研究報告 (PDF:830KB)

2013年度日本建築学会
関東支部優秀研究報告集
内装材としての土壁のライフサイクル評価
現代版「土壁の家」づくりのための基礎的研究
*1
5.建築計画 4.構法計画
*2
正会員 石川 恒夫
正会員 ○ 竹中 徹
正会員
三田村 輝章*3 非会員 大井 明弘*4
土壁 ビニル壁紙 ライフサイクル
CO2 排出量 エネルギー消費量
1.はじめに
施のためのソフトウェア「MiLCA(みるか)」 4)を使用し、
近年、建物に使用される内装材の選択には、施工性や
積み上げ方式にて算出した 5)。尚、入手困難なプロセスの
価格のみが重要視され、居住性や建材そのものの環境負
データにおいては可能な限りメーカーへのヒアリング等
荷は考慮されていないのが実情である。それゆえそうい
より収集を試みているが、それでも得られなかった場合
った工業的に生産された建材を使用することで、住まい
に過去に発表された報告書や論文のうち本事例の条件に
づくり全体での環境負荷が自然素材に由来する建材を用
そぐうデータを用いた。また算出には以下のようなシス
いた場合のそれよりも大きくなってしまう傾向がある。
テム領域を設定する(図 2)。算出はこのように生産領域、
そのため近頃は土や木材といった建材の利用に関心が集
運送領域、施工領域の各プロセスにおける算出結果をそ
まっている。その中でも土を建材として用いた場合、製
れぞれ比較する。最終的に全プロセスにおける総合的な
造段階で合成物質を一切用いないことから CO2 排出量や
環境負荷を分析・比較し、土壁の現代的な活用可能性を
使用エネルギー量の削減に効果があると考えられている。 明らかにする。
そこで本研究では、内装材のみ異なる二つの実験棟(土
壁棟とビニル壁紙棟)を対象に、建材の生産から運送、施
工までのライフサイクル分析を行う 1)。それにより土壁の
性能を多角的かつ定量的に把握し、現代的な活用可能性
を明らかにすることを目的としている 2)。材料の寿命、維
持だけを考えるのであれば、建築材料学の研究であるが、
写真 1
左:実験棟外観
中:土壁棟内観
右:ビニル壁紙棟内観
ライフサイクルの分析、そしてその知識は建築計画研究
でこそ必要であると考えた。
2.実験棟の概要
研究対象とする 2 つの実験棟は、長野県上田市の(有)
デフ本社敷地内に建設されている。東西対称に 1 つの屋
根で連結された形状をとっており、方位による二棟の環
境差が少なく抑えられている(図 1)。また戸建住宅に応
用できるよう間口一間半、奥行二間の 6 畳サイズの居室
を半間の外部通路で分けることで居室を 4 面の壁で構成
している。コンクリート基礎から木造骨組、断熱材の充
填、日射を得るためのサッシなどは、小さいといえども
実際の戸建住宅と同様の仕様として、内部の壁仕上げだ
図1
けをごく一般的に普及している内装(ボード下地 3)にビニ
ル壁紙)と厚さ 30mm の土壁に設えている(写真 1)。
実験棟平面図
材料採取
2-1.調査データの入手方法とシステム領域
建材を生産するための材料採取から破棄・リサイクル
までのプロセス全体での環境負荷(CO2 排出量とエネルギ
ー消費量)を定量的に把握する為、算出には主に産業環境
管理協会の公開しているライフサイクルアセスメント実
-133-
運送
建材運送
施工
運用・修繕
解体・破棄
建材生産
運送領域
施工領域
運用領域
廃棄領域
生産領域
生産領域
本稿での考察範囲
図2
システム境界
3.分析結果と考察
3-1.生産領域
0
(kg-CO2e)
(1) 分析方法および境界設定
生産領域の算出範囲は建材を生産する為の素材の採取
1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000
土壁棟
5,409
ビニル壁紙棟
5,409
から工場への運送、製造までとし、環境負荷の算出には
主に産業環境管理協会の公開しているライフサイクルア
33
725
セスメント実施のためのソフトウェア「MiLCA」を使用
共通建材におけるCO2排出量
した。尚、ボード下地の環境負荷は公開データが存在せ
ず、一般的な石膏ボードにおける環境負荷を代用した。
(2) 生産領域における環境負荷の比較分析
約 22 倍、エネルギー使用量に至っては約 28 倍とその差
5,000
10,000
土壁棟
19,797
ビニル壁紙棟
19,797
図 3 に生産領域の環境負荷を示す。各棟の環境負荷を
比較すると、ビニル壁紙棟の CO2 排出量は土壁棟に比べ
0
(kWh)
棟別のCO2排出量
が顕著に表れた。この理由は土壁棟にのみ用いられる藁
共通建材におけるエネルギー消費量
図3
を混ぜた粘土質の土やスギの木小舞は自前の加工場での
0
(kg-CO2e)
い、その物質を生成する過程でも多くのエネルギーを消
20,000
25,000
161
4,063
棟別のエネルギー消費量
生産領域における環境負荷の比較
上:CO2 排出量 下:エネルギー消費量
手工業が主であるのに対し、ビニル壁紙棟にのみ用いら
れるビニル壁紙の製造過程において合成物質を多量に用
15,000
250
500
750
1,000
1,250
土壁棟
1,183
76
ビニル壁紙棟
1,183
141
費するためであると考えられる。またボード下地に用い
1,500
た「MOISS(モイス)」は天然鉱物に由来する物質を用い
て生産されているため、生産領域における環境負荷はビ
ニル壁紙と比べるとさほど大きくはないと考えられる。
共通建材におけるCO2排出量
3-2.運送領域
(1) 分析方法および境界設定
0
(kWh)
1,000
2,000
棟別のCO2排出量
3,000
4,000
5,000
図4に運送領域の環境負荷を示す。運送領域の算出範
土壁棟
4,348
ビニル壁紙棟
4,348
囲は建材の生産・加工を終えた拠点(サッシメーカーや建
290
材メーカーの提携先工場など)から建設現場までとし、環
境負荷は燃料法 6)にて算出した 7)。一般的には部材を輸送
する時、復路でも何かしらの輸送を行うことが多いが、
共通建材におけるエネルギー消費量
全ての運送状況を把握することは現実的ではない。その
図4
ため復路は積載率 0 と仮定し、それに伴う輸送車両の燃
費の違いのみ算出に考慮している。また算出に当たって
の代理店まで)では輸送車両それぞれ平均積載量で運送し
棟別のエネルギー消費量
運送領域における環境負荷の比較
上:CO2 排出量 下:エネルギー消費量
0
(kg-CO2e)
現場納入の上流ステップ(部材製造工場から現場一つ手前
549
100
200
土壁棟
292
ビニル壁紙棟
292
300
400
500
115
ているものと仮定し、本実験棟における環境負荷は使用
部材の重量当たりの燃料消費量にて算出している 8)。
(2) 運送領域における環境負荷の比較分析
25
共通部分におけるCO2排出量
運送領域におけるビニル壁紙棟と、土壁棟に用いた建
材の違いは、土壁棟には長野県長野市から運送した
0
(kWh)
0.75m3 の藁入り粘土分の環境負荷が加算されること、そ
300
600
土壁棟
1,095
ビニル壁紙棟
1,095
してビニル壁紙棟においてはボード下地とビニールクロ
棟別のCO2排出量
900
1,200
1,500
412
スの運送による環境負荷が加算されることである。それ
ぞれ環境負荷を比較すると、土壁棟の CO2 排出量はビニ
ル壁紙棟に比べ約 53%、エネルギー使用量にいたっては
約 52%に抑えられていることが分かった。今回の事例で
は敷地から道のり 44.8km 離れた商会から土を取り寄せ
ているため、ビニル壁紙棟における運送領域よりも環境
負荷を抑えることができている。
-134-
共通部分におけるエネルギー消費量
図5
90
棟別のエネルギー消費量
施工領域における環境負荷の比較
上:CO2 排出量 下:エネルギー消費量
(3) 運送距離と環境負荷の関係性
(2) 施工領域における環境負荷の比較分析
当然のことながら運送距離が長ければ長いほど環境負
施工領域における各棟の環境負荷の大きな違いは作業
荷は大きくなる。土壁に用いる土はある程度の粘度が必
性の違いによる人工の違いと左官作業の有無である。ビ
要である。建設残土を使えれば、運送距離は 0 になり理
ニル壁紙棟に用いられたボード下地はビス止めで安易に
想的である。しかし土壁を施工するのに適した土の採取
施工でき、またビニル壁紙も同様である。ゆえに現場で
地が、敷地および敷地の近隣に必ずしも存在するとは限
の人工が 1 日分(2 人工)抑えられた。結果としてビニル壁
らず、そのような土を安定的に供給できる土場が整って
紙棟の CO2 排出量、エネルギー使用量は土壁棟に比べ約
いないのが実情である。またビニル壁紙棟特有の建材を
22%に抑えられている。
運送する際に消費した軽油量は合計で 52.4L であった。
ここで、これを元に土の最大運送距離を求める。同じ土
の量を今回と同様に 2 回に分けて運送する場合には約
88km、一度に全ての土を運ぶ場合だと約 131km となる。
つまりこの範囲内であれば土壁棟における運送領域の環
境負荷はビニル壁紙棟のそれを超えないという目安が得
られた(図 6)。採取地の距離とそれによる環境負荷のバラ
ンスを取ることが土壁を使用することの課題である。
3-3.施工領域
(1) 分析方法および境界設定
図 5 に施工領域の環境負荷を示した。施工領域の算出
範囲は仮設工事、地業、基礎、主体工事、仕上げ、副産
物処理までとする。環境負荷の算出には作業員の移動や
レンタル重機の移動、重機使用に伴う燃料消費量を算出
し、運送領域と同じ燃費法を用いる。さらに人工当たり
の電力消費量原単位
9)を用いてヒアリングにより得た各
図 6 ビニル壁紙棟の運送領域における環境負荷に
対する土壁棟に使用する土の最大運送距離 10)
工事における工期、人工数、出面のデータより作業に由
来する環境負荷を算出する。
表1
生産
CO2 排出量
(kg-CO2 e)
投入エネルギー原単位
(kWh/kg)
製品投入エネルギー
(kWh)
0.01
9.02
0.051
46.01
24.10
249.26
(kwh/m3 )
114.66
項目
土
藁入り粘土
0.75
1200
902.16
板類
スギ木小舞
0.46
380
174.80
モイス
0.17
750
126.75
ビニールクロ
ス
0.15
1500
225.60
52.4
[kg-CO2 e/m3]
4.12
[kg-CO2 e/m3]
3.21
0.70
3.61
457.57
724.18
17.66
3984.10
共通部分
5409.31
19796.90
計
6167.31
24399.23
区分
項目
資材量
(m3 )
比重
(kg/m3 )
重量(kg)
土
藁入り粘土
0.75
1200.00
902.16
木摺
燻煙乾燥スギ
0.23
380.00
87.4
出発拠点
到着拠点
長野県長野市
(商会)
長野県諏訪郡
(営業所)
茨城県筑西市
(工場)
山梨県甲府市
(倉庫)
長野県上田市
(現場)
長野県上田市
(現場)
山梨県甲府市
(倉庫)
長野県上田市
(現場)
茨城県常総市
(工場)
東京都品川区
(物流センター)
東京都品川区
(物流センター)
長野県長野市
(営業所)
長野県長野市
(営業所)
長野県上田市
(現場)
備考
耐火粘土のLCIを代用。
比重は木材博物館HPの木材の比重リストより引用。
http://www.wood-museum.net/
製造エネルギーがモイス≦石膏ボードより石膏ボードにて算出。(moissHPより) 比重8.03(kg/m2)
ポリ塩化ビニル(PVC)のLCIを代用。
燃料使用量(L) CO2 排出量
重量比換算 (kg-CO2 e)
移動回数
総移動距離
(km)
輸送手段
積載率(%)
計算値[適用値]*重量比
車両燃費(km/l)
往路[復路]
運搬エネルギー
(kWh)
2
179.2
2t
23[25]
6.2[7.4]
26.56
72.77
278.08
2
255.6
2t
66[75]
5.1[7.4]
1.11
3.04
11.62
1
409
10t
[62]*0.01
3.0[4.2]
116.87*0.01
3.2
12.23
1
259.6
2t
6[10]
7.4[7.4]
35.08
96.12
367.29
1
156.4
10t
[62]*0.02
3.0[4.2]
122.42*0.02
2.45
25.63
1
513
10t
[62]*0.02
3.0[4.2]
116.66*0.02
8.04
24.43
1
84.2
2t
11[10]
7.4[7.4]
11.38
31.18
119.15
共通部分
1182.96
4347.97
計
1399.76
5186.4
モイス
0.17
750.00
126.75
運送
内装材
ビニールクロ
ス
区分
項目
主体工事
施工
各領域における環境負荷算出の詳細
重量(kg)
区分
内装材
比重
(kg/m3 )
排出CO2原単位
[kg-CO2 /kg]
資材量
(m3 )
0.15
工期
(日)
2
1500.00
出面
(人)
2
225.60
必要人工
出発拠点
4
長野県松本市
(事務所)
到着拠点
移動回数
総移動距離
(km)
人工換算
輸送手段
積載率(%)
計算値[適用値]*重量比
CO2 排出量 エネルギー使用量
車両燃費(km/L)
燃料使用量(L)
往路[復路]
(kWh)
(kg-CO2 e)
2
129.2
ライトバン
46[50]
7.3
17.7
47.08
170.1
5
225
軽トラ
56[50]
9.3
24.19
64.35
232.47
1
64.8
ライトバン
46[50]
7.3
8.85
23.54
85.05
共通部分
291.92
1094.89
計
426.89
1582.51
土壁棟
ビニル壁紙
棟
左官
5
2
10
長野県上田市
(自宅)
主体工事
1
2
2
長野県松本市
(事務所)
長野県上田市
(現場)
長野県上田市
(現場)
-135-
備考
下記以外の部位、気乾比重
見かけ密度 0.6以上0.9未満
確定不能(物流センターに一
番近い茨城工場と仮定)
備考
2012年11月12日~19日
(工事日数2日)
2012年12月20日~2013年1
月31日(工事日数5日)
2012年11月12日~19日
(工事日数1日)
4.まとめ
(kg-CO2e) 6,600
(1) 3 領域における環境負荷の比較分析
6,800
図 7 に今まで考察してきた生産、運送、施工の 3 つの
ビニル壁紙棟
6,884
領域における環境負荷の合計を比較した。土壁棟の CO2
土壁棟
6,884
排出量はビニル壁紙棟に比べ約 21%、エネルギー使用量
の大きい領域としては生産領域が挙げられ、生産から施
(kWh)
3領域の共通部分
ことが挙げられる。一般的に土壁棟の施工は荒壁塗り 2
7,800
8,000
141 24
生産領域
運送領域
施工領域
4,442
54985
25,240 161
290403
土壁棟
特筆すべき点として、土壁棟の左官工事には環境負荷
7,600
3376 111
25,240
ビニル壁紙棟
に反映されない「乾き」の時間がかけられているという
7,400
24,000 25,000 26,000 27,000 28,000 29,000 30,000 31,000
工までのライフサイクル分析において大きな割合を占め
(2) 土壁活用の展望と課題
7,200
725
3領域の共通部分
は約 17%にまで抑えられていることが分かった。最も差
ることが明らかとなった。
7,000
図7
回、中塗り 2 回であり、季節にもよるがそれぞれ 1 か月
生産領域
運送領域
施工領域
3 つの領域における環境負荷の比較
上:CO2 排出量 下:エネルギー排出量
ほど乾燥を待つ期間を設ける。結果として左官作業にか
参考文献及び註
かる時間、ひいては全体の工期は長くなってしまうが、
1) 本研究は平成 24 年度前橋市公募型共同研究事業に基づき、(有)デフ
圧倒的に環境負荷を抑えられることがこの分析で明らか
となった。更に破棄する段階に至って土に石灰あるいは
との共同研究の一部である。
2) 研究対象である本実験棟それぞれの調湿作用や蓄熱性能等の室内環
境の測定と分析は、既に行われ、土壁の優位性が証明されつつある。
なんらかの合成物質を混入していない限り、その場に土
三田村輝章他『土壁建築の環境性能に関する研究
を戻すことも可能であり、新たな土壁に再利用できるの
実験棟における初年度の実測調査-』第 37 回人間-生活環境系シンポ
である。つまり、循環する資材として破棄に由来する環
境負荷を大きく抑えられる可能性を秘めているのである。
土壁は元々古い日本の文化の一つであったが、今は見
た目が安価な、施工の容易なビニル壁紙が内装材の主流
となり、今ではそれに伴い土そのものを扱う業者も減っ
てしまった。そのためにせっかく製造に由来する環境負
-「現代版土壁の家」
ジウム報告書 pp.235-238,2013 年 12 月
3) MOISS(モイス):天然鉱物であるバーミキュライトを主成分とした成
形版(三菱マテリアル建材㈱)。製造エネルギーを石膏ボードより抑え、
有害物質を含まず、成分を全て土に還すことができる点に特徴がある(肥
料認定済)。今回ビニル壁紙棟のボード下地に用いた。
4) MiLCA(みるか):産業環境管理協会の公開している LCA 実施を支援
するためのシステム。カーボンフットプリントに基づいた 3000 以上の
製品のプロセスデータを搭載し、単一の製品製造における環境負荷を川
荷を抑えられても、土の長距離運送によって土壁の持つ
上側まで遡及積算できる。
メリットを損なってしまっているのが実情である。
5) 積み上げ方式:製品のライフサイクルにおいて、分析対象として焦点
(3) 現代版土壁の施策
を当てた範囲に含まれるプロセスを抽出し、プロセスごとに投入する資
本来、土壁の施工は両面塗りが一般的である(計荒壁塗
源・エネルギー量、ならびに排出する環境負荷物質量について調査デー
タを収集しそれらを合計して、環境負荷の各項目を算出する。
り 2 回、中塗り 2 回)。それゆえ土壁の乾燥に長い時間を
6) 燃料法:経済産業省・国土交通省『物流分野の CO2 排出量に関する
必要とし、工期の長期化が避けられなかった。本研究で
算出方法ガイドライン』より燃料消費量の直接把握が難しいが精度を重
取り上げた上田実験棟の土壁は、内側の面だけを塗り上
視する場合に利用される算出方法。運送車両ごとに計測した燃費データ
げ、外側には断熱材や外装材などの工事を同時に進めら
と運送距離データを用いて環境負荷を算出する。
れた。これにより本来かかるはずの人工と乾燥時間を半
分に抑えることができた。
また上田実験棟のように内側の土塗壁厚 30mm 以上で
あれば都市部における防火構造の認定を受けることがで
きるため、断熱材や外装材の自由度が高くなる。当然従
来通り両面塗りで土壁を施工すれば、強度も防火性能も
向上させることができる。必要人工や乾燥時間が倍にな
ることでの環境負荷上昇や工期延長を鑑みると、片面塗
りによっても調湿効果や蓄熱効果(現在検証中)が見込め
るのであれば、この方向性を推し進めることは有効であ
ろう。施工領域において土壁棟はビニル壁紙棟の約 2.2
7)道のり算出ソフト『NAVITIME』 を用いて、工場と現場との最短ル
ートを運送距離として設定した。
8) 産業環境管理協会『カーボンフットプリント制度試行事業成果(CO2
換算量共通原単位データベース ver.4)』より『JP525007_道路貨物運送』
における輸送車両の車種別平均積載量とそれに伴う車両燃費、CO2 排出
量原単位を引用した。
9) 楊詩弘他『戸建住宅の生産プロセスにおける使用エネルギー評価方法
に 関 す る 基 礎 的 研 究 』 日 本 建 築 学 会 計 画 系 論 文 集 第 585 号
141-148(2004)における『使用エネルギー評価方法一覧』より引用。
10) Google Maps API より筆者加筆。
謝辞
本研究を進めるにあたり、資料提供やヒアリング調査を (有)デフ近
藤様に協力していただきました。ここに深く感謝申し上げます。
*1
前橋工科大学大学院工学研究科建築学専攻博士前期課程
倍の費用がかかっているが、この数値は必ずしも居住性
*2
前橋工科大学大学院工学研究科建築学専攻教授・工博
や機能、環境負荷を指し示すものではないことがわかる。
*3
前橋工科大学大学院工学研究科建築学専攻准教授・博(工)
*4
アトリエ DEF 代表取締役
-136-