- ロングライフビル推進協会

社団法人
建築・設備維持保全推進協会
「LC評価用データの収集と提供」
アンケート調査報告書
平成16年5月
はじめに
(社)建築・設備維持保全推進協会(BELCA)は建築・設備維持保全推進協議会(LCA)を経て、
平成元年に設立されました。
LCAの時期からBELCAは、維持保全にかかわるLC設計、LC評価、LCC等のデータベース構築
に努め、それら成果の一部を「LC設計の考え方」、
「建築物のLC評価用データ集」等として取りまとめ公
表しています。
しかし、データベースは絶えず更新・拡充が必要です。このため、平成 14 年度から 2 ヵ年の予定で、「総
合的LC特別研究」を起こし、LC関係のデータベースの拡充に取り組み、次の 5 つのテーマを実施しまし
た。
・研究テーマ1
「LC 評価用データの収集と提供」
・研究テーマ2 「用途別・規模別標準 LCC データの作成」
・研究テーマ3 「環境に配慮したリニューアルにおける LC 評価」
・研究テーマ4
「公営住宅の全面的改善と建替における費用対効果分析に関する研究」
・研究テーマ5 「PFI における LCC の実態等に関する調査研究」
本報告書は研究テーマ1の一環として実施したアンケート結果を取りまとめたものです。
建物を適切に維持保全して行くには、維持保全計画を立てることが第一歩です。しかしながら、これまで
日本においては、関係業界や専門家共通のLCCデータと言われるものはありませんでした。共通に活用で
きるLCCに対する考え方やデータがあれば、より効果的、効率的維持保全の方法が検討しやすくなります。
また、近年盛んになったエンジニアリングレポートにおける費用の算出もより実態に即した検討ができるよ
うになります。
そこで、研究テーマ 1 では、主な部位・部材・設備機器の修繕・更新・改修の実施時期等の判断や提案等
に役立つ「具体的なデータの収集」及び「継続的なデータ収集・提供の仕組みの検討」を行いました。
本報告書を取りまとめるにあたり、アンケートにご協力いただいたオーナーの皆様や会員各位、及び、委
員会委員各位に厚く御礼申し上げるとともに、深く感謝の意を表するものです。
平成 16 年 5 月
社団法人 建築・設備維持保全推進協会
専務理事
今 泉
晋
「LC評価用データの収集と提供」
アンケート調査報告書
目
【1】
【2】
アンケート調査概要
次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
1‑1.調査内容
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
1‑2.調査対象
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
1‑3.調査期間
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
1‑4.調査結果
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
2‑1.回答建物概要
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
2‑2.回答履歴概要
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
2‑3.分析結果概要
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8
分析結果概要
【3】
調査によって判明した課題など
【4】
ガイドライン(原案)提示に向けての方針
12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
13
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
13
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
14
4‑3.工事要因に関して
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
14
4‑4.電子化手法の導入
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
14
4‑1.項目分類の再選定と分類化
4‑2.項目の追加
4‑5.ガイドライン(原案)概要
4‑6.LC評価用データの提供
《 付
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
16
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
録 》
「LC評価用データの収集と提供」ガイドライン(原案)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
19
【1】 アンケート調査概要
1-1. 調査内容
平成 14 年度に学識・実務経験者を交えて討議された内容を考慮し、以下のアンケート内容を調査対象
者に郵送・もしくは電子データで送信し、記入後、回答の収集を行った。
アンケート内容
■ 回答者属性及び建物属性
・アンケート回答者と調査対象建物の属性
■
建築物の概要及び機器等仕様
・調査対象建物の概要・利用機器の仕様。
竣工時のデータ、及び、増築・改築等の工事が行な
われた場合の工事後のデータ。
■
修繕・更新・改修工事の履歴
・調査対象建物に竣工時から調査対象時点までの間に施
された主要な部位・部材・機器についての工事履歴の
データ。工事部位を、大分類・中分類・小分類に分類。
■
建築・設備の詳細データ
・調査対象建物の部位・部材・機器等の仕様・能力・特記
事項・履歴等。
■
維持保全費・エネルギー使用量・コスト調査
・日常のメンテナンスに掛かる諸経費として、保全費と
運用費についてご回答いただいた。
1-2. 調査対象者
BELCA会員、及び(社)日本ビルヂング協会連合会会員を対象とした。
1-3. 調査期間
第 1 期(BELCA 会員) 平成 15 年 9 月 5 日〜11 月 28 日
第 2 期(ビル協会員) 平成 15 年 11 月 7 日〜12 月 26 日
1-4. 調査票送付数及び回答数
以下に、今回の調査票の数量及び回答数の一覧表を示す。
調査票送付先
調査票送付数
調査票回答数
合計
会員数
棟数
会員数
棟数
(社)建築・設備維持保全推進協 (社)日本ビルヂング協会連合会
会(BELCA)会員
会員
163 会員
286 事業所
41 会員
50 会員
50 棟
55 棟
91 会員
105 棟
表 1-1 調査票の数量及び回答数の一覧表
P1
【2】 分析結果概要
2-1. 回答建物概要
今回の調査により集められた建物概略情報のグラフを各概要種別にて示す。
1) 築年代別
1920年代, 1棟, 1%
1930年代, 2棟, 2%
1990年代, 2棟, 2%
1940年代, 0棟, 0%
1950年代, 4棟, 4%
1980年代, 22棟, 21%
1960年代,30棟, 29%
築年代別件数
1970年代,44棟, 41%
1920年代
1930年代
1940年代
1950年代
1960年代
1970年代
1980年代
1990年代
グラフ 2-1 築年代別グラフ(n=105)
調査によって集められた全 105 棟の築年度は 1970 年代(高度成長期後期)が一番多く、ついで 1960
年代(高度成長期前期)、1980 年代となっている。尚、1940 年代(戦時中)の竣工は見受けられなかっ
た。
2) 経年数別
10年未満, 2棟, 2%
50年以上, 4棟, 4%
10年以上20年未満, 4棟,
4%
40年以上50年未満, 14棟,
13%
経年数別件数
30年以上40年未満, 36棟,
34%
20年以上30年未満, 45棟,
43%
10年未満
10年以上20年未満
20年以上30年未満
30年以上40年未満
40年以上50年未満
50年以上
グラフ 2-2 経年数別グラフ(n=105)
本調査では、調査前提条件を「20 年経過したもの」としたが、経年数が 30 年弱の建物が最多となっ
ている。
P2
3) 延床面積別
30,000㎡以上 40,000㎡未満 40,000㎡以上
1%
1%
25,000㎡以上 30,000㎡未満
2%
20,000㎡以上 25,000㎡未満
3%
3,000㎡未満
1%
3,000㎡以上 4,000㎡未満
10%
15,000㎡以上 20,000㎡未満
7%
4,000㎡以上 5,000㎡未満
13%
10,000㎡以上 15,000㎡未満
9%
延床面積別件数
9,000㎡以上 10,000㎡未満
12%
5,000㎡以上 6,000㎡未満
12%
8,000㎡以上 9,000㎡未満
9%
6,000㎡以上 7,000㎡未満
13%
7,000㎡以上 8,000㎡未満
7%
グラフ 2-3 延床面積別グラフ(n=105)
4000 ㎡〜7000 ㎡が最多となっているが、10,000 ㎡を超えるデータも調査により収集することが出来
た。
4) 階層別
15層以上, 3棟, 3%
4層, 1棟, 1%
5層, 5棟, 5%
6層, 2棟, 2%
14層, 7棟, 7%
13層, 3棟, 3%
7層, 9棟, 9%
8層, 6棟, 6%
12層, 12棟, 11%
階層別件数
9層, 14棟, 13%
11層, 20棟, 19%
10層, 23棟, 21%
グラフ 2-4 階層別グラフ(n=105)
9 層から 11 層を中心とした建物が多かった。尚、上表の階層は地下部分を含んだ階層である。
P3
5) 履歴情報数別
工事履歴要素数別
80棟
70棟
70棟
60棟
50棟
40棟
30棟
20棟
14棟
12棟
10棟
6棟
3棟
0棟
履歴なし
50件未満
51件以上100件未満
100件以上150件未満
150件以上
棟数
グラフ 2-5 工事履歴要素数別グラフ(n=105)
工事履歴(調査シート 2)に注目した場合、過去の工事履歴をいただけない事例が 14 棟ほどあった。
これは、物件の途中購入、金額を開示できない、履歴情報が直ぐに取り出すことが出来ない等のコメン
トが添付されていた。また、多いものは、200 履歴を超えるデータを保有し、開示していただいた。最
大値は 1 棟分の工事履歴で実に 800 件以上の工事履歴をいただくことができた。又、特筆すべきは、150
件以上が 3 棟あるが、この回答は同一管理者からの回答である。
全体的には、経年数に左右されるものの、50 件未満の回答が多かった状況となっており、平均は 41
件程度となる。
また、次頁では、経過年数と工事履歴の数に関して検証している。
築年数
10 年以下
11 年〜15 年
16 年〜20 年
21 年〜25 年
26 年〜30 年
31 年〜35 年
36 年〜40 年
41 年〜45 年
46 年〜50 年
50 年以上
母数
2
1
12
16
24
18
16
9
4
3
建築
0
0
6
5
8
9
34
9
8
0
電気
0
10
4
5
6
7
19
6
9
0
空調
1
13
9
7
5
10
28
7
6
0
衛生
0
4
6
6
4
7
21
5
17
0
搬送
0
0
1
3
3
2
4
3
2
0
その他
0
0
2
2
0
2
3
4
0
0
計
1
27
28
28
26
37
109
34
42
0
表 2-1 築年数と工事履歴数の関係(母数による平均値)(n=105)
表 2‑1 は、105 棟すべての工事履歴数を、築年数別と大分類別に分類し、各々を母数(棟数)で割っ
たものである。この表から判るように、経過年と履歴数は、必ずしも比例の関係になっていないことが
確認できた。平均すると、築年数によらず、28 件から 42 件程度の履歴が取られている。尚、36 年〜40
年の築年数建物の履歴が多くなっているが、これは、前述した、非常に多くの履歴が存在する建物が、
このグループに含まれているためである。また、築年数と履歴件数にて散布図を作成するとグラフ 2‑6
になる。
P4
築年数と履歴件数の関係
800
750
700
650
600
550
履歴件数
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
0
10
20
30
40
築年数(年)
50
60
70
80
グラフ 2-6 築年数と履歴件数の関係(n=105)
尚、上記の情報は「一式工事」も 1 件としてカウントしている。
P5
2-2. 回答履歴概要
1) 大分類別出現履歴数
その他, 178件, 4%
搬送設備,277件, 6%
建築外部, 1,178件, 28%
建築外部
電気設備
空調
給排水
搬送設備
その他
給排水, 838件, 19%
大項目出現比率
電気設備, 776件, 18%
空調, 1,092件, 25%
グラフ 2-7 大分類出現履歴数グラフ(n=4339)
大分類においては建築外部項目が一番多い項目であったが、搬送分類を除き、ほぼ同程度の出現とな
っている。
2) 中分類別出現履歴数
700
600
500
件数
400
300
200
100
全体その他
搬送その他
立体駐車場装置
エレベータ
ゴンドラ
配管類
給排水その他
ポンプ類
水槽類
送風機
空調その他
全熱交換器
空調機
冷・暖房ユニット
冷却塔
温熱源
冷温熱源
電気その他
冷熱源
中央監視装置
火災報知機
避雷針
盤類
直流電源
受変電設備
自家発電設備
外部建具
建築その他
外壁
カーテンウォール
屋根
0
中分類項目
グラフ 2-8 中分類別出現履歴数グラフ(n=4339)
「その他項目」は、大分類程度は規定できるが、中分類以下では規定できない状態の項目を算入した
ものである。重複した項目での工事によるもので、調査票には規定項目が無いため、本検証時において
定義を行なった。その他以外を見比べると、空調機項目が多いことが判る。
P6
0
50
100
150
250
300
200
件数
350
突出したデータは各大項目における「その他」の項目である。
その他リフォーム系
その他分類無し
搬送リフォーム系
搬送中分類まで
立体駐車装置
ゴンドラ
規格型エスカレータ
電動小荷物用昇降機
非常用エレベータ
人荷用エレベータ
乗用エレベータ
給排水リフォーム系
給排水中分類まで
鉛管
鋳鉄管
耐熱性硬質塩化ビニル管
硬質塩化ビニル管
ステンレス鋼管
銅管
硬質塩ビライニング鋼管
炭素綱鋼管
貯湯槽︵ステンレス製︶
貯湯槽︵鋼板製︶
高架水槽︵ステンレス製︶
高架水槽︵鋼板製︶
高架水槽︵FRP製︶
受水槽︵ステンレス製︶
受水槽︵鋼板製︶
受水槽︵FRP製︶
スプリンクラーポンプユニット
消火栓ポンプユニット
汚物排水ポンプ
汚水排水ポンプ
雑排水ポンプ
オイルポンプ
ボイラ給水ポンプ︵真空複式︶
給湯循環ポンプ︵ライン︶
冷却水ポンプ︵渦巻・多段︶
冷却水ポンプ︵ライン︶
冷温水ポンプ︵渦巻・多段︶
冷温水ポンプ︵ライン︶
加圧給水ポンプユニット
揚 水 ポ ン プ (水 中 )
揚 水 ポ ン プ (渦 巻 ・ 多 段 )
空調リフォーム系
空調中分類まで
斜流ダクトファン
軸流ダクトファン
シロッコファン︵屋外設置︶
シロッコファン︵屋内設置︶
全熱交換器︵回転型︶
全熱交換器︵静止型︶
ファンコイルユニット
ビル用マルチエアコン
空気熱源ヒートポンプパッケー
水冷パッケージ
エアーハンドリングユニット
冷却塔︵鋼板製︶
冷却塔︵FRP製︶
水冷ヒートポンプチラー
空冷ヒートポンプチラー
吸収式冷温水発生機
炉筒煙管ボイラ
鋼板製無圧︵真空︶ボイラ
鋼板製温水ボイラ
鋳鉄製ボイラ
水冷チラーユニット
空冷チラーユニット
氷蓄熱システム
吸収式冷凍機
ターボ冷凍機
レシプロ冷凍機
電気リフォーム系
電気中分類まで
中央監視装置
避雷導線
突針
煙感知機
熱感知器
受信機
複合受信器
電灯分電盤
動力分電盤
動力制御盤
アルカリ蓄電池
鉛蓄電池
整 流 器 ( A M H用 )
整 流 器 ( H S用 )
ガスタービン発電機
ディーゼル発電機
変圧器︵油入︶
変圧器︵モールド︶
配電盤︵屋外キュービクル︶
配電盤︵屋内キュービクル︶
配電盤︵開放︶
建築リフォーム系
建築中分類まで
ステンレス製シャッター
鋼板製シャッター
アルミ製ドア
ステンレス製ドア
鋼板製ドア
ALC版
PC版︵吹付け︶
PC版︵タイル︶
アルミ製パネル
アルミ製
外壁︵石張り︶
外壁︵吹付け︶
外壁︵タイル︶
笠木︵金属︶
笠木︵コンクリート︶
塗膜防水
シート防水
アスファルト防水︵保護︶
アスファルト防水︵露出︶
小分類項目名
3) 小分類出現履歴数
グラフ 2-9 小分類出現履歴数グラフ(n=4339)
P7
2-3. 分析結果概要
今回の調査で得られた調査票を集計し、分析を行なったところ、下記のような傾向及び結果を得るこ
とが出来た。
„ 調査条件ではあったが、20 年〜30 年程度経過した建物の回答件数が、一番多く収集すること
ができた。
„ 様々な延床面積及び階層の建物データを収集することができた。
„ 工事履歴に関しては、工事件数が 50 件未満が一番多く、履歴無しも 14 棟存在した。
„ その反面、実に 100 件以上の履歴を保存している建物が 9 棟存在した。
„ 各所有者、管理者により、その蓄積方法・用語の定義などはまちまちであったが、今回の調
査票の書式を使用し、数々の分析が可能であったことは、非常に意義があった。
履歴データにおける工事内容において、以下の傾向が見られた。
1) 工事全般
„ 工事費全体としては、20 年を超える頃より大きな金額が発生している。
„ 全体的には、25 年目頃、各要素において大きな金額の工事が発生することから、恐らく、リ
ニューアルを含めた修繕工事を行なっていると読むことが出来た。
„ 5 大要素(建築・電気・空調・衛生・搬送)の全体経費における構成比率は、共通性を見出す
までには至らなかったが、築年数が経つにつれ、設備の項目が大きくなる傾向を見ることが
出来た。
全体
200
180
160
140
千円/㎡
120
100
80
60
40
20
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37
経過年数
グラフ 2-10 全体工事費経年別積上げ
グラフ 2‑10 では、20 年目あたりより、複数棟の建物が修繕を行っている。そのため、20 年目以降に工事が
増えることが確認できる。
P8
2) 建築
„ 建築に関しては、項目の細分化が難しく、複合化された項目(詳細分析においては「その他」
と定義した項目)が多かった。
„ 母数から、面積等との相関関係を、示すまでには至らなかった。
„ グラフ 2‑11 の様に、25 年頃に大きな金額の工事を行なっている。
建築全体
4.5
4
3.5
千円/㎡
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18 19 20
経過年数
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
グラフ 2-11 建築工事費経年別積上げ
3) 電気
„ 電気分野は 20 年頃までは大きな金額の工事が無く、非常に小さな金額の工事に終始するが、
建築と同様 25 年頃より大きな金額の工事となっている。
電気全体
3
2.5
千円/㎡
2
1.5
1
0.5
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18 19 20
経過年数
21
22
23 24
25
26 27
28 29 30
31 32
33 34 35
36 37
グラフ 2-12 電気工事費経年別積上げ
P9
4) 空調
„ 空調機の工事件数が多い。
„ 空調は、グラフ 2‑13 の様に、15 年頃から徐々に修繕工事が発生しているが、金額の変動は
少ない。その反面、30 年を超えると突出した金額が発生する。
空調全体
18
16
14
12
千円/㎡
10
8
6
4
2
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18 19 20
経過年数
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
グラフ 2-13 空調工事費経年別積上げ
5) 衛生
„ グラフ 2‑14 では、20 年に、また 23 年〜29 年に中程度の工事が、さらに 33 年〜37 年に大き
な金額の工事が、発生している。20 年はリニューアルと考えられ、33 年以降は大きな修繕が
発生したと想定される。
衛生全体
2.5
2
千円/㎡
1.5
1
0.5
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18 19 20
経過年数
21
22
23 24
25
26 27
28 29 30
グラフ 2-14 衛生工事費経年別積上げ
P10
31 32
33 34 35
36 37
6) 搬送
„ 搬送分野においては、昇降機および機械式駐車装置のデータを一緒にしている。25 年頃に山
を迎えているのは昇降機であり、30 年以降でかなり大きな金額の工事が発生しているのは、
駐車機械の取替え等を行なっていると考えられる。
搬送全体
2
1.8
1.6
1.4
千円/㎡
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18 19 20
経過年数
21
22
23 24
25
26 27
28 29 30
31 32
33 34 35
36 37
グラフ 2-15 搬送工事費経年別積上げ
P11
【3】 調査によって判明した課題など
ガイドライン(素案)では、蓄積・収集・提供を容易に行なえるよう、調査票を作成し、今回では、
その調査票を活用して実際に調査を行なった。その結果として、更に、蓄積・収集を継続していくこと
で、前述した分析結果は精度を増し、大分類別による傾向の分析や、小分類における要素毎の分析法を
用いることで、より有益な情報を提供できる目安がついた。
反面、現在の収集・蓄積方法では以下の点で、まだ、課題があることも判明したと考える。
„ 回答していただいた項目のほとんどが、非常に専門的語句を使用しているため、項目におい
て不明点が多かったと推測される。
„ 項目が固定化(番号化)されているが、実際の工事においては、複合項目が多く、記載して
いただく際に苦慮された形跡が見られた。この点に関しては、分析時にもその判断に迷うこ
ととなった。
„ 各工事に付帯した分類番号で、設定された項目工事以外の回答を行なう場合への対応が出来
ていなかった。特に建築内装に関連する項目が多々含まれていると想定され、これらの工事
は、往々にして大きな金額の工事であった。
„ 回答者が独自に作成していた工事履歴書から、今回の調査票への転記時に、記載内容(金額)
間違いが、数点見受けられた。
„ 長期間にわたって履歴が無い部分があり、扱い方の根本的な考え方が不明瞭であった。
„ 1 回答者で複数棟の回答をしていただいた場合、回答者属性など、重複する項目を記入してい
ただき、余分な手間をかけさせた。
„ 現実として、想定ではあるが、履歴が明確に残っていないためか、ご回答に苦慮された形跡
が見受けられた。
以下に、この課題を踏まえ、ガイドライン(原案)を提言していく。
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【4】 ガイドライン(原案)提示に向けての方針
4-1. 項目分類の再選定と分類化
質問項目は、入力する場面を考慮すると大きく以下に分かれる。
„ 初期入力項目(回答者属性・調査建物属性・建物概要など)
„ 変更時入力項目(仕様項目)
„ 経年入力項目(工事履歴・保全費・水光熱費など)
前述したが、回答していただいた項目のほとんどが専門的な用語を使用しているため、不明な部分が
あり、ご回答いただけなかった項目も数多くあった。最終的なデータの提供においては、全ての項目が、
記載されていることが望ましいことは明白ではあるが、現状を考慮すると、項目の難しさと数の多さが、
アンケート収集における敷居を高くしている感がある。そこで、提供する分析結果の形態を念頭におき、
必要項目でのレベル設定を行い、より収集しやすい方法に変更することが得策と考える。
以下にその概念図を示す。
レベル‑1
初期入力項目
変更時入力項目
レベル‑2
建物属性・回答者属性
建物概要
建物概要(基準階面積・管理委託方式等)
機器等仕様
仕様詳細(機器台帳同等項目)
変更経歴書
経年入力項目
工事名称・年・金額・分類・概略理由
工事費目・詳細理由・工事説明・備考
電気・ガス・水道使用量及び各金額
図 4-1 調査項目の分類図
図 4‑1 の概念図では、入力場面と、分析結果に対しての必要度に応じてレベルを設定し、分類したも
のである。レベル‑1 の少ない項目より回答頂き、工事の内容など詳細部分が判明した時点で、レベル‑2
の項目を回答いただくなど、時間的余裕を持たせることで、収集しやすくしている。尚、ここではレベ
ル‑1 を必須項目として捉え、レベル‑2 をわかる範囲での回答としているが、決してレベル‑2 の項目が
不必要と言うことではないことに留意していただきたい。
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4-2. 項目の追加
今回の調査においては、内装に関する項目を設定していない。今回の調査対象であった事務所建築で
は、内装に関する項目は、テナントの入退出に関連する要因が大きく、劣化的要因が軽微であると判断
したためであるが、調査回答を見ると、付加価値要素の向上という面で、行なっていると考えられる内
装工事が見受けられた。このため、内装に関しては、今後の調査において、共用部における調査も必要
と考えられる。
また、今回の調査においては、その対象を事務所建築としていたが、その利用形態(賃貸利用か自社
利用か)の設問を行なっていなかった。現実問題として、利用形態により、経費の掛け方は異なると考
えられ、修繕費用の重要な要素となる。このため、今後は上記の項目の追加が必要と考える。
4-3. 工事要因に関して
今回の調査では、工事 1 件ごとに対しその工事理由を記載していただいた。しかし、設定された理由
によりすべての工事が行なわれているとは限らず、むしろ、複合的な要素が多かった傾向がある。
ビル事業の生き残りとテナント誘致競争と言う現実問題を考慮すると、劣化による更新よりも、社会
的付加価値向上という視点で、時間軸における要因を考慮した工事理由を分析する方が現実に即してい
ると推測される。したがって、今後の調査においては、様々な要因を調査し、多元的に分析する必要性
があると考えられる。その調査方法ならびに分析への反映方法は、ガイドライン(原案)に導入する。
4-4. 電子化手法の導入
今回の調査では、回答いただいた方々に、紙面又は電子データのいずれかの方法で回答していただい
た。17 棟分が電子データで回答をいただき、これらの電子データは、準備加工において、また、後々の
分析等での速度向上に非常に寄与した結果となった。尚、電子データでの収集は下記に示すことが可能
となり、データ収集の効率化と分析提供速度に非常に有利と考える。
„
„
„
„
„
複数棟回答者の、重複入力の削減。
経過年などの自動計算化
投入データの再利用もしくは複製利用
別ソフトで作成された経理データ等の取込み利用
「項目選択式」の採用(入力の簡略化)
特に、選択形式などを使用した場合で、その選択した項目について説明文(もしくは写真など)を、
選択時に表示するなどの方策を施すと、専門知識が無くとも入力が容易になると考える。
以下に電子データ作成に対する、調査票のイメージを示す。
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電子調査票イメージ(試案)
選択方式による入力
図 4-2 レベル-1 項目における入力イメージ
選択方式による入力
レベル‑2 項目
図 4-3 工事履歴入力イメージ
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4-5. ガイドライン(原案)概要
前述の課題などを踏まえ、今回の報告書ではガイドライン(原案)を提言する。以下にその内容の概
略を示す。
1) 用語の定義
ガイドライン(素案)において定義を行った用語を、今回の原案では、再検証を行った。特に、
修繕費・更新費・改修費の考え方を概念のモデルにて捉えることで、より明確化し、保全費には修
繕・更新・改修費用を含まないものとした。
性能̲
建物に要求される性能
改修
更
修
繕
新
新築時の性能
支障のあるレベル
竣工時
経過
図 4‑4 修繕・更新・改修概念モデル図
2) データ収集に利用するための調査シートの見直し
調査に際し、入力シートを以下の様に大別しなおし、収集しやすいものとしている。
1.建築概要入力シート:建物基本情報や設備機器及びシステムに関する状況把握シート
2.工事履歴シート
:工事履歴を経年で追加するシート
3.詳細調査シート
:建築・電気・空調・衛生に関する詳細シート及び管理契約費と運用費
に関する調査シートを含む
また、合わせて、項目を2つのレベルに設定することで、収集の効率化、調査回答・履歴蓄積に
対する容易さ等を実現させ、より収集しやすい手法とした。
レベルは以下の 2 種類としている。
レベル 1:ガイドライン(原案)にて提示した分析結果を行なうことが出来る最低事項
レベル 2:詳細分析において必要と思われる事項
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3) 各項目における前提条件
ガイドライン(原案)では前提条件を再検証している。
1. 建物概要入力では、利用形態として、
「自社利用」又は「賃貸利用」の選択をするものとした。
また、駐車場形式では、自走式か機械式かを選択するものとし、立体駐車場だけでなく、「機
械の維持メンテナンス」が発生するものは全て「機械式」としている。
2. 工事履歴入力では、施工年の西暦入力を再定義し、工事件名では費目分類及び定義を考慮し、
工事件名後に費目(修繕・更新・改修)を入力することで、分析精度を高めるものとしている。
3. 内容の記載に関しては、ガイドライン(素案)を継承しつつ、
„ 工事履歴においては連番にて ID を付帯させる。
„ 改修前後における分類番号を記載する
„ テナント入退出に関連する工事はその旨記載を行なう。
などを、前提条件として追加設定した。
4. 工事理由については、
„ 物理的劣化及び機能的劣化対応
„ テナント対応
の 2 つの要素を追加し、複合的な要因へも対応しやすい様に設定を行っている。また、社会的
劣化は機能的要素の劣化に含むものとした。
5. 工事費目分類は、空調設備と衛生設備を分割し、また、搬送設備においても、機械式駐車場と
の分割を行い、分析しやすい様にしている。また、複合的な分類に対応するために、各分類に
「その他」の工事を設定した。
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4-6. LC評価用データの提供
ガイドライン(原案)では、収集されたデータを、分析することで、以下の効用を得ることができ、
具体的な事例を紹介している。詳細は、ガイドライン(原案)の項目を参照願いたい。
1) 分析結果による効用
①維持保全計画を立てる対象建築物と類似したデータをデータベースにて検索し、比較検証するこ
とで、建築・設備の保全計画を立てる目安を得ることができる。
②設備更新・将来の維持保全計画に配慮した技術を類似したデータをデータベースにて検索するこ
とができる。
③安全性・信頼性について配慮する際のデータを、実際の値に近いものをデータベースより利用す
ることができる。
④分析した様々な結果を利用者(テナント等)に提示することで、所有者側の明確な意思表示が可
能となる。
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