臭素系難燃剤と鉛はんだの代替に伴う リスク

安全科学研究部門
平成24年度 環境・エネルギー分野シンポジウムシリーズ
「化学物質の最適管理をめざすリスクトレ ドオフ解析手法の開発
「化学物質の最適管理をめざすリスクトレードオフ解析手法の開発」
2012年11月6日(木),きゅりあん(品川区立総合区民会館)小ホール
臭素系難燃剤と鉛はんだの代替に伴う
リスクトレードオフ評価
独立行政法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門
恒見 清孝
1
安全科学研究部門
背景
欧州指令(RoHS指令など)に
よって,有用であるが有害性の
ある金属の使用が制限されてき
た(RoHSは2006年施行).
国内の主要な電気メ カ は,
国内の主要な電気メーカーは,
2004年~2006年にかけて使用
禁止の対応を実施.
元素
主要な用途
製品含有量
鉛
はんだ、塗料、ゴム硬化剤
1,000 ppm以下
水銀
水銀灯、防腐剤、顔料、乾電池
1 000 ppm以下
1,000
六価クロム
顔料、腐食防止、防錆
1,000 ppm以下
カドミウム
接点材料、インキ、着色料
PBB
難燃剤
1 000 ppm以下
1,000
PBDE
難燃剤
1,000 ppm以下
100 ppm以下
ただし,使用禁止に伴う物質代替の効果が不透明で,本研究で明確にする必要.
欧州指令の考え方
たとえ因果関係が科学的に十分立証されていなくても予防的な措置をとるべき(予
防原則;precautionary principle)として,物質自体の有害性を重視し,リサイクル
質
強
や埋立処理で有害化学物質が拡散することを強く懸念
トレードオフの観点からの問題意識
・金属の汚染防止としてのリスク低減効果が限定的かもしれない.
・代替の物質によってはかえってリスクが増大するかもしれない.
代替の物質によ てはかえ てリスクが増大するかもしれない
・代替物質は一般的に高価で,費用対効果として妥当でないかもしれない.
2
安全科学研究部門
プラスチック添加剤と金属類のリスクトレードオフ評価の特徴
現状
対応
欧州RoHS指令による電気電子製品への対 現状を反映した代替シナリオを設定して,
象物質の使用禁止に伴い,日本国内で物 代替前後のリスクトレードオフを定量的に
質代替が進んできた経緯がある.
質代替
進
経緯 あ
評価して,その是非を考察した.
評価
,そ 是非を考察
製品のライフサイクル全体に渡る環境中へ マテリアルフロー解析によって,全ライフサ
の排出がある
の排出がある.
イクルでの排出量を推定した
イクルでの排出量を推定した.
分解しにくい/しない,水溶解度が低いな
どの物性から 最終的には食品経由のヒト
どの物性から,最終的には食品経由のヒト
摂取量が大きいと思われる.
多種の暴露モデルを使用して暴露解析を
実施し ヒト摂取量を推定した
実施し,ヒト摂取量を推定した.
代替物質の有害性に係わる情報がきわめ
代替物質
有害性 係わる情報がきわめ
て少なく,また物質間の比較もできない.
有害性推論ツールを用いて有害性を推定
有害性推論
を用
有害性を推定
し,リスクを同じ指標(質調整生存年数,種
の感受性分布)で評価して比較した.
3
安全科学研究部門
プラスチック添加剤と金属類のリスクトレードオフ評価の流れ
<使用ツール,モデル>
生産
加工
加
最終製品消費
廃棄
室内,一般環境中への排出量
室内 環境中濃度
室内,環境中濃度
魚類蓄積量,食品中濃度
ヒト暴露量
生態影響,
生態リスクトレードオフ
ヒト健康影響,
ヒト健康リスクトレードオフ
排出シナリオ文書(ESD)
iAIR(室内,難燃剤)
ADMER(大気)

SHANEL(河川水)
(河川水)
CBAM(海水)
SIET(難燃剤,食品と流通)
MeTra(金属,食品)
CBAM(魚類)
有害性推論手法(ヒト健康,
有害性推論手法(ヒト健康,
生態)
4
安全科学研究部門
プラスチック添加剤のリスクトレードオフ評価
研究対象:プラスチック難燃剤
電気電子製品(テレビ パソコン等の家電 OA機器の筐体)に使用
電気電子製品(テレビ,パソコン等の家電,OA機器の筐体)に使用
decaBDE(デカブロモジフェニルエーテル)(HIPS樹脂)・・・ブラウン管TV
⇒TBBAエポキシオリゴマー (ABS樹脂)・・・ブラウン管TV、インクジェットプリンター
⇒EBPBP(エチレンビス(ペンタブロモフェニルエーテル))(HIPS樹脂)・・・同上
⇒BDP縮合リン酸エステル(PC/ABSアロイ樹脂)・・・液晶TV、ノートPC,レーザープリンター
40 000
40,000
難燃剤の国内需要量
(化学工業日報等のデ タを引用)
(化学工業日報等のデータを引用)
30,000
25,000
BDP
EBPBP
TBBPA
DecaBDE
20,000
15,000
10,000
5,000
0
1986
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
国内
内需要量(t/年
年)
35,000
5
安全科学研究部門
シナリオ設定
実際の物質代替状況にもとづいた対策シナリオの長期的視点でのリスク比較
①代替ありdecaBDE(ベ スライン)シナリオ
①代替ありdecaBDE(ベースライン)シナリオ
②代替ありBDP(ベースライン)シナリオ
③
③代替なしdecaBDEの架空シナリオ
シナリオ別の需要量経年変化
シナリオの比較方法
decaBDE代替なし
需要量
①
decaBDE
代替あり
③
リスク
代替シナリオ
の優劣の差
②
BDP代替あり
代替あり
(ベースライン)
(ベ
スライン)
①+②
代替なし
③
6
安全科学研究部門
プラスチック添加剤の排出シナリオ文書
これまで排出量推定の難しかった最終製品の使用段階でのプラスチック添加剤の
排出係数を設定した.
きわめて蒸気圧が低く,かつ蒸気圧データの不確実性の高い準揮発性有機物質
きわめ 蒸気 が低く か 蒸気 デ タ
確実性 高 準揮発性有機物質
(SVOC)について,排出係数の新たな推定方法を提示した.
SVOCのために新たに日本国内で開発されたマイクロチャンバー法にて排出速度
の実測を行った.
②企業の加熱減量データから活性化エネル
ギ を用いて排出係数を求める
ギーを用いて排出係数を求める.
③放散速度データの存在する物質を基準と
して,物性(特に分子量と蒸気圧)に応じて
放散速度を求める
放散速度を求める.
1.E‐06
排 出係数(推定値), /hr
①JIS A 1904(マイクロチャンバ
1904(マイクロチャンバー法)による
法)による
放散速度実測結果を使用
TPP
1.E‐08
decaBDE
1.E‐10
蒸気圧/分子量に比例
BDP
蒸気圧×分子量に比例
蒸気圧に比例
③による方法
(TPP放散速度実測値にもとづく
decaBDEとBDPの排出係数推定)
1.E‐12
1 E‐12
1.E‐12
1 E‐10
1.E‐10
1 E‐08
1.E‐08
1 E‐06
1.E‐06
排出係数(実測値), /hr
7
安全科学研究部門
プラスチック添加剤の暴露解析
廃棄量の経年変化
①代替ありdecaBDE
市中ストック量の経年変化
②代替ありBDP
①代替ありdecaBDE
③代替なしdecaBDE
棄量[t/年]
廃棄
25 000
25,000 ③
20,000 ②
15,000 10,000 5,000 ①
300,000
300,000 ③
250,000 200,000 ②
150,000 100,000 ,
50,000 ①
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
2016
2018
2020
0 1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
2016
2018
2020
0 市中ス
ストック量[t/年]
③代替なしdecaBDE
②代替ありBDP
[年]
[年]
シナリオ別の大気および水域への排出量推定結果
(1980~2020年の40年間平均)
① ②代替あり
①,②代替あり
③代替なし
8
安全科学研究部門
海域生物蓄積モデル(AIST
海域生物蓄積モデル
(AIST‐‐CBAM)
(AIST
化学物質運命予測モデル
生態系モデル
懸濁物質吸着態化学物質
植物プランクトン吸着量
溶存態 学物 濃度
溶存態化学物質濃度
デトリタス吸着量
有機懸濁物質濃度
海面
植物プランクトン量
デトリタス量
Phytoplankton
Detritus
摂食取込 k2
呼吸除去 k3
呼吸取込 k1
動物プランクトン量
Zooplankton
排泄除去 k4
摂食取込 k2
呼吸除去 k3
摂食取込 k2
呼吸取込 k1
排泄除去 k4
呼吸取込 k1
呼吸除去 k3
海底
堆積物
排泄除去 k4
生物蓄積モデルによるマ
アナゴ(5歳時の)体内コプ
ラナ-PCB濃度分布
2011年7月に東京湾の千葉
年 月に東京湾 千葉
県沖で捕獲し、年齢区分毎
のシロギス体内の銅の蓄積
濃度(●)とモデルの予測結
果( )
果(—)。
概ね±30%の推定精度
 日本全国の主要内湾で金属等の難分解性物質の生物中濃度を推定可能なモデル
 東京湾のマアナゴとシロギス(有機化学物質と金属)で概ね±30%以内の推定精度
9
安全科学研究部門
地域特異的経口摂取量推定ツール(
地域特異的経口摂取量推定ツ
地域特異的経口摂取量推定ツール(SIET
ル(SIET Ver.0.8)
ル(SIET
Ver.0.8
Ver 0 8)
8)
消費地での農・畜産物経由の有機化学物質の経口摂取量を地域特異的に
推定するツ
ル
推定するツール
京浜地区一般住民が食する
Ver.0.8を2012年1月に公開
ほうれんそう,牛肉中DEHP濃度への寄与
環境媒体間移行モデルのプロセス
地域特異的濃度
大気モデルの市町村別濃度
沈着
温度, 降水量,
濃度補正 等
沈着
濃度補正,
,
家畜飼養頭数
飼料作物収穫量等
植物モデル 家畜モデル
揮発
空隙率,土壌水分
,
希釈, 風化
巻上げ
摂食
市町村別データ
土壌モデル
取り込み
土壌粒子密度,
揮発
飼料作物
有機炭素含有率等
浸食
分解
溶脱
流出
ほうれんそう




牛肉
大気と土壌から植物への取り込み、飼料作物等からの家畜への取り込みをモデル化
大気と土壌から植物への取り込み
飼料作物等からの家畜への取り込みをモデル化
生産地から消費地への農・畜産物の流通をモデル化
消費地住民の経口暴露をモデル化
上記モデルに必要な地域特異的パラメータをデータベース化
10
安全科学研究部門
暴露解析-ヒト暴露量推定
京浜地区住民の総摂取量
*TPP:BDPの不純物 室内寄与分のみ推定
*TPP:BDPの不純物,室内寄与分のみ推定
decaBDE
BDP
TPP
① ②
①+②代替あり,男性,平均
③代替なし,男性,平均
①+②代替あり,女性,平均
③代替なし,女性,平均
0.0E+00
2.0E‐04
4.0E‐04
6.0E‐04
8.0E‐04
1.0E‐03
1.2E‐03
ヒト摂取量(μg/kg/日)
シナリオ別,食品別の摂取割合
①代替あり
decaBDE
②代替あり
BDP
男
性
③代替なし
decaBDE
①代替あり
decaBDE
②代替あり
BDP
女
③代替なし
decaBDE
性
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安全科学研究部門
ヒト健康影響に関わるリスクトレードオフ評価手法
物質代替シナリオにおけるこれらの物質のリスクをQALY(Quality
Adjusted Life Years:質調整生存年数)の尺度で推定する.
有害性推論アルゴリズム
ガウシアンネットワークモデル
(共分散構造分析)
吸
入 毒 性
血液_Ri
肝臓 Ri
肝臓_Ri
腎臓_Ri
_
尿_Ri
脾臓 Ri
脾臓_Ri
体重_Ri
呼吸器官 Ri
呼吸器官_Ri
主要臓器に対する反復投与毒性NOELデータに基づくネットワークモデル
(図中四角=エンドポイント、R:ラット、M:マウス、i:吸入経路、o:経口摂取)
(図中四角=エンドポイント
R:ラット M:マウス i:吸入経路 o:経口摂取)
(楕円:潜在変数、○印:誤差項)
(矢印:因果関係の方向、矢印上の数字:回帰式の係数、ボックス肩の数字:決定係数)
12
安全科学研究部門
代
代替シナリオによる物質ごとのリスクトレードオフ評価
decaBDE,BDPと不純物TPPの影響について,参照物質を基準とした用量反応関係を推定
肝臓影響
腎臓影響
京浜地区住民の摂取量推定平均値から,QALY損失量(日,一人当たり生涯での値)を計算
代替あり(現状の代替状況)
代替なし(架空の状況)
①d
①decaBDE、②BDP、TPP
BDE ②BDP TPP
average case
95% worst case
③decaBDE
average case
肝臓影響
<< 0.001(2.8×10-57)
<< 0.001(2.0×10-53)
<< 0.001(9.5×10-57)
腎臓影響
<< 0.001(1.4×10-140)
<< 0.001(1.0×10-122)
<< 0.001(8.8×10-137)
合計
<< 0.001(2.8×10-57)
<< 0.001(2.0×10-53)
<< 0.001(9.5×10-57)
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安全科学研究部門
生態影響のリスクトレードオフ評価
decaBDEとBDPの感受性分布
– 分布の中央値は0.018(mg/L),0.12
(mg/L)と推定された
– 感受性分布の分散はデータを用いて
作成した91物質の中央値を仮定した
推定されたリスク
相模川水系(本川)における環境中濃
相模
水系 本
お る環境中濃
度分布(decaBDE)と感受性分布
非常に小さい値
①②代替あり
③代替なし
推定されたリスク。縦軸はリスクの大きさ、横軸の数字は1:久慈川水系, 2:那珂川水系,3:利根川水系, 4:荒川
水系, 5:多摩川水系, 6:鶴見川水系, 7:相模川水系 (いずれも本川)
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安全科学研究部門
金属のリスクトレードオフ評価の対象
対象製品:電気電子製品,自動車等
用途:はんだ
鉛はんだとその代替
融点
ぬれ 機械 熱疲 コス
性
特性 労
ト
備考
スズ-鉛
Sn‐37%Pb
183℃
適温
良好 良好 やや 安い
不良
従来の鉛はんだ
スズ-銀-銅系
Sn‐3%Ag‐0.5%Cu
220℃
高い
やや 良好 良好 高い
不良
電気・電子業界の標
準的な代替はんだ
①代替なしシナリオ:鉛はんだが継続使用された場合
②代替ありシナリオ:2000年以降に鉛フリーはんだに代替された場合
2000年,2010年,2020
年の3段階で経年的に解析
①代替なしシナリオにおける
はんだ実装量
②代替ありシナリオにおける
はんだ実装量
各年の推定排出量から,
各年の推定排出量から
定常状態のリスク変化分の
評価を各年実施し,各シナ
リオのリスク差の変化推移
を解析する.
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安全科学研究部門
金属類の排出シナリオ文書(ESD)
金属については,排出の実測を求める既存ESDがほとんどである.
廃棄段階における排出量は多く見込まれるが,既存ESDではまったく情報がない.
主要な発生源であるリサイク 時と廃棄物焼却段階に特化したESDを作成
主要な発生源であるリサイクル時と廃棄物焼却段階に特化したESDを作成.
①リサイクル(金属製錬時)
②廃棄物焼却
精錬工程への投入量あたりの排出係数を求めた.
炉からの金属の揮散率と集塵効率を既存デー
デ
各金属の製錬温度における蒸気圧と排出係数の関 タから整理した.
蒸気圧との相関関係から,各金属のパラメー
係から,各金属の排出係数を推定した.
タを推定した
タを推定した.
金属製錬における蒸気圧と排出係数の関係
一般焼却場における金属の揮散率と蒸気圧の関係
‐2 100
Hg
90
As
‐4 y = 0.2397x ‐ 5.0149
R² = 0.5289
Ag
Cd
Zn
Pb
Cu
Volatrazation ratio [%]
log em
mission factor
‐3 ‐5 Sb
80
70
Cd
y = 3.7625x + 52.551
R² = 0.565
60
As
Sn
50
40
30
Z
Zn
Pb
Co Cr
Mn
V
20
Ba
10
Ni
Cu
0
‐6 ‐3 ‐2 ‐1 0 1 2 3 log vapor pressure [mmHg]
4 5 6 7 -15
-10
-5
0
5
10
log vapor pressure [mmHg]
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安全科学研究部門
暴露解析-マテリアルフロー解析および排出量推定結果
2010年代替なしPbのマテリアルフロー解析
結果例(単位:t-Pb/年)
シナリオ別Pbの生産量と廃棄量の経年変化
10000
代替あり鉛生産量
代替なし鉛生産量
8000
代替あり鉛廃棄量
7000
代替なし鉛廃棄量
生産
加工
931
5699
廃棄
1278
中間製品輸出
はんだ製造
Pb製錬
5000
使用
544
地金輸入
6000
中古品・屑輸出
909
2177
リサイクル
最終製品輸出入
はんだ実装
125
3909
4000
Cu製錬
破砕
最終製品使用
3000
1038
一廃・産廃焼却
2366
その他製錬
2000
一廃・産廃埋立
1000
20
00
20
02
20
04
20
06
20
08
20
10
20
12
20
14
20
16
20
18
20
20
20
22
20
24
20
26
20
28
20
30
0
シナリオ別環境中への排出量(金属別)
大 気
シナリオ別環境中への排出量(ライフサイクル別)
8
水 域
大 気
7 水 域
5 Cu
4 Ag
3 Sn
2 Pb
6
リサイクル
3
はんだ実装
はんだ製造
2
製錬
1
0 0
2000年
代替なし
2010年
代替なし
2010年
代替あり
2020年
代替なし
2020年
代替あり
焼却
4
1 2000年
代替なし
2010年
代替なし
2010年
代替あり
2020年
代替なし
2020年
代替あり
埋立
5
2000年
代替なし
2010年
代替なし
2010年
代替あり
2020年
代替なし
2020年
代替あり
6 環境中排出量[t‐金属/年]
7
2000年
代替なし
2010年
代替なし
2010年
代替あり
2020年
代替なし
2020年
代替あり
8 環境中排出量[t‐金属/年]
鉛生産
産量・廃棄量(t)
9000
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安全科学研究部門
金属類の環境媒体間移行
金属類の環境
媒体間移行暴露量計算ツール
媒体間移行暴露量計算ツ
暴露量計算ツール
暴露量計算ツ ル
(AIST(AIST
-MeTra
MeTra))
大気沈着量
(AIST-ADMERより)
大気中に排出された重金属が、
農作物(米,葉菜類,根菜類,飼
料作物)および畜産物 移行
料作物)および畜産物に移行し
た場合の、
農作地域内平均濃度およびヒト
農作地域内平均濃度および
ト
暴露量(産業起因による増分)を
推定するツール
大気沈着量分布
5km
メッシュ
Kd
1kmメッシュ
農用地土壌中濃度
(増分)
TF
農作物中濃度
(増分):米・葉菜
類 ・根菜 類)
土地利用メッ シュデータ
:田,その他農用地
TF
飼料作物中濃度
(増分)
TF
Kd:金属の土壌吸着特
性を表す係数
TF:移行係数(金属,農・
金
農
畜産物特異的)
牛肉・牛乳中濃
度(増分)
 地域特異的に農作物への移行量を推定できる
 日本の農作物より得られた移行係数のデータベースを搭載(鉛,錫,銅,銀)
 カドミウムについてはpH等の土性を反映できる
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安全科学研究部門
暴露解析-ヒト暴露量推定
Cu吸入
Ag吸入
Sn吸入
Pb吸入
Cu経口
Ag経口
Sn経口
Pb経口
1.0E-07
8 0E 08
8.0E-08
6.0E-08
4.0E-08
2.0E-08
シナリオごとのヒト暴露量
(関東・男性の平均値)
あ
替
替
代
代
2000年代替なし
2010年代替なし
2020年代替なし
20
20
年
年
20
20
年
10
20
り
な
し
り
あ
替
代
代
年
10
20
00
年
代
替
替
な
し
な
し
0.0E+00
20
暴露量[mg/kg//day]
暴
1.2E-07
経口暴露量の食品群別内訳
(4つの金属の合計)
•
•
葉菜 鉛 寄与
葉菜は鉛の寄与
牛肉はスズの寄与が大
2010年代替あり
2020年代替あり
19
安全科学研究部門
金属類の用量反応関係の推定とスロープファクタ
肝臓影響
腎臓影響
凡例の括弧内は参照物質のNOELを1とした時の各金属のNOELの相対値
金属
ベースライン暴露
量 1) (mg/kg/day)
銅
0.02
肝臓:3.3×10‐13,腎臓:8.0×100
肝臓:1.0×10‐13,腎臓:2.3×100
スズ
0.013
肝臓:2.2×10‐16,腎臓:7.2×10‐10
肝臓:1.1×10‐16,腎臓:8.4×1010
銀
0.00012
肝臓:1.5×10‐25,腎臓:2.9×10‐27
肝臓:1.1×10‐23,腎臓:6.5×10‐22
鉛
0.00072
肝臓:9.7×10‐9,腎臓:1.6×100
肝臓:6.7×10‐8,腎臓:1.5×101
ベースラインの損失QALY
(日)
スロープファクタ 2):1 µg/kg/day暴露量変化
あたりの損失QALY(日)
1)銅:平成21年国民健康・影響調査報告(厚生労働省),スズ:国際化学物質簡潔評価文書、スズおよび無機スズ化合物(国立医薬品食品生成研究所、
2008)、Shimbo et al. 2009,銀:WHO飲料水水質ガイドライン第3版、Ginson84,鉛:詳細リスク評価書「鉛」
2) 暴露量をベースラインから1%増加させて損失QALY増加を調べ、増加分を1 µg/kg/dayあたりに換算した。
20
安全科学研究部門
はんだ代替の有無による損失QALY(日)
経口経路
損失QALY
(日)
鉛(肝)
鉛(腎)
スズ(肝)
スズ(腎)
銀(肝)
銀
銀(腎)
銅(肝)
銅(腎)
2.0E-12
2
0E 12
4.6E-04
4.7E-21
3.6E-14
4.6E-04
< 0.001
0 001
2020年
代替なし 代替あり 代替なし 代替あり
1 8E 12 1.2E-12
1.8E-12
1 2E 12 1.5E-12
1 5E 12 6.2E-13
6 2E 13
4.1E-04 2.7E-04 3.4E-04 1.4E-04
3.5E-21 3.8E-21 3.3E-21 3.8E-21
2.7E-14 2.9E-14 2.5E-14 2.9E-14
2.0E-30
5.6E-30
1.3E-28
3.4E-28
3.7E-21
1.4E-20
8.4E-08
3.1E-07
4.1E-04 2.7E-04 3.4E-04 1.4E-04
< 0.001
0 001
< 0.001
0 001
< 0.001
0 001
< 0.001
0 001
損失QALY
(日)
鉛(肝)
鉛(腎)
スズ(肝)
スズ(腎)
銀(肝)
銀(腎)
銅(肝)
銅(腎)
合計
5.0E-04
4.5E-04
4.5E-04
4.0E-04
3 5E-04
3.5E
04
銅(腎)
3.0E-04
銅(肝)
2.5E-04
銀(腎)
2.0E-04
銀(肝)
1.5E-04
1.5E
04
スズ(腎)
1.0E-04
スズ(肝)
鉛(腎)
5.0E-05
鉛(肝)
0.0E+00
損失QAL
LY(日):代替はん
んだ寄与分
5.0E-04
2010年
2020年
代替なし 代替あり 代替なし 代替あり
5 0E 08
5.0E-08
4 4E 08 3.3E-08
4.4E-08
3 3E 08 3.7E-08
3 7E 08 1.7E-08
1 7E 08
2.3E-06
2.0E-06 1.5E-06 1.7E-06 8.0E-07
3.9E-12
3.3E-12 3.4E-12 2.8E-12 3.3E-12
2.2E-18
1.9E-18 2.0E-18 1.6E-18 1.9E-18
6.3E-21
1.9E-20
6.0E-56
1.8E-55
1.6E-15
5.7E-15
1.9E-18
6.9E-18
2.4E-06<< 2.1E-06 1.6E-06 1.8E-06 8.1E-07
0 001
0.001
<< 0.001
0 001 << 0.001
0 001 << 0.001
0 001 << 0.001
0 001
2000年
4.0E-04
3 5E-04
3.5E
04
銅(腎)
3.0E-04
銅(肝)
2.5E-04
銀(腎)
2.0E-04
銀(肝)
1.5E-04
1.5E
04
スズ(腎)
1.0E-04
スズ(肝)
鉛(腎)
5.0E-05
鉛(肝)
り
:
代
替
あ
し
20
年
20
20
20
年
:
代
替
な
り
代
20
10
年
:
10
年
20
:
代
替
あ
し
替
な
00
年
20
り
:
代
替
あ
し
20
年
20
20
20
年
:
代
替
な
り
あ
代
替
:
10
年
20
10
年
:
20
代
替
な
00
年
し
0.0E+00
20
損失QAL
LY(日):代替はん
んだ寄与分
2010年
2000年
合計
吸入経路
21
安全科学研究部門
関東 方 対象水系 おける
関東地方の対象水系における河川水濃度の推定結果(平均値)
水濃度 推定結果(平均値)
濃度( μg/L)
0.012
久慈川
那珂川
利根川
荒川
多摩川
鶴見川
相模川
Pb
0.01
0.008
濃度( μg/L)
0.014
Sn
0.012
久慈川
利根川
多摩川
相模川
那珂川
荒川
鶴見川
( μg/L)
0.00015
0.0001
0.01
0.008
久慈川
那珂川
利根川
荒川
多摩川
鶴見川
相模川
Ag
0.00005
0.006
0.006
0.004
0
0.004
0 002
0.002
0.002
0
0
2000年
2010年
代替なし
2010年
代替あり
2020年
代替なし
2020年
代替あり
2010年
( μg/L)
0.00002
2000年
2010年
代替なし
2010年
代替あり
2010年代替なしシナリオの鉛の河川水濃度分布
2020年
代替なし
2020年
代替あり
0.000015
久慈川
那珂川
利根川
荒川
多摩川
鶴見川
相模川
2020年
Cu
0.00001
0.000005
0
2010年
久慈川
2020年
•
生態リスク評価には、シナリオ別
に各水系の最大濃度と3次メッシ
ュを抽出した。
•
最大濃度のメッシュはほとんどが
支川の上流端に位置しており、
流量が少ないために濃度が高く
なったことが示唆された。
那珂川
利根川
荒川
多摩川
鶴見川
相模川
東京湾
凡例
[mg/m3]
1.00000E-02
8.33333E-03
6.66667E-03
5 00000E-03
5.00000E
03
3.33334E-03
1.66667E-03
1.00000E-08
22
安全科学研究部門
代
代替シナリオによる生態リスク増加分推定
金属類の生物種の感受性分布の推定
各金属のHC5(5%の種が影響を受ける濃度)(μg/L)
Pb
Sn
Ag
Cu
9.6
4.3
0.2
3.3
利根川最高濃度地点における
生態リスクの変化
・物質代替に伴う
各金属のリスクの
変化は、リスク判
定点(HC5)にお
いて最大で
0.03%程度
0.05
影響を受ける
る種の割合
2000年濃度=HC5濃度と仮定
※ 利根川中流域において10 μg/L程度
のPbが検出されている(環境省 2009)
※ 米国の都市域における河川中の銀濃
度は0.01~0.1μg/L程度(Ratte, 1999)
23
安全科学研究部門
物質代替の費用効果分析
代
リスク低減対策のQALY1年獲得費用比較
効
効果=リスク低減効果:物質代替による日本国内でのQALY1年獲得費用
減効
物
替
年獲得費
費用=物質代替に伴う物質購入費用の増加,新たな設備設置費用の増加
ガソリン中ベンゼン含有率の規制
ガソリン中
ンゼン含有率の規制
シロアリ駆除剤クロルデンの禁止
2.2
0.4
ごみ処理施設でのダイオキシン類恒久対策
1.5
自主管理経過における1,3‐ブタジエン削減
2.2
鉛はんだから鉛フリーはんだへの代替
1100
1.E+49
臭素系難燃剤からリン系難燃剤への代替
1.E‐01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
1.E+03
1.E+04
1.E+05
QALY1年獲得費用(億円/年)
24
安全科学研究部門
プラスチック添加剤と金属類のリスクトレードオフ評価の結論
対象とするシナリオのリスクがきわめて小さく,一般環境経由のリスクの増減
自体は物質代替を根拠づけることはできなかった.
自体は物質代替を根拠づけることはできなかった
現在の日本国内における物質の代替事例は,代替前後ともにリスクが小さく,
代替によって劇的にリスクが低減する事例はほとんどないと推察される.
代替によって劇的にリスクが低減する事例はほとんどないと推察される
欧米では代替物評価(alternative assessment)が実施されており,難燃剤で
はdecaBDE BDPとも使用回避すべき高懸念化学物質とのハザードベースの
はdecaBDE,BDPとも使用回避すべき高懸念化学物質とのハザ
ドベ スの
スクリーニングがされている.しかし,本研究のようにリスクベースのリスクトレー
ドオフ評価まで実施すると,リスク管理対策方法は大きく変わる可能性を示した.
欧州RoHS指令による効果は若干のリスク低減のみで,国内全体としては費
用損失が極めて大きい懸念があることを示した.
ただし,廃棄物処理等の労働環境におけるリスク,廃棄物の海外での不適切
な処理によるリスクなどをさらに検討して,欧州指令の意義を問う必要がある.
25