平成26年度岸本学生交流奨学金 海外実習報告書 医学部医学科5年次

平成26年度岸本学生交流奨学金 海外実習報告書
医学部医学科5年次 S.H(Male)
【実習中のスケジュール】
2015年2月2日~2月27日の間、ロンドン大学クイーンメアリー校に附属している
London Chest Hospital で実習を行った。
基本的には毎朝、
8:00~8:30 合同カンファレンス
9:00~11:00 回診
に参加した後、指導医の先生が行う手技の見学や、画像の読影に関して説明を受けながら
理解を深めていった。昼には、論文の抄読会が不定期に行われていて、昼食をとりながら
それに参加した。
また、火・木曜日の午前中には、外来の見学をさせて頂くこともあった。
病院実習の他にも、ロンドン大学のウィリアム・ハーベー研究所で働く日本人の先生方の
所にも見学をさせて頂いた。
ここで、ロンドン大学の関連病院・研究施設について紹介したい。
Ⅰ London Chest Hospital
1848 年に創設された歴史のある、病院でイギリスにおける循環器のメッカ的な存在の病院
と言われている。急性冠症候群などで豊富な症例数を誇っていたものの、私が実習をさせ
て頂いたときは、移転準備のため後述の St. Bartholomew Hospital で多くの患者を受け入
れていた。
実習期間は、ほとんどこの病院で実習をしたのだが、施設の老朽化のため 2015 年 3 月~
2015 年 4 月の期間に Barts Heart Centre との合併が予定されている。おそらく来年度以
降の学生は他施設での実習がメインとなるであろう。
Ⅱ St. Bartholomew Hospital
2 月 10 日の1日間のみ実習をさせて頂き、画像の読影などを、 radiologist などの方々に
教えてもらいながら実習を行った。
Ⅲ William Harvey Research Institute
William Harvey(1578-1657) はイギリスの解剖学者で、血液循環説を唱えた学者である。
その彼の名前が付けられた施設で、心筋の前駆細胞についての研究をなさっている鈴木憲
教授(大阪大学卒)とその研究チームの活動に参加させて頂いた。2 月 4 日、12 日、27 日の
3 日間、ラボの様子や研究の概要などを教えてもらった。特に 27 日の最終日には、英語で
の研究発表会に参加し、非常に有意義な体験をさせて頂いた。
【この海外実習の目的】
① イギリスで働く先生方の姿を肌で感じ、日本の医療制度の違いや、両者の利点欠点を理
解する。
② 医学英語を徹底的に理解し、英語での問診・身体所見の取り方や、医師同士のコミュニ
ケーションをマスターする。
③ 基礎的な英会話力を強化する。
【実習内容】
① 論文抄読会、症例カンファなどの会への参加
② 回診や CABG など各種手技の見学
③ 外来見学、及びそこでの問診や身体所見の取り方の体験
【実習の成果】
最初の1週目では論文抄読会や回診の内容がほとんど理解できず、かなり苦労をした。し
かし、その日にわからなかった部分を調べることで、徐々に内容をつかむことができた。
特に論文抄読会はスライドを用いて行われるため、わからない部分を適宜調べるようにし
た。
外来見学は、2 月 12 日、17 日、19 日、26 日の 4 日間させてもらい、肥大型心筋症
(Hypertrophic cardiomyopathy)、不整脈原性右室心筋症(Arrhythmogenic right
ventricular cardiomyopathy)の患者が中心であった。
1回目の見学の際に心電図を見せられ、
「この心電図での異常を教えて」と言われ、何も答
えられなかったことを覚えている。そこから、基本的な医学英語の言い回しは覚えて人に
伝えられるようになろうと、見学では先生方の問診の内容を細かく理解するように心がけ
た。実際に患者さんの聴診もさせて頂く機会も与えられ、基本的なものなら、問診・身体
所見をとり、それを他のドクターに伝えたり、カルテとしてまとめることができるように
なった。特に聴診では、
・肥大型心筋症の患者を前屈させて聴診をすることで、雑音が増強する
・Valsalva 手技をすることで、右室の逆流性雑音が減弱する
・その他、各種弁膜症の雑音の様子
などは、日本でも体験したことがなかったので、自分にとって大変貴重な外来体験となっ
た。
入院患者や外来に来ていた患者の層だが、病院のある地域はあまり裕福でない家庭が多く、
移民も多い。そのため、患者自身英語が喋れないということもしばしばあった。そのとき
は、英語が達者である自分の子供や友人を、通訳として連れてきていることがあった。ド
クターの話では、英語ができないにも関わらず誰も連れて来ず、コミュニケーションに苦
労を要すことも稀にあるとのことだ。イギリスでは NHS(後述参照)より、英語の喋れな
い患者でも、病院に通う際に無料で通訳を雇うことができるのだが、そのこともあまり知
られていないのであろう。
また、今回の実習では日本とイギリスにおける医療制度の違いも感じた実習となった。
まず、病院に会計の場所がないことに驚いた。というのも、イギリスは NHS(National
Health Service)に基づき、全ての患者に公平な医療を提供することをモットーにしている。
そのため、一部の処方薬や医療機器等を除いて患者の自己負担は原則無料なのである。
一見良い医療制度のようにも思われるが、悪い点もある。患者は何か症状があったときに
すぐに病院に行けるというわけではなく、地域の General Practitioner (GP:家庭医)に受診
を予約し、診察を受けなければならない。その後、追加の診察及び検査、治療が必要であ
れば、専門医(Consultant)を紹介され、病院へ行くという運びとなる。このことの問題点と
しては、
・症状が発症してから、専門医に診てもらうまでにかなりの時間を要する
・GP が何か鑑別を見落とし、間違って違う科の専門医に紹介してしまった際に、診断がな
かなかつかない可能性がある
が挙げられる。
参照:イギリス医療保障制度の概要― 日本の制度との違いについて―
【今後の抱負】
実習をする前からわかってはいたが、やはりまだわからないこと、できないことが多く、
全体として自分の医学生としての未熟さに気づかされる実習であった。学生は残り1年と
いう期間であるが、ある程度自分の時間は作りやすいと思うので、日々勉強を怠らないよ
うにしたい。
今回、私が実習することにあたり、岸本忠三先生および岸本国際奨学基金関係者の方々に
は大変なご援助を頂き、ここに感謝の意を表すとともに、この留学での経験を無駄にする
ことがないように心がけたい。
また、この実習を行うにあたっては自分1人の力では至らない点が多く、医学科教育セン
ター和佐勝史教授、医学科国際交流センター馬場幸子先生、William Harvey Research
Institute の鈴木憲教授、London Chest Hospital の Dr. Sekhri、Dr. Turner、その他多く
の関係者の方々の多大なるご協力のもと、大変実りの多い実習をすることができたことに、
心より感謝を申し上げる。ありがとうございました。