さいなら!前立腺がん (私はこうして前立腺癌から生還した) 前立腺癌は

さいなら!前立腺がん
(私はこうして前立腺癌から生還した)
前立腺癌は甘く見られ勝ちですが、とんでもない。大変怖い病気です。
これから、私が体験した前立腺癌の初めから現在までをお話して行きたいと
思います。
尚、このマニュアルに記載されている内容によって、あなたに何らかの
問題が起こっても当方は一切責任を負いませんので、ご了承下さい。
目次
ページ
序章
3
1
その1
前立腺癌とは
3
その2
症状
9
その3
診断
10
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
始まりは?
11
いろいろな検査を受ける
PSA 検査をうける
12
15
前立腺針生検を受ける
前立腺癌と告知を受ける
病状説明
16
17
18
病期分類
20
2
第8章
前立腺癌の診断確認
21
第9章
前立腺癌の治療について
23
第10章
前立腺癌の治療
28
第11章
治療法を決める
40
終章
治療を終えて
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この報告をするに当たって、最初に前立腺癌の全容をお話します。
序章
その1
前立腺癌とは
前立腺の構造
3
前立腺は男性だけにあり、精液の一部を作る臓器です。前立腺は恥骨
(骨盤を形成する骨の一つで、下腹部に触れることができます)の
裏側に位置し、栗の実のような形をしています。この前立腺にがんが
発生する病気が前立腺がんです。
前立腺がんの統計
年齢別にみた前立腺がんの罹患(りかん)率は、65歳以上で増加
します。罹患率の年次推移は、1975年以降増加していますが、
その理由の1つは、ProstateSpecificAntigen(PSA)による診断方法
の普及によるものです。この方法によって、従来の直腸指診では困難
であった早期のがんが発見されるようになりました。
死亡率の年次推移は、1950 年代後半から 90 年代後半まで増加し、
4
その後横ばい状態です。
日本人の罹患率は、欧米諸国およびアメリカの日系移民より低く、欧米
諸国の中ではアメリカ黒人の罹患率が最も高い傾向があります。
前立腺がんの発生
癌は、前立腺の細胞が正常の細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖
することにより発生します。最近、遺伝子の異常が原因と言われて
いますが、正常細胞が何故がん化するのかまだ十分に解明されていない
のが現状です。がんは周囲の正常組織や器官を破壊して増殖し、他の臓器
に拡がり腫瘤(しゅりゅう)を形成します。他の臓器にがんが拡がることを
5
転移と呼びます。前立腺がんが、よく転移する臓器としてリンパ節と骨が
あげられます。
前立腺がんとラテントがん
前立腺がんは、年をとることによって多くなるがんの代表です。前立腺がん
の中には比較的進行がゆっくりしており、寿命に影響を来たさないであろう
と考えられるがんも存在します。もともと前立腺がんは欧米に多い病気です
が、実はこのようにおとなしいがんに関しては欧米でも日本でも地域差は
ないといわれています。他の原因で死亡した男性の前立腺を調べてみると
日本人でも 70 歳を超えると 2~3 割、80 歳を超えると実に 3~4 割に前立腺
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がんが発生しているとされています(このようながんをラテントがんと
呼んでいます)。このような高齢者に発生する前立腺がんの 25%から半数
程度はおそらく寿命に影響を及ぼさないがんと考えられています。がんの中
にもこのような生命に異常を来たす可能性の低い場合もあるということです。
一方で悪性度の高いがんは時間の経過と共に進行し、臨床的に診断される
ようになります。この頻度には人種差があり、米国黒人では最も頻度が高く、
次に白人が高いとされています。
前立腺がんの原因と予防
前立腺がんの確立したリスク要因は、年齢(高齢者)、人種(黒人)、前立腺
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がん家族歴とされています。動物実験などから、アンドロゲンが前立腺がん
発生に重要な役割を果たしているのではないかと考えられてきましたが、
現在のところ、疫学研究ではこの仮説に一致する結果は得られていません。
最近では、IGF-1 によってリスクが高くなる可能性が指摘されています。
食事・栄養素に関しても、現状では確立された原因はありませんが、リスク
要因として脂質、乳製品、カルシウム、予防要因として野菜・果物、
カロテノイド(中でもリコぺン)、ビタミン E、セレン、ビタミン D、
イソフラボンなどが候補に挙げられています。喫煙、体格、アルコール、
身体活動についても、関連の可能性が探られています。
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その2
症状
他のがんと同じように早期の前立腺がんに特有の症状はありません。
あるとしてもその多くは前立腺肥大症に伴う症状です。具体的には排尿困難
(尿が出にくい)、頻尿(尿の回数が多い)、残尿感(排尿後、尿が出きら
ないで残った感じがする)、夜間多尿、尿意切迫(尿意を感じるとトイレに
行くまでに排尿を我慢できない状態)、下腹部不快感などです。このような
症状があり、たまたま病院を受診した際に前立腺がんの検診が併せて施行
され、検査の結果、前立腺がんが発見されることがほとんどです。また
前立腺がんが進行しても転移が無い場合の症状は前立腺肥大症と大差は
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ありません。
前立腺がんは進行すると骨に転移しやすいがんです。前立腺自体の症状は
なく、たまたま腰痛などで骨の検査を受け、前立腺がんが発見されることも
あります。また肺転移によって発見されることもあります。
その3
診断
PSA 検査
前立腺がんの診断に関して、最も重要なのは前立腺特異抗原(PSA ピーエス
エー)とよばれる腫瘍マーカーの採血です。PSA はとても敏感な腫瘍
マーカーであり、基本的に前立腺の異常のみを検知します。PSA 値の測定は
前立腺がんの早期発見に必須の項目です。ただ PSA 値が異常であれば、その
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すべてががんになるというわけではありませんし、逆に PSA 値が正常の場合
でも前立腺がんが発生していないということにもなりません。あくまで、
前立腺がんを発見するきっかけとなるひとつの指標です。
とはいっても。結局この PSA 値が前立腺がんを予告してくれ、これによって
前立腺がんの治療をするかどうかのすべてを予知してくれるのです。
第1章
始まりは?
小便の出始めに赤ワインのようなものが出るのを見つけたのが、
2008年11月でした。その時は何だろうな。と思っただけでした。
町医者で検尿をしてもらったところ、
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「血ではないと思われる、腎臓なら蛋白が出るが、出ていない」
との診断でした。
若し前立腺に重大な変化が起こって居るなら病院でしっかり検査を受け
なければならないと判断しました。
第2章
いろいろな検査を受ける
病院の泌尿器科を紹介してもらい、検査を受けました。
検尿、下腹部レントゲン撮影、下腹部エコー、採決などをしました。
2009年1月やはり尿に赤い物が出る。病院で前立腺の MRI 検査を受ける。
血液検査で、がんでないとみられていたので、ポリープが発見される
のだろうか。悪性でなければよいが・・・。
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MRI 検査の結果、前立腺炎とのこと。しかし、血液検査ではがんでない事が
判っているが、MRI 検査ではがんでないともいえない。とのことであった。
2泊3日の前立腺生検をうけるかどうかについて、医師も迷って居ましたが、
しばらく、薬を飲んで様子を見ることになりました。
3月、血液検査の結果、
○がんの心配はない。前立腺炎だとのこと。
ああよかった。これで一安心だ。
救われた気持ちでした。
○触診検査の結果、前立腺は未だ固い。とのこと。
○前立腺肥大は少し小さくなった。
○エコー検査の結果、腎臓、膀胱共問題なく正常とのこと。
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これで、ずいぶん気が楽になった。
10月膀胱鏡検査をする。今日は尿に血液が多かったので、膀胱のエコーを
受ける。続いて尿道からカメラ付きパイプを挿入。これが部分麻酔をしても
大変痛い!つらいけど、我慢しなきゃ。
前立腺、膀胱を見てもらうことになった。
前立腺、膀胱に結石が沢山あり、荒れて居る事が判った。
それで、血尿が出たのだろうか。
次回、腎臓を X 線検査する事になった。
尿路結石か?
次回腎臓透視検査を受ける。(正式名は、経静脈性尿路造影 DIP という)
この頃耳鳴りがひどかった。どうしてだろう?
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原因は全くわからない。
腎臓透視検査の結果、
○腎臓は問題なくきれい。がんも結石もない。
ああこれで一安心だ!
2 度目の安心だ。
○腎臓→膀胱→前立腺にかけて石などはなく、特に問題はない。
○膀胱炎、前立腺炎(慢性)が考えられる。とのことであった。
尿路に大きな石などはない。
第3章
PSA 検査をうける
前立腺がんの診断に関して、最も重要なのは前立腺特異抗原
(PSA ピーエスエー)
とよばれる腫瘍マーカーであり、基本的に前立腺の異常のみを検知します。
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従って、PSA 値の測定は前立腺がんの早期発見に必須の項目です。
PSA 値が高いほど、前立腺がんの可能性は高くなります。
PSA 値が4ng/ml 以上の場合には、専門医による二次検査を行います。
12月に PSA 検査をしたところ、3.56ng/ml と出ました。
この後 2010 年 3 月には、3.89ng/ml とすこしづつ上がって行きました。
この後、6月には 4.35ng/ml、9 月には 5.93ng/ml と 4ng/ml を超えて
上がって来ました。やばい事になってきました。
その為、上記のような検査を受けながら、前立腺がんの検査を受けました。
第4章
前立腺針生検を受ける
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確定診断の為の前立腺針生検
PSA 値が 4ng/ml を超えて上がって来たので、針生検を行う事になりました。
いよいよ2泊3日の針生検です。
超音波をガイドにして前立腺を描出しておき、細い針を前立腺に刺し、
6カ所かそれ以上から組織を採取する「系統的生検」です。
針生検の結果は?
第5章 前立腺癌と告知を受ける
いよいよ裁断が下りる日、家族と一緒に病院を訪づれました。
先生!
がんです!
結果は如何でしたでしょうか?
本当ですか?
参ったなー!
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期待余命はどれ位ですか?
それは何とも言えない。これからいろいろと調べなければ。
いよいよ、がんとの闘いか・・・。そうだ、前に人から聞いた話だと、
「簡単だよ、前立腺癌は手術して取ってしまえば治るよ」と。
しかし、いざ、自分のこととなると、「本当にそんなに簡単に治るものかな?」
と心配になってきました。
この時期から、今まで1日も欠かした事がないビール、酒の晩酌を止める事に
しました。病気のこともあってか、案外簡単に止められました。
第6章
病状説明
診断:前立腺癌
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Ⅰ
癌の程度は?
生検標本15本中10に悪性細胞が認められました。
悪性度はグリソンスコア5+4=9です。と宣告されました。
(2:悪性度低い~10:悪性度高い)
癌の分化度は、低分化型です。とのこと。
グリソンスコアを説明しますと、
グリソンスコア:癌の悪性度を最も程度の低い1から最も悪性度の高い
5までの5段階に分けて判断されます。通常、ひとつの癌の中に複数の
悪性度の癌細胞があるので、最も多いものと2番目に多いものとを
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足し算して全体の悪性度として評価されます。
分化度:癌細胞の異型度を高分化型~低分化型に分類し、悪性度が高いほど
低分化となります。
第7章 病期分類
Ⅱ
病期分類:前立腺癌の進展度や転移などの広がりについての分類。
ステージ A:潜在癌
A1:高分化癌、数個の病巣
A2:中、低分化癌、多発の病巣
ステージ B:前立腺に限局
B1:左または右の一方だけに限局
B2:左右両方に病巣がある
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ステージ C:前立腺被膜を越える C1:精嚢、膀胱への浸潤なし
C2:精嚢、膀胱への浸潤あり
ステージ D:他の臓器に転移
D1:骨盤内リンパ節への転移あり
D2:遠隔リンパ節や遠隔臓器への転移あり
以上の中のステージ B2 と判定されました。
前立腺に限局であるが、左右両方に病巣がある。というステージです。
第8章 前立腺癌の診断確認
Ⅲ
前立腺癌の診断確認:癌の進展度や転移についての検査
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1)前立腺の外への広がりの確認。
前立腺 MRI ・経直腸的前立腺エコー
2)他の臓器への広がりについての確認。
リンパ節:骨盤・腹部リンパ節への転移の有無についての検査
骨盤・腹部 MRI、CT
3)骨:骨へ転移をしやすいため、全身の骨の検査。
骨シンチグラフィー(ラジオアイソトープを用いる)
4)肝臓:肝臓への転移の確認。
腹部エコー・ CT
上記の内
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2)骨盤 CT
3)骨:骨シンチグラフィー(ラジオアイソトープを用いる)
4)肝臓:CT
を受けました。
第9章
前立腺癌の治療について
前立腺癌の治療について。
大きな分類として、次のような治療法があることがわかりました。
1)前立腺全摘除術
2)放射線療法
3)内分泌(ホルモン)療法
4)化学療法
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の四つがある。
天皇陛下は手術をされました。
天皇陛下は東大病院で全摘出術をお受けになり、1ヵ月後、後遺症もなく
ご退院になられました。最近では、森前首相、プロゴルファーの杉原輝夫氏、
読売新聞の渡邉恒雄社長、歌手の三波晴夫氏、
外国では湾岸戦争のシュワルッコフ将軍、フランスのミッテラン大統領
などが挙げられます。
三波春夫氏は残念ながら発見が遅れ死亡し、杉原輝夫氏はホルモン療法を
していましたが、死亡しました。
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森前首相、渡邉社長などは以前にも増して元気に活躍しているようです。
このような傾向から最近は前立腺癌が有名な病気になってきた様です。
地域の医大病院が前立腺がんの講演会を開いたところ超満員で、
関心の高さに主催者も驚いていました。
間寛平さんは放射線治療
吉本興業に所属するお笑いタレントの間寛平さんといえば、
マラソンとヨットで地球を一周したアースマラソンをすぐ思い浮かべます。
2008 年 12 月 17 日に大阪府大阪市のなんばグランド花月をスタートして、
2009 年 1 月 1 日には千葉県鴨川市からヨットで太平洋横断に挑戦した
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プロジェクトです。
ところがスタートから2年、立ち寄ったトルコにて前立腺がんを
発症していることが判明。ホルモン療法を続けながら走り、
トルクメニスタン到達後マラソンを一時中断してアメリカで放射線治療を受け、
6 月 18 日に再スタート。776日間、3 万 6000km を走破しました。
前立腺がんを克服した間寛平流健康法とは?
間寛平さんは、今でも自分のペースで走り続けて、生活リズムをつくっている
といいます。
3年と9ヶ月、検診にあたった斉藤先生によると、
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前立腺がんの腫瘍マーカーとして使われる PSA で問題がなく、
かなりの割合で完治している。暴飲暴食はほどほどにということです。
その間寛平流健康法とは、
①よく食べてよく飲む、
②”ばかやろう”と叫びながらストレス発散、
③他力本願~仏の慈悲を借りる、
とのことです。
都立駒込病院 院長の坂巻壽先生によると、ストレスの解消法はいいとして、
酒を多く飲みすぎるのはよくないと語っておられます。
鳥越俊太郎さんは、間寛平さんは前向きに楽しく生きているので、
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免疫力は上がっていると言うことでしたが、私もそうだと思います。
がんだからといって、特に落ち込む様子は全くなく、
周りは心配しているにもかかわらず、本人はケロッとしているのですから・・・・。
また、よく寝るということで、9時か10時には寝るとのことです。
第10章 前立腺癌の治療
1)前立腺全摘除術
前立腺は膀胱の出口に尿道を囲むようにあります。そのため、
前立腺を根治的に摘出するためには膀胱と尿道を切開の上、前立腺を
適除し、膀胱と尿道を形成して再吻合(つなぐ)します。
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原則として、74 歳以下の人が適応されます(これは病院による)。
術前・術後を含めて2~3週間の入院が必要です。勃起神経は勃起能や
尿失禁に関係していますが、前立腺にくっ付いています。
できる限り温存に心がけられますが、
癌の進展度により勃起神経を温存できない、または傷つける場合が
あります。
現在のところ、癌の根治性は最も高いと考えられています。
①手術方法として、切開手術、ミニマム創手術、内視鏡手術があります。
切開手術:恥骨から臍の下まで切開して手術します。手術が確実で、
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神経の温存がし易いです。
ミニマム創手術:切開を小さくして、内視鏡を補助に手術します。
内視鏡手術:内視鏡を数本下腹部から挿入して、内視鏡下に
手術します。
癌の進行度が高い場合や神経温存に困難があります。
②自己血採取:輸血が必要となることもあり、自分の血を手術前に採血して
保存しておき、手術時に輸血として用います。
③合併症
a)手術による早期の合併症
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出血、疼痛、発熱、感染、尿漏など
出血:自己血にて対処可能
疼痛:手術時に硬膜外麻酔を併用して、術後の痛みの対策とします。
坐薬の痛み止めで、十分対応できる。とのことです。
発熱:術後数日は高い熱が出ますが、除々に改善します。
感染:抗生物質にて対応します。
尿漏:尿道と膀胱の吻合の状態により、バルンカテーテル留置の
期間が、5~14日間となります。
b)手術後に出る可能性のある合併症
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尿失禁:手術後、カテーテル抜去直後より病気の進行度や
もともとの括約筋の能力により、程度の差はありますが、
尿漏れがみられます。骨盤底筋群の強化体操
(括約筋の強化体操)や内服薬などにより大半の人は、
回復しますが、時にパットを必要とする場合もあります。
c)勃起障害:勃起の神経は前立腺に張り付いて通っています。そのため、
前立腺を根治的に摘出すると手術後勃起能が消失します。
勃起神経を温存すれば、勃起能が改善しやすくなりますが、
前立腺癌の進行度により神経を温存できなかったり、
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傷つけたりした場合は勃起能が完全に消失します。
勃起神経を温存しても、年齢により勃起能の改善が不良で、
内服を必要とし、改善しないこともあります。
d)膀胱尿道吻合部の狭窄:前立腺を摘除した後に尿道と膀胱を吻合
(つなぐ)しますが、その吻合部が瘢痕収縮などにより
狭窄を起こすことがあります。排尿困難として症状が
出ます。
2)放射線療法(私が受けた治療法)
体の外から照射する体外照射と前立腺の中に線源を埋め込み治療する
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小線源療法があり、ホルモン療法を併用することもあります。
1
外からの放射線療法:体外から高エネルギーの放射線を用いて前立腺に
照射し、癌細胞に障害を与えます。
1日1回、週5回、5~6週間の治療。
現在の照射可能な線量では根治は困難なことがあり、周辺臓器への
合併症もあります。後日、手術は不可能となります。
2
密封小線源放射線療法:放射性物質を直接前立腺内に埋め込む方法で、
体外からの放射線療法と比較して合併症が少なくなっています。
埋め込む放射性物質は7~8mm のチタンの針に入れたⅠ-135 です。
34
ただ、総ての前立腺癌の人に適しているわけではなく、悪性度は
比較的低く、癌が前立腺内にとどまっている場合が、適応となります。
原則としてグリソンスコアが6以下で、PSA10ng/ml 以下の人が適応
となります。
体外からの放射線療法を併用することもあります。
③合併症
放射線による一種のやけどで放射線療法中から終了後しばらくの間に
見られます。
排尿痛、血尿、頻尿、排尿困難
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腹部または臀部の皮膚のただれ
直腸障害(しぶり、出血)、肛門痛
3)内分泌(ホルモン)療法
前立腺は、男性固有の臓器で、男性ホルモン(テストステロン)に
支配され、精液をつくっています。そのため、前立腺から発生した
癌は男性ホルモンの影響で増殖する性質があります。この性質を
利用して男性ホルモンをブロックすることにより癌の増殖を抑える
治療法です。初期の時点では非常に効果が認められ、
前立腺癌のすべての病期において有効ですが、癌の悪性度により、
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耐性ができ、癌の増殖を抑えきれなくなる場合があります。
血液の腫瘍マーカーである PSA(前立腺特異抗原)の値を見ながら、
効果を確認します。
化学療法:癌の治療として薬物療法があり、化学療法(抗癌剤)が
色々な癌に応用されていますが、前立腺癌に有効な抗癌剤は
確立されていないため、薬物療法の第1選択としてホルモン療法が
行われています。
①抗男性ホルモン療法(アンチアンドロゲン療法)
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男性ホルモン(テストステロン)は脳の一部の下垂体からホルモン
(LH-RH) により刺激をうけて精巣(睾丸)と副腎から分泌されます。
治療としては
a)男性ホルモンが作られる過程を抑える。
b)男性ホルモンが前立腺に作用しないようにする。
ことが主要で、以前は精巣を摘出したり、女性ホルモンを使用したり
していました。現在では脳の視床下部からのホルモン
(LH-RH:下垂体を刺激して精巣の男性ホルモンの分泌を促す)
の分泌を抑制することにより精巣での男性ホルモンの産生を低下
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させる注射や、前立腺の組織内で癌細胞に作用する男性ホルモンを
ブロックする内服薬が開発され、両者を併用することにより
完全に男性ホルモンを押さえ込む併用療法が利用されています。
②女性ホルモン療法
合成女性ホルモンを直接注射または内服することにより、
男性ホルモンに拮抗させ、直接癌細胞に障害を加える作用はあります。
強力ですが、副作用が強いです。
③ホルモン療法の副作用
肝機能障害、腎機能障害
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消化器症状(食欲低下、下痢など)
女性化乳房(乳房腫脹、乳頭の黒褐色の着色、乳頭の疼痛)
陰萎、インポテンツ
全身のほてり、顔面紅潮、発汗
体重増加、食欲増進、高脂血症
第11章
治療法を決める
上記のような、いろいろな治療法が判りましたが、さてそれではどの治療法を
選択するかの判断に迫られました。
天皇陛下は手術療法で全摘に成功されています。ただ、現在はホルモン療法を
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されているとのことです。
手術療法については、以前は前立腺癌は手術で取ってしまえば簡単だ。
などと聞かされて居ましたが、意外と手術のミスもあるようで、後遺症に
悩んでいる人も多いです。
そのような事から、間寛平さんがアメリカで受けた小線源埋め込みによる
放射線療法を選択する事にしました。
丁度紹介された病院の先生がその道で日本の十指の中に入るという優れた先生
がいらっしゃるという事もあり、この方法を選択する事にしました。
それと、放射線の外照射法を併用する事になりました。
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治療開始
手術当日の午後、毛ぞりをして、午後2~3時に下剤を飲む。それから
2~3時間のうちに3回下痢をした。
午後9時にプルセニードという錠剤を2錠飲む。9時から絶飲食。
密封小線源放射線治療は腰椎麻酔下で行います。治療時間は2時間程度でした。
治療前検査時と同じように脚を開いた砕石位にして、直腸に超音波の器械を
挿入します。
そして、陰嚢と肛門の間である会陰部から針を挿入し、超音波の画像を
見ながらコンピュータで計画された位置に、線源を留置します。
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今回留置した線源は45本でした。
翌日午後レントゲンを撮影し、尿道留置カテーテルを抜去する。カテーテル
からの尿の出具合は良かった。しかし、カテーテルを抜去したあと血尿がでた。
3日間の入院で終了しました。
放射線外照射はグリソンスコアが9と高かったので初めから外照射前提で
小線源も45とやや少なくしてあるので、外照射は必須と言われました。
放射線外照射は、1日1回、1週間5回で1ヶ月受けました。
1ヶ月の入院でした。
2011.8.31 に退院。
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その他にホルモン療法も始まりました。錠剤の他、月に1回ゾラデックスと
言う太い注射を腹に打たれます。
結局、前立腺癌の治療は、
①小線源療法
②放射線外照射
③ホルモン療法
の三つの療法で治療を進めました。
終章
治療を終えて
治療後間もなく3年になります。現在のところ、尿漏れなどの副作用もなく、
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転移もありません。根治に向かっています。
退院後の状況は次の通りです。
2011.9 月
ホルモン療法ゾラデックスを腹に注射。非常に痛い。
錠剤の薬カソデックスを飲む。
このホルモン療法は 2013.6 月まで続く事になる。
2011.12 月
2012.1 月
採血、残尿エコー、残尿なし。
ホルモン療法のゾラデックス注射、カソデックス錠剤。
耳鳴りがひどい。
2012.6 月
血液検査 PSA 0.010
2012.8 月
エコー
この頃
残尿なし。
夜トイレに3回行く。
2012.10 月
ホルモン療法のゾラデックス注射。3ヶ月に1回となる。
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2013.2 月
エコーで腎臓、膀胱問題なし。
2013.6 月
ホルモン療法の治療終了。
2013.11 月
尿に大量の血が出る。
2013.12 月
又血尿が出る。原因は不明。
2014.1 月
尿も問題なし。
膀胱鏡検査を受ける。
部分麻酔をして実施するが、痛い。
膀胱癌はなく大丈夫との診断であった。
夜の尿は1回で済むようになった。
大きな治療を終わってから、ずっと脚を中心に体のかゆいのは未だ
止まらない。
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ここへ来ての全般的な感じとして、
尿漏れがない。
残尿間がない。
夜のトイレは0~1回で済んでいる。
などで、状態はかなり良くなっている。
しかし、前立腺癌を体験して、以前から人に聞いたりいろいろな情報から
知っていた内容とは全く違い、非常に怖い病気だとつくづく実感しました。
そもそも、私は前立腺がんのはじまりに於いて血尿が出ることから、異常を
感じたのです。それらの原因等を追究していく過程において、前立腺がん
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ではないという診断も受けながら進んで来ましたので、いよいよ前立腺がん
と告知を受けるまで前立腺がんではないと信じていました。ですから、がんと
告知を受けた時はまさかと思うような気持ちで受け止めました。
それだけ、ショックは大きなものでした。しばらく、立ち直れないような時期
がありました。自分ががん?ということが納得できるまで、治療法のことなど
頭が回らない状態でした。悲しいけれど、これを現実として受け止めなければ
ならないのです。
そして、改めて気を取り直して目の前の前立腺がんと戦って行かなければ
ならなくなったのです。家族もステージがどんなであるかとか、治療法は何を
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選択するか、などについても心配してくれました。しかし、自分が一番
しっかり気持ちを持って進めなければなりません。
こうして、家族と共に前立腺がんと戦う事ができたのです。
以上、ここまで解説して来ましたが、あなたも前立腺がんを軽く見る事の
ないよう、またできるだけ早期に発見するように心がけてください。
そして、前立腺がんになったら、どのステージにあるか、転移はどうかなど
いろいろ研究されて、あなたに一番適した治療法を選択され、早期回復される
ことを祈っています。
49
しつこいようですが、あなたが前立腺がんを軽く見ないでくれぐれも慎重に
対応されることを祈っています。
早期に発見し、ステージ、進行度などをよく研究して一番適した治療法を
選択して正しい治療を受ければキット前立腺がんを克服して生還できると
思います。
前立腺がんは、進行がゆっくりのがんです。つまり、期待余命が比較的永い
といえます。ですから慌てず、しかも慎重に対処していけばキット生還
できるがんです。どうかくれぐれもその事を頭において、じっくり対処され
あなたが無事立ち直られる事を祈っています。
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では、あなたの幸せを心から祈っています。
最後まで読んで下さって有難う御座いました。
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