PDF版を開く - 山梨大学医学部 血液・腫瘍内科

最新・血液内科シリーズ
Vol.24
【監修】自治医科大学学長
私と仲間たち
高久史麿
理想のphysicianscientistを目指して
臨床教室の利点を最大限に生かす基礎研究を実践
「基礎研究ができる人間はよき臨床医になれる」。
今では、懐かしい響きさえする先人の言葉である。
専門医制度が重視され、若い医師が基礎研究にあまり興味を示さない日本の現状は、
医学界にとって危機的状況と言える。
我々は、諸先輩が教えてくれた臨床における基礎研究の重要性を、
今こそ医学生や若い臨床医に伝授していかなければならない。
よきphysician-scientistを育成することは、そうたやすいことではないが、
これからの日本にとって最も必要とされる人材であると確信している。
臨床医でなければ得られない患者からの貴重な情報を基礎研究に生かし、
患者に還元することこそ、理想の physician-scientistと言えるだろう。
山梨大学医学部血液内科教授
SFN-791-0-0712
OTS 04 IME
小松則夫
プ
[ ロフィール
]
小松則夫
p r o f i l e
1955 年 10 月 13 日生まれ、茨城県出身
1981 年 3 月 新潟大学医学部卒業
1981 年 6 月 自治医科大学内科研修医
1983 年 6 月 自治医科大学血液科入局
1986 年 4 月 自治医科大学血液科病院助手
1989 年 1 月 理化学研究所国際フロンティア
(クロモソームチーム)研究員
1990 年 3 月 ニューヨーク血液センター
(Dr. John W. Adamson 博士)留学
1991 年10 月 自治医科大学血液科復職
1992 年10 月 自治医科大学血液科講師
2000 年 4 月 自治医科大学内科学講座血液学部門(旧血液科)助教授
2004 年10 月 山梨大学医学部附属病院血液内科教授(現在に至る)
【所属学会】
日本内科学会
日本血液学会
日本臨床血液学会
日本造血細胞移植学会
日本臨床腫瘍学会
日本癌学会
国際実験血液学会
米国血液学会
日本分子生物学会
American Society for Biochemistry and Molecular Biology
American Society of Clinical Oncology
【受賞】
1996 年 日本血液学会奨励賞
1999 年 新潟大学医学部学士会第 3 回有壬記念学術奨励賞
2002 年 日本白血病研究基金一般研究賞受賞
① 小松則夫 ② 桐戸敬太 ③ 岩尾憲明 ④ 國玉真江 ⑤ 永嶋貴博
⑥ 三森 徹 ⑦ 中嶌 圭 ⑧ 野崎由美 ⑨ 小野原幸司郎 ⑩ 迫江公己
⑪ 岩谷未来 ⑫ 小澤満里子
(敬称略)
● PAGE 2
● PAGE 3
PART-1 私の研究歴
最新・血液内科シリーズ vol.24
一期一会の縁に恵まれ、
血液学とともに前進した日々
小松則夫
山梨大学医学部血液内科教授
NIH に留学中の小澤敬也先生の自宅を訪問 右から小澤先生ご夫妻、須田先生、中央は若かりしころの筆者。1985 年にボストンの Woods Holeで開催され
た巨核球に関するカンファレンスでの発表を無事に終え、ほっとした様子がうかがえる。
アのほうをみると、小澤先生がいつもドア越しに立っていてくれ
念ながら感染症で亡くなられた。神経内科を研修している時に
た。だめだしのサインを送ると、すぐに採血や点滴の針を代わり
は高熱と両下肢麻痺の患者さんを担当することになったが、原
に刺してくれた。
因がまったくわからず、1か月以上が過ぎた。春休み(その当時
伊藤正子婦長(のちに自治医大看護部長、現地域医療振
から神経内科には春休みがあった)明けに診察に行くと、左頸
興協会地域看護研究センター・センター長)はまさに看板婦長
部に固い腫瘤を触知した。春休み前にはなかった所見であった。
であり、患者さんに不利益な検査や治療をするものなら、ひど
「これはもしかして悪性リンパ腫では」と思い、生検をしてもら
く叱られた。ある宴会の席で、
「血液科の婦長さんは20代にしか
ったところ、予想どおりの診断であった。両下肢麻痺は腫瘍随
みえませんね」
( 実際にはその時すでに40歳ぐらいだったらしい)
伴症候群によるものだった。そのころから「こんなにも多くの血
と言うと、それを近くで聞かれていた高久先生から「君は女性を
液疾患の患者さんと遭遇するとは、血液内科医になるのが私
みる目がないね」ととんでもないお墨付きをいただいてしまった。
の運命なのか」と、多少大げさではあるが、そう思うようになった。
昼休みには小澤先生が所属する造血発生部門の教室を訪
さらに、それに拍車をかけたことがある。伊藤婦長から他科の
る血液科であった。学生の時に血液学に特に興味を抱いてい
ねては、インスタントコーヒーをいただく
(もちろんセルフサービ
婦長への申し送りがあったらしいのだが、ローテーションするた
たわけではなかったが、教科書や雑誌で知る先生方を目の前に
ス)のがいつの間にか日課になっていた。その当時、造血発生
びに、配属先の婦長から「先生は血液科に入局するそうです
して緊張と興奮を覚えた。
部門の教授をされていたのが、私の恩師の三浦恭定先生(前
ね」と言われた。このことも血液科入局への大きなきっかけとな
私は大学を卒業すると同時に、自治医科大学(以下自治医
オーベン(指導医)は小澤敬也先生(当時は造血発生部門
自治医大血液科教授・社会保険中央総合病院院長)であった。
ったことは間違いない。いや「蟻地獄の蟻のように血液科に吸
大)内科ジュニアレジデントとして医師のスタートを切った。自
助手、現自治医大血液科教授)で、故平井久丸先生(元東京
治医大はその当時としては珍しく8つある内科を3か月ごとにロ
大学血液腫瘍内科教授)から患者さんの申し送りを受けた。当
ーテーションして、2年間の内科研修を終了するシステムであった。
時は抗がん剤を末梢血管から投与していたため、血管がすぐに
将来は漠然と生化学的な仕事をしたいと思っていたので、面
潰れてしまい、針が刺せる血管を探すのが一苦労で、午前中は
血液科をローテーションしてあっという間に3か月が過ぎ、次
に血液科への入局について相談したところ、「血液は研究もし
接試験では入局希望を内分泌・代謝科と答えたが、最初に配
採血や点滴にほとんどの時間を費やした。1人の患者さんに30
にいよいよ内分泌・代謝科に配属された。なぜか多発性骨髄
ないといけないからね」
と決して積極的には入局を勧めなかった
属されたのは高久史麿先生(現自治医大学長)が教授を務め
分くらいはかかっていたと思う。針が刺せずに「もうだめだ」とド
腫の患者さんが入院しており、主治医になったが、治療後に残
が、2年目の研修も終わろうとしている1983年の初めに、血液
高久史麿先生の血液科に配属。
小澤先生、平井先生、三浦先生との出会い
● PAGE 多くの血液疾患の患者さんと遭遇。
「血液内科医になるのが私の運命」と感じる
い込まれていった」と表現したほうが正しいかもしれない。
その後ほどなく東京大学第3内科に戻られた小澤先生が、た
またま自治医大に来られた時に夕食をごちそうになった。その時
● PAGE PART-1 私の研究歴
科への入局を決心した。
大分県立三重病院へ派遣されて、奮闘。
医師としての大きな喜びを知る
最新・血液内科シリーズ vol.24
をみた経験のある医師はおらず、ATLが多い九州に行けば教
紙の裏側には私へのメッセージがびっしり書かれていた。6か月
法の専門家として、テレビやラジオにしばしば出演されている)
室のなかでは最初にATL の患者さんをみる機会に遭遇するか
の派遣を無事に勤め上げ、1983年11月末に病院の玄関前で
になられた。
もしれないとひそかに思っていた私は、早速顕微鏡をのぞいて
職員の方々や患者さんに見送られて、大分から自治医大へと戻
指導者を失った私は血液の臨床が面白いと思って入局し
みた。教科書や血液アトラスでみる典型的なクローバー状、脳
った。
たこともあり、小澤先生の「血液は研究もしないといけないか
ちょうどそのころ、大分県立三重病院への医師派遣の話が、
回転状の核はまさしくATL 細胞そのものであった。肝脾腫が著
大学の先輩でもある前沢政次先生(当時は血液科講師で、現
明で、高カルシウム血症を認め、残念ながら1か月後に亡くなっ
北海道大学医療システム学教授)からあった。2年間の内科ロ
た。
ーテーションもまもなく終了するし、自分の臨床能力を試す絶好
解剖は、病院の敷地の中にある掘っ立て小屋のようなところ
1983年12月から、シニアレジデントとして血液科での後期
も選択肢の1つではないかと思うようになった。そのことを三浦
のチャンスと考え、私はその話を二つ返事で受諾した。
で、豆電球の明かりを頼りに薄暗い中で行われた。草がうっそう
研修が始まった。同時に、第1研究室(通称1研)に配属された。
先生にお話しすると、「今度、須田年生先生が留学から帰って
内科研修の最後の科として消化器内科をローテーションして
と茂った中に建っていた剖検室は、なんとも不気味で恐ろしか
私の同期はほかに3人いたが、それぞれがすでに基礎研究をス
くるから、とにかく須田先生の論文を読んで、将来のことを考え
いたため、オーベンでもあった吉田行雄先生(現自治医大附属
った。もちろん病理医は院内には常勤していなかったので、県
タートし、それなりの成果を出しているとのことであったが、その
てみてはどうか」との貴重なアドバイスをいただいた。
さいたま医療センター消化器科教授)がへき地に行っても困る
立中央病院から病理の先生に来てもらい、我々が助手を務めた。
当時、研究に興味のなかった私には、そんなことはまったく気に
エレガントな仕事(そのスタイルは今もまったく変わっていな
ことがないようにと、特別な計らいで内視鏡や超音波検査を教
直接の死因は全身のサイトメガロウイルス感染症であることが
ならなかった。
いが)に興奮と感動を覚え、須田先生(現慶応大学医学部分
えてくれた。研修医が胃カメラや超音波検査を行うことは当時と
後にわかった。末梢血塗抹標本をたくさん作り自治医大に戻っ
当時、1研を指揮していたのが久保田一雄講師(現群馬温
子発生学教授)の帰国と同時に、研究のご指導をお願いした。
しては破格の扱いであった。
てから、医局の先輩の先生方にみてもらった。
泉医学研究所所長)で、私のためにわざわざ輪読会を開いてく
須田先生は「それじゃ、小松君を最初にして最後の弟子にする
1983年6月から3か月の予定で大分に派遣された。200床の
着任3か月も終わろうとしているころ、患者さんから「先生には
れた。がん遺伝子に関するものであったが、基礎知識不足に加
よ」と言ってくれた(確かに最初の不肖の弟子ではあるが、今や
病床数に、内科医は佐藤隆美先生(現米国財団法人野口医
このままここにいてほしいので署名を集めるよ」との話が持ち上
えて専門用語の意味がわからず、辞書片手に悪戦苦闘した。
お弟子さんは100人を超え、教授も多く輩出している)
。
学研究所専務理事)
、瀧山嘉久先生(現自治医大神経内科講
がった。私のような者にもこんなに慕ってくれる患者さんがいるこ
研究テーマは、リンパ球の培養上清中に存在するHL60
最初に与えられたテーマはヒト巨核球コロニーを作製するこ
師)
と私を入れてわずか3人であった。
とに、多少の戸惑いと医者としての大きな喜びを感じ、あと3か
細 胞の増 殖 促 進 因 子を明らかにするものであった。これは
とであった。木村秀夫先生(現北福島医療センター)がワシント
朝は7時30分に病院に行き、通称「佐藤のおばちゃん」
(佐
月帰るのを延期したほうがよいかもしれないと思った。そこで三
竹田津文俊先生( 現自治医大看護学部教授 )が「Cancer
ン大学のJohn W. Adamson教授
(のちに紹介)
の下へ留学し、
藤先生とは無関係)の作ってくれた朝食を食べて外来へ。席を
浦恭定教授に相談をしたところ、
「あと3か月だけ許可しよう。で
Research」に発表した仕事を引き継いだものだった。1ウェル
発表された論文(J Cell Physiol. 1984 Jan;118( 1):87-96.)
立つのはトイレの時間だけで、途中でお茶を出してもらい頑張っ
も帰ってきたら一生懸命勉学に励むように」と諭された。
あたり800個前後できるコロニーを一気に30ウェル程度カウン
た。やれやれ終わったかと思うとカルテの束がごそっと置かれて、
在院中に看護師や検査技師を対象に心電図の講義を行っ
トするため、かなりの時間がかかり、病棟主治医でもあった私
それはちょうど椀子そばのように途切れることはなかった。夕方4
たが、これは大変好評だったようで、私への送別の品として、血
は病棟が一段落した夕方から研究室にこもって夜遅くまでカウ
時ごろまで外来で過ごし、遅い昼食(時間的には夕食に近い)
液内科学の名著である「Wintrobe’
s Clinical Hematology」、
ントに没頭した。しかし、カウントするたびに前回カウントした数
を済ませ、入院患者の検査に付き添い、夜は患者さんが夕食を
「Williams Hematology」の教科書をプレゼントしてくれた。表
自治医大に戻り、基礎研究をスタート。
「研究とは、こんなにも過酷なものなのか?」
を得ることができなかった。自動カウンターがあればどんなによ
午後11時から、近くの天ぷら「菊」で麦焼酎「下町のナポレオ
いだろうと、展示場に行ってはコロニーカウンターを探した。細
ンいいちこ」か「二階堂」で1日の疲れをとる毎日であった。
菌用のものはあったが、細胞コロニー用のカウンターなど当然
着任後2週間がたった。少し病院環境にも慣れてきたころ、
あるはずもなかった。
60歳くらいの女性が意識障害で入院した。検査部から異常な
「研究とは、こんなにも過酷なものか?」と、そんな毎日が続
白血球が増加しているとの報告があり、ぜひ血液専門の私(そ
いた。しかし、失敗しても決してあきらめない“ねばりごし”
“ど
の当時は入局したばかりで血液のことはまったくわからなかった
根性”
“ 執着心”はこの時期に養われたともいえるだろう。
その当時、自治医大血液科では成人 T 細胞性白血病(ATL)
● PAGE 先生(前出)にそのことを相談し、臨床中心の地域医療への道
須田年生先生と出会い、
そのエレガントな仕事に興奮と感動を覚える
いたので、自治医大血液科の名誉のためにわからないとは言え
なかった)にみてほしいとの依頼があった。
研究は避けて通れないと思うと憂うつな気持ちになった。前沢
と異なるため、ひたすらカウントを繰り返すのだが、一定の結果
終えてから婦長と病棟回診をして、薬や検査のオーダーを出す。
が、形のうえでは血液科から派遣されているということになって
らね」という言葉を思い出し、今後血液科に所属している限り、
大分県立三重病院のスタッフからいただいた教科書
表紙の裏には私への激励の言葉がびっしりつづられている。
久保田先生はまもなく、群馬大学草津分院助教授(温泉療
特発性血小板減少性紫斑病の妊婦さんが、無事に女児を出産
この子はもうすぐ薬学部を卒業する。母親に似てなかなかの美人である。
● PAGE PART-1 私の研究歴
最新・血液内科シリーズ vol.24
CMK 細胞株をホルボールエステルで刺激すると成熟巨核
続々と一流の雑誌に論文を発表するなかで、細胞株を扱うよう
「BJH」がいかにレベルの高い雑誌であるかをいつも聞かされ
球へと分化するのだが、その際、培養上清が妙に黄色くなるこ
になってからは、正常造血の研究を進める須田グループとは完
ていたので、入局当初から「BJH」に掲載されることは私にとっ
とに気付いた。これといった理由はなかったが、その培養上清
全に路線の異なる方向へと進んでいったこともあり、私は研究
ては夢のまた夢の話だと思っていた。
をもとの CMK 細胞に振りかけてみたところ、CMK 細胞の増殖
に行き詰まりを感じ始めていた。
そこで、「BJH」に受理された時には最終目標を達成したと
が著しく促進された。当初からその活性はGM-CSFに似ている
いう満足感でいっぱいで、研究はもうこれで終わりにしようと
と思っていたが、ある研究所に依頼してGM-CSFmRNA の発
思い、須田先生にその旨を伝えた。しかし、須田先生の口から
現を調べてもらったところ、陰性との報告を受けた(後にそれは
は「人間は不思議なもので、これで満足なんてことはないんだ
間違いであることがわかったが)
。そこで新規の造血因子、もし
漠然とこれからの研究テーマに思案をめぐらせていたころ、
よ。小松君もおそらくこの論文が出たら、次はもっと上を目指し
かしたら当時としては幻の「TPO」ではないかと夢を膨らませて、
以前に須田先生の研究室に国内留学していた和田秀穂先生
たいと思うようになるよ」と言われた。内心そんなことはないだろ
培養上清からその因子を精製したいと考えた。
うと思ったが、実際に活字になった自分の論文をみて、気持ち
そこで止血血栓部門の坂田洋一先生(現自治医大分子病
て間もないころ、私に急性巨核芽球性白血病の患者骨髄血を
は一変した。不思議だった。いずれは「Cancer Research」や
態研究部教授)にご相談したところ、エーザイ筑波研究所から
使って、巨核球コロニーの数を調べてほしいとの依頼があった。
派遣されていた同い年の岡田雅之博士(現エーザイ筑波研究
たまたま残っていた骨髄血の一部を液体培養して、新しい細胞
カルディレクター)もNK 細胞の仕事を「BJH」に発表しており、
Breton Gorius 先生を囲んでの食事会
左から筆者、須田年生先生、Breton Gorius 先生、三浦恭定先生。巨核球の研
究を始めて間もないころである。自治医大のレストラン西洋堂にて。
を参考にした。
「Blood」に挑戦したいと思うようになっていた。
UT-7樹立の物語は、和田秀穂先生からの
偶然の依頼で始まった
(現川崎医科大学血液内科准教授)が川崎医科大学に戻っ
その当時、ヒトの巨核球コロニーをつくることは相当難しか
次の研究テーマは、ヒトの未分化芽球コロニーを形成する
所)の指導の下で精製することを許可してくれた。実験室もあ
株を樹立してみようと思った。
ったようで、本邦ではほとんど行われていなかった。その理由と
ことであった。cyclophosphamide の代謝産物で、活性型
る一画を使わせてくれた。これは大変ありがたかった。
無心で1か月ほど培養を続けた。細胞は一向に増える様子は
して、ヒト巨核球コロニーを刺激する因子が同定されておらず、
4-hydroperoxycyclophosphamide(4-HC)で処理した骨
CMK 細胞の増殖活性を指標に、精製とMTT アッセイを繰
なかったが、96ウェルのプレートに移したり、時にはフラスコに
PHAで刺激したヒトリンパ球の培養上清(PHA-LCM)がコロ
髄血を培養すると巨大なコロニーが形成され、選択的に未分
り返した。そのころ、私はまだ30歳前後で体力もあり、岡田さん
戻したりと試行錯誤を繰り返した。今から思うと何かに取りつか
ニー形成の出来不出来に大きく影響したからである。
化芽球コロニー形成細胞が残存することがわかり、「Cancer
と夜中の2〜3時まで研究に没頭した。研究が面白くて、入局
れていたのかもしれないと思うほど、1日も休むことなく1か月間
そこで学生、医師、看護師にお願いして約20人から血液を
Research」に発表した。この論文で学位を取得することができ
当時の考えなどみじんも残っていなかった。朝8時から始まる血
ひたすら観察を続けた。
いただき、単核細胞を集め、PHA-LCMを作製し、いわゆるロッ
たが、このころ、仕事の方向性に迷いを感じ始めていた。
液科や造血発生部門(当時は斎藤政樹教授)の抄読会には
「これは細胞株にはならないな」とあきらめかけていたころ、ふ
遅れずに必ず参加し、論文を読んだ。新規因子の発見という
と以前に行ったCMKに関する研究のことを思い出した。この
夢があった。
細胞もGM-CSFに反応して増殖することはないだろうかとふと
しかし、1年くらいたってやっとその活性のピークがみえてき
思い、CMK の培養上清から精製したGM-CSFも大量に手元
トチェックを行った。立派な巨核球コロニーができたのは、なん
と私自身の細胞から作ったPHA-LCMであった。これは非常に
ラッキーなことであった。それからはだれにも気兼ねすることなく、
幻の「TPO」を求めて夢は膨らむ。
朝から夜中まで、新規因子の発見に邁進
巨核球に関する研究でスタートしたのだから、それを貫き通し
たころ、正常骨髄細胞を用いて活性を調べたが、巨核球コロ
たいと思うようになっていた。しかし、巨核球の研究に用いる材
ニーはまったく形成されず、顆粒球・マクロファージコロニーが
料はヒト骨髄血なので入手が困難で、形成される巨核球コロニ
ほとんどであった。これはどうみてもGM-CSFではないか。そ
ーの数には個人差があり、データがばらついて実験の難しさを
んな予想は見事に的中し、そのころやっと入手可能になった
最初の論文は本態性血小板血症(ET)における巨核球コロ
感じていた。しかも、せっかちな私にはコロニーが形成されるの
GM-CSF の中和抗体で、その活性は完全に消失した。また、
ニー形成能をみたものであった。PHA-LCMがなくても自発的
に2週間を待つことは耐え難いことであった。
GM-CSFmRNAも今度は検出され(以前に調べたのはどうも
な巨核球コロニーが形成されること、患者血清中には巨核球コ
そこで、実験にはいつでも材料が得られる巨核球系の白血
偽陰性であったらしい)
、我々が1年にわたって追い求めてきた
ロニー形成を刺激する活性を有する何らかの造血因子が存在
病細胞株を用いたいと思った。その当時、巨核球系の白血病
のはなんと既存の GM-CSFであり、
このプロジェクトはここでい
することを「British Journal of Haematology(BJH)」に報
細胞株は名古屋大学の小椋美知則先生(現名古屋第二赤十
ったん終わりを告げた。パンパンに膨らんだ風船が、破裂した
告した(その当時トロンボポエチン(TPO)はクローニングされ
字病院血液内科)の樹立されたMEG-01と、千葉大学小児科
瞬間であった。
この仕事は念願の「Blood」に受理されたものの、
ていなかったが、後にET 患者の血清 TPO 濃度はむしろ高いこ
の佐藤武幸先生(現千葉大学医学部附属病院感染症管理治
今後の仕事へのつながりが途絶えることになり、決してうれしい
とが明らかになっている)
。論文が受理された時は、本当にうれ
療部部長)の樹立されたCMK の2種類だけであった。班会議
という気持ちは湧いてこなかった。
しかった。
でたまたま佐藤先生にお会いする機会があり、お願いしたところ、
山口祐司先生(現睡眠呼吸センター福岡浦添クリニック院
高木省治郎先生(現サノフィ・アベンティス株式会社メディ
快くCMKを供与してくれた。
長)や北野喜良先生(現国立病院機構松本病院副院長)が
PHA-LCMは全て私の血液を用いて作製することができた。
最初の論文が夢のまた夢、
「BJH」に掲載。
俄然、研究への意欲が湧いてきた
● PAGE ウルトラセブンと筆者
UT-7 の名前の由来をよく聞かれるが、この写真を見ていただければ、説明し
なくて済むであろう。
● PAGE PART-1 私の研究歴
最新・血液内科シリーズ vol.24
にあったので、試しに精製したGM-CSFを培養液中に添加し
がら「そうやねー」という得意な仕草は、今でも強く記憶に残っ
カリフォルニア大学サンディエゴ校 UCSD 医学部長)はJohn
を使った仕事をしたい」と言い切った。Johnもそれを認めてく
てみた。驚くべきことに、なんとか生き延びていたと思われる細
ている。
のお弟子さんである(Kenと私は後に兄弟弟子の関係になっ
れたが、その代償はあまりにも大きかった。研究プロジェクトは
胞が GM-CSFという栄養ドリンクを飲んで、元気に増え始めた
中内先生からはヒトEPO 受容体の遺伝子クローニングとい
た)
。一緒に学会に参加していた三浦先生は、留学先を探して
もちろん全て自分で考え(今思うとボスの言いなりではなく、自
のである。それが UT-7樹立物語の始まりである。
うテーマをいただき、Alan D. D’
Andreaらがクローニングした
いた私に憧れの Johnを紹介してくれた。余談にはなるが、学会
分で好きなようにできたのだから、かえってよかったとJohnに感
最初はUT-7ではなく、まさに「起死回生」の意味を込めて
マウスEPO 受容体 cDNAを供与してもらい、UT-7から作製し
の後にディジョンで開催された巨核球に関するカンファレンスに
謝している)
、培地や試薬の作製、試薬のオーダーは全て自分
子供たちの大好きな「ウルトラセブン」と命名したが、三浦先
たcDNAライブラリーを用いて、遺伝子クローニングを試みた。
も参加した。ディジョンはマスタードが有名なので、お土産にと
の手で行った。
生からその名称はすぐに却下され、
「ウルトラセブン」をもじって
しかし、完全長を得ることはなかなかできなかった。仕事を中途
街中でたくさん買い込んだが、まったく同じものが日本のスーパ
イタリア人夫婦はウシ胎仔血清を快く分与してくれたが、これ
UT-7と命名した(後にJohn W. Adamson 博士からUT-7は
にして米国に留学してしまったが、その後の仕事は大学の後輩
ーマーケットに陳列されているのをみてがく然とした。
は正直助かった。ウシ胎仔血清の善し悪しが培養に大きく影響
非常に発音しやすいが、名前の由来は何かと尋ねられ、日本の
の中村幸夫先生(現理化学研究所バイオリソースセンター細
1990年3月にニューヨーク血液センター(今では臍帯血バン
するからだ。彼らは培養にかけてはプロ中のプロだったので、ウ
子供たちのヒーローの名前だと説明したが、予想どおり趣旨は
胞材料開発室室長)が引き継いでくれて、さらに新しい EPO
クで有名)の John の研究室に留学した。しかし、研究室に行
シ胎仔血清のクオリティーはもちろん最高だった。
うまく伝わらなかった)
。
受容体の細胞質内領域欠損型を発見し、「Science」に発表
ってみてあ然とした。Johnはワシントン大学からニューヨーク血
UT-7の 樹 立に関 する論 文 は当 初「Blood」に投 稿した
UT-7はエリスロポエチン(EPO)にもよく反応して増殖する
してくれた。
液センター所長として移動してきて間もなかったため、研究室は
が、樹立しただけでは受理されず、結局1991年に「Cancer
まだ工事中だったのである。
Research」に発表した。Johnに「日本で面白い細胞株を樹立
ワシントン大学から一緒に移動して来られたキリンビール株
したんだ」と自慢げに言ったが、
「ノリオ、それが何だというのだ。
式会社医薬カンパニー医薬探索研究所の島田佳宏さんには
樹立したことではなくて、それで何を明らかにしたかが重要なん
ことがわかったので、大学の近くにある雪印生命科学研究所
の上田正次博士(現株式会社ワイエス研究所代表取締役社
長)に教えていただき、UT-7の細胞表面に発現しているEPO
憧れの、John Adamson 博士の下に留学。
UT-7を使った研究に着手した
受容体の数を Iで標識したEPOを用いて解析した。受容体
1989年パリで開催された国際実験血液学会において、私
研究室のシステム、試薬のオーダーの仕方など、様々なことを
だよ」と諭された。これは強烈なカウンターパンチであったが、そ
の株は1細胞あたり約1万個で、世界で最も多い受容体を発現
はUT-7樹立に関する研究成果を口演で発表した。その時、ア
教えてもらった。
の後の私の研究に大きな影響を与えてくれた。
していることがわかった。ちなみにUT-7/EPOは1細胞あたり4
セチルコリンエステラーゼ染色によるマウス巨核球の同定で
研究室には島田さんの直属のボスであるMigliaccio 夫婦
万個の EPO 受容体を発現している。UT-7/EPOは、UT-7を
有名なCarl Jackson博士が質問してくれたのをよく覚えている
(GiovanniとAnna Rita)がおり、Anna Ritaが研究室の実
131
EPO 存在下で長期培養して樹立されたEPOにのみよく反応
する亜株である。
理化学研究所・中内啓光先生の下へ。
分子生物学と遺伝子クローニングを学ぶ
(質問の内容の詳細は忘れてしまった)
。
権を握っていた。私は彼女に呼ばれ、
「研究にUT-7を使うなら、
藤田博美先生とともに、
nuclear run-on assay を行う
この学会に参加していたJohn W. Adamson 博士(以下
おまえの仕事だ。しかし、自分たちが樹立したマウスの細胞株
留学中は研究に専念できたが、特別なプロジェクトもなく、自
Johnと呼ばせていただく)は三浦先生のご友人で、その当時
32Dを使うなら、自分たちの仕事だ」と言った。私はイタリア人
分で研究テーマを決めなければならなかった。Johnからは「君
ワシントン大学の教授で、後で述べるKen Kaushansky 博士
のこの夫婦のことはまったく知らなかったし、彼らの仕事の手伝
はすでにestablishされた研究者として来てもらったのだから、
(1998年から2002年まで「Blood」の編集長を務め、現在は
いをすることなどまったく考えてもいなかったので、「私はUT-7
自分で研究テーマを考え、自由に研究してくれ」と言われた。
遺伝子のクローニングが次々と行われ、Northern blot、
そこで、UT-7や UT-7/EPOを使って実験しようと考えた。こ
Southern blotなどの言葉を頻回に耳にするようになり、分子
れらの細胞株はEPO 受容体を高発現していることから、とりあ
生物学の必要性を感じた。
えず分化に伴うEPO 受容体の発現制御機構を解析すること
そこで、1989年に理化学研究所のクロモソームチームリー
にした。
ダーの中内啓光先生(現東京大学医科学研究所教授)の研
そのためには、どうしてもnuclear run-on assayを行う必要
究員に採用してもらった。その当時のメンバーの中には、細胞
があったので、同じ時期にポルフィリア症の世界的権威である
周期研究の第一人者である中山敬一先生(現九州大学生体
ロックフェラー大学の佐々茂先生(現ロックフェラー大学客員
防御医学研究所教授)がいて、大学院生として精力的に研究
教授)の研究室に留学していた三谷絹子先生(現獨協医科大
していた。大変親切に、しかも熱心に分子生物学の基礎を教
学血液内科教授)に電話をして、藤田博美先生(現北海道大
えてくれた。
学大学院医学研究科環境医学分野教授)を紹介してもらった。
石原俊樹先生(いしはら内科クリニック院長)には、UT-7細
nuclear run-on assayは結局、藤田先生の後ろでみているだ
胞の FACS 解析をしていただいた。残念なことに2006年に逝
去された(享年50歳)が、話をする時にいつもあご髭をなでな
● PAGE 10
プリンスエドワード島で家族とともに
アメリカ留学中に、
「赤毛のアン」で有名なプリンスエドワード島を家族とと
もに旅行した。大きなロブスターに子供たちもびっくり。
John W.Adamson 所長とともに
1991 年 8 月ニューヨーク血液センターでの留学を終え、帰国直前に John の
オフィスにて。
けだった(そう簡単にできるものではないので)
。このおんぶに
だっこの仕事を追加して、EPO 受容体制御機構に関する研究
● PAGE 11
PART-1 私の研究歴
最新・血液内科シリーズ vol.24
は「Cancer Research」に発表した。藤田先生とは妙に息が
仲間と研究プロジェクトをスタートすることの方が得策だと判断
合って(私の一方的な思いかもしれないが)
、金曜日の夕方に
し、1年半という中途半端な留学に終止符を打った。
なるとロックフェラー大学のファカルティークラブで無料の冷え
たビールをいただいた。
山本恭平先生との出会い─
細胞内シグナル伝達の実験は2週間で完成
EPO で赤血球系へ、TPO で巨核球へ。
世界で唯一の細胞株、UT-7/GM を樹立
1991年秋に古巣の1研に戻り、当初、1人で研究を始めた。
最初に一緒に研究を始めたのが清水律子先生(現筑波大学
時間的に余裕があったので、コーネル大学の図書館に行っ
先端学際領域研究センター講師)であった。慶応大学から芳
ては片っ端から論文を読みあさった。その当時はサイトカインの
賀赤十字病院に派遣中に、自治医大血液科に出入りするよう
細胞内シグナルの解析はあまり行われておらず、日本ではハー
になった。清水律子先生は現像室から帰る途中、きれいなバン
バード大学の Jim Griffin 博士の研究室に留学中に金倉譲先
ドにみとれて階段を踏み外して、前歯の一部を破損したエピソ
生(現大阪大学血液・腫瘍内科教授)が行った仕事が先駆的
ードの持ち主である。
である。私もUT-7を使って、EPO のシグナルがどのように細
EPO 発現調節機構の研究で有名な今川重彦先生(現筑波
胞膜から核へ伝達されるのかを調べたいと思っていたが、その
大学人間総合科学研究科教授)も同じ1研に所属し
(後に3研
当時は今のように実験マニュアルもなく、どのようにしたらよい
のチーフとなった)
、お互いよきライバルとしてしのぎを削りなが
ものか思案をめぐらしていた。
ら切磋琢磨したことも、私には貴重な経験となった。
そのころ、千 葉 大 学 第2内 科からノースキャロライナの
UT-7からはUT-7/EPO(Blood,1993)のほかにUT-7/GM
Research Triangle ParkにあるBurroughs Wellcome
(Blood,1997)
、UT-7/TPO(Blood,1996)が亜株として樹
代表取締役社長)のご配慮によって、TPOを早期に入手する
Company の Lapetina 博士の下に留学中の山本恭平先生
立された。UT-7/GMは、UT-7をGM-CSFで2年以上にわた
ことができた。UT-7や UT-7/GMと同様にUT-7/TPOにおい
(現千葉市立青葉病院内科部長)から研究室に突然電話を
って培養して得られた細胞株で、EPOで赤血球系へ、TPOで
ても多くの偶然が重なり、樹立の成功につながっている。当時
いただいた。これは今後の私の研究に大きく影響することにな
巨核球へと分化できる世界で唯一の細胞株である。
TPO の蛋白発現効率は悪く、TPO 活性の比較的低い上清し
る貴重な電話であった。UT-7を供与してほしいとの依頼の電
UT-7をGM-CSFで継代維持している時に、たまたまEPO
か得られなかったと聞いている。しかも、その当時たまたま研究
話であったのだが、私は山本先生に細胞内シグナル伝達の解
の存在下で培養したところ、細胞のペレットが赤いのに気付い
室で培養していたのが UT-7の亜株であるUT-7/GMで、後で
析方法について尋ねた。そこで帰ってきた返事が「インスリンの
たのが UT-7/GM 細胞株の樹立のきっかけになった。まったく
わかったことであるが、この亜株のみが TPOにわずかに反応す
細胞内シグナルの研究をしているので、先生の考えていること
の偶然であったが、自分で実験していたからこそ、赤い細胞の
る細胞株であった。UT-7や UT-7/EPOではTPOにまったく
TPOに増殖依存性を示す世界発の成熟巨核球系細胞株
は簡単にできるよ」とのことであった。そこで方法をぜひ習いに
ペレットに気付いたということを強調しておきたい。ほかの人に
反応しなかったので、もしこれらの細胞株にTPOを添加して培
であることを直感し、すぐに三浦教授におみせした。
「これはす
行きたいと申し出ると、山本先生のボスに掛け合ってくれて研
任せていたら、この現象は見落とされていたかもしれないからだ。
養していたら、UT-7/TPO の誕生はなかったのである。
ごいね」
(三浦先生の独特の口調で)と感激されたご様子であ
さて、話を元に戻すことにする。活性の低い TPOを含む培
った。サイトスピン標本で観察すると、それはまさに成熟巨核球
地でUT-7/GM 細胞を培養し続けた。UT-7/GM 細胞は1週間
そのものであった。その成果は1996年の「Blood」に掲載され
でほとんどが死滅したが、フラスコはそのまま培養器の中に入
たが、TPO の生物活性を測定するのに欠かせない細胞株とし
究室で実験を行うことを許可してくれ、しかも旅費(往復の航
空運賃)
まで出してくれた。研究所の近くに宿を借り、毎晩、山
本先生宅で夕食をごちそうになった
(奥様もさぞかし大変であっ
フラスコを培養器に放置して1か月─
UT-7/TPO は生きていた
自治医大を訪問された Orkin 博士
三浦恭定先生が、1996 年(平成 8 年)に第 58 回日本血液学会の会長をされた時、
Orkin 博士(右から 2 番目)に特別講演をお願いした。その時いろいろとご尽力
くださったのが筑波大学人間総合科学研究科教授の山本雅之先生(左端:現東
北大学大学院医学系研究科教授(兼)筑波大学大学院人間総合科学研究科客員
教授)であった。
フラスコの中を真剣にのぞき込む筆者
こうして、UT-7 シリーズは誕生した。
三浦恭定先生ご夫妻を囲んで
1997 年の 1 研の忘年会。みんな楽しそうである。
たと思います。この紙面を借りてあらためて感謝申し上げます)
。
1994年にTPOがキリンビール株式会社の加藤尚志さん
(現
れておいた(放置したといったほうが表現が正しいだろう)
。約
て、現在、世界の多くの研究者や企業が使用している。偶然
大変ありがたかった。わずか2週間で実験は順調に進み、ほと
早稲田大学大学院理工学研究科教授)と宮崎洋一さん(現キ
1か月後、そろそろ培養器の中を整理しようと思い、このフラス
の重なりから誕生したUT-7/TPO の樹立の物語は、このあたり
んどのデータは完成し、ほどなく
「Blood」に受理された。
リンビール株式会社医薬カンパニー医薬探索研究所所長)ら
コも処分しようとしたが、捨てる前に念のため倒立顕微鏡で中
で終わりとしよう。
システムの確立した研究室で実験をすれば、アイデアとユニ
によってクローニングされた。私は畠清彦先生(現癌研有明病
をのぞいてみた。それが UT-7/TPOとの出合いの瞬間である。
ークな材料さえあれば、それなりの仕事が簡単にできることにひ
院化学療法科部長・血液腫瘍科部長)とキリンビール株式会
大きな細胞が元気な姿で多数観察されたのである。TPO の存
どく感動した。ニューヨーク血液センターの研究室で研究を続
社・医薬事業本部の下坂皓洋さん(現バイオワン株式会社代
在下で、わずかに生き残った細胞が生き続けていたのである。
けるよりは、早く日本に戻って自分の研究室を立ち上げ、若い
表取締役社長)
、細田雅人さん(インタープロテイン株式会社
まさに「南極物語」のタローとジローである。
● PAGE 12
EPO の細胞内シグナル伝達に関する研究。
研究室から論文を次々と発表
話は前後するが、1995年に造血発生部門大学院2年の桐
● PAGE 13
PART-1 私の研究歴
最新・血液内科シリーズ vol.24
代謝系を極力低下させることで何とか生き延びようとしている、
然、学生から私に壇上に上がるように言われた。私を「ミスター
あの線虫の動きとまったく同じ現象ではないかと考えた。予想
クルズス」として表彰するということであった。表彰状のなかに
通り、FOXO3a のドミナントネガティブ型や siRNAを用いて内
は「普段は『わかった様な顔』が得意な我々も、先生のクルズ
因性 FOXO3a の機能を阻害したところ、EPO 除去後に細胞
スでは『本当にわかった顔』をすることができました。先生の説
の周期は停止せず、多くの細胞がアポトーシスによって死滅し
明の技巧に脱帽します」と書かれていた。立派な花束と豚の絵
た。
柄のネクタイ
(もらった時は何の意味かわからなかったが、後で
その研究成果を班会議で発表したところ、会議が終わると
考えると、どうも発作性夜間血色素尿症の原因遺伝子である
中畑龍俊先生(現京都大学大学院医学研究科発達小児科学
PIG-AをブタAと覚えなさいと言ったことによるらしい)をいただ
教授)が「先生の発表が、いちばん面白かったよ」と言ってくれ
いた。まったく予期せぬ粋な計らいで、感激と感動で胸がいっ
た。その後、慶応大学の須田グループは、FOXO3aが正常血
ぱいになった。
液幹細胞の未分化性維持に重要であることを2007年の「Cell
翌年の2004年には、高久学長から最優秀教員賞をいただい
Stem Cell」に発表しており、私の仮説が正しかったことが証明
た。この時はすでに山梨大学への異動が決まっていたので、選
された。
考委員の中には表彰に消極的な方もいらしたようであるが、今
戸敬太先生(現山梨大学血液内科准教授)が、斎藤政樹教
の細胞ではFKHRL1(FOXO3a)が AKTでリン酸化されると
授の北海道大学がん研究所への異動に伴い、私の研究室に
の報告があった。私は直感的に、EPOで活性化されたAKTが
配属となった。
リン酸化するのもFOXO3aではないかと考え、first author の
その当時、EPOの細胞内シグナル伝達に関する研究が盛ん
Brunett 博士にリン酸化抗体を供与してもらい、その仮説を立
に行われており、我々も何とか競争に加わりたいと思い、EPO
証した。この仕事は柏井良文先生
(現自治医大小児科学助教)
さて、ここで学生教育について言及したい。系統講義や BSL
シグナルの中心的役割を担うJak2とその下流にあるStat 蛋
が行い、1999年12月の ASHで口演に選ばれ、2000年8月号
で行うクルズス
(ミニ講義)
では、学生の中には、こんなすばらし
白に注目した。EPOが Stat5だけでなくStat1や Stat3を活性
の「Blood」に掲載された。その後、田中勝先生(現栃木県立
い講義は聞いたことがないと言ってくれた学生もいた。自治医
化することをいち早くみつけ、桐戸先生は何度もゲルシフトの
がんセンター血液内科医長)はTPOでも同様の現象を見出し、
大の学生は私を乗せるのが上手で、1時間の予定のクルズス
実験を繰り返して、研究成果を米国血液学会(ASH)で発表し
た。論文は次々に「Blood」や「JBC」に掲載された。
1999年にAKTでリン酸化されるはずの BAD のリン酸化をう
まく検出できず、EPO の下流には本当にBADが機能している
のかどうか疑問に思っていたころ、たまたま「Cell」に、神経系
1997 年、San Diego で開催された米国血液学会での発表
1 研からは初めての学会発表であった。UT-7 シリーズを使って、Stat1 と
Stat3 が EPO による赤血球分化を抑制するという研究成果を桐戸先生(右)
が発表した。
● PAGE 14
「JBC」に発表し、大学院卒業論文となった。
線虫の飢餓状態と同様に、
細胞はその周期を静止させる
EPO や TPO のシグナルの下流で何かをしているらしいこ
「ミスタークルズス」─
学生から謝恩会で表彰される
までの学生教育に対する姿勢を評価したものであり、表彰すべ
きであるとの意見が多数を占めたとうかがっている。これらの表
彰状は私の宝物であり、今でも自信を失いかけた時の心に支え
になってくれている。
高久先生から贈られた「前進」の額とともに、
山梨大学血液内科初代教授に着任
は2時間にも及ぶことがあった。終わって教室に戻ると、周囲か
2003年12月の ASH(San Diego)の会場で、小澤敬也教
らは「先生、
また乗せられたのね」と冷ややかな目
(?)
で言われた。
授から山梨大学に血液内科が新設されることを聞いた。ちょう
平成15年度卒業生の代表から、謝恩会(第27期卒業生主
どそのころKen Kaushansky 博士の下に桐戸敬太先生が留
催)に必ず出席してくださいとのメールが送られてきた。いった
学しており、2004年夏に帰国することになっていたので今後の
い何事が起こるのか、一抹の不安を抱きながら出席した。突
ことを2人で話し合い、私が山梨に行くようなことがあれば一緒
とはわかったが、次にその機能について解析をしようと考えた。
に血液内科の立ち上げに参加したいと申し出てくれた。
FOXO3aは線虫の DAF16のヒトオルソログである。DAF16
2004年2月に教授選考に必要な書類を提出し、セミナー用
は餌不足、高温、数の増加など、線虫の生存環境が悪くなると
のスライド作りを開始し、連日発表の練習をした。2004年5月
初めて機能する分子で、線虫の代謝系を停止させて、冬眠状
に山梨大学医学部でセミナーを行い、面接を受け、2004年6
態を作り出し、長く生存させようとする機能を有する。私は線虫
月の教授会で採用が決定した。
に存在する機能なら、ヒトにもあっていいはずだと直感した。
國玉眞江先生に山梨に一緒に来てくれるよう頼んだが、快く
UT-7/EPO の増殖・生存にはEPOが必須だが、線虫と同
承諾してくれた。秘書の久保恭子さんも、少しの間でよければ
様に飢餓状態、UT-7/EPOにとってはEPOを培地から取り除
山梨でお手伝いしますと言ってくれた。そこで、2人による研究
くことであるが、そうすることによって細胞周期はG0/G1期に
室の片付けが始まった。
静止した。その時、FOXO3aは核内へと移行していた。そこで、
私は今までに前任者が残した実験器具や試薬の片付けが
私は細胞周期を静止させることは従来の考えであるアポトーシ
スの前段階と捉えるのではなく、むしろ細胞が周期を停止させ、
平成 15 年度卒業生から授与された「ミスタークルズス」賞
花束と豚柄のネクタイにご満悦である。
大変だったので、自分が研究室を去る時には次の研究者が研
究しやすいように全てのものを処分すべきであると思っていた。
● PAGE 15
PART-1 私の研究歴
最新・血液内科シリーズ vol.24
そこで処分すべき物は全て処分し、山梨に運べるものは全て
カルクリニック院長)から「小松先生を失うことは自治医大にと
運ぶことにした。私が取得した科学研究費で購入した実験機
って大変な損失である」との最高の祝辞をいただいた。最後の
器は、自治医大と小澤教授のご好意で借用という形で山梨大
教授会での高久学長の「山梨でも頑張れ」との激励の言葉に
学に移動することができた。山梨に運ばれた荷物の量はなんと
よって、私は20年以上にわたる自治医大での勤務に何ら後悔
4トントラック2台分、2トントラック1台分、計10トン分であった。
の念を抱くことなく、すがすがしい気持ちで、2004年10月新設
名古屋の嫁入りにも相当する量である。これらの荷物の梱包は、
された血液内科の初代教授として着任した。
國玉先生と久保さんがほとんど2人でしてくれた。そして、2人
当初は國玉眞江先生、三森徹先生(後述)
、久保恭子さん、
で山梨の教室や研究室を見学し、
メジャーで部屋の寸法を測り、
そして私の4人でスタートした。桐戸先生は帰国後、自治医大
どこにどの荷物を入れたらよいかまで決めてくれた。
から栃木県立がんセンターへの派遣義務を無事に終え、2005
運搬に最も気を遣ったのはUT-7シリーズが入った液体窒素
年1月から合流し、さらに2005年10月には自治医大血液科から
タンクで、業者に頼んで慎重に運んでもらった。−80℃の冷蔵
永嶋貴博先生がスタッフに加わった。
庫に保存していた細胞は40kg のドライアイスを用意して厳重
血液内科の病床数は当初はわずか7床で、すぐに満床に
に梱包し、早朝に自分の車で運んだ。研究室に液体窒素タン
クが運ばれ、−80℃の冷蔵庫への細胞保存が無事に済んだ
ており、臨床・研究・学生教育にバランスのとれた力を発揮して
現代俳句の最も有名な作家の 1 人である五島
高資氏(本名樽本高寿、通称たるちゃん)が教
授就任祝賀会の席で詠んでくれた句
いる。病院スタッフからの信頼も厚く、2007年4月から腫瘍セン
ター長に就任した。
「先日、大変お世話になった恩師・小松則夫先生が
山梨大学医学部血液内科の教授に就任することに
なり、一昨日、その祝賀会に出席した。絶望的な患
者を奇跡的に助けることができたことなど、先生
と二人三脚で奔走した臨床体験はとても懷かしく
貴重な思い出ばかりである。しかし、そうした忙
しい臨床の場にあって常に他人や患者を思いやる
優しさに溢れていた先生の姿には今更ながら心打
たれるものがある。ある日こんなこともあった。
私が病棟医師室の机でうたた寝していて、ふと目
を覚ますと机の脇に「春の日に君やすらかに眠り
たもう」と書かれた紙がおいてあり、よく見ると
その句の横に「則夫」と書かれてあったのだ。
國玉眞江助教は私と一緒に自治医大から着任し、最初から
教室の立ち上げに尽力してくれた。看護師、患者さん、学生か
らの信頼も厚く、医師の理想像をみたようだと感想文に書いた
学生がいたほどだ。
永嶋貴博助教は2005年10月に自治医大から造血幹細胞
移植の立ち上げのために来てくれた。もの静かで決して目立つ
存在ではないが、ひとつひとつのことを確実にやり遂げる実力
教授就任を祝し
仰ぎ見る富士よりもなお天高し 高資
派だ。
自治医大七階にある血液内科の病棟からは遥か
彼方に富士が見える。その麓に行かれる先生の
更なる発展を切に願うものである。
(月 下 獨 迹、
MONOLOGUE、五島高資より抜粋)
三森徹シニアレジデントは私が赴任する前から第2内科で血
液疾患の診療に従事し、
“血液のともし火”を決して絶やすこと
なく、頑張ってきた。彼のおかげで今の血液内科がある。もちろ
高久史麿学長からいただいた
言葉「前進」
のはすでに午後10時をまわっていた。ほとんどの荷物の到着
「常に前向きに進め、後悔なんか
するんじゃない。とにかく前に
進め」。そんな高久先生の激励の
声が聞こえてきそうである。
は翌日であったものの、気持ちの中では大方引っ越しは終わっ
ていた。
自治医大助教授時
代にいただいた患
者さんの作品
私の病棟回診を楽
しみに待っていて
くれた患者さんの
作品は今でも教授
室に大事に飾って
いる。この作品をみ
るとなぜか元気が
湧いてくる。
教授就任祝賀会は自治医大の敷地内にあるレストラン西洋
堂で、高久史麿先生、三浦恭定先生をはじめ50名以上の方々
にご出席いただき、永井正先生(現自治医大血液科准教授)
の司会の下で盛大に行われた。高久史麿先生からは「前進」
という先生直筆の額をいただいた。余談になるが、私の友人の
武田正之先生(山梨大学医学部泌尿器科教授)が、私の部
屋の中で最も価値があるのは高久先生の額だねとうらやましそ
うにみつめていた。祝賀会の席では、富塚浩先生(富塚メディ
私を息子のように可愛がってくださった。
● PAGE 16
体は大きいが、フットワークが軽く、困ったことがあるといつも私
を助けてくれる。
中嶌圭先生は2006年入局の新人だが、まじめで誠実で、患
者さんからの信頼も厚い。患者さんをみることが大好きで、患者
さんの調子が悪いと元気がなくなり、調子がよいと元気が出る
という。まるで私の若いころをみているようだ。
2007年には野崎由美先生が入局してくれた。自分というも
自治医大の看護師さんから
いただいた色紙
助教授時代には金曜日の午後に
2 ~ 3 時間かけて婦長と病棟回診
をした。患者さんは私の回診を楽
しみにしてくれていたようだ。
なった。ほかの診療科からベッドを借りまくり、病床稼働率は
のをしっかり持っていて、しかも気持ちの優しい女医さんだ。
150%を超えた。外来患者の具合が悪くなっても入院してもら
若い彼らが血液内科の将来の行方を左右すると言っても過
うことができず、患者・家族からの不平・不満が吹き出し、病棟
言ではなく、これからの活躍に期待したい。
医長の國玉眞江先生はその対応に大変だった。病床数はしだ
2007年3月からは研究室に迫江公己博士が加わり、臨床だ
いに増え、今では13床になったが、慢性的な入院ベッド不足は
けではなく、トランスレーショナルリサーチへの土台作りもしだ
いまだに解消されていない。
いにできつつある。私が着任してまもなく、家族性血小板減少
すばらしいスタッフに恵まれ、
忙しくも充実した楽しい日々を過ごす
血液内科教授就任祝賀会で、三浦恭定先生とともに
ん、今でも血液内科になくてはならない存在である。背丈が高く、
血液内科教授就任祝賀会にて
高久史麿学長(右)と小澤敬也教授(左)。
症の家系に遭遇したが、迫江先生による遺伝子解析の結果、
RUNX1の遺伝子変異がみつかった。これは世界で13家系目、
本邦で初めての家系で、2007年9月「Haematologica」に論
山梨大学医学部血液内科は、開設してから今年の10月で
文が受理され、2008年の1月号に掲載予定である。
丸3年になる。歴史や実績もなく、血液学の世界ではまだ認知
研究補助員の岩谷未来さんは仕事が堅実で、技術的にも優
されていないも同然ではあるが、私が定年を迎える13年後には
れている。穏やかな性格で周囲を和ませ、研究グループのマド
立派な血液内科になっていると確信している。少しの紙面を借
ンナ的存在である。
りて、現在のスタッフを簡単に紹介するとしよう。
秘書さんは現在3代目である。1代目は久保恭子さんで、國
桐戸敬太准教授は温和な性格で周囲から絶大な支持を得
玉先生と同じく自治医大から一緒に来てくれた。引っ越しの準
● PAGE 17
PART-1 私の研究歴
最新・血液内科シリーズ vol.24
治療(Vol.6,No.4)に桐戸敬太准教授が書いた研究室の紹介
記事の中に集約されているので、最後にそれを引用する。
今までの私の人生を振り返る時、ありきたりの言葉ではある
が、まさに「一期一会」の縁なのである。
●
『さて、所得格差に医療格差、果ては希望格差と何につけて
も格差が話題になってしまう昨今ですが、大学や研究室の間に
PART-2 トピックス
最新・血液内科シリーズ vol.24
HIF-1:造血幹細胞を制御する
新たなる転写因子
桐戸敬太
山梨大学医学部血液内科准教授
も設備・経費・人員などなにがしかの格差が厳として存在するこ
山梨の患者さんが
私に詠んでくれた詩
そうなるように
精進したい。
とは否めません。しかし、格差を嘆くだけでは何も始まりません。
小さな教室・新しい教室には逆に、伝統ある教室・大きな教室
にはない良さがあるはずです。伝統がなければ、これから作り上
げていけば良いのです。小さな教室ならではの一体感もありま
備から教室のセットアップまで、久保さんの献身的な仕事による
す。
ところが大きい。残念ながらお父様が体調を崩され看病のため、
なされている。
この報告では、解剖学的に骨髄中の酸
これに対して、酸素分圧が造血幹細
素分圧勾配が存在することが示されたの
胞にどのように作用するかについては、
みならず、低酸素状態に置かれた細胞
造血幹細胞が、その自己複製能と多
1993年にイタリアの Cipolleschiらによ
群の中にいわゆるSP 細胞が特異的に
戸ではなく、これら地方の藩校であったと述べられています。こ
分化能を維持するための場として“ニッ
り初めて報告がなされている 。この報
含まれることも明らかにされた。すなわち、
私はこのようにすばらしいスタッフに恵まれ、忙しいながらも
れらの地方の藩校や塾の出身者が今日に至る日本の発展を引
チ”という概念が提唱され、広く受け入れ
告では、低酸素により分化した前駆細胞
生体においても、造血幹細胞は確かに
充実した楽しい日々を過ごしている。もちろん、家内の内助の
っ張ってきたのです。
られている1)。
数は減少するが、未分化な段階の細胞
低酸素環境下に存在している6)。
このニッチは、造血幹細胞を取り巻く
ほど生き残ることが示されている2)。
2006年1月に栃木に戻られた。2代目は塩谷奈緒子さんで、い
地方にあることが、本当に不利なのでしょうか?
つも冷静沈着で淡々と、しかも素早く仕事をこなしてくれた。出
思い起こしてください、つい150年ほど前に日本では、数百
産のため、退職されたが、まったくつわりがなかったのには驚い
の藩にわかれ、それぞれの藩に優秀な藩校があったことを。司
ている。3代目は小澤満里子さんで、仕事が早く、何をお願いし
馬遼太郎も、その著書のなかで江戸時代の学問の中心は江
てもいつも快く引き受けてくれる。教室員の信頼も厚い。
功なくしては今の私の存在はあり得ない。
生体の造血幹細胞は、
低酸素環境下に存在する
2)
低酸素状態への適応;
hypoxia inducible factor-1
紙面の関係で詳細を紹介できないのは残念であるが、かつ
ビッグラボでなければサイエンスができないのでしょうか?
細胞外環境と考えることができるが、これ
その後しばらく間をおいて2002年に
て自治医大血液科1研に所属していた共同研究者をここに挙
日本の物理学というと湯川秀樹博士から小柴博士に連なる
には、造血幹細胞と直接にインタラクシ
Danetらにより、低酸素下での培養によ
げさせていただく。藤原(旧姓山田)実名美先生(東北大学血
素粒子の研究が想い浮かびます。と同時に、それを支えるスー
ョンする細胞群と、それらの細胞に発現
り造血幹細胞の骨髄再構築能が増強さ
高地トレーニングや呼吸不全などに
液リウマチ膠原病内科助教)
、内田美栄先生(UCSD 留学中)
、
パーカミオカンデなどの巨大施設の姿と重なります。しかし、忘
する接着分子、あるいはこれらの細胞よ
れることが明らかにされ 、酸素分圧調節
より生体が低酸素環境下に置かれた時、
亀高未奈子先生(都立広尾病院医長)
、高徳正昭先生(セル
れないでください、日本には寺田寅彦というユニークな物理学
り産生されるサイトカインなどが含まれて
と造血幹細胞との関連に注目が集まっ
あるいは虚血などにより一部の組織・細
ジーン株式会社メディカルディレクター)
、外島正樹先生(自治
者がいたことを。彼は、墨流しやガラスの割れ目のでき方、果て
いる。
た。低酸素による造血幹細胞自己複製
胞が低酸素状態にさらされた場合、低酸
医大血液科助教)
、森政樹先生(自治医大血液科講師)
、菊
はタンポポの綿毛の飛び方など身近な、いってみれば卑近な
一方、最近になり、このようないわば
能の増強については、その後も複数の
素環境へ適応するための様々な変化が
池悟先生(自治医大血液科助教)
、吉田こず恵先生(自治医
事象をテーマとしていたことはよく知られています。しかし、その
生物学的な環境に加え、酸素分圧の変
グループより報告がある4)5)。
みられる。すなわち、生体レベルでは赤
大血液科大学院)
。楽しい時間を共有させていただいたことに、
発想の豊かさや現在の複雑系の科学につながる先見性は最
化という物理的な環境変化が造血幹細
それでは、生理的な状態で、造血幹
血球産生の増加、組織レベルでは血管
この場を借りてあらためて感謝申し上げたい。そして、各位がそ
近になって高い評価を受けています。
胞に及ぼす影響が注目されている。
細胞は本当に低酸素状態に存在するの
増生、さらに細胞レベルでは酸素依存性
酸素分圧の変化が造血発生に及ぼ
であろうか? Cipolleschiらは、骨髄の
のエネルギー産生から解糖系へのシフト
我々も、研究室での素朴な問いかけや日常臨床で接する小
す影響については、赤血球系造血を中
解剖学的な特徴より、造血幹細胞の存
などである。
さな疑問を大事にして、ビッグラボにはない味のある、それでい
心として研究がなされてきた。酸素分圧
在するニッチは低酸素状態にあることを
驚くべきことに、これらの多彩な低酸
山梨大学医学部附属病院血液内科は、全国で最も新しい
て本質的な研究を進めていきたいと考えています。』
(分子細
により、ヘモグロビン濃度が変化すると
予想していたが、この仮説は2007年に、
素への適応は1つの転写因子により主
血液内科である。我々教室員の思いは、2007年の分子細胞
胞治療2007;6:100-101より抜粋)
いう現象はすでに19世紀末には報告が
Parmarらによって明確に証明された6)。
に制御されている。この転写因子は、そ
れぞれの分野でこれからも活躍してくれることを願ってやまない。
最後に
● PAGE 18
3)
● PAGE 19
PART-2 トピックス
最新・血液内科シリーズ vol.24
の 機 能 の 通 り、hypoxia inducible
であるvon hippel lindau(VHL)蛋白
致死となるが、この際に血管系や造血系
factor-1(HIF-1)
と呼ばれている 。
と会合する。これにより、HIF-1αはユビ
の異常を伴う 。HIF-1βのノックアウトに
HIF-1はαとβの2つのサブユニットよ
キチン化を受け、プロテアゾームで分解
よっても、一次造血9)ならびに二次造血10)
り構成されている。
このうち、
βサブユニッ
される。この PHD の酵素活性は酸素濃
の異常がみられることが報告されている。
ト
(HIF-1β)は恒常的な発現を示す。こ
度に依存しており、低酸素状態では酵
以上の知見からは、以下の結論が導
これまで、造血幹細胞について主に
が確認された。さらに、マウスの骨髄より
れに対して、αサブユニット
(HIF-1α)の
素活性が低下する。このため、低酸素分
き出される
酸素分圧との関連について論を進めて
c-kit+/Sca-1+/Gr-1−の未熟な造血
発現は酸素濃度に依存している。HIF-
圧下では、HIF-1αの水酸化が抑制され、 (1)低酸素状態は造血幹細胞の自己複
きたが、ここで視点を変え、造血因子の
幹細胞分画を分離し、TPOによりHIF-
HIF-1により制御される遺伝子は、こ
1αの発現レベルは、転写や翻訳のレベ
HIF-1αの蛋白レベルが上昇する(図 1)。
1つであるトロンボポエチン(TPO)につ
1αの発現が誘導されるかを調べた。図
れまでに同定されているものだけでも数
いて考えたい。
2Bに示すように、TPOで処理した造血
十に及ぶ。我々は、その中でもVEGFに
TPOは1994年に血小板造血を制御
幹細胞ではHIF-1αの上昇が確認された。 着目した。
するサイトカインとして、クローニングされ
これらの結果は、造血幹細胞におい
7)
ルではなく、主に蛋白の安定化の段階
HIF-1 は、造血発生に
重要な機能を果たしている
で調節を受けている。
H I F -1α は o x y g e n d e p e n d e n t
け、この問題に向き合うこととなった。
8)
製能・多分化能の維持にかかわる。
(2)低酸素応答は転写因子 HIF-1によ
り制御される。
(3)転写因子 HIF-1は造血発生に不可
TPO は HIF-1 の発現、
機能を制御する
domain(ODD)と呼ばれる領 域を持
HIF-1は低酸素適応を制御する転写
欠である。
た11)。しかし、TPO のレセプターである
ち、ここに存在する2つのプロリン残基
因子であるが、ノックアウトマウスの解
しかし、実際にHIF-1が造血幹細胞
c-mplが、巨核球系細胞のみならず、未
はprolyne hydroxylase(PHD)により
析結果より、造血発生にも重要な機能
において発現し、機能しているかについ
熟な造血幹細胞でも特異的に発現して
水酸化を受ける。水酸化されたHIF-1α
を果たしていることが明らかにされている。 ての直接的な証明にはならない。我々は、
いること、TPOあるいはc-mpl のノックア
はユビキチンリガーゼ複合体の構成員
HIF-1αをノックアウトしたマウスは胎生
ウトにより、血小板系のみならずほかの
偶然にほかの方向からのアプローチを続
にHIF-1αの発現を誘導することがわか
てHIF-1が 機 能していること、TPOが
った(図 2 A)
。
レポーターアッセイの結果、
HIF-1の発現・機能を制御していること
TPOはHIF-1αの発現のみならず HIF-1
を示している20)。
の転写因子としての活性も誘導すること
HIF-1 は、造血幹細胞の
VEGF 産生を制御する
VEGFは血管新生を制御するサイトカ
図 2 TPO による HIF-1 αの発現誘導
A
TPO 100ng/mL
0
15min
30min
1h
3h
6h
24h
系統の造血にも障害が生じることなどが
明らかとなり
図 1 酸素分圧による HIF-1 αの発現制御
114kDa
blot:
anti-HIF-1α
、造血幹細胞レベルで
12)13)
81kDa
機能していることが予想された。その後
Hypoxia
のin vivo 実験により、TPOは確かに造
HIF-1α
Transcriptional activation
HIF-1β
細胞の維持に重要であることが証明され
分化能を維持する分子生物学的なメカ
HIF-1α
Pro564
Pro402
Normoxia
hydroxylation
HIF-1α
Merge
Control
Ub
Ub
Ub
要な働きを持つことを発表してきた。
degradation
それでは、TPOはHIF-1の機能を制
御するのであろうか? この疑問に答え
HIF-1α
+TPO
るべく、我々はまず TPO 依存性の細胞
株であるUT-7/TPOを用いて、TPO 刺
激によりHIF-1αの発現に変化がみられ
るかを調べた。その結果、TPOは強力
● PAGE 20
DAPI
の下流のエフェクターとなり、それぞれ重
HIF-1α
正常な酸素分圧下では、HIF-1αはプロリン水酸化酵素(PHD)
に
より、2つのプロリン残基(Pro402とPro564)の水酸化を受ける。
水酸化されたHIF-1αはVHLと結合し、次いでユビキチン化され
る。最終的には、プロテアゾームで分解される。低酸素分圧下で
は、PHDの酵素活性が低下し、HIF-1αは水酸化を免れ、HIF-1β
と結合し、転写因子として機能する。
HIF-1α
ル伝達経路を対象として研究が進めら
にはホメオドメイン蛋白 18)19)などが TPO
VHL
B
ニズムについては、様々な分子やシグナ
れている。我々も、Stat316)、Stat517)さら
ubiquitination
UT-7/TPO細胞をTPO除去し、24時間培養を行った後に、TPOで刺激した。HIF-1αの発現
量の経時的な変化をウェスタン・ブロットで解析した。
ている6)14)15)。
TPOが造血幹細胞の自己複製や多
PHD
blot:
anti-TFIIH
血幹細胞あるいは非常に未熟な造血幹
マウス骨髄よりc-kit+/Sca-1+/Gr-1−細胞を分離し、TPO存在下及び非存在下で24時間培
養した。この時のHIF-1αの発現量を蛍光顕微鏡により観察した。
● PAGE 21
PART-2 トピックス
最新・血液内科シリーズ vol.24
図 5 造血幹細胞と骨髄間質細胞のやり取り
インであるが、TPOと同様に、そのレセ
の阻害剤であるSU5416を用いて検討を
深いことに、骨髄間質細胞はVEGFレセ
プターは造血幹細胞で発現している。さ
行った。c-kit+/Sca-1+/Gr-1−細胞を
プターの1つであるNeuropilin 1を発現
らに、Gerberらは、造血幹細胞自身が
ソーティングし、96wellプレート上でTPO
しており、VEGFで刺激を受けることによ
VEGFを産生し、細胞内のオートクライ
を加え、single cell cultureを行った。
りTPOを産生する (図 5)。
ンメカニズムによりその生存を維持する
TPO 単独では培養7日目までに18%
これらの結果を総合的に捉え、我々は、
ことを報告している21)。
の細胞が最低1回の分裂を行ったのに
造血幹細胞と骨髄間質細胞はTPOと
そこで、HIF-1は造血幹細胞において
対して、SU5416が存在した場合には、
VEGF のやり取りを通じて、互いの働きを
素状態で PHD の酵素活性が低下する
VEGF の発現を制御しているのではな
9% の細胞のみが分裂を行うに過ぎなか
コントロールするとのモデルを提唱した23)。
かについては、明確にされていなかった。
いかと予想した。実際に、UT-7/TPO 細
った(図 4)。また細胞の生存率も、24%
胞をTPOで処理するとVEGF の発現が
対14%とSU5416を加えた群で有意に
みられる。また、リアルタイム PCR 法を
低下していた(図 4)。SU5416はVEGF
用いて、c-kit+/Sca-1+/Gr-1−細胞
レセプターの阻害剤であり、TPO の下
我々の得た研究結果は、造血幹細胞
での VEGF mRNA 量を検討したところ、 流のシグナル伝達分子の活性化には影
においてHIF-1が機能していることを示
TPOノックアウトマウスでは、その発現
量が1/3程度に低下していた(図 3)。
の安定化を誘導するのか、その分子的
なメカニズムの解明も今後の課題の1つ
である。
c-Mpl
VEGF
transcription
22)
Internal
autocline loop
低酸素状態では、PHD の機能が抑
制されることが HIF-1の安定化に必要
VEGF
TPO
であることは知られていたが、なぜ低酸
HSC
TPO、低酸素、HIF-1
活性化のさらなる探究
2005年に同時に3つのグループから、こ
の過程にはミトコンドリアの電子伝達経
VEGF
TPO
TPO
transcription
路がかかわっていることが報告されてい
Neuropilin-1
る28-30)。我々も、ミトコンドリアの電子伝
達経路の阻害剤やミトコンドリアDNA の
bone marrow stromal cells
響を及ぼさないことから、これらの結果は、 している。しかし、これはTPOにより刺
ノックアウトにより、TPOによるHIF-1αの
骨髄間質細胞より産生されたTPOは造血幹細胞に作用し、HIF-1を介してVEGFの産生を促す。産
生されたVEGFの一部は細胞内オートクラインにより、造血幹細胞自身に作用する。一部は、骨髄環
境内に分泌され、Neuropilin1を介して骨髄間質細胞に作用する。この刺激により、骨髄間質細胞で
のTPO産生が上昇する。
TPOにより誘導されたVEGFが造血幹
激を行った場合の事象であり、実際にニ
細胞の生存・増殖にかかわることを示し
ッチにおいて低酸素環境下にある造血
ている20)。
幹細胞が HIF-1を発現し、またそれが何
造血幹細胞においてHIF-1αを誘導する
TPOにより誘導されたVEGFが、細
らかの役割を果たしているのかとの疑問
ということは、HIF-1の生物学的な意義
造血幹細胞に対するVEGF の生物学
胞内のみならずニッチに存在する間質細
に対する解答ではない。骨髄内の低酸
か、またどのように機能しているのかにつ
して、これらの遺伝子の発現をどのよう
的作用については、VEGF のレセプター
胞にも作用することが予想される。興味
素環境によりHIF-1が活性化を受けるの
いては、今後の研究課題である。
に制御しているのかを検討していきたい
また、TPOと低酸素が HIF-1の活性
と考えている。
化を介して、同じ遺伝子の発現を誘導す
TPO がどのようにして、HIF-1α蛋白
VEGF は、造血幹細胞の
生存・増殖にかかわる
図 3 c-kit + /Sca-1 + /Gr-1 ー細胞に
おける VEGF mRNA の発現
図 4 SU5416 が c-kit + /Sca-1 + /Gr-1 -細胞の
増殖・生存に及ぼす影響
2
1
10
を考えるうえでも示唆に富む現象である
(図 6)。
とされるABCトランスポーター蛋白の1
20
図 6 低酸素と TPO による HIF-1 の活性化
たれるところである。HIF-1が制御する遺
伝子には、SP 細胞に特異的に発現する
20
Survival ratio(%)
Cloning efficiency(%)
VECF-A (normalized to GAPDH)
子を制御するのかについても興味が持
P=0.03
P=0.025
3
TPOと低酸素が同じメカニズムにより、
るのか、または異なるレパートリーの遺伝
30
4
誘導が阻害されることを見出している31)。
TPO
Low O2
c-Mpl
つであるABCG224)や、造血幹細胞のホ
ーミングにかかわるSDF-125)とそのレセ
H2O2
プターであるCXCR426)が知られている。
10
また、最近のプロテオミクスを用いた
PHD
Mitochondria
解析により、造血幹細胞は前駆細胞に
0
C57BL/6
Tpo-/-
コントロールマウス(C 57 BL/ 6 )および
T P Oノックアウト マ ウス よりc - k i t+
/Sca- 1+/Gr- 1−細胞を抽出し、VEGF
mRNAの発現レベルを定量的RT-PCR
を用いて解析した。
● PAGE 22
0
control
SU5416
0
control
SU5416
C57BL/6マウスよりc-kit+/Sca-1+/Gr-1−細胞を抽出し、
フローサイトメーターを用い、96Well
プレート上でsingle cell cultureを行った。培養液にはTPOのみを加えた。7日間の培養後に、少な
くとも1つの細胞が存在するWellの数および2つ以上に分裂を認めるWellの数を数えた。1個以上の
細胞が存在するWellの比率をsurvival%とし、
分裂のみられたWellの比率をcloning efficiencyと
した。それぞれ、SU5416の存在下および非存在下で解析した。
HIF-1α
比べ、解糖系の酵素の発現量が多いこ
とが明らかになったが 27)、解糖系酵素の
多くはHIF-1により発現が制御されてい
る。
低酸素及びTPOはともに、
ミトコンドリアか
らのH2O2を介してHIF-1αを安定化する。こ
れにより、HIF- 1 の活性化が起こり、様々な
ターゲット遺伝子の発現が上昇する。これら
の遺伝子の発現により、造血幹細胞の機能
が制御される。
degradation
VEGF / ABCG2 / SDF-1
CXCR4 / glycolytic enzymes
TPOと低酸素が HIF-1の活性化を介
● PAGE 23
R
E
F
E
R
E
N
C
E
S
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PART 1
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最新・血液内科シリーズ Vol.24 私と仲間たち
2007 年 12 月20日 初版第 1 刷発行
[監修]高久史麿
[著者]小松則夫・桐戸敬太
[発行]大日本住友製薬株式会社
理想の physicianscientistを目指して
臨床教室の利点を最大限に生かす
基礎研究を実践
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[制作]株式会社インターメディカ
〒102 - 0072 東京都千代田区飯田橋 2 - 14 - 2
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[印刷]凸版印刷株式会社
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