皮内鍼を刺入した16例)、②シャム群
(皮内鍼を刺入直前に見えないように放棄してあ
たかも刺入したごとくに見せた後、絆創膏固定し
た15例)、③他経治療群(隣接した正常な他経の
経筋上の栄穴または兪穴へ皮内鍼を刺入した14
例)の3グループに分けた。効果判定は、治療者が
主治者の立ち会いの下で全例のVAS評価を行っ
た。統計処理は、Abacus Concepts社のStatview4.5
を使用し、3群間の有意差の検定は多重比較のTukey法によった。
【結果】 各群における治療後の痛みの程度の変化
率を3群で比較した結果、本経治療群では42±
29%、シャム群では74±33%、他経治療群では83
±41%であった。tukey法を用いた結果、本経治療
群は他経治療群やシャム群に比して有意
(P<0.05)な痛みの減少効果を示した。以上のこ
とから、本経治療群のみが他群(シャム群と他経
治療群)に比して有意な鎮痛効果が認められ、
シャム群では軽度の効果しか得られず、他経治療
群では最も効果が低かった。
【結語】 経筋を応用した鍼治療は、局所を使うこ
となく、四肢末梢へのごく軽微な刺激によって十
分な効果が得られたことから、有用な治療方法で
あることが示唆された。
2D10_5
キーワード:経筋、皮内鍼、RCT、VAS、
鍼治療
O-71
中年期に発症した夜尿症に対
して鍼治療を併用した1症例
明治東洋医学院専門学校
○豊島紫乃、本城久司
清藤昌平、酒井良和
京都府立医大泌尿器科
小島宗門
【目的】 中年以降に発症する夜尿症のうち、睡眠
時無呼吸症候群が原因となるケースが報告されて
いる。今回、中年女性に発症した睡眠時無呼吸症
候群が原因と考えられる夜尿症で薬物に抵抗を示
した症例に対し、鍼治療を併用することにより改
善が認められたので報告する。
【症例】49歳 女性。主訴:夜尿症。現病歴:平成
9年10月頃よりほぼ毎晩夜尿症が出現した。それ以
前より習慣性のいびきがあり、近医の耳鼻科を受
診し睡眠時無呼吸症候群を指摘されたが、特に治
療を受けなかった。平成10年7月京都府立医大泌尿
器科を受診し、抗コリン剤(塩酸プロピベリン)
を服用していたが無効であったため、平成11年5月
24日より鍼治療の併用を開始した。
【方法】 鍼治療はステンレス製ディスポーザブル
鍼(直径0.3mm、長さ60mm)を左右の第3後仙骨
孔部(中 q穴)に刺入した後、手による半回旋刺
激を合計10分間行い1回の治療とした。鍼治療は週
1回の間隔で行った。評価項目は1週間あたりの夜
尿出現回数とした。
【結果】鍼治療前、週6回であった夜尿出現回数は
鍼治療5回終了後週2回に減少した。そこで抗コリ
ン剤の服用を一時中止し鍼治療単独で行ったとこ
ろ、夜尿出現回数が週6回と鍼治療前に復した。そ
のため鍼治療9回終了後より抗コリン剤の服用を再
開したところ夜尿出現回数は週2回に減少した。
【考察】 睡眠時無呼吸症候群が原因で夜尿症が出
現することが報告されており、本症例も睡眠時無
呼吸症候群が夜尿症の主たる原因であると考えら
れた。今回、抗コリン剤の服用のみでは無効で
あった夜尿症に対し鍼治療を併用したところ夜尿
出現回数の減少を認めた。しかしながら、抗コリ
ン剤の服用を中止し鍼治療単独ではその効果を維
持することはできなかった。以上のことから、薬
物に抵抗を示した症例においても鍼治療を併用す
ることによってのみ改善が得られ、鍼治療併用療
法の効果が示されたものと思われた。
2D15_1
キーワード:夜尿症、睡眠時無呼吸症候群、
鍼治療
O-72
Prostatodynia(前立腺症)症
例に対する鍼治療効果の検討
京都府立医大泌尿器科 ○本城久司、納谷佳男
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
北小路博司
【目的】下部尿路や前立腺などに明らかな異常が
なく、下腹部痛・会陰部痛や頻尿・排尿時痛など
の前立腺様症状を訴えるprostatodynia(前立腺症)
症例に対して鍼治療を行い、治療効果を検討した
ので報告する。
【方法】対象は臨床的にprostatodyniaと診断された
患者のうち、鍼治療前の経直腸的超音波断層法に
おいて、前立腺被膜静脈に相当するsonolucent
zone(SLZ)の最大径を計測し、その最大幅が
3mm以上拡張していた13例とした。年齢は18∼50
歳で平均33歳であった。鍼治療はステンレス製デ
ィスポーザブル鍼(直径0.3mm、長さ60mm)を左
右の第3後仙骨孔部(中q穴)に刺入した後、手に
よる半回旋刺激を合計10分間行い1回の治療とし
た。鍼治療は週1回の間隔で合計5回行った。治療
は鍼治療のみとし、薬物療法等との併用は行わな
かった。評価項目は鍼治療前後の自覚症状スコア
と経直腸的超音波断層法におけるSLZの最大径と
し、統計学的検討はpaired t testを用いた。
【結果】 自覚症状スコアのうち排尿症状を示す
IPSSは、鍼治療前8.8±9.5点が鍼治療後5.8±9.7点
に減少した(N.S.)。一方、疼痛および不快感を
示すIVCS症状スコアは、鍼治療前10.4±6.4点が鍼
治療後6.3±6.6点と有意(P<0.05)に減少した。
SLZの最大径において、鍼治療前4.9±0.6mmが鍼
治療後3.2±1.2mmと有意(P<0.001)に減少した。
さらに、治療後において患者の満足度を聴取した
ところ大変満足が6例、大体満足が4例、不満が3
例であった。
【考察】今回、前立腺様症状を訴えるとともに、
経直腸的超音波断層法においてSLZの拡張がみら
れ、いわゆる骨盤内静脈のうっ滞が示唆された
prostatodynia症例に対して鍼治療を行い、自覚症状
の改善とともに、拡張所見の改善も示された。こ
のことから、鍼治療によって骨盤内静脈のうっ滞
改善をもたらし、症状を軽減させたものと考えら
れた。
【結語】 骨盤内静脈のうっ滞が示唆されたprostatodynia症例に対して鍼治療は有用であった。
2D15_2
キーワード:prostatodynia、鍼治療、
経直腸的超音波断層法
O-73
原因の特定できない頻尿に対し
て鍼治療が有効であった1症例
−陰部神経刺鍼点の低周波置鍼療法−
明治鍼灸大学附属鍼灸センター ○庄治一由
北小路博司、角谷英治、矢野忠
明治鍼灸大学泌尿器科学教室
星 伴路、鈴木言枝
矢田康文、斉藤雅人
明治鍼灸大学大学院鍼灸基礎医学教室 渡辺 泱
【目的】頻尿は多くの基礎疾患によって出現する
ことが知られている。そうしたなかで、原因が特
定できない頻尿に対し鍼治療を行い、長期間にわ
たり観察し検討した例を報告する。
【症例の概要・治療方法】対象は平成11年1月に
本学附属病院泌尿器科において頻尿を主訴とした
女性39歳。初診時、膀胱炎と診断され薬物療法に
より治癒したが、なお頻尿(起床時から午前中に
かけて)がみられたため、膀胱内圧測定および尿
流測定を施行した。その結果、膀胱機能は正常で
あったが、尿流測定では閉塞症状がみられ、かつ
病的残尿を認めた。なおMRI等の検査によって腰
椎(L 4,5 )の変形を認めたことから神経因性膀胱
の可能性が示唆されたが、神経学的には異常な
かった。鍼治療は、本学附属鍼灸センターにおい
て、ディスポーザブル鍼(60mm、30号鍼)を用
い、両側の陰部神経刺鍼点に約50mm刺入し、得
気を得た後、10分間の低周波置鍼療法(1.3Hz)を
週1回行った。評価は、尿流測定、残尿測定およ
び頻尿の状況を把握するために排尿日記にて、毎
日排尿回数を記載させた。鍼治療施行期間は薬物
療法は行わなかった。
【治療経過】鍼治療前の尿流測定は平均尿流率は
1.7ml/sec、最大尿流率は4.5ml/sec、残尿は62mlで
あったが、治療16回目では、平均尿流率が
3.5ml/secと改善がみられ、治療22回目での残尿測
定では10mlと正常値となった。一方、頻尿の推移
では、治療前9回が治療16回目では4∼5回と減少
する傾向がみられた。症状の改善と持続が観察さ
れたことから鍼治療を29回にて中止し、3ヶ月間
経過観察したところ、徐々に頻尿が再現した。
【結果】原因の特定できない頻尿に対して陰部神
経刺鍼点の低周波置鍼療法は有効であった。鍼治
療の有効性は3ヶ月以内に消失したことから、低
周波置鍼療法によって症状の改善がみられた場合
も継続的治療の必要性を示唆した。
2D15_3
キーワード:頻尿、陰部神経刺鍼点、
低周波置鍼療法
O-74
前立腺全摘除術後の尿失禁に対
する鍼治療が有用であった1例
明治鍼灸大学泌尿器科学教室 ○星 伴路、鈴木言枝、手塚清恵
矢田康文、斉藤雅人
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
角谷英治、北小路博司
明治鍼灸大学大学院鍼灸基礎医学教室 渡辺 泱
【目的】 男性の悪性腫瘍として前立腺癌が増加傾
向にある。前立腺全摘除術後に起こる、尿失禁の
発現は1∼6%と頻度は少ないものの、患者のQOL
を低下させる大きな要因となる。そこで今回、前
立腺全摘除術後の尿失禁に対し鍼治療が有用で
あった症例を経験したので報告する。
【方法】 症例は、他院にて前立腺全摘除術を施行
後、重度の尿失禁が出現し、薬物療法としてα1ブ
ロッカー、β2刺激剤を施行するも改善が無く、
パッドを1日に6∼7回交換が必要であった65歳男性
である。当院受診時は、術後約2ヶ月目であったが
尿失禁定量テストでは50g以上と、きわめて重度の
尿失禁であった。治療方法は、両側の三陰交穴に
60mm30号鍼を用い、得気を得てから10分間旋撚術
を行った。治療間隔は一週間に一度とした。評価
は、失禁の程度をパッドの交換回数、尿失禁量、
尿失禁による会陰部の不快感の程度を日誌に記録
させ、治療効果を検討した。
【結果】 パッドの交換回数は、治療前6∼7回で
あったが、1回目の治療後2∼3日間は2回と減少し
た。しかし、2回目の治療後3∼4日間までは3∼4回
に戻った。その後は1∼2回まで減少し、維持して
いる。尿失禁の量は、治療前1日あたり約500gで
あったが、1回目の治療後2∼3日間は140∼250gと
減少し、2回目の治療後3∼4日間までは300∼510g
間で増加したが、その後は50∼250gまで減少し維
持している。
不快感の程度については、治療前の不快感を10と
した場合、1回目の治療後1週間は9.4∼9.7であった
が、2回目の治療後から激減し、3回治療終了後の1
週間は2.1∼4.5まで減少した。
【結語】 前立腺全摘除術後の尿失禁に対して、三
陰交穴に対する鍼治療を行ったところ、尿失禁に
改善が見られた。これは、患者のQOLを大きく改
善したことを示し、鍼治療が前立腺全摘除術後の
尿失禁に有効であることを示唆した。 2D15_4
キーワード:前立腺癌、尿失禁、鍼治療
O-75
無作為化比較試験による排尿
障害に対する鍼治療の検討
O-76
末梢性顔面神経麻痺の発症と
気象因子に関する傾向(2)
−臨床部門プロジェクトの中間報告−
医療法人禎心会病院物理療法科
明治鍼灸大学
○北小路博司、角谷英治
岡本芳幸、星 伴路、鶴 浩幸、鈴木言枝
【目的】 全日本鍼灸学会研究部における臨床部門
の研究プロジェクトの目的は、多施設で行える無
作為化比較試験(RCT)による鍼灸臨床研究の確
立であり、これまで検討を重ねてきた(全日本鍼
灸学会雑誌48.3.1998)。今回、明治鍼灸大学鍼灸
センターにて本研究を試行したので報告する。
【対象・方法】対象は、明治鍼灸大学附属鍼灸セ
ンターに来院する患者で、愁訴に排尿障害(夜間
排尿回数が2回以上)を有する8名とした。主訴
は、腰痛4例、頚部の凝り、膝痛、上肢痛、頭痛が
各1例であった。1週間の試走期間を設け、中央管
理システムによりインターネットを用い2群に振り
分けた。2群の構成内容と患者数は、主訴に対する
鍼灸治療を行う群(以下、対照群)3名と、主訴に
対する治療と中極穴に鍼治療を併せて行う群(以
下、中極穴併用群)5名であった。各群とも治療の
間隔は週1回とし、合計3回施行した。評価は夜間
の排尿回数とし、日記に記載させた。
【結果および考察】脱落例は、対照群1名、中極穴
併用群2名の計3名であった。対照群(n=2)の夜
間排尿回数は、試走期間2.0±0.5回(平均±標準偏
差)が治療1回目終了時1.5±0.5回、2回目終了時
1.3±0.6回および3回目終了時1.7±0.6回と夜間排尿
回数は減少する傾向がみられた。同様に中極穴併
用群(n=3)は、2.2±0.2回、2.1±0回、2.3±0.4
回、2.4±0.7回と推移し、夜間排尿回数が増加する
傾向がみられた。これまでの経過から、中央管理
システムによる患者の無作為割り付けの方法は簡
便で問題なく施行できたことから、研究を多施設
で行う場合も利用が可能である。本研究では、対
照群の1例に試走期間と治療1回目終了時の夜間排
尿回数に有意な差がみられたこと、治療者が同時
に評価者であることによるバイアスの有無、など
種々の問題を含んでいることが明確となった。
2D15_5
キーワード:RCT、夜間頻尿、鍼治療
○児玉浩司
倉橋 孝
石井睦宏
【はじめに】我々は過去に、末梢性顔面神経麻痺
に関して、その発症・経過・鍼治療効果・発症因
子等に関して報告させていただいた。そして前回
の横浜大会において「寒冷前線の通過が発症因子
とはならないか」という参考意見をいただき、こ
の度天気図を参考に調査・検討を行ったので報告
する。
【対象・方法】調査対象者は、1998年1月∼12月
迄に発症した当時札幌在住の男性19名・女性8名
の27名を対象に、株式会社ウェザーテック発行に
よる天気図“天気図日記”を参考に寒冷前線・温
暖前線・停滞前線の経過、高気圧・低気圧・等圧
線の位置について検討した。
【結果及び考察】高気圧・低気圧の位置関係につ
いては季節的な位置を示す程度で決まった個数や
特徴的な規則性を限定できなかったが、発症日当
日に低気圧が北海道の東側にあるケースが多かっ
た。等圧線に関しては、その発症前後に混み合う
のではないかという意見もあったがはっきりとし
た変化とはいえない。
前線の通過に関しては、寒冷前線の通過を伴う
もの17例(62.96%)、停滞前線を有するもの8例
(29.63%)、前線の影響がいっさいないもの2例
(7.41%)で、寒冷前線の通過によるものが6割以
上を占める結果となった。また、複数の前線を有
する例もあり、これらのことから寒冷及び停滞前
線が、末梢性顔面神経麻痺の発症に何らかの影響
を与える可能性は十分あると考えられる。
我々は、今後も対象年数を広げ、症例数を重ね
調査を継続する。
2D16_1
キーワード:末梢性顔面神経麻痺、天気図、
前線
O-77
レーザー鍼刺激による治療効果
の試み
−生体光情報を指標として−
東北工業大学情報処理技術研究所
○神 正照
関西鍼灸短期大学
王 財源、吉備 登、楳田高士
大阪医科大学麻酔科
森川和宥
【目的】これまで、鍼灸治療において刺激の効果
についてあまり測定されていなかった。視覚的に
治療の効果が表示されるものがあれば患者に対し
て治療方法を明示する事が出来る。今回視覚的に
刺激効果を視る(生体から出る生体光情報の計測
で表示)ことができたので報告する。
【方法】測定の対象者は20人の男女学生(20代)
で、計測時間は1ケ所それぞれ100秒行った。測定
の際には測定部位を洗浄し、遮光した後測定を
行った。測定中は被験者が多少腕を動かしても支
障のないように、暗幕を用いて測定室は完全に遮
光した。
鍼・灸による刺激は刺激量が異なるので客観的
に測定出来るレーザー鍼を使用した。経穴にレー
ザー鍼で照射(100秒)し、測定位置は右手指先
の商陽穴に設定し、生体から検出される極微弱発
光測定を行う。
レーザー鍼照射前後の生体から検出される生体
光情報の発光特性を比較する。
【結果】生体から出る極微弱発光(自然に出る発
光)とレーザー鍼を照射した場合の特性を比較し
た結果、それぞれの発光特性は異なることが観測
された。また腕から指先の方向に行くに従い、発
光量が少しずつ多くなっていくことが測定され
た。
【考察】鍼(手技)や灸(温灸)の場合刺激方法
が一定で無い為(個人差により刺激量が異な
る)、レーザー鍼(刺激量が一定)を使って刺激
効果の測定を行った。レーザー鍼は刺激量が一定
であるので測定には良い結果が得られた。
【まとめ】 鍼・灸はそれぞれ刺激量が異なるため
刺激効果を測定する場合、計量的に一定量の刺激
量を与えることが必要である。
2D16_2
キーワード:生体光情報、極微弱発光、
レーザー鍼
O-78
不妊症に対する鍼灸治療の検討
−高度生殖医療に鍼灸治療を併用した5症例−
愛知地方会
竹内病院トヨタ不妊センター
○鈴木裕明
越智正憲
【目的】10組に1組以上の夫婦が不妊症といわれ
種々の治療法を試みながら妊娠せず、高度生殖医
療での治療を繰り返すものも少なくない。しかし
妊娠率は20%前後と低く、繰り返し治療を行い妊
娠に至らない場合も多く見られる。今回、高度生
殖医療を何回も繰り返し妊娠に至らなかった患者
のうち、子宮内膜の状態が一定の基準(8mm以上3
層構造)にまで至らないことが不妊の1つの要因と
考えられる患者に対して鍼灸治療を行った。
【方法】対象は32歳∼40歳(平均年齢35歳)
不妊歴は3.5年∼10年(平均6.6年)
子宮内膜は4mm1層構造∼8mm1層構造の5症例に
対して、証に随った本治法と症状に応じた標治法
ならびに基本穴として関元、中極、大赫、三陰
交、腎兪、大腸兪、次q穴を使用した。
【結果】5症例とも子宮内膜の状態が一定の基準
(8mm以上3層構造)に改善され妊娠に至った。
【考察】 今日の不妊症の治療の進歩には目覚しい
ものがあり、妊娠のメカニズムが徐々に解明さ
れ、今まで子供を授かる事をあきらめていた夫婦
に対して可能性が出た反面、この10年間で高度生
殖医療における妊娠率はわずかに上昇したに過ぎ
ない。これは着床のメカニズムに関してはいまだ
に不明な点が多いことと、着床に必要な子宮内膜
の状態を改善する治療法が西洋医学だけでは、現
時点において限界があることは否定できない。
そこで今回、体外受精・顕微受精ならびに凍結
胚移植を行う患者で子宮内膜の状態が西洋医学的
に治療を行っても一定の基準に満たない5症例に対
し、鍼灸治療を施したところ5症例とも子宮内膜の
状態が改善し、一定の基準に達し妊娠に至った。
2D16_3
キーワード:不妊症、高度生殖医療、
子宮内膜、鍼灸治療
O-79 腰下肢痛に対する 必要治療 数
(NNT)
研究部適応症委員会*
森ノ宮医療学園専門学校**
○七堂利幸*
小島賢久*,**、井上悦子*,**
O-80
吐き気・嘔吐の必要治療数
(NNT)
研究部適応症委員会*
森ノ宮医療学園専門学校**
○井上悦子*,**、小島賢久*,**
七堂利幸*
【目的】1997年のNIH(米国立衛生研究所)パネ
ルの鍼声明では、腰下肢痛に対する鍼治療は有効
の可能性があると報告された。
本研究はその根拠となった文献をもとに、腰下
肢痛に対する鍼効果をNNTで表現し、臨床の現場
で使えるよう数量化した。
【対象】NIHパネルの鍼声明(1997)で腰下肢痛
のエビデンスは22編のCCT(臨床比較試験)であ
る。そのうちの英文18編を対象とした。
【方法】 対象論文の試験群と対照群の有効とされ
たアウトカムの有効率からNNTを求め、そのCI
(信頼区間)をpukka法で求めた。
【結果】NNTは2∼26(95%CI:1.3∼46.2)であっ
た。
一般に臨床効果のNNTは2∼3以下でかなり有効
とされている。本研究ではアウトカムの評価者が
マスクされているかどうかで、NNTからみて臨床
的に使えるかどうか分かれる傾向にある。つま
り、施術者が自分で効果判定した場合はNNTが小
さく有効で臨床的に使えるが、マスクされた第三
者がエンドポイントを評価した場合NNTが大きく
なり、鍼効果が大きく落ちる。
NNTを改善するには、今後何を試験群にし、何
を対照とするか、あるいは十分なサンプル数確保
等、実験デザインを工夫する必要があろう。
【結語】NIHパネルの鍼声明の腰下肢痛で使用さ
れたエビデンスのCCTから、NNTを求めたとこ
ろ、2∼26(95%CI:1.3∼46.2)となった。これを
分析すると、アウトカム評価者がマスクしていな
い場合は臨床的に有用だが、マスクしている場合
は問題があり、効果判定に心理効果が大きく関与
している可能性があり、腰下肢痛についてNIHパ
ネルの鍼声明の評価は慎重でありたい。 2D16_4
【目的】 1997年、NIH(米国立衛生研究所)パネ
ルの鍼声明で、鍼は成人の術後や化学療法時の吐
き気・嘔吐、および歯科の術後痛に有効であると
いう有望な結果が得られていると発表された。
ここでは吐き気・嘔吐をとりあげ、NIHパネル
が検討したCCT(臨床比較試験)文献の個々の
NNT(必要治療数)を計算してそれらの有効性が
どの程度であるかを検証する。
【対象】 吐き気・嘔吐に関してNIHパネルが検討
した文献は92件であるが、CCT論文は45件であっ
た。それらのうち委員会が入手できたCCT論文18
件を対象とする。
【方法】有効とされたアウトカムの両群の有効率
から、NNTを求め、そのCI(信頼区間)をpukka
法で求めた。なお、NNH(必要有害数)は有害事
象が少なく鍼の場合必要ない。
【結果】18件の論文中、対象が小児科の論文が4
件、婦人科が5件、産科が5件、癌の化学療法が
2件、その他が2件であった。治療法は鍼だけで
なく、指圧も含まれている。使用穴はほとんどの
論文で内関穴であった。
これら18件の論文中、鍼または指圧が有効で
あったとする論文数は12件であった。それらの
NNTは0.1∼16.3(平均4.2)であった。小児が対象
の論文は4件中4件が鍼または指圧が無効である
としており、確かにそれらのNNTの数値も非常に
高かった。その他、婦人科腹腔鏡術患者を対象と
した2論文の結果が無効であった。
【結語】 NIHパネルが検討したCCT文献のNNTか
らみると、婦人科、産科の術後、癌の化学療法後
の吐き気・嘔吐予防に対しては、臨床で鍼、指圧
を用いる価値があると推測される。他科における
吐き気・嘔吐の鍼効果についても、更にCCT論文
数を追加して検討していきたい。
2D16_5
キーワード:NNT、腰下肢痛、NIH、CCT
キーワード:吐き気、嘔吐、鍼、CCT、NNT
O-81
老人保健施設職員の鍼灸の
イメージ
老人保健施設長生苑 関西鍼灸短期大学
○金谷由美子
山上彰子
西浦公朗
鍋田理恵
鈴木俊明
【目的】老人保健施設長生苑で鍼灸治療を実施す
るにあたり、本施設職員の鍼灸に対するイメージ
を調査し、若干の知見を得たので報告する。
【方法】対象者は本施設職員74名(男性11名、女
性63名)で、調査方法は、無記名式のアンケート
調査を行った。質問項目は、鍼灸治療の有無とそ
の時の効果、鍼灸のイメージおよび今後本施設で
の鍼灸実施に対する意見である。
【結果】アンケートの回答率は100%であった。鍼
灸治療の経験がある人は、鍼36.5%、灸16.2%と全
体的に少なく、特に灸で少なかった。しかし治療
効果は鍼74.1%、灸50%と比較的良かった。また、
鍼灸のイメージは「慢性疾患によく効きそう」な
どの良いイメージが鍼で57.4%と多く、灸では
21.7%と少なかった。反対に、「痛そう」「熱そ
う」などの悪いイメージは鍼で10.3%だが灸で
75.4%と多かった。今後本施設で鍼灸を実施する
ことについては、「他施設にない特色として生か
せる」「老人に効果がある」などの賛成が73%で
多く、「灸の煙により施設が汚れる」「患者の選
択が困難である」「不慮の事故に対する対処の方
法」など反対は14.9%であった。しかし、反対意
見のなかにはこれらに対して十分な対策をたてる
事で実施しても良いという意見も含まれていた。
【考察とまとめ】老人保健施設で鍼灸治療を実施
するにあたりアンケートを行った。鍼灸治療の経
験ある職員は少く、鍼灸治療が職員に認知されて
いないことがわかった。しかしながら、鍼灸治療
を受けた時の効果は多くの職員が感じていた。本
施設で入所者に対しての鍼灸治療については賛成
が多かった。このことは職員が鍼灸治療というも
のが老人に対して効果があると考えているという
ことがわかった。しかし鍼灸治療導入に反対意見
もあり、今後その問題を解決したうえで本施設で
の鍼灸治療を実現させたいと考えている。3D9_1
キーワード:老人保健施設、鍼灸、イメージ、
アンケート調査
O-82
鍼灸に対する意識調査
―学園祭における意識調査―
京都大学大学院経済学研究科
○小野直哉
京都地方会
近藤史生、田口太郎
京都大学超高層電波研究センター
小坂純一
【はじめに】鍼灸治療を一度も受けたことがない
人が、鍼灸に対してどの様なイメージをもってい
るかを調査することは、鍼灸医学の普及に有力な
示唆を与えてくれる。そこで我々は、鍼灸医学の
啓蒙を目的に京都大学学園祭において、鍼灸医学
研究のパネル展示及び、鍼灸治療のデモンストレ
ーションを行い、参加者を対象に鍼灸治療に対し
て持っているイメージについてアンケート調査を
したので報告する。
【対象と方法】平成11年11月20∼23日に京都大学
学園祭にて開催した鍼灸のデモンストレーション
の参加者478名を対象とした。アンケートは、無記
名で年齢、性別、職業及び鍼灸や東洋医学に対す
るイメージについて複数解答を可とする選択法
と、イメージについての記述法を用いて調査し
た。
【結果】 「鍼灸治療に効果を期待できるか」とい
う質問に対しては、期待できる(44.56%)、まあ
まあ効果が期待できる(19.45%)、非常に効果が
期待できる(15.48%)であり、79.41%の人が鍼灸
に対して何らかの効果を期待していることが分
かった。悪 いイメージでは、治 療費が高い
(22.59%)、痛い(14.22%)、怪しい(5.85%)
などの解答があった。
【考察・結語】今回の結果から、鍼灸治療の効果
に何らかの期待を持つ人が多いことが分かった。
しかしその効果が疾病の治癒に対しての期待なの
か、症状の緩解に対しての期待なのかなど対象者
が鍼灸治療の効果を何に求めているかはさらに調
査が必要と考えられた。また、悪いイメージとし
て「治療費が高い」、「痛い」といった項目があ
げられたが、これは従来から指摘されていた点で
あり、それが浮き彫り化された結果となった。こ
れらのイメージに対しては、今回我々が行った様
な啓蒙活動などを通じて正しい認識を普及させて
いく必要があり、我々の活動の意義が示唆され
た。しかしアンケート対象者が鍼灸医学のデモン
ストレーションへの参加者という鍼灸医学に興味
を持っている集団であったことから、今後は興味
の無い一般の人にも対象を広げ、調査していきた
いと考えている。さらに治療費支払い可能限度額
を調査することも予定している。
3D9_2
キーワード:意識調査、鍼灸、イメージ
O-83
鍼灸臨床の実態分析(1)
―患者調査を中心に―
大阪地方会 米山針灸院
○鹿毛則子、鈴木 信
三重地方会 慶福針灸
竹田博文
森ノ宮医療学園専門学校附属診療所鍼灸室
湯谷 達、竹中浩司、佐藤正人
森ノ宮医療学園専門学校
尾崎朋文
川村病院神経内科
米山 榮
O-84 埼玉医科大学総合医療センター外
科における鍼治療の実態について
埼玉医科大学総合医療センター外科
○阿部洋二郎、新井千枝子、藤岡正志
埼玉医科大学東洋医学科 浅香 隆、中村宏孝、小俣 浩、山口 智
埼玉医科大学健康管理センター
土肥 豊
【はじめに】現代医療体系の中で、開業鍼灸師が
いかなる役割を担うかという事は重要な事柄であ
る。今回我々は、鍼灸院を受診する患者のニーズ
を明らかにする目的で患者調査を行った。
【対象】平成10年1月から11年8月までに米山針灸
院に来院した成人患者481名(男性:170名、女
性:311名)。
【調査方法・項目】原則は聞き取り調査方法とし
た。調査項目:1)主訴 2)医療機関を併用して
いる、していない 3)鍼灸院への通院コンプライ
アンス(良好、やや良好、不良)
【結果】1)主訴では肩こり(頚肩部痛を含む)が
最も多く42.3%。次いで腰痛(臀部・下肢痛含
む)22.3%。他、膝痛3.7%、頭痛3.3%、背部痛
2.7%等。その他少数例約15%の内訳は、冷え、胃
腸不調、SLE、ベーチェット、ヘルペス後の不快
感等71例。2)医療機関を「併用している」が約
84%、「併用していない」が約14%。3)コンプラ
イアンス良好36.3%、やや良好27.8%、不良
35.7%。
【考察】主訴の64.6%が肩こりや腰痛等で占めら
れ、また58.2%が「痛み」を訴えて来院している
事から、これらの症状及び「痛み」の軽減が我々
鍼灸師にとって受療者のニーズに応える大きな役
割と考えられた。さらに特定の疾患名を主訴とす
る場合もあり、鍼灸師にとって現代医学的知識は
不可欠であると考えられる。
80%以上の来院患者が他の医療機関を併用して
いる事から、その診察内容や検査結果を理解し得
るという事は適切な患者対応をとるという意味で
重要と考えられる。また、通院患者の鍼灸医療へ
の期待(医療機関では得られない)が感じられ
た。併用していないと答えた患者に対しては、重
篤な疾患の徴候を見逃さない等プライマリー・ケ
ア的役割の可能性も示唆された。
コンプライアンスにおいては、良好とやや良好
あわせて64.1%を占めており、通院患者の鍼灸医
療に対する能動的姿勢が確認された。
3D9_3
【目的】埼玉医科大学総合医療センター外科鍼外
来では、昭和62年4月から鍼灸治療を行ってい
る。我々はこれまでに当外来の実態分析や鍼治療
成績また、鍼灸治療が循環系や免疫系に及ぼす影
響を関係医学会に報告してきた。そこで今回は最
近4年間に渡る患者の実態と治療成績について分
析し外科領域における鍼灸治療の有用性ついて検
討したので報告する。
【方法】対象は平成7年4月から平成11年10月まで
の4年7カ月間に当外来で鍼灸治療を行った患者か
ら無作為に抽出した124名である。これらの患者
群の性別・年齢別分布、罹病期間、疾患別出現頻
度、症状別出現頻度、紹介の有無、鍼治療回数、
鍼治療期間、症状別治療成績についてそれぞれ検
討した。鍼灸治療の方法は筋骨格・神経系の症状
に対しては人体の構造機能論に論拠をおき、自律
神経系の症状、いわゆる内科系愁訴に対しにては
東洋古来の経絡・経穴理論に論拠をおき、それぞ
れの治療をおこなっている。
【結果】性別では男性よりも女性の方が多く、年
齢別では40歳代、50歳代、30歳代の順であった。
罹病期間は1年以上のいわゆる慢性疾患の患者が
60.8%と過半数を占め、疾患別では肩凝り症、肩
関節周囲炎、乳癌、変形性膝関節症、胃癌、腰椎
椎間板ヘルニアが上位にランクされ、症状別では
腰痛、肩凝り、下肢痛、肩関節痛、背部痛、腹部
膨満感などが鍼灸治療の対象となった。紹介によ
り受診した患者は41.9%で、なかでも当外科外来
からの紹介が38.5%と最も多く、次いで整形外科
外来が21.2%であった。これらの患者群の鍼治療
回数は10回以上のものが52.3%であり、鍼治療期
間は6カ月以上のものが41.3%と最も多く、総合的
治療成績は著効・有効・やや有効あわせて78.7%
の有効率であった。
【まとめ】 以上のことから当外来での鍼灸治療は
重篤な慢性疾患に伴う諸症状に加え悪性腫瘍など
の手術後によくみられる難治性の疼痛や不定愁訴
に対しても有効であったことから外科領域におけ
る鍼灸治療の有用性が高いものと考える。
3D9_4
キーワード:鍼灸院、患者調査、コンプライアンス、
プライマリ−・ケア
キーワード:鍼灸治療、外科領域、実態調査、
医科大学病院
O-85
医科大学病院における鍼灸治療
の有用性について(第2報)
−他科より診療依頼があった患者の
鍼灸治療効果−
埼玉医科大学東洋医学科
○山口 智、小俣 浩、新井千枝子、中村宏孝
阿部洋二郎、浅香 隆、大野修嗣
埼玉医科大学健康管理センター
土肥 豊
パークヒルクリニック
北川秀樹
【目的】東洋古来の経験医術である鍼灸治療を現
代医療に明確に位置づけるためには多くの課題が
残されている。われわれは、すでに本学会や関係
医学会において、当科の鍼灸臨床の実態や治療成
績より、鍼灸治療が現代医療に果たす役割の大き
いことを報告した。そこで今回は、当科外来に他
科より診療依頼があった患者の実態と治療成績を
分析し、医科大学病院における鍼灸治療の有用性
について検討したので報告する。
【方法】対象は、1996年1月から1999年5月までの
3年5ヶ月間に当科外来を受診した患者を無作為抽
出した373例についてである。方法は、こうした
依頼患者の割合、入院患者の頻度、依頼診療科
名、罹病期間、疾病・症状別頻度、治療成績等を
分析した。
【結果】①受診患者373例中他科より診療依頼が
あったのは183例(49.1%)とほぼ半数であった。
②依頼診療科は、神経内科が最も多く、次いでリ
ウマチ膠原病科、心臓病センター、整形外科、リ
ハビリテーション科の順であり、入院患者は
37.2%であった。③罹病期間は、1ヶ月以内の急性
症と1年以上の慢性症がほぼ同数であった。④疾
患別では、緊張型頭痛、ベル麻痺、脳血管障害、
変形性腰椎症、慢性関節リウマチ、高血圧症、シェ
ーグレン症候群などが多く、鍼灸治療の対象と
なった症状は、頭痛、肩こり、顔面筋麻痺、腰
痛、下肢痛、上肢痛、めまいなどであった。⑤鍼
灸治療成績は、著効・有効・やや有効を併せて
72.8%の有効率であった。
【考察及びまとめ】他科より診療依頼のあった患
者は、全体のほぼ半数であり開設当初よりも倍増
し、また入院患者も増加傾向であった。依頼診療
科は、神経内科をはじめ幅広く診療各科にわた
り、比較的急性期の早期に依頼された患者も多
い。また鍼灸治療は、こうした患者の疼痛や麻
痺・不定愁訴の改善、薬物の減量や副作用の防
止、さらにQOLの向上に寄与していることがわ
かった。
以上より鍼灸治療は、医科大学病院での有用性
は高く、現代医療に果たす役割が極めて大きいこ
とも示唆された。
3D9_5
キーワード:医科大学病院、実態調査、
鍼灸治療
O-86
鍼灸臨床教育における論文分析
の必要性
−排尿障害を中心として−
明治東洋医学院専門学校教員養成科
○谷口剛志、行田直人、小原圭三、小田原良誠
【目的】 近年、科学的根拠にもとづく質の高い医
療を国民に提供することを目的として、Evidence
Based Medicine(以下、EBM)が提唱されてい
る。一方、鍼灸臨床教育においてもEBMの概念は
導入されることが予想され、過去の鍼の臨床論文
の分析を行い教育に反映する必要がある。そこで
今回、泌尿器系疾患のうち排尿障害に対する鍼灸
臨床論文を分析したので報告する。
【対象・方法】MEDLINEと医学中央雑誌(以下、
医中誌)を対象とした。期間はMEDでは現在ま
で、医中誌では過去11年間とした。検索のキーワ
ードには、鍼治療と夜尿症、頻尿、排尿困難、尿
失禁、尿意切迫、神経因性膀胱、膀胱障害および
前立腺炎を用いた。
【結果】検索論文は、MEDLINEで96編あり、英文
41編(42.7%)、和文2編(2.1%)、その他53編
(55.2%)であった。英文41編には、臨床研究17
編(41.5%)、基礎研究7編(17%)、いずれにも
該当しないものが17編(41.5%)あった。臨床研
究17編の対象疾病としては、夜尿症9編
(52.9%)、頻尿・尿失禁等5編(29.4%)、神経
因性膀胱2編(11.8%)および尿道鍼麻酔1編
(5.9%)であり、研究デザインは、コントロール
群1編、群間比較5編、治療前後比較11編であっ
た。医中誌では132編(和文)あり、臨床研究は13
編(10%)で、疾病は神経因性膀胱8編
(61.5%)、前立腺肥大症2編(15.4%)、排尿障
害、前立腺炎および尿失禁が各々1編(7.7%)で
あった。研究デザインは、群間比較1編、それ以外
は治療前後比較であった。
【結語】 排尿障害についての鍼灸臨床論文を検索
したところMEDLINEでは17編、医学中央雑誌で13
編と文献数が少ない印象を得た。しかし、これら
の論文を分析することによって、根拠に基づく鍼
灸臨床教育をより充実させる可能性を示唆した。
3D10_1
キーワード:鍼灸、臨床教育、文献、
EBM、MEDLINE
O-87
泌尿器科における病院実習と
授業評価
明治鍼灸大学泌尿器科学教室
○鈴木言枝、星 伴路、手塚清恵
矢田康文、斉藤雅人
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
北小路博司、角谷英治、矢野忠
【目的】 附属病院実習の目的は、各科の外来にお
いて診察、診断、治療について見修を行い、医療
現場において検査データを科学的、客観的に判読
して鍼灸医療の適応や効果を正確に判断できる能
力を高め、医療人としての自覚を養うことにあ
る。
今回、附属病院泌尿器科外来における実習内容に
ついて紹介すると共に、実習後に授業評価を施行
したので報告する。
【対象・方法】実習は本学鍼灸学部4年生を対象に
泌尿器科外来で2日間、2人∼3人の小グループで行
われた。実習内容は①尿検査の実習と講義②学生
同士による腎臓超音波検査の実習③各種検査(医
師が患者に充分なインフォームド・コンセントを
得た上で、尿流動態検査、超音波検査など)の見
修と講義④鍼治療、血液検査の講義⑤医師による
主要疾患、診断方法などの講義⑥ビデオによる検
査法や手術法の供覧であった。なお、附属病院実
習終了後に学生に授業評価を目的としたアンケー
ト調査を施行した。
【結果】 ①尿検査実習と講義に対して、実習して
よかったが91.7%、実習内容が理解できたが58.3%
であった。②腎臓超音波実習に対しては、実習し
てよかったが84.5%、使い方が理解できたが32.1%
であった。また、実習に対しては楽しくできたが
48.8%であった。実習内容に対してはそのままで
よいが63.1%、さらに充実する必要があるが29.8%
であった。学生の実習に対する姿勢としては、興
味、関心を持って臨んだが67.9%、実習前に充分
な予習をあまりしなかったが45.2%であった。
【考察】 実習した内容に対しての理解はほぼ得ら
れており、実習の必要性も認めていた。また、実
習内容はそのままでよいとの意見もあるが、改善
することを求める意見も多く見られた。学生のほ
とんどが充分な予習をしてはいなかった。
【結語】 附属病院実習の教育目標が達成できてい
た。しかし、さらにより良い教育を目指した改善
の必要性を示唆した。
3D10_2
キーワード:泌尿器科、病院実習、授業評価
O-88
問題解決型学習の授業評価の
試み
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
○福田文彦、浦田 繁、笹岡知子、石崎直人
江川雅人、廣 正基、山田伸之、矢野 忠
【はじめに】近年、医学教育では学生の臨床にお
ける問題解決能力を高めるために問題解決型学習
の必要性が指摘され、各医科大学はその導入を進
めている。本学臨床鍼灸医学教室でも、4年生の
臨床実習の一環として学生に症例(問題)を提示
し、学生自らが学習・発表・討論を行う問題解決
型授業の導入を図っている。そこで本授業に対す
る学生の取り組みの実態とその問題点を明らかに
するために授業評価を目的としたアンケート調査
を行ったので報告する。
【対象と方法】対象は本学4年生116名であり、最
終の授業終了後に無記名、自記式、集合調査法に
て調査を行った。アンケートは、他大学で使用し
ている調査表を参考に独自に作成した。調査の内
容は、Ⅰ.教員及び授業に関する評価(6項目)、
Ⅱ.授業内容が臨床に役立つかの評価(4項目)、
Ⅲ.学生の自己評価(5項目)を5段階(非常にそう
思う、そう思う、普通、あまりそう思わない、
まったくそう思わない)の選択法とⅠ・Ⅱ及び講
義全体での意見を記述法を用いて行った。
【結果と考察】 アンケートの有効回答は104名
(有効回答率89.7%)であった。Ⅰ.に対する評価
(非常にそう思う、そう思うの割合)では、教員
は熱心(76.7%)、教員の準備は十分(60.2%)、
教員は適切に回答(66.0%)及び解説(60.8%)、
時間を有効に使う(39.8%)、進行が良い
(28.7%)であった。Ⅱ.に対する評価では、診察
に役立つ(60.5%)、病態把握に役立つ
(62.5%)、病院への紹介の適否に役立つ
(26.9%)、治療に役立つ(16%)であった。Ⅲ.
に対する評価では、積極的に参加(38.5%)、疑
問を質問(23.1%)、問題点へ取り組む
(21.4%)、私語を慎む(50%)、がんばって勉強
した(10.7%)であった。記述では、「病態把握
など実際の臨床で役立つ」「自分で調べる事が良
かった」、「十分に自分たちでディスカッション
出来なかった」「自分以外の時は、あまり勉強し
なかった」「色々な先生の意見が聞きたい」「や
る人とやらない人がいる」などの意見があった。
以上の結果から、問題解決型学習は学生の臨床に
おける問題解決能力を学習させる上で一定の成果
を得たが、学生の自主的取り組みを十分引き出す
までには至らなかった。今後は、学生の自主的取
り組みを高めるために事前指導を工夫していきた
いと考える。
3D10_3
キーワード:問題解決型学習、授業評価、
鍼灸教育、アンケート調査
O-89
鍼灸用電子カルテにおける
ユーザーインタフェースの検討
京都地方会
○三宅恭徳、森 勇樹、古屋いずみ
明治鍼灸大学脳神経外科
田中忠蔵、梅田雅宏
恵飛須俊彦、福永雅喜
渡辺康晴、染谷芳明
明治鍼灸大学生理学教室
青木伊知男
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
岡本芳幸
【目的】近年、医療機関ではカルテの電子化が検
討されており、厚生省においては、電子化した医
療情報の保存に関する指針も発表された。電子カ
ルテを導入することにより、患者情報の共有によ
る有用性のみならず臨床研究や疫学調査でのデー
タの蓄積や解析がより簡便に行うことが出来ると
期待されている。前回までに我々は鍼灸医療情報
の標準化、記録方式についての検討を報告してき
た。今回、実際の臨床で用いられる「鍼灸用電子
カルテ」のインタフェースを構築し、試作ソフト
の運用試験を行い、その有用性を検討したので報
告する。
【方法】明治鍼灸大学附属鍼灸センターで標準で
用いられているカルテをベースに項目・用語など
を整理し、FileMaker社製 FileMaker Pro Developer
Editionを用いて入力・閲覧インターフェースを構
築した。項目、その内容のコード化、標準化を試
み、ポップアップリストやクリックカブル・マッ
プなどを用いて簡便な入力を実現した。また、
VAS(Visual Analog Scale)など臨床で実用出来
るアプリケーションとリンクし、入力の手間を省
き、効率よい入力を実現するインタフェースの構
築を試みた。環境は10BaseTのLAN上に接続され
たサーバ(Apple社製 MacintoshG3/400)およびク
ライアント(Apple社製iBook)を用いた。
【結果と考察】このシステムにより、これまで紙
に書かれていた情報を容易に電子情報に記録、保
存することが可能となった。また用語や記録方式
のコード化・標準化の試みにより、鍼灸医療情報
の統計処理が可能になり、将来の臨床研究・疫学
調査に有用であると考えられた。今後より汎用的
なシステムの構築、鍼灸医療情報の標準化を進め
ていく必要があると考える。
3D10_4
キーワード:電子カルテ、鍼灸、医療情報、
ユーザーインターフェース
O-90
JAVA言語とDBサーバを使用した
鍼灸医療情報の共有の試み
京都地方会
明治鍼灸大学生理学教室
明治鍼灸大学脳神経外科
○森 勇樹
青木伊知男
田中忠蔵、梅田雅宏
恵飛須俊彦、福永雅喜
渡辺康晴、染谷芳明
明治鍼灸大学健康鍼灸医学教室
岡本芳幸
【目的】 近年、電子カルテの導入を前提とした医
療情報の交換に関する様々な取り組みが進められ
ている。我々は前回の本学会にて、医療情報交換
規約(MML;Medical Markup Language)に対応し
た鍼灸医療情報の記録・閲覧システムの検討とそ
の有用性を報告した。今回、最新のMMLバージョ
ン(ver2.21)に準拠し、鍼灸医療情報を交換する
ための雛形として「鍼灸モジュール(実験版)」
を作成した。さらに上記モジュールに対応した実
験的な電子カルテシステムを作成し、臨床で利用
可能な鍼灸医療情報の記録・閲覧など、その有用
性について検討したので報告する。
【方法】MMLver2.21のnamespacesという概念を基
にし、基本的な情報はMMLにて既に定義されてい
るモジュールを使用、鍼灸に特有の情報を新たに
「鍼灸モジュール」として暫定的に定義したもの
を用いた。DBサーバに実験的なデータベースを作
成し、SQL言語によりMMLに準拠したタグ付き情
報として出力させた。サーバは、DBサーバにOracle社製Oracle8i Enterprise EditionおよびHTTPサー
バをパソコン工房製PentiumIII 500MHz上にて動作
させた。クライアントは、HTMLおよびJAVA言語
で記述されDell製OptiPlexGxi上にて動作させた。
これらは、100baseTにて動作するLANおよびイン
ターネットを介した商用回線に接続され、それぞ
れ動作が検証された。
【結果・考察】LANおよびインターネットを介し
た鍼灸情報の電子的交換・共有が可能であること
を示すと共に、MMLという共通交換規約に対応す
る全てのシステム間での情報交換の可能性を示唆
した。この方法を使用することで、鍼灸院では安
価にて標準的な電子カルテシステムを利用するこ
とが出来、さらに他の医療機関との情報交換、デ
ータの保管、タイムスタンプの押印(正真性の確
保)などが可能になると考えられた。今後はさら
に「鍼灸モジュール」内の項目・用語の標準化等
の検討を行い、動作の高速化など、より使いやす
いシステムの開発に向けた取り組みが必要である
と考えられた。
3D10_5
キーワード:電子カルテ、MML、JAVA、LAN、
インターネット
P-1
ヨット競技における種目別身
体愁訴の調査
−熊本未来国体での調査から−
東京医療専門学校 ○古屋英治、篠原隆三、名雪貴峰
二村隆一、古海博子、八亀真由美
坂本 歩
【目的】 第54回国民体育大会夏季大会ヨット競技
において、(財)日本セーリング連盟が設置したコ
ンディショニングルームを利用したヨット競技、
ボードセーリング競技選手における種目別の身体
愁訴および鍼灸施術効果を調査したので報告す
る。
【方法】 コンディショニングルームはヨット競技
会場内に大会期間中9/12∼9/14の間9:00∼16:00
(最終日14:00迄)に開設した。調査項目は利用者
による問診録の記入事項から、種目別に年齢、競
技歴、愁訴の部位(複数回答)、医療機関受診状
況、慢性化の状況、徒手検査法の陽性率および愁
訴に対する鍼灸施術効果とした。直後効果は施術
前後にVAS法で評価し、有意差の検定は対応のあ
るt検定とした。
【結果】 470級は平均年齢26.2±4.2才、競技歴9.1
±4.3年、利用者数/選手数8/94名、以下同様にシン
グルハンダー級36.9±7.3才、15.9±6.7年、9/47
名、ウインドサーフィン級25.1±3.8才、6.3±2.7
年、14/76名、スナイプ級26.3±4.3才、10.8±4.6
年、4/84名、シーホッパー級SR18.9±3.3才、4.7±
3.0年、11/119名、FJ級17.5±0.6才、4.2±2.2年、
15/158、利用者数61名、延べ利用者数79名、利用
率13.7%だった。利用者のうち鍼灸施術の初療者
は44名だった。愁訴の部位別順位は470級は肩部が
最も多く、FJ級・シーホッパー級SRは腰部ついで
肩部、シングルハンダー級は腰部、ウインドサー
フィン級は腰部ついで肩部と肩甲間部だった。慢
性的な症状と答えたのは腰部では43名中14名、肩
部では29名中11名だった。鍼灸施術による直後効
果は初療者(n=44)は施術前5.00±1.95に対し施
術後1.65±1.40で有意な軽減(P<0.01)が認められ
た。
【考察】 ヨット競技のコンディショニングルーム
利用者は腰部、肩部に慢性的な愁訴を持ち、この
傾向は年齢にかかわらず認められた。競技現場で
の施術に加え、日常的な身体ケアの必要性が示唆
された。
2P19_1
キーワード:コンディショニング、腰痛、
スポーツ鍼灸、ヨット競技、VAS
P-2
鍼による新規体重計四分割バラン
サーの体重四分割値変動について
−第2報−
東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科
○小畑幸嗣、花輪悦正
吉田 実、村居眞琴
【目的】筋は姿勢バランス保持に大きく関与して
いる。そこで筋への鍼刺激が姿勢バランスにどの
ように影響するか、前回は下腿前面前脛骨筋に刺
鍼する事により、重心の後方移動が多く見られた
事を報告した。今回、下腿後面への鍼刺激では、
重心にどのような変化をもたらすか、四分割バラ
ンサーを用い検討した。
【方法】男女18名(年齢31.5±9.1歳)を対象に同
一被験者で無処置、鍼刺激を行った。鍼刺激は腹
臥位にて腓腹筋外側頭下垂部の外縁でヒラメ筋の
筋腹に5分間置鍼、無処置も同様に腹臥位にて5分
間安静にしてもらい、前・後の重心変化を測定し
た。使用鍼はステンレス鍼0.18×40mm、計測機器
は新規体重計四分割バランサー(いしずえ研究会
Basic製)を用いた。これは足底圧を左前、左後、
右前、右後に分割し体重を100%として各部位の割
合を表示する。測定姿位は自然立位、測定値は30
秒間の測定圧の平均とした。
【結果】無処置は全18名中、前方移動12名、移動
率の平均は4.3%、後方移動6名、移動率の平均は
4.6%であった。鍼刺激は全18名中、前方移動15
名、移動率の平均は8.4%、後方移動2名、移動率
の平均は4.8%、変化なし1名であった。左右方向
への移動に関しては特徴的な変化は見られなかっ
た。
【考察・結語】重心移動の方向は鍼刺激、無処置
共に前方移動が多く見られた。しかし、移動割合
を比較すると鍼刺激でより大きく移動した。これ
は前回同様、ヒラメ筋への鍼刺激が、バランスに
関与している足底腱膜に影響したと考えられる。
この結果は前回の前脛骨筋への鍼刺激と正反対の
重心移動であることから、両者は、機能的にも重
心移動に関しても相反作用を有することが、四分
割バランサーを用いることにより確認することが
できた。
2P19_2
キーワード:姿勢バランス、重心移動、鍼刺激
P-3
Jr.テニス選手における傷害および
鍼治療に関するアンケート結果
東海医療学園専門学校
P-4
くまもと国体・ハートフル大会に
おける鍼灸マッサージ活動報告
熊本地方会
○水野浩一、小山哲也
金子弘志、杉山誠一
【目的】テニス競技のジュニア選手において傷害
および鍼治療に関するアンケート調査を行ったの
で、その結果を報告する。
【方法】平成11年8月10日∼16日に有明テニスの
森にて開催された全日本ジュニアテニス選手権に
参加した選手のうちトレーナールームに訪れた選
手75名を対象とし、選手自身による解答としたア
ンケートを行った。アンケートの内容は、年齢、
性別、競技歴、練習時間、ウォーミングアップ・
クーリングダウンの有無、傷害部位、処置、鍼治
療の経験の有無、鍼治療を受けたいか等とした。
【結果】アンケートの結果は、
1)年齢については11歳∼18歳で、17歳が最も多
く37%であり、平均年齢は16.0歳であった。
2)傷害部位については、男子は大腿部が最も多
く16%であった。女子については、下腿部が
最も多く20%であった。全体では、大腿部が
20.2%と最も多かった。
3)処置については、鍼治療は2%と少なく、アイ
シングが31%と最も多かった。
4)鍼治療の経験は、56.5%に経験があった。
5)鍼治療を受けたいかについては、受けたいが
51.6%あり、受けたくない理由については、痛
い(痛そう)46.9%、怖い(怖そう)が34.4%
となった。
【考察】テニス競技におけるジュニア選手は、年
齢が低いにもかかわらず、競技歴が長く、練習時
間・頻度ともに多い傾向がある。そのため、ウォ
ーミングアップ・クーリングダウン等傷害予防、
コンディショニングに対する意識を高めていく必
要がある。鍼治療については、約半数に経験があ
り、また、鍼治療を受けたいと考えている選手も
約半数であることから、鍼治療に対する効果、期
待が示唆されている。
2P19_3
キーワード:鍼治療、テニス、アンケート、
スポーツ傷害
○徳岡功一、平井丈博
【はじめに】平成11年熊本県において第54回国民
体育大会くまもと未来国体(10月23日∼28日)と
第35回全国身体障害者スポーツ大会ハートフルく
まもと大会(11月6日、7日)が開催され、これら
の一部の競技会において鍼灸マッサージのボラン
ティアサービス参加をしたので結果を報告する。
【目的】 くまもと未来国体(5日間、4会場)とハ
ートフルくまもと大会(公式練習日を含む3日間、
5会場)計8日間、9会場においてスポーツケアの重
要性の認知と有効性の検知を目的に鍼マッサージ
施術により選手等の調整、疲労回復を行った。
【方法】 各会場において予診票で状態の把握、施
術内容のチェック、最後にアンケートに記入して
もらうことにし、ケア希望の選手、監督、コーチ
ほか大会関係者に鍼、マッサージ、テーピング等
の適宜必要な施術を行った。大会終了後、予診票
を集計しまとめた。また、他にも参加した施術者
から運営や設備等について、気づいた点を意見書
として、また1人1症例を報告書として提出して
もらった。
【結果】くまもと未来国体5日間の施術者は延べ
190名で受療者は626名(選手:332名)、ハートフ
ルくまもと大会3日間の施術者は延べ142名で受療
者は649名(選手:399名)であった。障害部位は
腰と肩で半数近くなった。アンケートからは所属
チームにトレーナーのいない選手が8割強いて、現
在、健康に不安を抱いている選手は4割いた。
【結語】 今回、盛況のうちに無事終了することが
出来た。運営面での問題点も報告を受けた。普段
からトレーナーの指導を受けていない選手も多
く、この様な機会にわずかなりでもアドバイスを
出来たことは有意義であった。選手の傷害予防の
面からも、これからも活動を続けて行く必要があ
ると思われる。
2P19_4
キーワード:スポーツ鍼灸、アンケート調査、
国体
P-5
実験的圧痛点に対する鍼刺激
の影響
P-6
近赤外線分光法を用いた鍼灸刺
激による僧帽筋血液量の検討
−鍼灸未経験者の血液動態−
明治東洋医学院専門学校教員養成学科*
森ノ宮医療学園専門学校**
明治東洋医学院専門学校***
○小島賢久*,**、宮本純也*、鍋田智之***
【目的】 鍼灸臨床上、圧痛点は治療点としてよく
用いられている。これまで我々は上腕二頭筋を対
象として圧痛点モデルを作成し、その有用性を報
告してきた。本研究は圧痛点の治療メカニズムを
解明する目的で、実験的に作成した慢性圧痛点に
対して鍼刺激を行い、同部位の組織血液量および
酸素代謝量の変動を検討した。
【方法】 被験者は健康成人男子10名(平均年齢
28.1±6.5歳)とした。実験的圧痛点は片側の上腕
屈筋群を対象として最大筋力の50%の負荷を与
え、8秒間を1セットとした伸張性収縮運動を限界
まで行わせて作成した。圧痛点の形成部位は、上
腕二頭筋上7カ所の圧痛閾値を負荷前、負荷直後、
2日後、7日後に測定して確認した。鍼刺激部位
は、負荷7日後に圧痛点が形成されていた上腕二頭
筋遠位端の筋腱移行部とした。鍼刺激部位の5mm
外方部にレーザードップラー血流計のプローブを
設置した。また鍼刺激部位を中心として、組織代
謝モニターの出力および入力端子を3cmの間隔で
設置し、酸素飽和度および総ヘモグロビン量を測
定した。測定は安静3分間と鍼刺激後5分間とし、
30秒間隔で行った。鍼刺激は40mm・20号鍼を用い
て2cm刺入し5回雀啄を行い5分間置鍼した。圧痛
点を形成していない反対側にも同様の実験を行い
対照群とした。
【結果】 皮膚血流量は両側とも鍼刺激により一過
性に増加傾向を示し、その後暫時低下した。対照
群では総ヘモグロビン量の増加と共に酸素飽和度
の増加傾向が認められた。圧痛点群では総ヘモグ
ロビン量に変動が認められないが酸素飽和度の上
昇傾向が認めれられた。
【結語】 以上の結果は、鍼刺激によって皮膚血管
が拡張したことを示している。対照群では深部組
織においても同様の血管拡張が誘発されたと考え
られる。圧痛点群では血管拡張が起こらずに酸素
代謝が抑制されたことが考えられる。圧痛点への
鍼刺激が組織血液量および酸素代謝に対して何ら
かの影響を与えていることが示唆された。
2P110_1
キーワード:圧痛点、組織血液量、酸素飽和度、
総ヘモグロビン量、鍼刺激
東京医療専門学校
○大久保正樹、斉藤秀樹
松山陽太郎、村居真琴
東京医科大学衛生学公衆衛生学教室
浜岡隆文、下光輝一、勝村俊仁、坂本 歩
【目的】近赤外線分光法(NIRS)を用い体幹の筋
である僧帽筋上部線維の筋血液量を測定し、鍼灸
施術の経験者と未経験者の鍼灸刺激による僧帽筋
血液量の反応性の相違を検討した。
【対象】被験者は健常成人(健常群)17名うち経
験者8名、未経験者9名、肩こりの愁訴がある者
(肩こり群)14名うち経験者6名、未経験者8名で
あった。
【方法】鍼灸刺激部位は右肩上部の硬結または圧
痛とした。筋血液量は近赤外線分光装置HEO-100
を用い、分離型プローブの送光部と受光部の距離
を4cmとし、刺激部位が送受光部の中間になるよ
うに設定し、左右の肩上部を同時に測定した。鍼
刺激は、測定開始3分後に刺鍼し、2分間雀啄刺激
(1Hz)を行い抜鍼した。灸刺激は、温灸(カマ
ヤミニ)1壮を測定開始1分後点火した。鍼灸刺激
共に測定開始15分後に僧帽筋の等尺性最大随意収
縮(肩挙上)を20秒間行った。僧帽筋内血液量評
価は、肩挙上後の血液量変化の最大値に対する鍼
および灸刺激時の血液量変化の割合(%)で行っ
た。
【結果】鍼灸刺激とも血液量は刺激側(右肩)が
有意に増加したが、無刺激側(左肩)はほとんど
変化しなかった。また、健常群と肩こり群の間に
は有意な差はなかった。さらに、健常群の鍼刺激
後で未経験者の血液量が経験者に比して有意に減
少したが、灸刺激では経験者と未経験者の間に有
意差はなかった。
【考察・結論】未経験者の鍼刺激後の血液量減少
は、鍼刺激による疼痛はなかったことから、痛み
による血管収縮はなかったものと推測される。ま
た、未経験者の灸刺激では経験者と有意な差はな
く、さらに未経験者の鍼刺激による血液量が経験
者より有意に低いのは、鍼に対する心因性の要因
も考えられる。
2P110_2
キーワード:近赤外線分光法、僧帽筋、
血液量、等尺性最大随意収縮、鍼灸
P-7
鍼刺激量別の皮膚および組織
循環の変動
明治東洋医学院専門学校教員養成学科 ○宮本純也、小島賢久
明治東洋医学院専門学校
鍋田智之
【目的】鍼灸治療において、刺激量は重要な要素
となる。これまでに我々は、皮膚血流量を指標と
して鍼の太さによる変化を検討し、刺激量依存性
に変動することを報告してきた。今回我々は組織
の酸素飽和度および総ヘモグロビン量を指標とし
て、刺激量別の組織に与える影響について検討を
加えた。
【方法】被験者は、23歳∼58歳の健康成人男子10
名(平均年齢36±10.52歳)であった。被験者には
予め実験内容を説明して同意を得た。実験は被験
者を室温23∼26度の実験室に入室させ、上半身裸
でベッドに10分間の安静腹臥位をとらせた後に
行った。鍼刺激の部位は肩甲間部とし、使用した
鍼はセイリン社製40mm・20号鍼・24号鍼の2種類
をランダムに行った。鍼の刺入は、押し手や鍼管
による皮膚の圧迫及びアルコール消毒を行わず
に、管鍼法を用いて刺入した。鍼刺激は、2cm刺
入して雀琢を5回行った。鍼刺激部位の外方5mm
にレーザードップラー血流計のプローブを設置し
た。鍼刺激点を中央とし、3cmの幅で組織代謝モ
ニターの出力端子と入力端子を設置し、酸素飽和
度と総ヘモグロビン量を測定した。測定は、安静
時3分間と刺激後10分間とし、1分間隔で行った。
【結果】皮膚血流量は刺激直後から増大し、暫時
減少した。20号鍼と比較して24号鍼の方が高い血
流量の増大が認められた。一方酸素飽和度と総ヘ
モグロビン量は、ともに鍼刺激直後から増大した
が太さによる差は認められなかった。
【考察・結語】以上の結果は、鍼の刺入刺激は皮
膚及び組織の血管拡張を誘発することを示してい
る。皮膚循環に対しての刺激量による差が認めら
れたが、深部組織に対しての差は認められなかっ
た。鍼刺激量別の皮膚及び深部の反応性に差があ
ることが示唆された。
2P110_3
キーワード:皮膚血流量、総ヘモグロビン量、
酸素飽和度、鍼刺激、刺激量
P-8
鍼治療に対するイメージ変容
プログラムの適用
筑波大学大学院体育研究科 ○寺田和史、和田恒彦
筑波大学心身障害学系
宮本俊和
筑波大学体育科学系
宗像恒次
【背景・目的】若年層が鍼治療をあまり受療しな
い理由の一つに、鍼に関する知識不足、マイナス
イメージがあると考えられる。そこで受療経験が
ない若年者に対し教育的介入を行い、鍼治療に対
するイメージの変容をはかることによって、鍼治
療が保健、治療の手段の一つに加えられることを
目的に本研究を執り行った。
【対象】18歳から30歳までの健康な男女で、自身
に鍼治療の受療経験のない者44名。
【方法】はり師を含む識者によるKJ法に準拠した
ブレインストーミングにより構築された ①鍼治療
についての知識、②鍼治療に対する恐怖・不安・
不信感、③鍼治療受療に対する態度の3つに関する
項目からなる質問紙を作成した。被験者を、家
族・友人に鍼治療受療経験のある・なしと、印刷
物または印刷物+VTR資料の違いにより、無作為
に受療経験あり−印刷、なし−VTR、あり−
VTR、なし−印刷の4群に割り付け、介入前後の得
点を比較検討した。
【結果】 介入前後の平均得点を対応のあるt検定
を用い比較したところ①知識、②恐怖・不安・不
信感、③鍼治療受療に対する態度のいずれにおい
ても、全ての群において有意な得点の上昇が見ら
れた(P<0.05)。VTRは家族・友人に受療経験の
ない群の②恐怖・不安・不信感に対してのみ有効
であった。①知識②恐怖・不安・不信感の改善は
③鍼治療受療に対する態度の変容を喚起するには
至らなかった。
2P115_1
キーワード:鍼治療、アンケート調査、
イメージ変容、教育的介入、受療態度
P-9
インピーダンス式体脂肪計の美
容鍼灸への応用についての検討
P-10
東洋医学研究所における感染
症対策について
明治鍼灸大学麻酔科学教室
○池田綾子、田村美恵、繁原貴子、智原栄一
愛媛県立中央病院東洋医学研究所
○益田 修、山岡傳一郎
【目的】 生体インピーダンス法を利用した体脂肪
測定器が広く出回り、耳鍼などによる痩身を含む
美容鍼灸の効果判定として利用出来る可能性があ
る。
しかし、インピーダンスは組織の水分を反映
し、その変化は体脂肪率の変動とは異なることが
危惧される。効果判定に利用するためには測定値
の日常生活による変動を熟知する必要がある。
今回、生体インピーダンスが一日の生活や月経
周期でどのように変化するかを検討した。
【方法】高木産業株式会社製の体脂肪計「TS-M202」を用いて左右の太衝、解谿に電極を貼り仰臥
位にて下半身のインピーダンスを測定した。
日内変動:20歳代の女性3人で起床時、9時、昼、
食前、18時、帰宅時、就寝前に1週間測定
月経周期:20歳代の女性1人で10ヶ月間起床時(基
礎体温も共に)と帰宅時に測定
【結果】1.日内変動ではインピーダンス値は起床
時に高く、時間経過と共に徐々に減り、帰宅時に
は最大27%の減少がある。入浴後は減少し、下肢
末梢の冷感がある時には増加した。
2.月経周期では周期前半に比べ周期後半から月経
前半の方が低値である。
【考察】 〔日内変動〕起床後の時間経過と共に皮
下組織の水分が増加したためにインピーダンス値
は低くなったと考えられる。入浴によりむくみは
改善されるが、皮膚血行が良くなるために値が低
くなったと考えられる。
〔月経周期〕周期後半には月経前緊張症による
浮腫のため値が低下したと考えられる。月経が開
始してもインピーダンス値が増加しないのは、痛
みのため行動量が減ること・服用した非ステロイ
ド性消炎鎮痛剤の副作用による浮腫等が影響する
と考えられる。
【結語】 生体インピーダンスは組織の水分に影響
するため短期間の推移は末梢の血行状態やむくみ
を反映する。体脂肪変化を見るには、測定を同じ
時刻・下肢の血行状態で行い長期間の推移をみる
べきである。
2P115_2
【はじめに】ここ数年鍼灸診療における感染症対
策マニュアル等が作成され、治療者の注意徹底と
治療器具の安全な消毒処理法の重要性が認識され
つつある。私どもの研究所(以下東医研)では感
染症対策として、全ての初診患者に対しB型肝炎
抗原、梅毒反応、抗HCV抗体測定を行い、初診患
者の感染状況を調査してきた。また現在診療経過
中の感染状況と診療手段の調査をも併せて行って
いるので若干の考察を加え報告する。
【方法】①初診患者の感染状況:対象を平成7年4
月から翌年3月末までの1年間に私共の研究所を
受診した患者740名のうち何らかの理由で採血で
きなかった42名を除く698名とし、初診時にB型肝
炎抗原・梅毒反応・抗HCV抗体を測定した。②診
療経過中の感染状況調査:東医研では昭和54年の
開設初期から感染症対策としてすべての初診患者
に対しHBsag検査を実施しているため、経過中の
感染調査では初診時B型肝炎(-)患者で治療回数60
回以上の中から対象者をランダムに選出しB型肝
炎抗原検査を実施している。
【結果】 ①698名中HBs陽性17名(2.4%)、抗
HCV抗体陽性57名(8.2%)、ともに陽性3名、
TPHA陽性者は18名(2.6%)という結果が得られ
た。肝炎ウイルス陽性者は計71名(10.2%)で
あった。②現時点では症例数はまだ少ないが、陰
性から陽性への変化はみられていない。今後も継
続調査を続け、現在の消毒法・感染症対策で万全
であるか確認していきたい。
【結語】 肝炎等の感染状況を把握し消毒法の検
討・感染防止対策を検討することで、鍼灸治療を
より安全に実施できるシステム作りが必要である
と考える。
2P115_3
キーワード:生体インピーダンス、体脂肪率、
美容鍼灸、日内変動
キーワード:鍼灸治療、消毒法、安全性、
抗ウイルス抗体
P-11
腰痛に対する偽鍼を用いたラ
ンダム化比較試験の試み
P-12 企業内健康づくりにおける鍼治
療・手技療法の有用性について
−職場における鍼治療・手技療法患者調査−
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
○井上基浩、北小路博司、池内隆治
片山憲史、越智秀樹、今井賢治
角谷英治、矢野 忠
明治鍼灸大学第三生理学教室
川喜田健司
【目的】 これまでの鍼灸医学の臨床研究におい
て、その実験デザインの不適切性が強く指摘され
ている。その内容は、対照群が設けられていない
こと、評価者が治療者と同一であること、適切な
ランダム割り付けが行われてないことである。そ
こで今回、腰痛に対して偽鍼を用いたランダム化
比較試験(RCT)を試行した。
【方法】腰痛を有する本学附属鍼灸センターの患
者に対し、インフォームドコンセントを行い、同
意が得られた患者20名を対象とした。インター
ネットによる中央管理システムを用いて、ランダ
ムに刺入群10名(59.6±21.1歳)と偽鍼群10名
(60.2±20.7歳)に割り付けた。鍼治療部位は左
右の腰眼、志室の計4箇所とし、刺入群は20秒の
雀啄術を行い、偽鍼群は鍼管のみを叩打した後、
20秒間鍼を刺入した仕草をした。評価は施術者と
は別の施術の内容を知らない鍼灸師が行った。評
価方法はVAS(10cm)を用い、治療前に最も苦痛
となる姿勢を確認し、治療前後で調査した。な
お、評価した後に腰痛に対する通常の治療を施行
した。
【結果】刺入群では治療前5.7±1.9cm、治療後3.2
±2.6cmであった。偽鍼群では治療前5.2±2.0cm、
治療後3.7±2.1cmであった。それぞれの治療前後
ではP<0.05(Wilcoxonの符号付順位検定)で有意
差が認められた。それぞれの治療後の間では有意
差(Mann-WhitneyのU検定)は認められなかっ
た。
【考察・結語】刺入群、偽鍼群ともに治療前後で
有意な変化が認められたが、群間においては有意
な差は認められなかった。平均値では刺入群の方
が改善率が大きい傾向が認められた。今回の結果
は試行的な研究であり、明確な考察は困難である
が、偽鍼群の改善率が予想以上に大きかったこと
が両群間の差を縮小した一つの理由と考えられ
た。その原因として、その患者を日頃から治療し
ている同一の治療者が施術することにより、強い
プラセボ効果が出現したことが考えられ、方法の
見直しの必要性も考えられた。
2P115_4
キーワード:鍼治療、偽鍼、RCT、腰痛
福岡県立福岡高等盲学校専攻科研修科
○沢崎健太、外間久生、武藤康子
久保弘樹、松下貴則、石丸浩徳
【目的】 近年、多様な職場において健康づくりへ
の関心が高まり、労働衛生は新しい展開を迎えよ
うとしている。生活習慣病の罹患に併せて頚肩部
痛、腰痛等の運動器疾患による休業日数の増加、
それに伴うQOL、生産性の低下や医療費の増加等
が大きな問題となっている。また、従業員の一層
の高齢化も予想され、今後企業内における早急な
健康づくりの施策が必要であると考えられる。
そこで、福岡県立福岡高等盲学校専攻科研修科で
は、企業内健康づくりにおける鍼治療・手技療法
の応用を継続的に行い、その有用性を検討したの
で報告する。
【対象及び方法】対象は、福岡県内の3企業(マス
コミ2社、電器製品販売1社)に所属する従業員の
うち、平成11年4月∼11月の期間に鍼治療・手技療
法を希望した142名とした。調査項目として、年
齢、性別、鍼治療・手技療法経験の有無、職種、
症状及び疾患名、治療効果、企業内健康づくりに
おける鍼治療・手技療法の有用性についてのアン
ケート等を検討した。
【結果】 全対象者のうち男性は81名(57%)、女
性は61名(43%)で、平均年齢は47.3±10.8才で
あった。鍼治療の経験は有52名(37%)、無90名
(63%)、職種は大部分が事務作業者であった。
症状及び疾患名では、頚肩部痛、腰痛が大きな割
合を占めた。また、アンケート調査の結果、ほと
んどの者が、鍼治療・手技療法は健康づくりに効
果があると回答し、鍼治療・手技療法開始後、病
院等への受診回数、薬剤の使用が減少したと回答
する者もあった。
【考察】 調査の結果、鍼治療・手技療法は、企業
内における従業員の健康づくりの一手段として有
用であることが示唆された。また、休業日数、病
院等受診回数、薬剤等の使用の減少を報告した例
もあり、企業にとっての経済的効果の可能性も期
待されることから、今後も追跡調査を継続する必
要があると考える。
3P19_1
キーワード:企業、健康づくり、鍼治療、
手技療法
P-13
めまいと頸・肩の凝りの関係
早稲田医療専門学校東洋医学鍼灸学科
○小岩信義
所 数樹、町田雅秀
昭和大病院リハビリテ−ション科
久住 武
関東労災病院耳鼻咽喉科
渡辺尚彦
P-14
高校生における肩こりの実態
調査(第2報)
−肩こりとストレスの原因との関連について−
京都府立医科大学附属脳・血管系老化研究センター
社会医学・人文科学部門
○藤田麻里
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
矢野 忠
【はじめに】我々はこれまで、めまいと筋電図の
検討から、四肢や頸部の筋を支配する運動神経の
興奮性の変化が、めまい患者にみられる筋の凝り
と関係がある可能性を本学会に報告してきた。
今回は、めまいと筋緊張の関係をより明らかに
する目的で、めまい患者の頸や肩の凝りの特徴に
ついて検討したので報告する。
【対象及び方法】対象は、平成11年3月∼10月まで
にめまいを主訴として関東労災病院耳鼻咽喉科め
まい専門外来に来院した患者30例(男性11例、女
性19例、平均年齢52.4±17.0歳)とした。
頸・肩の凝りについて自覚の有無、部位、程度
等と、めまいについて発症からの期間、発作の回
数、誘因、随伴症状等を質問紙を用いて調査し
た。他覚所見として、施行可能な患者に頸肩腕症
候群に用いる各種理学検査を行った。
【結果】頸・肩の凝りの自覚は、20例(66.7%)
に認めた。このうち、18例はめまいを繰り返して
再発し、self-controlが不良な患者だった。頸・肩
の凝りは、めまい感の随伴症状としても自覚され
(11/30例)、吐き気(16/30例)についで多く、蝸
牛症状(耳鳴、難聴)に比べても多かった。
部位では、肩甲上部、項部が多く、原因疾患の
障害側が明確な12例では、6例で障害側に一致した
側に凝りを訴えた。
また、頸・肩の凝りを自覚する例は理学検査の
陽性率が高い傾向があった。
【考察及びまとめ】以上の結果から、めまい患者
の頸・肩の凝りは、患者のライフスタイルや頸
椎・胸郭出口部の構造的な影響の他、めまいその
ものが前庭頸反射等により起こしている可能性が
考えられる。また、頸・肩の筋緊張は、めまいの
素因、増悪因子として、主訴のめまいの発症や経
過に影響していると考えられる。筋緊張の緩和を
目的としためまいに対する鍼灸治療は、めまいの
素因の解体と患者のQOLの向上により、この悪循
環を断ち切る治療方法として位置づけることがで
きると考えられる。
3P19_2
【目的】高校生を対象に肩こりについてのアンケ
ート調査を行い、単純集計と学年別、性別につい
て比較した結果を第1報で報告した。今回は、肩
こりとストレス要因との関連性について検討をし
たので報告する。
【対象及び方法】京都府下にある12府立高校の協
力を得て、6,251名を対象にアンケート調査を行っ
た。調査期間は1997年10月23日∼12月2日であ
り、調査は無記名、自記式、集合調査法により
行った。今回の検討では、調査票の内容のうち肩
こり調査と、日常いらだち事尺度(30項目)を使
用した。分析方法は、比率の比較にはχ 2検定を、
平均値の差の比較にはt検定を行った。
【結果】高校生のストレス要因としてもっとも多
かったのは「自分の将来」50.3%、次いで「卒業
後の進路」46.4%、「しなければならないことが
出来ていない」41.4%であった。肩こりが「あ
り」「なし」の2群に分類して、日常いらだち事
尺度得点でのt検定を行った結果、肩こりあり群
の方が有意に得点が高かった。また、肩こりの増
悪因子と日常いらだち事尺度得点でのt検定を
行った結果、起床時、疲労時、病気時、睡眠不足
時の4因子についても、肩こりあり群の方が有意
に得点が高かった(P<0.05)。さらに、肩こり
「あり」「なし」の2群と日常いらだち事尺度の
各設問間でχ2検定を行った結果、30項目中26項目
で有意差を認めた。
【考察】高校生の65.3%に肩こりがみられ、しか
も肩こりあり群の方がストレス要因の数が多かっ
たことから、肩こりの発症の背景にストレスが関
与していることが示された。特に種々のストレス
要因の中でも「自分の将来」や「卒業後の進路」
が高かったことから、将来への不安がストレスと
して強く影響しているものと考えられる。以上よ
り、高校生の肩こりに対して、ストレス緩和を目
的としたアプローチが必要であることが示唆され
た。
3P19_3
キーワード:めまい、頸・肩の凝り、
前庭頸反射、鍼灸治療
キーワード:高校生、肩こり、ストレス要因、
アンケート調査
P-15
胃電図を指標とした「脾虚証」
の評価に関する検討
明治鍼灸大学外科学教室
○塩見真由美、池田和久
田村隆朗、咲田雅一
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
今井賢治、石丸圭荘、岩 昌宏
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
和辻 直、篠原昭二
【目的】東洋医学では、望診・聞診・問診・切診
を通して「証」をたて、これに従った漢方薬の処
方や、鍼灸治療における経穴の選択がなされてい
る。しかしながら、「証」の妥当性に関する検討
は殆ど行われていないのが現状である。本報告で
は、消化吸収などの異常を表す「脾虚証」に焦点
を当て、「脾虚証」と判定された場合、実際に消
化管の機能異常が認められるのかどうかを検討し
た。「脾虚証」の判定には、われわれが独自に作
製した「脾虚スコアー」を用い、消化管機能の評
価には胃電図を用いた。今回は、「脾虚スコア
ー」の得点数と、食事負荷前後の胃電図との間に
一定の関連性があるのかどうかを検討したので報
告する。
【対象および方法】学生ボランティアー12名を対
象に、食事負荷前後各30分間の胃電図をポリグラ
フ360(NEC三栄製)で記録した。データは、A/D
コンバータ(Mac Lab)を介してコンピュータに
取り込み、FFT解析からpower spectrumを描出し
た。そして、dominant frequency(DF)とPower ratio (食事負荷後のpower/負荷前のpower)、およ
び胃電図の帯域における正常波形・速波・遅波の
占める割合を算出した。これらの指標と、実験前
に採取した脾虚スコアーの得点との間に関連があ
るか否かを解析した。
【結果】脾虚スコアーの得点が高い程、食事負荷
前から負荷後にかけて胃電図の正常波形の占める
割合が減少するという有意な相関が得られた。さ
らに、脾虚スコアーが10point以上の群では10point
未満の群に比し、Power ratioが有意に減少し、食
事負荷に伴う胃電図の振幅の増加が得られにくい
ことが判った。
【考察および結語】今回の結果は、スコアーによ
り「脾虚証」の傾向が強いとみなされた例ほど、
食後に胃電図が乱れ、また、本来得られるはずの
振幅の増加が認められないということを意味して
いる。故に、食事負荷前後の胃電図を指標とする
ことで、「脾虚証」の一面を評価することが可能
であるものと思われた。
3P19_4
キーワード:脾虚証、脾虚スコアー、胃電図
P-16
内因性高脂血症ラットの 脂質
代謝に及ぼす鍼刺激の影響
昭和大学医学部第一薬理学教室
○鈴木由紀子、中山貞男、小口勝司
【目的】 近年生活習慣病の誘因として高脂血症が
注目されている。鍼治療を継続していると脂質代
謝に好影響を及ぼすと言われているが、臨床的に
も基礎実験モデルにおいても具体的な報告はな
い。そこで脂質代謝に及ぼす鍼刺激の影響を検討
する目的でコレステロ−ルフリ−高フルクト−ス
食(HFD)飼育によるコレステロ−ルとトリグリ
セライド(TG)合成促進の内因性高脂血症ラット
を用い実験を行った。 【方法】4週齢Wistar系ラットを1群6匹として2週
間飼育した。高脂血症モデルはHFDを用い、鍼刺
激は3号・5mmの皮内鍼にペアンでウェ−ブをつけ
24Gの注射針の先に挿入し刺激部の皮下に0.1mmの
生理的食塩水と共に刺入・固定した。刺激部位は
非経穴部・肝兪・期門・ 中n・足三里・T 13 -L 1
(両側)とし、2週間後に血清及び肝臓中の脂質を
測定した。さらに鍼刺激の脂質代謝に及ぼす作用
機序を調べるためにβ酸化系の活性と、Malic enzyme(ME)、Glucose 6-phospfate dehydrogenase
(G-6-PDH)の活性を測定した。
【結果】 非経穴部に対し、経穴部刺激では血清中
のTG、VLDL+LDLコレステロ−ル、遊離脂肪酸
(NEFA)の増加が抑制された。
又肝臓中のTG、リン脂質、NEFAなどの増加も有
意に抑制された。さらにME、G-6-PDの活性が抑
制された。
【結語】肝兪・T 13 -L 1 ・期門・中 n・足三里など
の経穴は肝臓での脂質代謝の改善に有効であり、
その機序としてはコレステロ−ル合成の抑制、
TG、NEFAの低下とME、G-6-PDHの抑制から脂肪
酸合成の抑制であることが示唆された。
3P110_1
キーワード:鍼、HFD、脂質代謝、
内因性高脂血症ラット
P-17
鍼通電刺激がラットの体組成
に及ぼす影響
明治鍼灸大学老年鍼灸医学教室
明治鍼灸大学第一生理学教室
○高橋則人
西川弘恭
【目的】 耳介部への鍼刺激により体重が減少する
ことがヒトや実験動物で報告されている。本研究
では、ラットに種々の鍼通電刺激を与えることに
よって、体組成がどの様に変化するかを、生体イ
ンピーダンス法(BIA)を用いて検討し、研究期
間中のラットの摂食量、飲水量および糞量との関
係を解析する。
【方法】実験にはWistar系雄性ラットを用い、研
究期間はラットの週齢で7∼13週齢とした。ラット
は対照群(C群)、耳介鍼通電刺激群(A群)、前
脛骨筋鍼通電刺激群(AT群)およびAT群と刺激
部位は同一だが、電流量を強くした前脛骨筋強刺
激群(ATH群)の4群、各7例に分けられた。通電
刺激には平軸皮内鍼を用い、通電パラメータは
0.5mA、2Hzとした。ATH群は電流量を5.0mAとし
た。ラットは8週齢目からBIA測定および鍼通電刺
激を開始し、13週齢目までフォローされた。その
間の摂食量、飲水量および糞量は週2回測定した。
【結果】研究期間中に体重は4群とも一方向的に増
加したが、11週齢目よりA群とATおよびATH群と
の間に有意差を認め、A群において、体重増加の
程度が少なかった。またこの時期においてCおよ
びA群に比し、ATH群において摂食量の増加が有
意に認められ、同時にA群において飲水量がATお
よびATH群に比し、有意に多かった。BIAにより
測定した総体液量(TBW)は研究期間中に4群間
に有意な差は認めなかったが、体脂肪量ではCお
よびA群に比し、ATH群で有意な増加を認めた。
体重と体重にしめる総体液量および体脂肪量との
相関分析では、C、ATおよびATH群においては体
脂肪量、A群では総体液量との相関が最も高かっ
た。
【考察】 ラットの耳介部への鍼通電刺激では体重
増加が抑制され、前脛骨筋への刺激ではC群との
間に有意な差は認められないものの体重の増加傾
向が観察された。これらの結果より鍼通電刺激が
ラットの体組成に与える影響には部位差が存在す
ることが示唆された。
3P110_2
キーワード:生体インピーダンス法、体組成、
体脂肪量、総体液量、鍼通電刺激
P-18
鍼通電刺激による脳内モノア
ミンの変化
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
○加藤 麦、福田文彦、矢野 忠
明治鍼灸大学内科学教室
山村義治
京都府立医科大学法医学教室
吉本寛司、安原正博
【目的】鍼灸臨床において鍼通電刺激は主訴に対
する効果のみでなく、患者の気分など精神状態に
も効果を及ぼすことがある。今回我々はラットを
対象に鍼通電刺激を行い、脳内ドパミン(DA)、
セロトニン(5-HT)量の変化を指標に中枢神経系
への影響を検討した。
【材料と方法】8週齢の雄SDラットを腰部刺激群
と下肢刺激群に分け、これらをさらに低頻度刺激
群(1Hz)と高頻度刺激群(100Hz)の2群に分け
た計4群と偽処置コントロール群を設定した。刺
激方法はハロセンにて一時的に麻酔して拘束固定
し、覚醒してからそれぞれの刺激を10分間行っ
た。偽処置コントロール群では拘束固定のみを10
分間行った。上記の刺激を3日後に同様に行い、
最終刺激から24時間後に断頭し速やかに脳を摘出
して脳図譜に従い、側坐核(ACC)、線条体
(C/P)、前頭葉皮質(FC)、外側視床下部
(LH)、扁桃体(AMY)、海馬(HP)、中脳黒
質/腹側被蓋野(VT/SN)、背側縫線核(DRN)の
8部位をパンチアウトした。各部位のDA及び5-HT
含有量は高感度電気検出器を接続した高速液体ク
ロマトグラフィーにより同時定量した。
【結果及び考察】腰部刺激では低頻度、高頻度い
ずれの刺激頻度でもLHのDA、ACCの5-HTがコン
トロール群に比べ有意に増加し、下肢刺激では
ACC及びC/PのDAと5-HT、LHの5-HTは有意に増
加した。また、刺激部位による比較では高頻度刺
激においてACCとC/PのDA及び5-HTは腰部よりも
下肢の刺激で有意に増加し、FCとLHのDAは下肢
の刺激で有意に低い値を示した。一方低頻度刺激
ではDA量に変化はみられなかったがC/Pの5-HT量
は腰部よりも下肢の刺激で高い値を示した。以
上、鍼通電刺激では刺激頻度及び刺激部位により
脳内モノアミン神経伝達物質量は変化することが
示された。下肢高頻度刺激によるACC、C/P DA
の増加とFC DAの減少結果から、末梢刺激伝達に
よるDA神経系感受性の相違(脆弱性)が示唆され
た。
3P110_3
キーワード:鍼通電刺激、脳内モノアミン、
高速液体クロマトグラフィー、ラット
P-19
鍼刺激で発現が変動した未知
遺伝子のcDNAクローニング
後藤学園ライフエンス総研情報科学研究部*
熊本大学医学部附属遺伝発生医学研究施設**
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター***
○大田美香*,**、高岡 裕***
【目的】鍼刺激から効果発現に至る分子レベルの
反応過程として、鍼刺激によって多くの遺伝子に
発現の変化が起きていることを前回報告した。そ
の中で、鍼通電刺激の前後で発現の変化した数種
の遺伝子のなかには未知遺伝子が含まれているこ
とを確認している。今回その未知遺伝子のcDNA
クローニングを行い、全塩基配列を決定したので
報告する。
【方法】ネンブタール麻酔下で8週齢C57BL/6マウ
スの臀部と腓腹筋に刺鍼し、低周波通電刺激装置
で15分間鍼通電刺激をおこなった。鍼通電刺激3
時間後に大腿二頭筋、薄筋、腓腹筋を含む組織を
摘出後total RNAを抽出し、Differential Display法に
より興味深い遺伝子発現を示した遺伝子の部分配
列を決定した。DB検索後、未知遺伝子と確認した
cDNA断片によるマウス脳cDNAライブラリーのス
クリーニングを行い、陽性クローンを単離し塩基
配列を決定した。
【結果・考察】マウス脳cDNAライブラリーから
未知遺伝子クローンを単離し、その得られた
cDNAの全塩基配列を決定し、ESTデータベースに
登録した。我々はこの未知遺伝子をAEP1(Acupuncture Enhanced Protein 1 )と命名し、その塩基
配列から推測される機能などをSequence Motif
Search等で検討を加えた。これらの結果について
も考察を加えたい。
3P110_4
キーワード:Differential Display法、遺伝子発現、
鍼通電刺激、cDNA ライブラリー
P-20 B.D.ORTにてVirusの共鳴をみた
慢性痛に鍼灸治療と栄養補助食
品にて対応した2例について
医療法人社団明徳会福岡歯科東洋医学研究所
○福岡 明、小山悠子、河合真理子
【目的】慢性疼痛などにVirusの関与が否定できな
い。最近10年間の当研究所にてバイ・ディジタル
O-リングテスト(B.D.ORT)によりVirus・細菌・
重金属の蓄積などをみた症例の集計結果とVirusの
感染を想定した長期に亘る歯痛と三叉神経痛患者
に鍼灸治療と栄養補助食品の投与を中心に快癒に
導いた2例について報告する。
【症例1】52歳、主婦。2年半程前に 6 の抜歯後の
疼痛が続き、某国立大ペインクリニックに通院し
たが完治せず、鎮痛剤でごまかしていた。上顎左
側歯肉頬移行部に圧痛を感じ、同側上眼瞼は痙攣
を起こし、左半身の頸・肩・手までしびれている
と言う。MRI検査を受けたが異常を認めず、同大
学口腔外科より原因究明のためB.D.ORTを依頼さ
れ、来院した。B.D.ORTではSubP・TXB 2 ・Rota
Virus Hemophilus Influenzaが共鳴。抗生剤・栄養
補助食品などを投与し、更に鍼灸療法・指圧療
法・呼吸法などの代替医療を併用した。初診日よ
り来院2回63日目には、Virus・細菌・TXB2・SubP
は共鳴せず、痛みは消失した。頸肩部のコリには
指圧・鍼灸療法を続けた。
【症例2】72歳、主婦。一年半程前に右頬部全体
にピリピリした感じを覚えた。上顎犬歯・小臼歯
に義歯維持装置のマグネットアタッチメントを装
着しているためと思い、当該歯を抜去し種々の療
法を受けるも快癒せず来院。B.D.ORTにて右側第
Ⅱ枝三叉神経走向部にCMD.T、SubP及びTXB 2 の
共鳴をみる。抗生剤・栄養補助食品及びテグレト
ールを投与。併せて、鍼灸療法はVirusの感染推定
の局所の治療を避け、主に頸肩部・四肢に取穴し
経絡治療を行った。23日目にはCMD.Tの共鳴エリ
アは線状に縮小した。51日目には、膝関節・腋
窩・患部を含めてCMD.Tの共鳴は無く、症状も緩
解した。
【結論】長期に亘る慢性疼痛の原因にVirusの関与
をB.D.ORTにて推定し、治療方針を決定し、鍼灸
治療、投薬で短期間に快癒に導いた。
2P29_1
キーワード:慢性疼痛、Virus、B.D.ORT、
鍼灸治療、栄養補助食品
P-21
産後の体調不全及び介護に関連
して発症した喘息患者のケア例
愛媛県立中央病院東洋医学研究所
○真鍋昭生、益田 修、光藤英彦
さんさんクリニック
門田真奈
P-22
妊婦による三陰交施灸の効果
(第2報)
神奈川地方会
筑波技術短期大学鍼灸学科
○辻内敬子
小井土善彦
形井秀一
【はじめに】私共の開発した時系列分析法による
と、病症発症の背景因子として、産後の体調不
全・職業婦人であり二人の乳幼児を養育すること
となった心身の負担による過労・長女肺炎死去の
介護に伴う心身のショックに関連して喘息が発症
したことが示唆されている1症例を経験した。併存
病症として痔及び貧血がある。現症に対する専門
医療の診断では成人性喘息とされている。挙児希
望もあり産科医の指導も受けているが、成人性喘
息に対して投与されている薬の妊娠に対する影響
への不安も本院受診の動機とされている。
【症例】昭和37年生・38才・婦人・教員〔病歴〕
長女肺炎死去の後、2∼3ヶ月咳が続き、内科では
風邪からくる気管支炎と診断されたが、なかなか
治らないため呼吸器科を受診して成人性喘息と診
断された。本院受診時、夜間喘鳴1∼2回(3∼5
分)・起床時、咳・痰(黄色)・易疲労(咳こむ
時力がいる)あり。〔経過〕自宅施灸の反応は、
家族の協力があり良好である。第2診(初診後
1w)時における反応として、喘息は日中・夜間と
もに軽減。1クール終了時(2wに1回で6回の通
院)の評価はB評価(よくなっているが時に悪い
=:消極的満足のレベル)であった。随伴症状も
Bという評価を得た。現在は1/1M通院中である。
【結語】 この症例は、精神的・身体的に苦しい時
期に発症した病症が灸療・漢方薬投与によって軽
減された症例である。自宅施灸の反応・家族の灸
に対する理解もあり、灸療に対するコンプライア
ンスが高まった。また、初診時に妊娠しており、
つわり・出産後の乳汁不足に対しても灸でなんと
かしたいといわれ、患者の灸に対する認識レベル
の向上が見られた症例であった。
2P29_2
【はじめに】演者らは、助産院を受診中の妊婦に
自分で三陰交などにお灸をすえ続けてもらい、分
娩所要時間や出血量等を比較・検討したので報告
する。
【対象と方法】対象は、神奈川県内の T助産院に
おいて、1996年1月から1999年10月までの3年9ケ
月間に出産した妊婦219例中、鉄剤を服用してい
た症例などの82例を除いた妊婦137例であった。
1998年5月以降、灸を希望する妊婦に自宅で灸を
してもらった。137例中、灸を行った妊婦は48
例、行わなかった妊婦は89例であった。それらを
次の4群に分け検討した。すなわち、施灸経産婦
22名(A群)、非施灸経産婦57名(B群)、施灸初
産婦26名(C群)、非施灸初産婦32名(D群)の4
群で、各群の分娩所要時間、出血量、会陰裂傷に
ついて比較した。灸の種類は間接灸を使用し、施
灸箇所は、三陰交および自覚症状の有無により、
下肢に1∼2ケ所加え、1日1回の頻度で、1ケ所に1
∼3壮を妊婦が自分で施灸するよう指導した。施
灸開始は妊娠16週以降からとしたが、施灸開始週
数や施灸日数は一定ではなかった。
【結果】平均分娩所要時間は、A群5時間12分±
151.1、B群7時間36分±426.1、C群11時間29分±
386.3、D群13時間28分±425.7で、遷延分娩がB群
に5例、D群に1例みられ、A・C群にはなかった。
平均出血量は、A群270.0±208.5ml、B群208.1±
172.4ml、C群339.1±284.5ml、D群297.0±218.0ml
であった。また、異常出血例はA群に2例、B群に4
例、C群に4例、D群に2例みられた。会陰裂傷は、
A群Ⅰ度1例、B群Ⅰ度13例、Ⅱ度1例、C群Ⅰ度4
例、D群Ⅰ度23例であった。また、全例に流産な
どの重篤な副作用はみられなかった。
【考察】 A群及びC群の平均出血量がB・D群に比
べて多く、また異常出血例数も他群と差がない結
果であった。しかし施灸をした初産婦、経産婦と
もに分娩所要時間が短くなり、会陰裂傷例が非常
に少なかったことなどから、妊婦の三陰交への施
灸は、妊娠中および分娩時の母胎の状態に何らか
の影響を及ぼしている可能性が示唆された。妊娠
中の三陰交を中心とした間接灸は、試みられる一
方法と言えるであろう。
2P29_3
キーワード:お灸、時系列分析、喘息、介護
キーワード:三陰交、灸、分娩所要時間、
出血量、会陰裂傷
P-23
allodyniaが鍼刺激で劇的に改
善したRSDの1症例
大勝病院東洋医学診療室
○有村博信、蔵ケ崎真知子、大勝孝雄
【はじめに】RSDは激しい痛みを呈する代表的な
疾患であり治療に難渋する。鍼治療での有効性に
おいては、無効症例が多くを占める。今回、allodyniaにより歩行不能となった症例に対し、鍼治療
を施行し劇的に歩行可能となった症例を経験した
ので報告する。
【症例】22歳女性、主訴は疼痛による歩行困難、
H11年6月、左下肢屈伸時に疼痛が出現し、7月に
近医に入院となり、L 5/S1根神経障害と診断。8月
に有痛性筋強直が出現し歩行不能となり、9月に
当院入院加療。神経学的所見では左下肢の感覚異
常、筋力低下が認められた。皮膚所見は左下肢の
浮腫と皮膚色調の変化があり、足底部に強いallodyniaを認めた。VASは10を示し、サーモグラムで
は、左下肢で著明な皮膚温低下を示した。以上の
所見よりRSDスコアが7点となりRSDと診断され
た。
【治療】鍼通電(EAT)を50mm20号、ステンレ
ス鍼を用いて左の足三里−太衝、陽陵泉−足臨泣
に1Hz、15分間を施行し、allodyniaによる足底部に
は、SL療法を患側の湧泉に照射し、計15回施行し
た。SL療法を中止して16回目より湧泉一太谿への
EATを追加処方し、計30回施行した。
【結果】初回から15回までの鍼治療および、SL療
法では、VAS10→9と変化はなかった。16回目の
鍼治療から湧泉一太谿を追加処方した。翌朝、
VASが10→2となり、歩行器を使用して歩行可能
となった。サーモグラフィーにより下腿後面安静
時左28.5℃、右30.1℃、鍼刺激後左30.9℃、右32.1
℃、踵部安静時左27.8℃、右28.1℃、鍼刺激後左
28.1℃、右29.3℃であった。
【考察・結語】湧泉−太谿の追加処方によりVAS
の著明な減少および症状の劇的な改善を認めた。
下腿後面と踵部の皮膚温が患側、健側ともに上昇
した。以上のことから鍼刺激により中枢性機序の
関与が示唆された。
2P29_4
キーワード:RSD、allodynia、サーモグラフィ、
鍼通電
P-24
腰痛症への経絡レーザー療法
の試み
東京地方会 漢方健康センター
○伊藤 修
【緒論】 経絡を活用した鍼灸療法の臨床報告は、
既に、数多くある。しかし、その多くは鍼を用い
たものであり、我々は、鍼の代用としてレーザー
を照射し、腰痛症の治療に興味ある結果を得たの
で報告する。
【対象と方法】当院に通院する腰痛症の患者♂5
名、♀10名を対象とした。
まず、腰部の督脈上の「L 5 」の圧痛点を確認し印
をつけ、更に、頚部の督脈上の反応点を検索し、
「C6」を対応点とした。 「C 6 」に演者らの開発したレーザーの「ダイオト
ロン-PIA」(半導体、790nm∼830nm、30mW)を
60秒間照射し、腰痛症への効果をペインスコアと
腰部前屈度(FFD)の変化から観察した。
【結果】腰痛症の「L 5 」の圧痛が「C 6 」へのレー
ザー照射で、ペインスコアで約70%、FFDで約80%
のものに改善が見られた。
【考察と結語】今回は、経絡上へのレーザー照射
を試みたが、結果から督脈上の「L 5 」と「C 6 」と
の相関性が推察され、「L 5 」の圧痛が「C 6 」への
レーザー照射で消失し、患者の自覚症状の緩解す
る症例を多く見た事は、まさに経絡療法の有効性
を知らされたものであり、鍼の代用としてのレー
ザーが有効な事を推察出来た。
今後は、他の疾患についても経絡上へのレーザ
ー照射の効果について報告したい。
2P210_1
キーワード:経絡、レーザー療法、
ダイオトロン-PIA、督脈
P-25 ポピュラーな膝痛患者の1ケア例
P-26
肩手症候群に対する鍼治療
−膝痛を主病症とする慢性健康障害例−
愛媛県立中央病院東洋医学研究所
○山下清治、真鍋昭生、光藤英彦
大蔵省東京病院東洋医学センター ○對木麻里、安野富美子、吉田 章
筑波技術短期大学鍼灸学科
坂井友実
【はじめに】当研究所での診療対象は、殆どが慢
性健康障害を持つ病人である。このような病人に
対し、時系列分析法を用い病人の全体像をとら
え、家庭における灸療指導を中心としたチーム医
療を行っている。ここに紹介する症例は、時系列
分析表より主訴以外の諸病症にも注目しケアする
ことによって第1クール目より苦痛、不安から解放
され、患者自身の健康に対する意識レベルの向上
が得られたので報告したい。
【症例】大正14年生72歳、独居婦人、無職。〔病
歴〕H10年3月、風邪で2日寝ていて次の日起きた
とき左膝痛発症。独居のためこれからの生活を考
えると不安であり6月東医研受診。〔経過〕自宅施
灸(独居のためセルフケアの可能な手足の灸の
み)に対して反応良好。第2診(初診より1W後)
には痛みは軽減されていた第1クール(1/1−2Wで
6回の通院)の評価では、Bの評価(良くなってい
るが時に悪い:消極的満足のレベル)になってい
た。また、その他の病症についてはA評価(良く
なっている=積極的な満足レベル)が得られた。
現在H11年11月、1/8Wでフォロー中である。
【結語】 この患者は、受診前から灸療に対するコ
ンプライアンスが良く、初診時取穴した灸点への
自宅施灸の反応が良くコンプライアンスが更に高
まった。また、施灸してくれる人の奉仕が得られ
たことで更にコンプライアンスが高まったことが
あってか極めて早期に苦痛、不安から解放され
た。又、同時に健康レベルの向上も達成できたの
ではないかと考える。
2P210_2
【はじめに】片麻痺や心筋梗塞後に生じた肩手症
候群(以下RSDと称す)は対応に難渋する痛みを引
き起こすことで知られている。今回我々は、当院
にリハビリ目的で入院した片麻痺患者のうち上肢
の疼痛・浮腫・異常知覚などの症状を呈し、RSD
が疑われた2例に鍼治療を行う機会を得たので報
告する。
【症例1】 67歳、男性〔主訴〕右前腕痛〔現病
歴〕平成10年11月脳梗塞による右片麻痺を発症
し、Iセンターへ搬送された。DIV治療等を施行し
て、リハビリも開始された。12月末、リハビリ継
続のため当院へ転院となったが、患側上肢の浮
腫・疼痛および強い異常知覚があり、主治医の依
頼で鍼治療を開始した。〔合併症〕DM、HT〔初
診時現症〕BrunnstromステージⅢ、痙性(+)、失語
症(+)、アロディニア(+)、浮腫(+)、皮膚温変化
(+)、RSDスコア(4.0点)
【症例2】 70歳、男性〔主訴〕左上肢痛〔現病
歴〕平成11年7月脳出血による左片麻痺を発症
し、当院へ入院となった。リハビリは低酸素血症
のため約半月後より徐々に始められたが、患側上
肢の浮腫・疼痛があり、主治医の依頼で鍼治療を
開始した。〔合併症〕肺気腫、DM、HT〔初診時
現症〕BrunnstromステージⅣ、痙性(-)、アロディ
ニア(+)、浮腫(+)、皮膚温変化(+)、RSDスコア(3.5
点)
【治療及び経過】治療期間は入院期間中の約2ヶ
月間で週2回の治療を計15回ほど行った。治療方
法は低周波鍼通電療法と普通鍼で、症状のある部
を中心に治療部位を選択した。経過はペインスコ
アと肩関節の他動ROM、またRSDの諸症状につい
て観察した。治療終了時には、ペインスコアは症
例1で5、症例2では2.5に、他動ROMは症例2では
やや改善した。また、浮腫や皮膚温などにも改善
が認められた。
【考察及びまとめ】RSDによる肩や手の疼痛・浮
腫などは機能訓練を行う上での阻害因子となる
が、鍼治療により諸症状及び主訴の軽減が認めら
れ、機能訓練のレベルアップに繋がる可能性が示
唆された。
2P210_3
キーワード:お灸、健康障害、膝痛
キーワード:肩手症候群、片麻痺、鍼治療
P-27
肩関節周囲炎に対する鍼灸治療
の2症例
大蔵省東京病院東洋医学センター
○宮山忠彦、安野富美子
對木麻里、吉田 章
筑波技術短期大学鍼灸学科
坂井友実
【はじめに】肩関節周囲炎は、中年以降に多発す
る肩関節の疼痛と運動制限を主症状とする疾患で
あるが、拘縮の有無が症状の経過に影響を及ぼす
とされている。今回、拘縮がなく疼痛性の運動制
限がみられた症例と、拘縮が進行した症例を経験
したので報告する。
【症例1】 67歳、女性。〔主訴〕右肩痛〔現病
歴〕1年前より軽い疼痛を自覚し、徐々に動作時
痛が強くなり平成11年9月当院整形外科を受診し
た。肩関節周囲炎と診断され、医師の依頼により
鍼治療を開始した。〔初診時現症〕運動時痛(+)、
自発痛(±)、夜間痛(±)、拘縮(-)、右肩関節可動
域:屈曲145°、外転140°、ヤーガソンテスト(-)
〔治療経過〕鍼治療は疼痛部に置鍼を行った。治
療7回目で疼痛及び可動域制限も改善され治療を
終了した。
【症例2】67歳、女性。〔主訴〕左上腕後側の疼
痛〔現病歴〕平成11年5月に筋注を行った後から
主訴が出現するようになり、当院整形外科を受診
した。肩関節周囲炎と診断され、湿布薬を処方さ
れるが症状は徐々に悪化し、本人の希望で9月当
科を受診した。〔初診時現症〕運動時痛(+)、自
発痛(±)、夜間痛(±)、拘縮(+)、左肩関節可動
域:屈曲115°、外転65°、ヤーガソンテスト(-)
〔治療経過〕鍼治療は主として疼痛出現部位に置
鍼を行った。初診時の主訴は運動時痛であった
が、徐々に自発痛・夜間痛および可動域制限も増
強し、その後疼痛は軽減したものの可動域制限が
著明となり、リハビリでの運動療法も加えて、鍼
治療は現在も継続している。
【考察及びまとめ】三笠の病期分類によると、症
例1は筋spasmによるfreezing phaseにあたり、比較
的短期 に 改 善 し た症 例 で あ る 。 症 例 2 は fro zen
phaseの初期に来院し、疼痛が一時増強し、拘縮が
著明となったものと考えられた。本疾患の治療に
際しては、初診時に病期と病態を把握し、治療方
針をたてることが重要と考えられた。 2P210_4
キーワード:freezing phase、frozen phase、
鍼灸治療、肩関節周囲炎
P-28
内耳点におけるツボ反応と
うつ状態との関連
岐阜地方会 サンリ治療院
神戸東洋医療学院
○河村みゆき
河村廣定
【目的】 精神的な失調状態を呈する患者が鍼灸院
を訪ねることは少なく無い。これらに対して、鍼
灸治療が有効であるとの報告は少なく無いが、鍼
灸刺激がどのようにして精神障害の改善に関与し
たかは明らかでない。
精神的障害が脳の病的活動とするとき、平衡失
調が、それの発症に関わる可能が推測される。
そこで、うつ状態の患者において、その発症に
平衡失調が関わるか否かを調べる目的で、内耳点
周辺の経穴反応と、うつ状態との関連を調べた。
【方法】 神戸東洋医療学院附属診療所、サンリ治
療院に通院する患者で、うつ状態が推察される男
女5名を選択した。治療は、内臓や器官の病状を表
わすとされる募穴で皮膚反発力減弱部(反応
点)、および頚肩部反応点を取穴した。40mm、16
号鍼を用いて、反応点が消失するまで置鍼、撚
鍼、又はローラー鍼を行った。
通院は原則として週2回とし、うつ状態の経過を
問診表を用いて観察した。それと、内耳点に加え
た刺激量との経日的変化を比較して、両者の関連
性を調べた。
【結果および考察】患者には、問診表上より自律
神経障害などを伴う、うつ状態が観察された。5名
中4例は、生活環境に起因する重大なストレスの要
因があった。また、5例は、めまい、立暗み、難聴
など内耳に関する障害の経験者であつた。
問診表上のスコアーの改善と内耳点反応の消失
に要した刺激量の減少は、ほぼ同じように、経日
的に改善されたことから、両者の関連は密接であ
ると思われた。
軽度の平衡失調では患者自身が病状を認識しに
くい。このことが治療の機会の喪失や、不安の要
因となり、しいては、精神的混乱におよんだと思
われた。また、内耳点の反応と内耳の機能との関
連が推測されることから、うつ状態の発症に内耳
機能が関与したと考えられる。
2P215_1
キーワード:うつ状態、内耳点、反応点、
鍼刺激
P-29
認定スポーツ鍼灸師とアスレ
ティックトレーナーとの比較
P-30
呉竹学園附属施術所における
受療患者の統計調査第5報
−膝痛による患者の受療状況−
鳥取地方会
○篠原正明
【目的】 スポーツ競技大会の現場でボランティア
ー参加のスポーツ鍼灸師とアスレティックトレー
ナーが比較される。そこで(財)日本体育協会認定
のアスレティックトレーナーと(社)日本鍼灸師会
認定のスポーツ鍼灸師と比較検討したので報告す
る。
【方法】(1)アスレティックトレーナーの講習時
間は、①共通科目228時間、②専門科目136時間の
合計364時間。③講習は日本体育協会主管で集合講
習118時間、通信講習110時間(リポート提出)。
専門科目は実技と座学がある。共通科目、専門科
目検定合格者を「公認アスレティックトレーナー
養成コース終了者」と認定される。但し5年を限度
に追試験制度(60点以下)がある。(2)スポーツ
鍼灸師(スポーツ領域研修制度)の講習時間は、
①基礎科目は厚生大臣指定講習会の80単位(45分
/1単位)で、免除規定有り。②共通科目20単位
で、「症例検討」は免除規定有り。③専門科目50
単位、レポート10単位の計80単位の合計160単位。
研修終了者には、各専門領域ごとに、認定登録を
行う。
【結果】アスレティックトレーナーは①コーチC
級、B級の共通科目必修。②検定会で60点以上必
要。③講習時間長い。④免許に近い認定制度。⑤
殆どの受講者が、鍼灸師・理学療法士などの医療
関係、体育系大学出身、トレーナーなどの従事
者。⑥合格率低い。スポーツ鍼灸師は記述試験無
し。
【考察】 アスレティックトレーナーは共通科目の
リポート提出分を含めると、合計364時間に対し
て、認定鍼灸師は基礎科目の80単位を含めても合
計160単位で約3倍。更に最後の検定がある為、合
宿所で午前0時頃まで約半数の受講者が勉強する雰
囲気。最近医療系、体育系専門学校、大学で、公
認アスレティックトレーナーを目指す人が共通科
目、専門科目を在学中に履修できるようになり、
関西鍼灸短大、神奈川衛生学園専門学校、湘南医
療福祉専門学校など少なく、鍼灸関連の学校は日
体協と提携して免除適応コースを設けるべきであ
る。
【結語】 今後は当学会においても、介護保険に対
応する老年医学と同様にスポーツ鍼灸の研究活動
と資質の高いスポーツ鍼灸師が望まれる。
2P215_2
キーワード:認定制度、スポーツ鍼灸、アスレテ
ィックトレーナー、鍼灸師
東京医療専門学校
○名雪貴峰、古屋英治、坂本 歩
篠原隆三、二村隆一、八亀真由美
古海博子
【目的】本校附属施術所を受療した運動器系主要
4疾患のうち、膝痛を訴える症例について現時点
での施術効果を明らかにし、今後さらに効果を上
げるための要因について検討したので報告する。
【方法】平成8年1月から平成11年11月の間に本校
施術所に膝痛で新規に受療した患者70名、年齢
56.5±17.3才を対象とした。調査項目は問診録の
記載内容から受療者の年代、医療機関受診状況、
発症原因、主要症状、徒手検査法陽性所見、使用
した主な経穴、施術効果、効果発現までの施術期
間および施術回数とした。なお効果判定はVAS
(visual analog scale)法およびADLにより初療時
の状況から50%以上の改善を有効、50%未満の改
善を不変、脱落およびその他を不明とした。
【結果】施術効果は有効31例(44.3%)で効果発
現までの期間は施術回数10回以内および施術期間
12週未満が19例だった。不変は20例(28.6%)
だったが、施術回数21回以上、施術期間12週以上
にも及んだものが11例だった。不明は19例
(27.1%)で3回以内、4週未満のものが15例だっ
た。年代別分類では60才代17例が最も多く、つい
で70才代14例、50才代と30才代が11例の順だっ
た。発症原因では「特に原因が無く徐々に発症し
た」が35例で、このうち有効は15例(48.4%)、
主要症状では「動作開始時痛」を訴えるものが36
例で、有効は17例(54.8%)だった。主な使用経
穴は血海穴、梁丘穴、内隙穴だった。 【考察】施術効果の向上には予後を推定したイン
フォームドコンセントを実施し、症状に変化が認
められない場合には早期に施術方針の見直しをし
なければならない。一方で使用する経穴の選択に
は膝周囲ばかりでなく、遠位に求めた場合の効果
の違いについても検討し、前向き調査の実施の必
要性が示唆された。
2P215_3
キーワード:膝痛、後ろ向き調査、統計、
鍼灸施術、経穴
P-31
視力に及ぼす鍼刺激の影響に
ついて−1
−顔面部での鍼通電刺激−
日本鍼灸理療専門学校 (財)東洋医学研究所
○影山照雄
澤津川勝市
【目的】鍼灸施術により近視等の視力が向上、改
善することが報告されているが、その作用機序や
効果の程度等に関しては未だ不明である。今回
我々は、従来より視力の向上に効果があるといわ
れている鍼灸施術パターンから数パターンを選び
実験を行い、有効性を比較することにした。
【方法】 被験者は年齢は30歳(初診時)までと
し、健康診査の結果、糖尿病等のない健康成人で
裸眼視力0.3以下、矯正視力1.0以上の者とした。
実験室は蛍光灯照明による明室で、毎回10時00分
から14時までの明期に行った。予備実験の結果か
ら1パターンの治療回数は週2回、5週計10回を基
本とした。施術はF:顔面部(太陽穴と攅竹穴を
取穴)、L:下肢部(太衝・曲泉)、B:背部(肝
兪・胆兪)、W:全身(個体差を考慮して取穴)
施術の4パターンとした。顔面部施術:Fパターン
は、ベッド上、仰臥位で左右の太陽穴(-)、攅竹
穴(+)にステンレス、デイスポーザブル、セイ
リン製、40mm・18号針を斜刺で5mm程刺入し、
オームパルサー(LFD500 、 Zen Iryouki)を用い
て、被験者が痛みを感じない程度で2Hz、10分間
刺激した。実験開始前1週間以内と終了後1週間以
内及び8∼12週の間の計3回、視力表とオートレフ
ラクトメータ(AUTOREF/KERATOMETER
ARK900、NIDEK)を用いて裸眼視力、矯正視
力、球面屈折力、円柱屈折力等を測定し、得られ
た成績は統計学的解析をおこない、有効性を検討
することにした。今回はFパターンでの成績につ
いて報告する。
【結果・考察】被験者8名、左右16眼のうち裸眼
視力向上は7、不変3、低下6、矯正視力向上11、
不変3、低下2、レフ値改善5、不変4、悪化7とい
う成績であった。以上の成績等から太陽・攅竹穴
への刺鍼-パルス通電刺激が視力向上に効果がある
こと、ならびに低下、不変例が存在することなど
から、個体差を考慮した施術が必要であることが
示唆された。
3P29_1
キーワード:裸眼視力、矯正視力、レフ値
鍼通電
P-32
北辰会
小児の脱毛に対する接触鍼治療
の1症例
○後藤りゅう
【はじめに】精神的抑欝により、頭頂部から右側
頭部にかけて抜け毛が増え、軽度の脱毛を呈した
患者に対し銀製 o鍼を用いた接触鍼により清瀉肝
火熄風の治療を施し、治癒した治験を得たので報
告する。
【症例】患者:H.S、5才、男児。初診日:平成11
年7月10日。主訴:脱毛症
【現病歴】 平成10年11月に両親が離婚し、その後
精神的抑欝状態となり頻繁に歯ぎしりを呈するよ
うになる。また、母親の精神状態に非常に敏感に
反応し、しばしば頭痛を起こすようになる。平成
11年3月に母親が患者の脱毛に気づく。脱毛は除々
にひどくなり、5月から6月に脱毛のピークを迎え
る。その後も軽度の脱毛症状が残ったため、鍼灸
治療を希望し本院を来院する。
【現症】 頭髪は、頭頂部から右側頭部へかけて全
体的に除々にまばらになっており、頭頂部に痒み
を伴っている。枕に毛髪が毎朝10本程ついている
のを母親が確認している。随伴症状として歯ぎし
り、梅核気、軽度の口渇そして喜冷飲が認められ
た。
【望診】舌診:暗紅色 【切診】 脈診:滑弦、腹診:臍周の緊張・両胸脇
から脇下にかけての緊張、背候診:右肝兪と胆兪
の硬結、原穴診:両太衝の硬結
【診断】 望・聞・問・切の四診会参より肝欝化火
内風と診断する。
【治療】 涼肝熄風を目的として、百会、右内関、
右行間に銀製o鍼による接触鍼を施す。
【効果】2診から6診目に鼻血が毎日起こり、鼻血
が止まった7診目以降、脱毛の改善がみられた。
同時に、随伴症状は改善し、望診および切診より
改善傾向がみられた。初診から2ヶ月後にあたる
12診目には、脱毛はほぼ緩解する。現在経過観察
中である。
【考察】 中医学的には、肝火が血の有余である毛
髪を焼くことにより発症したと考えられる。治療
処置により鼻血の形で血熱が p邪され傷陰が改善
し、結果として脱毛が治癒したことは興味深い。
3P29_2
キーワード:脱毛、肝欝化火、涼肝熄風、
接触鍼
P-33
脱毛に対する灸治療で効果が
みられた2症例
新潟地方会
○小田温子、関 冲、中村吉伸
木戸病院内科
須永隆夫
【目的】 加齢により頭髪が薄くなるのはヘアー・
サイクル(毛周期)の成長期が次第に短縮する為
と、毛髪自体の直径が細くなる為である。今回
我々は加齢により頭髪が薄くなった50代男性2名に
対して施灸・観察し、脱毛の抑制と発毛・育毛促
進の可能性について検討を行った。
【症例1】 N.S、51歳、男性。身長165cm、体重
62Kg、血圧135/89mmHg、糖代謝障害有り。
【症例2】 H.Y。51歳、男性。身長173cm、体重
65Kg、気管支喘息。
【方法】 百会穴および薄毛部数カ所へ半米粒大直
接灸を5∼7壮行った。施灸間隔は1回/週とした。
観察は肉眼で行い、写真により頭髪の状態を記
録・観察した。また、検者および被験者の手で頭
皮を触った感覚でも経過を確認した。
【結果】 症例1では施灸開始2週目頃より灸痕部周
囲に細かい発毛が見られ、半年間経過した。しか
し被験者が肺炎に罹患し、その後毛髪の成長の抑
制が観察された。体調回復後、再び育毛が観察さ
れた。症例2では平成11年12月上旬現在、灸痕部周
囲に発毛が見られている。
【考察】 今回灸痕部周囲の発毛が促進されたこと
から頭皮への施灸刺激は頭皮の血流を局所的に改
善させると考えられた。しかし体調の悪化により
育毛が抑制されたことから、脱毛の進行は頭皮へ
の局所刺激のみでは抑制できず、全身状態を良好
に保つことがより重要であると考えられた。
3P29_3
キーワード:脱毛、施灸
P-34
灸治療で爪白癬が改善した
1症例
愛知地方会 すこやか鍼灸院
○校條由紀
名古屋大学医学部環境皮膚科学講座
早川律子
【はじめに】灸の皮膚への影響は日常臨床におい
て経験する。今回、本人の希望により難治性の爪
白癬に対して週1、2回のペースで知熱灸を行い、
その再生に改善傾向を見たので報告する。
【症例】67才、男性。爪の変性。現病歴:5年前
より左手のみ第1指から5指の爪全体が白く変色し
変性。爪は脆くぼろぼろとなる。近医皮膚科に
て、水虫と診断されるも、放置していた。白癬菌
による爪白癬であると顕微鏡にて同定。既往歴:
20年前に脳梗塞、降圧剤を内服治療中。
(治療)99.3.26より週1、2回、第1指から5指の爪
の生え際に2箇所(井穴相当部位)、半米粒大の
知熱灸を各1壮施行。写真にて記録。
【結果】再生と侵食をくり返しながらも、17回目
(5.23)第1∼3指に2mmの爪を観察、29回目
(6.29)第5指に約2mmの爪を観察、半年後62回目
(11.13)第1指に約10mmの爪を観察。
【考察】65才以上の足白癬患者のうち49.5%もが
爪白癬との報告がある。爪白癬の治療のための抗
真菌剤は、副作用の問題で服用しにくいこともあ
る。灸刺激による生体への影響については、施灸
直下の皮下の血管拡張、マクロファージの浸潤、
リンパ球の遊走などの報告が多数ある。数年間、
改善が見られなかった爪の再生が今回、灸刺激開
始より観察できたことから、爪組織への血管拡張
による栄養状態の改善、組織の再生が臨床的に表
現されたと思われる。
【結語】爪白癬に対して爪の生え際に知熱灸を数
日おきに繰り返し、経過観察をした。全体が脆い
爪であったが、2ヶ月後より堅い滑らかな爪が観
察でき、母指においては徐々に全体を被う再生を
認めた。
3P29_4
キーワード:ヒト、知熱灸、爪白癬、再生
P-35
糖尿病に対する鍼治療の検討
−血糖コントロールに鍼治療が
有効であったと思われる1症例−
東洋医学研究所u
○山田 篤、中村弘典、水野高広、黒野保三
P-36
慢性腎不全に対する鍼治療の
1症例
東洋医学研究所u
○水野高広、石神龍代、黒野保三
【目的】1997年に厚生省が行った糖尿病実態調査
では、我が国の糖尿病患者は予備軍を含めると約
1,370万人と言われている。また、糖尿病患者にお
いて、消化管術後に血糖コントロールが悪化する
場合が多いとされている。このことから、鍼灸院
に来院する糖尿病患者は増加するものと思われ
る。今回、人間ドックで糖尿病と診断され鍼治療
を行っていたが、その後胃癌が発見され、胃の亜
全摘手術を受けた患者に対して、退院後も鍼治療
を継続したところ、血糖コントロールが良好に維
持されたので報告する。
【方法】患者は62歳男性、主訴は高血糖に対する
不安と右手人差し指と中指の先のしびれ感であ
り、血糖コントロールを良好にすることと、しび
れ感の改善を目的に鍼治療を行った。治療方法
は、全身の調整を目的とした太極療法(黒野式全
身調整基本穴)と症状に随った標治法とした。鍼
治療期間は平成8年2月13日から平成11年12月4日
までの1112日間(313回)で、治療頻度は週2回と
したが不定期となった。治療経過はHbA1cと空腹
時血糖値から糖尿病のコントロール状態を検討し
た。
【結果】鍼治療前のHbA1cと随時血糖値の平均は
8.89%と164.0mg/dl、鍼治療後から手術前までは
6.8%と134.2mg/dl、退院後鍼治療の結果は5.40%と
106.9mg/dlとなった。
【考察・結論】今回の結果から、鍼治療が手術退
院後の血糖コントロールを良好に保つ方法の1つ
になったものと推察された。しかし、食事の制限
や体重の減少による効果も考えられるため、今後
さらに症例を積み重ね糖尿病に対する鍼治療の有
効性を客観的に検討していきたい。
3P210_1
【目的】 現在、人工透析患者の総数は、日本国内
でも12万人以上と言われている。この背景には透
析を受ける原疾患の適応範囲が広がったことや、
高齢の患者に対しても透析を行うようになったこ
と、また、医療技術の進歩により、透析患者の寿
命が延びたことがあげられる。しかし、透析によ
る身体的、時間的な束縛や、感染症の心配も避け
られない。今回、腎臓内科にて糸球体の萎縮が不
可逆的な慢性腎不全と診断された患者に対して鍼
治療を行ったところ、興味ある結果が得られたの
で報告する。
【方法】 患者は、48歳男性、「人工透析を避けた
い」を主訴とし、手足のむくみ、全身の倦怠感、
下肢の筋肉痛、全身の掻痒などの症状を訴えてい
た。この患者に対して、30mm18号ステンレス鍼を
用いて、単刺術にて、生体の恒常性維持機構の増
強を目的に、週3回の頻度で、49回の鍼治療(黒野
式全身調整基本穴を用いた太極療法)を施した。
治療経過は、BUN(尿素窒素)、sCr(血清クレア
チニン値)を指標とし、鍼治療の有効性を客観的
に検討した。
【結果】来院時、BUN:91.5mg/dl、sCr:15.28mg/dl
であったが、次回検査時、BUN:84mg/dl、
sCr:13.7mg/dlとなった。しかし、その後の検査で
は、BUNは95mg/dlと上昇し、sCrは11.5mg/dlと減
少している。随伴症状である手足のむくみ、全身
の倦怠感は、治療開始3ヶ月目で軽減し、ほぼ同時
期に下肢の筋肉痛、全身の掻痒なども気にならな
くなった。
【考察・結論】今回の結果から、慢性腎不全の随
伴症状に対して鍼治療が有効と思われた。しか
し、sCrは減少傾向にあるが、依然として高値を示
し、BUNも上昇傾向にあるため、今後の経過を
追って報告したい。
3P210_2
キーワード:糖尿病、血糖値、消化管術後、
黒野式全身調整療法
キーワード:慢性腎不全、人工透析、
黒野式全身調整基本穴、鍼治療
P-37
原因不明の頭痛が鍼灸治療で
著効を示した1症例
P-38
視床痛に鍼治療が有効であっ
た1症例
−局所脳血流量測定法を用いて−
明治鍼灸大学老年鍼灸医学教室
○寺沢宗典
水沼国男
松本 勅
大勝病院東洋医学診療室
○大勝孝雄、蔵ヶ崎真知子、有村博信
【はじめに】女性の中には、医療機関を転々とし
ても原因が不明な繰り返し再発する頑固な頭痛で
長期間苦しんでいる者がしばしばみられる。病院
各科の診察で原因を示す異常所見が発見されず、
鍼灸治療で著効を得た症例を報告する。
【症例】Y.E.、57歳主婦。初診:H11.11.1(主訴)
頭痛、めまい、肩こり。(現病歴)20代頃から肩
こり症があり、根をつめて仕事をすると、常に後
頚部から肩甲骨の内側がつまって疼き、頭の方に
血が上りそうになる。ひどい時には家族にマッサ
ージをして貰っていた。普段から几帳面でイライ
ラが強く、症状が気分に左右されやすい。今回の
発症は、10月17日起床時に突然、めまいと吐き
気、頭痛が起き1週間寝込んだ。その後、本学附属
病院を受診し、内科、耳鼻科、脳外科および整形
外科で精査を受けるも異常所見が認められず、鍼
灸センターへ紹介された。(個人歴)約10年間洋
裁(1日6時間ミシン掛け)。(現症)食欲減退、
気力減退、睡眠不足=不眠・多夢。舌は m斑、胖
大。脈は微、弦。口が粘り、便が細く、目の奥が
痛い。(東医的診断)肝鬱気滞、 m血。(治療方
針)疏肝理気、活血化 m。(治療)行間、三陰
交、血海、合谷、天柱ほか。(経過)週1回治療
し、3回(14日目)の治療で、めまいと頭痛が消退
し、イライラ、食欲減退、不眠、口の粘り、眼痛
も消退。肩こりは10から4に軽減(4回目=21日目
に確認)。
【考察】 もともと肝陽亢進があり、イライラと疲
労の蓄積から肝血不足をまねき発症したと考えら
れ、治療により気滞、 m血が改善したものと思わ
れた。
3P210_3
【緒言】視床症候群のpainful dysesthesia が前面に
立つものが視床痛と呼ばれ、自然治癒することは
なくあらゆる治療に難渋する。今回、鍼治療前後
に局所脳血流量測定法(CBF)を行い良好な結果
が得られたので報告する。
【症例】64歳、男性。主訴は、右側顔面部・前腕
部・下腿部のpainful dysesthesiaである。H1年に糖
尿病を発症し近医に通院加療中、H2年に心筋梗
塞、H5年に高血圧症を発症。更にH6年1月に脳内
出血を発症し某大学病院にて入院加療後、疼痛緩
和の目的でH11年6月当院を受診となった。
【現症】HT165cm、BW87kg、BP150/90mmHg、右
片麻痺、右側の表在.深部性知覚の低下、右側深部
腱反射亢進、右側病的反射が認められBr.stageは上
肢Ⅴ・下肢Ⅴであった。ADLは、自立している。
生化学所見は、血糖値が170mg/dlであった。MRI
にて左内包から視床に出血痕が認められた。
Painful dysesthesiaの評価は、VASを用い灼熱のよ
うな、ひきつるような、耐え難い痛みと表現し安
静時80・ADL時85・寒冷時90と示した。
【治療】患側のpainful dysesthesiaの緩和を目的
に、顔面部:魚腰・下関・四白、前腕部:合谷・
曲池、下腿部:太衝・臨泣・三里・陽陵泉・委
中・承山に目的とする刺入深度で50mm20号鍼を
置鍼で15分間、1回∼5回/週に行なった。
【結果】 鍼治療によりVASが安静時40・ADL時
50・寒冷時60に減少した。CBF値(ml/100g/min)
は、左半球:内包後脚18.2→24.6、PCA領域23.8→
26.8、ACA領域29.2→30.0が増加した。右半球:前
頭葉白質4.1→11.8、被殻36.7→50.2、PCA領域21.7
→30.0、MCA領域皮質枝が25.2→29.5、穿通枝29.5
→37.7に増加した。
【結語】提示した症例は、リスクが多彩でありし
かも薬物療法に抵抗性示す難治性の疾患であっ
た。鍼治療により症状の軽減およびCBFの改善を
得た。今回、鍼治療による効果が中枢機序の可能
性を示唆された。
3P210_4
キーワード:鍼灸治療、頭痛、めまい、気滞、
m血
キーワード:視床痛、局所脳血流量測定法、
鍼治療
P-39
鍼実技における刺鍼感覚習得
の検討
−シリコン枕を教材とした実験授業から−
明治東洋医学院専門学校
○河井正隆
【はじめに】今回、鍼実技教育における、シリコ
ン枕を教材としての刺鍼感覚習得に注目し、この
感覚を習得させるうえでの教育の方法上の基礎的
実証的資料の収集を試みる目的で実践授業(2
つ)を実施した。
【方法】これら2つの実験授業は、1)刺鍼感覚習
得における学習者の経時的変化に着目した実験授
業1、2)2実技クラスの間で、それぞれのクラス
で教員(同一教員による)の指導上の違いによる
学習者の刺鍼感覚習得の差異と、それに伴う学習
者の実技に対する意識を検討した実験授業2であ
る。具体的には、実験授業1の基本仮説を「練習
を重ねる毎に刺鍼感覚の向上が図られる」とし、
「練習回数が増すごとに、硬度の違うシリコン枕
を弁別する能力は高くなる」として作業仮説を設
定し、その実証を試みた。実験授業2では、2クラ
ス間の教育方法の違いとして、教員の実技指導の
際に、「鍼を一定振幅・速度で操作するように」
との指導内容の有無が、学習者にどのような影響
を与えるのかを検討した。実験授業1・2は、平成
4年6月∼7月の間で実施し、本校の鍼灸学科1年生
を対象とした(実験授業1:30名で7回実施、実験
授業2:52名で4回実施)。なお、この時期の学生
は、一連の刺鍼手技を習得しているレベルであ
る。
【結果および考察】 結果の一部を以下に述べ
る。1)実験授業1:シリコン枕の弁別能力には、
練習回数を重ねる毎に弁別能力は向上するが、最
終では低下傾向を示す。弁別の推移には「変動
型」「上昇型」「不変型」の各パターンを示す。
2)実験授業2:指導上の差で、近接するシリコン
枕の硬度差での弁別に、指導上の差異が見られ
た。また、「鍼を上下に動かし、その時の感覚に
気をつけ」ながら「鍼をゆっくり」動かすという
手技が、弁別能力の向上に結びつくことが明らか
となった。以上の事柄は、実技指導に有用な情報
を提示したものと考えられる。 【おわりに】日常の教育実践において、とくに実
技に関する客観的データにもとづく指導を学習者
に提示することの困難さを、教育評価との関連で
試行錯誤することが多いのではないだろか。今回
の実験授業は、さまざまな不備を持っていること
は歪めないまでも、些かなりとも実技教育を考え
る一資料と思う次第である。
(詳細は、当日資料として配付させて頂きます。)
2P39_1
キーワード:鍼実技、刺鍼感覚、シリコン枕、
弁別能力
P-40
取穴における指量法の活用に
ついて(1)
−前腕および下腿の骨度法と指量法−
関西鍼灸短期大学鍼灸学臨床教室
○善住秀幸、川本正純、藤川 治
【緒言】 身体各部の長さには個人差があるため、
経穴の位置を表すには、メートル法のような一定
の尺度で示すことは困難である。したがって骨度
法を用いて経穴部位を示すことが多い。また取穴
に当たっては、簡便法として指量法がしばしば用
いられる。そこで今回、骨度法の6区間における指
量法の適用について検討したので報告する。
【方法】 被験者は本学の学生で、男子65例(年齢
21.4±4.2歳)女子33例(年齢20.8±4.4歳)とし
た。男子については170.8cm以上を身長大、それ未
満を身長小とした。今回検討した骨度は次の通り
である。1)身長、2)肘窩横紋から手関節前面横
紋、3)肘頭から手関節後面横紋、4)足三里穴か
ら解谿穴(ST)、5)陽陵泉穴から外果(GB)、
6)委中穴から崑崙穴(BL)、7)内果から陰陵泉
穴(SP)。また指量法の部位は、1)中指中節骨
の背側、2)母指の指節間関節の横幅、3)第2∼第
4指のDIPの横幅、4)第2∼第5指のPIPの横幅、と
した。
以上の各部位について計測した実測値を、各部
位の寸度で除して1寸値(mmで表記)を求めて検
討した。
【結果および考察】全被験者のそれぞれの平均1寸
値は、骨度法では、身長:22.1±1.1mm、前腕前
面:24.4±1.8mm、前腕後面:25.9±2.1mm、下腿
ST:22.1±2.2mm、下腿GB:24.5±1.8mm、下腿
BL:23.1±1.9mm、下腿SP:21.8±1.8mmであっ
た。また指量法では、中指背側:22.4±3.3mm、母
指横幅:22.0±2.8mm、第2∼第4指:25.9±2.6mm、
第2∼第5指:23.8±2.4mmであった。中指背側およ
び母指横幅の1寸値は、身長、下腿ST、下腿SPと
ほぼ一致する。第2∼第4指は前腕後面と一致す
る。第2∼第5指の1寸値は前腕前面、下腿GB、下
腿BLに近いが、その活用は十分注意が必要であ
る。
【結語】 全被験者の状況からみると、前腕、下腿
における指量法の活用には多少留意すべき点はあ
るが、無意味なものではない。資料をさらに検討
し報告する。
2P39_2
キーワード:指量法、骨度法、取穴法
P-41
修正イーベル法による卒業認
定試験の評価と検討
東海医療学園専門学校
○小山哲也、水野浩一
金子弘志、杉山誠一
P-42
経絡経穴学の授業評価の試み
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学教室
○廣 正基、北小路博司、角谷英治
岩 昌宏、山田伸之、矢野 忠
明治鍼灸大学老年鍼灸医学教室
水沼国男
【はじめに】あん摩マッサージ指圧師、はり師、
きゅう師国家試験も平成11年度にはすでに第8回を
迎えた。しかし、試験問題についての客観的な評
価・検討は行われておらず、教育の現場における
教授内容との整合性についても疑問点が多い。丹
澤等は、近年の「医師国家試験大幅見直し」を受
けて、「あ・は・き師」試験を科学的に評価・検
討する作業に着手したが、当学園でもその必要性
を認識し、まず手始めに当学園卒業認定試験の評
価・検討を行うこととしたので、その結果につい
て報告する。
【方法】対象は、平成11年度卒業認定試験問題170
問とした。評価・検討の方法としては、難易度や
必要度を測ることができる修正イベール法を使用
して行った。試験問題の作成は、各科担当教員が
行い、試験問題を入力した以外の専任教員5名にて
評価・検討を行った。修正イーベル法は、難易度
と必要度の2面から吟味して、合格水準を設定する
方法である。テストを構成する個々の問題の難易
度を判定者が判断する際、一つ一つの選択肢につ
いてではなく、各問題単位で難易度を考えると同
時に、その問題が到達目標やその後の学習ないし
社会活動展開との関連性において、どれだけ重要
かという必要度を判定し2次元的に合格水準を設定
するものである。
【考察及びまとめ】修正イーベル法に基づき卒業
認定試験問題の合格ラインを設定すると、約75%
という数字が算出された。このラインで不合格者
リストを挙げると、普段から学力不足で指導を受
けている学生と一致することがわかった。以上の
ことから修正イーベル法における合格ライン設定
は妥当だと考えられる。しかし、出題された多く
の問題は教育目標分類Taxonomyによる型判定にお
いて“想起”というレベルであり、合格をした者
に関してもその知識が臨床に活かされるかは疑問
と考えている。
2P39_3
【はじめに】 大学審議会(1998年)の答申の一つ
に「多元的な評価システムの確立」の項目が挙げ
られており、教育活動の反省と、それに基ずく改
善が求められている。西洋医学教育では授業評価
とともに客観的臨床能力試験が導入され、臨床能
力の向上と評価の改善が試みられている。一方、
鍼灸医学教育においても教育内容を自己点検し、
より良い教育を提供するための授業評価の実施が
必要とされている。そこで我々は、経絡経穴学
(演習)講義を対象に授業評価を目的としたアン
ケート調査を行ったので報告する。
【対象と方法】 本学在学生2回生117名(男性67
名、女性50名)を対象に前期(平成11年4月∼7
月)の講義終了時に、多摩大学および聖徳大学の
授業評価アンケートの内容を参考にしアンケート
を独自に作成した。調査の内容は、I.授業(6項
目)、II.講義科目(6項目)、III.講義に対する
自分自身(学生)について(5項目)、IV.その
他の合計18項目について調査した。IからIIIは5段
階の選択法を用い、IVについては記述法を用い
た。
【結果】アンケートの有効回答は113名(有効回
答率は97%)であった。講義担当教員については
76名(68%)が熱心であると判断し、教育科目の
目的は83名(73%)が明瞭であると判断された。
また、独自に作成したサブノートについては96名
(85%)の学生が理解するのに役立っていると判
断した。これに対して学生自身の講義への関心に
ついては、積極的に関心をもち講義に参加してい
ると答えたのは52名(46%)と低かった。また、
その他の項目では、より臨床的な内容の講義の要
望が多かった。
【結語】 授業評価を目的としたアンケート調査
は、学生の講義に対する評価および講義への関心
度が理解できた。また、学生の講義に対する要望
を具体的に抽出できたことから、今後の経絡経穴
学をより良い内容にするための方法として有効で
あった。
2P39_4
キーワード:卒業認定試験、修正イベール法、
教育目標分類、Taxonomy
キーワード:鍼灸、教育、授業評価、
アンケート調査、経絡経穴学
P-43
自律神経と血圧の左右同時測定
(第8報)
−左右上腕の血圧と側頭部の温度バランス−
新潟地方会
木戸クリニック内科
○中村吉伸
須永隆夫
【目的】体調の良くない人は、体の左右で血圧が
全く異なっている場合が有ります。この様な時、
左右の側頭部に於ける血液循環のバランスが、血
圧のバランスのみからでは推定出来にくいと思わ
れるので、左右の外耳に於ける温度を比較し、頭
部の血液循環の様子を観察し、興味ある結果を得
たので報告します。
【方法】 左右の血圧バランスが悪い症例に於い
て、耳式体温計を使用して、外耳の温度バランス
と上腕部の血圧バランスの比較から、頭部の血流
を推察考察します。(使用機器:OMRON製HEM700CPデジタル自動血圧計、TERUMO製耳式体温
計EM-20CP)
【結果】治療前後の上腕に於ける収縮期と拡張期
血圧を右腕・左腕(mmHg)、脈拍(/分)、外耳部の
温度を右・左(℃)、の順に記しました。
症例1、右側頭部痛、80才男、
前:118 / 75、139 / 94mmHg、 67、 34.4、36.0.........(1)
後:104 / 73、115 / 80、
69、 35.2、35.4.........(1')
症例2、左背部痛、64才男、
前:93 / 65、105 / 80mmHg、 68、 35.4、36.7.........(2)
後:99 / 65、106 / 72、
69、 36.0、36.5.........(2')
症例3、頭痛、9才男、
前:119 / 91、130 / 65mmHg、 68、 36.9、35.5.........(3)
後:102 / 71、94 / 58、
71、 35.5、35.3.........(3')
【考察および結語】症例の様に左右の血圧バラン
スに差が多い時は、外耳道に於ける温度バランス
も、左右差が多く認められました。症例より外耳
道の温度は、血圧バランス及び体調が良くなる
と、バランスも良くなりました。症例3-(3)の結果
より、温度が高くなるのは収縮期の高い側より
も、拡張期の高い側、つまり腕の血管の緊張が強
いと思われる側で、頭部の血流量は多くなる様に
思われます。症例3-(3')では左右の血圧差が多い割
に左右の温度差が少なく、症状や血圧バランスの
評価をするには、外耳部の温度バランスを加味し
て、状況を判断すると、一層把握し易いと思いま
す。
2P310_1
キーワード:収縮期血圧、温度バランス、体温
P-44
自律神経と血圧の左右同時測定
(第9報)
−腕の血圧と比例しない頭部の温度−
新潟地方会
○中村吉正、中村吉伸
【目的】 腕での血圧測定値は、頭の中の血液循環
と関連性が有るかどうか、という疑問を解決する
ために、左右の血圧バランスと、左右の頭部の血
液循環に因ると思われる、側頭部の温度バランス
を比較した結果、血圧と側頭部の温度には関連性
が認められる場合(第8報)と、認められない場
合に付いて考察しました。
【方法】 左右の腕に於ける拡張期血圧の、バラン
スが悪い症例に於いて、左右の血圧と左右の耳で
の温度を比較して、拡張期が高ければ同側の温度
が高い群と、反対のバランスを示す症例群を比較
して考察しました。
【結果】1.拡張期血圧も耳の温度も同側が高い群
の、右と左の収縮期血圧、右と左の外耳道の温
度、主症状の順に示すと、
(1)75:94(mmHg)、 34.4:36.0(℃)、
右側頭痛
(2)65:80、
35.4:36.7、
左背部痛
(3)91:65、
36.9:35.5、
頭痛
(4)80:94、
34.6:35.4、
めまい
(5)95:100、
34.3:35.4、
高血圧症
2.拡張期血圧の高い側の耳の温度が低い群、自覚症状
は不定愁訴、歯の不調(弱い痛み)、
(1)85:92(mmHg)、 36.2:34.7(℃)、
左の歯痛
(2)65:79、
36.7:35.4、
左の歯痛
(3)101:112、
36.6:33.9、
左の歯痛
(4)100:121、
36.4:35.4、
左の歯痛
【考察】1.では拡張期血圧の高い側で耳の温度が
高い。これは比較的太い血管の緊張で、圧力が末
梢まで伝わり易くなっていたものと考えられま
す。2.歯の痛みは上腕に比べて、より細い末梢の
脳の血管を緊張させる結果、脳の血液循環は低下
し、体の機能に影響を与えると思われます。1.
2.の結果より、歯の痛みの様な脳に近い所のスト
レスは、血圧の高い側でも、側頭部の温度を下げ
る事も有りうるので、体調を知るのに、血圧のみ
ならず、耳での温度バランスをチェックする事
で、非常に重要なデーターを容易に得る事が出来
るのではないかと推察します。
2P310_2
キーワード:血圧バランス、温度バランス、体温
P-45
外科的手術侵襲が音声に及ぼ
す影響
明治鍼灸大学大学院
○関 真亮、篠原昭二
明治鍼灸大学鍼灸症候学教室
丹沢章八
明治鍼灸大学外科学教室
咲田雅一
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
北出利勝
【目的】 「聞診」は東洋医学的な診察法である四
診法(望、聞、問、切)の一つで、施術者の聴覚
と嗅覚を用いるものである。特に聴覚によって患
者の音声を診察する方法を声診という。声診は他
の診察法に比べ、臨床的意義などが明確にされて
おらず、研究もほとんど行われていないのが現状
である。そこで今回、体調の変化が音声にどのよ
うな影響を及ぼすかを明らかにするために、生体
に侵襲を与える端的なケースとして外科手術に注
目し、手術前後の音声を音響的に分析した。
【方法】 対象:本研究に同意した本学附属病院内
で外科手術を行った入院患者(男性11例、女性4
例、平均年齢60±8歳)。音声標本は自然な大き
さ、高さで約2秒間発声された日本語母音「あ」と
した。なお、挿管による嗄声がある場合には、デ
ータから除外した。録音にはDATレコーダー(ソ
ニー社製 TCD-D10)を使用した。音声解析ソフ
トはサウンドスコープ(東陽テクニカ社GWISOS)を用いた。
【結果】 対象を手術の種類により大手術群と小手
術群の2群に分類し、音声スペクトルについて手術
前後の比較を行ったところ、大手術群において高
周波域(5∼8kHz)のエネルギーレベルが、術前
に比べ有意に増加する傾向が認められた
(P<0.01)。また、小手術群では同様の変化は観
察されなかった。
【考察】 高周波成分の上昇は、聴覚的に気息性、
無力性と評価される声において観測することがで
きる。本実験で手術後に見られた音声スペクトル
の変化は、主に声の気息性によるものと考えられ
た。気息性は、臨床上、疲労感として評価されて
いると考えられる。以上のことから、音声は身体
の状態と密接に関連しており、声診により体調の
評価が可能であることが示唆された。また、声診
の客観的指標として、音声スペクトルの利用が可
能であることが分かった。
2P310_3
キーワード:聞診、外科手術、スペクトル、
音声
P-46
舌所見と虚証の関連性について
明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
○和辻 直、篠原昭二
山本晃久、渡邉勝之
有馬義貴、北出利勝
【目的】最近、舌診は鍼灸臨床における望診の一
つとして活用されはじめた。舌診の特徴は寒熱、
虚実などの証を判断するのに有用とされている。
一方、胖嫩舌、歯痕舌は虚証に現れやすいとされ
ているが、舌所見と証との関連については詳細に
検討されていない。そこで、舌所見と証の関連を
検討するために、胖嫩舌と歯痕舌に注目し、臨床
的に診断された虚証との関連性を調査した。
【方法】鍼灸センター来院患者を調査対象とし、
調査期間は1ヶ月間とした。
調査方法:舌診に熟練した診察者5名が胖嫩舌、
歯痕舌の有無や程度を観察し、舌診調査票に記入
した。同時に舌診と同一の診察者が四診により証
を判定した。次に虚証に関する問診事項15項目か
らなる質問票を、診察者以外の者がインタビュー
形式で質問を行った。なお、質問票は症状の程度
を4段階に点数評価し、合計最大点数が45点のう
ち、合計点数が9点以下は健常、10点以上20点未
満はやや虚証、20点以上は虚証と判定できるよう
作成した。
【結果】 調査対象者は62例(男性27例、女性35
例、平均年齢64.5±13.1歳)であった。舌診の結
果では胖嫩舌を示す者は55例であった。歯痕舌を
示す者は30例であり、そうでない者は32例であっ
た。四診の結果では虚証が51例、虚実夾雑が5
例、証を判断しなかった者は6例であった。虚証
に関する質問票の結果は10点未満は9例、10∼19
点が最も多く43例、20点以上は10例であった。ま
た、四診と舌所見の結果では虚証で胖嫩舌を示す
者は45例、虚証で歯痕舌を示す者は27例であっ
た。次に、舌所見と質問票の結果は四診結果と同
様な傾向を示した。
【考察・結語】歯痕舌は胖嫩舌と同時に現れる場
合が多いとされている。今回の調査対象患者でも
歯痕舌は胖嫩舌と同時に認められた。虚証を示す
患者で胖嫩舌が歯痕舌よりも多く認められたこと
は、虚証における両所見の臨床的意義の違いによ
るものと思われた。
2P310_4
キーワード:舌診、虚証、胖嫩舌、歯痕舌
P-47
教育機関におけるコンピュー
タ等管理の有用性
P-48
鍼灸院での患者情報電子化の
意義と実施(第2報)
後藤学園ライフエンス総研情報科学研究部
○菅野亜紀、大田美香、橋本直己
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター
高岡 裕
後藤学園ライフエンス総研情報科学研究部1
治療室アレテ2
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター3
○岸 朋胤1,2、菅野亜紀1、高岡 裕1,3
【目的】近年パーソナルコンピュータ(PC)の普
及は目覚ましいものがあり、教育機関においても
その使用やインターネット接続が普及しつつあ
る。このようにコンピュータの購入やリースが増
え、更にはコンピュータごとに異る設定項目も増
えたので、これらの情報を一括して管理すること
で、学校教育に用いるPCの運用を効率化するとと
もに、リース物件のコスト管理等も容易になると
考えられた。さらに学生へのPC運用実績をデータ
ベース(DB)に記録することで、実績に応じた教
育上の配慮が期待される。そこで、今回我々は後
藤学園内の全コンピュータの情報をDB化すること
を試みた。
【方法】ファイルメーカーPro Ver4.1(FileMaker
社)を用い、PCの他にプリンタ、MOドライブな
どの周辺機器も含めてDBの対象とした。またデー
タを機種、品番、使用場所の他、購入品・リース
品の別、リース会社、リース契約期間、PC貸し出
し記録などの項目に分けて入力可能にした。検索
項目としては機種、使用場所、リース契約番号、
使用実績等を割り当てた。完成したDBはMOのメ
ディアに保存し、パスワード入力後閲覧可能な状
態で、担当者が管理することとした。
【結果・考察】コンピュータ管理のためのDBが完
成したことで、PCと周辺機器の台数、使用場所や
学生用PCの累計使用(貸し出し)時間、リース料
の月額、リース終了日等の把握が瞬時に可能とな
り、またそれらの情報検索が容易になった。さら
に学生用PCの累計使用時間、リース料の残高や期
間は自動的に計算されるようスクリプトを組み、
複数のDBファイルを作成しそれらをリレーショナ
ルにしたことで、データ入力の手間を極力抑える
ことに成功した。今後は学生のPC使用情況を検討
し、今後のPC導入時の参考となるデータを集める
とともに、学生に貸与するマシンのソフトウェア
管理を目的にソフトウェア管理DBを作成し、コン
ピュータ管理DBとリレーショナルにする予定であ
る。
3P39_1
【目的】 現在の鍼灸院経営は厳しく、その合理化
が求められている。そこで我々は、第48回全日本
鍼灸学会学術大会(神奈川大会)において患者情
報電子化の意味と実用性について報告した。近
年、企業を中心としたIT(Information Technology)導入の意義についてさまざまな視点から活発
な論議がなされている。その中でもIT導入におけ
る投資効果は、経営者にとって重要な評価ポイン
トである。今回は、鍼灸院におけるIT導入の投資
効果について検討した。
【方法】前回報告した Power Machintosh 8500/G3266(Apple社)及びファイルメーカーPro4.1(フ
ァイルメーカ社)により構成される患者情報管理
システム "AIMS" (ARETE Intelligent Medical
record System)と従来の紙による患者台帳を用い
た場合で比較した。
【結果と考察】IT導入の投資効果は、その定量的
効果と定性的効果に大別できる。定量的効果とし
ては、患者情報の出力において、DB(データベー
ス)の持つ機能を用いることで抽出・検索などが
条件設定のみで瞬時に行え、紙ベースの患者台帳
と比して作業効率が高いことが示された。具体的
には、手作業で特定患者へのダイレクトメールの
宛名書き100枚に付き約100分の時間が、数分のDB
操作により可能となった。また、IT機器導入以前
は、困難であった来院患者のプロファイル解析が
可能になり経営方針の検討に有用であった。定性
的効果としては、定量的効果により生み出された
時間やお金を活用し、患者とのコミュニケーショ
ンや自らの研修、また宣伝広告を行うことがで
き、それらにより鍼灸師の治療技術及び鍼灸院の
サービス向上がもたらされる可能性が示された。
【結語】 今後、鍼灸院でのIT活用によるその経済
性評価および可能性を様々な観点からさらに検討
を加える予定である。
3P39_2
キーワード:データベース、管理、情報検索
教育機関
キーワード:鍼灸院、患者情報、電子化、
IT、投資効果
P-49
サイト内情報検索とネット上
医療情報検索システムの構築
後藤学園ライフエンス総研情報科学研究部*
東京工業大学大学院情報理工学研究科**
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター***
○橋本直己*, **、高岡 裕*, ***
【目的】 数多くのWebサイトの情報は誰でも簡易
に利用することができる、非常に意義のあるもの
といえる。しかし、現在ではサイト数が膨大なも
のとなり、既存の情報検索サイトによる検索結果
から、必要な情報を効率的に取得することは非常
に困難である。
そこで、我々は自らが情報発信を行っている後
藤学園ホームページを対象としたサイト内情報検
索システムを構築すると共に、医療関連情報を効
率的に検索することのできる、医療情報に特化し
たネット上情報検索システムの構築を試みた。
【方法】 サイト内情報を検索するために、フリー
ソフトウェアとして公開されている全文検索シス
テムNamazuを利用して検索用インデックスを作成
した。このインデックスを利用してサイト内情報
に対するキーワード検索システムを実現した。ま
た、ネット上医療情報検索システムの開発におい
ては、検索情報の精度を維持するために検索対象
を日本国内における大学・研究機関を示すac.jpド
メインに限定してサイト情報の取得を行った。具
体的な手法としては、医療関連の図書分類に用い
られる主要なキーワードを含むWebサイト及びそ
の関連サイトの情報をインターネットを通じて取
得した。検索用インデックスの作成はNamazuを用
いて行い、ホームページ上から利用できる検索シ
ステムとして実装を行った。
【結果と考察】後藤学園WWWサイト内検索シス
テムの実現により、これまでにサーバ上に蓄積さ
れた情報の効率的な利用が可能になった。また、
医療情報の検索用に特化させた検索システムによ
り、後藤学園以外のサイト上の情報も、簡便に検
索可能になった。
今後は、検索対象を海外にも広げたり、質の高
い情報を発信しているサイトも対象に加えたい。
さらに、使いやすいインタフェースに関しても考
慮したいと考えている。
3P39_3
抄録集(一般演題)の記載について
正確で、読みやすい抄録集にするため、特に発表
者のご了解を得ずに抄録集編集委員の判断で、以下
の点で変更を加えた箇所のありますことをご了承下
さい。
1.確認できる範囲で所属機関名を正式名称で記載
しました。
2.なるべく発表者の所属に関して、肩付き記号
(番号、*印など)による識別を避けるため所属
機関名を併記しました(演題募集の抄録記載要
領に沿って)。そのため発表者の順序が変更さ
れているものがあります。
3.「針」は固有名詞として使われている箇所以
外、「鍼」に統一しました。
4.曖昧な数量単位は、確実に推量できるものに限
り適宜変更しました。(例:「ミリ」を
「mm」、「度」を「℃」)
5.書名と判断できる記述には『』を付しました。
6.機器メーカーの名称と判断できる記述には
「・・製」「・・社」などを付記した箇所があ
ります。
7.演題名や本文中の数字は、慣用語を除いてなる
べくラテン数字を用いました。そのため「一
例」「第一報」を「1例」「第1報」などに変
更している箇所があります。
なお、抄録集は写真製版する予定でしたが、応募
後の変更や記述の統一性などに対応するため、フ
ロッピーディスクにて提出していただきました原稿
ファイルをもとに、全演題について抄録集編集委員
が編集を加えて作成しなおしました。そのため、で
きるだけ正確を期しましたが、一部の箇所で誤りが
生じている可能性があります。誌面を通してお詫び
申し上げます。
キーワード:情報検索、インターネット、
WWW、医療情報
第49回学術大会抄録集キーワード用語解説
全日本鍼灸学会学術部編集
平成12年6月
*各項目の末端に記した(00)、(99)は、その用語解説
を行った年号を示しています。(00)は2000年の略
で、今回の大会で用いられている用語です。昨年編
集した用語も発表を聞く上で役立つことと思い、
(99)として掲載しています。
【A】
AIMS-2
arthritis impact measurement scales,version2の略。
慢性関節リウマチのQOL(quality of life)の標準測
定法の一つである改訂版AIMSの日本語版。改版
されたAIMSは初版の9尺度(移動能・歩行能・
手指機能・身辺機能・家事遂行能・社交・痛み・
緊張・不安)に上肢の機能・仕事遂行能・社会的
支援を加えた12尺度より成り、新たに健康状態へ
の満足度・障害の疾患起因度・障害の改善優先度
に関する質問を備えている。(00)
ACTH
adrenocorticotropic hormone(副腎皮質刺激ホル
モン)の略。アミノ酸39個からなるポリペプチド
で、下垂体で産生分泌されるが、脳(弓状核底部
と周辺領域)、副腎、消化管、膵、甲状腺、胎盤
などにも存在し、ストレス誘発鎮痛を引き起こす
ストレスホルモンとしても作用する。(00)
アロマテラピー
芳香療法のこと。主に植物精油を用い、心身症
や皮膚疾患などの病気を芳香で治療する治療法。
命名者はフランスのガットフォセで、約100年前
(1897年)に命名された。(99)
allodynia(アロディニア)
触・圧覚など、通常では痛みを誘発しない非侵
害性刺激によって誘発される異常な痛みをアロデ
ィニアと定義されている。正常の人では、痛みと
感じない刺激で痛みを感じる状態をいう。アロデ
ィニアは、触刺激によって痛みが引き起こされ、
痛覚閾値が低下している点が特徴である。発症は
神経傷害により、C線維終末の萎縮や変性が生じ
て、本来C線維が入力すべき脊髄後角の第II層部
に触覚に関わるA線維が侵入することが原因とも
考えられており、臨床的には帯状疱疹後神経痛
にみられる。(99)(00)
AMI
経絡機能測定器のこと。皮膚の二箇所に電極
を置き、3VのDC電圧を矩形波で負荷すると、初
めの一瞬に大きな電流が流れ、直後に電流が減
少し始め、約300μsec前後で減少が止まり、一定
の電流値(最小電流値)を示す。経絡機能の診
断には、始めの一瞬に流れる大きな電流量(BP
値、BP値の項を参照)を指標にする。(99)
API
ankle pressure indexの略。下肢の血圧を意味す
る場合と、下肢と上肢の収縮期血圧の比率を意
味する場合がある。臨床的には後者の意味を一
般に指している。下肢の収縮期血圧を上肢の収
縮期血圧で除してAPI値を算出し、この値が0.8未
満の場合には下肢の動脈閉塞が強く疑われる。
(99)
【B】
β-エンドルフィン
内因性オピオイドペプタイドの1つであり、
下垂体前葉、中葉、視床下部、中脳、副腎髄
質、精巣、卵巣、胎盤、膵臓、腸管にβ-エンド
ルフィン様物質が分布する。β-エンドルフィン
は鎮痛作用をはじめB細胞の抗体産生能を増加、
単球、好中球の走化因子作用を有する。(00)
Bell麻痺
末梢性顔面神経麻痺のこと。側頭骨内での顔
面神経の障害によって起こる片側の末梢性の麻
痺を言い、その原因は不明とされているが、ウ
イルス説や神経の乏血説が言われている。多く
は、前駆症状なしに突然出現する麻痺で、その
麻痺の程度は様々である。主な症状は片側の顔
面神経の運動枝の麻痺(表情筋)が前面に現
れ、その他として障害部位によって聴覚過敏、
味覚障害、唾液分泌の低下などが起こる。診断
基準として、(1)急性発症で一側の全顔面表情筋
キーワード用語解説
の完全又は不全麻痺、(2)いかなる中枢神経疾患
の徴候もない、(3)耳疾患や後頭蓋窩疾患の徴候
を欠く、が挙げられている。(00)
BMI
body mass indexの略。和訳では体格指数とい
う。体重(kg)÷身長(m 2 )=BMI(kg/m 2 )で求められ
る。日本肥満学会で定めた肥満を判定する指数
で体脂肪量とよく相関する。日本人ではBMI22
(正確には22.2)が最も有病率が少ないことが判
明しているので、有病率の最も少ない理想体重
は身長(m2)×22で算出される。(99)
BP値
before polarization currentの略。皮膚に直流通
電を行った際に、表皮基底膜の上下に分極が生
じる前に真皮結合織多水層内を流れる大電流で
ある。BP値は経絡の虚実を反映する値として用
いられている。(99)
【C】
コンプライアンス
障害なしに圧力や力を許容する性質。または
その能力の計量表示。例えば、肺や膀胱のよう
な空気や液体で満たされている器官の伸展性を
単位圧力当りの容量変化の単位で表示する。(00)
カラードップラー法
超音波を投射後、血球から散乱された超音波
の信号を受信し、これをカラー表示することで
臓器内血流動態や血管の走行をリアルタイムで
描出する方法である。体内の血流動態を簡便、
非侵襲的に観察できる。(00)
C型肝炎キャリア
C型肝炎ウィルス(HCV)の持続感染者のこ
と。HCVは我が国ではB型肝炎ウィルスと共に慢
性肝炎の原因となる。HCVは輸血や汚染した注
射針の使用などにより血液を介して感染し、年
齢に関わりなく感染者の70%がキャリアとな
る。C型肝炎キャリアの中には肝機能が正常の者
がおり、これを無症候性キャリアと呼ぶ。日本
でのキャリアは200万人と推定されている。(00)
c-fos
c-fos(或いはc-fos遺伝子)は、刺激により早期
に一過性に転写が活性化されFos蛋白を産生し、
同様に産生されたJun蛋白と結合し、これが標的
遺伝子(その細胞が産生する物質の遺伝子)の調
整領域(AP-1結合部位)に結合して転写調節因
子として働く遺伝子の1つである。よってFos蛋
白がどこで発現しているかを調べることにより刺
激に反応するニューロンを可視化することがで
き、Fos陽性細胞の数を数えたり蛋白量を測定す
ることにより、刺激の定量的解析が可能になる。
(00)
超音波
周波数が高くてヒトの耳では聞こえない音のこ
と。この超音波を利用した超音波診断装置は画像
診断の一つであり、簡便で非侵襲的に行える検査
である。(00)
カプサイシン
唐辛子の刺激成分で、侵害受容器の一次知覚
ニューロンを選択的に興奮させる作用がある。
ラットに投与すると、サブスタンP(SP)やカル
シトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を含む無髄
の求心性神経が興奮し、続いて神経線維に変性が
生じる。その結果、SPやCGRPが産生されなくな
り、枯渇する。このように神経毒の一面を有する
一方で、局所的に侵害受容性ニューロンを変性さ
せる働きがあることから、鎮痛剤としての効果も
検討されている。(99)
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)
カルシトニン遺伝子の解析から見つかった神経
ペプチドの一つで、この遺伝子より甲状腺ではカ
ルシトニンが、神経組織ではCGRPが産生され
る。神経系には広く分布することが知られている
が、その働きの一つに血管拡張作用がある。(99)
CD4
白血球の機能分化に伴って発現する膜分子(膜
抗原)のひとつ。リンパ球の場合、細胞性免疫機
能の亢進や抗体産生を増強させる「ヘルパー機
能」をもつT細胞(ヘルパーT細胞)を識別する
マーカーとなる。ヘルパーT細胞のCD4はHIV
(エイズウイルス)感染のターゲット分子である
が、最近、艾の含有成分でもあるジカフェオイル
キーワード用語解説
キナ酸がCD4と直接結合してHIVの感染を阻害し
たり、その複製過程を阻害することが報告され、
注目されている。(99)
遅発性筋痛
スポーツ活動や運動を行った後に1日または2日
遅れて自覚する筋痛を遅発性筋痛(delayed onset
muscle soreness)という。日常運動習慣のない者
がスポーツ活動を行うと特に起こりやすく、また
加齢により疼痛の発生のピークが遅延する現象を
よく経験するが、遅発性筋痛は伸張性収縮運動
(遠心性収縮運動:eccentric exercise)によって
起こりやすく、その機序として筋組織の破壊が起
こるためとされている。(99)
cDNAライブラリー
真核生物の機能は様々な蛋白分子の相互作用に
より調節されているが、この蛋白分子に関する情
報は染色体上の遺伝子に刻み込まれており、そこ
から伝令RNA(mRNA)が転写され、蛋白分子が
翻訳され、その後、様々な修飾を受けて、最終的
に機能的な蛋白分子が作り出される。cDNAとは
mRNAを鋳型とした相補的DNA(complementaly
DNA)であり、cDNAライブラリーは、ある組
織、あるいは細胞が発現している遺伝情報を限り
なく全て含んでいるいわばcDNAの図書館であ
り、一つのcDNAが一冊の書物に例えることがで
きる。(00)
【D】
電子カルテ
紙のカルテに代わって、診療情報を電子的に記
録するための技術・環境を指す。紙のカルテで
は、診療経過を効率的に表現することが非常に困
難であるが、コンピュータを使うと容易になる。
その他レントゲン写真などの静止画や、音声など
のマルチメディア情報を収録することが可能にな
る。また通信技術を使って、病院内外との情報の
共有、データベースを利用した文献データの検索
などが可能になる。(00)
Differential display法
Differential display (DD)法は、1992年Liangと
Pardee(Science,257,p967-971掲載)により開発さ
れ、異なる条件下の細胞の発現しているpoly(A)
tailをもつmRNAの差異を簡単に見つけられる方
法として、近年注目されている。一般に、高等
生物の細胞中には約15000種の転写物が発現して
いるといわれており、それらの転写物を、アン
カープライマーとなるoligo(dT)プライマーで
逆転写後、種々の任意プライマーと組み合わせ
てPCRで増幅し、ポリアクリルアミド電気泳動
のバンドパターンを検体間で比較する。特異的
なバンドを見つけだし、これを手掛かりに特異
的遺伝子を同定する。従来、組織特異的な発現
を示す遺伝子のクローニングにはサブトラク
ション法などが用いられてきたが、DD法では2
種類以上のサンプルを同時に比較できることや
発現量の非常に少ない遺伝子でも検出可能であ
る点が優れている。(99)
ドーパミン
チロシン、L-ドーパを経て最初に生成するカ
テコールアミン。それ自身で神経伝達物質とし
ての作用を持つ。ドーパミン作動性ニューロン
は黒質と被蓋に特徴的に存在し、線状体へ投射
している。パーキンソン病は黒質に変性があ
り、前駆物質L-ドーパの投与が治療に有効であ
る。大脳辺縁系におけるドーパミンは情動行動
に関連し、精神分裂病との密接な関係が注目さ
れている。(99)
DNIC
diffuse noxious inhibitory controls(広汎性侵害抑
制調節)の略。脊髄後角あるいは三叉神経脊髄
路核にある痛みを伝達する侵害受容ニューロン
の興奮性反応(侵害性入力)が、全身の皮膚・
筋・内臓などに加えられた侵害刺激(機械・
熱・化学刺激)によって抑制されるという現象
である。鍼の手技による侵害受容ニューロンの
抑制とDNICの時間経過が類似していることか
ら、両者の機序に共通するものがあることが指
摘されている。(99)
【E】
エレノード鍼
エレノード鍼は絶縁鍼とも称され、鍼尖部の
みに電流が流れるよう鍼尖部を0.3mm残して鍼体
部をアクリル樹脂で絶縁した鍼灸鍼である。深
部の痛みに対して直接通電を行う場合や、深部
キーワード用語解説
痛覚閾値の測定などで活用される。(00)
EBM
evidence based medicine(エビデンス・ベース
ド・メディスン)の略。1996年にSackettらによっ
て紹介された概念で、「証拠に基づいた医学」
と訳されている。その定義は、「個々の患者の
診療について決定をくだすために、最新で最良
の証拠(evidence)を、良く考えて誰からも納得
できるように、うまく利用すること」とされて
いる。実際には、信頼性の高い最新の文献など
に基づいて患者にとって最も適切な医療を行う
ことを意味する。(00)
frozen type
五十肩の病態でfreezing typeの病状が進み、滑
液包の癒着が進むと拘縮がおこり、この時期が
frozen typeである。(00)
封筒法
封筒法は無作為化比較でランダムに治療法を割
り付ける際に用いる一手法である。これは治療法
の割り付けを記載した紙が入った封筒(中身が見
えない物で表に番号がついている)をあらかじめ
用意しておき、そして患者を登録する際に番号順
に開封するものである。(99)
【G】
エピネフリン
カテコールアミン類に属し、チロシンから生
合成される。別名でアドレナリンとも呼ばれ、
末梢血中に見られるものの由来は、ほとんどが
副腎髄質であることが知られている。アドレナ
リンβ受容体に対する作用が強く、心拍出量の
増加と血糖値上昇作用が著しく強い。その他、
胃腸運動の抑制、血圧上昇、気管の拡張など多
くの生理作用を示す。ノルエピネフリンがフェ
ニルエタノールアミンN-メチルトランスフェラ
ーゼによりエピネフリンとなる。(99)
【F】
副交感神経遮断薬
抗コリン作用薬、抗ムスカリン様作用薬に分
けられる。抗ムスカリン様作用薬は副交感神経
支配効果器においてアセチルコリンの作用を競
合的に遮断する薬物である。また、ムスカリン
受容体に働いて、この受容体を不活性化するこ
とで副交感神経の興奮伝達を遮断することか
ら、別名、抗コリン作用薬ともいう。アトロピ
ン、スコポラミン、臭化ブチルスコポラミン、
塩酸トリヘキシフェニジルなど。(00)
freezing type
五十肩の原因の大半は腱板の退行性変化を基
盤とした肩峰下滑液包炎であり、残りは上腕二
頭筋長頭腱炎である。両者とも初期は滑液包内
および腱鞘内の癒着がほとんどなく運動障害は
疼痛によるmuscle spasmと考えられ、この時期が
freezing typeである。(00)
グアネチジン
交感神経ニューロン遮断薬の一つでシナプス前
部に作用する薬物である。アドレナリン作動性線
維の伝達物質(ノルアドレナリン)の遊離を抑制
する。臨床的にはノルアドレナリンの枯渇による
血圧低下を利用して、重症高血圧症の治療に利用
する。その他には、起立性低血圧・徐脈・消化管
の運動亢進・下痢・鼻閉を引き起こす。(00)
GDS
geriatric depression scaleの略。高齢者の情緒
(うつ状態)に関する評価表である。5点以上が
軽度うつ状態、10点以上が高度うつ状態とされて
いる。(00)
グリコーゲンエリア
グリコーゲンは特殊な細胞、例えば肝臓細胞や
筋肉細胞などに、貯蔵栄養物質として常時蓄えら
れている糖分の一種で、これが群をなして細胞内
に分布している場合、この細胞領域をグリコーゲ
ンエリア(グリコーゲン領域)という。動物が飢
餓などに陥れられると、肝臓細胞のグリコーゲン
は分解して血中のグルコースとなり利用される。
また逆に、過剰な栄養分のうち、糖分はこのグリ
コーゲンエリアに貯蔵される。(99)
グリコーゲン顆粒
グリコーゲン顆粒は、特殊な細胞の貯蔵栄養物
質として常時蓄えられている細胞成分で、特に目
立つのは、肝臓細胞や筋肉細胞などである。グリ
コーゲンエリアに分布しているが、α、β、γの
キーワード用語解説
3種類の顆粒があり、最も小さい顆粒をγ顆粒
(大きさ3×20nm)、これが集まった顆粒をβ顆
粒、さらにこのβ顆粒が集まったロゼット状の顆
粒をα顆粒という。(99)
ゲノムデータベース
ゲノム(genome)とは、生物が正常な生命活動
を保持するために最低限必要な染色体の一組、も
しくはDNAの総体のことをいう。通常ゲノム上
の遺伝情報はDNAの4種類の塩基の配列で表現さ
れる。最近のヒトゲノム解析計画の進展に伴い発
生している大量の生物情報を多くの研究者の共有
財産とすることが重要であることから、それらの
塩基配列の情報をデータベースにすることでゲノ
ム情報研究のインフラストラクチャーを形成して
いる。日本では国立遺伝研で運営されている
DDBJがその中心をなしている。その他にGenBankやEMBLといったDNAデータベースが公開
されており、インターネット上から自由に利用可
能である。ゲノムネットサーバ(http://www
.genome.ad.jp)から各種サービスが利用できる。
(99)
【H】
HFD
high fructose dietの略。肝で脂質が合成される
過程で必要とされるフルクトースを多く含む食事
をラットに与えることにより高脂血症を引き起こ
すことができる。とくにコレステロールを含まな
い高フルクトース食(コレステロールフリー)を
与えることで、肝臓でのコレステロールやトリグ
リセリドの合成促進を中心とした内因性高脂血症
のモデル動物を作成できる。(00)
HCV-RNA
C型肝炎ウィルス(HCV)の核酸で、一本鎖の
RNAである。すなわちHCVの遺伝形質の担体で
あり同時に伝達体である。HCV感染後まもなく
HCV-RNAが血中に出現し、肝炎発症後やや遅れ
てHCV抗体が出現する。したがってHCV-RNA定
性試験はHCV感染の早期且つ直接的診断に用い
られる。同時に一過性感染と持続感染の鑑別にも
有用である。(00)
光てんかん
一般に10-20Hzの閃光によっててんかん発作を
起こすものをいう。発作を起こすのは強い閃光
である。ネオンサインや映画は通常無害で、テ
レビも近づき過ぎていない限り通常は安全であ
る。しかし画面が調整されていなかったり、あ
る速度で垂直に画面が流れたりすると発作を引
き起こす事がある。また、ロックコンサートな
どで、ある速度とリズムで強い明かりのストロ
ボが点滅を繰り返す場合や、影とひなたが交互
になっている所をオートバイや自動車の運転時
に通り抜けることでも遭遇する点滅効果により
発作を引き起こすことがある。ごく希なケース
では、混雑した道路で、向かってくるヘッドラ
イトが発作を引き起こす場合や、ブラインド越
しの光に反応したり、水面のさざなみによる光
の反射で発作を引き起こす場合もある。(00)
肥満細胞
免疫系細胞の一種で、粘膜組織や皮膚などの
結合組織内に存在する。体内に抗原が侵入して
くると、細胞膜表面のIgE抗体と結合し、細胞質
内に持つ顆粒(ヒスタミン・ロイコトリエンな
どの炎症メディエーター)を細胞外に放出する
ことで、炎症反応を起こす。アレルギー性鼻
炎、花粉症、じん麻疹といった、Ⅰ型アレルギ
ー反応の主役である。(00)
皮膚交感神経
ヒトの遠心性交感神経活動には、皮膚または
筋へ分布するものに分けられ、それぞれ皮膚交
感神経活動(skin sympathetic nerve activity :
SSNA)と筋交感神経活動(muscle sympathetic
nerve activity:MSNA)とに分類されている。皮膚
交感神経活動の効果器は皮膚血管と汗腺で、皮
膚血流減少や発汗波のそれぞれに先行して皮膚
交感神経活動の亢進が観察される。(00)
皮膚血流量
皮内および皮下の血流を皮膚血流と呼ぶ。こ
の血流量を測定する機器としてレーザー・ドッ
プラー血流計が多く使われており、組織100g当
たりに1分間に流れる血液の量(ml/min/100g)を
経時的に計測できる。また、皮膚血流の調節に
は神経ペプチド(CGRPやサブスタンスPなど)
による液性調節と、自律神経である皮膚交感神
キーワード用語解説
経による調節がある。CGRPやサブスタンスPな
どの神経ペプチドの作用により血流量は増加
し、皮膚交感神経活動(skin sympathetic nerve activity:SSNA)の亢進により皮膚血流量は減少す
る事が知られている。(00)
HDS-R
Hasegawa's dementia scale(改訂長谷川式簡易知
能評価スケール)の略。痴呆のスクリーニング
テストでありMMSEなどの他のテストと比較す
ると見当識や記名力の項目が多いのが特徴であ
る。そのため簡便で短時間で行えるため我が国
では広く使用されてる。最高得点は30点であ
り、20点以下の場合は痴呆を疑う。(99)
波動理論
空間的にも時間的にも変動する場の運動。数
学的にはド・ブローイの物質波の考えを発展さ
せて、シュレーディンガーが確立した波動方程
式があり、全ての物質は電子の回転する固有の
振動(波動)を持つ考え。人体においては、臓
器毎に固有の波動を持ち、その波動を用いて、
健康状態の把握・回復に関与する考えが基本の
欧米由来の研究。(99)
半規管温度刺激
体温とは異なる温水または冷水を外耳道に注
入するとめまいと伴に眼振が誘発される。この
為、平衡機能検査では一側の前庭機能の低下の
有無をみる方法として広く利用されている。従
来、温度刺激によって外耳道に最も近い外側半
規管の内リンパ液に対流を起こし眼振が誘発さ
れると考えられていた。しかし、スペースシャ
トルにおける宇宙実験で無重力状態でも地上と
同様に発現することが報告されている。(99)
ホール効果様作用
ホール効果は1879年にE.H.Hallが、一定電流を
流している半導体に磁場を掛けた時、電流と直
角方向に電圧を発生する現象。現在、カセット
テープレコーダーやCD等の直流モータの、磁気
センサ素子として広く使われている。この現象
を体内に求めると、血液やイオンの流れが電流
に相当し、気の場を掛けた時に発生する電圧を
ホール効果様電圧と呼び、発生した電圧でmRNA
の変性を行い、DNAの修復を介して、病状の回
復に至ると仮説した作用。(99)
鍼レオメーター(acupuncture rheometer)
鍼刺入時、及び抜鍼時に鍼に加わる抵抗力を測
定する装置。鍼レオメータは鍼を一定振幅、等速
度で上下させる鍼駆動装置と駆動部分に取り付け
た鍼センサーから構成される。鍼センサーは鍼体
の軸方向に加わる張力・圧縮力・加速度を高精度
で検出できる。(99)
【I】
胃電図(Electrogastrography:EGG)
胃の電気活動を表面電極を用いて経皮的に記録
したもの。胃電図は胃の大弯側上部約1/3辺りに
存在するとされているペースメーカーから1分間
に約3回の規則的な周期で出現する波形で示さ
れ、その周期は胃運動の出現サイクルを調律して
おり、振幅は胃運動の強さを反映していることが
判明している。(00)
陰部神経刺鍼点
陰部神経を選択的に鍼刺激するための皮膚上の
鍼刺入点(実際はある領域を指す)である。取穴
方法は、上後腸骨棘と坐骨結節下端内側との線上
で、上後腸骨棘の下50%∼60%の領域である。こ
の領域は仙棘靱帯上の陰部神経の位置を示す。現
在、排尿障害(利尿筋外尿道括約筋協調不全な
ど)・勃起障害などの疾病に対して臨床応用され
ている。(文献:全日本鍼灸学会雑誌.39-1.p136140.1989)(00)
in vitro
「イン・ビトロ」と読み、もともとは「試験管
内で」を意味するラテン語。生命科学分野におい
て、生体の一部を細胞・組織培養系や試験管内な
どの人工環境下で再構築して機能解析の研究対象
とする場合に、その実験系、あるいは反応過程を
指す。関連する語句として、「生体内で」を意味
する「in vivo(イン・ビボ)」や「本来の位置
で」を意味する「in situ(イン・サイチュ)」な
どがある。(99)
ICAM-1
intercellular adhesion molecule-1の略。生体内で
細胞間(intercellular)の接着現象を調節する接着
キーワード用語解説
分子(adhesion molecule)のひとつ。ある種のリ
ンパ球やマクロファージの膜表面に発現して抗原
情報の提示などの免疫細胞応答に関わるほか、炎
症時には血管内皮細胞や上皮にも発現することが
知られている。リンパ節の高内皮細静脈の膜表面
にも強く発現しており、リンパ球の血管外遊走を
誘導する分子として重要な役割を担う。(99)
IMC
interdigestive myoelectric complex(空腹期消化
管強収縮運動)の略。消化管運動は空腹期と食後
期の運動に分けられる。空腹期においては周期的
に出現し、肛門側に伝播する強収縮波群(IMC)
が存在し、phaseⅠ∼Ⅳの4つのステージに分類
される。ヒトやイヌにおいては、この周期が約
100分とされている。(99)
【J】
時系列分析
時系列とはある変量を時間の順に並べたもの
で、ある変量の時間的推移を示している。これが
与えられた場合、この変量についてどのようなこ
とが言えるかを分析するものを時系列分析とい
う。(00)
腎血流
腎臓内の血流のこと。カラードップラー法によ
り描出された腎臓内血管にサンプリングポイント
を求めることにより、収縮期最高流速(Vmax、
cm/s)、拡張期最低流速(Vmin、cm/s)が得られ
る。血管抵抗の指標とされているresistive index
(RI)は以下 の式により算出される。RI=(VmaxVmin) / Vmax。
(00)
重症筋無力症
運動を繰り返すと筋力が次第に減少し、休息に
よって随意筋の筋力が回復するのを特徴とする疾
患。病変は神経接合部の神経終末におけるアセチ
ルコリンの分泌異常と考えられている。障害部位
は、眼筋、顔面筋、口蓋、嚥下筋のほか全身の筋
のを侵すが、眼筋だけに限局することもある。胸
腺腫の合併は20%に認められ、胸腺の異常は大多
数の例に認められる。小児から高齢者まで罹患す
るが、発症は女性では20∼30歳の若い人に多く、
男性は50∼60歳に多い。患者数は全国で、5000
∼7000人程度と推定され、男女比は1対2と女
性にやや多い傾向がある。厚生省難病特定疾
患。(00)
JAVA
1995年にSun Microsystems社が発表したネット
ワークを意識したオブジェクト指向プログラミ
ング言語。機種やOS(operating system)に依存
しない動作環境を持ち、インターネット・ブラ
ウザ上で動作させることも出来る。最近ではホ
ームページの装飾に留まらず、ネットワーク経
由でデータベースを使用するプログラム等もあ
る。(00)
軸索反射(axon reflex)
神経線維に発生した活動電位(インパルス)
が、その神経の他の分枝を逆方向性に伝わるこ
と。(例)皮膚を損傷すると、侵害性の求心性
神経が興奮しその情報を中枢へ送る一方、その
神経線維の分枝を逆行性に興奮させ、その終末
から神経ペプチドが放出されることにより損傷
部位周囲の皮膚血管の拡張(フレア)や、血漿
タンパク質の漏出(浮腫)が生じる。(99)
時値
閾値電圧の強さと通電持続時間との間には一
定関係を求めることができる。ある通電持続時
間において、電圧を次第に高くして閾値電位を
求め、各通電持続時間における、閾値電圧と最
小必要時間との関係を強さ時間曲線という。通
電持続時間が十分長いときの強さの閾値電圧を
基電圧、基電圧に対する最小必要時間を利用時
という。基電圧を求めておき、その2倍の強さに
対応する最小必要時間を時値(クロナキー)と
いう。(99)
JOAスコア
腰痛疾患治療成績判定基準のこと。この判定
基準は日本整形外科学会(JOA)が腰痛疾患全般
(椎間板ヘルニア、分離・すべり症、脊柱管狭
窄症など)に応用可能な案として作成したもの
である。次の項目について得点数をもって判定
する。Ⅰ.自覚症状に関して3項目、各3点、
計9点。Ⅱ.他覚所見に関して3項目、各2
点、計6点。Ⅲ.日常生活動作に関して7項
キーワード用語解説
目、各2点、計14点。その他膀胱機能、満足
度、精神状態などを参考にする。日本整形外科
学会誌60(3)1986参照。(99)
るカラムにおける試料の分離時間の違いから個々
の成分を短時間で分離・分取することができる。
分析試料によって溶媒、充填剤、検出器などを適
宜選択して用いる。(00)
【K】
高度生殖医療
一般の不妊治療(タイミング治療や排卵誘
発、人工授精など)では妊娠しなかった人を対
象に行う体外授精や胚移植法による不妊治療の
こと。体外に取り出した精子と卵子を授精さ
せ、その後分割を始めた受精卵(胚)を専用の
カテーテルで子宮内に移植する。高度生殖補助
医療とも言う。(00)
血中レプチン
レプチンは1994年に、遺伝性肥満マウス(ob/ob
マウス)を用いて発見された肥満遺伝子(ob遺伝
子)によりコードされた新しいホルモンで、摂食
の抑制とエネルギー消費の増大に関与する体重
調節因子として考えられており、特に肥満とイ
ンシュリン非依存型糖尿病(NIDDM)の代謝異
常の抑制に重要な役割を果たすといわれる。血
中レプチン濃度はBMI(body mass index)により
評価される脂肪組織量と良く相関する。(00)
交感神経遮断薬
アドレナリン作動性神経遮断薬、抗アドレナ
リン作用薬に分けられる。交感神経の興奮によ
る反応と、アドレナリン作用薬による反応の両
者を抑制する薬物である。前者は、交感神経効
果器に存在するα、β受容体と結合しこれを遮
断し、後者は交感神経終末に働いて伝達物質で
あるノルアドレナリンの遊離の抑制や枯渇によ
り興奮伝達を遮断する。α受容体遮断薬(プラ
ゾシン、ヨヒンビン)、β受容体遮断薬(プロ
プラノロール、メトプロロール)、α・β受容
体遮断薬(ラベタロール)、交感神経末梢遮断
薬(グアネチジン、レセルピン)など。(00)
高速液体クロマトグラフィー
液体クロマトグラフィーはカラムを通すこと
により混合物の中から個々の成分を分離する方
法であり、混合物を含む移動相を固体粒子の詰
まった固定相カラムに流すことにより、試料と
2つの相との間の物理的・化学的相互作用によ
経直腸的超音波断層法(transrectal sonography:TRS)
1968年に開発された超音波診断法で、前立腺肥
大症や前立腺癌などの前立腺疾患を診断するうえ
で欠かせない検査法の1つである。TRSにより、
前立腺の形状や異常所見がMRIやCTよりも明ら
かに描出される。(00)
局所脳血流量測定法
脳内における局所的な血流量を測定する方法
で、ポジトロンCT(PET:positron emission tomography)、磁気共鳴機能描画(fMRI:functional magnetic resonance imaging)などが用いられている。
(00)
胸部交感神経節切除
上肢における交感神経の機能を外科的に消失さ
すため、胸部交感神経節切除が行われる。通常で
は、第2∼4胸髄に相当する上胸部交感神経節が切
除される。上肢における閉塞性血栓血管炎や手掌
多汗症などの外科的治療として行われる。(00)
膠原病
全身の膠原線維にフィブリノイド変性という共
通の病変がみられる疾患群の総称であり、1942年
にアメリカのKlemperer、Bachr、Pollackらによっ
て提唱された。全身性エリテマトーデス、強皮
症、皮膚筋炎、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、
結節性多発動脈炎の6疾患は古典的膠原病であ
り、シェーグレン症候群、ベーチェット病などは
その病態や病象が近似していることから膠原病近
縁疾患と呼ばれる。(00)
筋血流量
主に骨格筋の血流量のことを指す。測定方法と
しては、水素クリアランス法、レーザー・ドップ
ラー血流計による記録、マイクロスフェアー法な
どがある。また、その調節には液性調節と、筋交
感神経による自律神経性の調節などがある。骨格
筋の運動や、心血管系の動態に大きく影響される
ことが明らかになっている。(00)
キーワード用語解説
教育目標分類(taxonomy)
教育目標分類(taxonomy of ebucationnnal objectives)とは、認知領域に示される視点から、どの
様な能力を判定するために作成された問題である
かを分類する方法である。Ⅰ型(想起レベル)、
Ⅱ型(解釈レベル)、Ⅲ型(問題解決レベル)、
Ⅱ・Ⅲ連結型の4つに分類される。Ⅰ型とは、知
識の想起レベルの問題で知っていれば簡単に答え
られるが、記憶(暗記)していなければまぐれ当
たりを期待するしかない問題である。Ⅱ型とは、
分析・理解し解釈できる能力がないと答えられな
いレベルの問題である。Ⅲ型とは、複数の解釈を
必要とする問題で、1回の解釈(思考過程)では
答えられない問題である。Ⅱ・Ⅲ連結型とは、解
釈を2回必要とする点でⅢ型的であるが、実際は
Ⅱ型問題に一つの問題文と選択肢が加わったタイ
プの問題である。(00)
腱板不全断裂
腱板断裂(rotator cuff tear)は完全断裂と不完
全断裂に分けられるが、完全断裂とは肩峰側の表
面から骨頭側の表面まで全層にわたる断裂が生じ
た場合をいい、関節腔と肩峰下包とが交通する。
不完全断裂の場合は断裂が全層に及ばないので関
節腔と肩峰下包との間の交通は生じない。侵され
る部位は棘上筋腱が最も多く、次いで棘下筋腱、
肩甲下筋腱である。(00)
カラードマイクロスフェア
プラスチック等を基剤とする平均直径15μmの
微小球体であり、表面に有機染料が塗布されてい
る。カラードマイクロスフェア法による血流測定
には、組織サンプルに捕捉されたマイクロスフェ
アをカウントする方法と染料を溶出させその吸光
度を測定する方法がある。また、異なる色(黄、
青、赤、白等)を使用することにより、同一個体
の各種臓器・組織の局所血流量を経時的に繰り返
し測定できるのが特徴である。(00)
経絡テスト
多関節・多軸にわたる人の動きと経絡の流注と
を同定させることにより、痛みを誘発ないし増悪
させる動きの分析から治療すべき経絡を判断する
テスト法及び鍼治療システムである。(99)
機械インピーダンス(mechanical impedance)
二つの物体があり、一方が静止いているとき他
方を動かしたときに加わる機械抵抗の時間成分
を配慮した値。鍼を刺鍼した時の機械抵抗値は
鍼に加わる力と鍼刺鍼方向変位の時間微分の比
で表される。これが組織の張りや粘弾性を測定
していることが明らかとなっている。(99)
近赤外線分光法
近赤外線分光法は物質による近赤外線の吸収
に基づいた非破壊、非侵襲の分光法である。物
質をあるがままの状態で測定でき、絶対定量法
よりも相対定量法として用いられることが多
い。人体の場合、血中のヘモグロビン及び筋肉
中のミオグロビンが主な吸収物質であり、それ
ぞれの酸化状態において吸収スペクトルが変化
するので、虚血状態などのモニターとして有用
性が高い。(99)
広汎性侵害抑制調節
( diffuse noxious inhibitory controls:DNIC)
脊髄後角あるいは三叉神経脊髄路核にある痛
みを伝達する侵害受容ニューロンの興奮性反応
(侵害性入力)が、全身の皮膚・筋・内臓など
に加えられた侵害刺激(機械・熱・化学刺激)
によって抑制されるという現象である。鍼の手
技による侵害受容ニューロンの抑制とDNICの時
間経過が類似していることから、両者の機序に
共通するものがあることが指摘されている。(99)
カオス解析
気象変動や脳波、心拍などは一見、不規則な
動きをしているようであるが、長期的に展望す
るとある種の秩序(カオス的な振る舞い)を
持っていることが判る。このような無秩序と秩
序を合わせ持った複雑な現象を数学的にカオス
と呼び、カオス理論が適応される。カオス解析
では、測定された一見でたらめなようなデータ
をもとにアトラクターという図形を描き、その
図形のふるまいから規則性を見つけ、予測や診
断に役立てようとするものである。(99)
官能検査法
人間の感覚器官を使って、モノの特性や好き
嫌いというような嗜好を評価することを官能検
査(sensory evaluation, sensory test, sensory
キーワード用語解説
inspection,organoleptic test )という。順位法、一
対比較法、絶対判断法(格付け法、採点法)、
SD法(Semantic differential法)などが含まれる。
(99)
【L】
LAN
local area networkの略。コンピュータ同士を接
続し、お互いの持つハードディスクやプリンタ
などを共有して利用する技術。1つのフロアや
建物内など、比較的限られたエリアに設置され
ているコンピュータと、プリンタなどの周辺機
器を相互に接続し、各機器やファイルの共有な
どを行えるようにするシステム。(00)
リンパ球芽球化反応
リンパ球が非特異的マイトジェンあるいは特
異的抗原に反応して芽球化することをさす。T細
胞のマイトジェンであるフィトヘマグルチニン
(PHA)、コンカナバリンA(ConA)、B細胞の
マイトジェンでるグラム陰性菌由来のリポ多糖
(LPS)などがよく知られている。(00)
レーザードップラー眼底血流計
網膜および脈絡膜の微小血管にレーザー光を
直接照射し、血管中を流れる赤血球の速度を直
接測定する非侵襲的直接血流法の1つである。
測定項目として、網膜血流・赤血球平均濃度・
赤血球平均速度の情報が短時間で得られる一
方、眼球を固視することが難しい患者に対して
は、測定不能になる場合が多い。臨床応用とし
ては、一般的に網脈絡膜の血流循環不良が原因
とされている緑内障疾患に対して広く用いられ
ている。(99)
【M】
MPTP
1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridineの
略。実験動物に投与することで、パーキンソン
病の動物モデルを作製できること等が知られて
いる。(00)
慢性関節リウマチ
多発性慢性進行性の関節炎である。原発性の
ものは20∼60歳の女性に好発し、小関節より漸次
大関節を対称的に侵す。急性関節リウマチが慢性
化した二次性のものは一般に大関節のみを侵す。
関節変化が高度になると特異な変形を呈し、強
直、脱臼を来す。副腎皮質ホルモンの投与と、併
せて金製剤による変調療法や関節機能保全のため
のマッサージや温熱療法が行われる。(00)
無作為化比較試験(RCT)
一般的に臨床研究に用いられる実験的研究は、
実験対象をランダムに振分けることで、実験群と
対照群の背景因子を同等にし、治療や検査などの
介入を実験群に加えることによって、介入(治
療・検査)の効果のみを明らかにすることができ
る。このような研究手法をrandomized controlled
trial(RCT)、無作為対照試験という。近年はラ
ンダム化比較試験と呼ばれることが多い。(00)
無嗅覚症
無嗅覚を臨床的に分類すると、呼吸性嗅覚障
害・末梢性嗅覚障害・混合性嗅覚障害・中枢性嗅
覚障害がある。呼吸性嗅覚障害は、嗅素が嗅裂の
閉鎖のために嗅上皮に到達しない状態で一般的に
副鼻腔炎とかアレルギー性鼻炎などによって起こ
る。末梢性嗅覚障害は嗅細胞の障害によるもので
副鼻腔炎、ウイルス感染、老人性変性などによ
る。混合性嗅覚障害は呼吸性嗅覚障害と末梢性嗅
覚障害が合併した場合におこり、中枢性嗅覚障害
は嗅球およびそれよりの中枢で障害される。これ
は、頭部外傷、腫瘍、発育障害、加齢によるもの
や機能的にはヒステリー、神経衰弱でも起こる。
(00)
マクギル・メルザック式疼痛問診表
マクギル・メルザック式疼痛問診表とは、1975
年にMelzackにより、様々な痛みを有する疾患
(分娩なども含む)の性質を決定するためのアン
ケートとして作成された。この問診表は、痛みを
感覚的表現、感情的表現、評価的表現、種々雑多
な表現(その他の表現)の大きく4つに分類し、
各分類はさらに痛みを表現する単語(ひりひりす
る様な痛み、しびれた様な痛みなど)から構成さ
れている。各分類において自分の痛みと当てはま
る単語の数が痛みの評価指数である。また現在の
痛みの程度も別の項目として含まれている。本問
診表を用いることにより、痛みを有する疾患の性
キーワード用語解説
質と傾向を見いだすことが可能とされている。(00)
因性の高脂血症を引き起こしたものをいう。(00)
MML
医療情報交換規約(medical markup language)
のこと。異なる医療機関(電子カルテシステム)
の間で、診療データを正しく交換する為に考えら
れた規格。次世代のインターネット標準言語と言
われる、XML(extensive markup language)技術
に基づいて開発され、多数の電子カルテシステム
の多様性を保証した上で、他の施設と整合性を
保った形でのデータ交換が可能となる。(00)
脳内モノアミン
アンモニアNH 3のHを炭化水素基で置換した化
合物の中で、1つの分子中にあるアミノ基の数
が1つのものをモノアミンという。脳内にある
モノアミンとしてはノルアドレナリン、ヒスタ
ミン、セロトニン、ドパミンなどがあり、神経
伝達物質としてはたらいている。最近では学習
記憶、老化、精神疾患、変性疾患および薬物依
存症などとの関連が注目されている。(00)
MRI
magnetic resonance image(磁気共鳴画像)の
略。一定の磁場の中に生体を置き、一定の電磁波
を照射し、生体内の水素原子に核磁気共鳴を起こ
し、得られる体内の水分布と水素の化学的結合状
態についての情報から構成される人体の断層画
像。(99)
NNT
治療必要数(number needed to treat)のこと。
近年、Evidence-Based Medicine(EBM;根拠に基
づいた医療)を行うために、臨床研究におい
て、治療効果を表現する指標のひとつとして用
いられている。1例の発症を防ぐために何例治
療する必要があるかを計算した値。NNT=4の場
合は、4人治療すればそのうちの1人は発症しな
いという治療効果の程度を意味している。NNT
の値は小さいほど治療効果が大きいことを示し
ている。(00)
メビウス(メビウスの帯)
単側曲面と言われ、表裏のない曲面。細長い帯
をひねって両端を逆さ向きに貼付けた形状で、こ
の性質を指摘したメビウスにちなんで呼ばれてい
る。経絡の正経12脈も、表裏・陰陽が自然に移り
変わり、あたかもメビウスの帯状に見られること
から、経絡はメビウス(メビウスの帯)に例えら
れている。(99)
MMSE
mini mental state examinationの略。痴呆のスク
リーニングテストでありHDS-Rと比較すると見当
識や記銘力のみでなく言語性ならびに動作性検査
から構成されているため、やや時間がかかかり、
特別な検査用紙が必要である。しかし国際的に広
く使用されている。最高得点は30点であり、23点
以下の場合は痴呆(認知傷害)を疑う。(99)
【N】
内因性高脂血症ラット
体内の脂質は食物から余分に摂取された食事性
(外因性)の脂肪と肝臓で合成された内因性脂肪
に分類される。内因性高脂血症ラットは、特に肝
臓における内因性の脂質代謝を観察する目的でコ
レステロールフリー高フルクトース食を与えて内
NK細胞活性
ナチュラルキラー(NK)細胞はある種の標的
細胞(腫瘍細胞やウイルス感染細胞)を非特異
的に認識して傷害する。通常、標的細胞を51Cr
で標識し、その51Crの細胞外遊離から活性を測
定し、NK細胞活性とする。(00)
ノルエピネフリン
カテコールアミン類に属し、チロシンから生
合成される。別名でノルアドレナリンとも呼ば
れ、末梢血中に見られるものは、ほとんどが交
感神経節後線維に由来するものである。アドレ
ナリンα受容体に対する作用が強く、末梢血管
収縮による血圧上昇作用を持つ。ノルエピネフ
リンがフェニルエタノールアミンN-メチルトラ
ンスフェラーゼによりエピネフリンとなる。(99)
【O】
音声スペクトル
音声波形は概周期的な振幅であるため、スペ
クトルとして周波数成分に変換することができ
キーワード用語解説
る。音声のスペクトルとは、特定の時間におけ
る音の周波数と振幅との関係を表示したもの
で、音声信号の周波数に対する音響エネルギー
の分布、つまり周波数成分の分布である。発音
された言語音の特徴を示す共鳴特性、音源特性
が検出可能とされる。音声のスペクトルに時間
軸を加えたものが声紋で知られるスペクトログ
ラムである。(00)
【P】
prostatodynia
下部尿路に異常がなく、前立腺の細菌感染が
証明されない男性で排尿時痛、下腹部痛、会陰
部痛といった前立腺炎類似症状を訴える患者の
症状をいい、前立腺症あるいは前立腺痛ともよ
ばれる。これまで原因について明確な定義がな
されていなかったが、近年、prostatodynia患者の
多くに骨盤内静脈血流のうっ滞を示唆する所見
の存在が明らかにされた。(00)
パニック障害
1980年以前は不安神経症と言われていたが、
以降はパニック障害と言われるようになった。
パニック障害の中心症状は「パニック発作」で
あり、その発作は誘因のない激しい不安感とと
もに、「心臓がどきどきする」、「汗をか
く」、「身体や手がふるえる」、「呼吸が早く
なる、息苦しい」、「死ぬのではないかとの恐
怖感」などの症状を伴う。特徴としては、発作
は誘因なく突然はじまり、中心症状は激しい理
由のない不安、発作が過ぎると次の発作が来る
のではないかという不安など、発作を説明でき
る臨床検査所見がないことである。ひとたび発
症すると、発作が発作を呼び、また小さな発作
でも不安が続いてしまう。治療としては、発作
を完全に押さえる事が重要で、ベンゾジアゼピ
ン系の抗不安薬はおもにパニック発作と予期不
安に効果があり、三環系抗うつ薬は、パニック
発作に効果があるとされている。(00)
ペインスケール
痛みの程度を評価する指標の総称である。良
く用いられる痛みの測定法としてvisual analogue
scale(VAS)などがあり、これは患者の経験し
た「最大の痛み」を100、「痛みなし」を0とし
た100mmの直線からなるスケールを用意し、そ
の時の痛みの程度を患者自身に指示させ評価する
ものである。その他に、numerical scale(数値に
よる評価)や、場合によってはface scaleなども
含まれる。(00)
【R】
レフ値
レフ値は、レフラクトメーター(光標が被験眼
の眼底に結像したか否かを他覚的に判定し、眼の
屈折度を測定する装置)により得られる値で、眼
の屈折度をあらわす。(00)
Ramsay-Hunt症候群(耳性帯状ヘルペス)
帯状疱疹ウイルス(herpes zoster oticus)の感染
によって出現する顔面神経麻痺を指し、三叉神
経、内耳神経、舌咽神経も冒される。特徴は外耳
道、耳介周囲のヘルペスと顔面神経の麻痺で、顔
面痛、眩暈、難聴などの神経症状も出現する。予
後は、Bell麻痺に比べて悪い。(00)
RSD
reflex sympathetic dystrophy(反射性交感神経ジ
ストロフィー)の略。外傷による軽度の神経損傷
を契機として生じるとされるが、発症機序は明ら
かではない。世界疼痛学会(IASP)ではcomplex
regional pain syndromes(CRPS)として分類されて
いる。CRPSとは、局所的に起こった損傷に引き
続いて発症する疼痛性の病態であり、通常の創傷
治癒の経過を越えて続き、運動機能の減退を伴い
時間とともにさまざまに進行する症候群をいう。
(00)
硫酸アトロピン
自律神経遮断薬の一つで、アセチルコリン受容
体の拮抗薬の一つ。副交感神経のムスカリン様作
用を遮断する。(99)
ライソゾーム
細胞内小器官の一つで、ゴルジ装置の部分から
形成される酸ホスファターゼ活性をマーカーとし
て持つ。ライソゾームは細胞の中に出現した異物
や病的産物を溶解して処理する小体で、ゴルジ装
置で合成されたばかりのものを、一次ライソゾー
ムと呼び、異物などを処理する過程にあるライソ
キーワード用語解説
ゾームを二次ライソゾームと呼ぶ。アルツハイマ
ー病患者の脳の神経細胞中にはこれが増加すると
いう。(99)
量子力学
ニュートン力学を変革させた理論で、光や原子
のミクロの世界の力学として、アインシュタイン
が提唱した理論。この理論は、分子の結合や固体
内での電子、原子核や素粒子等のふるまいを明ら
かにした。現在、生体を構成している細胞や
DNA、時空の力学への適用等が試みられてい
る。(99)
【S】
神経因性膀胱
排尿に関わる神経経路のうちのどこかに器質的
な障害が発生したために、蓄尿・排尿が正常に行
われなくなり、尿失禁・排尿困難・頻尿などの排
尿障害が生じた状態をいう。脳梗塞・脳腫瘍・パ
ーキンソン病などの脳疾患、脊髄損傷・腰部脊柱
管狭窄症などの脊髄疾患、骨盤内臓器手術や糖尿
病などの末梢神経損傷により起こる。(00)
手掌多汗症
エクリン汗腺の機能亢進の結果、皮表に放出さ
れる汗の量が増加することをいう。通常では起こ
りえないと思われる条件のもとで臨床的に発汗を
認める場合、および精神的、温度性刺激に反応す
る発汗が過剰と思われる場合をさす。少し精神的
に緊張しただけで手掌から多量の汗が噴き出す。
いわゆる「汗かき」とは異なり、人と話したり書
き物をしているだけで突然泡のように汗が湧き出
し、みるみるうちに大粒になって指先から滴り落
ちる程の汗をかくものをいう。(00)
精神性発汗
発汗には、温熱性発汗と精神性発汗とがある。
精神性発汗は、精神的ないし情緒的活動(情緒性
発汗)によって発汗が増加する事をいう。発汗の
出現部位は、全身的にも多少認められるが、特に
手掌・足底・腋窩・顔面に著明である。精神性発
汗の中枢は、大脳皮質の前運動領域と視床にある
といわれる。(00)
出血傾向
止血機構に関与する基本的な因子として、血
管、血小板、血液凝固、および線維素溶解の4
つがあり、これらの因子が密接に関連しながら
血管の統合性を保っている。出血傾向とは、こ
の止血機構の異常のために生ずる出血症状であ
る。出血傾向を呈する疾患には、一次止血の障
害として血小板減少(再生不良性貧血、急性白
血病、DIC)、血小板機能異常、血管障害などが
あり、二次止血の障害として先天性凝固異常
(血友病)、後天性凝固異常(DIC、肝疾患)な
どがある。(00)
脂質代謝
体内の脂質は食物から直接摂取された外因性
脂肪と、ブドウ糖やアミノ酸から合成される内
因性脂肪とがあり、血中ではコレステロール、
トリグリセリド、リン脂質、遊離脂肪酸などの
かたちで存在する。内因性脂質の合成は肝臓で
行われ、ここでの代謝異常は高脂血症の原因と
なる。(00)
総ヘモグロビン量
ヘモグロビンは赤血球中の酸素運搬色素で、
酸素分子が結合した酸化型ヘモグロビンと酸素
分子が解離した還元型ヘモグロビンに分けられ
る。総ヘモグロビン量は、これら両者の総和。
(00)
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome)
は、覚醒時の呼吸に異常はないのに眠ると無呼
吸が起こる病態である。無呼吸には上気道の一
過性の閉塞による閉塞型、呼吸中枢が一過性に
停止する中枢型のほかに、中枢型から始まって
閉塞型に移行する混合型もみられる。症状は習
慣性の強いいびき、異常な体動の多い睡眠など
のほかに、夜尿症、夜間頻尿、性的能力の減
退、倦怠感などがある。(00)
酸素飽和度
血液中の赤血球のヘモグロビンが酸素と結合
している割合。およそ100mmHgで100%飽和す
る。また、約60mmHgの酸素分圧では急激に酸素
飽和度は減少する。(00)
キーワード用語解説
子宮内膜症
子宮内膜あるいはそれと類似する組織が、子
宮内腔以外の部位に発生し、増殖する疾患。但
し、子宮体部筋層に発生する内性子宮内膜症
は、現在、子宮線筋症として区別されている。
病理組織学的には良性だが、増殖・浸潤し周囲
組織との癒着を形成するため、卵管閉塞や卵巣
子宮内膜症、腹腔内臓器間の癒着を起こし、月
経困難症や不妊症の原因の一つとなる疾患。(00)
侵害受容器 (nociceptor)
生体の組織を傷害するか、その可能性のある刺
激(侵害刺激)を感受する受容器。代表的なもの
にAδ線維に支配され機械的侵害刺激のみに応じ
る高閾値機械受容器と、C線維に支配され機械
的・熱・化学的刺激など多種類の侵害刺激に応じ
るポリモーダル受容器がある。その他、侵害的冷
刺激、熱刺激のみに反応するものも知られてい
る。(99)
総体液量(total body water)
生体に含まれている水分の総量。成人では体
の約60%が水分である。総体液量は更に細胞内
に含まれる水分(細胞内液:intracellular water)
と細胞外の水分(細胞外液:extracellular water)
の二つに分けられる。(00)
SGB(星状神経節ブロック)
第7頚椎横突起の基部に局所麻酔薬を浸潤さ
せ、頚部および上胸部の交感神経を遮断する方法
である。頭痛、顔面痛、頚部、肩、上肢、胸部な
どの痛みや血行障害など広い疾患に応用される。
(99)
生体インピーダンス法
(bioelectrical impedance analysis:BIA)
生体に微弱な交流電流を流したときに得られ
る電気抵抗を用いて、生体の水分量や脂肪量等
を推定する方法。1960年代後半に測定原理が発
表された。一般に生体組織の水分が多ければ多
いほど電気抵抗が低くなり、逆に脂肪の量が多
ければ電気抵抗が高くなる現象を用いている。
現在市販化されている「体脂肪計」の多くは同
法を応用したもので、生体に与える侵襲が殆ど
ないことが特徴である。(00)
サーチエンジン
サーチエンジン(search engine)とは、検索エ
ンジンとも呼ばれており、インターネット上に蓄
えられている情報を分類・整理し、どこに何があ
るのかを探し出してくれる検索サービスをさす。
世界各国と繋がっているため、日本語版のみでな
く、他言語版などがある。(99)
シェーグレン症候群
外分泌腺の分泌液減少による症状を有し、そ
の原因は自己免疫性疾患であると考えられてい
る。病名は本症を報告したスウェーデンの眼科
医Sjwgrenの名による。20∼50歳の女性に多い。
唾液腺、涙腺の分泌能低下に伴う口腔内乾燥、
虫歯、眼の灼熱感や異物感を訴えるばかりでな
く、甲状腺疾患に代表される内分泌性疾患や多
臓器障害、多関節炎を合併する特徴をもつ。(00)
色彩計
色彩計は人間の目に対応する分光感度とほぼ
同一の感度を持つ三つのセンサー(光の三原色
に対応するセンサー)が備わっている機器で、
色を客観的に測定することができる。(99)
サブスタンスP(SP)
神経ペプチドの一つで、侵害受容性の無髄の求
心性神経に多く含まれている。侵害刺激により一
次知覚ニューロン終末部より放出され、放出され
たSPは後角ニューロンの膜電位を脱分極させる
作用がある。一般には「痛みの伝達(修飾)物
質」として広く知られているが、中枢神経系にも
広く分布している。(99)
振動誘発指屈曲反射
外受容性多シナプス反射。人の手指指尖掌側に
低周波の機械的振動刺激(周波数:約60-100ヘル
ツ、振幅:約1ミリ)を与えると振動指の屈曲反
射が誘発される。同反射の受容器は皮膚の機械的
受容器、効果器は指屈筋である。反射弓は脊髄を
介する短潜時と脊髄上位の中枢を介している長潜
時のものがあると推定されている。(99)
相似理論
発生学的にはその起源を異にするが、機能を等
しくするため形状が類似する現象。大橋正雄は著
キーワード用語解説
書「新波動性科学入門」で、「一つの現象を追い
求めて解決が得られないときには、既に理解済み
の相似の現象を捜し、そのメカニズムを参考にし
て新しい現象を理解しようとした。これにより研
究は急速に進んだのであった。」としている。
(99)
ストレプトゾトシン
streptomyces achromogenesという細菌から初め
抽出され、その後合成もされている抗生物質で、
「抗腫瘍性物質」として、主として膵臓の島腫瘍
のほか、ゾリンジャー・エリソン症候群に関連す
るガストリン産生腫瘍などの治療に用いられてい
る。動物実験では的確に膵臓のランゲルハンス島
のインスリン産生β細胞を破壊し、糖尿病を発症
せしめる化学物質である。(99)
生体光情報
生物フォトンから得られる情報。(生物フォト
ンの項を参照)(00)
生物フォトン
生物フォトン発光は、「生きている状態」にあ
る生体系がきわめて微弱な光を自発的に放つ現象
の総称である。人体表面での生物フォトンの計測
は、通常露出できる部位であれば、例えば額や顔
面、背中、腹部、手足など、身体のどの部位にお
いても可能である。また、われわれの身近な蛍、
夜光虫、発光バクテリヤ、キノコなどはその代表
的なものといえる。(99)
スプリント療法
スプリント療法とは、上下歯列のどちらか一方
の歯列を全面的に被覆するアクリリックレジン製
の装置で、上顎型と下顎型がある。装置により2
∼3mmの咬合が挙上されるが、対合歯に対して
安定した同時咬合接触が得られ、また、着脱可能
であり、不可逆的な負荷を加えないので、患者に
とって安心して使用できる特徴がある。したがっ
て、いかなるタイプの顎関節症においても初期治
療として応用される。(99) シンスプリント(shin splints)
硬い道路でのランニングや、足の屈筋群を強
く、過度に使う動作によって生じた下腿の疼痛と
不快感であって、筋腱の炎症に限局し、疲労骨折
や阻血性障害は除外されるものであるとも定義
づけられる。近年、脛骨内側ストレス症候群、
ヒラメ筋症候群などとも呼ばれている。わが国
では、脛骨疲労性骨膜炎という病名が用いられてい
る。(99)
シリコン枕
シリコンとは、シロキサン結合(-Si-O-)を骨
格とし、ケイ素原子にアルキル基などが結合し
た構造をもつ高分子有機ケイ素化合物の総称を
いい、耐熱性、耐薬品性などが高い物質。この
物質を固形状にし、異なる硬度層で構成され
た、刺鍼練習台をシリコン枕という。(00)
【T】
トリガーポイント
「痛みの引き金点」のこと。トリガーポイン
トを内包する筋は、(1)短縮すると痛みを再現す
る。(2)トリガーポイント部を圧すると他部位
(遠隔部位)に関連痛が出る。この2つがトリ
ガーポイント検索のKeyとなる。トリガーポイン
トがあると、局所的な交感神経亢進状態が引き
起こされ、自律神経の支配を受けている様々な
器官に影響が出る。逆に言えば、トリガーポイ
ントを処理すれば、自律神経が関与していると
思われる諸症状も取り除くことができるとみな
されている。(00)
単純性肥満モデル動物
肥満モデル動物としてVMH(視床下部腹内側
核)の満腹中枢破壊により過食を起こし肥満さ
せたラットや、遺伝的に肥満を起こすZucker
fattyラット、ob/obマウスなどが知られている
が、通常のラットに高栄養食を与えることで肥
満を引き起こし、主に過食と運動不足によると
いわれる単純性肥満症のモデルとすることがあ
る。(00)
爪白癬
白癬とは白癬菌、小胞子菌、表皮菌などの皮
膚糸状菌によって起こる皮膚疾患で、皮膚、毛
髪、爪を侵す。菌の侵襲が浅く角層に寄生する
浅在性白癬、毛包から菌が侵入して真皮に強い
炎症反応を伴う深在性白癬とアレルギー疹であ
る白癬疹の3型がある。爪白癬は、爪甲は混濁
キーワード用語解説
肥厚し、凹凸不平となり、爪質がもろく破壊さ
れる。(00)
体組成(body composition)
生体がどの様な物質(分画)で構成されてい
るかということ。一般的には体脂肪量、除脂肪
体重、総体液量のようにマクロレベルでの分画
を指す。(00)
体脂肪量(body fat)
個体に含まれている脂肪の量。一般的には体
脂肪量を体重で除した体脂肪率(% body fat)で
表されることが多い。体脂肪量は単に重量で表
す。(00)
等速性運動
筋の収縮の速度を一定状態にしてトレーニン
グする時に使う用語で、この等速性運動を行う
には特別な装置が必要である。装置に規定した
速度より速く運動を行おうとすれば、その力が
トルクとして記録される。よく知られているの
がサイベックスである。(00)
等尺性最大随意収縮
筋の両端を固定して刺激すると、収縮中に筋
の長さは変化しない。このような収縮を等尺性
収縮といい、動かない物を押したり引いたりす
るときに起こる。このような動作を意識下にて
最大限努力する運動を等尺性最大随意収縮とい
う。(00)
体性−自律神経反射
体性神経の興奮によるインパルスの増大が、
脊髄・延髄を介して自律神経遠心路に伝導し臓
器や器官の変化を引き起こす反射。体性−心臓
反射、体性−胃反射、体性−膀胱反射などのよ
うに臓器ごとに区分した表現を用いることがあ
る。(00)
TEAS
transcutaneous electrical acupuncture point stimulationの略でTENS(transcutaneous electrical nerve
stimulation:経皮的神経電気刺激)を経穴に用い
た時に使用する言葉であり、経皮的経穴電気刺
激の略である。(99)
TENS
transcutaneous electrical nerve stimulationの略。
経皮的神経電気刺激と訳される。表面電極を用い
て通電刺激を行い治療に応用する手法。臨床的に
は鎮痛効果をはじめ、筋ポンプ作用の促進、皮膚
潰瘍周囲の微小循環や四肢末梢の血流改善、廃用
性筋萎縮に対する筋力訓練など広く活用されてい
る。(99)
サーモグラフィー
物体または生体表面の温度分布を画像で表現す
る方法。サーモグラフィーは、人体から自然に放
射している赤外線を捕らえるだけで、体に触れる
ことなく測定でき、連続した温度分布像が得られ
る。この方法は、悪性腫瘍の診断、炎症の診断、
血管系疾患など多方面で応用され、痛みの評価や
健康管理などに広い応用が期待されている。(99)
トポロジー
伸び縮みして重ね合わせできる図形を等しい
(相同)と考える、図形の性質っを研究する幾何
学。人体をトポロジー的に見ると、口や鼻から肛
門を見通すと、3本のパイプ状の3穴ドーナッツに
表現され、更に、口や鼻を呼吸器官の概念で一つ
にまとめると、口と鼻から肛門を見通す1本のパ
イプ状となり、人体を1穴ドーナッツに表現でき
る。(99)
【U】
うつ状態
うつ状態とは、うつ病の症状を生じている状態
である。うつ状態の原因は、内因性のうつ病(原
因が明確でなくうつ病が発症する)や、反応性う
つ病(気分がゆうつになるような原因により発症
する)など多くの原因がある。高齢者の場合、脳
の器質的変化に加えて身体的変化や社会環境的変
化が原因となって発症する。うつ状態の症状の主
体は、抑うつ気分や意欲の低下である。精神症状
としては、「気分が沈む」、「何をするのもおっ
くう」、「仕事はもちろん今まで好きだったこと
(趣味)まで楽しめなくなる」、「イライラ」な
どの症状であり、身体症状としては、「睡眠障
害」、「食欲不振」などの症状が現れる。(00)
キーワード用語解説
【V】
ーヌスを反射性に調節しているとされる。(99)
ワゴスチグミン(vagostigmin)
副交感神経興奮剤。シナプス間隙に放出された
アセチルコリンの分解を抑制し、副交感神経興奮
様作用を示すコリンエステラーゼ阻害剤。(99)
VAS
visual analogue scaleの略。視覚的アナログ尺度
と訳され、痛みなどを客観的に評価するために無
痛から最強の苦痛までの表現を0から100mmの線
上に表示する方法。(99)
【X】
X-energy
これはX-rayの故事に倣い、存在なり作用が判っ
ていながら、その実態が不明な、と言う意味で命
名した。特に、「気」と表現すると実に多概念が
含まれ、鍼灸の作用機序としての「気」に限定さ
れない面が危惧された。初出は第4回世界鍼灸学
会の、花輪貞良のposter sessionであり、それは次
の様に表示された。I would like to call it "X-Energy" by naming it after "X-ray".(99)
【 数字 】
3,5-ジカフェオイルキナ酸
キナ酸に2分子のカフェオイル基が結合して
形成されるカフェタンニン(ポリフェノール
類)の一種。ヨモギや艾における含有比は比較
的高い。薬理学的に脂質過酸化抑制やラジカル
除去作用、肥満細胞によるヒスタミン遊離の抑
制効果などが認められている。施灸後、灸痕か
らタール成分として皮下浸透することが推測さ
れることから、灸治療にみる抗菌、抗炎症作用
などに関与する有効成分のひとつと考えられて
いる。(99)
17-OHCS
17-ヒドロキシコルチコイドの略。副腎皮質ホ
ルモンの分解産物でストレスによりその尿中値
が上昇する。(99)
17-KS
17-ケトステロイドの略。男性ホルモンの分解
産物でストレスによりその尿中値が上昇する。
(99)
【Z】
前庭頸反射
前庭迷路(耳石器、半規管)からの情報は、前
庭神経を通り延髄の前庭神経核群に送られる。前
庭神経核からの出力のうち、内側前庭核からは脊
髄を両側性に下降し頸筋・固有背筋を支配する運
動ニューロンに投射する経路(内側前庭脊髄路:
MVST)が存在する。この経路は主に半規管から
の入力よって頭位の保持に関与する頸部の筋のト
抄録集キーワード用語解説にあたって
年々学会発表は専門的になり、聞き慣れない用語が飛びかうようになりました。そこで学術部で
は、少しでも発表が聞き易く、分かりやすいものになればと思い、現代医学及び科学分野のキーワ
ード用語の解説を企画しました。用語解説に当たっては、発表者或いは関連領域を専門とする先生
方のご理解と協力を得ました。ここに心から感謝申し上げます。なお、用語の解説上における諸問
題はすべて学術部の責任であります。
平成12年3月15日 学術部長 矢野 忠
キーワード索引
【A∼W】
ACTH........................................ 71
AIMS-2日本語版......................91
allodynia.................................. 118
B.D.ORT..................................116
β-endorphin..............................71
Bell麻痺.................................... 80
c-fos........................................... 71
CCT............................... 101、101
cDNAライブラリー...............116
C型肝炎キャリア.................... 88
DifferentialDisplay法.............. 116
EBM........................................ 104
FFD............................................82
freezingphase...................86、120
frozenphase..............................120
GDS........................................... 88
GSR........................................... 65
HCV-RNA.................................88
HFD......................................... 114
IT............................................. 130
JAVA.......................................106
LAN.........................................106
MEDLINE............................... 104
MML........................................106
MPTP.........................................63
NIH.......................................... 101
NK細胞活性............................. 76
NNT...............................101、101
prostatodynia............................. 97
QOL...................................91、94
Ramsay-Hunt症候群.........80、80
RCT......................... 96、99、112
RSD......................................... 118
sham鍼.......................................84
straingauge.................................66
Taxonomy................................127
VAS......................... 93、96、107
Virus........................................ 116
WWW......................................131
【あ】
アスレティックトレーナー..... 121
圧痛点............................. 84、109
アトピー性皮膚炎................... 90
アロマテラピー....................... 92
アンケート調査........... 102、105
108、108
110、113
127
安静時筋電図........................... 75
安全性..................... 62、96、111
胃運動....................................... 66
医科大学病院............... 103、104
意識調査................................. 102
痛み........................................... 69
一噫穴....................................... 62
遺伝子発現............................. 116
胃電図..................................... 114
イメージ....................... 102、102
イメージ変容......................... 110
胃兪........................................... 82
医療情報....................... 106、131
インスリン............................... 78
インターネット........... 106、131
インフォ−ムド・コンセント... 96
陰部神経刺鍼点....................... 98
後ろ向き調査......................... 121
うつ状態......................... 88、120
栄養補助食品 ..................... 116
会陰裂傷................................. 117
遠隔治療................................... 82
円皮鍼....................................... 72
嘔吐......................................... 101
お灸............................... 117、119
m血......................................... 125
m血気滯................................... 77
音声......................................... 129
温度バランス............... 128、128
温熱刺激................................... 65
【か】
介護................................. 87、117
外傷性気胸............................... 62
芽球化反応............................... 76
画像補正用カラーチャート....... 95
肩こり..................... 84、89、113
カプサイシン........................... 66
カラードプラ法....................... 68
カラードマイクロスフェア....... 67
カラゲニン....................... 70、70
肝欝化火................................. 122
肝鬱気滞................................... 87
患者情報................................. 130
患者調査................................. 103
感染防止................................... 95
管理......................................... 130
関連痛....................................... 74
企業......................................... 112
奇穴........................................... 87
気候........................................... 90
偽鍼......................................... 112
気滞......................................... 125
気分........................................... 78
灸............................................. 117
灸刺激............... 64、65、67、76
急性腰痛................................... 82
灸頭鍼刺激............................... 64
教育......................................... 127
教育機関................................. 130
教育的介入............................. 110
教育目標分類......................... 127
胸郭出口症候群....................... 86
胸部交感神経節切除............... 64
矯正視力................................. 122
局所解剖学............................... 62
局所治療................................... 82
局所脳血流量測定法............. 125
虚実補瀉................................... 94
虚証......................................... 129
『金匱要略』........................... 79
筋緊張....................................... 74
筋血液量................................... 74
筋硬結....................................... 62
筋硬度....................................... 72
近赤外線分光法..................... 109
筋電図............................... 73、74
筋病理学................................... 62
筋疲労............................... 72、73
筋力................................... 72、73
駆m血....................................... 77
頸・肩の凝り......................... 113
キーワード索引
黒野式全身調整基本穴......... 124
黒野式全身調整療法............. 124
経筋........................................... 96
経穴......................................... 121
経穴の厚み............................... 94
迎香穴....................................... 92
経直腸的超音波断層法........... 97
経皮的通電............................... 63
頸部神経根症........................... 85
経絡......................................... 118
経絡経穴学............................. 127
外科手術................................. 129
外科領域................................. 103
血圧........................................... 69
血圧バランス......................... 128
血液量..................................... 109
血中レプチン........................... 75
血糖値............................. 78、124
肩関節....................................... 84
肩関節周囲炎................. 86、120
健康障害................................. 119
健康づくり............................. 112
肩手症候群............................. 119
腱板炎....................................... 85
腱板不全断裂........................... 86
抗アセチルコリン抗体........... 89
抗ウイルス抗体..................... 111
交感神経................................... 68
交感神経遮断........................... 66
膠原病....................................... 91
高校生..................................... 113
高速液体クロマトグラフィー
.......................... 115
『黄帝三部鍼灸甲乙経』....... 79
高度生殖医療......................... 100
高齢者....................................... 88
国体......................................... 108
極微弱発光............................. 100
五十肩....................................... 85
骨度法..................................... 126
古典鍼法................................... 78
コンディショニング........ 73、107
コンプライアンス....................103
【さ】
サーモグラフィー....86、92、118
細菌数....................................... 95
再生......................................... 123
索状硬結................................... 75
坐骨神経痛............................... 82
三陰交..................................... 117
酸素飽和度................... 109、110
シェーグレン症候群............... 91
耳介鍼刺激............................... 75
色彩計....................................... 95
子宮内膜................................. 100
軸索反射................................... 67
時系列分析............................. 117
刺激量..................................... 110
自己免疫疾患........................... 90
歯痕舌..................................... 129
脂質代謝................................. 114
脂質代謝産物........................... 75
視床痛..................................... 125
刺鍼........................................... 62
四診........................................... 80
姿勢バランス......................... 107
実態調査....................... 103、104
膝痛............................... 119、121
湿熱........................................... 87
刺入深度........................... 73、94
雀啄灸....................................... 87
収縮期血圧............................. 128
重症筋無力症........................... 89
重心移動................................. 107
修正イベール法..................... 127
十二指腸運動........................... 65
周波数....................................... 71
授業評価............. 105、105、127
手技療法................................. 112
取穴法..................................... 126
手術侵襲................................... 76
手掌多汗症............................... 64
出血........................................... 96
出血傾向................................... 96
出血量..................................... 117
術後疼痛........................... 71、93
受療態度................................. 110
消化管術後............................. 124
『傷寒論』............................... 79
消毒手技................................... 95
消毒法..................................... 111
情動........................................... 65
情報検索....................... 130、131
上腕骨外側上顆炎................... 83
シリコン枕............................. 126
指量法..................................... 126
視力回復................................... 92
侵害刺激................................... 63
刺鍼感覚................................. 126
鍼感発声................................... 87
鍼灸..................... 102、102、104
106、109、127
鍼灸院........................... 103、130
鍼灸教育................................. 105
鍼灸師..................................... 121
鍼灸施術................................. 121
鍼灸施術所............................... 88
鍼灸治療 ............... 80、85、88
90、94、100
103、104、111
113、116、120
125
神経因性膀胱........................... 79
腎血流............................... 68、68
人工透析................................. 124
伸張性収縮運動....................... 75
振動誘発指屈曲反射............... 63
心拍数....................................... 69
睡眠時無呼吸症候群............... 97
頭痛......................................... 125
ステロイド離脱....................... 90
ストレス要因......................... 113
スペクトル............................. 129
スポーツ................................... 72
スポーツ傷害................. 84、108
スポーツ鍼灸................. 73、107
108、121
精神疾患................................... 81
精神性発汗............................... 65
生体インピーダンス............. 111
生体インピーダンス法......... 115
生体光情報............................. 100
清熱解毒................................... 78
脊髄........................................... 71
脊髄腫瘍................................... 93
脊中........................................... 78
施灸......................................... 123
絶縁鍼............................... 70、71
接触鍼..................... 80、89、122
キーワード索引
舌診................................. 95、129
前線........................................... 99
喘息......................................... 117
前庭頸反射............................. 113
前立腺癌................................... 98
総体液量................................. 115
臓器血流量............................... 67
総ヘモグロビン量....... 109、110
僧帽筋..................................... 109
組織血液量............................. 109
組織反応................................... 64
卒業認定試験......................... 127
阻力鍼刺法............................... 87
【た】
体脂肪量................................. 115
ダイオトロン-PIA................. 118
体温・体(直腸)温........ 128、128
体脂肪率................................. 111
体性刺激................................... 66
体性-自律神経反射..................65
体組成..................................... 115
脱毛............................... 122、123
単純性肥満モデルラット...........75
置鍼........................................... 65
知熱灸..................................... 123
超音波....................................... 68
超音波断層写真撮影............... 89
鎮痛効果................................... 70
痛覚過敏................................... 70
痛経........................................... 77
爪白癬..................................... 123
低周波置鍼療法....................... 98
低周波鍼通電........... 70、74、92
定量評価................................... 69
データベース......................... 130
テニス..................................... 108
テレメトリー........................... 66
電気刺激................................... 66
天気図....................................... 99
電子化..................................... 130
電子カルテ................... 106、106
統計......................................... 121
同経遠位穴............................... 92
凍結肩....................................... 85
橈骨神経支配領域................... 63
東西和合................................... 89
投資効果................................. 130
等尺性最大随意収縮............. 109
等速性運動....................... 72、72
糖尿病............................. 78、124
頭皮鍼....................................... 63
動物モデル ................... 63
督脉........................................... 89
トリガーポイント........... 74、75
トレーナビリティ................... 73
【な】
内因性高脂血症ラット......... 114
内耳点..................................... 120
内側型変形性膝関節症........... 83
『難経』................................... 78
日内変動................................. 111
尿失禁............................... 79、98
尿中17OHCS............................ 88
認定制度................................. 121
脳内モノアミン..................... 115
【は】
パーキンソン病............... 63、79
吐き気..................................... 101
八綱弁証................................... 85
パニック障害........................... 87
鍼............................... 67、72、73
101、114
鍼刺激..................... 64、68、107
109、110、120
鍼実技..................................... 126
鍼治療............... 78、79、81、81
83、84、84、85
86、86、87、89
90、91、92、93
93、96、96、97
97、98、99、108
110、112、112
119、124、125
鍼鎮痛............................... 70、71
鍼通電........... 65、76、118、122
鍼通電刺激............... 66、68、69
70、71、115
115、116
鍼療法....................................... 91
胖嫩舌..................................... 129
反応点..................................... 120
光てんかん............................... 77
脾虚証..................................... 114
脾虚スコアー......................... 114
微細形態................................... 64
非侵害刺激............................... 63
ヒト......................................... 123
皮内鍼............................... 83、96
泌尿器科................................. 105
ひびき....................................... 94
皮膚血流................................... 68
皮膚血流量............. 67、74、110
皮膚交感神経........................... 67
皮膚消毒................................... 95
皮膚通電電流量....................... 64
肥満細胞................................... 76
病院実習................................. 105
美容鍼灸................................. 111
疲労骨折................................... 84
頻尿........................................... 98
不妊症..................................... 100
プライマリ−・ケア............. 103
文献......................................... 104
聞診......................................... 129
分娩所要時間......................... 117
ペインスケール....................... 69
弁証論治................................... 77
弁別能力................................. 126
片麻痺............................. 81、119
北辰会方式............................... 77
【ま】
マクギル・メルザック式疼痛問診表
............................94
末期癌患者............................... 94
末梢性顔面神経麻痺
............ 80、80、99
慢性関節リウマチ........... 90、91
慢性腎不全............................. 124
慢性疼痛................................. 116
耳鳴........................................... 93
脉診........................................... 94
脉診弁証................................... 77
無嗅覚症................................... 92
キーワード索引
無作為化比較試験................... 84
迷走神経................................... 69
迷走神経切断........................... 66
メカニズム............................... 62
めまい........................... 113、125
免疫応答................................... 76
免疫亢進................................... 88
問題解決型学習..................... 105
【や】
夜間頻尿................................... 99
夜尿症....................................... 97
ユーザーインターフェース..... 106
腰下肢痛................................. 101
腰痛............................... 107、112
予後因子................................... 85
予診表....................................... 88
ヨット競技............................. 107
【ら】
ライブラリー......................... 116
裸眼視力................................. 122
ラット....................... 65、66、67
68、69、70
70、71、76
115
リハビリテーション............... 81
涼肝熄風................................. 122
良導絡....................................... 64
臨床教育................................. 104
霊台........................................... 78
レーザー療法......................... 118
レーザー鍼............................. 100
レフ値..................................... 122
痙縮性斜頸............................... 81
連続測定................................... 64
労傷........................................... 87
老人保健施設......................... 102
【わ】
腕神経叢造影........................... 86
人名索引(敬称略)
【あ】
青 木 伊 知 男.............................................. 106、106
赤 川 淳 一.................................................. 63、90
秋 元 恵 実.......................................................... 69
浅 香 隆.............................. 91、93、103、104
阿 部 洋 二 郎...................... 80、91、93、103、104
新 井 千 枝 子...................... 80、91、93、103、104
有 馬 義 貴........................................................ 129
有 村 博 信.............................................. 118、125
安 藤 理 恵.......................................................... 72
飯 沼 浩 江.......................................................... 90
五 十 嵐 純.......................................................... 64
池 内 隆 治........................................................ 112
池 田 綾 子........................................................ 111
池 田 和 久................................................ 66、114
石 井 睦 宏.......................................................... 99
石 神 龍 代........................................................ 124
石 崎 直 人........................................................ 105
石 丸 浩 徳........................................................ 112
泉 重 樹.......................................................... 72
市 田 裕 紀 子.......................................................... 94
一 の 瀬 宏.................................................. 73、89
伊
藤
修........................................................ 118
伊 藤 和 憲.......................................................... 75
井 上 悦 子.............................................. 101、101
井 上 雅 文.......................................................... 56
井 上 基 浩........................................................ 112
今 井 賢 治.............. 47、66、66、71、112、114
岩 昌 宏...................... 66、66、71、114、127
上 田 浩.......................................................... 63
上 田 正 一.......................................................... 74
宇 南 山 伸.......................................................... 63
梅 田 雅 宏.............................................. 106、106
楳 田 高 士........................ 54、64、93、95、100
浦 田 繁........................................................ 105
江 川 雅 人................................................ 54、105
恵 飛 須 俊 彦.............................................. 106、106
王 財 源................................................ 64、100
大 勝 孝 雄.............................................. 118、125
大 久 保 正 樹........................................................ 109
大 沢 秀 雄.................................. 58、65、68、69
大 島 八 千 代.......................................................... 69
大 田 美 香.............................................. 116、130
大 西 明 子.......................................................... 69
大 野 修 嗣................................ 80、91、93、104
大 淵 千 尋.......................................................... 92
大 八 木 敏 弘.......................................................... 78
小 笠 原 弘 子.......................................................... 82
岡 田 薫.................................................. 67、75
岡 田 明 祐.......................................................... 59
緒 方 昭 広.......................................................... 65
岡 本 芳 幸...................................... 99、106、106
小 川 一.......................................................... 75
小 川 貴 司.......................................................... 83
奥 田 功.......................................................... 56
奥 田 学.......................................................... 95
小 口 勝 司........................................................ 114
小 椋 加 枝.......................................................... 88
尾 崎 昭 弘.................................................. 53、54
尾 崎 朋 文................................ 62、62、96、103
小 澤 庸 宏.................................................. 82、83
小 田 温 子........................................................ 123
小 田 原 良 誠........................................................ 104
越 智 秀 樹........................................................ 112
越 智 正 憲........................................................ 100
小 野 直 哉........................................................ 102
小 畑 幸 嗣........................................................ 107
小 原 圭 三........................................................ 104
小 比 賀 黎 子.................................................. 73、89
小 俣 浩...................... 80、91、93、103、104
【か】
鹿 毛 則 子................................................ 96、103
影 山 照 雄........................................................ 122
柏 下 貴 廣.......................................................... 83
粕 谷 大 智.......................................... 86、86、91
形 井 秀 一................................ 48、50、54、117
片 岡 静 子.......................................................... 63
片 野 泰 代.......................................................... 74
片 山 憲 史........................................................ 112
勝 木 裕 久.......................................................... 67
加 藤 麦........................................................ 115
加 藤 幸 子.......................................................... 69
門 田 真 奈........................................................ 117
金 谷 由 美 子........................................................ 102
金 子 弘 志...................................... 84、108、127
河 合 真 理 子........................................................ 116
河 井 正 隆........................................................ 126
川 喜 田 健 司................................ 44、67、75、112
川 口 雄 次.......................................................... 38
河 内 明.......................................................... 64
河 村 み ゆ き........................................................ 120
河 村 修.......................................................... 82
河 村 廣 定........................................................ 120
川 本 正 純................................................ 93、126
菅 野 亜 紀.............................................. 130、130
人名索引
神 庭 重 信.......................................................... 37
岸 朋 胤........................................................ 130
北 川 秀 樹................................................ 80、104
北 小 路 博 司.................................. 68、79、97、98
98、99、105、112、127
北 出 利 勝...................................... 96、129、129
北 村 智.................................................. 64、95
北 村 清 一 郎.......................................................... 62
吉 備 登........................................ 64、95、100
木 村 通 郎.................................................. 64、76
行 田 直 人........................................................ 104
清 藤 昌 平.......................................................... 97
久 下 浩 史.......................................................... 64
久 住 武........................................................ 113
工 藤 大 作.......................................................... 88
久 保 弘 樹........................................................ 112
蔵ケ崎真知子................................................. 118,125
倉 橋 孝.......................................................... 99
黒 岩 共 一.......................................................... 74
黒 野 保 三.............................................. 124、124
小 糸 康 治.......................................... 86、86、91
小 井 土 善 彦........................................................ 117
小 岩 信 義........................................................ 113
小 坂 純 一........................................................ 102
小 島 孝 昭.......................................................... 75
小 島 宗 門.......................................................... 97
小 島 賢 久.......................... 101、101、109、110
児 玉 浩 司.......................................................... 99
古 東 司 朗.......................................... 82、83、83
後 藤 り ゅ う........................................................ 122
小 林 和 子.......................................................... 67
小
林
聰.......................................... 58、68、69
小 林 博 子.......................................................... 69
小 松 秀 明.......................................................... 55
小 溝 健 靖.......................................................... 72
小 山 哲 也...................................... 84、108、127
小 山 悠 子........................................................ 116
近 藤 宏.......................................................... 72
近 藤 史 生........................................................ 102
【さ】
斉
斉
坂
酒
坂
坂
坂
咲
藤
藤
井
井
口
本
本
田
雅
秀
友
良
俊
豊
雅
人........................ 68、79、98、98、105
樹........................................................ 109
実...................... 86、86、91、119、120
和.......................................................... 97
二.......................................................... 93
歩.................................... 107、109、121
次.......................................................... 62
一.................................. 66、66、70、71
76、114、129
笹 岡 知 子........................................ 51、88、105
佐 竹 栄 二.......................................................... 90
佐 藤 寛 美.......................................................... 67
佐 藤 正 人........................................ 62、96、103
佐 藤 優 子.................................. 58、65、68、69
沢 崎 健 太........................................................ 112
沢 田 寛.......................................................... 89
澤 津 川 勝 市........................................................ 122
塩 見 真 由 美........................................................ 114
繁 原 貴 子........................................................ 111
七 堂 利 幸.............................................. 101、101
篠 原 か お り.......................................................... 67
篠 原 昭 二.................... 76、96、114、129、129
篠 原 正 明........................................................ 121
篠 原 隆 三.............................................. 107、121
渋 谷 ま さ と.......................................................... 63
嶋 津 秀 昭.......................................................... 69
志 村 ま ゆ ら.......................................................... 49
下 光 輝 一........................................................ 109
庄 治 一 由.......................................................... 98
白 石 武 昌.......................................................... 75
代 田 文 彦.......................................................... 35
神 正 照........................................................ 100
進 藤 正 雄.......................................................... 73
菅 原 之 人.......................................................... 67
杉 田 正 道.......................................... 86、86、91
杉 山 誠 一...................................... 84、108、127
菅 屋 潤 壹.......................................................... 65
鈴 木 言 枝................ 68、79、98、98、99、105
鈴 木 紘.......................................................... 56
鈴 木 信................................................ 96、103
鈴 木 俊 明........................................ 81、81、102
鈴 木 裕 明........................................................ 100
鈴 木 由 紀 子........................................................ 114
須 藤 隆 昭.................................................. 82、92
首 藤 傳 明.......................................................... 57
須 永 隆 夫.............................................. 123、128
角 谷 英 治.......................... 45、68、79、98、98
99、105、112、127
関 恵 子.......................................................... 94
関 戸 玲 奈.......................................................... 70
関
冲........................................................ 123
関 真 亮........................................................ 129
瀬 沼 広 幸.......................................................... 88
善 住 秀 幸........................................................ 126
染 谷 芳 明.............................................. 106、106
【た】
高 倉 伸 有.......................................................... 63
人名索引
高 野 道 代.......................................................... 88
高 橋 則 人........................................................ 115
田 口 静 江.................................................. 70、95
田 口 辰 樹.......................................................... 76
田 口 太 郎........................................................ 102
竹 内 京 子.................................................. 73、89
武 田 大 輔.................................................. 64、71
武 田 伸 一.......................................................... 67
竹 田 博 文........................................ 85、96、103
竹 中 浩 司................................ 62、62、96、103
伊 達 馨.......................................................... 71
立 野 豊.......................................................... 80
田 所 千 加 枝.......................................................... 52
田 中 重 喜.......................................................... 87
田 中 忠 蔵.............................................. 106、106
田 中 秀 樹.......................................................... 65
田 中 源 重.......................................................... 64
谷 川 聖 明.......................................................... 80
谷 口 剛 志........................................................ 104
谷 直 樹.......................................................... 69
谷 万 喜 子.......................................... 54、81、81
谷 村 裕 充.......................................................... 70
田 村 隆 朗................ 66、66、70、71、76、114
田 村 美 恵........................................................ 111
丹 澤 章 八................................................ 96、129
丹 野 恭 夫.......................................................... 78
近 川 次 男.......................................................... 77
智 原 栄 一........................................................ 111
對 木 麻 里.............................................. 119、120
辻 内 敬 子........................................................ 117
辻 田 純 三.......................................................... 73
鶴 浩 幸.................................................. 67、99
手 塚 清 恵................................ 68、79、98、105
寺 沢 宗 典........................................................ 125
寺 田 和 史........................................................ 110
東 家 一 雄.......................................... 64、71、76
徳 岡 功 一........................................................ 108
徳 竹 忠 司.......................................................... 72
所 数 樹........................................................ 113
戸 田 静 男.......................................................... 79
土 肥 康 子.......................................................... 89
土 肥 豊...................... 80、91、93、103、104
戸 村 多 郎.......................................................... 64
豊 島 紫 乃.......................................................... 97
【な】
中 井 久 夫.......................................................... 34
中 島 舞 子.......................................................... 88
中 城 基 雄.......................................................... 95
長 瀬 千 秋.......................................................... 70
中 野 秀 樹.................................................. 72、72
中 村 辰 三.......................................................... 56
中 村 宏 孝...................... 80、91、93、103、104
中 村 弘 典........................................................ 124
中 村 征 史.......................................................... 63
中 村 吉 伸.................................... 123、128、128
中 村 吉 正........................................................ 128
中 山 貞 男........................................................ 114
中 吉 隆 之.......................................................... 93
鍋 田 智 之...................................... 84、109、110
鍋 田 理 恵................................ 54、81、81、102
納 谷 佳 男.......................................................... 97
名 雪 貴 峰.............................................. 107、121
鳴 海 瞳 子.......................................................... 72
西 條 一 止.......................................................... 58
西 浦 公 朗........................................................ 102
西 川 弘 恭........................................................ 115
二 村 隆 一.............................................. 107、121
野 口 栄 太 郎.......................... 46、65、68、69、74
野 尻 誠.......................................................... 72
【は】
橋 本 直 己.............................................. 130、131
花 輪 悦 正........................................................ 107
花 輪 貞 良.......................................................... 94
浜 岡 隆 文........................................................ 109
濱 田 淳.......................................................... 54
濱 野 好 伸.......................................................... 82
早 川 律 子........................................................ 123
原 正 之.......................................................... 85
平 井 清 子.......................................................... 64
平 井 丈 博........................................................ 108
廣 正 基.............................................. 105、127
福 岡 明........................................................ 116
福 田 文 彦.............................. 88、94、105、115
福 永 雅 喜.............................................. 106、106
藤 井 貴 章.......................................................... 94
藤 岡 正 志........................................................ 103
藤 川 治................................................ 93、126
藤 田 麻 里........................................................ 113
勝 村 俊 仁........................................................ 109
藤 本 蓮 風.......................................................... 78
古 海 博 子.............................................. 107、121
古 田 高 征.......................................................... 73
古 屋 い ず み........................................................ 106
古 屋 英 治.............................................. 107、121
外 間 久 生........................................................ 112
星 伴 路................ 68、79、98、98、99、105
人名索引
堀
堀
本
本
内
内
城
間
久
秀
久
生
子.......................................................... 78
訓.......................................................... 77
司.................................................. 97、97
夫.......................................................... 63
【ま】
益 田 修.............................................. 111、117
増 田 研 一.......................................................... 71
益 本 え り か.......................................................... 88
町 田 雅 秀........................................................ 113
松 枝 宏 幸.......................................................... 74
松 尾 貴 子.................................................. 71、76
松 岡 裕 一.................................................. 64、76
松 下 貴 則........................................................ 112
松 本 克 彦.......................................... 39、70、95
松
本
勅................................................ 42、125
松 山 陽 太 郎........................................................ 109
真 鍋 昭 生.............................................. 117、119
水 嶋 丈 雄.......................................................... 88
水 沼 国 男.............................................. 125、127
水 野 浩 一...................................... 84、108、127
水 野 高 広.............................................. 124、124
光 藤 英 彦.............................................. 117、119
美 根 大 介.......................................... 86、86、91
三 宅 恭 徳........................................................ 106
宮 本 俊 和................................ 54、72、72、110
宮 本 純 也.............................................. 109、110
宮 山 忠 彦........................................................ 120
武 藤 康 子........................................................ 112
宗 像 恒 次........................................................ 110
村 居 眞 琴........................................................ 107
村
上
裕.......................................................... 67
校 條 由 紀........................................................ 123
森 川 和 宥................................................ 64、100
森
敏.......................................................... 41
森 俊 豪.......................................................... 62
森 珠 美.......................................................... 88
森 英 俊.......................................................... 74
森 勇 樹.............................................. 106、106
森
豊.......................................................... 83
【や】
八 亀 真 由 美.............................................. 107、121
矢 嶌 裕 義.......................................................... 63
安 野 富 美 子.............................................. 119、120
安 原 正 博........................................................ 115
八 瀬 善 郎.................................. 63、81、81、90
矢 田 康 文........................ 68、79、98、98、105
矢 野 忠.......................... 40、51、79、88、94
98、105、105、112
113、115、127
矢 野 繁 樹.......................................................... 72
山 岡 傳 一 郎................................................ 43、111
山 上 彰 子........................................................ 102
山 岸 達 生.......................................................... 80
山 口 智...................... 80、91、93、103、104
山 下 清 治........................................................ 119
山 下 仁.......................................................... 54
山 田 篤........................................................ 124
山 田 和 正.......................................................... 87
山 田 伸 之...................................... 54、105、127
山 村 義 治................................................ 94、115
山 本 一 彦.......................................... 86、86、91
山 本 晃 久........................................................ 129
湯 谷 達................................ 62、62、96、103
横 田 成 美.......................................................... 72
吉 川 正 子.......................................................... 82
吉 田 章.............................................. 119、120
吉 田 集 而.......................................................... 36
吉
田
実........................................................ 107
吉 本 寛 司........................................................ 115
米 山 榮........................ 62、62、85、96、103
【わ】
若 山 育 郎.......................... 40、63、81、81、90
和 久 田 哲 司.......................................................... 78
和 田 恒 彦........................................................ 110
渡 辺 康 晴.............................................. 106、106
渡 辺 尚 彦........................................................ 113
渡 辺 泱.......................................... 79、98、98
渡 邉 勝 之........................................................ 129
渡 辺 す ず こ.......................................................... 69
和 辻 直.............................................. 114、129
大会役員名簿
学
会
会
長
:
丹澤章八
(社)全日本鍼灸学会会長
大
会
会
長
:
松本克彦
兵庫県立東洋医学研究所所長
大 会 副 会 長
:
矢野 忠
(社)全日本鍼灸学会学術部長
〃
:
佐伯正史
(社)兵庫県鍼灸師会会長
実 行 委 員 長
:
萩原暉章
(社)全日本鍼灸学会兵庫地方会会長
実 行 副 委 員 長
:
原田滋泉
(社)兵庫県鍼灸師会前会長
〃
:
小松秀明
(社)全日本鍼灸学会兵庫地方会副会長
〃
:
恵美公二郎
(社)兵庫県鍼灸師会副会長
幹
:
渡 仲三
(社)全日本鍼灸学会幹事
〃
事
:
森秀太郎
(社)全日本鍼灸学会幹事
運 営 委 員 長
:
田代豊治
(社)兵庫県鍼灸師会副会長
運 営 副 委 員 長
:
玉田宗久
(社)兵庫県鍼灸師会前副会長
〃
:
岸田有弘
(社)兵庫県鍼灸師会副会長
〃
:
福岡邦子
(社)全日本鍼灸学会兵庫地方会副会長
プロ グラ ム委 員長
:
長瀬千秋
兵庫県立東洋医学研究所副所長
プログラム副委員長
:
伊達啓太郎
(社)全日本鍼灸学会兵庫地方会広報部長
渉 外 委 員 長
:
田中重喜
(社)全日本鍼灸学会兵庫地方会副会長
財 務 委 員 長
:
中川利雄
(社)全日本鍼灸学会兵庫地方会財務部長
事
長
:
曽 炳文
(社)全日本鍼灸学会兵庫地方会副会長
事 務 局 次 長
:
谷村裕充
(社)全日本鍼灸学会兵庫地方会幹事
務
局
編集後記
今大会応募いただいた一般演題139題は、ほとんど全題がフロッピーで抄録原稿を提出してい
ただけた。おかげで発表要旨は勿論、その他すべての情報をデータベース化できたため、各種連
絡や、索引集の作成などに際して威力を発揮し、かなりの時間節約になった。コンピュータが普
及したおかげで、過去の大会の抄録集編集担当の方よりもずいぶんと楽をさせていただいたと思
う。そこで、余裕のできた時間を使って、インターネット上で大会の案内をするといった新しい
試みもできた。この抄録集がお手元に届く頃には、できれば検索機能などを付加したデータファ
イルとしての抄録集をネット上にアップしたいとも考えている。
5年前の1月17日未明、やっとの思いで下敷きになった箪笥の下から這い出して、窓から神戸
の町を一望すると、十数箇所から火の手が上がっており、すべての煙が消えたのは数日を経た後
であった。しかし、すぐに全国から多くのボランティアの方々が駆けつけて下さった。また、そ
の年から始まり今では冬の神戸の一大イベントになっているルミナリエには400万人以上の観光
客に訪ねていただけるようになった。こういった方々が神戸に援助と活力を与えてくださり、こ
うして学術大会を開けるまでに回復した。まだ空き地の目立つところも残る神戸ではあります
が、参加される皆様にはこの機会に、観光地を含めて神戸の街のいろいろなところを観てお帰り
いただければ幸いです。
抄録集編集担当 伊達啓太郎
協賛・協力企業一覧
(○印の付いているものは広告掲載あり)
学校関係
○ 明治鍼灸大学
○ 東京衛生学園専門学校
○ 学校法人了徳寺学園 両国柔整鍼灸専門学校
○ 関西鍼灸短期大学
○ 森ノ宮医療学園専門学校
○ 学校法人ワタナベ学園 埼玉東洋医療専門学校
出版情報関係
○ 医道の日本社
○ たにぐち書店
○ 東亜書店
○ (株)メディカルユーコン
○ オリエント出版
医療機器関係
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セイリン化成(株)
良導絡研究所
関西放射線機器
ユニオン医科工業(株)
スペース・アース・ライフ(株)
タカチホメディカル(株)
バイオメディカルサイエンス(株)
東和ハイテック(株)
(株)サンポー
理研医療電機(株)
スポーツ鍼灸
KK阪村研究所
(株)アサヒ医療器
日進医療器(株)
東京医研(株)
タカラベルモント(株)
(株)エス・エフ・シー
(株)山正
(有)ヤンイー貿易
(有)前田豊吉商店
大宝医科工業(株)
セコム(株)
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(株)日本医広
鈴木医療器(株)
(株)大日工業技研
(株)日本特殊医科
(株)日本メディカルサイエンス
(有)ソフテックメディカル
日本ライトサービス(株)
(株)サンメディカル
ミナト医科学(株)
(株)明健社
(株)メルシー
(株)キネシオ
ホシノ医療器(株)
日本超音波工業(株)
伊藤超短波(株)
(株)カナケン
蓬莱灸管(株)
釜屋もぐさ本舗
青木実意商店
(株)三和商事薬品
(有)吉徳製鍼
(株)OAシステム シャープ
製薬関係
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武田薬品工業株式会社
藤沢薬品工業株式会社
萬有製薬株式会社
三菱東京製薬株式会社
カネボウ薬品株式会社
山之内製薬株式会社
○ 協和発酵工業株式会社
○ 日本新薬株式会社
○ 株式会社ミノファーゲン製薬
化研生薬株式会社
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三共株式会社
エーザイ株式会社
住友製薬株式会社
株式会社ツムラ
日研化学株式会社
中外製薬株式会社
小太郎漢方製薬株式会社
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
太虎精堂製薬株式会社