新総裁体制でのブラジルの金融政策とレアル相場

2016年7月27日
投資情報室
(審査確認番号H28-TB93)
新興国レポート
オーストラリア経済とリート市場の動向について
新総裁体制でのブラジルの金融政策とレアル相場
 ブラジル中銀は、ゴールドファイン総裁就任後初となる金融政策委員会(COPOM)で政策金利の据え置きを決定。
 中銀はインフレ抑制重視のタカ派的な政策方針を示す。金融緩和への転換には財政政策の進展がカギを握る。
 ブラジル中銀のタカ派的な政策姿勢、国内経済環境の改善、経常収支の均衡化などがレアル相場の下支え要因に。
 中銀は小規模の為替介入を継続。レアル相場の先行きを左右する暫定政権の政策の行方は慎重に見守る必要。
ブラジル中銀は政策金利の据え置きを決定
ブラジル中央銀行は7月19-20日(現地時間)、ゴール
ドファイン総裁就任後初となる金融政策委員会
(COPOM)を開催し、政策金利の据え置きを決定しま
図1:ブラジル中銀の政策金利とインフレ率
16
(%)
2016年7月20日
ブラジル中銀
政策金利
14
した(図1)。
COPOM声明文では、「インフレ見通しとリスクを考
10
抑制を重視するタカ派的な政策方針が示されました。ブ
8
ラジル中銀の2017年末のインフレ見通しは、政策金利
2016年末(予)
13.25%
インフレ率
(IPCA、前年比)
12
慮すると金融緩和の余地はない」と述べられ、インフレ
14.25%
2017年末(予)
11.00%
2016年6月
+8.8%
2016年末(予)
+7.3%
上限
2017年末(予)
6
+5.3%
据え置きを想定した基準シナリオでは目標の4.5%近辺
に低下が見込まれるものの、市場の政策金利予想を想定
4
した市場シナリオでは5.3%近辺への低下に留まるとみ
2
られています。
へ収れんさせることに注力する政策方針を示していまし
下限
0
13
ブラジル中銀は6月28日公表の「四半期インフレ・レ
ポート」でも、2017年末のインフレ率を目標の4.5%
インフレ目標(中心=4.5%)
14
15
16
17
(年)
(出所)ブラジル中銀、ブラジル地理統計院(IBGE)
(期間)政策金利:2013年1月1日∼2016年7月20日
拡大消費者物価指数(IPCA):2013年1月∼2016年6月
(注)政策金利およびIPCAの点線は市場コンセンサス(7月15日時点)
た。
財政政策の進展が金融緩和への転換のカギ握る
ブラジル中銀はCOPOM声明文において、インフレ見
図2:ブラジルの公的部門の基礎的財政収支
通しのリスク要因として「財政調整策の議会承認と実行
に関わる不透明感」を指摘しました。今後、テメル暫定
4
予算計画
政権下での財政政策の進展がインフレ見通しの改善およ
3
び中銀の金融緩和への転換のカギを握ると考えられます。
2
ブラジル財務省の予算計画によれば、テメル暫定政権
は財政赤字の縮小を段階的に図り、2019年に公的部門
1
の基礎的財政収支をGDP比0.2%へ黒字化させる方針を
0
示しています(図2)。テメル暫定政権は財政目標達成
‐1
のため、追加の歳出凍結策や景気刺激策を含む政策パッ
ケージの公表を検討している模様です。
なお、ブラジル中銀の市場コンセンサス調査(7月15
(GDP比、%)
‐2
‐3
0.2%
-0.9%
-1.9%
-2.1%
-2.6%
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 (年)
日時点)によれば、市場関係者の間では2016年10月以
降の利下げ転換が見込まれており、2017年末には政策
(出所)ブラジル中銀、ブラジル財務省 (期間)2003年∼2019年
(注)基礎的財政収支は利払い費を除く財政収支(プライマリー収支)
金利は11.00%へ低下すると予想されています。
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レアル相場は対米ドル・対円で緩やかに回復傾向
足元のレアル相場は、英国の欧州連合(EU)離脱問題
図3:ブラジル・レアル相場の推移
(円)
の影響も限定的に留まり、緩やかなレアル高傾向が続い
ています。レアルの対米ドル相場は1米ドル=3.2レア
(レアル)
2.5
50
2016年6月24日 英国民投票でEU離脱派勝利
45
3.0
2016年5月12日 テメル暫定政権発足
ル台へ緩やかに持ち直し、対円相場も2015年12月以来
となる1レアル=32円台を回復しています(図3)。
足元のレアル高進行の背景としては、①タカ派的な政
40
35
4.0
策姿勢を採るブラジル中銀が政策金利を当面維持する公
算が増していること、②ブラジルの経済環境が最悪期を
脱しつつあること、③ブラジルの経常収支が均衡化して
いること、④レアル高抑制のためのブラジル中銀の為替
介入が小規模に留まっていること、などが挙げられます。
IMFはブラジルの経済見通しを引き上げ
げ て い ま す ( 2016 年 : -3.8 % → -3.3 % 、 2017 年 :
0.0%→+0.5%)。
改善や資源価格持ち直しなどを背景に、貿易黒字の拡大
が経常収支の均衡化に繋がりはじめていることも、レア
ル相場の下支え要因となっているとみられます(図4)。
ブラジル中銀は小規模な為替介入を継続
為替介入政策に関しては、7月1日以降、ブラジル中銀
16年1月
(10億米ドル)
0
‐2
‐4
‐6
所得収支
(第一次・第二次)
‐10
経常収支
‐12
05
06
07
08
09
10
11
16 (年)
(レアル)
3.2
3.3
レアルの対米ドル
相場(右軸)
3.4
レアル高
3.5
3.6
レアル安
6
一段の安定に向かうかは暫定政権の政策の実現性に左右
2
政策の行方は慎重に見守る必要がありそうです。
15
8
4
は、議会審議などでの紆余曲折も予想され、暫定政権の
14
10
改革への期待先行の面も大きいとみられ、レアル相場が
されると考えられます。特に財政健全化を進める過程で
13
図5:レアル相場とブラジル中銀の為替介入動向
12
もっとも、足元でのレアル高はテメル暫定政権の構造
12
(出所)ブラジル中銀 (期間)2005年1月∼2016年5月
(注)レッグ・メイソン・アセット・マネジメントによる季節調整値。
していますが、4月前後の局面と比べると介入規模は小
です(図5)。
貿易収支
サービス収支
入(先物市場での米ドル買い・レアル売り介入)を実施
さく、レアル高の抑制効果は限定的に留まっている模様
16年7月
(期間)2015年7月1日∼2016年7月20日
(10億米ドル)
16
6月7日:上院がゴールドファイン
14
中銀総裁の就任人事を承認
は1日当たり5億米ドル規模のリバース通貨スワップ介
16年4月
2
‐8
また、経常収支の面では、レアル安による輸出競争力
15年10月
図4:ブラジルの経常収支
4
2016∼2017年のブラジルの経済成長見通しを引き上
5.0
(出所)ブルームバーグ
COPOM声明文の中で短期的に経済活動が安定化してい
通し)の中で、世界経済の成長見通しを引き下げる一方、
4.5
対円相場(左軸)
レアル安
25
15年7月
6
(IMF)は7月19日に公表した世界経済見通し(改定見
レアル高
30
ブラジルの経済環境の面では、ブラジル中銀も
る との景 気判 断を示 しま した。 また 、国際 通貨 基金
3.5
対米ドル相場(右軸)
0
3月1日
3.7
リバース通貨スワップ
実施額(左軸)
3.8
3.9
4.0
3月31日
(出所)ブルームバーグ
5月2日
6月1日
7月1日
(期間)2016年3月1日∼7月20日
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメントの情報を基に、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等
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