ビデオ用 OP アンプの 種類と使い方

特集*ディジタル時代のビデオ信号操作術
第6章
ゲイン固定のビデオ専用タイプから
汎用の高速タイプまで
ビデオ用 OP アンプの
種類と使い方
永沢 純一
Jyunichi Nagasawa
「一般的な高速 OP アンプとビデオ用 OP アンプとの
厳密な違いはない」と,私は思っています.ですが,
ゲイン固定のビデオ専用 OP アンプ
ここでは IC メーカがビデオ用としている高速 OP ア
ンプを特にビデオ用 OP アンプと呼ぶことにしましょ
う.
表 6 − 1(次頁)にゲイン固定タイプのビデオ用 OP ア
ンプの仕様を示します.
ビデオ用 OP アンプは,大きく次の二つに分けられ
ます.
● ゲインは 6 dB が一般的
bゲイン設定用抵抗を内蔵したゲイン固定タイプ
b汎用の高速 OP アンプ
表 6 − 1 からわかるように,ゲインの大きさは通常 2
倍(6 dB)固定です.ゲイン精度は数%〜 10 %程度が
このほかに,ビデオ特有の機能をもった IC も数多く
一般的ですが,民生用の監視カメラなどでは最終的に
市販されていますが,OP アンプというよりは専用 IC
に近いので,ここでは除外しています.
ボリュームで調整を行うので,この程度の誤差は問題
ない値です.業務用監視カメラでは 1 %以下を使いた
いところです.
ゲインの大きさは 2 ですが,図 6 − 1 のようにすれ
ば G = 2 以外にも, G = 1 および G =− 1 が可能です.
+IN
入力
+
GND
750Ω
+
OUT
−
750Ω
出力
−
750Ω
750Ω
入力
+
750Ω
+
出力
−
−
入力
750Ω
750Ω
出力
750Ω
未接続
(a)内部回路
(b)通常の使い方(ゲイン2)
(c)ゲイン1で使う場合
(d)ゲイン−1で使う場合
図 6 − 1 ゲイン固定型ビデオ・アンプのゲイン設定方法
(AD8079 の場合)
2
(a)の回路
G =+1,
RT
RT
50Ω
50Ω
入力
+
出力
−
入力
+
出力
−
RG
RF
RG
RF
300Ω
300Ω
300Ω
300Ω
正規化ゲイン[dB]
1
0
−1
−2
−3
−4
−5
−6
10
(a)周波数特性にピークが出る接続
(b)ピークが出にくい接続
G =+1,
(b)の回路
100
周波数[MHz]
(c)ゲインの周波数特性
1000
図 6 − 2 ビデオ用 OP アンプ OPA693 を使ったゲイン 1 のバッファ・アンプ
2004 年 7 月号
175
表 6 − 1 ゲイン固定タイプのビデオ用 OP アンプのいろいろ
型名
NJM2267
メーカ
新日本無線
MAX4090
動作電圧範囲
[V]
消費電流
[mA]
DG
[%]
DP
[°]
4.89 〜 9.0
7
1
1
7
―
―
2.7 〜 5.5
6.5
1@3 V
0.5@5 V
0.8@3 V
0.5@5 V
55
275
―
5
6.5
0.4
0.6
55
275
―
5 〜 12
5.1
0.07
0.02
190@5 V
8300@5 V
1.7@1 MHz
5 〜 12
13
0.03
0.01
526@5 V
1500@5 V
1.8@1 MHz
5 〜 12
5.1
0.07
0.02
190@5 V
830@5 V
1.7@1 MHz
±5
8
0.01
0.01
550
1350
22@10 k 〜
100 MHz
± 3 〜± 6
5
0.01
0.02
260
750
2@10 kHz
マキシム
MAX4032
OPA692
OPA693
テキサス・
インスツルメンツ
OPA3692
AD8075
− 3 dB 周波数 スルー・レート
[MHz]
[V/μs]
アナログ・
デバイセズ
AD8079
2.20
1.80
0.65 0.65
単位:[mm]
入力雑音電圧
[nV/√Hz
 ̄]
3.10
2.90
0.95
0.52
2.40
1.80
3.00
2.60
1.35
1.15
5.05
4.75
1ピン
0.30
0.15
1ピン
(a)SC70
3.00
2.80
3.10
2.90
0.50
0.35
1ピン
(b)SOT23
0.65
(c)μSOP
0.51
0.35
1.27
VCC
4.00
3.81
IN
6.20
5.80
入力抵抗が3MΩ
なのでカップリン
グ・コンデンサは
0.1μFで充分
1ピン
5.00
4.80
(d)SOP
図 6 − 3 小型パッケージのいろいろ
OUT
2.3k
クランプ
1.2k
580Ω
780Ω
SAG
SHDN
GND
図 6 − 4(6) 入力クランプ回路やサグ補正端子をもつ MAX4032
の内部構成
ただし,IC は G = 2 で最適周波数になるように設計さ
(c)に二つの回路の周波数特性の違
あります.図 6 − 2
れているので,G = 1 では周波数特性にピークが生じ
てしまいます.
いを示しておきます.これは OPA693 の場合ですが,
図6−2
(a)では 1.5 dB ほどあった周波数特性上のピー
このピークを小さくしたいときは図 6 − 2 の方法が
176
(b)では 0.3 dB 程度に小さくなっている
クが,図 6 − 2
2004 年 7 月号