解説資料

Ⅰ授業における取組⑤学習スキルの習得
辞書引きの技能
〔一歩前進のポイント〕
・辞書引きの技能を高めるためには,学校全体での取組が大切です。環境整備や全体
での取組を並行して行わなうことで効果が大きくなります。
大分類
Ⅰ授業における取組
№20
基本項目 ⑤学習スキルの習得
課題
方策
具体例
辞書引きの技能
・語彙が少なく,作文やスピーチで使う言葉が豊かでない。
・分からない言葉や漢字等について辞書(辞典,字典,事典等)で調べるとい
う習慣がない。
・国語科で辞典,字典活用の方法を教え,あらゆる場面で使用させる。
・社会科や理科等でも事典の活用方法を教え,調べ学習などで使わせる。
・第3学年で国語辞典,漢字字典(漢和辞典)の使い方について学ぶ。
・国語の授業では日常的に,辞典や字典を使う。辞典では,言葉の意味を調べ
させ,ノートに転写させる。字典では,漢字練習帳に他の用例を二,三字加
えさせる。
・月に1回辞書引きコンテストを行い,上位入賞者,前回より多く調べられた
児童を表彰する。
手引
語 彙 や 漢字の習得は国語力,言語能力育成の初歩ですが,これらは辞書的な意味や字
形の学習だけでなく,語彙の獲得という重要な役割も果たしています。
〔漢字指導〕
学習指導要領で示される教育漢字1006字は,周知のように字形の系列に沿って
配列されているわけではなく,日常生活に必要な「頻度」を基に設定されています。
ですから ,新しい漢字の習得については ,いきおい教科書に載る文章の配列 ,つまり ,
読解における指導に挙げられた作品における漢字の学習となります。
これは,文章を読み解くための学習ですから,体系的ではなく,経験的,機能的な
学習といえます。そうなると文章を読むという経験として学習するという強みはあり
ますが,同じ部首や構造をもつ漢字などを,整理して理解するという漢字文化自体の
認識はどうしても弱くなります。ですから,教科書では,取り立て指導としていくつ
かの小単元が配置され,そうした弱みを補っています。
さて,そんな中で,日常的に行われている漢字指導では,教科書教材で学ぶ新出漢
字を,漢字練習帳等で繰り返し書いて練習し習得するという方法が主流であろうと思
います。これはこれで大切な学習ですが,高学年になり複雑な構造の漢字の学習が増
えてきたり ,字数自体が増えてきたりすると学習者の意欲が上がらなくなってきます 。
そこで,自ら学ぶ学習スキルとして字典を引く力を高めることによって,漢字の体
系的理解を身に付けさせることをねらいます。
〔語彙指導〕
漢字指導と同様に,新しい言葉の獲得は認識自体を広げたり深めたりすることにつ
ながります。これも現状では,教科書に載る重要語句の配列によって学習していくこ
とになりますが,必ずしも児童に身に付けさせたい言語と一致しているとはいえませ
ん。
つまり,教科書の取り立て指導用の教材で補いつつも,自ら語彙を獲得していく学
習スキルを身に付けさせていく必要があります。知らない言葉に出会ったとき,人は
既知の事柄を頼りに解釈をしようとします。その既知の事柄を増やす取組だけでなく
児童が自ら増やしていける力を付けることを目指します。
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<学習スキル(辞書引き)習得の取組手順>
①年度初めの職員会議で,辞書の引き方に関する指導方法について確認する。
②各学年段階で,次のような達成目標を作成し,全員が到達することを目指す。
<辞書引き能力判断基準>
3年
速さの基準※転写せず,見つけ
使いこなす技術の規準
たページに付箋を貼る。
※
漢字字典…
国語辞典…
5個/1分
4語/1分
・対象漢字や言葉を見つけられる。
漢字字典…
国語辞典…
7個/1分
5語/1分
・対象漢字を使った他の熟語や使用例を書
く。
・言葉の意味を書き写し,用例文を書く。
4年
5年
6年
③「辞書引き」コンテストの実施方法について確認する。
「実施要領(例 )」
・自分の字典,辞典が用意できない児童には,学校側で用意する 。(図書館蔵書等)
できれば,毎年の卒業生(保護者)に寄贈してもらえるよう働きかける 。(小学生
用のもの)
・出題は,学年職員で考え予め印刷しておく。
・学級単位で予選 。本選は学年単位 。1学級しかない学校は ,いきなり本選となる 。
④3学年~6学年を対象に,毎月「辞書引きコンテスト」を実施する。
・1分間に何個の漢字や意味の載るページを探し当てることができるかという速さ
を競う部門と意味を調べた上で,用例をたくさん書くという使いこなす力。
・優秀者を表彰するが,苦手な子やスピードが遅い子でも正確さや前回より速くな
ったことなどの観点で表彰できるようにする。
<効果の検証方法>
・質問紙調査結果の比較による。次の児童用質問紙,教員用質問紙に対する回
答の全国データとの比較によって検証する。
Ⅰ⑤学習スキル 辞書引き
<教員用>
31
10
学習方法(適切にノートをとる,テストの間違いを振り返って学習するなど)に関する指導をして
いますか
33
12
児童に対して,本やインターネットなどを使った資料の調べ方が身に付くよう指導していますか
61
33
国語の指導として,漢字・語句など基礎的・基本的な事項を定着させる授業を行いましたか
※年度末にも調査した場合は,取組前後での値を比較して改善したかどうかを
検証する。
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