古川 輝雄教授

工学部
世の中では…
情報冷蔵庫と呼ばれる大容量のデータサーバーを各家庭に設置しようという構想があるらしいが、
その実現には
現在の数十倍の高速・大容量のディスクストレージが必要だと言われている。
そして、
そうしたディスクストレージの
パワーアップに欠かせないのが、
古川先生が専門とするデジタル符号化技術とデータプロテクト技術なのだ。
電気システム工学科
※2010年4月、学科名称変更
古川 輝雄 教授
F U R U K A W A
T E R U O
デジタル符号化技術がDVDや
デジタルTV放送の主役に!
ディスクストレージって、
いったい何のこと?
ディスクストレージとは、
デジタ
ル情報を記録するための装置
のこと。わかりやすく具体例をあ
げるならコンピュータに内蔵され
ているハードディスク装置や情
報を記録するMOやCD、
DVD
といった光ディスクのことだとい
えば、理解も早いだろう。
実はこのディスクストレージに
使われている技術を利用して、
あ
る構想が実施されようとしている
という。
『情報冷蔵庫』
と呼ばれ
る家庭用のデータサーバーが、
それだ。もしも、
この『情報冷蔵
庫』
が、各家庭に取り付けられる
ようになれば、各部屋で情報コ
ンセントに大画面PCをつなぐこ
とにより、
インターネットやビデオ
鑑賞、
テレビ電話などができるよ
うになるというのだ。
そして、その実現に向けて、
ディスクストレージで使われてい
るデジタル符号化技術とデータ
プロテクト技術の研究に、
日夜、
取り組んでいるのが広島工大
の古川先生なのである。
アメリカのホテルに依頼され、先生が
15年前に開発したディスクライブラリー
装置。現在のyahoo動画のように各人
が好きな時に、好きなビデオが見られる
ビデオオンデマンドを実現した装置だ。
先生のひとりごと
将来、各家庭に情報冷蔵庫と呼ばれる大容量のデータサーバーを設置するために、先生の
専門とするデジタル符号化技術も、
より高度なものが求められている。現在は一次元配列の
符号が、
将来は2次元配列のものへと移行するというのだ。
この技術が実現すれば、
現在の
装置の1000倍もの容量と高速性能を持つテラバイ
ト光ディスクが登場するといわれている。
すね」と、デジタル符号化技術
について説明する古川先生。
実は、
これらの技術、知らず知
らずのうちに、毎日の生活で私
たちもよくお世話になっているの
だ。
というのもプレイステーション
のDVDやデジタル衛星放送、
そ
してインターネットにデジタルビ
デオと、
いずれもデジタル符号化
技術が応用されている。
ふだん、何気なく利用している
だけに、こうした数学的な記号
の世界が、見慣れた機械の中
に存在するというのはちょっと驚
きだ。
未来のトビラを開くカギは
『デジタル符号化技術』
「デジタル符号化技術には大
きく分けて3つの種類がありま
す。
1.
膨大なデータを少しでも早く送
るための
『データ圧縮』。
2.
伝送時にデータが損なわれた
場合、誤りを訂正するための
『誤
り訂正符号』。
3.
最後にデータを通信路に合う
ように変換してあげる
『 記録符
号』。
ご存じのようにデジタルの世
界では、情報はすべて0、
1の信
号に変換されてやりとりされま
す。これらの3つの技術は、
すべ
て数学的な演算を利用して、正
しい0、
1の並びを導き出したり、
相関性を見出して、簡単な並び
に置き換えようというもの。数学
的な素養が必要とされる世界で
デジタル符号化技術は、
これからますます進化する
ところで、話は冒頭の『 情報
冷蔵庫』
に戻るが、
こうした大容
量のデータサーバーを実現する
には、ディスクストレージも、
それ
に合わせて進化しなければなら
ない。現在の装置は一つのヘッ
ドでデータをトラック線上にピッ
ト
として読み書きしているが、近い
将来、複数のヘッド
(二次元アレ
イヘッド)
が実用化されると予想
されている。
つまりデジタル符号化技術も
一次元から二次元への移行が
必要となってくるのだ。
「現在のディスク装置はビット単
位の記録装置ですが、
これに対
して、空間光変調デバイスを使
用し、二次元情報を二次元パ
ターンで記録しようという方法
が提案されています。将来、
これ
が実 現すると、現 在の装置の
1000倍もの容量と高速性能を
持つテラバイト光ディスク装置
が実現すると言われています。
も
ちろん、
この装置の実現には高
度なデジタル符号化技術が求め
られており、
それは未だ開発中。
私の研究室のメインテーマでも
あるんです」。
情報冷蔵庫の実現のために
も、ぜひ、早く開発して欲しい技
術だ。
重要用語解説
【データプロテクト】
データの漏洩、改ざん、消滅、誤り発生
などを保護する技術。多量のデータが
発生し、蓄積され、伝送される社会では
非常に重要な技術。
【テラバイトメモリ】
テラは、
ギガの1000倍。近い将来、
イ
ンターネットなどの情報ネットワークで
は、データを蓄積するストレージシステ
ムは、
ギガの時代を超え、
テラ、
さらには
ペタ
(テラの1000倍)
に近づき、
データ
を伝送する通信速度は100ギガ
(ギガ
はメガの1000倍)
を超えると言われて
いる。
ちなみに現在のインターネットは、
数十メガ
(キロはギガの1000分の1)
の通信速度。
デジタル符号化技術の一つである
「誤り訂正符号」にはガロア体演算が使用されている。
この演算では足し算は引き算と同じであり、足し算やかけ算は
割り算の余りとなる
(?)
。約200年前のフランス人、
ガロアは、彼が19歳の時にこの理論を発表し、
20歳で亡くなってしまったのだそうだ。
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