Impact No. 34

C
T
P
IM A
横滑りをより早く、より正確に感知
車の安全技術をさらに進化させる「Gセンサー・システム」
2005年10月、横浜ゴムは次世代型タイヤモニタリングシステム「Gセンサー・システム」を発表しました。
タイヤの空気圧だけでなく、走行中の路面状況やタイヤの挙動を精密に感知できる画期的な技術です。
自動車への搭載が進む横滑り防止システムと組み合わせると、既存システムに比べ0.2秒早く横滑りを感知し、
時速100kmの場合で11m早く車両制御を実行できます。
車体センサー信号と
ホイールセンサー信号の比較
Gセンサー<3軸加速度センサー>
No. 34
Jan. 2006
最新の事業活動を紹介する情報誌
横浜ゴム株式会社
タイのトラック・バス用タイヤ工場が稼動
画期的な新混練工法で品質向上、リードタイムも短縮
2005年4月、トラック・バス用タイヤの生産拠点「ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリング・タイ」が
車体センサー信号
生産を開始しました。新工場には新混練工法など最新の生産技術を投入。
マイクロプロセッサー
品質向上に加え、より効率的な生産体制を実現しています。
ホイールセンサー信号
モジュール
約0.25秒の時間差
ホイールリムに装着した「Gセンサー・モジュール」
。重さ約10gの軽量でありながら、最大時速300km
(重力加速度1000G)に耐えられる強度を持つ
横滑りをタイヤで感知
ホイールセンサー
車体センサー
日本以外の世界市場へ商品供給
域です。天然ゴムの産地でもあり、部品や
35 万本です。設備全体がコンパクトなた
「ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリン
原材料の調達が比較的容易のほか、多数
め、着工から生産立ち上げまでの期間が
グ・タイ」は輸出がメインで、世界的に需要
進出している日系カーメーカーからの受
短く、早期に黒字化を図れるのが最大の
の多い内径22.5インチサイズの生産が中
注取り込みも狙えます。また、質の高い労
特徴です。
「ヨコハマタイヤ・マニュファク
チャリング・タイ」の建設期間は約 1 年、投
(ハンドルの向き情報)の3つの動きを検知
ムを導入すれば、タイヤの空気圧監視と
心です。これまでトラック・バス用タイヤは
働力に恵まれ、外資優遇税制を受けられ
横滑り防止システムは、制御コンピュー
できます。そのため、車の挙動やタイヤ性
横滑り防止機能をひとつにすることも可
三 重 工 場と米 国 の G T Yタイヤ・カン パ
ることなどから、工場建設には最適と判断
資金額は55億円で、従来のトラック・バス
タが車の状態を常時モニタリングし、横滑
能、濡れた路面と乾いた路面の識別など
能です。
ニー(横浜ゴム、コンチネンタル、東洋ゴ
しました。
用タイヤ工場に比べ建設期間、投資金額
りを感知するとエンジン出力を制御した
多くの特性を判別できるようになりまし
ム工業の合弁会社)の2拠点で生産してい
り4輪個別にブレーキをコントロールする
た。車体より動作環境の厳しいタイヤ内部
ましたが、旺盛な需要をまかないきれな
少量生産で採算のとれる小規模一貫
ことで、安定した姿勢に車両を制御する
(ホイールリム)に装着できる3軸加速度セ
い状況でした。
こうした供給不足を解消し、
生産方式
技術です。通常、制御コンピュータに情報
20%以上の伸びで市場拡大
ンサーは世界初です。
を送る各種センサーは車体に取り付けら
れていますが、横浜ゴムはタイヤがスリッ
高精度を実現する
プしてからセンサーが検出するまでに時
超高速マイクロプロセッサー
横滑り防止システムの装着台数は、
とも半分以下に抑えられました。
品質、生産効率ともに向上
世界的に拡大しているトラック・バス用タ
「ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリン
小規模一貫生産方式のほか、
「ヨコハマ
イヤの需要を積極的に取り込むのが新工
グ・タイ」にも、
「ヨコハマタイヤ・フィリピ
タイヤ・マニュファクチャリング・タイ」には
場建設の狙いです。
ン」
「杭州ヨコハマタイヤ(中国)
」と同様、
随所に新しい生産技術を導入しています。
小規模一貫生産方式を採用しました。タ
特に混練工程に導入した「低温高剪断混
イヤの生産は① 混練 ② 材料加工 ③ 成形
練」は、より高品質なゴムを生産できる画
この2、3年、年平均成長率20%以上
東南アジア最大の自動車産業集積地
もうひとつの特長は、同じくセンサー・
の 伸 びで 拡 大して います 。自 動 車
イールリム)
にセンサーを装着することで、
モジュールに組み込んだ超高速低消費電
メーカーなどのデータから事故抑制
場所はバンコクの東南120kmのラヨー
④加硫⑤検査――の大きく5工程に分かれ
期的な新工法で、トラック・バス用タイヤ
より早く横 滑りを 感 知 で き る「 G セ ン
力のマイクロプロセッサー。既存システム
効果の高さが実証されており、メルセ
ン県アマタシティ工業団地。タイは「アジ
ますが、
「ヨコハマタイヤ・マニュファク
の耐久性や耐摩耗性が向上します。さら
サー・システム」を開発しています。
のセンサー信号は60 パルス程度ですが、
デス・ベンツが全車種に標準装着して
アのデトロイト」と呼ばれ、東南アジアの
チャリング・タイ」は混練から加硫までのラ
に成形工程、加硫工程にも新技術を採用。
同モジュールは4096(12ビット)パルスの
いるほか、ビッグスリーが2005 年モ
中で最も自動車部品産業の集積が進む地
インが従来の3 分の1で、生産能力も年間
リードタイムを従来の3分の1に短縮し、仕
高分解な信号に変換可能で、より微小な
デルから大型SUVを中心に標準装着
「Gセンサー・システム」はホイールリム
変化を検出できます。3軸加速度センサー
を進めていく方針を出しました。現状
に装着するセンサー・モジュールに、圧力
で得た高感度な信号を、超高速マイクロ
の装着率は欧州が35%を超えている
センサーと温度センサーに加え、3軸加速
プロセッサーで緻密に処理 ―
―このふたつ
ものの、日本、米国は10 %前後。普
度センサーを内蔵しているのが特長。3軸
のキーデバイスの開発により、より早く、
及率はまだ低いですが、今後大きく
加速度センサーはタイヤの回転方向(路
より正確に横滑りを感知できる「Gセン
市場が拡大すると予測されます。
面情報)
、遠心力方向(速度情報)
、横方向
サーシステム」が実現しました。同システ
間差が生じることに着目。直接タイヤ(ホ
車の挙動から路面状況まで識別
I MPACT
No. 34 January 2006
発行:横浜ゴム株式会社 広報部広報・IRグループ
本誌内容に関するお問い合わせ先:
〒105-8685 東京都港区新橋5丁目36番11号
TEL: (03) 5400-4531 FAX: (03) 5400-4570
2005年7月、出荷開始に合わせて
開所式を行った。
ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリング・タイ。2006年11月の稼働予定で、年間生産能力140万本の乗用車・ライトトラック用
タイヤ工場の建設も始まっている。
掛品も大幅に減少するなど生産効率の面
グローバル・フラッグシップ・ブランド「ADVAN」
ブランド力の向上めざし、世界市場に本格投入
タイヤの海外生産拠点
でも大幅な改善を実現しています。
最大の総合タイヤ生産拠点に
GTY タイヤ・カンパニー
「ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリン
横浜ゴムの最高峰のタイヤ技術を結集した「ADVAN(アドバン)
」
。
2005年から、世界各地で本格的に販売を開始しました。
杭州ヨコハマタイヤ
グ・タイ」は2007年までに年間生産量を2
新しい高性能タイヤの統一ブランドとして、世界のマーケットに
ヨコハマタイヤ・フィリピン
倍の70 万本に拡大する計画です。さらに
浸透させていきます。
ヨコハマタイヤ・
ベトナム
現在、トラック・バス用タイヤ工場の隣に
ヨコハマタイヤ・コーポレーション
(セーラム工場)
購入した土地に乗用車用、ライトトラック
ヨコハマタイヤ・
マニュファクチャリング・タイ
用タイヤの工場建設を進めています。同
工場は年間生産能力 140 万本で、2006
年 11 月より量産開始の予定です。42 万
タイヤの生産能力増強計画
2
m の敷地は横浜ゴムグループのタイヤ工
(万本)
高性能タイヤの統一ブランド
「ADVAN」
代 S U V 向け の 商 品で、
日本では「ADVAN」や「DNA」
、海外で
市販用のSUV用として
は「A.V.S.」――。これまで横浜ゴムは、国
は初めてYレンジ(最高
などによって異なるニーズに対応するた
時速 300 kmまで)に対
2004
2005
2006
め、市場ごとにブランド戦略を展開してき
応。快適性や操縦安定性
3,280
3,365
3,440
ました。しかし、高性能タイヤとしてのブ
も高次元でバランスさせ
550
550
550
ランド地位を世界的に高めていくには、統
ました。ターゲットはポ
50
50
50
一されたブランドのもとで、効率的なマー
ル シェ、B M W な ど の
ヨコハマタイヤ・フィリピン
300
400
700
ケティングと商品力の強化を図る必要が
SUV車です。両商品は
杭州ヨコハマタイヤ(中国)
150
150
200
あると判断。スポーツ系タイヤの国内トッ
–
35
175
4,330
4,550
5,115
場としては最大で、その後も需要動向を
にらみながら段階的に生産能力を増やし、
国内工場(三重、三島、新城、新城南)
将来的にはグループ最大の海外総合タイ
ヨコハマタイヤ・コーポレーション(米国)
ヤ生産拠点にする考えです。
GTYタイヤ・カンパニー(米国)
ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリング・タイ
合計
(注)2輪車用タイヤ、ライトトラック用バイアスタイヤを生産するヨコハマタイヤ・ベトナムは除く
2005年春に欧州で先行
プブランド
「ADVAN」
のコンセプトを広げ、 発売し、2005年7月から
横浜ゴムの高性能タイヤの統一ブランド
日本でも発売を開始しま
として世界的に展開する戦略を立ち上げ
した。
Not for Everyone. For those who know real performance.
モータースポーツにも参戦
高い性能と技術力を世界にアピールす
ました。今後はスポーツ用タイヤにとどま
タイヤの性能がワンランクアップする新混練工法
らず、SUV用、ラクジュアリー用などあら
世界のプレミアム・カーへアプローチ
る格好の場として、モータースポーツで
「ADVAN」は市販用だけでなく、OEで
も「ADVAN」を積極的に展開していきま
の展開にも力を入れています。世界で最
す。これまで海外でのモータースポーツ
高性能と認められる車の純正装着の承認
はすべて「YOKOHAMA」の名で参戦し
を取り、海外での知名度を一気に高めて
てきましたが、今後は「ADVAN」を中心
「 A D V A N 」の 第 一 弾 は「 A D V A N
いく戦略です。2004年、第一号の承認を
に据え、その存在感を高めていきます。
Sport」と「 ADVAN S.T.」の 2 種 。
獲 得 することがで きた の は 、英 ベント
すでに国内外レースで「ADVAN」
レーシ
「ADVAN Sport」は、最高時速 300 km
レー・モーターズの「コンチネンタルGT」
。
ングタイヤは高い戦闘力を発揮しており、
くし、冷却してから再度混練する作業を
以上の高速性能に加え、乗り心地や静粛
共同開発により、最高時速 318 km、世
ゆ る カ テ ゴリ ー の 最 高 峰 タ イヤ に
トラック・バス用タイヤで重視されるの
来工法は、ゴムの劣化を招きやすいのが
性が大幅に向上するほか、耐チッピング
は耐久性や耐摩耗性で、これらの性能は
難点でした。
「低温高剪断混練」では新
性(ゴムが切れるまでどれくらい伸びる
ゴムの物性によって決まり、それを左右
開発の可変速ミキサーとロールを組み
か)が10∼15%、耐摩耗性も5∼10%向
するのが混練(原料ゴムやカーボンなど
合わせることで温度上昇を抑え、より低
上します。
を混ぜて練る)工程です。横浜ゴムはこ
温でゴムを劣化させず十分に混練する
さらに、従来の工法は温度の上昇ス
の混練に画期的な新工法「低温高剪断混
ことができるようになりました。その結
ピードが速いため、一回の混練時間を短
練」を採用。より効率的に、より高品質な
果、ゴムの分子量分布が均一で長く、
ゴムを生産できるようになりました。
「ADVAN」を冠します。
第一弾商品を欧州で先行発売
カーボンがより均一に分散するようにな
複数回繰り返していました。しかし、新
性などの快適性にも配慮したハイレベル
界 最 速 を 誇 る 4 シ ー タ ー・ク ー ペ に
新工法は従来より低温で混練を行え
り、耐久性・耐摩耗性に優れるゴムの生
工法ではこうした作業の反復が不要で、
なトータルバランスを実現しています。ポ
「ADVAN Sport」20インチサイズが純正
るのが特長です。
ゴムは温度変化に弱く、
産が可能になりました。
「低温高剪断混
リードタイムが従来の 10 分の1に短縮、
ルシェなどのスーパースポーツカーやブ
装着されました。続けて、2005年発表の
2005 年3 月、国内のスーパーGT開幕戦
で は「 A D V A N 」装 着 車 が G T 5 0 0 、
GT300クラスでダブル優勝を達成。また、
2005 年 6 月の第 73 回ル・マン24 時間耐
気温よりはるかに高い温度で混練する従
練」によるトラック・バス用タイヤは耐久
仕掛品も減少しています。
ラバスなどのチューニングカー、国産の
ポルシェの新型「911カレラ4」でも承認を
久レースでは「ADVAN」を装着したポル
ハイパワー車などがターゲットです。一方、
獲得したほか、トヨタの「レクサスGS」に
シェ911 GT3R(Alex Job Racing)が
従来の混練工法による
ゴム構造モデル
低温高剪断混練工法による
ゴム構造モデル
も「ADVAN」が標準装着されました。
LMGT2クラスで優勝を果たしました。
「ADVAN S.T.」は高速性能を高めた次世
ゲル
ゴム(ポリマー)
カーボン
過酸化物
軟らかく伸びにくいゴム
硬く伸びが良く強いゴム
■ ゴムの分子の長さが小さく不ぞろい
■ ゴムの分子の長さが大きくそろう
■ カーボンが大きな固まりをつくって分散
■ カーボンがより均一に分散
■ 過酸化物が多い
■ 過酸化物が少ない
I MPACT
No. 34 January 2006
ミキシング・ゾーン
世界最速4シーター・クーぺの「コンチネンタルGT」
(英ベントレー・
モーターズ)に「ADVAN Sport」が純正装着された。
スーパーGT開幕戦のGT500クラスで優勝した織戸学、ドミニク・シュワガー両選手(左)
とECLIPSE ADVANスープラ(右)
。
掛品も大幅に減少するなど生産効率の面
グローバル・フラッグシップ・ブランド「ADVAN」
ブランド力の向上めざし、世界市場に本格投入
タイヤの海外生産拠点
でも大幅な改善を実現しています。
最大の総合タイヤ生産拠点に
GTY タイヤ・カンパニー
「ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリン
横浜ゴムの最高峰のタイヤ技術を結集した「ADVAN(アドバン)
」
。
2005年から、世界各地で本格的に販売を開始しました。
杭州ヨコハマタイヤ
グ・タイ」は2007年までに年間生産量を2
新しい高性能タイヤの統一ブランドとして、世界のマーケットに
ヨコハマタイヤ・フィリピン
倍の70 万本に拡大する計画です。さらに
浸透させていきます。
ヨコハマタイヤ・
ベトナム
現在、トラック・バス用タイヤ工場の隣に
ヨコハマタイヤ・コーポレーション
(セーラム工場)
購入した土地に乗用車用、ライトトラック
ヨコハマタイヤ・
マニュファクチャリング・タイ
用タイヤの工場建設を進めています。同
工場は年間生産能力 140 万本で、2006
年 11 月より量産開始の予定です。42 万
タイヤの生産能力増強計画
2
m の敷地は横浜ゴムグループのタイヤ工
(万本)
高性能タイヤの統一ブランド
「ADVAN」
代 S U V 向け の 商 品で、
日本では「ADVAN」や「DNA」
、海外で
市販用のSUV用として
は「A.V.S.」――。これまで横浜ゴムは、国
は初めてYレンジ(最高
などによって異なるニーズに対応するた
時速 300 kmまで)に対
2004
2005
2006
め、市場ごとにブランド戦略を展開してき
応。快適性や操縦安定性
3,280
3,365
3,440
ました。しかし、高性能タイヤとしてのブ
も高次元でバランスさせ
550
550
550
ランド地位を世界的に高めていくには、統
ました。ターゲットはポ
50
50
50
一されたブランドのもとで、効率的なマー
ル シェ、B M W な ど の
ヨコハマタイヤ・フィリピン
300
400
700
ケティングと商品力の強化を図る必要が
SUV車です。両商品は
杭州ヨコハマタイヤ(中国)
150
150
200
あると判断。スポーツ系タイヤの国内トッ
–
35
175
4,330
4,550
5,115
場としては最大で、その後も需要動向を
にらみながら段階的に生産能力を増やし、
国内工場(三重、三島、新城、新城南)
将来的にはグループ最大の海外総合タイ
ヨコハマタイヤ・コーポレーション(米国)
ヤ生産拠点にする考えです。
GTYタイヤ・カンパニー(米国)
ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリング・タイ
合計
(注)2輪車用タイヤ、ライトトラック用バイアスタイヤを生産するヨコハマタイヤ・ベトナムは除く
2005年春に欧州で先行
プブランド
「ADVAN」
のコンセプトを広げ、 発売し、2005年7月から
横浜ゴムの高性能タイヤの統一ブランド
日本でも発売を開始しま
として世界的に展開する戦略を立ち上げ
した。
Not for Everyone. For those who know real performance.
モータースポーツにも参戦
高い性能と技術力を世界にアピールす
ました。今後はスポーツ用タイヤにとどま
タイヤの性能がワンランクアップする新混練工法
らず、SUV用、ラクジュアリー用などあら
世界のプレミアム・カーへアプローチ
る格好の場として、モータースポーツで
「ADVAN」は市販用だけでなく、OEで
も「ADVAN」を積極的に展開していきま
の展開にも力を入れています。世界で最
す。これまで海外でのモータースポーツ
高性能と認められる車の純正装着の承認
はすべて「YOKOHAMA」の名で参戦し
を取り、海外での知名度を一気に高めて
てきましたが、今後は「ADVAN」を中心
「 A D V A N 」の 第 一 弾 は「 A D V A N
いく戦略です。2004年、第一号の承認を
に据え、その存在感を高めていきます。
Sport」と「 ADVAN S.T.」の 2 種 。
獲 得 することがで きた の は 、英 ベント
すでに国内外レースで「ADVAN」
レーシ
「ADVAN Sport」は、最高時速 300 km
レー・モーターズの「コンチネンタルGT」
。
ングタイヤは高い戦闘力を発揮しており、
くし、冷却してから再度混練する作業を
以上の高速性能に加え、乗り心地や静粛
共同開発により、最高時速 318 km、世
ゆ る カ テ ゴリ ー の 最 高 峰 タ イヤ に
トラック・バス用タイヤで重視されるの
来工法は、ゴムの劣化を招きやすいのが
性が大幅に向上するほか、耐チッピング
は耐久性や耐摩耗性で、これらの性能は
難点でした。
「低温高剪断混練」では新
性(ゴムが切れるまでどれくらい伸びる
ゴムの物性によって決まり、それを左右
開発の可変速ミキサーとロールを組み
か)が10∼15%、耐摩耗性も5∼10%向
するのが混練(原料ゴムやカーボンなど
合わせることで温度上昇を抑え、より低
上します。
を混ぜて練る)工程です。横浜ゴムはこ
温でゴムを劣化させず十分に混練する
さらに、従来の工法は温度の上昇ス
の混練に画期的な新工法「低温高剪断混
ことができるようになりました。その結
ピードが速いため、一回の混練時間を短
練」を採用。より効率的に、より高品質な
果、ゴムの分子量分布が均一で長く、
ゴムを生産できるようになりました。
「ADVAN」を冠します。
第一弾商品を欧州で先行発売
カーボンがより均一に分散するようにな
複数回繰り返していました。しかし、新
性などの快適性にも配慮したハイレベル
界 最 速 を 誇 る 4 シ ー タ ー・ク ー ペ に
新工法は従来より低温で混練を行え
り、耐久性・耐摩耗性に優れるゴムの生
工法ではこうした作業の反復が不要で、
なトータルバランスを実現しています。ポ
「ADVAN Sport」20インチサイズが純正
るのが特長です。
ゴムは温度変化に弱く、
産が可能になりました。
「低温高剪断混
リードタイムが従来の 10 分の1に短縮、
ルシェなどのスーパースポーツカーやブ
装着されました。続けて、2005年発表の
2005 年3 月、国内のスーパーGT開幕戦
で は「 A D V A N 」装 着 車 が G T 5 0 0 、
GT300クラスでダブル優勝を達成。また、
2005 年 6 月の第 73 回ル・マン24 時間耐
気温よりはるかに高い温度で混練する従
練」によるトラック・バス用タイヤは耐久
仕掛品も減少しています。
ラバスなどのチューニングカー、国産の
ポルシェの新型「911カレラ4」でも承認を
久レースでは「ADVAN」を装着したポル
ハイパワー車などがターゲットです。一方、
獲得したほか、トヨタの「レクサスGS」に
シェ911 GT3R(Alex Job Racing)が
従来の混練工法による
ゴム構造モデル
低温高剪断混練工法による
ゴム構造モデル
も「ADVAN」が標準装着されました。
LMGT2クラスで優勝を果たしました。
「ADVAN S.T.」は高速性能を高めた次世
ゲル
ゴム(ポリマー)
カーボン
過酸化物
軟らかく伸びにくいゴム
硬く伸びが良く強いゴム
■ ゴムの分子の長さが小さく不ぞろい
■ ゴムの分子の長さが大きくそろう
■ カーボンが大きな固まりをつくって分散
■ カーボンがより均一に分散
■ 過酸化物が多い
■ 過酸化物が少ない
I MPACT
No. 34 January 2006
ミキシング・ゾーン
世界最速4シーター・クーぺの「コンチネンタルGT」
(英ベントレー・
モーターズ)に「ADVAN Sport」が純正装着された。
スーパーGT開幕戦のGT500クラスで優勝した織戸学、ドミニク・シュワガー両選手(左)
とECLIPSE ADVANスープラ(右)
。
C
T
P
IM A
横滑りをより早く、より正確に感知
車の安全技術をさらに進化させる「Gセンサー・システム」
2005年10月、横浜ゴムは次世代型タイヤモニタリングシステム「Gセンサー・システム」を発表しました。
タイヤの空気圧だけでなく、走行中の路面状況やタイヤの挙動を精密に感知できる画期的な技術です。
自動車への搭載が進む横滑り防止システムと組み合わせると、既存システムに比べ0.2秒早く横滑りを感知し、
時速100kmの場合で11m早く車両制御を実行できます。
車体センサー信号と
ホイールセンサー信号の比較
Gセンサー<3軸加速度センサー>
No. 34
Jan. 2006
最新の事業活動を紹介する情報誌
横浜ゴム株式会社
タイのトラック・バス用タイヤ工場が稼動
画期的な新混練工法で品質向上、リードタイムも短縮
2005年4月、トラック・バス用タイヤの生産拠点「ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリング・タイ」が
車体センサー信号
生産を開始しました。新工場には新混練工法など最新の生産技術を投入。
マイクロプロセッサー
品質向上に加え、より効率的な生産体制を実現しています。
ホイールセンサー信号
モジュール
約0.25秒の時間差
ホイールリムに装着した「Gセンサー・モジュール」
。重さ約10gの軽量でありながら、最大時速300km
(重力加速度1000G)に耐えられる強度を持つ
横滑りをタイヤで感知
ホイールセンサー
車体センサー
日本以外の世界市場へ商品供給
域です。天然ゴムの産地でもあり、部品や
35 万本です。設備全体がコンパクトなた
「ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリン
原材料の調達が比較的容易のほか、多数
め、着工から生産立ち上げまでの期間が
グ・タイ」は輸出がメインで、世界的に需要
進出している日系カーメーカーからの受
短く、早期に黒字化を図れるのが最大の
の多い内径22.5インチサイズの生産が中
注取り込みも狙えます。また、質の高い労
特徴です。
「ヨコハマタイヤ・マニュファク
チャリング・タイ」の建設期間は約 1 年、投
(ハンドルの向き情報)の3つの動きを検知
ムを導入すれば、タイヤの空気圧監視と
心です。これまでトラック・バス用タイヤは
働力に恵まれ、外資優遇税制を受けられ
横滑り防止システムは、制御コンピュー
できます。そのため、車の挙動やタイヤ性
横滑り防止機能をひとつにすることも可
三 重 工 場と米 国 の G T Yタイヤ・カン パ
ることなどから、工場建設には最適と判断
資金額は55億円で、従来のトラック・バス
タが車の状態を常時モニタリングし、横滑
能、濡れた路面と乾いた路面の識別など
能です。
ニー(横浜ゴム、コンチネンタル、東洋ゴ
しました。
用タイヤ工場に比べ建設期間、投資金額
りを感知するとエンジン出力を制御した
多くの特性を判別できるようになりまし
ム工業の合弁会社)の2拠点で生産してい
り4輪個別にブレーキをコントロールする
た。車体より動作環境の厳しいタイヤ内部
ましたが、旺盛な需要をまかないきれな
少量生産で採算のとれる小規模一貫
ことで、安定した姿勢に車両を制御する
(ホイールリム)に装着できる3軸加速度セ
い状況でした。
こうした供給不足を解消し、
生産方式
技術です。通常、制御コンピュータに情報
20%以上の伸びで市場拡大
ンサーは世界初です。
を送る各種センサーは車体に取り付けら
れていますが、横浜ゴムはタイヤがスリッ
高精度を実現する
プしてからセンサーが検出するまでに時
超高速マイクロプロセッサー
横滑り防止システムの装着台数は、
とも半分以下に抑えられました。
品質、生産効率ともに向上
世界的に拡大しているトラック・バス用タ
「ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリン
小規模一貫生産方式のほか、
「ヨコハマ
イヤの需要を積極的に取り込むのが新工
グ・タイ」にも、
「ヨコハマタイヤ・フィリピ
タイヤ・マニュファクチャリング・タイ」には
場建設の狙いです。
ン」
「杭州ヨコハマタイヤ(中国)
」と同様、
随所に新しい生産技術を導入しています。
小規模一貫生産方式を採用しました。タ
特に混練工程に導入した「低温高剪断混
イヤの生産は① 混練 ② 材料加工 ③ 成形
練」は、より高品質なゴムを生産できる画
この2、3年、年平均成長率20%以上
東南アジア最大の自動車産業集積地
もうひとつの特長は、同じくセンサー・
の 伸 びで 拡 大して います 。自 動 車
イールリム)
にセンサーを装着することで、
モジュールに組み込んだ超高速低消費電
メーカーなどのデータから事故抑制
場所はバンコクの東南120kmのラヨー
④加硫⑤検査――の大きく5工程に分かれ
期的な新工法で、トラック・バス用タイヤ
より早く横 滑りを 感 知 で き る「 G セ ン
力のマイクロプロセッサー。既存システム
効果の高さが実証されており、メルセ
ン県アマタシティ工業団地。タイは「アジ
ますが、
「ヨコハマタイヤ・マニュファク
の耐久性や耐摩耗性が向上します。さら
サー・システム」を開発しています。
のセンサー信号は60 パルス程度ですが、
デス・ベンツが全車種に標準装着して
アのデトロイト」と呼ばれ、東南アジアの
チャリング・タイ」は混練から加硫までのラ
に成形工程、加硫工程にも新技術を採用。
同モジュールは4096(12ビット)パルスの
いるほか、ビッグスリーが2005 年モ
中で最も自動車部品産業の集積が進む地
インが従来の3 分の1で、生産能力も年間
リードタイムを従来の3分の1に短縮し、仕
高分解な信号に変換可能で、より微小な
デルから大型SUVを中心に標準装着
「Gセンサー・システム」はホイールリム
変化を検出できます。3軸加速度センサー
を進めていく方針を出しました。現状
に装着するセンサー・モジュールに、圧力
で得た高感度な信号を、超高速マイクロ
の装着率は欧州が35%を超えている
センサーと温度センサーに加え、3軸加速
プロセッサーで緻密に処理 ―
―このふたつ
ものの、日本、米国は10 %前後。普
度センサーを内蔵しているのが特長。3軸
のキーデバイスの開発により、より早く、
及率はまだ低いですが、今後大きく
加速度センサーはタイヤの回転方向(路
より正確に横滑りを感知できる「Gセン
市場が拡大すると予測されます。
面情報)
、遠心力方向(速度情報)
、横方向
サーシステム」が実現しました。同システ
間差が生じることに着目。直接タイヤ(ホ
車の挙動から路面状況まで識別
I MPACT
No. 34 January 2006
発行:横浜ゴム株式会社 広報部広報・IRグループ
本誌内容に関するお問い合わせ先:
〒105-8685 東京都港区新橋5丁目36番11号
TEL: (03) 5400-4531 FAX: (03) 5400-4570
2005年7月、出荷開始に合わせて
開所式を行った。
ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリング・タイ。2006年11月の稼働予定で、年間生産能力140万本の乗用車・ライトトラック用
タイヤ工場の建設も始まっている。