半導体エンジニアのための CV(容量-電圧)測定基礎 キーサイト・テクノロジー合同会社 アプリケーション・エンジニアリング部門 アプリケーションエンジニア 柏木 伸之 Page 1 これからCV測定を始める方へ CV測定は、デバイス評価において幅広く使用されている測定 手法です。 本セミナではCV測定の重要性、基礎、測定テクニックについて ご紹介いたします。 Page 2 目次 • CV測定とは?CV測定から得られるデバイス・パラメータ • 容量測定の基礎 • CV測定の測定テクニック Page 3 容量(静電容量)とは 静電容量(C) = 単位電圧あたりの蓄えられた電荷 誘電率と機械的寸法との関係 電極 W: 幅 C L: 長さ A: 面積 d: 厚さ V ee 0 A d ee 0 W L d e0: 真空の誘電率 e: 比誘電率 A: 面積 電荷と印加電圧との関係 Q CV 誘電体 プラスの電荷 マイナスの電荷 Q: 電荷 V: 印加電圧 Page 4 半導体デバイスの主な構造 MOS FET L 絶縁膜の厚さがゲート・ 基板間容量に影響します 配線間 W ゲート Cgs Cgd d Cgb ゲート絶縁膜 ソース ドレイン 層間絶縁膜 d 基板(サブストレート) ゲート・ソース オーバーラップ Cgb: ゲート・基板間容量 Cgd: ゲート・ドレイン間容量 Cgs: ゲート・ソース間容量 ゲート・ドレイン オーバーラップ オーバーラップの幅がゲート・ ドレイン間容量、ゲート・ソー ス間容量に影響します 層間絶縁膜の厚さが配線 間容量に影響します • 構造に起因する各端子間の容量は製造プロセスに対して重要な情報です • これらの容量(寄生容量)は回路の動作スピードに影響を及ぼします Page 5 CV測定から得られるデバイス・パラメータ例 MOS構造デバイス Cmaxからゲート絶 縁膜の厚さ情報が 得られます 高周波(>1kHz)と低周波(<10Hz)の CVカーブから界面準位密度分布が 得られます N-MOS Cap Ld ゲート絶縁膜 空乏層 Cox Cd p-Si Cmax Cox 低周波CV Vg CoxCd c min Cox Cd 高周波CV Vth Cmax とCminから不純物濃度 プロファイルが得られます Vg CminとCVカーブの外挿から しきい値電圧が得られます MOSキャパシタ(MOS-FET)のCV測定により、製造プロセスやデバイス特性に 関する重要なパラメータを得ることが出来ます Page 6 CV測定から得られるデバイス・パラメータ例 太陽電池(ソーラーセル) Rp Rs N-type C PN接合の接合部 (空乏層) 接合容量 P-type |Z|mI Im|Z| 接合リーク Rs Re|Z| インピーダンスの周波数特 性から動的な振る舞いが見 えてきます Rp 0 + Re|Z| 光電流 残留抵抗 ナイキストプロット 太陽電池の回路モデル と電圧の関係 (Mott-Schottkyプロッ ト)から電荷密度分布が 得られます 1/Cp2 2.E+13 163 162 Cp [nF] 4.E+13 2 -2 1/Cp [F ] 6.E+13 CpとAC電圧振幅の関係 から欠陥密度分布が得ら れます 161 160 159 158 157 0.E+00 -5.0 0 -2.5 0.0 2.5 Voltage [V] Mott-Schottkyプロット 5.0 200 400 600 800 Vpp [mV] AC Level (mVpp) Drive-level Capacitance Profiling (DLCP) Page 7 CV測定から得られるデバイス・パラメータ例 MEMSセンサーの静電容量測定 MEMSセンサーの機械的特性を静電容量 測定から得ることができます 容量 機械的圧力 隔膜 C0 固定電極 電界 0 印加 or 発生電圧 • MEMSセンサーの機械的特性が静電容量測定から得られます。 • 機械的圧力よりも電気的な容量測定の方が構成が簡単になり、高速にテストを行う ことが可能です。 • また周波数特性から応答速度のテストが可能です。 Page 8 目次 • CV測定とは?CV測定から得られるデバイス・パラメータ • 容量測定の基礎 • CV測定の測定テクニック Page 9 容量測定の基礎 HFCV測定 現在最も広く使われている容量測定方法 自動平衡ブリッジ法 信号周波数 ~数MHz 広範囲のインピーダンス測定が可能 リークの大きいデバイスの測定は苦手 4284A E4980A B1500A Page 10 容量測定の基本原理 自動平衡ブリッジ法 自動平衡ブリッジ法 I HCUR HPOT LPOT DUT V V LCUR LPOT HPOT 仮想接地点 LCUR 0V Z V I A I HCUR 各端子の機能を正しく理解することが重要です Page 11 4端子対によるケーブル配線(4端子対法) ~ Hc Hp CMH V DUT Lp CML Lc ~ • 芯線とシールドに逆方向の電 流を流すことにより誘導結合 の発生を抑える。 • シールドにより浮遊容量の 影響を抑える。 • 信号電流ケーブルと電圧測定 ケーブルを分けることにより、 電圧測定誤差を抑える。 A GND Page 12 目次 • CV測定とは?CV測定から得られるデバイス・パラメータ • 容量測定の基礎 • CV測定の測定テクニック Page 13 CV測定における測定誤差要因と低減方法 • 誤差要因その1:適切な測定パラメータを選択していな い • 誤差要因その2:オンウェハー測定特有の誤差 Page 14 測定パラメータの選択方法 状況 MOS-FET ソース ゲート ドレイン 測定パラメータ Rs Rp Cp-Rp Cp-G Rp Cp-D Cp-Q ゲート端子の抵抗 AND Gat e Rs 1 Cp ビア部分の接触抵抗 基板(サブストレート) 接合部の抵抗 基板へのリーク Cp Rp Rs Cs AND ゲート側 Cp Rp 1 Cp Rs Cs-Rs Cs-D Cs-Q Rp Rs Zc>10kΩの時 Cp Zc<10Ωの時 Cs 実デバイスに近い等価回路モデル Page 15 誤差要因その1 適切な回路モデルを選択していない 実際のデバイス 測定パラメータ Cp-Rp Cp Cpm Cp Rp Cs-Rs Cs 測定値 Cp-Rp Rs Cs-Rs Csm Cp 1 CpRp 2 2 適切な回路モデ ルを選択してい ないことにより 生じる誤差項目 2Cs 3 Rs 2 Cpm Cs 1 2Cs 2 Rs 2 Csm Cs 簡単な判断方法: 測定周波数を変化させても 容量値が変化しない場合、 現状の回路モデルで問題あ りません 適切な回路モデルを選択することで 測定誤差を低減できます。 Page 16 誤差要因その2 オンウェハー測定特有の誤差 (1)DUTまでの距離が長い → 寄生インピーダンスの影響 (2)DUTがチャック上にある → ノイズの影響 (1) 測定器 寄生インピーダンス DUT (2) ノイズ Page 17 誤差要因その2 オンウェハー測定特有の誤差 (1)DUTまでの距離が長い → 寄生インピーダンスの影響 (2)DUTがチャック上にある → ノイズの影響 (1) 測定器 寄生インピーダンス DUT (2) ノイズ Page 18 信号経路の寄生成分の影響を低減するためには? 寄生インピーダンスの 影響を抑える。 適切な ケーブル配線 残った分については 補正で取り除く。 オフセット 容量補正 Page 19 ケーブル接続方法と誤差要因 2端子法 Ro Lo Hc Hp 被測定物 V 被測定物 Co Lc Lp A Ro A.接続方法 Lo B.回路 CoとLoが測定に影響 20 ケーブル接続方法と誤差要因 3端子法 Ro Lo Hc Hp 被測定物 V 被測定物 Co Lc Lp A B.回路 A.接続方法 Ro Lo Coを除去 Loの影響は残る 21 ケーブル接続方法と誤差要因 シールデット2端子法 Ro Lo Hc Hp 被測定物 V Lc Co i i 被測定物 Lp A A.接続方法 Ro Lo Coを除去 Loも除去 22 ケーブル接続の実際 ~ Hc CMH Hp V 容量メータ Lp ~ プローバ CML Lc A Tアダプタで 2端子に変換 BNC-Triax アダプタを使用 23 もっとも適切なアダプタは? 1. ストレート 2. コモン・オープン 3. ガード・オープン 24 2. コモン・オープンの場合 ~ Hc CMH Hp V Lp ~ CML Lc A ACガード(外部導体)が どこにもつながらない 25 2. コモン・オープンの場合 ~ Hc CMH Hp V Lp ~ CML Lc A ACガードをつなげばOK 26 3. ガード・オープンの場合 ~ Hc CMH Hp V Co Lp ~ CML Lc A ケーブル容量が除去できない 27 1. ストレートの場合 ~ 先端でガードを繋 げればさらにGood Hc CMH Hp V Co Lp ~ CML Lc A コネクタプレートで ACガードがつながる 3端子法となり Coも除去できる 28 OPEN/SHORT補正 ケーブルのインダクタンス、浮遊容量を取り除く ケーブルの残留分 残留インピーダンス(Zs) Hc Rs 浮遊アドミタンス ( Yo ) Ls Hp Zm Co Go ZDUT 被測定物 Lp Lc 校正面 29 OPEN/SHORT補正 Hc Rs Ls Hp OPEN補正 浮遊容量を除去 Yo Co Go OPEN Lp Lc 常に実行 Hc SHORT補正 ケーブルインダクタ ンスを除去 Rs Ls Hp 短絡(SHORT) Zs Co Go Lp Lc 高周波(>100kHz) 大容量(>1nF)で実行 30 補正さえすればケーブル接続は何でもよい? 補正後ケーブルが動けば誤差が生じます できる限り3端子法、シールデッド2端子法を保つ 31 シールデッド2端子法が必要な場合は? ケーブルインダクタンスを除去する必要があるか ケーブルインダクタンスの大きさ(目安) ケーブル1m ケーブル10cm ケーブル1cm ⇔ ⇔ ⇔ 1uH 100nH 10nH 覚えましょう 32 インピーダンスチャートで考えてみよう 1pF、1MHzの場合 160kΩ 10M Impedance (Ohms) 1M For C: lZl=1/(2pfC) 100K 10K 1K 3端子法で十分 For L: lZl=2pfL 100 10 1 100m 6.3Ω 10 100 1K 10K 100K 1M 10M 100M 1G Frequency (Hz) 33 インピーダンスチャートで考えてみよう 10nF、1MHzの場合 10M Impedance (Ohms) 16Ω1M 100K 10K 3端子法では誤差大 For C: lZl=1/(2pfC) 1K For L: lZl=2pfL 100 10 1 100m 6.3Ω 10 100 1K 10K 100K 1M 10M 100M 1G Frequency (Hz) 34 シールデッド2端子法にすると・・ 10nF、1MHzの場合 10M Impedance (Ohms) 16Ω1M 100K 10K シールデッド2端子ならOK For C: lZl=1/(2pfC) 1K For L: lZl=2pfL 100 10 1 100m 6.3Ω 0.63Ω 10 100 1K 10K 100K 1M 10M 100M 1G Frequency (Hz) 35 周波数を下げてみる 10nF、100kHzの場合 Impedance (Ohms) 10M 160Ω 16Ω1M 100K 10K 周波数を下げると効果大 For C: lZl=1/(2pfC) 1K For L: lZl=2pfL 100 10 1 100m 6.3Ω 0.63Ω 10 100 1K 10K 100K 1M 10M 100M 1G Frequency (Hz) 36 誤差要因その2 オンウェハー測定特有の誤差 (1)DUTまでの距離が長い → 寄生インピーダンスの影響 (2)DUTがチャック上にある → GNDへのリーク, ノイズの影響 (1) 測定器 寄生インピーダンス DUT (2) ノイズ Page 37 チャックの拾うノイズの影響を低減するた めには? CMLをチャックに接続すると、 チャックで拾われたノイズが直接 電流計に入る。このためノイズの 影響を受けやすくなる。 大きなチャックにより ノイズを拾う CMLをゲート側に、 CMHをチャック側に 接続する。 CML CMH ウエハーチャック A A 容量測定器 Page 38 接続を変更した場合の測定例 CMLをチャック側に接続 Low端子をチャック側に接続した場合 High端子をチャック側に接続した場合 CMHをチャック側に接続 6.00E-11 6.00E-11 5.00E-11 5.00E-11 10k Short 10k Short 10k Medium 10k Medium 10k Long 4.00E-11 4.00E-11 10k Long 3.00E-11 100k Long Cap (F) 100k Medium 100k Short 100k Medium 3.00E-11 100k Long 1M Short 2.00E-11 1M Medium 1M Short 2.00E-11 1M Medium 1M Long 1.00E-11 1M Long 1.00E-11 測定値がばたついています 5.5 4.5 3.5 2.5 1.5 0.5 -0.5 -1.5 -2.5 -3.5 -4.5 0.00E+00 -5.5 5.5 4.4 3.3 2.2 0 Vg (V) 1.1 -1.1 -2.2 -3.3 -4.4 0.00E+00 -5.5 Cap (F) 100k Short Vg (V) Page 39 HFCV測定のポイント オンウェハー測定 特有の問題 誤差要因 対処方法 DUT - 測定器が離 残留インダクタンス れている。 寄生容量 延長部分は極力短く。できれ ばシールデット2端子で。 Open補正を行う。 周波数を下げてみる。 DUTがチャック上に チャックノイズ ある。 CMLをGate, CMHをチャックに 接続 適切なモデルを選択する (Cp-Rp, Cs-Rs) Page 40 High-Low CV法による界面準位密度の評価 低周波CV(<1kHz) SMUで測定(QSCV法) 超低周波CV測定 Cmax Cox 高周波CV(>1kHz) LCRメータで測定 CoxCd cmin Cox Cd 蓄積領域 反転領域 Vg 41 LCRメータの低周波CV測定が難しいわけ 10% 1% 低周波の半導体容量測定 • 高インピーダンス • 小信号レベル(数10mV) 電流が非常に小さく 測定が不可能 1% 10% E4980A 測定確度 42 QSCV(Quasi-Static CV)とは SMUによる • SMUからステップ電圧を印可 微小電流測定 Δ𝑉 • 𝑄 = 𝐶𝑉 ↔ 𝐼 = 𝐶 より容量を求める Δ𝑡 i V リーク測定 V C ΔV リーク測定 t Cinteg 低周波の容量測定が可能 43 QSCV 測定の欠点 ACで, 評価したい! • 積分時間の調整が難しい • アベレージングによるばらつき低減が難しい • DCバイアス点を細かくできない • 周波数が厳密に決まらない V リーク測定 ΔV リーク測定 蓄積領域 反転領域 t Cinteg 44 B1500A/B1505A + FG 超低周波CV測定ソリューション 周波数“10mHz~20Hz SMU1 電流測定 Gate Substrate SMU2 電圧測定 FG サイン波印加 V SMU1 FG印加波形 SMU2 電圧測定 SMU1電流測定 t SMU2 FG Wait時間 積分時間 45 B2900Aによる超低周波インピーダンス測定 • • B2900Aシリーズ1台で、IV測定もCV測定もカバー! 周波数1 mHz~1 kHz C-Vプロット Cole-Coleプロット 46 超低周波CV測定結果(SiC MOSキャパシタ) 超低周波CVは周波数依存性が測定可能! 180 160 C [pF] 140 1MHz (LCRメータ) 100kHz (LCRメータ) 10kHz (LCRメータ) 1kHz (LCRメータ) 10Hz (超低周波CV) 1Hz (超低周波CV) QSCV 120 100 80 60 40 20 0 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 Vg [V] デバイス提供: 産業技術総合研究所 先進パワーエレクトロニクス研究センター様 47 容量測定を実現する測定器 E4980A LCRメータ 20Hz to 2MHz, ±40Vdc E4990A インピーダンス・アナライザ 20Hz to 120MHz, ±40Vdc B1500A 半導体パラメータ・アナライザ 1kHz to 5MHz, ±100Vdc B2900A ソース・メジャー・ユニット 1mHz to 1kHz, ±200Vdc Page 48 容量測定器選定のポイント • 周波数分解能 周波数掃引測定による正確な評価のためには、少なくとも2桁の分解能が必要。理 想は3桁 • AC信号レベル 半導体容量測定は通常20~30mVrmsを使用する。小さい信号レベルで正確にAC 信号が出力できること • DCバイアス CV測定に十分なDCバイアス分解能、確度を備えていること • 測定確度 半導体容量はpFオーダの小容量であることが多いため、特に高インピーダンス領域 の測定確度が高いこと • 補正機能 ケーブルの誤差成分を完全に除去するためにはOPEN/SHORT/LOAD補正機能を 備えていることが必要 Page 49 まとめ • 適切なモデルを選択しましょう。 • ケーブル接続と補正に注意してください。 • 超低周波CV測定ソリューションは、LCRメータでは測定 できないエリアを精度よく測定することが可能です。 容量測定は、キーサイトにお任せください Page 50
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