新生児集中治療における多職種連携

特別講演Ⅰ
新生児集中治療における多職種連携
愛知医科大学病院
山田 恭聖
周産期母子医療センター 新生児集中治療部門
部長
いままでのNICUの医療は、救命を最優先するという名のもとに、多くのシステム
がスタッフに都合の良いものに作られてきました。しかし近年、小さな早産児でも大き
な後遺症なく救命される時代になってきて、今度はこのスタッフ中心のシステムによる
赤ちゃんにとって劣悪な環境が、将来的な情緒の問題や、発達障害につながることが指
摘されてきています。私達が次に目指すべきものは、入院中のお子さん達の生活の質を
いかに向上させるかです。
入院中の生活の質の向上のためのエビデンスは、年々細分化され、高度になっており、
NICUの医師や看護師がその全てに精通することは不可能になっています。以前は
「新生児は特別だから」といって他の職種に排他的であったNICUもありました。し
かし現在では、児の最善のケアプランを話し合う一員として、理学療法士、作業療法士、
臨床工学技士、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士等の多職種の力添えがな
くては、質の高いケアの実現は不可能になっています。「新生児期」の専門である新生
児科医とNICU看護師が横糸として、「新生児期」を領域としない他の専門職は縦糸
として質の高いケアを紡ぎます。
これらの多職種で構成されるチームは、お互いに「対等と尊重の協働」を意識しない
となりません。職種間が対等で、お互いを尊重し、信頼する関係があって初めてチーム
医療といえます。さらに「協働」とは、役割は分担していますが、目標と責任を共有し
ているべきです。役割分担だけを強調しすぎると、「それは私の仕事ではありません」
となり、赤ちゃんを治療対象としてみるだけで、ひとりの人格としてみることになりま
せん。赤ちゃんや家族の笑顔を共通の目標とし、大切なお子さんをお預かりしている責
任を共有するように心がけていく必要があります。家族と児のケアに携わるすべての職
種が、児の最善の利益を真剣に考え、違った角度からけんけんがくがく議論を交わす、
回診やカンファレンスはその象徴と言えます。丁度子供のことを愛してやまない、パパ
とママが子供に対する育児方針で食い違い、夫婦喧嘩をするがごとく。その子を愛し、
その子のことを真剣に考えるがゆえ熱くなってしまうものです。家族を含めたそんな究
極のカンファレンスを目指して、毎日の回診に望んでいます。
「対等と尊重の協働」に裏打ちされた、多職種協働を実践しているNICUになれば、
訪れる家族に暖かな空間を感じていただけることができるはずです。近年多職種協働チ
ームの一員として、ご家族にも中心的にお力添えいただく概念が定着し始めています。
そのご家族が長時間滞在できる雰囲気のNICUは、入院中の赤ちゃんにとっても質の
高い闘病環境になることでしょう。
子供達が柔らかな表情をし、その家族が優しい表情をし、その家庭を訪れる来客もそ
の優しさや暖かさに触れられる。そんな当たり前の家庭に近いNICUを私達は目指し
ています。
The 34th Congress of JPMCPT