原産国による消費者購買意思決定の変化 についての一考察

 原産国による消費者購買意思決定の変化 についての一考察 指導教員名: 水越康介 学修番号: 08159064 氏名: 有山 花菜 枚数: 26枚 原産国による消費者購買意思決定の変化についての一考察 1. はじめに 2. カントリーオブオリジンについて 2.1 カントリーオブオリジンの定義 2.2 カントリーオブオリジン研究の変遷 2.2.1 初期研究 2.2.2 COO 情報処理メカニズム 2.2.3 COO と他の手がかりとの関係性 2.3 COO 効果と意思決定プロセス 2.4 COO 効果の規定要因 2.5 各概念の関係性 3.モデルと仮説の構築 3.1 モデル構築 3.2 仮説の構築 4.調査方法 5.分析 5.1 分析 5.2 仮説検証 5.3 統計検証 6. 結論 付属資料 参考文献 2
1、はじめに 今日、日本には海外ブランドや海外製品がたくさん売られており、私たちが海外製品
を実際に購入することも珍しいことではなく、ごく普通の当たり前のこととなっている。
日本のブランドであっても海外で生産されてから日本に輸入されるものも多く、1つの
製品をとっても本社と製品を組み立てる国が異なるなど原産国がどこなのか1カ国だ
けでは説明できないものも多い。 ある製品が海外で生産されているという情報や、その製品のブランドが海外の企業に よって所有されているという情報は、消費者や流通業者の知覚や態度、購買意図にどの ような影響を及ぼすのか。こうした問題については、カントリー・オブ・オリジン (country of origin:COO) という視点で古くからアメリカにおいて研究が進められて
きている。COOとは一般的に訳すと原産国であるが、分業とグローバル化が進んだ現代 では原産国は複数あるとされている。この領域の研究はアメリカにおいて多く行われて きたが、グローバル化が遅れたこと等の理由から日本ではCOOの領域に関する研究がま
だ少ないという現状がある。 製品の原産国情報が製品評価に影響を及ぼすことは多くの先行研究で明らかにされ
ている。しかしCOO情報のみで製品評価をさせてしまうとCOO効果を過大評価してしまう
可能性があることが明らかにされていることから情報手がかりを複数にする必要があ
る。消費者が用いる手がかりとしてはCOOの他に、重要な属性とされているブランド名
と知覚品質が挙げられる。また、先行研究ではブランド名を明示する際、架空のものに
する場合と実在する名前を使用する場合の2通りがある。本研究では実在するブランド
名を挙げる。それによって製品を連想しやすく、より妥当性のある結果が得られると考
えられるからである。そして、これまでの研究では自動車や電機製品などの関与が高い
製品と比較すると、関与が低い製品を扱った研究はそれほど多くはなされていない。し
たがって、本論では、実際に私たちの日常の身近にある製品においてもCOOが消費者の
製品評価だけではなく購買意図についてもどのような影響を与えているのかを明らか
にしていきたい。
本論は以下のように構成される。第2節では、COOに関する先行研究のレビューを行う。
第3節では、先行研究で挙げるモデルをもとに本論のモデルと仮説を構築する。第4節で
は調査方法に言及し、第5節では分析結果について検討する。最終節では、分析結果か
ら考察を行い、本論の限界について言及する。 3
2、カントリーオブオリジンについて 2.1 カントリーオブオリジンの定義 カントリー・オブ・オリジン(Country of origin : COO)とは、製品の原産地だとイ
メージされる国や地域のことである(マネー用語辞典より)。分業とグローバル化がす
すんだ現代では、COO の初期の研究の生産、デザイン、そして本社機能すべてが同一国
という暗黙の前提が成り立たず、COO におけるオリジンとはどこになるのかという問題
が生じる。 一般的には原産国というと洋服や機械などに“made in ○○”と書いてあるように製
品の最終組み立て国だと考えられることが多い。しかし、恩蔵(1997)によると、ある製
品が、企画設計され消費されるまでには少なくても5つの次元での原産国が存在してい
る。 1つは製品のブランドを所有する会社が本社機能を置いている国である。たとえば
「アップル」や「フェラーリ」の製品が世界中のどこで販売されていようとも「アップ
ル」といえばアメリカ、「フェラーリ」といえばイタリアとイメージできるように、あ
るブランドと強く結びついた国名と考えることが出来る(恩蔵(1997)pp.428-429)。 次にデザイン機能をもつ国である。日本に本社機能をおき、アメリカやヨーロッパな
どの他国でデザインをおこなう会社は少なくない。部品や原材料の調達先としての国で
ある。コーヒーメーカーの多くは、ブラジルやジャマイカなどの海外から原料を輸入し
ている。そして最終製品を完成させる国(最終組み立て国)、最後に消費される国であ
る。一般的に消費者が製品を手に取る際に知ることが出来る原産国はブランドを所有す
る国と最終組み立て国のみである(恩蔵(1997)p.429)。 また今日、日本において海外ブランドの製品が多く売られているにもかかわらず、こ
の研究領域においてブランド国を取り上げている先行研究が少ない。李(2010)によると
企業実務者はブランド国と最終組み立て国はどちらも顧客購買意図に影響を与えると
考えており、その活用によって成果も得られていることが分かっている。しかし、実際
にブランド国を意識的に活用している企業は少ないという現状がある(李(2010) p.95)。 本論では実在する製品のブランドを挙げて消費者の購買意思決定の変化を探っていく
ことから、製品の原産国をブランド国と定義することにする。 2.2 カントリーオブオリジン研究の変遷 初期のC00研究は1960年代までさかのぼって見いだすことが出来る(上原(2008),p20)。
COOが消費者の購買行動の様々な側面に影響を与えることが指摘されて以来、数多くの
4
研究がなされてきている。これまでのCOO研究においてどのような点が課題として認識
されたのか。また、それに対してどのような回答が示されてきたのかをこの章で整理し
ていく。 2.2.1 初期研究 初期のC00研究である1960年代の主な研究目的は、アメリカ国内において輸入品が
増加傾向にあったことに鑑みて、アメリカの消費者がアメリカ製品及びその他の国の製
品に対してどのようなイメージを持っているのか検討し、輸入製品をアメリカ国内市場
においてどのようにポジショニングさせるかを探ることであった(上原(2008)p.20)。そ
の中でも、消費者の製品評価における国家イメージの影響を実証した先駆的な研究は、
李(2008)によると、Schoolerの“Product Bias in the Central American Common Market”
であると言われている。この研究は、中央アメリカ経済統合に関する一般協定が1960
年12月にニカラグアで結ばれたことで、政治的に、公的に各国間には違いはなくなった
が、それぞれの国々には目に見えない差異があるという前提で進められた(奥本
(2006)p.3)。具体的には、200名のグアテマラ学生に4ヶ国(グアテマラ、メキシコ、
エル=サルバドル、コスタリカ)のジュースと織物製品に対するイメージ調査を行い、
生産国によって消費者評価が異なることを実証したと書かれている(李(2008)p.56)。
それ以降、製品国籍情報の働きに関する関心が高まり、原産国効果に関する研究が本格
化し、COOの影響が、多様な製品カテゴリー、製品クラスを対象として検討・検証が重
ねられ、COOは消費者に影響を与える重要な要因として認識されるに至った。 また、日高(2011)は、同時にCOOとその効果との間の関係に関する理解が蓄積され、COO
の効果が消費者の中のステレオタイプに由来するものであることが理解されるように
なったと述べている。つまり、COOが途上国である場合は製品評価へマイナスの効果と
して、日本、アメリカなどの先進国である場合には製品評価へプラスの効果として影響
を及ぼしており、COOに効果の階層が確認できる。かつ、先進国同士、途上国同士の製
品評価でもCOOの影響はそれぞれのCOOごとに異なり、国産製品への製品評価について全
般的な優位傾向があること、こうした階層が、その国の経済発展の程度、文化や政治的
状況などの要因と関連していると考えられることといった点が指摘されたとしている
(日高(2010)pp.9-10)。 またその他の研究としては消費者のパーソナリティをもとに、独断癖が強いほど,保
守的であるほど,階級意識が強いほど、海外製品への先行が低くなることを示した研究
や愛国心が強い人ほどCOO情報を利用して自国製品の品質を高く評価する傾向を示した
論文などがあげられる(上原(2008)p.21)。 5
しかし、多くの初期研究では、どのようにしてCOOが消費者の購買意思決定プロセス
の中で処理され、消費者の製品評価に影響を与えることになるのか、そのメカニズムに
ついては理解が欠如し、COOに対する消費者行動的反応を表面的にとられているにすぎ
ない分析アプローチ方法であった(日高(2010)pp.10-11)。また実験の際被験者にCOO
情報のみを与え製品評価を行なわせていたため、このような実験方法ではCOO効果を過
大評価しすぎてしまうと批判がおこった。そこで被験者に複数の情報手がかりを提供し、
現実味を帯びた実証分析を遂行するようになった(李(2008)pp.56-57)。 情報手がかりの複数化として、ブランド・ネーム、価格、ストアイメージや保証条件
などが挙げられた。情報手がかり間のCOO情報の相対的な影響力については見解が分か
れていたが、複数の手がかりの下でも、COOは消費者の製品評価に有意な影響を及ぼす
ことが実証されている(李(2008)p.57)。 他にも初期研究における問題点として、3つあげられる。第一に、ファインディング
の妥当性についてである。それは過去の研究は、大学生という被験者をつかっており消
費者一般を代表しておらず、非確率的標本に頼ってしまっていたためである。第二に、
異文化の比較は、同一の英語版の質問表に回答した1カ国以上の国々のアメリカにいる
外国人学生がおのおのの国々と同じ方法で必ず行動するという仮定は、弱く、根拠のな
いという点である。またすべての被験者に1つの調査票を使うことは、異文化研究にお
ける類似した研究の1つ以上の検定を行なってから、することである。第三に、いくつ
かの研究は、多くの国々で生産された製品に対する態度の評価に関連している。広範囲
の国、特に消費材を輸出していない国々を利用した妥当性は、回答者が国々あるいはそ
の製品に関してほとんど、あるいはまったく知識を持っていないので疑問の余地が残る
という点である(奥本(2006)p.4)。 一方、消費者ではなく企業や市場に対してはどのような影響を及ぼすかという点に関
しては、食品、デザイン製品、農業製品を手掛けるデンマークの輸出企業が、マーケテ
ィング活動においてどれくらい国家イメージを活用するかを調査がおこなわれ、100社
へのアンケート(回収率58%)と企業マネージャー20名に対する個別インタビューを行
った結果、原産国イメージは輸出の初期段階において目標市場への迅速な市場浸透と差
別化の構築に役立つことがわかった。 また、北米市場の自動車マーケット・データを用
いて、原産国が、短期的なマーケット・シェアとマーケティング効果に及ぼす影響につ
いて調査がおこなわれた結果、ポジティブな原産国情報は、当該ブランドの短期的な販
売実績とマーケット・シェアに正の影響を及ぼし、かつ消費者の価格敏感度を低下させ
ることが示されたと述べている(李(2008)pp.58-59)。 6
2.2.2 COO情報処理メカニズム 初期研究では、COOの効果の存在は確認されていたが、COOの購買意思決定プロセスに
与える影響の仕組みについてはまだよくわかっていなかった。1970年代以降の情報処理
パラダイム台頭とともに、情報処理プロセスとの連関のもとにCOOの効果の仕組みを考
察する研究が重ねられていく。情報処理プロセスとの連関のもとCOOの効果の仕組みを
検討した研究において、COOからその国のイメージが想起され、想起されたイメージが
情報として処理されることで、COOが購買意思決定にバイアスをかける効果が生み出さ
れると指摘され、こうした効果はHalo(ハロー)効果と呼ばれている(日高(2010)p.13)。 日高(2010)によると、多属性態度モデルの枠組みのもと、アメリカに加えて日本の学
生を被験者として、アメリカ、日本、西ドイツで生産された自動車に対する属性に対す
る信念や製品の評価を行わせる実験のなかで、COOに加えて、燃費、操作性、馬力、乗
り心地、信頼性の6つの属性情報を提示し、各属性の信念、および、製品全体に対する
態度にCOOが与える影響を検証した論文があったと述べている(pp.13-14)。その結果と
して、COOの効果が、製品を構成する各属性の信念に対しては確認される一方、製品全
体の態度に対しては確認できないことが示された。つまり、COOは、未知の属性情報を
代理する役割を果たすことで間接的に製品全体の評価に影響を及ぼしているというこ
とが理解されるようになった。消費者は選択代案の製品特性の全てについての情報を有
しているわけではなく、COOから想起されるイメージが、未知の属性情報の代理として
製品品質を評価するのに利用されている。COOが簡便化ツールとして未知の情報の代理
となることで製品を構成する属性の属性重要度にバイアスをかけ、COOの効果が生み出
されると説明されている(日高(2010)p.14)。 しかし、このような説明では、COO効果は製品知識を多くもつ、COOで情報を補完する
必要の少ない消費者には現れないことになってしまう。そこで実験を行い、製品知識の
多い消費者にもCOOの効果が現れるという実験結果を提示した研究者がいた。知識の多
い消費者にも現れるこのようなCOOの効果をサマリー効果として説明している。つまり、
ハロー効果は消費者が記憶の中に貯蔵していない情報を代理することで生み出される
が、サマリー効果は、消費者が既に蓄積している情報のうちCOOに近接して貯蔵されて
いる情報だけが想起されることで生み出される効果として説明している(日高
(2010)pp.14-15)。このように、知識の少ない消費者と知識の多い消費者では、COO効果
の仕組みが異なることが述べられている。 7
2.2.3 COOと他の手がかりとの関係性 消費者は、製品を評価するとき、味やデザインなど、製品を物理的に構成する内的手
がかり(intrinsic cues)だけではなく、価格やブランド、販売小売店舗のイメージ、
COOなど、製品の物理的な構成要素ではないものの、製品の特性を間接的に指示する外
的手がかり(extinsic cues)を参照すると言われている(日高(2010)p.15)。そのため
COOは外的手がかりとして消費者の情報処理に広範な認知的反応を呼び起こすと考える
ことが出来る。
「品質,信頼性,金銭的価値」などの情報を示すだけではなく、
「消費者
の属する背景(愛国や国のアイデンティティの確信)」にも直接影響を与える。
『他にも、
(a)他の属性と結びついて評価に影響を与える製品属性として (b)他の多くの製品特
性を推論するシグナルとして (c)(評価を単純化する)ヒューリスティックな手がか
りとして、(d)製品の比較基準として、COOが製品評価に影響を与える(上原(2008)p.21)』
としている。 日高によると、初期研究はCOO情報のみを与えて実験を行なってしまっていたという
反省により、COO以外の他の属性情報に加えて、たとえば、ブランドや価格、ストアイ
メージなどの要因と共にCOOの効果を検討することで、COO効果を総合的にとらえようと
する流れが生まれたと指摘している。 COOが他の手がかりと併記されることでその効果に違いが生まれる可能性は、COO以外
の手がかりと共に検討するその後の研究の実験結果から明らかにされていき、次はCOO
の効果が他の手がかりと共に提示される場合にも大きな影響力を持つかどうかが疑問
視されはじめた。すなわち、研究が進められる中で、COOが他の手がかりと共に提示さ
れる場合には、他の手がかりとCOOが相互に影響しあうことで1つの手がかりだけを検討
した時とは異なる多様な結果を生み出す可能性が示唆されたため、多くの議論がブラン
ドや価格といった他の手がかりとの関係性のもとに理解を深めようとする方向へと向
けられていったのである(日高(2010)pp.15-16)。 その他の手がかりとの関係性のもとに理解を深めようとする流れの中で、とりわけブ
ランド概念が盛んに取り入れられるようになった。その理由として考えられるのが、ブ
ランドが手がかりとして重要な位置づけにあるということ以外に、ブランド力が強い製
品はCOO情報に影響を受けにくい一方で、知覚品質と製品の全体評価を行なう場合には
ブランドよりもCOO情報が強く影響するが、購買意図を判断する場合にはブランドの方
が影響力は強まるなどブランドとCOOの間に密接な関わりがあるからである。また今日
ではブランド名をつけていない商品が皆無に等しい点、ならびにブランド発祥の地と実
際の生産国との整合性の問題を含んでいることから、ブランドとCOOが関連付けて研究
されている(上原(2008)pp.23-24)。 8
ここで具体例として、日高(2010)によるCOOの効果をブランドとの関係性のもとに検
討した研究を取り上げていく。 最初の議論として他の手がかり(ブランド・価格など)とCOO効果はどちらの方が大き
な影響をあたえるのか、という議論がなされている。日高(2010)によると、Ettenson
は、実験よりCOOの効果はブランドや価格が与える影響に比べて相対的に小さい可能性
を示したのに対し、COOの方が他の手がかりに比べて相対的に大きな影響を及ぼしてい
る可能性を指摘する結果も提示した議論としては、Han and Terpstraを挙げて説明して
いる。Han and Terpstraは、日高によれば、第1に、他の手がかりと比較してCOOが消費
者に与える影響は小さいのではないかとする見解に対し、COOは複数の手がかりととも
に検討した場合でも消費者に大きな影響を及ぼす重要な手がかりであることを指摘し、
その効果の仕組みをより詳細に検討していく重要性を強調したとされている。第2に、
このような結果を踏まえて、COOがブランドに与える影響について議論されている。す
なわち、ここでの結果は、ブランドの生産国が海外生産されたものである場合、とりわ
けCOOが製品知覚に与える影響が強くなることが示されるため、ブランドが海外に生産
拠点を移転する場合、特に新興国に移転する場合には、移転することで知覚品質が受け
る影響を鑑みて慎重に判断される必要があることが指摘されたのであると述べている
(日高(2010)p.18)。 その後の研究においても、COOが消費者に与える影響が他の複数の手がかりと共に検
討した場合においても強力なものであることは次第に明らかになり、そのような認識を
踏まえたうえで、COOと他の手がかりが相互にどのような影響を及ぼしあうのかという
点について議論が重ねられていく流れとなった。 そして、複数の手がかりを盛り込むことによって、COOの効果の仕組みをより総合的
に理解することを可能にし、COOの情報処理プロセスに与える影響を他の手がかりとの
連関のもとに明らかにするという研究の枠組みが基本的な分析フレームワークとして
位置づけられるようになったことがわかる。 2.3 COO効果と意思決定プロセス 消費者の意思決定プロセスとは「欲求認識→情報探索→購買前代替案評価→購買→消
費→購買後代替案評価→処分」とされる。その意思決定プロセスにおいて情報探索の深
さや広さの程度(情報探索の性質)は、消費者の関与度や問題解決のタイプ(広範囲的問
題解決、限定的問題解決、ルーチン的問題解決)といった条件や知覚リスクの程度によ
っても作用される(上原(2008) p.22)。 9
COOが消費者の購買意思決定プロセスのどの場面に影響を及ぼすのかという点に関し
ては、COOの仕組みとともに議論が重ねられてきた。そこで指摘される項目として、製
品評価、製品品質の知覚に潜むリスクの知覚や、購買意図などについて検討が重ねられ、
研究されてきた。いずれの研究においても、COOが与える影響の程度が、製品評価、各
属性に対する信念、購買意欲の順に小さくなっていくことが示されるという点で統一し
た結果が得られている(日高(2010)pp.22-23)。つまり、COOが購買意思決定プロセスの
どの変数に影響を及ぼすかという点については、COOは、製品評価だけではなくリスク
の知覚や購買意図など、意思決定プロセスの様々なプロセスに影響を及ぼすことが明ら
かにされてきたこと、また、COOが消費者に与える影響は、購買意欲などの行動段階と
比べ、各属性に対する信念、あるいは製品評価といった知覚や評価の段階で、より強い
影響を与えることが明らかにされてきたことが読み取れる。 2.4 COO効果の規定要因 COOの効果の規定要因についてもこれまで議論がなされてきた。COOの効果の 規定要因として最も言及されてきたものが、消費者知識と関与であると述べられている
(日高(2010)p.23)。 まず、消費者知識については、2.2.2章で述べたように知識が少ない消費者と知識が
多い消費者ではCOOが生み出す効果のプロセスに違いがあると主張されているが、双方
の消費者に影響を与える要因となっていることは疑う余地がない。 次に、消費者の関与については、李(2008)は、製品への知覚リスクや関与度が高い時
に消費者はより慎重な購買意思決定を行い、CO効果がより強まることを実証的に示した
という1つの見解しか述べていなかったが、日高(2010)では2つの異なる見解が存在し
ていると述べている。その2つの見解について詳しくみていく。 (日高(2010)pp.24-26)まず、関与がCOOの情報処理プロセスに与える影響については、
とりわけ、ペティとカチオッポによって提示されたモデルである「精緻化見込みモデル」
の枠組みを敷衍して理解する見解が存在するとしている。 すなわち、情報処理の動機が高い場合、消費者は精緻化して購買意思決定を行うため、 様々な情報を探索する。それゆえ、こうした中心的態度変容のルートを辿る場合、消費
者の情報処理は広範な情報に依拠したものとなり、各属性を入念に検討することになる
ため、COOの影響度は相対的にそれほど高いものにはならないと理解される。もう一方、
情報処理の動機が低い場合には、消費者は周辺的手がかりを用いて簡便化して購買意思
決定を行うとされる。それゆえに、周辺的態度変容のルートを辿る場合、周辺的手がか
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りとしてのCOOの役割が強調されることになり、結果としてCOOの効果が高くなるものと
考えられる。 このような見解に従うとすると、COOが消費者に与える影響の大きさは、簡便化した
情報処理を行う関与度の低い消費者において顕著に現れることが指摘されるとしてい
る。すなわち、関与度が高い消費者の場合には、関与度が高いことによって属性を丹念
に評価する努力が投入されるため、属性に依存した製品評価行われ、結果としてCOOに
依存した情報処理の割合が小さくなることが示される。他方、関与度が低い消費者の場
合には、関与度が低いことによって属性を評価する努力量は下がり、COOに対する依存
度が高まることが示される。従って、精緻化見込みモデルが示唆するように、関与度が
低い方がCOOの影響度が高まるという見解を示していると述べている。 次に、関与度が高い方がCOOの影響度が高まるという見解を示す研究も数多く存在す
る。すなわち、ある製品に対して関与度の高い消費者は、その製品を評価し選択する前
に、関連する情報をより広範に探索する。ある特定の情報だけでなく広範な情報に依拠
することは、COOが購買意思決定に介入する可能性をむしろ確保することになると主張
する。あるいはCOOが存在することで情報処理への動機が高められることも考えられる。 例をあげて説明すると、ある製品を店頭で手にした時、その製品のCOOがイメージの
良くないCOOだとわかった途端に他の属性についても精緻に検討し始めるといった行動
というのは、関与によって主導されてCOOを含むさまざまな情報の処理過程が規定され
るのではなく、COOが提示されることによって関与が高められることを表していること
となる。 こうした、COOが提示されることで消費者の関与が影響を受けるのだとする見解は、
関与が購買意思決定プロセスに先立って固定値として観測できるものではなく、購買意
思決定のプロセスを通じて変動する状況依存的な変数である可能性を指摘した研究に
依拠、あるいは、同意するものとして位置づけられている。 このような見解に従えば、COOの効果は、関与度が高い場合のほうがむしろ顕著にな
るものということがわかる。 以上のように、関与については、関与が主導してその後の情報処理過程が規定される
という想定のもと、精緻化見込みモデルを敷衍して周辺的な情報処理が行われる関与度
が低い消費者に顕著にCOOの効果が現れるとする見解が存在する一方で、関与をマーケ
ティング・コミュニケーションの中で規定される変数とみなし、COOが提示されること
で関与度が高められることでその後の情報処理過程が影響を受けるとする見解の双方
が併存し、統一した見解を見ていない状態にあることが読み取れた。 2.5 各概念の関係性 11
COOの規定要素である各概念における関係性を考えてみる。朴(2006)は日・中・韓の
消費者に、同一「ブランド」に対する異質の「ステレオタイプ」が存在するのかどうか
の調査を、実際に実在する薄型テレビのブランドを調査対象とすることでブランドにお
けるCOOの方向性の掲示も含めおこなった。 朴(2006)が構築した仮説モデルは以下の図である。 製造業の
イメージ
認知度
製品評価
購買意図
エスノセント
相 手 国 に 対
する反感
リズム
この調査より、以下のことが明らかにされた。 第一に、
「認知度」は「知覚品質」に、
「知覚品質」は「製品意図」に影響しているこ
とがわかった。第二に、
「製造業のイメージ」は過去の研究の通り、
「知覚品質」と「購
買意図」に対して自国より発達している国を対象にした際に影響を与えることが判明し
た。第三に、
「エスノセントリズム(自国製品と比べて消費者は外国製品にもっている否
定的な感情)」は自国ブランドを対象にした調査では「知覚品質」と「購買意図」に対
してプラスに影響した。一方、他国ブランドを対象とした調査ではマイナスに影響した。
第四に、日本と韓国、中国で良く議論されている「相手国に対する反感(元小泉首相の
靖国神社参拝と領土問題)」という問題のブランドに対する影響は、
「反日感情」が韓国
と中国の消費者においては「知覚品質」と「購買意図」に直接的な影響を及ばしていな
いことが明らかにされている。他方で、日本人を対象とした調査では「韓国ブランド」
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に対する「知覚品質」と「購買意図」にマイナスの影響が生じる結果となった(朴
(2006)pp.49-52)。 3、モデルと仮説の構築 3.1 モデル構築 今までの先行研究において明らかにされたことから、COO が消費者の購買意思決定プ
ロセスに影響を本当に与えているのか一番基本的なところを実験により確かめてみる。
何がどのように影響を及ぼしているのが整理するために先行研究を参考とし、モデルを
構築する。朴(2006)のモデルにおける「エスノセントリズム」「相手国に対する反感」
は本稿の意向と合致しないため構成概念として使用しないこととする。「製造業のイメ
ージ」という項目は、本研究では製造業という広い範囲ではなく各国の水という限定し
た範囲においてのみ考えることから「原産国イメージ」と構成概念名を変更とする。ま
た、2.3 の先行研究により「知覚品質」よりも「製品評価」の方が COO が消費者購買意
思決定プロセスにおいてより高い影響力を与えることから「知覚品質」ではなく「購買
意図」にと変更する。よって以下のようなモデルとなる。 原産国
(+)
イメージ
(+)
製品評価
(+)
購買意図
3.2 仮説の構築 先行研究により、COO 効果は消費者の関与度、製品の耐久財・消費材などに関係なく
消費者の製品選択に影響を与えてきたことや、COO は、製品評価だけではなくリスクの
知覚や購買意図など、意思決定プロセスの様々なプロセスに影響を及ぼすことが明らか
にされてきた。そのため、原産国イメージが消費者にもたらす効能が、製品評価および
購買意図両方を高めるのではないかと考えた。 H1 : 原産国イメージが高いほど、購買意図も高くなる H2 : 製品評価が高いほど、購買意図も高くなる 13
COOによって想起される情報は、製品を判断するための手がかりとして消費者に利用
される。COOによって想起される情報が変化すれば、消費者の製品に対する評価を下し、
購買しようとする意図を形成するための手がかりが変わるため、消費者の購買意思決定
は影響を受けると考えられる。また、これまでの先行研究が指摘するように、良いイメ
ージを持つCOOの方が良くないイメージを持つCOOに比べて、手がかりとして利用される
イメージの違いから、製品評価や購買意図をより高めると考えられる。次のような仮説
が導出される。 H3 : 良いイメージのCOOは、良くないイメージのCOOに比べて製品評価や購買意図 を高める効果を持つ。 4. 調査方法 調査にはコンビニ、スーバーや自動販売機など、どこでも誰でも身近に購入すること
があると考えられる消費財であるミネラルウォーターを用いることにした。質問項目は
日高(2011)を参考に作成した。日本のミネラルウォーター市場でトップシェアを誇るサ
ントリーの主力製品である天然水と、世界各国で最も有名なミネラルウォーターの1つ
であるダノンのエビアンを採用した。アンケートは、Web 上で行い東京都内に通う大学
生を中心に SNS 上で呼びかけ回答を募集した。有効回答数は 131
(うち男性 34,女性 97)
であった。 5.分析 5.1 分析 質問項目を購買意図、製品評価、原産国イメージにわけ、分析を行なう。 アンケートは5点尺度で行なったため、1つの質問項目の中で一番評価が高い選択肢
を5、一番評価が低い選択肢を1として、購買意図、製品評価、原産国イメージについ
て各項目それぞれ平均、標準偏差を算出した。縦軸の合計とは各質問項目の回答数それ
ぞれに5〜1の値を掛け計算した後の回答数の合計の値である。 結果は以下の通りとなった。 14
サントリー天然水 購買意図 平均 標準偏差 店頭で見つけたら、ぜひこの商品を買いたいと思う 2.63 1.28 他の商品ではなく、この商品を買いたいと思う 2.41 1.22 うと思いますか。 1.69 1.04 この商品をお気に入りの商品にすると思いますか。 2.19 1.22 合計 8.92 4.77 この商品を買うために,店頭ですすんでこの商品を見つけよ
エビアン 購買意図 平均 標準偏差 店頭で見つけたら、ぜひこの商品を買いたいと思う 2.49 1.30 他の商品ではなく、この商品を買いたいと思う 2.38 1.24 1.95 1.19 この商品をお気に入りの商品にすると思いますか。 2.27 1.27 合計 9.08 5.00 この商品を買うために,店頭ですすんでこの商品を見つけよう
と思いますか。 サントリー天然水 製品評価 気に入った 満足のいく商品 魅力的だ 印象が良い 合計 平均 3.52 3.64 3.26 3.87 14.29 標準偏差 0.79 0.79 0.88 0.77 3.23 エビアン 製品評価 気に入った 満足のいく商品 魅力的だ 印象が良い 合計 平均 3.21 3.27 3.20 3.56 13.24 標準偏差 1.00 1.00 0.96 0.87 3.83 日本産ミネラルウォーターについての原産国イメージ 品質 知名度 合計 平均 4.37 3.28 7.66 標準偏差 0.86 2.06 1.20 15
フランス産ミネラルウォーターについての原産国イメージ 品質 知名度 合計 平均 3.50 3.76 7.26 標準偏差 0.83 1.02 1.86 5.2 仮説検証 H1 : 原産国イメージが高いほど、購買意図も高くなる H2 : 製品評価が高いほど、購買意図も高くなる という2つの仮説を検証するために原産国イメージ、製品評価についてt検定をおこな
った。 サントリー天然水 原産国 低(57) 原産国 高(74) 購買意図 7.58 t 値 9.97 -3.47 エビアン 原産国 低(71) 原産国 高(60) t 値 購買意図 8.03 10.32 -3.02 サントリー天然水 購買意図 製品評価 低(74) 製品評価 高(57) t 値 7.09 11.32 -6.83 エビアン 購買意図 製品評価 低(75) 製品評価 高(56) t 値 6.84 12.07 -8.16 上のt検定の結果、どちらも高いグループのほうが低いグループよりも購買意図が高い
ということが示されたためにH1、H2はともに支持されることがわかる。 さらに詳しく購買意図との関係を検証するために、サントリー天然水とエビアンそれ
ぞれについて回帰分析をおこなった。購買意図を従属変数とし、性別,製品評価,原産
国イメージ,を説明変数とする回帰分析を行なった結果は以下の表のとおりである。 16
サントリー天然水 係数 標準誤差 t P 値 切片 -4.53 1.71 -2.65 0.01 性別 -0.60 0.64 -0.94 0.35 製品評価 0.94 0.11 8.33 1.13952E-13 原産国イメージ 0.03 0.18 0.17 0.86 エビアン 係数 標準誤差 t P 値 切片 -2.91 1.47 -1.98 0.05 性別 -0.66 0.63 -1.05 0.30 0.99 0.09 10.54 4.6634E-19 -0.14 0.19 -0.71 製品評価 原産国イメージ 0.48 モデルのはまりの良さをしめす自由度修正済決定係数はサントリー天然水0.43,エビ
アン0.51であった。 まず、サントリー天然水とエビアン間での大きな結果の違いはみうけられなかった。
結果から、P−値が0.05以下であったのは製品評価のみであり、その他の性別,原産国イ
メージは0.05以上であったため、性別と原産国イメージの係数は誤差の確率が高く総計
的に結果が支持されないということが表された。 よって、「原産国イメージが高いほど、購買意図も高くなる」という仮説1は支持さ
れない。「製品評価が高いほど、購買意図も高くなる」という仮説2は支持される。 なぜ原産国イメージは購買意図にほぼ影響力がないという結果になったのだろうか。
それは、サントリー天然水は1991年の約20年前,エビアンはサントリー天然水よりも昔
の1987年の25年前から販売を開始している(サントリー、カルピス公式HPより)。そのた
めアンケート結果で回答者の認知度がサントリー天然水とエビアンともにほぼ100%で
あったことからもわかるように認知度がとても高く、回答者が製品についての知識をも
っているため原産国というイメージで評価するのではなく、製品自体で購入するかの判
断を下しているからなのではないかと考えられる。 この考えを裏付けるために、下記のアメリカの消費者行動研究者ヘンリー・アサエル
(Henry Assael)が提唱した購買行動類型にあてはめて考える。 17
図1 購買行動類型 青木(1989)によると購買行動類型とは、製品のタイプによって消費者の購買行動に違
いがあるとし、製品を4カテゴリーに分類したものである。「関与水準」(消費者の製品
へのこだわりの度合い)と「ブランド間の知覚差異」(消費者がブランドの違いを認知
しているかどうか)という2つの軸を使用し、それぞれの高低により4カテゴリーに製品
を分けている。 「複雑な購買行動型」では、消費者の購買プロセスは「認知」⇒「評価」⇒「行動」
となる。関与水準が高く、ブランド間の知覚差が大きい場合、消費者の購買行動は複雑
なものとなり集中的・包括的な情報処理がなされるものと考えられるのである。たとえ
ば自動車やパソコンなどの製品がこのタイプに該当する。 「バラエティ・シーキング型」での消費者の購買プロセスは、「認知」⇒「行動」⇒
「評価」となる。関与水準が低く、ブランド間知覚差が大きい製品の場合、消費者は別
のブランドへスイッチしやすくなる。このスイッチは過去に使用した銘柄に対する不満
足の結果というよりは、むしろ飽きないは新奇性欲求に基づくスイッチングである。た
とえば菓子類や飲料等の比較的低価格な製品がこのタイプに該当し、今回の対象である
ミネラルウォーターもここに属すると言える。 「不協和低減型」では、消費者の購買プロセスは「行動」⇒「認知」⇒「評価」とな
る。関与水準が高くてもブランド間の知覚差異が分かりにくい製品、この場合消費者は
事前に多くの情報収集を行なうが差異がないと考え購買自体は手早くすまそうとする
が、情報処理能力は主として購買後に生じる認知的不協和の解消に向けられることとな
る。たとえば家具や白物家電がこのタイプに該当するといわれている。 そして「習慣購買型」では購買行動プロセスが「行動」のみである。関与水準が低く、
ブランド間の知覚差異も小さい場合、消費者は「いつも買っている」、「最初に目につ
いた」、「ブランド・ネームを知っている」等の理由や「どれもこれも似たりよったり
したし、いずれにしてもたいした問題ではない」という心理的状況で購買し、消費者は
能動的な情報処理をほとんど行なわず、店内においても必要最低限の情報処理しか行な
18
っていない。塩、トイレットペーパー、ティッシュペーパーなどがこのタイプに該当す
る(青木(1989)pp.62-65)。 上記したように、今回研究対象となったミネラルウォーター全体としては「バラエテ
ィ・シーキング型」に属する。しかしサントリー天然水とエビアンではブランド間の知
覚差異は見られないため、今回のケースは「習慣購買型」に当てはまる。このことから
も認知度が高いブランド同士では、消費者の購買行動プロセスが「行動」のみであるた
め、実際に購入する時の衝動的な判断で選択されていると推測できる。つまり、どのミ
ネラルウォーターがどこの原産地かという認知をわざわざ行うことなく、ぱっと思いつ
いたその場のイメージで購買まで至る。ゆえに原産地イメージが購買意図に与える影響
力が低くなったのではないかと考えられる。 5.3 統計検証 H3 : 良いイメージのCOOは、良くないイメージのCOOに比べて製品評価や購買意図 を高める効果を持つ。 を検証するため、すでに5.3のt検定の結果(購買意図平均=原産国高>原産国低)より購
買意図を高める効果を持つことが支持されている。そのため、製品評価についても支持
されるのか検証するために、t検定をおこなった。 サントリー天然水 原産国 低(57)
製品評価
13.03
原産国 高(74)
t値
15.2
-4.81
エビアン 原産国 低(71)
製品評価
11.89
原産国 高(60)
14.95
t値
-5.98
上の検定の結果、製品評価についても高める効果を持つことが支持されることがわか
る。よって、「良いイメージのCOOは、良くないイメージのCOOに比べて製品評価や購買
意図を高める効果を持つ。」という仮説3は支持される。 6、結論 グローバル化が進む近年では、さまざまな製品分野において海外ブランドが輸入され、
日本国内で販売されている。さらに、海外ブランドのライセンスを受けたメーカーが国
内で生産・販売することも多くなっている。本研究ではカントリー・オブ・オリジンの
研究領域の中で原産国としてブランドを所有する国を挙げた。そしてCOO研究の初期か
19
ら現在までの主な流れやCOO効果との他の要素との関連などを先行研究としてとりあげ、
朴(2006)のモデルをもとに本研究に則したモデルを構築し仮説をたてた。仮説を検証す
るため、Webで都内の大学生を中心にアンケート調査を実施した。原産国イメージと製
品評価が購買意図に与える影響について消費者行動論の観点から分析をおこなった。分
析の結果、原産国イメージは、購買意図に対してほとんど影響力をもたないが、製品評
価は購買意図に対して強い影響力をもっていることが明らかになった。しかし、良いイ
メージのCOOは、良くないイメージのCOOに比べて製品評価や購買意図を高める効果を持
つという仮説が支持されたことから、原産国イメージは購買意図にまったく影響力をも
っていないとは言い切れない。ゆえにもし企業が、認知度が同じくらい高い製品が他社
でも売られているときに自社製品の購買意図とあげたいならば、供給する側の情報の質
を違ったかたちで発信し、差別化をはかり消費者に店頭でパッと手にもってもらえるよ
うに印象付けをする必要があると考えられる。 また本論では、いくつかの限界が存在する。第一に、今回アンケートの対象とした製
品が2つと少なく、またアンケートの回答数も131と多いとは言えない数であったこ
と、外国製品として選んだ製品が日本で販売開始されてから時間が経過し原産国イメー
ジが喚起されにくいものであったことなどにより、アンケート結果が原産国イメージに
おいて統計的に支持されない結果となってしまった。そのため、アンケート回答数を増
やし、認知度に差がある製品を対象としたアンケート内容にする必要があるだろう。第
二に、調査対象が都内の大学生と限定的な点である。本研究では対象とする製品として
ミネラルウォーターを用いたため購買層としては大学生ももちろん含まれるが、消費者
としては一部であり十分でない。調査対象者を広げる必要があるといえよう。これらの
点に留意したうえでさらなる調査が行われることが課題であると考えられる。 20
付属資料 原産国情報と消費者の購買行動に関するアンケート 現在、私は原産国情報による消費者購買行動に関する研究を進めております。その調査
のため以下のアンケートを作成しました。回答結果はコンピュータで統計的に処理され、
学術研究以外の目的でデータが使用されることはありません。大変お手数ではあります
が、ご協力の程、よろしくお願いいたします。
また、ここでいう原産国とはブランド
の本社がある国としています。 問1、 あなたは普段どのくらいの頻度でミネラルウォーターを飲みますか。飲む回
数について教えてください。 1、週5〜7回 2、週3〜4回 3、週1〜2 回 4、月 2〜3回 5、月1回未満 6、ミネラルウォーターは飲まない 問2、知っているものすべてを選択して下さい 1、 サントリーの天然水 2、 ダノンのエビアン 問3、サントリーの南アルプスの天然水についてお答えください。店頭で見つけたら、
ぜひこの商品を買いたいと思う。 1、そう思う 2、どちらかといえばそう思う 3、どちらでもない 4、どちらかといえばそう思わない 21
5、そう思わない 問4、他の商品ではなく、この商品を買いたいと思う。 1、 そう思う 2、 どちらかといえばそう思う 3、 どちらでもない 4、 どちらかといえばそう思わない 5、 そう思わない 問5、この商品を買うために、店頭ですすんでこの商品を見つけようとすると思います
か。 1、そう思う 2、どちらかといえばそう思う 3、どちらでもない 4、どちらかといえばそう思わない 5、そう思わない 問6、この商品をお気に入りの商品にすると思いますか。 1、 そう思う 2、 どちらかといえばそう思う 3、 どちらでもない 4、 どちらかといえばそう思わない 5、 そう思わない 問7、 サントリーの天然水の印象を教えてください。 1、 気に入った 2、 どちらかといえば気に入った 3、 どちらでもない 4、 どちらかといえば気に入らない 5、 気に入らない 問8、サントリーの天然水の印象を教えてください。 1、満足のいく商品だ 22
2、どちらかといえば満足のいく商品だ 3、どちらでもない 4、どちらかといえば満足のできなそうな商品だ 5、満足できなそうな商品だ 問9、 サントリーの天然水の印象を教えてください。 1、 魅力的だ 2、 どちらかといえば魅力的だ 3、 どちらでもない 4、 どちらかといえば魅力的ではない 5、 魅力的ではない 問10、サントリーの天然水の印象を教えてください 1、 印象が良い 2、 どちらかといえば印象が良い 3、 どちらでもない 4、 どちらかといえば印象が悪い 5、 印象が悪い 問11、一般的に言って、日本産のミネラルウォーターの品質は 1、良いと思うどちらかといえば 2、良いと思う 3、どちらでもない 4、どちらかといえば悪いと思う 5、悪いと思う 問12、一般的に言って、日本産のミネラルウォーターの知名度は 1、高いと思う 2、どちらかといえば高いと思う 3、どちらでもない 4、どちらかといえば低いと思う 5、低いと思う 23
問13、ダノン社のエビアンについてお答えください。店頭で見つけたら、ぜひこの商
品を買いたいと思う。 1、そう思う 2、どちらかといえばそう思う 3、どちらでもない 4、どちらかといえばそう思わない 5、そう思わない 問14、他の商品ではなく、この商品を買いたいと思う。 1、そう思う 2、どちらかといえばそう思う 3、どちらでもない 4、どちらかといえばそう思わない 5、そう思わない 問15、この商品を買うために、店頭ですすんでこの商品を見つけようとすると思いま
すか。 1、そう思う 2、どちらかといえばそう思う 3、どちらでもない 4、どちらかといえばそう思わない 5、そう思わない 問16、この商品をお気に入りの商品にすると思いますか。 1、そう思う 2、どちらかといえばそう思う 3、どちらでもない 4、どちらかといえばそう思わない 5、そう思わない 問17、ダノン社のエビアンの印象を教えてください。 1、気に入った 2、どちらかといえば気に入った 24
3、どちらでもない 4、どちらかといえば気に入らない 5、気に入らない 問18、ダノン社のエビアンの印象を教えてください。 1、満足のいく商品だ 2、どちらかといえば満足のいく商品だ 3、どちらでもない 4、どちらかといえば満足のできなそうな商品だ 5、満足できなそうな商品だ 問19、ダノン社のエビアンの印象を教えてください。 1、魅力的だ 2、どちらかといえば魅力的だ 3、どちらでもない 4、どちらかといえば魅力的ではない 5、魅力的ではない 問20、ダノン社のエビアンの印象を教えてください 1、印象が良い 2、どちらかといえば印象が良い 3、どちらでもない 4、どちらかといえば印象が悪い 5、印象が悪い 問21、一般的に言って、フランス産のミネラルウォーターの品質は 1、良いと思う 2、どちらかといえば良いと思う 3、どちらでもない 4、どちらかといえば悪いと思う 5、悪いと思う 問22、一般的に言って、フランス産のミネラルウォーターの知名度は 25
1、高いと思う 2、どちらかといえば高いと思う 3、どちらでもない 4、どちらかといえば低いと思う 5、低いと思う 性別、年齢別の傾向を調べたいので、性別と年齢も必須項目となっております。よろし
くお願いいたします。 性別 1、男 2、女 年齢 ご協力ありがとうございました。 参考文献 青木幸弘(1989)「店頭研究の展開方向と店舗内購買行動分析」,田島義博・青木幸弘編
著『店頭研究と消費者行動分析:店舗内購買行動分析とその周辺』誠文堂深光社。 上原義子(2008) 「生産国情報に関する予備的研究」『商学研究論集』30,19-29。 恩蔵直人(1997)「カントリー・オブ・オリジン研究の系譜」
『早稲田商学』372,415-446。 朴正洙(2006)「日・韓薄型テレビブランドにおける「カントリー・オブ・オリジン」の
影響-日本・韓国・中国消費者を対象にした比較研究」
『日経広告研究所報』230,48-53。 日高優一郎(2010)「マーケティング・コミュニケーションにおけるCOO
(Country-of-Origin)効果に関する研究―広告Claim情報処理における広告信頼性担保
について―」神戸大学博士論文。 李炅泰(2008)「カントリー・オブ・オリジン・エフェクト研究の現状と課題に関する一
考察」『経営論集』71,55-70。 カ ル ピ ス
HP < http://www.calpis.co.jp/corporate/press/nr0004_3.html >
(2012/1/23 アクセス) サントリーHP <http://www.suntory.co.jp/news/2010/10963.html>(2012/1/23 アク
セス) マネー辞典<
http://m-words.jp/w/E382ABE383B3E38388E383AAE383BCE382AAE38396E382AAE383AAE38
2B8E383B3.html>(2012/1/25 アクセス) 26