人前で話すことが苦手な人たちのための 楽しいワークショップの進め方

人前で話すことが苦手な人たちのための
☆ 楽しいワークショップの進め方 ☆
● 「名 札 作 り」 (ニックネーム+ロゴ マークのネームタグ)
一 度 に 多 くの 人 の 名 前 は 覚 え ら れな いか ら 、 ワ ー クシ ョ ッ プ で は 胸 に 名 札 を つ け て も
らうのが普 通 です。ワークショ ップが始 まる 前 に 、受 付 を済 ませた 人 は、名 札 を自 分
で手 作 りします。名 札 の紙 に、他 の人
から呼 んでも らいたい自 分 の 名 前 を書
きます。どんな名 前 でもかまいません。
通 称 (ニックネーム)、愛 称 、本 名 、役
職 名 な ど人 それぞれです。遊 び 心 で、
小 さな絵 (ロゴマーク、シンボルマーク)
を ひとつ 加 え て も ら うと 、より 楽 し い名 札
ができあがります。それではみなさん、
ようこそ、ワークショ ップへ!
ネームタグ
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なぜワークショップという手法を用いるのか
講演や会議と違って、ワークショップという形態を選んだ方が良いのはどんな場合でしょう
か。人々が集う目的はいろいろあるでしょうが、集まった人たちに一人でも多く主体的に参加
してほしいとき、ワークショップという方法をおすすめします。主体的とは、受身ではなく、
積極的にみずから進んで発言したり行動したりすることで、楽しんでいるときには、私たちは
自然とそういう態度をとっているものです。
これから紹介するのは、ワークショップを企画したり、進行役(ファシリテーター)をつと
める人たちのための覚書です。農村の住民を対象にしたワークショップを成功させるために、
どのようなことに注意しなければならないのか。私なりに考えていることを書きとめてみたい
と思います。
料理にたとえれば、料理をつくる人のためのレシピです。レシピを見ただけでは、どんな料
理なのか本当のところはわかりません。どんな味がするのか、まずは食べてみるのが一番です。
ワークショップは目的や対象によって多様な形態があります。まずはいろいろなワークショッ
プに参加して、実際に体験することをおすすめします。食べて美味しいと感じたら、今度はぜ
ひ自分で料理をつくってみてください。参加して楽しいと感じたら、従来の研修方法とは違っ
たワークショップの手法を取り入れることにチャレンジしてほしいのです。レシピを参考にし
ながらも、材料や好みに応じて、どんどん自分なりのアレンジを加えてかまいません。
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目的によりワークショップの方法はさまざま
ワークショップにかんして私が多くを学んだのは、フィリピン教育演劇協会(PETA)の演
劇的手法からです1)。また地図をつかった集落環境点検のワークショップ2)や、ERIC 国際理
解教育センターなどのワークショップに参加して学んだ点も取り入れています。3)
このように演劇、建築(農村計画)
、教育などいろいろな分野のワークショップを体験して
きましたが、
8年ほど前からは学ぶのと平行しながら、ワークショップのファシリテーター
(進
行役)もつとめてきました。私自身が体験して面白いと感じたアクティビティ(ワークショッ
プのプログラムのなかの一つひとつの活動をさします)を取捨選択し、依頼されたテーマにあ
ったプログラムを組み立てて実践しています。これまでのワークショップの依頼は、仕事の関
係で農業改良普及の関係者からのものがほとんどで、テーマは男女共同参画や地産地消の推進
などといったものでした。参加者は地域のリーダー的な農村住民や農業者を指導する立場の普
及職員で、時間は2、3時間という1回かぎりの限られたものが大半でした。毎年いろいろな
ところから声がかかり、調査研究の仕事の合間をみつけて年間 10 数回ほど引きうけてきまし
た。
そうした経験を積み重ねる中で、こうすればうまくいくという私なりの形が固まってきてい
ます。ここでは、主にワークショップの導入部分のアクティビティと進行方法(ファシリテー
ション)について紹介します。他のいろいろなワークショップでも利用できる共通的な要素が
あると思うからです。
1)片倉和人「楽しくワークショップでむらづくり フィリピン教育演劇協会(PETA)の方法に学ぶ」
『農林
経済』1999 年 11 月 4 日参照。演劇的手法については、数年来 JICA(国際協力機構)の海外集団研修「農
村女性能力向上コース」で一緒に講師役を務めている花崎攝(演劇デザインギルド)からも多くを学ばせ
ていただいています。
2)
(社)農村生活総合研究センター『むらと人とくらし 38 ワークショップによるむらおこし』1991 年 3 月
参照。このワークショップは住民参加の地域計画作りの手法として用いられ、特にデータ収集の段階から
参加型である点に特色があります。なお、最新出版された木下勇『ワークショップ 住民主体のまちづく
りへの方法論』
(学芸出版社、2007 年 1 月)には、道具としてのワークショップの特徴が、理論と実践
の両面から深く考察されていています。初心者向けとはいえませんが、ワークショップを志す人にはぜひ
読んでほしい本です。
3)たとえば、角田尚子・ERIC 国際理解教育センター『環境教育指導者マニュアル 気づきから行動へ 参加
型研修プログラム』1999 年 3 月。
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ワークショップの参加者はどんな人たちか
参加者の知恵や能力を十分に発揮してもらうために、対象者にみあった効果的なワークショ
ップの手法を用いる必要があります。まずは、集まった人たちがどんな人たちなのかを考えて
みましょう。
農村地域の集まりの一般的な傾向として、立場や経歴が異なる多様な地域住民が参加します。
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ワークショップの参加者には、人前で自分の意見を言うことが苦手な人たち、恥ずかしがり屋
の人たちがいます。自分から進んで参加したというより、付き合いで来ている人、受身の態度
で参加している人たちもいます。そもそもワークショップとはどんなものか、知らない人もい
るでしょう。そういう人たちでも楽しんで参加できるプログラムを用意することが重要です。
そのために心がけることは、なるべく多様な表現手段を用意することと、皆がいち早く同じ地
平に立てるようにすることです。
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より多くの人が楽しめるためのくふう
(その1)多様な表現手段を用意する
コミュニケーションの手段は言葉だけではありません。挨拶を例にとれば、言葉以
外にも、お辞儀、握手、抱擁、キスなど、世界の人々のさまざまなしぐさが思い浮か
びます。笑顔やしかめ顔など顔の表情、あるいは身振り手振りなど身体全体の動作を
使うこともできます。また、絵を描く、音を出す、メロディーを口ずさむ。いろいろ
な形で意思や感情を伝えることができます。話すのが苦手な人でも何かしら自分にも
得意な表現方法があるはずです。言葉以外のいろいろな表現方法を取り入れることを
心がけてみてください。
(その2)対等な関係をいち早くつくりだす
見知らぬ人たちが集まる場には決まって緊張感が漂います。また逆に、見知った人
たちどうしだと日常世界の上下関係やしがらみが持ち込まれます。ワークショップで
は皆が、自由にものが言いあえる関係を築くことが第一です。たとえば、気心がしれ
た昔からの友だちのような関係が理想的です。まずは緊張感を解きほぐし、なるべく
対等と感じられるような場の雰囲気を作り出すことを心がけてください。短時間でそ
うした関係をいち早くつくだすには工夫が必要となります。
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そもそもワークショップの特色とは何か
英語の workshop という言葉は、
「作業場」という意味のほかに、人々が自らの経験を語り
あったり、あるいは実践的な練習をとおして自分たちの技能の向上を図る集まりを意味します。
日本では参加体験型の研修会を指して広くワークショップと呼ばれています。ワークショップ
の特徴として、次の3つの要素を兼ね備えていることが重要であると私は考えています。
一つは、考える、見る、聞く、話すといった首から上の部分だけでなく、手足や身体全体を
動かして、五感で体験すること。二つは、ひとりで何かをするのではなく、複数の人たちが共
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同で作業をすること。三つは、ゼロから何かを新しく創り出すこと。成果は、形があるものの
場合もあるし、人間関係の変化といった無形のものでもかまいません。要するに、身体、共同、
創造の3つのキーワードが欠かせない、と思っています。
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ワークショップにのぞむ参加者のこころがまえ
ワークショップの特徴を十分に生かすために、ワークショップにのぞむ態度について、いく
つか参加者にアドバイスするのもよいでしょう。
(その1)自分の内だけに納めてしまわない
「ここに集まった参加者一人ひとりが主役です。気づいたこと、考えたこと、感じ
たこと、発見したことを、自分の内にだけ納めてしまわず、皆に分けてあげてくださ
い。自分だけ納得して終わりにせずに、どんどん皆に伝えてください。
」
(その2)やりたくないときは無理をしない
「身体を動かしたり発言したり、自ら率先してやるように心がけてください。しか
し、どうしてもやりたくないときは、無理をしなくても結構です。また、どうしても
言いたくないときには、言いたくない、と断ってかまいません。ただし、その場に参
加して、他の人がやるのを見たり、他の人が言うのを聞いていてください。
」
(その3)中傷につながる他言はひかえる
「ワークショップの中での発言やでき事はワークショップの中だけに留めてくださ
い。終わってから、
『誰々さんがこんなことを言った』
『あんなことをした』と、他の
人に言わないでほしい。もし他の人に伝えたいなら、自分のこととして、語ってほし
い。
『自分はワークショップでこんなことを学んだ』
『こんなふうに感じた』と。
」
たとえば以上のように、ワークショップを始めるにあたり、心に留めておいてほしい点を、
あらかじめ参加者に伝えておいても良いでしょう。
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自然に参加できるワークショップの流れ
ワークショップのプログラムを組む上で次に心がけたいのは、参加者の意識を徐々に高めて
いく自然な流れをつくりだすことです。人前での発言が苦手な人、受身の状態で参加している
人、何らかのとまどいを感じている人、そんな人たちでも無理なく参加してもらうために、あ
る程度時間をかけて段階的に参加意識を高めていくように、アクティビティを組んでいきます。
いきなり本命のアクティビティにとりくむのではなく、その前に準備のためのアクティビティ
を用意するのです。主要なアクティビティに至るまでに、短時間のワークショップでも、特に
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初めての集まりの場合は必ず、3つないし4つの段階を経るように心がけたいものです。
①ウォームアップの段階、②お互い同士が知り合う段階、③共同作業のチームワークを作る
段階、さらに④自由なアイデアを出し合う段階を加える場合もあります。ワークショップのプ
ログラムの前半部分に、それぞれの段階に適したアクティビティを組み込みます。以下に紹介
する一つひとつのアクティビティは、あくまで一例であり、具体的にどんなアクティビティに
するかは、それぞれ工夫してください。市販のワークショップのアクティビティ集も参考にで
きるし、自分で新しく考え出してもかまいません。
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まずはウォームアップでリラックス
リラックスした場作りづくりのために、第一に取り入れるのはウォームアップの時間です。
参加者の緊張を解きほぐすために、ウォームアップとして、身体を動かす、声を出すアクティ
ビティを手始めに行います。身体を動かしたり、声を出したりすると、自然と心もほぐれるか
らです。たとえば、次のようなアクティビティをワークショップのはじめに取り入れています。
●「身 体 は水 袋 」 (「野 口 体 操 」のエクササイズを参 考 にしている)
① 手 を 上 げ て 下 ろ す 、 ② 身 体 を ゆ す る 、 ③ し ゃ が んで 立 ち 上 が る 。 お 年 寄 り で も で
きる 簡 単 な3つ の動 きですが、次 のようなインストラクションを与 え て イメージを喚 起 す
る と、同 じ動 きでもも っと楽 しくできます。
①手 を上 げて 下 ろ す:
「 手 を 上 げて 、 力 を抜 く 。 する と 、 ど う なり ま すか 。 自
然 と 落 ち ま す ね。 重 力 が ある か らで す 。 重 力 を 感 じ
て くだ さい。」
②身 体 をゆする :
「 人 間 の 身 体 はほ とん どが 水 分 か らな ってい ます。
自 分 の身 体 を 水 の 入 った 皮 の 袋 だ と想 像 して み ま
しょう。ゆっくり身 体 をゆすってみてくだ さい。皮 袋 の
中 の水 がチ ャポ、チ ャポと動 く音 が聞 こえ ますか。」
③しゃがんで立 ち 上 がる :
「もしその皮 袋 に穴 が開 いたらどうなりますか。足 の
裏 に穴 が開 き重 力 により地 球 の中 心 に向 かって
水 が流 れ出 します。どうなるか想 像 して動 いてみま
しょう。徐 々に 皮 袋 はしぼんでいきます。すっかりしぼ
んでしまった ら、今 度 は穴 から 水 が逆 流 して 皮 袋 が
元 通 り に 水 で 一 杯 に な る 様 を想 像 して 動 いて み ま
しょう。」
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●「鏡 ゲーム」
た だ 自 由 に 思 うま まに 手 足 を 動 か すだ けで すが、 二 人 で行 うとけっ こ う難 しいと同 時
に 楽 しくなります。コミュニケ ーションに 伴 う難 しさと楽 しさです。まずは二 人 が組 に なり
互 いに向 き合 います。一 人 は 鏡 の前 に立 つ 人 、も う一 人 は 鏡 に映 る鏡 像 の役 。
鏡 の 前 に 立 つ 人 は ゆっ く りと 自 由 に 手 足 を 動 か す 。そ の 動 き を 鏡 像 が ま ねる 。 少 し
した ら、互 いの役 割 を交 替 します。
●「店 員 と客 」
身 体 がほぐれた ら、今 度 は口 をほぐしま す。 二 人 組 みに なって 、た とえ ば、一 人 は店
員 の 役 、 一 人 はお客 に なって 、 即 興 で 会 話 を する 。何 でも 良 いか ら 声 を 出 して し ゃ
べってみることが狙 いで す。相 手 を褒 め 合 ったり、口 げんかをしてもらったりしても面
白 い。「互 いに相 手 を褒 めてみよう。『 今 日 は一 段 と美 しいですね』などと 、口 から
出 まか せでも いい ので」 ある いは「ふた りが 夫 と妻 の 役 に なって 、夫 婦 喧 嘩 をして みて
く だ さ い 」な ど 、 い ろ い ろ な 場 面 が 想 定 でき ま す 。 会 場 は す ぐに 笑 いと 喧 騒 に 包 ま れ
る に ちがいありません。
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お互いどうし知りあう(わたし→あなた→みんな)
気持ちがリラックスできたら、次に、参加者がお互いどうし知りあう時間を設けます。いわ
ゆる参加者の自己紹介の時間です。そのとき、紹介の時間が一人ひとり均等になるように、ま
た段階をふんで、皆がとまどいなくスムーズに行えるように工夫します。
いきなり全員の前で一人ひとりが自己紹介するのではなく、準備のステップを踏んで他の参
加者と知りあえるようにします。①自己理解(わたし)
、②相互理解(あなた)
、③共通理解(み
んな)の3つのプロセスをふむようにします。①まずは自分自身について思いをめぐらせてみ
る。一人ひとりが自分と対面して自分自身について考える時間を与えます。②次に二人が組に
なり、一人の相手に対して自分のことを紹介する。互いに自分のことを語り合う。全員が見知
らぬ人の集まりでも、この過程によって、少なくとも一人は友だちができたような気持ちにな
れます。③以上の2つの準備段階を経ていれば、全員の前でも、とまどいが少ない状態で自分
のことを語れるのではないでしょうか。
いくつかのアクティビティを紹介しますが、時間と状況を考え、利用できそうなものを参考
にしてください。
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●「他 己 紹 介 +似 顔 絵 」
3 つ の ア クテ ィ ビテ ィ を 組 み 合 わ せ て 自 己 紹 介 を 行 う一 例 。 二 人 一 組 に なり 、 互 い
に紙 と筆 記 具 をもって向 き合 う。まずは相 手 の顔 を見 て、似 顔 絵 を描 く。ただし、
「 絶 対 に 手 元 の紙 を 見 て は い けな い 。 筆 は 紙 か ら 離 さ な い で 一 筆 書 きで 描 く 」 と い
う指 示 を与 える。きっと「福 笑 い」のような可 笑 しな顔 が描 かれるはずです。描 かれ
て いる 人 の 名 前 と 書 いた 人 の名 前 を 記 して お こ う 。次 に 「傾 聴 」と 呼 ぶ 、 相 手 の 話
を 黙 って 聞 く ア ク ティ ビテ ィを 同 じ二 人 で 行 いま す 。 「傾 聴 の 聴 く とい う 字 は 、 よ くみ る
と、耳 と十 (プラス)と目 と心 から成 っています。耳 だけでなく、目 や心 も使 って全 身
で話 を聞 いて くだ さい 。質 問 は一 切 しませ ん。」話 を する 人 は、決 まった 時 間 (た とえ
ば2分 間 )、自 分 のことを自 由 に 語 る 。何 かテーマを決 めて 話 して も らって も よい。時
間 がた った ら 、 話 す 人 と聞 く 人 を 交 替 す る 。 最 後 に 、他 己 紹 介 を する 。 自 己 紹 介
では な く、組 に なっ た 相 手 のこと を皆 に 紹 介 する 。「私 は ○○と 言 います。趣 味
は ・ ・ ・ 」 と い う よ う に 、 対 手 に な った つ も りで 、 一 人 称 で 語 ろ う 。 覚 え て い る こ とだ け し
か 語 れ ないの で、 自 己 紹 介 のと きの よ うに 、いつ までも 話 が終 わ らない 人 はいな いは
ずです。
●「イメージ画 +詩 」
年 齢 や 地 位 に 関 わ り な く 、 対 等 な 立 場 に た って ほ しい と き 、 誰 も が 等 し くも って い る
も ので自 己 紹 介 して も らう。例 え ば「子 供 の頃 の遊 び」という経 験 など。「 まず目 をと
じて 子 供 の頃 の楽 しかった 遊 びを思 いだ して くだ さ い。 瞼 の裏 に イ メージがはっきり映
ったら、目 を開 けてそのイメージを紙 に描 いてみよう。うまく描 けているかどうかは全 く
問 題 ではありません 。」自 分 に つ いて 考 え て も らうとき に 、このよ うに 絵 を描 くア クティビ
ティをよく 取 り入 れ ます 。紙 に 向 か う時 間 は 、一 人 で 自 分 自 身 と 向 き合 う時 間 でも
ある からです。
絵 が描 けた ら、そ の絵 を掲 げなが ら自 己 紹 介 をし ま す。そ の前 に 、語 る 言 葉 を 紙 の
裏 に書 き連 ねてみる。たとえば、次 の ように指 示 しな がら、一 行 ずつ書 いてもらう。
「まず 、その絵 に 題 名 をつ けて みて くだ さい( 一 行 目 ) 。次 に 、その絵 か ら連 想 する 言
葉 、た とえ ば形 容 詞 を 3つ あ げて くだ さ い( 二 行 目 ) 。動 詞 も 3つ あげ て み よ う( 三 行
目 )。そして 「私 」と「題 名 」の2つ の言 葉 を入 れて 、 一 つ の文 章 を 作 って くだ さい(四
行 目 )。自 分 の名 前 を 書 く(五 行 目 )。題 名 をも う 一 度 書 いて くだ さい(六 行 目 )。
できま した か。 今 書 き留 めた のは、 あなた が作 った 六 行 の詩 で す 。詩 を朗 読 する よう
に、心 をこめて 、ゆっくり読 んでくだ さい。」こうすれば 、誰 もが同 じような時 間 で、自
分 のことを語 る ことができます。でも 話 の中 身 は一 人 ひとり、とても 個 性 的 なはずで
す。
「愛着のある地場産品」で、自己紹介。詩を朗読するように。
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●「ライフマップ」
イメージ画 の代 わりに 、絵 地 図 を自 己 紹 介 に 使 うこ とも できます。ライフマッ プ(生 活
地 図 ) を 一 枚 の紙 に 描 いて も ら う 。 一 日 の 行 動 範 囲 の 絵 地 図 を 描 い て も らえ ば 、
ど こ に 住 んで ど んな 仕 事 をし て いる かが わ かり ま す 。 また 、 こ れ まで の 人 生 の 中 で 3 つ
の大 きな出 来 事 を描 いて も らえ ば、その人 の人 生 の 一 端 がうかがえ ます。絵 地 図 を
描 いて いる 間 に 、何 を自 分 は紹 介 した いのか、はっきりして くる でしょう。
●「名 前 +アクション」
時 間 がない 場 合 の 、 名 前 だ けの 自 己 紹 介 の一 例 です 。ウォー ムア ッ プのあとに 、皆
が 輪 に な り 、 一 人 ずつ 順 番 に 一 歩 前 に 出 て 、 自 分 の 名 前 を 言 い 、 皆 がそ の 名 前
を復 唱 する 。そのと き名 前 だ け でなく、 即 興 で 好 きな ポーズ(動 作 )をとって も らう 。そ
のポーズを皆 が真 似 る 。
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グループのチームワークをつくろう
ワークショップでは、少人数のグループに分けて共同作業をすることが一般的です。あまり
人数が多いと、
「お客さん」になって参加しない人ができてしまうからです。新しくグループ
を作ったら、いきなり話し合いや共同作業を開始するのではなく、その前に、同じグループに
なったメンバーどうしいち早く打ち解けることができるようなアクティビティを取り入れる
と効果的です。
●「形 を作 ってください」
身 体 を 使 って 全 員 で 、あ る 形 を作 って も ら う 。た とえ ば 「 花 」 を 「 30 秒 で 作 っ て くだ さ
い 」と 指 示 する 。「 何 をつ くろ うか 」と 相 談 し あいなが ら、 皆 が輪 に なって 手 をつ ない だ
り、手 を上 げた り、あるいはしゃがみこむ人 がいた りして、なんらかの形 ができて くる 。
できあがった ら、花 の名 前 を聞 いて みよう。ひまわり、チ ューリップ、桜 など、いろ いろ な
名 前 が挙 がって くる
にちがいない。次
に、もう少 し複 雑 な
もの、たとえば「農
業 機 械 」 を作 って も
らう。できた 形 をみて
他 のグループの人 に
何 を作 った のか当 て
「花」(ひまわり)
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「農業機械」(自走式ハーベスター)
て も らうのも 面 白 い。トラ クター 、コンバイン 、5条 植 え 田 植 え 機 とか、野 菜 産 地 では
大 根 洗 い 機 、酪 農 地 帯 な ら ベー ルロ ーラ ー 、ある いは 一 輪 車 が でき あがる かも し れ
ない。さらに 複 雑 なも の、たとえば「農 作 業 の一 場 面 」を作 って も らうことも できます。
●「新 聞 紙 のタワー」
新 聞 紙 3枚 だ けを使 って 、なる べく高 いタワー(塔 )をつ くっても らう。一 定 の時 間 (た
とえ ば 10 分 )内 に 、最 も 高 いも のを作 った チ ームが
勝 ち 、 とい う ゲ ーム で ある 。た だ し 、 「 言 葉 は 一 切 使
っ て はい け な い 。 新 聞 紙 以 外 のも の で 使 え る の は 、
今 身 につけているものだけ(腕 時 計 とかメガネなど)
です」と制 約 を与 える。身 振 り手 振 りで意 思 疎 通
を 図 ら な け れ ば な ら な い 。 コ ミ ュ ニ ケ ーシ ョ ン の 他 に も
リーダーシップやアイデアの良 し悪 しな ども問 われま
す。グループごとのチ ームワークを競 うゲームです。
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手を離したら倒れないかな?
自由なアイデアをうながす準備体操
ワークショップの本題に入る前に、頭の準備体操をしておいた方が良い場合があります。あ
まり制約をかけずに、自由な発想をうながすブレーンストーミングというやり方です。ここで
は手軽に使える手法をひとつだけ紹介します。
●「連 関 図 」
「家族経営協定」に関連する
言葉を挙げていく。
「地産地消」から連想する
キーワードを書き連ねる。
ある テーマ (主 題 )に つ いて 、 アイデ アを できる だ け 多 く 出 しあ う手 法 。数 人 で一 枚 の
模 造 紙 を 囲 み 、 あ る キ ー ワ ー ドか ら 連 想 す る 言 葉 を、 で き る だ け 多 く 挙 げ て も ら う 。
誰 か 一 人 が 筆 記 具 を持 ち 、 模 造 紙 に 書 きと めて いく 。 意 味 のつ ながり ではな く、 話
が出 た 順 に 記 すのがポイントです。ブレーンストーミングの方 法 としては、カードを使 う
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方 法 が 一 般 に よ く 知 ら れ て い ま す 。 各 自 そ れぞ れ がま ず カ ー ド に ア イデ ア を 記 入 し 、
次 に 皆 のカードを集 めて 検 討 する 方 法 です。しかし 、 この方 法 だ と、同 じよ うな内 容
のカードの重 複 がある ので、分 類 の作 業 が不 可 欠 で 、カード をまとめる 時 間 が必 要
で す 。 いきな り模 造 紙 に 言 葉 を 書 き 連 ね る 連 関 図 は 、 カー ド式 の 方 法 と比 べて 一
長 一 短 が あ り ま す が 、 ま とめ る 手 間 が は ぶけ る 利 点 が あ り 、 時 間 があ ま り と れな い と
きに おすすめです。
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準備ができたら、いざ本題のアクティビティへ
こうした準備段階を経て、ワークショップの主題となるアクティビティにのぞむと、参加者
どうしが打ち解けた状態にあるので、一気に本題の核心に入っていけます。本題の時間はその
ぶん短くなりますが、短時間でも実りある議論や成果がじゅうぶん期待できます。
もう一度くりかえしますと、①ウォームアップ、②お互いどうし知り合う、③共同作業のチ
ームワークをつくる、さらに④自由なアイデアを出しあう、こうしたステップを踏むことによ
って、ワークショップの進行は格段にスムーズになります。
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ワークショップをふりかえる時間をとっておこう
ワークショップの終わりに、ふりかえりの時間を設けます。そこで、ワークショップに参加
した感想、発見したこと、反省点、今後の抱負など、一人ひとり語ってもらいます。参加者ど
うしの最後の学びあいの機会はとても重要です。時間がないときでも、たとえば、皆に一分間
だけ考える時間を与えてから、順番に一人一言だけでも感想を述べてもらうと、それだけでも
ずいぶんと違います。
ワークショップが始まる前に、一人ひとり、ワークショップに望む「期待」を聞いて、書き
とめておいてもらっておくと、ワークショップが終わった時点で、それぞれが自己評価すると
きの基準にすることができます。
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ファシリテーターの心得(その1)
ワークショップのプログラムをどう組むかという問題の他にも、ファシリテーターが気をつ
けなければならないことは多々あります。最後に、ファシリテーターとして、いつも気をつけ
たいと思っている点をいくつか記しておきます。
(その1)ワークショップの運営はチームで
ワークショップには、アクティビティに参加する人だけでなく、運営を支える世話
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役が不可欠です。道具を使う場合は、その準備をする人、記録が必要な場合は、記録
係を配置する必要もあります。ワークショップに誰を集めるか、どんなグループ分け
にするのか。外部から招聘されたファシリテーターには判断が難しいので、ワークシ
ョップを企画し主宰する人とよく相談して決めなければなりません。グループごとに
サブ・ファシリテーターがついたり、複数のファシリテーターでワークショップの進
行に当たることもあります。このようにワークショップの運営はチームで行うのが普
通であり、チームワークが前提となります。ファシリテーターは、基本的には世話役
チームの一員ですが、アクティビティに関わる中で、ときには参加者の一人という立
場で発言することもありだと考えます。
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ファシリテーターの心得(その2)
(その2)ファシリテーターが管理できるものとできないもの
プログラムに従って進行する中で、ファシリテーターが管理しなければならない大
切なもののひとつが時間です。ファシリテーターには参加者の発言内容はコントロー
ルできません。しかし、
時間配分はコントロールできます。参加者の状況をみながら、
作業の途中でも、場合によっては、終了してもらうこともあるかと思います。作品の
出来や結果そのものより、作業プロセスが重要であり、それに一定時間を費やすこと
ができたと考えるからです。
ワークショップの中では、予期せぬ問題が起こることがしばしばあります。問題が
発生したときには、柔軟に対処することが必要です。たとえば、参加者の中から新た
な問題が提起されることがあります。その場で十分に議論できれば良いのですが、時
間が限られていたり、ワークショップの主題から離れる話題であったりすると、十分
に議論できない場合もあります。そういうときのために、会場の壁に「積み残し課題」
とだけ書かれた白紙の模造紙を貼っておきます。もし、ワークショップの時間内で対
処できない問題が提起されたら、ここに簡単に問題の趣旨だけ書きとめます。こうし
た対応により、提起した人の意向を全く無視しているのではないことを示して、提起
した人にも納得してもらうよう心がけるのです。
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ファシリテーターの心得(その3)
(その3)参加者にたいする全面的な信頼
参加者にたいして問いかけはするが、どんな答が返ってくるかは予期できません。
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明確な問いかけは必要ですが、ファシリテーターみずからその答をあらかじめ持って
いる必要はありません。というより、ワークショップではそもそも正解というものは
存在しないのです。参加者にたいし全幅の信頼を置くことが何より大切です。問いに
対するすばらしい答はきっと参加者の誰かが持っているはずであるという信頼です。
たとえば、ファシリテーターが演劇の専門家でなくても、ワークショップで演劇的手
法を使うことがあります。芝居心がある参加者が必ずいると思っているからできるの
です。というより、日常生活の上で、皆それぞれの役を演じているのだから、本来、
誰でも芝居心はもっているものです。
(この文章は、「いかに地域づくりに住民を参加させるか−楽しいワークショップの進め方
−」という題で『STB 法による地域農業組織の戦略的活動支援マニュアル』
(社団法人全国
農業改良普及支援協会、平成 19 年3月)に発表した内容をもとに、見出しや文体など手直
ししたものです。表題も「人前で話をするのが苦手な人たちのための」という風に変えてい
ます。ワークショップをファシリテートするとき、私はいつもそういう人たちを念頭におい
ているからです。と同時に、人前で話すことが苦痛である人というのは私自身のことでもあ
ります。片倉和人)
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