麻酔科蘇生科 専門医養成コース

麻酔科蘇生科 専門医養成コース
概要
麻酔科蘇生科の歴史は比較的新しく,昭和 41 年(1966)に金沢大学医学部麻酔学教室/麻酔科と
して発足した.当初は他教室の教授が麻酔学教授を併任していたが,昭和 53 年に初代主任教授に
村上誠一が就任し,以後約 150 人の麻酔科専門医を輩出している.平成2年(1990)に麻酔・蘇生学
教室/麻酔科蘇生科に改称し,平成 12 年(2000)には救急医学講座の発足に伴い,救急部・集中治
療部が麻酔科蘇生科から独立した.平成 14 年(2002)に第 4 代教授として当教室出身の山本健教授
が就任.現在は,第 5 代教授として,当教室出身で長く,救急・集中治療分野で活躍してこられた谷
口巧教授のもと,手術室・集中治療室を中心とした周術期麻酔管理と,緩和医療(とくにがん性疼痛
治療)を 2 本柱として活動している.
当科の特色
1) 周術期麻酔管理
i) 手術室
当院では,ありとあらゆる手術に対応した周術期管理を提供している.特に心臓手術は,緊
急手術も含め年間 200 件以上の実績があり,また心臓血管麻酔専門医認定施設であるため
充実した研修(S-G カテーテルを用いた血行動態評価,経食道心エコーを用いた術中診断)
を提供できると思われる.その他でも肝移植,腎移植,小児手術,産科緊急など幅広く研修
を行うことが出来る.夜間拘束においても必ず専門医以上のスタッフが当直をしており,後期
研修医のみで緊急手術の麻酔を行うことはないため,安心して研修に専念できるものと考え
られる.
ii) 集中治療室
現在谷口教授は,集中治療部長も兼任しており,麻酔科からもスタッフを派遣して ICU 管理を
主体的に行っている.当 ICU の特徴として,内科,外科,成人,小児の区別なく院内の重症患
者すべてを引き受ける体制をとっており,幅広い疾患を経験することが出来る.特に循環器
疾患,肝不全の治療においては,ICU スタッフと内科,および外科が科の垣根なく率直に意
見を言い合うことで適切な治療方針,良好な治療成績につながっている.現在22 床の ICU ベ
ッドのうち.より重症な 10〜15 床程度を ICU スタッフが主体的に管理する semi-closed 方式で
管理している.
2)緩和医療(ペインクリニック)領域
当院は都道府県がん診療連携拠点病院に指定されており,がん高度治療センターを開設している.
麻酔科医は,緩和ケアチームのリーダーとしても活躍しており,がん性疼痛治療に積極的に関わっ
ている.麻酔科医による専門的な痛み治療として,強オピオイド注射薬を用いた静脈内(皮下)PCA
や,硬膜外およびくも膜下鎮痛,神経破壊薬を用いた神経ブロック療法,ケタミンやベンゾジアゼピ
ンあるいは抗精神病薬等の精密投与により身体的および精神的苦痛に対応している.
また,ロゴセラピーやがん哲学外来を応用して,早期からスピリチュアルペインの軽減を得られる
よう新たな医療にも取り組んでいる.
スタッフ
谷口 巧 教授 (金沢大学卒)
(資格) 日本麻酔科学会指導医・専門医,救急医学会指導医,集中治療医学会指導医
(専門分野) 臨床麻酔,心臓麻酔,救急医学,集中治療医学
山田 圭輔 准教授 (金沢大学卒)
(資格) 日本麻酔科学会指導医・専門医,日本ペインクリニック学会専門医
日本緩和医療学会暫定指導医
(専門分野) 緩和医療,ペインクリニック
栗田 昭英 手術部准教授 (金沢大学卒)
(資格) 日本麻酔科学会専門医,心臓血管麻酔専門医,集中治療専門医
(専門分野) 臨床麻酔,心臓血管麻酔,集中治療
小室 明子 助教 (金沢大学卒)
(資格) 日本麻酔科学会専門医
(専門分野) 臨床麻酔
松久 大希 助教 (金沢大学卒)
(資格) 日本麻酔科学会専門医
(専門分野) 臨床麻酔,心臓血管麻酔
山本 剛史 助教 (金沢大学卒)
(資格) 日本麻酔科学会専門医
(専門分野 ) 臨床麻酔,心臓血管麻酔,集中治療
臼倉 愛 助教 (三重大学卒)
(資格) 日本麻酔科学会専門医
(専門分野) 臨床麻酔
澤村 英一郎 助教 (旭川医大卒)
(資格) 日本整形外科学会専門医,麻酔科認定医
(専門分野) 臨床麻酔
藤井 優佳 特任助教 (金沢大学卒)
(資格) 日本麻酔科学会専門医
(専門分野) 臨床麻酔,心臓血管麻酔
研修プログラム

本プログラムでは専攻医と相談し,専攻医の希望するプログラムを作る,いわゆるオーダーメイド
プログラム作成を行い,それに則して研修を行う.

研修の 4 年のうち,少なくとも 2 年間は責任基幹病院で研修を行う.ただし,専攻医の希望により
変更は可能である.

専攻医の希望により,救急、集中治療,ペインクリニックでも研修を行うことが出来る.研修内容・
進行状況に配慮して,本専門医研修プログラムに所属する全ての専攻医が,経験目標に必要な
特殊麻酔症例数を達成できるように,研修プログラムを毎年再検討する.
診療内容と症例数
1) 手術麻酔
平成 17 年 9 月より 14 の手術室を有する新手術室が稼働し,平成 18 年 5 月からは電子麻酔記録
システムを全面的に導入した.年間約 6000 件の手術が行われており,そのうち麻酔科管理症例
は約 4000 件である.平成 27 年度より新たな麻酔科専門医研修プログラムが開始される予定であ
り,小児麻酔,帝王切開,心臓麻酔,胸部外科麻酔,脳神経外科麻酔の必要研修症例数が決め
られ,症例数の整った病院での研修が必須となる.当院手術室では,小児 150 例,帝王切開 130
例,心臓血管麻酔 250 例,胸部外科 250 例,脳神経外科 200 例と十分な症例数を確保できてい
る.また,金沢大学附属病院麻酔科専門医研修プログラムには,金沢大学を含め 13 の関連病院
からなっており,最大で 30 人まで専攻医の受け入れが可能である.
2) 緩和医療とペインクリニック
緩和医療とペインクリニックにも積極的に取り組んでいる.平成 18 年 5 月には緩和ケアチームが
正式に発足し,麻酔科医がそのリーダーとなって活動している.特にがん性疼痛と術後痛に対す
る,静脈内 PCA による疼痛治療の普及に力を注いでいる.平成 19 年には当院が石川県がん拠点
病院の指定を受けるとともに,院内にがん高度治療センターを開設し,緩和医療の需要はますます
増しており,1 カ月あたり述べ 200 人をこえる患者さんの診療を行っている.
なお,金沢大学附属病院では,原発性あるいは転移性脊椎腫瘍に対する集学的治療を行ってい
る.手術が可能な症例は整形外科が中心となって椎体全摘術を初めとする外科的治療を行い,高
い治療成績を挙げている.また手術が不可能な症例には,放射線科,麻酔科,整形外科が協力し
て,インターベンショナル・ラジオロジー治療(経皮的椎体形成術・経皮的ラジオ波焼灼術),放射線
治療,薬物治療を組み合わせ,良好な除痛成績を得ている.
資格取得
麻酔科標榜医:厚労省認定の資格.2年間麻酔に専従し,全身麻酔症例を300例以上経験することな
どが条件になります.
麻酔科専門医:日本麻酔科学会認定の資格.当面の目標です.麻酔科認定医となってから2年間の
麻酔専従期間を経て,筆記試験と口頭試験を受けます.学会参加,研究発表,論文執筆などの業績
が必要になります.
麻酔科指導医:麻酔科専門医のさらに上級の資格です.専門医を取得してから5年後に業績と共に
申請して取得します.
集中治療専門医:麻酔科専門医取得後,当院集中治療部にて研修することで受験資格を得ることが
できます.
ペインクリニック専門医:多くの方は,麻酔科専門医を取得して受験することになります.ペインクリ
ニックに関わる研修を1年以上行い,学会参加,研究発表,論文執筆などの業績が必要になります.
緩和医療専門医: 平成22年度より専門医制度が発足しました.
心臓血管麻酔専門医:平成23年度より専門医制度が発足しました.研修施設として認定済.
救急専門医:希望があれば,麻酔専門医取得後に救急専門医を取得できる施設で研修できます.
学位取得
大学院に入学した場合にも,臨床研修を並行して行ってもらいます.週に1日の研究日を設定しま
す.最初の3年間で研究を終了し,4 年目は主として学位論文執筆にあてるつもりでいてください.
専門医養成コース後の進路
サブスペシャリティ研修として,麻酔科専門医以外に救急専門医,集中治療専門医,ペインクリニッ
ク専門医のうちから少なくとも1つの取得を目指し,さらに研鑽を積んでもらいます.心臓血管麻酔専
門医の研修施設であるため,これも取得可能です.
留学
留学を希望する場合は漠然とした希望ではなく,「〜を研究するために〜大学へ留学したい」といっ
たはっきりとした目標が必要です.留学のための条件は,1)留学先で必要な語学試験に合格してい
ること2)1篇以上の英語論文を発表していることです.近年では,カロリンスカ大学(スウェーデン),
プリマス大学大学院(英国),カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校,テキサス州立大学サウスウ
エスト校への留学があります.
臨床技術を高めるために,国内施設への研修も可能です.近年では,国立がんセンター東病院緩
和ケア科,静岡県立こども病院への出向があります.
関連施設
石川県
金沢医療センター 麻酔科
金沢社会保険病院 麻酔科
金沢市立病院 麻酔科
金沢赤十字病院 麻酔科
石川県立中央病院 麻酔科
石川県済生会金沢病院 麻酔科
公立松任石川中央病院 麻酔科
小松市民病院 麻酔科
芳珠記念病院(能美市) 麻酔科
富山県
市立砺波総合病院 麻酔科
高岡市民病院 麻酔科
厚生連高岡病院 麻酔科
富山労災病院 麻酔科
福井県
福井県立病院 麻酔科
神奈川県
横浜栄共済病院 麻酔科
連絡先
〒920-8641 石川県金沢市宝町13-1
金沢大学附属病院麻酔科蘇生科
TEL:076-265-2433
FAX:076-234-4267
ホームページ: http://anesth.w3.kanazawa-u.ac.jp/
E-mail:
小室明子(医局長):[email protected]
栗田昭英(手術部):[email protected]