現代政治論14.cwk (WP)

現代政治論
本講義を受講する上での注意事項
担当教員:安武裕和
1、単位認定について
・基本原則:「期末試験」と「平常点」を下記の計算に基づいて算出した上で、それらを合算
※「出席」自体は点数に影響しない
※「レポート課題」は課さない
・平常点:毎回の講義時に「コメント(質問・感想)用紙」を配布
→これを提出すれば、内容に応じて最大5点(マイナス点もありうる)
・加点要素:講義内容との関連性、発想の独自性、論理的整合性(主張の説得力)
・減点要素:主張の不在、根拠の不在(誤解)、既に説明した内容、不明確な日本語
・試験:「一問一答」形式と「論述」形式を合わせて五問で、各20点(講義レジュメなども持込可)
※参考例として、昨年度前期の期末試験問題を以下に提示しておく
1、以下の説明が、どの国のことを指しているのか答えよ。
「この国は立憲君主制であり、国家元首は世襲制の国王である。また、この国の王は、過去に植民地として支
配していた国々の王位を、現在も兼任している。立法機関である議会は二院制で、上院は世襲貴族と一代貴族
から成る貴族院、下院は国民の投票によって選ばれる衆議院(庶民院)であるが、近年では、実質的に上院の
権限は諮問的役割に留まり、ほぼ全ての決定権は下院が掌握している。行政権の行使者である首相は議会内の
多数派によって指名される議院内閣制であり、議会選挙は小選挙区一回投票制であるため、かつては二大政党
制の典型例と言われていたが、現在は中道政党の台頭もあって、実質的には三つの政党が政権を争う状態と
なっている。また、近年では、北部や西部の少数民族による独自政党の活動も活発であり、この国の伝統的な
政党システム・政治システムは、過渡期を迎えつつあるとも言われている。EU統合の動きに対しては途中か
ら加わることになったが、未だに通貨統合には反対し、ユーロには参加していない」
2、現在のベルギーの政治システムの特色について(上記「1」のような形式で)論述せよ。
3、現在の日本とフランスの政治システムの違いを、三つ以上の観点から論述せよ。
4、以下は、「小選挙区比例代表併用制」に基づいた「仮想州」における「仮想選挙」の結果である。
州内の議員定数は20名で、個人票(小選挙区制)と政党票(比例代表制)で10名ずつ選出する。
比例代表制は「ニーマイヤー方式」で、小選挙区と政党(比例代表)名簿への重複立候補は可能。
各党の候補者名簿および選挙結果は以下の通り。
七六五党
王子党
開拓党
秋葉党
練馬党
750,000
(35.0%)
580,000
(27.1%)
470,000
(22.0%)
200,000
(9.3%)
140,000
(6.5%)
1位
中村繪里子
宮野真守
中村悠一
神田朱美
森久保祥太郎
2位
大塚芳忠
沢城みゆき
遠藤綾
堀江由衣
松本彩乃
3位
子安武人
鈴村健一
中島愛
田村ゆかり
井上麻里奈
4位
平田宏美
谷山紀章
神谷浩史
小野大輔
玄田哲章
5位
たかはし智秋
寺島拓篤
福山潤
能登麻美子
井上和彦
6位
若林直美
諏訪部順一
桑島法子
速水奨
矢尾一樹
7位
赤羽根健治
下野紘
小西克幸
白石涼子
稲田徹
8位
下田麻美
今井由香
小林沙苗
川澄綾子
結城比呂
中村繪里子
釘宮理恵
今井麻美
子安武人
赤羽根健治
鳥海浩輔
若本規夫
なし
堀江由衣
田村ゆかり
松崎しげる
政党票の獲得数
(得票率)
政党票による
比例代表制枠の
候補者の名簿順位
(拘束名簿式)
個人票による
小選挙区での当選者
(重複立候補者も含む)
この条件下で、「政党票」の結果として当選した議員10名の名前を書け。
5、下記の条件に全て合致する政治家を一人挙げ、その人物の所属政党の変遷について詳細に説明せよ。
・2000年以降に、国会議員に当選したことがある。
・三つ以上の政党に所属したことがある(「1996年の民主党」と「1998年の民主党」は別の政党)。
・新進党に所属したことがない。
・最終評価点:期末試験=X(100点満点)、平常点=Y(75点満点)とした上で、
「X+(100-X) Y 100」で算出(ただし、試験に欠席した者は「0点」とする)
※前期の試験結果:60点以上92名、60点未満23名、欠席者5名
※前期の最終評価:合格者 109名(S16名、A44名、B36名、C13名)
不合格 11名(試験受験者6名、欠席者5名)
☆コメント用紙において高得点を出すヒント:「講義内容を踏まえた上での反論」が最も効果的
「講義内容とは異なる角度からの補足」も有効
2、講義形式
・講義進行の目安は以下の通り( 10分程度の誤差は生じうる)
8:50 9:10/10:30 10:50前回の講義で受け取ったコメント用紙への回答(質問主の名前は伏せる)
9:10 10:10/10:50 11:50講義
10:10 10:20/11:50 12:00コメント用紙記入&提出時間(書き終えた者から、順次退出して良い)
・講義は、毎回配布するレジュメに沿った口頭説明が中心(板書&パワーポイントは補足程度に用いる)
→空欄は、各自が講義を聴きながら埋めること
※注意:「空欄を埋めること」は講義を理解する上での必要条件にすぎず、十分条件ではない
=機械的に空欄を埋めるのではなく、話の内容を自分の頭の中で整理しながら聞くことが必要
・講義中、(主に前の方に座っている学生に対して)講師から学生を指名して質問することもある
→主な目的は「眠気防止」と「内容確認」であり、ここで誤った発言をしても、減点にはならない
3、講義内容を理解するために必要なこと
☆講義は常に「前回話した内容を理解していること」を前提に話すので、予習は必要ないが、復習は必須
=最低限、講義開始前に5分程度、軽く読み直す程度でも良い
☆講義中、話が分からなくなった時のために、「過去のレジュメ」は必ず持参
=内容を全て暗記する必要はないが、「どこに何が書いてあったか」を把握しておくことは必要
=最終試験の際に一番重要なのは、この技術
4、授業中の禁止事項
☆本講義では、他の学生の受講を妨害しない範囲に限り、飲食は可とする
→眠気防止のためのコーヒー、BlackBlackガム、ミンティアDryHardなどは、むしろ推奨
★以下のような形で、他の学生・教員に迷惑をかける行為は禁止
→例:私語、携帯着信音、強い臭い、席の過度な占拠、授業妨害、ゴミ放置、器物破損、etc.
※注意を受けても上記の行為を繰り返す場合、退席を命じることもある
(場合によっては、「大幅減点」or「試験資格剥奪」も有り得る)
※学生側から「禁止にして欲しい行為」の要望があれば、上記に追加される可能性もある
5、授業外での禁止事項
☆授業内容についての情報を学生同士で交換するのは推奨
→次学期以降における授業選択の基準として、客観的な情報が流通することは歓迎
※また、学期末の講義アンケートへの積極的な参加も推奨する
★ただし、以下の行為は禁止
・虚偽情報に基づく誹謗中傷の流布(「授業中に暴力を振るう」「犯罪歴がある」など)
・他の教員の定めたルールに対する「安武の授業では許可されていた」などといった形での反発
・「講師に対する贈賄」という疑惑を誘発し得る、金品の贈与などの利益供与と思しき行為
6、教員プロフィール
名前:安武裕和(やすたけひろかず) 所属:名古屋大学大学院法学研究科研究生 学位:博士(法学)
専門:西洋政治史 研究テーマ:スウェーデン議会史 身分:非常勤講師
担当科目:現代政治論 連絡先:[email protected]
現代政治論
第一回『政治とは何か?
社会集団における統一的意思決定
』(2014/04/08)
担当教員:安武裕和
1、現代における「政治(politics)」の位置付け
・「政治」の定義=社会集団における統一的意思決定
→現代においては、主に【 】の存在を前提とした枠組の中で述べられる
※広義には、国家の直接関与しない次元の意思決定も「政治」に含まれる
例:地方政治、学内政治、組合内政治、etc.
・現代における主要な二つの政治の次元:「国内政治(一国政治)」と「国際政治(多国間政治)」
・相違点1:政治アクター(政治的な意思表明の主体となる単位)
・国内政治=【 】(およびそれを主体とした政党、利益団体、NGO、etc.)
・国際政治=【 】(+多国籍企業、国際NGO、etc.)
・相違点2:全ての政治アクターを従わせる統治機構
・国内政治=包括的な統治機構としての【 】・議会などが存在
・国際政治=全世界を統括する統治機構は不在(国際連合≠世界政府)
・相違点3:全ての政治アクターを従わせる【 】
・国内政治=裁判所や警察などによる「法の支配」が実現可能(実現していない国もある)
・国際政治=「国際法」は紳士協定にすぎず、国際司法裁判所やICPOには強制力がない
※ただし、近年はこれらの政治領域の境目も不明確になりつつある 例:超国家機構としての【 】
2、本講義の主題材としての「政治」
・本講義の主題材:各国の「国内政治」に関する比較分析(=比較政治学≠国際政治学)
→日本と類似点の多い【 】諸国における政治システムの多様性を学ぶ
※政治システム(politicalsystem)=政治を機能させる「制度」および「慣習」
・「比較政治」の意義=「他国との比較」を通じて、【 】の常識の相対化
「過去との比較」を通じて、【 】の常識を相対化
☆政治システムは時代に応じて常に変転する(現状のシステムが最良とは限らない)
→今後の政治システム改革に関する視点の育成(多様な選択肢を視野に入れること)=本講義の目的
3、本講義で主に扱う「政治システム」の多様性についての概要(ダイジェスト)
A:権力配分システムの多様性
☆国内政治における三つの権力
・立法権:法を作る権利
・司法権:法に基づいて、物事の正否や争い事を解決する権利
・行政権:様々なサービス(医療、教育、警察、インフラ、etc.)を国民に提供する権利
※国家を代表する人物=国家元首(国王、皇帝、大統領、国家主席、書記長、etc.)
→ただし、権力を持たない国家元首もいる(象徴君主制、象徴大統領制)
・立法権と行政権の権力配分システムの多様性:二元代表制(大統領制)、議院内閣制、etc.
・立法権の担当者としての議会内部の権力配分システムの多様性:二院制、一院制、etc.
・地域的な意味での権力配分システムの多様性:中央集権制、連邦制、etc.
※近年ではこれらに加えて、超国家機構との間での権力分有の問題もある
B:選挙システムの多様性
・選挙権の付与に関する問題
・普通選挙制と制限選挙制:現代は大半の国々が普通選挙制(ただし、その定義は曖昧)
・選挙権制限のパターン:年齢制限、定住条項、納税制限、犯罪条項、国籍条項、etc.
・選挙方式のバリエーション
・個人選出方式:小選挙区制(相対多数決or絶対多数決)、大(中)選挙区制、単記移譲制
・政党選出方式:名簿式比例代表制(非拘束型や併用型の場合は、個人選出の要素も含む)
C:政党(politicalparty)の多様性
・特定の社会集団を支持基盤とした政党:民族政党、宗教政党、地域政党、階級政党、etc.
・特定のイデオロギーに基づく政党:社会主義政党、環境政党、移民排斥政党、etc.
※現代では、過度に特定の支持基盤に依存しない「包括政党」が主流となりつつある
☆それぞれの政治システムには、それぞれの長所と短所がある(各国および各時代の事情に合わせて選択)
→本講義ではそれらを学ぶことで、現状の日本の政治システムを相対化する視点を養うことを目指す
(その上で、講義の終盤では、戦後日本政治史を「政治システムの変遷」という観点から概括する)
本講義のスケジュール
第1回 政治とは何か?
社会集団における統一的意思決定
第2回 国家の意思決定構造
民主主義体制と非民主主義体制
第3回 行政府と立法府の関係
第4回 立法府の構造
二元代表制と議院内閣制
一院制と二院制
第5回 中央と地方の関係
中央集権制と連邦制
第6回 国家主権と国際機構の関係
第7回 選挙方式の基本概念
国家連合と超国家機関
多数代表制と比例代表制
第8回 選挙方式の複合的運用
複数の制度の複合的運用
第9回 現代における政党の役割
社会と政治を繋ぐ存在
第10回 政党の基盤となる社会集団
民族・宗教・地域主義
第11回 政党の基盤となるイデオロギー
左右軸の意義と限界
第12回 戦後日本政党史1
55年体制の成立と動揺
第13回 戦後日本政党史2
細川政権以降の政界再編
第14回 戦後日本政党史3
小泉政権以降の諸政党の動向
第15回 まとめ
本講義を通じて得られた知見の確認
第16回 試験
参考文献
・田口富久治『政治学の基礎知識』(青木書店)
・建林正彦・曽我謙悟・待鳥聡史『比較政治制度論』(有斐閣アルマ)
・加藤秀次郎(編訳)『選挙制度の思想と理論』(芦書房)
・日本政治学会(編)『年報政治学2009-I 民主政治と政治制度』(木鐸社)
・アレンド・レイプハルト(粕谷祐子訳)『民主主義対民主主義』(勁草書房)
・ジョヴァンニ・サルトーリ(岡沢憲芙監訳・工藤裕子訳)『比較政治学』(早稲田大学出版部)
・馬場康雄・平島健二(編)『ヨーロッパ政治ハンドブック』(東京大学出版会)