コンドロイチン硫酸含有ムコ多糖蛋白健康食品 に関する検討結果中間

平成 23 年 6 月 1 日
CRN JAPAN(日本栄養評議会) 会員各位
コンドロイチン硫酸含有ムコ多糖蛋白健康食品
に関する検討結果中間報告書
コンドロイチン硫酸含有ムコ多糖蛋白専門部会
1.経緯説明
2008 年 8 月 7 日に、独立行政法人国民生活センターより『関節に良いとされ
る成分を含む「健康食品」に関する商品テスト結果』
(以下商品テスト結果とい
う)が公表された。コンドロイチン及びグルコサミンを含む市販健康食品 18 銘
柄と、参考品としてコンドロイチン硫酸を含む医薬品 4 銘柄が調査対象となっ
た。この公表結果の中で、コンドロイチン硫酸の表示量や基原原料に関する問
題提起と、業界への改善要望がなされた。そこで、本件に関する改善策を検討
すべく、2008 年 10 月 7 日に一丸ファルコス、小林製薬、ビーエイチエヌ、日本
水産、マルハニチロ食品、焼津水産化学工業、ヤエガキ発酵技研、ユーエスキ
ュア、ユニキスの 9 社が参画してコンドロイチン硫酸含有ムコ多糖蛋白専門部
会が設立され、さらに 2009 年 1 月 22 日からは技術部会(マルハニチロ食品、
焼津水産化学工業、ヤエガキ発酵技研、ユニキス)の中で詳細な検討を行って
きた。
2.商品テスト結果の概要
公表された商品テスト結果の概要(コンドロイチン硫酸関係のみ抜粋)は以
下の通りである。
1.コンドロイチン硫酸量
「コンドロイチン硫酸」表示銘柄のコンドロイチン硫酸量が表示量に比べ実
測値は大幅に少なかった。また、コンドロイチン硫酸を含む原材料等の表示量
は、実際の含有量の目安にはならなかった。
2.基原原料
「サメ由来」のコンドロイチン硫酸を含有する原材料を配合している旨の表
示があった 16 銘柄の内、陸生哺乳動物由来のコンドロイチン硫酸が配合されて
いる可能性の高い銘柄が 6 銘柄あった。そのうち 3 銘柄は陸生哺乳動物由来の
原材料名の表示が無く、JAS 法上問題がある可能性が高い。
3.原材料表示
大部分の銘柄は、コンドロイチン硫酸を含む原材料の量を表示しており、実
際に含まれるコンドロイチン硫酸量は分りにくかった。医薬品に匹敵若しくは
上回る量のコンドロイチン硫酸を含むと消費者が誤認するおそれがある。
3.商品テスト結果の解析
当部会において、上記商品テスト結果の内容を解析した。
1.コンドロイチン硫酸量
現在、健康食品原料の一般的分析法は、
「硫酸バリウム法」あるいは「カルバ
ゾール硫酸法」であり、これら分析法においてはコンドロイチン硫酸を含むム
コ多糖類の総量として定量されている。すなわち、ムコ多糖類量=コンドロイ
チン硫酸量ではない。一方、商品テストにおいて用いられた分析法は HPLC 法
(AOACI 法※)であり、分析法が原理的に異なる。分析法の違いが原因のひとつ
と考えられた。
※ Journal of AOAC International Vol.90,No.3,2007
2.基原原料
判定方法として、コンドロイチン分解酵素(コンドロイチナーゼ)によって
生成する2種の不飽和二糖である4S(ΔDi-4S※)/6S(ΔDi-6S※)の比が0.76
より大きい場合、陸生哺乳動物由来である可能性が高いとしている。しかし、
サメの種類や使用する軟骨の部位によっては4S/6S比が異なる可能性が示唆さ
れた他、本法では微量のコンタミネーションは判別できないことも問題と考え
られた。
※ΔDi-4S:2-acetamido-2-deoxy-3-O-(βD-gluco-4-enepyranosyluronic acid
-4-Osulfo-D-galactose)
※ΔDi-6S:2-acetamido-2-deoxy-3-O-(β-D-gluco-4-enepyranosyluronic
acid)-6-O-sulfo-D-galactose)
3.原材料表示
「コンドロイチン硫酸」
「サメ軟骨抽出物」
「ムコ多糖類」
「ムコ多糖蛋白複合体」
等様々な表示方法がなされていた。また、販売者がムコ多糖量=コンドロイチ
ン硫酸量あるいはサメ軟骨抽出物量=コンドロイチン硫酸量として誤って認識
している可能性が示唆された。
4.技術部会の検討結果
1.コンドロイチン硫酸量
AOACI 法※では、標準品に、試薬として販売されている 6 種類の不飽和二糖を
使用していたが、高額であることや、一部の不飽和二糖はメーカーが廃業して
おり入手が困難であることが分った。そこで、会員企業であるマルハニチロ食
品が製造し、ナカライテスク社より販売している研究用試薬「コンドロイチン
硫酸 C ナトリウム」
(サメ軟骨由来、医薬品グレード)を標準品と定義して、新
たな HPLC による分析法を確立した。分析法の概要は以下の通りである。
①標準品(コンドロイチン硫酸 C ナトリウム)をコンドロイチナーゼ ABC(生化
学 BB)で酵素分解。
②生成する不飽和二糖を HPLC で分析。定性には不飽和コンドロ二糖キット(生
化学 BB)を使用。ピーク総面積を基に検量線を作成。
③分析試料について同様の処理を行い、検量線から算出。
本法は、サメ軟骨由来のコンドロイチン硫酸量の定量のみに適用されるもの
であり、定量値を「コンドロイチン硫酸」と表示可能である。また共存成分(グ
ルコサミン、MSM、ヒアルロン酸、賦形材等)の影響が少ないなどの特徴がある。
本法により、現在市販されている原料 3 種類について、4 機関により同一試料
を分析した結果、分析機関による差は少なく、分析機関間の併行精度が確認さ
れている(下表)。原料中のコンドロイチン硫酸定量分析については、財団法人
日本食品分析センターにおいてその妥当性(分析バリデーション)が確認され、
「CRN-Japan 法」として分析委託できる。
A機関
測定結果(g/100g)
試料1
試料2
B機関
試料3
測定結果(g/100g)
試料1
試料2
試料3
平均(n=7)
32.5
25.4
38.4
平均(n=7)
33.0
26.2
37.9
標準偏差
0.82
0.56
0.62
標準偏差
1.06
0.66
1.38
相対標準偏差(%)
2.53
2.19
1.62
相対標準偏差(%)
3.20
2.53
3.64
C機関
測定結果(g/100g)
試料1
試料2
D機関
試料3
測定結果(g/100g)
試料1
試料2
試料3
平均(n=6)
34.1
26.8
39.3
平均(n=7)
31.8
25.1
37.3
標準偏差
0.80
1.36
1.51
標準偏差
0.92
0.77
0.48
相対標準偏差(%)
2.33
5.07
3.83
相対標準偏差(%)
2.89
3.07
1.27
2.基原原料
技術部会におけるサメの種類・部位による 4S/6S 比を検討した結果、種類・
部位によって違いはあるものの 6S 優位であることが分かった。しかし、判定基
準値(4S/6S 比が<0.76 であればサメ由来である可能性が高い)の設定は、今
後の検討課題である。微量のコンタミネーションを判別するための補完的手段
としては、PCR(polymerase chain reaction)法による畜肉(牛、豚、羊、鶏、
馬)由来の DNA 配列分析で確認することとした。さらに、原料メーカーが責任
をもって目視による原料使用前検査を行い、記録に残すことを徹底する。
3.原材料表示
原材料表示は食品原料として医薬品原料との違いを明確にするため、
「サメ軟
骨抽出物」、「ムコ多糖蛋白複合体」などの表記が望ましいと考えられた。枠外
表示としてコンドロイチン硫酸量を記載する場合は、本部会で開発した HPLC 法
により分析した数値を記載することとした。さらに、起源動物の記載を徹底す
るよう周知することとした。
以上の検討結果については、平成 22 年 10 月 27 日に国民生活センターに報告
した。また、平成 22 年 11 月 25 日に CRN-Japan 第 61 回勉強会において口頭発
表を行った。
5.今後の検討課題
①製剤の分析
コンドロイチン硫酸の配合量を変えて製剤を2種類試作し、複数社による分
析確認を行う。製剤分析については、共存物質を除去するための前処理が必要
と考えられるので、日本食品分析センターに妥当性の確認を依頼する。
③分析法の普及活動とコンプライアンスの啓蒙
本部会で開発したコンドロイチン硫酸の定量分析法については、学会発表、
論文投稿等による公開と普及に尽力する。薬事法(食薬区分)、食品衛生法、景
品表示法等の法令順守を改めて業界内で周知徹底するよう努力する。
以上