外国で特許権を取得した後に、当該特許発明が無効

藤本昇特許事務所 久米 哲史◇弁理士
外国で特許権を取得した後に、当該特許発明が無効となり得る事由を見つけてしまいました。
他者と紛争になる前に、当該特許発明の内容を訂正することは可能でしょうか?
1.はじめに
(大阪府 K.M)
再発行出願は、明細書または図面に
なお、欧州特許庁における手続きで
特許出願が審査を通過して登
欠陥があるためにその特許の一部また
は、クレームの減縮を伴わない明細書
録され、晴れて特許権を取得できたと
は全部が実施不能、または無効となり
等の補正は認められていないため、そ
しても、当該特許に係るクレームや明
得る場合に行うことができます。この
のような補正を行いたい場合は、各締
細書等に瑕疵が発見されたり、後から
とき、出願人は通常の特許出願と同様
約国に直接手続きする必要があります。
当該特許発明について新規性や進歩性
に補正でき、原特許の発行から2年以
その場合、各締約国の制度において
を揺るがす先行文献が見つかることも
内であればクレームの拡張も可能です。
あります。
査定系再審査は何人も請求できる制
目的の補正が認められるかどうかを確
認してください。
こうした事態を放置することは、他
度ですが、特許権者が自身の特許ク
者から無効審判が請求されるリスクを
レーム中の権利範囲に対して請求すれ
内包することになるため、権利行使も
ば、自発的に当該特許発明の内容を補
権利化後の特許発明の内容を自発的
難しくなってきます。
正する機会を得ることもできます。査
に訂正(補正)するための制度がない
そこで、日本の特許法では、争いが
定系再審査は、当該クレームの特許性
ことから、当該特許に対して無効宣告
発生する前に問題となり得る記載を自
に影響する特許公報または刊行物を引
請求(日本の無効審判に相当)がされ
発的に訂正する制度として、
「訂正審
用して請求する必要があります。
るまで、訂正できません。無効宣告請
判」
(126条)が設けられています。
このような権利化後の訂正
(補正)
手
求時の訂正もクレームに限られ、請求
3.欧州
続きは、諸外国でも多く採用されてい
欧州特許出願では、権利化後の特許
ますが、その要件や手続きについては
発明について、欧州特許庁審査部に対
各国の制度によってさまざまです。
し、クレームの減縮補正を請求できま
す(EPC105条a、規則92条)
。
2.米国
4.中国
項の削除、併合または技術手段の削除
のみが許されます(専利審査指南第四
部分第三章4.
6.
2)
。
5.韓国
ただし欧州特許庁では、
減縮後、
クレー
日本と同様に訂正審判制度があり
ムの新規性や進歩性についての審査を
(韓国特許法136条)
、これを利用して
ま た は 査 定 系 再 審 査(Ex Parte
行わないため、補正後の特許の有効性
権利化後の特許発明の内容を訂正する
Reexamination)の請求により、権利
が担保されないことに留意しましょう。
ことができます。
化後の特許発明の内容を自発的に補正
欧州特許庁の手続きにおいて補正が
訂正審判では、
クレームの減縮、
誤記
(訂正)することができます(USC251
認められれば、補正の効果はすべての
の訂正または不明瞭な記載の明確化を
締約国に及びます(EPC105条b)
。
目的とする訂正に限り認められます。
再発行出願(Reissue Application)
条、USC302条)
。
66 The lnvention 2014 No.10