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シティグループ証券寄附講座「グローバル金融市場論」
IFRS強制適用の是非
2012年6月28日
シティグループ証券株式会社
東京都千代田区丸の内1丁目5番1号
新丸の内ビルディング
シティグループ証券株式会社 取締役副会長
藤田 勉, Ph.D
+81+81-3-62706270-4885
4885
[email protected]
本資料はシティグループ証券が情報提供を目的として作成したものであり、投資に関する助言又は金融商品の売買の勧誘を意図したものではありません。
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1.なぜ、今、国際会計制度改革なのか
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G20による世界的な規制強化
2009年4月のロンドンG20は、リーマン・ショックの反省に立ち、財務レバ
レッジ抑制と時価会計化を推進。
金融監督、コーポレートガバナンス規制、報酬などの情報開示強化。
G20の基本戦略
1.
世界的に、金融商品の時価会計(公正価値)化を進め、IFRSの基準を簡
素 化。
2.
金融商品の時価会計が進めば、景気悪化時には景気循環増幅効果(プ
ロシクリカリティ)が発生し、金融機関の経営を不安定にする。
3.
大規模な金融機関は、通常の自己資本規制よりも厳しい数値を設定。
4.
景気悪化時に、金融商品の価格下落によって金融機関の自己資本が
毀損しても、最低限必要な自己資本は維持可能。
5.
会計基準改訂、金融規制、自己資本規制はセット。
6.
基本的には世界共通ルールを目指すが、米国のみ独自の厳しい規制。
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IFRSの基本哲学
1. 会計主体論は、①資本主理論(所有主理論)、②企業主体理論(エンティ
ティ理論) 。IFRSは後者。
2. IFRSの基本哲学は、資本提供者のための会計制度。財務報告の目的は
「株主と債権者が、資本提供者としての立場で、意思決定を行う上で有用
な財務情報の提供」。
3. 有価証券報告書作成の法的根拠は、金融商品取引法24条1項。
会計制度の概念
フランコ・ジャーマン型(大陸欧州、日本)
間接金融、確定決算主義、取得原価、実現基準、親会社説。債権者保護を重視。ユ
ニバーサルバンクによる間接金融中心。
アングロ・アメリカン型(英米)
直接金融、税務申告主義、公正価値、発生基準、経済的一体説。株式や債券の投
資家など、不特定多数への情報開示が主目的。
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英米法体系優位の会計制度改革
1. IASBの拠点はロンドン。アングロサクソン系理事は16名中8名。10ヵ国、強制
非適用国は日本と米国。
2. EUの金融法制は英米法化(例:TOB指令、目論見書指令)。
3. EUでは、上場企業の連結決算はIFRS。カーブアウト。
4. 金融市場のグローバル化進行。国際金融センター上位4都市(ロンドン、
ニューヨーク、香港、シンガポール)は英米法体系。
IASB理事の出身国と略歴
IASB理事の出身国と略歴
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理事
Amaro Luiz de Oliveira Gomes
Zhang Wei-Guo
Philippe Danjou
Martin Edelmann
Prabhakar Kalavacherla
Takatsugu Ochi
Hans Hoogervorst (Chairman)
Darrel Scott
Chungwoo Suh
Jan Engström
Ian Mackintosh (Vice Chairman)
Stephen Cooper
John Smith
Patricia McConnell
Patrick Finnegan
Paul Pacter
国
ブラジル
中国
フランス
ドイツ
インド
日本
オランダ
南アフリカ
韓国
スウェーデン
英国
英国
米国
米国
米国
米国
略歴
ブラジル中央銀行の金融システム規制局長
中国証券監督委員会国際関係局会計主任、事務局長
フランス金融監督庁(AMF)会計局長
GASBメンバー
KPMG(サンフランシスコ事務所)パートナー
住友商事フィナンシャルリソーシズグループ長補佐
オランダ証券当局議長
ファーストランド・バンクのCFO
KASBアドバイザー
ボルボグループのシニアポジション
英国会計基準審議会議長
UBS証券(ロンドン)株式部門MD
デロイト・トウシュ・パートナー
ベアスターンズアナリスト、上級MD
財務報告ポリシーグループ(CFA協会)ディレクター
デロイト・トウシュ・トーマツのディレクター
国際金融センターランキング
都市
1
ロンドン
2
NY
3
香港
4
シンガポール
5
東京
6
チューリッヒ
7
シカゴ
8
上海
9
ソウル
10 トロント
国
英国
米国
香港
シンガポール
日本
スイス
米国
中国
韓国
カナダ
注:アングロサクソン系太字。2012年3月。
出所:Qatar Financial Centre Authority,Z/Yen Group,
“TheGlobal Financial Centres Index 11”, March 2012
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注:アングロサクソン出身者は、太字。2012年7月より。出所: IASB、シティグループ証券
*IFRS個別基準ごとに承認。コンバージェンス+エンドースメントで、コンドースメントアプローチと呼ばれる。A Securities and Exchange Commission Staff Paper,"Work Plan for the
Consideration of Incorporating International Financial Reporting Standards into the Financial Reporting System for U.S. Issuers Exploring a Possible Method of Incorporation", May
26, 2011
2.IFRS強制適用の論点
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論点
ディベート
1. 今年度からの履修者は、日本におけるIFRS強制適用の早期実施の必
要性を主張する。
2. 昨年度からの履修者は、この反対論を主張する。
強制適用に関わる主要な問題点
1. IFRS強制適用のメリットは何か。例:住友商事
2. 企業にとっての選択肢を増やし、制度間競争によって優れた会計制度
が生き残ることが望ましい。
3. 世界最大の金融市場を持つ米国は、IFRSを導入していない。
4. IFRSは、日本の企業風土に合わない。
5. コンピュータシステムなどのコスト負担、財務・会計に関わる知識の習
得に関わる負担、企業情報開示の拡充によるコスト増加などが生じる。
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結論:世界の潮流と日本の選択
メリット
1. 公正価値重視による企業のバランスシート・マネジメント能力の向上。
2. 財務諸表の比較可能性の向上。国際的親和性の向上。
3. 日本の国際会計制度改革における発言力向上など。
今後の展望
1. 日本は、外交交渉、ましてや、多国間交渉が不得意。制度設計は、そ
れをリードしたものが最も大きな恩恵を受ける。「したたかさ」が重要。
2. 日本の国益を最も高める方法は、日本が制度改革のリーダーとなり、
率先して、制度を進化させる。
3. これを実行するには、①高度な専門知識、②英語によるディベート力、
③自らが世界の制度改革をリードするという強い意思が必要。
4. 日本は、主要先進国で、最も遅く、欧米の定めた会計基準を採用か?
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