CAN Newsletter

カ
ーエレクトロニクスほど道路交通における事故防
止と環境保護を推し進めたものはありません。
アンチロックブレーキや燃料噴射装置の市場は、今や数十
億ユーロを売り上げるまでに成長しています。しかし、こ
ういった電子システムの繁栄も、その土台となる電子制御
装置を効率的かつ安全に、高い信頼性で相互接続できてこ
そなのです。
今から 25 年前の 1969 年 2 月、ボッシュはデトロイト
で行われた SAE 国際会議 (SAE-Paper 860391) で、
ある効果的なネットワークソリューションを発表しまし
た。それが Controller Area Network (CAN) です。研
究発表が終わって、満員の会議室はしばらくの間、完全な
静寂に包まれました。
やがて、「彼らはやった!」という声が聴衆の中から上が
りました。後に CAN が成し遂げるカーエレクトロニクス
大変革の一端が、この早い段階から既に顔を覗かせていた
のです。今日、CAN は組込システムのネットワークのバッ
クボーンとして、全世界でその地位を確立しています。し
かもそれは自動車技術の分野にとどまりません。
開発作業が始まったのは 1983 年の春でした。最初の成
功の鍵は、そこには単なる ECU 間のデータ交換ではなく、
車両制御システム同士を機能的に相互作用させるというビ
ジョンがあったことです。このためには、システムの相互
依存をサポートするための、適切な通信のコンセプトが必
要でした。成功に至るもう 1 つの鍵は、技術開発のプロ
セスと並行して、マーケティング戦略をごく早期から導入
したことです。この結果、自動車と半導体の両業界でさま
ざまな協力関係が結ばれ、パイロットプロジェクトが組ま
れました。
CAN はその堅牢な設計と、とりわけコストの低さの点で
競合技術よりも遥かに優れています。それでも、CAN が
プロトタイプから工業的な大量生産に移行するまでには、
予想よりも多くの時間を要しました。最近では、CAN は
自動車分野だけでなく、幅広い工業製品やコンシューマー
製品にも利用されています。
CAN を実現させた開発技術者として、CAN がこれほど
の成果を上げたことは当然ながら大いなる喜びです。しか
し、我々にとってこのプロジェクトで最も素晴らしかった
のは、開発チーム全体を包む熱気とすばらしい協力関係で
した。さらに、あらゆる協力先から寄せられた多大な貢献
も忘れることはできません。CAN はいつの日か、複雑な
工業プロジェクトをいかに成功させるかの実例となるかも
しれません。