特 集 総合リハビリテーションセンター

No.
発行日●平成
Renpoh
特集
314
28 年 7 月 31 日
発行人●飯田メディカルヒルズ
編 集 IMH 広報委員会
長野県飯田市毛賀 1707 番地
TEL 0265 − 26 − 8111 ㈹
総合リハビリテーションセンター
私達がリハビリを担当します ‼
総合リハビリテーションスタッフ ■目次
■ 特 集
P2
●
リハビリテーションって ?
P5 リハビリテーション分野での最先端機器の導入
●
P3
●
地域包括ケアシステムとリハビリについて
P6
●
P4 総合リハビリテーションセンター
●
日進月歩で進むリハビリテーション
~研究会開催・学会参加~
RENPOH
リハビリテーションって?
リハビリテーション部門統括部長 医師 清水 康裕
リハビリテーション(以下、リハ)という語源は、ラテン語で、re(再び)+ habilis(適した)
であり、「再び適した状態になること」、「本来あるべき状態への回復」などを意味します。
リハ医学は、患者さんがよりよく生きるための生活再建をお手伝いするユニークな「活動の医学」
です。
私達は、操作、移動、摂食・排泄の3つの運動領域と、コミュニケーション、判断の 2 つの認知領域、
これら 5 つの『中心的活動領域』に関与します。
『中心的活動領域』
運動領域
操作
認知領域
移動
コミュニケ—ション
摂食・排泄
また、関与する疾患は脳血管障害、脊髄損傷、いろいろ
な骨折、関節リウマチ、四肢切断、先天性疾患、呼吸器疾患、
循環器疾患など、幅広く網羅しています。
これらは個々の疾患に対応して、複雑に思われるかもし
れませんが、個々の疾患を横断的に捉える考え方がリハ医
学なのです。
最近は、○○(がん・呼吸・回復期・訪問など)のリハ
と、いくつも名称がありますが、基本は一緒で、運動学習、
環境調整、不動・廃用(長期安静によって起こる筋力や耐
久性の低下等々)への対応が重要です。
2
判断
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地域包括ケアシステムとリハビリについて
総合リハビリテーションセンター長 医師 加藤 譲司
厚生労働省は、団塊の世代が 75 歳以上となる
う専門的なサービスの前提として「住まい」と「生
2025 年を目途に、重度な要介護状態となっても
活支援・福祉サービス」の整備があるとしました。
住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後
リハビリに期待されているものは、病院等におけ
まで続けることができるよう、医療・介護・予防・
る発病後の重度化防止や機能回復を意味する「三
住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括
次予防」だけでなく、その前段階にあたる発症前
ケアシステムの構築を提唱しました。疾病を抱え
の早期発見・早期介入を意味する「二次予防」や
ても、自宅等の住み慣れた生活の場で療養し、自
健康な地域住民を対象に発病を防ぎ、さらに健康
分らしい生活を続けられるためには、地域におけ
や生活機能の増進を図る「一次予防」にまで及び
る医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ
ます。
(図 2)
継続的な在宅医療・介護の提供を行うことが必要
Iida Medical Hills(IMH) では、これらの「三
です。厚生労働省においては、
関係機関が連携し、
次予防」から「一次予防」まで地域にリハビリを
多職種協働により在宅医療・介護を一体的に提供
提供できる体制を整えています。突然の病気で入
できる体制を構築するための取組を推進していま
院したときの一般病棟での急性期リハビリや、脳
す。
卒中や大腿骨頚部骨折など他病院で急性期治療し
地域包括ケアシステムでは、5つの構成要素が
たあとの回復期リハビリが「三次予防」を担いま
より詳しく表現されて「介護・リハビリテーショ
す。病院の通院リハビリ、万年青苑の通所リハビ
ン」
「医療・看護」
「保健・予防」
「福祉・生活支援」
「住
リ、中部デイサービスセンターの通所介護で行っ
まいと住まい方」となり、リハビリが明示されま
ている予防介護事業が「二次予防」を担います。
した。また、これらは「ばらばらに提供されるの
下久堅診療所で仁科先生が中心で行っている地域
ではなく、それぞれの役割に基づいて互いに関係
住民を対象にした健康教室が「一次予防」を担い
しながら、また連携しながら在宅の生活を支えて
ます。当 IMH グループで住み慣れた地域で自分
いる」とし、「植木鉢」
(図 1)に喩え、これらは
らしい暮らしを人生の最後まで続けることができ
並列の関係でなく、
「介護」
「医療」
「予防」とい
るようにリハビリ機能の充実を目指しています。
図1 地域包括ケアシステムとは
図2 介護予防の目指すところのリハ
【出典】厚生労働省労働局
【出典】厚生労働省労働局
「地域包括ケアシステムの構築における今後の検討
「これからの介護予防~地域づくりによる介護予防の推進~」
のための論点」
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RENPOH
総合リハビリテーションセンター
総合リハビリテーションセンター 理学療法士 主任 兼子 貴至
当院の総合リハビリテーションセンター
は、C 館5階にあります。センターは天竜
川を望む側が全面窓になっており、明るい
だけでなく、遠くには、南アルプス仙杖岳
が、足元には天竜舟下りが通るところを見
ることができます。なかなか入院している
患者さまは外の景色を見る余裕がない場合
が多いですが、川、山、そして水神橋、舟
下りと飯田の良いところを一望できる絶景
となっています。
リハセンターからの眺め
当センターは県内でも有数の広さのリハビリ
リテーションを行っています。総合リハビリテー
テーション室で、歩行訓練などをしっかりと行う
ションセンターでのリハビリの他に、病棟や病室
ことができます。また、リハビリテーションを担
に療法士が出向くこともあります。中庭で畑作業
う療法士が豊富におり、老人保健施設、訪問看護
をしたり、駄科駅まで歩いてみるなど、退院後の
ステーション勤務の療法士を合わせて理学療法士
生活をサポートするために、医師、看護師、介護
が48名、作業療法士が26名、言語聴覚士が9
士、相談員などと協力して様々な活動を行ってい
名、合計83名と、南信で1、2を争う療法士数
ます。また、センターを中心に、老健、通所、外
です。広いリハビリテーション室と豊富な療法士
来、訪問等、様々なリハビリテーションサービス
数により、患者さまへマンツーマンの充実したリ
を備えていることで、入院中から退院後まできめ
ハビリテーションを提供しています。たとえば回
細かいリハビリテーションを提供できる強みがあ
復期リハビリテーション病棟に入院している患者
ります。
さまでしたら、1 日に2時間から3時間のリハビ
リハセンターの様子
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リハビリテーション分野での最先端機器の導入
総合リハビリテーションセンター 理学療法士 主任補 青木 郁弥
近年、リハビリテーション分野ではロボットを
昨年から患者さまが搭乗し、好評をいただいて
使用した新しいリハビリテーションの提案が多く
おります。この夏からは、通所リハビリテーショ
みられています。ロボットというと、人型ロボッ
ンの利用者さまにも搭乗していただき、新しいリ
トをイメージされる方が多いですが、リハビリ
ハビリテーションロボットを体験していただく予
テーション分野のロボットの多くは、人型ではな
定です。また、手や腕に電気を流して筋肉に刺激
く、装着をして我々の動きをアシストするものが
を与えて麻痺を少しでも良くしていく機械「IVES
(アイビス)
」
(図2)も導入しています。
ほとんどです。
当院でも、2015年6月にトヨタ自動車株式
リハビリテーションはクスリのように、飲めば
会社と藤田保健衛生大学が共同開発した「バラン
治るということがなくて、身体や機能を使ってい
ス練習アシスト」
(図1)というロボットを導入
かないと良くならないということがあります。一
しています。転倒を予防するためにはバランス能
方で機能が低下した身体では使いにくく、練習し
力が重要ですが、今までのバランス練習は、退屈
ろと言われても練習しにくい、疲れるなどの状態
であったり、簡単すぎたり、逆に難しすぎたりし
にあり、たくさん練習できない難しさがありま
て、効果的なものは提供しにくく、なかなかバラ
す。ロボットなどはこうした「やりたいけどやれ
ンス能力を改善することが難しい面もありまし
ない」矛盾点を少しでも軽減し、練習しやすい環
た。ところが、バランス練習アシストでは、
ロボッ
境を作っていける利点があり、今後もロボットは
トに乗って操縦をし、ゲームをしながらバランス
広がっていくと考えています。当センターでは最
練習ができる上に、ロボットで練習の難易度を調
先端のリハビリテーションロボットなども積極的
整するため、その方に合ったバランス練習ができ
に導入し運用していこうとしております。
ます。
当院リハビリテーションで導入している機器
図2 IVES(アイビス)
図1 バランス練習アシスト
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RENPOH
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日進月歩で進むリハビリテーション~研究会開催・学会参加~
総合リハビリテーションセンター 作業療法士 主任補 菅沼 美穂
飯田下伊那地域のリハビリテーション職種の勉
しました。当センターでは、10 年以上前から日常
強会である、
「飯伊リハビリテーション研究会」は
生活活動の評価に FIM を使用していますが、4 月
年2~3回程度開催しています。当センターは前
の診療報酬改定の際に、日常生活活動の評価法と
身の「飯伊脳卒中リハビリテーション研究会」の
して FIM が採用され、今やスタンダードな評価法
頃から事務局を務めており、当センターのスタッ
です。そうした社会情勢を反映してか会場がいっ
フが多数参加しています。直近の研究会では、6
ぱいになるほど多数の参加者に来場していただき
月 25 日㈯に藤田保健衛生大学七栗記念病院より
盛会に開催できました。
講師として、川上健司先生をお招きして日常生活
こうした研究会を通して飯田下伊那地域の医療
の 評 価 法 で あ る FIM(Functional Independence
職の連携を強化して、この地域のリハビリテーショ
Measure)の勉強会「FIM 講習会 in 長野」を開催
ンをより良いものにしていきたいと思います。
6 月 25 日㈯開催「飯伊リハビリテーション研究会」の様子
また、学会発表も積極的に行っています。日本
リハビリテーション医学会、日本高次脳機能障害
学会で「ロボットに乗ることで患者さまの改善を
促せた発表」など多数の発表を行いました。
学会、日本義肢装具学会、摂食嚥下リハビリテー
当センターでは日ごろの患者さまへのリハビリ
ション学会、回復期リハビリテーション病棟協会
テーションの効果を明らかにするような発表を多
研究大会など、多数の全国規模の学会で、年間
くしています。学会発表とともに、学会で最新の
10本程度の発表を行っています。今年は京都で
知見を吸収して、今後も日進月歩で進んでいるリ
開催された、第 53 回日本リハビリテーション医
ハビリテーション分野で研鑽をしています。
【今年の学会発表例】
◆第 53 回日本リハビリテーション医学会(京都府京都市)
PT 兼子貴至「回復期リハビリテーション病棟入院患者へのバランス練習アシスト(BEAR)使用の経験」
◆第 32 回長野県作業療法学会(駒ケ根市)
OT 熊谷純久「回復期リハビリテーション病棟における家族介護力と転帰先との関連」
◆第 7 回ニューロリハビリテーション学会(兵庫県神戸市)
ST 仲田陽菜「重度の流暢性失語を呈した超高齢者の一例」
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